説明

車両通信システム及び車載通信装置

【課題】コストの増加、車両重量の増加、車両内の設置空間の確保等の様々な問題を解決することが可能な車両通信システム及び車載通信装置を提供する。
【解決手段】CAN等の車内通信規格に基づく車内通信網を車両内に配設し、車内通信網に車載通信装置10を接続する。また、車載通信装置10は、電力線通信規格に基づく電力線通信が可能なECSE機能を有する給電装置2、及び閉域通信規格に基づく閉域通信が可能なダイアグツールとして機能する診断装置3を接続可能に構成する。そして、車載通信装置10は、車内通信網を介して、車外へ送信すべき信号を受信した場合に、受信した信号の送信先を判定し、判定した送信先へ、送信先に応じた通信規格で信号を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電力負荷を搭載した車両内に、車内通信規格に基づく車内通信網を配設した車両通信システム、及び該車両通信システムにて用いられる車載通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラグインハイブリッド車等の車両では、走行駆動力を発生する電動機等の電力負荷と、電力負荷へ供給すべき電力を蓄える蓄電装置とが搭載されており、車両外部の電源から給電することで蓄電装置の充電を行うことが可能である。例えば、家屋に設けられた商用電源のコンセントと車両に設けられた充電口とを充電ケーブルで接続することにより、一般家庭の電源から蓄電装置へ電力が供給される。
【0003】
このような充電システムとして、特許文献1には、車両と充電ステーションとの間を充電ケーブルで接続し、電力線通信(PLC:Power Line Communication)により車両認証が完了した場合に、車両への給電を開始するシステムが開示されている。
【0004】
なお、充電ステーション及び車載装置のように車両の内外の通信網を繋ぐためには、ゲートウェイとして機能する車載通信装置が必要となる。図7は、電力線通信と車内通信網とを繋ぐゲートウェイに関するOSI参照モデルを示す説明図である。図7では、給電装置等のEVSE(Electric Vehicle Supply Equipment )と車載通信装置等のゲートウェイとを充電ケーブルで接続し、ゲートウェイとECU(Electronic Control Unit )とを車内通信網CAN(Controller Area Network )で接続する形態を示している。
【0005】
EVSEは、レイヤー1〜2のPLC層、レイヤー3〜4のトランスポート・ネットワーク層、及びレイヤー5〜7のアプリケーション層にて構成される。ECUは、レイヤー1〜2のCAN層、レイヤー3〜4のトランスポート・ネットワーク層、及びレイヤー5〜7のアプリケーション層にて構成される。
【0006】
ゲートウェイは、電力線通信側のレイヤー1〜2のPLC層及びレイヤー3〜4のトランスポート・ネットワーク層、並びに車内通信網側のレイヤー1〜2のCAN層、及びレイヤー3〜4のトランスポート・ネットワーク層を備えている。そして、上位の共通するレイヤーとして、ルーティング層を備えている。
【0007】
また、車両の内外の通信網で繋ぐ方法の応用例としては、ISO13400−1〜3に、車内通信網と車外通信網とをイーサネット(登録商標)で接続し、車両の検査、メンテナンス、ECUの故障診断等のダイアグを行う通信規格が提案されている。
【0008】
図8は、ダイアグ用の通信と車内通信網とを繋ぐゲートウェイに関するOSI参照モデルを示す説明図である。図8では、ダイアグを行うダイアグツールをゲートウェイとを閉域通信網であるイーサネットで接続し、ゲートウェイとECUとを車内通信網CANで接続する形態を示している。
【0009】
ダイアグツールは、レイヤー1のイーサネットPHY層、レイヤー2のイーサネットMAC層、レイヤー3のTCP/IP層、レイヤー4のDoIP層、及びレイヤー5〜7のアプリケーション層にて構成される。ECUは、レイヤー1〜2のCAN層、レイヤー3〜4のトランスポート・ネットワーク層、及びレイヤー5〜7のアプリケーション層にて構成される。
【0010】
ゲートウェイは、イーサネット側のレイヤー1のイーサネットPHY層、レイヤー2のイーサネットMAC層、及びレイヤー3のTCP/IP層、並びに車内通信網側のレイヤー1〜2のCAN層、及びレイヤー3〜4のトランスポート・ネットワーク層を備えている。そして、上位の共通するレイヤーとして、ルーティング層を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2008/046869号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、PLC通信による充電管理機能と、イーサネットによるダイアグ機能とを両立するためには、夫々の通信を中継する複数台のゲートウェイ用の装置が必要となる。複数台のゲートウェイ用の装置を車両に搭載する場合、コストの増加、車両重量の増加、設置空間の確保等の様々な問題が生じることになる。
【0013】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、夫々異なる複数の車外通信規格に係る通信を中継するゲートウェイ機能を一台の装置に搭載することにより、コストの増加、車両重量の増加、設置空間の確保等の様々な問題を解決する車両通信システム及び車載通信装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る車両通信システムは、電力負荷を搭載した車両内に、車内通信規格に基づく車内通信が可能な車内通信網を配設し、該車内通信網に車載通信装置を接続して車内通信を行う車両通信システムにおいて、前記車載通信装置は、車外から前記電力負荷へ供給すべき電力の給電に用いる電力線を介して、電力線通信規格に基づく電力線通信が可能な第1通信部と、前記車内通信規格及び電力線通信規格と異なる閉域通信規格に基づく閉域通信が可能な第2通信部と、前記車内通信網を介して、車外へ送信すべき第1信号を受信した場合に、該第1信号の送信先を判定する手段と、判定した送信先へ、該送信先に応じた通信規格で前記第1信号を前記第1通信部又は第2通信部から送信する手段と、前記第1通信部又は第2通信部から、前記車内通信網へ送信すべき第2信号を受信した場合に、前記車内通信網へ前記車内通信規格で前記第2信号を送信する手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る車両通信システムは、電力負荷を搭載した車両内に、車内通信規格に基づく車内通信が可能な車内通信網を配設し、該車内通信網に車載通信装置を接続して車内通信を行う車両通信システムにおいて、前記車載通信装置は、車外から前記電力負荷へ供給すべき電力の給電制御に要する通信を行う制御線を介して、電力制御通信規格に基づく制御通信が可能な第1通信部と、前記車内通信規格及び電力制御通信規格と異なる閉域通信規格に基づく閉域通信が可能な第2通信部と、前記車内通信網を介して、車外へ送信すべき第1信号を受信した場合に、該第1信号の送信先を判定する手段と、判定した送信先へ、該送信先に応じた通信規格で前記第1信号を前記第1通信部又は第2通信部から送信する手段と、前記第1通信部又は第2通信部から、前記車内通信網へ送信すべき第2信号を受信した場合に、前記車内通信網へ前記車内通信規格で前記第2信号を送信する手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る車両通信システムは、前記第2通信部による閉域通信規格に基づく閉域通信は、前記車両又は電力負荷の検査に要する通信であることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る車両通信システムは、電力負荷を搭載した車両内に、車内通信規格に基づく車内通信が可能な車内通信網を配設し、該車内通信網に車載通信装置を接続して車内通信を行う車両通信システムにおいて、前記電力負荷へ供給すべき電力を電力線を介して車外から供給する給電装置と、前記電力負荷を車外から検査する検査装置とを備え、前記車載通信装置、給電装置及び検査装置は、前記電力線を介して、電力線通信規格に基づく電力線通信が可能であり、前記車載通信装置は、前記車内通信網を介して、車外へ送信すべき第1信号を受信した場合に、該第1信号の送信先を判定する手段と、判定した送信先へ、前記電力線を介して前記電力線通信規格で前記第1信号を送信する手段と、前記電力線を介して、前記車内通信網へ送信すべき第2信号を受信した場合に、該車内通信網へ前記車内通信規格で前記第2信号を送信する手段とを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る車載通信装置は、電力負荷を搭載した車両内に配設された車内通信規格に基づく車内通信網に接続可能な車載通信装置において、車外から前記電力負荷へ供給すべき電力の給電に用いる電力線を介して、電力線通信規格に基づく電力線通信が可能な第1通信部と、前記車内通信規格及び電力線通信規格と異なる閉域通信規格に基づく閉域通信が可能な第2通信部と、前記車内通信網を介して、車外へ送信すべき第1信号を受信した場合に、該第1信号の送信先を判定する手段と、判定した送信先へ、該送信先に応じた通信規格で前記第1信号を前記第1通信部又は第2通信部から送信する手段と、前記第1通信部又は第2通信部から、前記車内通信網へ送信すべき第2信号を受信した場合に、前記車内通信網へ前記車内通信規格で前記第2信号を送信する手段とを備えることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る車載通信装置は、電力負荷を搭載した車両内に配設された車内通信規格に基づく車内通信網に接続可能な車載通信装置において、車外から前記電力負荷へ供給すべき電力の給電制御に要する通信を行う制御線を介して、電力制御通信規格に基づく制御通信が可能な第1通信部と、前記車内通信規格及び電力制御通信規格と異なる閉域通信規格に基づく閉域通信が可能な第2通信部と、前記車内通信網を介して、車外へ送信すべき第1信号を受信した場合に、該第1信号の送信先を判定する手段と、判定した送信先へ、該送信先に応じた通信規格で前記第1信号を前記第1通信部又は第2通信部から送信する手段と、前記第1通信部又は第2通信部から、前記車内通信網へ送信すべき第2信号を受信した場合に、前記車内通信網へ前記車内通信規格で前記第2信号を送信する手段とを備えることを特徴とする。
【0020】
本発明では、夫々通信規約が異なる車外通信を行う第1通信部及び第2通信部を一台の車載通信装置に備えさせることにより、一台の車載通信装置に複数台分のゲートウェイ機能を付与することが可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、一台の車載通信装置により、車内通信網と、夫々異なる複数種類の車外通信の通信規格に則した通信との間のゲートウェイ機能を実現することができるので、コストの増加、車両重量の増加、設置空間の確保等の様々な問題を解決することが可能である等、優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1に係る車両通信システムの構成例を模式的に示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る車両通信システムに関するOSI参照モデルの一例を示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る車両通信システムの構成例を模式的に示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る車両通信システムに関するOSI参照モデルの一例を示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係る車両通信システムの構成例を模式的に示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係る車両通信システムに関するOSI参照モデルの一例を示す説明図である。
【図7】電力線通信と車内通信網とを繋ぐゲートウェイに関するOSI参照モデルを示す説明図である。
【図8】ダイアグ用の通信と車内通信網とを繋ぐゲートウェイに関するOSI参照モデルを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る車両通信システムの構成例を模式的に示すブロック図である。図1中1は、プラグインハイブリッド車等の車両である。車両1には、EVSEとして機能する給電装置2を接続することが可能であり、車両1及び給電装置2の間は、電力の給電に用いる電力線にて接続される。給電装置2は、電力線を介して電力線通信(PLC)を行う電力線通信規格に則した通信が可能である。車両1及び給電装置2の間で行われる電力線通信では、供給すべき電力の給電制御に要するコントロールパイロット等の制御通信が行われる。
【0025】
また、車両1には、車両1又は車両1に搭載される装置を検査し、メンテナンス、故障診断等のダイアグを行うダイアグツールとして機能する診断装置3を接続することが可能である。車両1及び診断装置3の間は、イーサネット等の閉域通信規格に則した通信線にて接続される。
【0026】
車両1は、ゲートウェイ機能を有する車載通信装置10、Liイオンバッテリ等の二次電池を用いた蓄電装置11、各種電力負荷装置12等の様々な装置を搭載している。なお、本発明において、電力負荷装置12とは、蓄電装置11に蓄積された電力の供給を受けて稼働する電動機(モータ)、ECU、その他の各種電装装置の総称であるが、図1に示す電力負荷装置12は、特にECUを例示したものである。そして、車載通信装置10及び電力負荷装置12の間は、車内通信規格CANに基づく車内通信網にて接続されている。なお、車内通信規格としては、CANに限るものではなく、FlexRay、MOST等の様々な車内通信規格を適用することができる。
【0027】
また、車両1は、電力線を接続し、給電装置2から受電する受電部13と、高周波ノイズを除去するACフィルタ14と、交流電力の直流への変換及び変圧を行い蓄電装置11に対する充電を行う充電部15等の機構を備えている。
【0028】
車載通信装置10は、装置全体を制御するCPU等の制御部100と、ラインカプラ101及びPLCモデム102と、イーサネットPHY回路103と、CANトランシーバ104とを備えている。ラインカプラ101及びPLCモデム102は、電力線通信に用いる通信部であり、電力線通信に際しての信号の分離、重畳、変調等の処理を行う。イーサネットPHY回路103は、閉域通信規格に基づく通信に用いる通信部である。CANトランシーバ104は、車内通信規格に基づく通信に用いる通信部である。
【0029】
なお、車載通信装置10は、図示しない電力制御回路を内蔵し、蓄電装置11から供給される電力に基づいて稼働する。また、車載通信装置10が備える各部位には、必要に応じた接地線が設けられている。
【0030】
図2は、本発明の実施の形態1に係る車両通信システムに関するOSI参照モデルの一例を示す説明図である。本発明の車両通信システムは、レイヤー1(物理層)、レイヤー2(データリンク層)、レイヤー3(ネットワーク層)、レイヤー4(トランスポート層)、レイヤー5(セッション層)、レイヤー6(プレゼンテーション層)及びレイヤー7(アプリケーション層)として規定されるOSI参照モデルに則している。そして、車外の通信に関しては、レイヤー2〜7を電力線を介した通信と通信線を介した通信とで共通化することにより、電力線通信による充電管理機能とイーサネットによるダイアグ機能とを、一台の車載通信装置10に搭載する構成としている。
【0031】
本発明の車両通信システムに関するOSI参照モデルについて更に詳述する。EVSEとして機能する給電装置2は、レイヤー1のPLC層、レイヤー2のイーサネットMAC層、レイヤー3のTCP/IP層、レイヤー4のDoIP層、及びレイヤー5〜7のアプリケーション層にて構成される。そして、給電装置2は、PLC層の機能により、電力線に接続する。
【0032】
ダイアグツールとして機能する診断装置3は、レイヤー1のイーサネットPHY層、レイヤー2のイーサネットMAC層、レイヤー3のTCP/IP層、レイヤー4のDoIP層、及びレイヤー5〜7のアプリケーション層にて構成される。そして、診断装置3は、PLC層の機能により、通信線に接続する。
【0033】
ECUとしての電力負荷装置12は、レイヤー1〜2のCAN層、レイヤー3〜4のトランスポート・ネットワーク層、及びレイヤー5〜7のアプリケーション層にて構成される。そして、電力負荷装置12は、CAN層の機能により、車内通信網に接続する。
【0034】
車載通信装置10は、電力線に接続するレイヤー1のPLC層及び通信線に接続するレイヤー1のイーサネットPHY層を備えている。更に、車載通信装置10は、車外の通信に対する共通する上位のレイヤーとして、レイヤー2のイーサネットMAC層、レイヤー3のTCP/IP層、及びレイヤー4のDoIP層を備えている。また、車載通信装置10は、車内通信網側のレイヤー1〜2のCAN層、及びレイヤー3〜4のトランスポート・ネットワーク層を備えている。そして、車載通信装置10は、車外の通信側及び車内通信網側に共通する上位のレイヤーとして、ルーティング層を備えている。
【0035】
次に本発明の実施の形態1に係る車両通信システムにおける車載通信装置10の処理について説明する。車載通信装置10は、車内通信網と車外の装置とを接続するゲートウェイ機能だけでなく、電力線及び通信線に対する経路設定を行うマルチプロトコルルーティング機能を有する。即ち、車載通信装置10は、CAN層の機能を有するCANトランシーバ104により、車内通信網を介して、車外へ送信すべき信号を受信した場合に、ルーティング層の機能を有する制御部100により、受信した信号の送信先を判定する。例えば信号のヘッダ領域に、送信先の装置を示す識別情報を付与し、付与した識別情報を、予め設定されているルーティングテーブルを参照することにより、送信先の通信規格及び装置の判定を実現することができる。
【0036】
そして、制御部100は、判定した送信先へ、送信先に応じた通信規格で信号を送信する。例えば、判定した送信先が給電装置2である場合、PLC層の機能を有するPLCモデム102及びラインカプラ101から、電力線通信規格に則した信号を、電力線を介して給電装置2へ送信する。また、判定した送信先が診断装置3である場合、イーサネットPHY層の機能を有するイーサネットPHY回路103から、閉域通信規格に則した信号を、通信線を介して診断装置3へ送信する。
【0037】
車載通信装置10が、車内通信網上の装置へ送信すべき信号を、ラインカプラ101及びPLCモデム102から受信した場合、又はイーサネットPHY回路103から受信した場合、制御部100により、送信先を判定する。そして、判定した送信先の装置、例えば電力負荷装置12へ、CANトランシーバ104から、車内通信規格に則した信号を、車内通信網を介して送信する。このようにして、実施の形態1に係る車両通信システムが実現される。
【0038】
(実施の形態2)
実施の形態2は、実施の形態1において、電力線通信ではなく、専用の制御線を用いて、コントロールパイロット等の制御通信を行う形態である。なお、実施の形態1と同様の構成については、実施の形態1を参照するものとし、詳細な説明を省略する。また、図面の記載及びその説明において、実施の形態1と同様の構成については、実施の形態1と同様の符号を付すものとする。
【0039】
図3は、本発明の実施の形態2に係る車両通信システムの構成例を模式的に示すブロック図である。給電装置2には、給電に用いる電力線と、給電制御用のコントロールパイロット線として制御線が接続されている。また、車載通信装置10は、ラインカプラ101及びPLCモデム102の代わりにインバンドPHY回路105を備えている。インバンドPHY回路105は、コントロールパイロット用の電力制御通信規格に基づく通信に用いる通信部である。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0040】
図4は、本発明の実施の形態2に係る車両通信システムに関するOSI参照モデルの一例を示す説明図である。給電装置2は、レイヤー1のインバンド層、レイヤー2のイーサネットMAC層、レイヤー3のTCP/IP層、レイヤー4のDoIP層、及びレイヤー5〜7のアプリケーション層にて構成される。そして、給電装置2は、インバンド層の機能により、制御線に接続する。また、車載通信装置10は、制御線に接続するレイヤー1のインバンド層を備えている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0041】
次に本発明の実施の形態2に係る車両通信システムにおける車載通信装置10の処理について説明する。車載通信装置10は、CAN層の機能を有するCANトランシーバ104により、車内通信網を介して、車外へ送信すべき信号を受信した場合に、ルーティング層の機能を有する制御部100により、受信した信号の送信先を判定する。
【0042】
そして、制御部100は、判定した送信先へ、送信先に応じた通信規格で信号を送信する。判定した送信先が給電装置2である場合、インバンド層の機能を有するインバンドPHY回路105から、電力制御通信規格に則した信号を、制御線を介して給電装置2へ送信する。
【0043】
また、車載通信装置10が、車内通信網上の装置へ送信すべき信号を、インバンドPHY回路105から受信した場合、制御部100により、送信先を判定する。そして、判定した送信先の装置、例えば電力負荷装置12へ、CANトランシーバ104から、車内通信規格に則した信号を、車内通信網を介して送信する。その他の構成は、実施の形態1と同様である。このようにして、実施の形態2に係る車両通信システムが実現される。
【0044】
(実施の形態3)
実施の形態3は、実施の形態1において、電力線に診断装置を接続し、診断装置でも電力線通信を行う形態である。なお、実施の形態1と同様の構成については、実施の形態1を参照するものとし、詳細な説明を省略する。また、図面の記載及びその説明において、実施の形態1と同様の構成については、実施の形態1と同様の符号を付すものとする。
【0045】
図5は、本発明の実施の形態3に係る車両通信システムの構成例を模式的に示すブロック図である。電力線には、給電装置2及び診断装置3が接続されている。なお、イーサネットPHY回路103は特に必要ではない。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0046】
図6は、本発明の実施の形態3に係る車両通信システムに関するOSI参照モデルの一例を示す説明図である。診断装置3は、レイヤー1のPLC層、レイヤー2のイーサネットMAC層、レイヤー3のTCP/IP層、レイヤー4のDoIP層、及びレイヤー5〜7のアプリケーション層にて構成される。そして、診断装置3は、PLC層の機能により、電力線に接続する。
【0047】
車載通信装置10は、電力線に接続するレイヤー1のPLC層、レイヤー2のイーサネットMAC層、レイヤー3のTCP/IP層、及びレイヤー4のDoIP層を備えている。なお、イーサネットPHY層を特に設ける必要はない。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0048】
次に本発明の実施の形態3に係る車両通信システムにおける車載通信装置10の処理について説明する。車載通信装置10は、CAN層の機能を有するCANトランシーバ104により、車内通信網を介して、車外へ送信すべき信号を受信した場合に、ルーティング層の機能を有する制御部100により、受信した信号の送信先を判定する。そして、制御部100は、電力線通信規格に則した信号を、判定した送信先へ電力線を介して送信する。
【0049】
また、車載通信装置10が、車内通信網上の装置へ送信すべき信号を、ラインカプラ101及びPLCモデム102から受信した場合、制御部100により、送信先を判定する。そして、判定した送信先の装置、例えば電力負荷装置12へ、CANトランシーバ104から、車内通信規格に則した信号を、車内通信網を介して送信する。その他の構成は、実施の形態1と同様である。このようにして、実施の形態3に係る車両通信システムが実現される。
【0050】
前記実施の形態1〜3は、本願の無数に存在する実施例の一部に過ぎず、一台の車載通信装置で、車両内外の通信網又は通信線を異なる通信規約の通信に基づいて相互に接続する様々な形態に適用することが可能である。
【0051】
即ち、ハードウェアの配置、構成、ソフトウェアの仕様等は、適宜設計することが可能であり、様々な通信規約を適用することが可能である。例えば、通信規約が夫々異なる3種類の車外通信網と車内通信網とを接続するようにしても良く、また、車外の通信の一つとして無線通信規約に基づく無線通信を適用することも可能である等、様々な形態に展開することが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 車両
10 車載通信装置(ゲートウェイ)
100 制御部
101 ラインカプラ
102 PLCモデム
103 イーサネットPHY回路
104 CANトランシーバ
105 インバンドPHY回路
11 蓄電装置
12 電力負荷装置(ECU)
13 受電部
14 ACフィルタ
15 充電部
2 給電装置(EVSE)
3 診断装置(ダイアグツール)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力負荷を搭載した車両内に、車内通信規格に基づく車内通信が可能な車内通信網を配設し、該車内通信網に車載通信装置を接続して車内通信を行う車両通信システムにおいて、
前記車載通信装置は、
車外から前記電力負荷へ供給すべき電力の給電に用いる電力線を介して、電力線通信規格に基づく電力線通信が可能な第1通信部と、
前記車内通信規格及び電力線通信規格と異なる閉域通信規格に基づく閉域通信が可能な第2通信部と、
前記車内通信網を介して、車外へ送信すべき第1信号を受信した場合に、該第1信号の送信先を判定する手段と、
判定した送信先へ、該送信先に応じた通信規格で前記第1信号を前記第1通信部又は第2通信部から送信する手段と、
前記第1通信部又は第2通信部から、前記車内通信網へ送信すべき第2信号を受信した場合に、前記車内通信網へ前記車内通信規格で前記第2信号を送信する手段と
を備えることを特徴とする車両通信システム。
【請求項2】
電力負荷を搭載した車両内に、車内通信規格に基づく車内通信が可能な車内通信網を配設し、該車内通信網に車載通信装置を接続して車内通信を行う車両通信システムにおいて、
前記車載通信装置は、
車外から前記電力負荷へ供給すべき電力の給電制御に要する通信を行う制御線を介して、電力制御通信規格に基づく制御通信が可能な第1通信部と、
前記車内通信規格及び電力制御通信規格と異なる閉域通信規格に基づく閉域通信が可能な第2通信部と、
前記車内通信網を介して、車外へ送信すべき第1信号を受信した場合に、該第1信号の送信先を判定する手段と、
判定した送信先へ、該送信先に応じた通信規格で前記第1信号を前記第1通信部又は第2通信部から送信する手段と、
前記第1通信部又は第2通信部から、前記車内通信網へ送信すべき第2信号を受信した場合に、前記車内通信網へ前記車内通信規格で前記第2信号を送信する手段と
を備えることを特徴とする車両通信システム。
【請求項3】
前記第2通信部による閉域通信規格に基づく閉域通信は、前記車両又は電力負荷の検査に要する通信であることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両通信システム。
【請求項4】
電力負荷を搭載した車両内に、車内通信規格に基づく車内通信が可能な車内通信網を配設し、該車内通信網に車載通信装置を接続して車内通信を行う車両通信システムにおいて、
前記電力負荷へ供給すべき電力を電力線を介して車外から供給する給電装置と、
前記電力負荷を車外から検査する検査装置と
を備え、
前記車載通信装置、給電装置及び検査装置は、前記電力線を介して、電力線通信規格に基づく電力線通信が可能であり、
前記車載通信装置は、
前記車内通信網を介して、車外へ送信すべき第1信号を受信した場合に、該第1信号の送信先を判定する手段と、
判定した送信先へ、前記電力線を介して前記電力線通信規格で前記第1信号を送信する手段と、
前記電力線を介して、前記車内通信網へ送信すべき第2信号を受信した場合に、該車内通信網へ前記車内通信規格で前記第2信号を送信する手段と
を備えることを特徴とする車両通信システム。
【請求項5】
電力負荷を搭載した車両内に配設された車内通信規格に基づく車内通信網に接続可能な車載通信装置において、
車外から前記電力負荷へ供給すべき電力の給電に用いる電力線を介して、電力線通信規格に基づく電力線通信が可能な第1通信部と、
前記車内通信規格及び電力線通信規格と異なる閉域通信規格に基づく閉域通信が可能な第2通信部と、
前記車内通信網を介して、車外へ送信すべき第1信号を受信した場合に、該第1信号の送信先を判定する手段と、
判定した送信先へ、該送信先に応じた通信規格で前記第1信号を前記第1通信部又は第2通信部から送信する手段と、
前記第1通信部又は第2通信部から、前記車内通信網へ送信すべき第2信号を受信した場合に、前記車内通信網へ前記車内通信規格で前記第2信号を送信する手段と
を備えることを特徴とする車載通信装置。
【請求項6】
電力負荷を搭載した車両内に配設された車内通信規格に基づく車内通信網に接続可能な車載通信装置において、
車外から前記電力負荷へ供給すべき電力の給電制御に要する通信を行う制御線を介して、電力制御通信規格に基づく制御通信が可能な第1通信部と、
前記車内通信規格及び電力制御通信規格と異なる閉域通信規格に基づく閉域通信が可能な第2通信部と、
前記車内通信網を介して、車外へ送信すべき第1信号を受信した場合に、該第1信号の送信先を判定する手段と、
判定した送信先へ、該送信先に応じた通信規格で前記第1信号を前記第1通信部又は第2通信部から送信する手段と、
前記第1通信部又は第2通信部から、前記車内通信網へ送信すべき第2信号を受信した場合に、前記車内通信網へ前記車内通信規格で前記第2信号を送信する手段と
を備えることを特徴とする車載通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−9047(P2013−9047A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138791(P2011−138791)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】