説明

車両

【課題】自転車などを容易に積み込むことが可能な車両を提供する。
【解決手段】車両用シートは、シートクッションがミッドフロアの上方に配置される着座位置と、後脚部33が前方に回動され、シートクッションがフロントフロアの上方に配置されるとともに当該シートクッションの上にシートバック35が重ねられ、当該シートバック35の背面が上面となる収納位置との間で移動可能であり、後脚部33は、その背面にカバー部材を備え、車両用シートが前記収納位置に収納された状態において、リアフロアと連続するスロープ面を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後部スペースに自転車などを積み込み可能な車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自転車などを車両に積み込みやすくするための技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。
すなわち、特許文献1には、シートバックを前倒しした状態で、バックドア開口部から自転車を荷室(車室)及びこれに隣接する後席シートのシートバック背面上に積み込む際に、自転車の傾斜角度を規制する略L字状のレール部材を備えた車両について記載されている。
【0003】
前記レール部材は、シートバックの背面において、前後方向(自転車の車輪のガイド方向)に延びるように設置されている。さらに、前記レール部材は、シートバックの背面に当接する取付部と、前記取付部と一体に形成され、シートバックが前倒しされた状態で上方に延びる縦壁部及びテーパ部とによって、自転車の傾斜角度を規制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−157050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の車両では、シートバックがシートクッションに対して立設している状態から、軸部を中心に車両前方側(シートクッション側)に向けて前倒しする構成となっている。ちなみに、前記軸部の位置は固定されており、シートバックを前倒しする際に移動することはない。
【0006】
したがって、前記車両においてシートバックを前倒しすると、リアフロアとシートバックの背面との間に段差ができてしまう。そうすると、自転車を荷室及びこれに隣接する後席シートのシートバック背面上に積み込む際に、自転車の前輪を持ち上げて前記段差を超える必要が生じる。
【0007】
また、シートクッション及びシートバックがリアフロアよりも上方にあるため、シートバックの背面と車両の天井面との距離が短くなってしまう。したがって、自転車などを積み込む際に、所定角度だけ傾ける必要がある。
つまり、前記車両では、シートバックの背面上まで自転車を移動させる際に、前輪を持ち上げつつ自転車全体を傾斜させる必要があるため、自転車を積み込む際に手間が掛かってしまうという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、自転車などを容易に積み込むことが可能な車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明に係る車両は、フロントフロアと、前記フロントフロアの後部から高位に形成されたミッドフロアと、前記ミッドフロアの後部から後方に向けて下がる傾斜面を有するリアフロアと、シートバックと、シートクッションと、前記ミッドフロアに回動可能に軸支された後脚部と、を有する車両用シートと、を備える車両であって、前記車両用シートは、前記シートクッションが前記ミッドフロアの上方に配置される着座位置と、前記後脚部が前方に回動され、前記シートクッションが前記フロントフロアの上方に配置されるとともに当該シートクッションの上に前記シートバックが重ねられ、当該シートバックの背面が上面となる収納位置との間で移動可能であり、前記車両用シートが前記収納位置に収納された状態において、前記後脚部の上方に、前記シートバックの背面及び前記リアフロアと連続するスロープ面を有することを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、車両用シートは、シートクッションがミッドフロアの上方に配置される着座位置と、後脚部が前方に回動され、シートクッションがフロントフロアの上方に配置されるとともに当該シートクッションの上にシートバックが重ねられ、当該シートバックの背面が上面となる収納位置との間で移動可能となる。
したがって、車両用シートが収納位置にある状態において、リアフロアからシートバックの背面まで、前後方向に長い収納空間ができるため、自転車などを車室内に収容することができる。
【0011】
また、車両用シートが収納位置に収納された状態において、後脚部の上方に、シートバックの背面及びリアフロアと連続するスロープ面を有する。これによって、リアフロア、スロープ面、及びシートバックの背面に沿って、自転車などを車室内に積み込むことができるため、自転車を積み込む際の作業負担を軽減することができる。
【0012】
また、前記車両において、前記後脚部は、車幅方向に離間した一対の脚部材であり、前記一対の脚部材に対して着脱可能であり、前記スロープ面が前記一対の脚部材の間に形成されるカバー部材を備えることが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、カバー部材が、一対の脚部材に対して着脱可能であることから、車両用シートを収納位置とし、カバー部材を取り外した状態において、離間した脚部材の間にスペースができる。したがって、当該スペースを収納などに有効利用することができる。
【0014】
また、前記車両において、前記ミッドフロアには、車椅子の前輪が載置される凹部が形成され、前記カバー部材を前記後脚部から取り外し、前記車両用シートが前記収納位置に収納された状態において、前記凹部が露出することが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、カバー部材を後脚部から取り外し、車両用シートを収納位置とした状態において、凹部が露出する。したがって、例えば、車椅子をスロープ面に沿ってスムーズに車両部に案内し、その前輪を前記凹部に載置することによって、車椅子の後傾角度を低減することができるとともに、車椅子の位置決めを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、自転車などを容易に積み込むことが可能な車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両において、後席が立設した状態を模式的に示す側面図である。
【図2】前席及び後席を示す側面図であり、(a)は後席が立設した状態を示し、(b)は後席がダイブダウンした状態を示している。
【図3】後席がダイブダウンした状態である場合において、車室内に自転車が積み込まれた状態を模式的に示す側面図である。
【図4】後席背面に設置された支承板に、カバーを取り付ける際の手順を示す斜視図である。
【図5】カバー部材を支承板に取り付けるためのロック部材の正面図である。
【図6】カバー部材が取り付けられた状態の後脚を背面から見た部分拡大斜視図である。
【図7】後席をダイブダウンしてカバー部材を取り付け、スライド板を展開させた状態を示す斜視図である。
【図8】後席をダイブダウンしてカバー部材を取り外し、スライド板を展開させた状態を示す斜視図である。
【図9】車室内に車椅子が積み込まれた状態を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0019】
図1は、後席が立設された状態を模式的に示す側面図である。なお、前後左右は、図1に示す向きとする。
詳細については後記するが、車両1は、その後席30をフロントフロア11の凹部11bに収納(ダイブダウン)させることが可能であり、当該状態において、車室内に自転車100(図3参照)や車椅子(図9参照)などを積み込むことができるようになっている。
【0020】
<フロア>
図1に示すように、車両1は、フロア10と、左右一対の前席20と、左右一対の後席30と、左右一対の電動ウインチ40と、スライド板50と、を備えている。
フロア10は、車室の床面を構成するものであり、前方から後方にかけて順に、フロントフロア11と、ミッドフロア12と、リアフロア13と、を備えている。
【0021】
フロントフロア11は、前方の凸部11aと、後方の凹部11bとを備える。凸部11aには、左右一対の前席20が設けられている。また、凸部11aの上面と前席のシートクッション21の底面との間のスペースには、車椅子200(図9参照)を車室に引き込むための電動ウインチ40が設置されている。フロントフロア11の凹部11bには、ダイブダウンした後席30が収納されるようになっている。なお、後席30のダイブダウンの詳細については、後記する。
【0022】
ミッドフロア12は、フロントフロア11の後部から段差部12bを介して高位に形成されている。また、ミッドフロア12には、左右一対の後席30が設けられている。また、ミッドフロア12には、車椅子200を車室後部に引き込んだ際に、車椅子200の前輪がはまり込む2つの凹部12aが形成されている。なお、凹部12aの詳細については、後記する。
【0023】
リアフロア13は、後向きに進むにつれて下がる傾斜面を呈している。リアフロアの水平面に対する傾斜角度は、スライド板50を車両1の外側に展開して自転車100又は車椅子200などを車室後部にスムーズに移動できるようにするとともに、車室内に引き上げられた自転車100などが傾斜しすぎない程度の所定角度に設定されている。
なお、フロントフロア11、とミッドフロア12、及びリアフロア13とは、それぞれボルト又は溶接などによって互いに固定されている。
【0024】
<前席>
左右一対の前席20は、運転席及び助手席であり、フロントフロア11の凸部11a上に設けられている。
【0025】
<後席>
左右一対の後席30は、ミッドフロア12上に設けられている。また、後席30は、その前下方に形成された凹部11bに収納(いわゆる、ダイブダウン)可能に構成されている。
【0026】
<電動ウインチ>
電動ウインチ40は、車椅子200(図9参照)を車室に引き込むためのものであり、前席20のシートクッション21の下方であって、フロントフロア11の凸部11a上に設置されている。電動ウインチ40は前席20の位置に対応して左右一対で設置され、車両1のバッテリ(図示せず)を電源として駆動する。
【0027】
<スライド板>
スライド板50は、リアフロア13の後端に設けられており、未使用時にはバックドア60近傍に立設した状態で収納され、使用時には、バックドア60の開口から車両1の後方に倒され、展開される。(図3参照)。また、未使用時においてスライド板50は、ロック部材(図示せず)によって車体の左右側面に固定されている。
【0028】
また、スライド板50は、その下端がリアフロア13に対して回動可能に取り付けられた第1プレートと50a、第1プレート50aの上面に対してスライド可能に設けられた第2プレート50bと、第2プレート50bの上面に対してスライド可能に設けられた第3プレート50cと、を備える。
【0029】
図2は、前席及び後席を示す側面図であり、(a)は後席が立設した状態を示し、(b)は後席がダイブダウンした状態を示している。
図2(a)に示すように、後席30は、前脚32と、後脚33と、シートクッション34と、シートバック35と、アーム36と、を備える。
【0030】
前脚32は、立設状態においてシートクッション34を下方から支持するとともに、軸部32aを中心に前方に回動可能となっている。なお、前脚32の一端(軸部32a)は凹部11bの後端に取り付けられ、他端(軸部32b)はシートクッション34の底面に取り付けられている。
【0031】
後脚33は、シートバック35に固定され、軸部33aを中心に前方に回動可能となっている。また、後脚33の一端(図2(a)では、下端)はリアフロア13に固定されているブラケットBに取り付けられ、他端(図2(a)では、上端)がシートバック35に固定されている。
シートクッション34の前方の底面には、前脚32の下端(軸部32b)が取り付けられ、後端はL字状のアーム36を介してシートバック35に取り付けられている。
【0032】
シートバック35は、(立設状態における)下端が後脚33の上端に固定されている。また、シートバック35は、その下端がシートクッション34の後端とアーム36を介して連結され、軸部33aを中心に前方に回動可能となっている。
アーム36はシートクッション34に固定されているとともに、その上端が軸部36aを介してシートバック35の下端に取り付けられている。そして、シートバック35が軸部36aを中心に前方に回動可能となっている。
【0033】
図2(b)に示すように、ダイブダウンの際には、前脚32が軸部32aを中心に前方に回動するとともに、後脚33が軸部33aを中心に前方に回動する。すなわち、前脚32とシートクッション34とは、前記回動に伴って折りたたみ可能な構成となっている。
また、シートクッション34の後端は、アーム36を介してシートバック35に連結されているため、後脚33の回動に伴って前下方に移動する。また、シートバック35は、軸部36aを中心に前方に回動する。
【0034】
これによって、ダイブダウンの際には、シートクッション34がフロントフロア11の凹部11bに向かって略平行に移動するようになっている。
そして、後席30がフロントフロア11の凹部11bに収納された状態では、シートバック35の(立設状態における)前面とシートクッション34の上面とが相対する位置になるとともに、シートバック35の背面が略水平となる。
なお、図2(a)、図2(b)に示す例では、後席30のヘッドレスト31(図1参照)を取り外した状態でダイブダウンする場合を示しているが、これに限定されない。
【0035】
このように、後席30は、シートクッション34がミッドフロア12の上方に配置される「着座位置」と(図2(a)参照)、後脚33が前方に回動され、シートクッション34がフロントフロア11の上方に配置されるとともにシートクッション34の上にシートバック35が重ねられ、シートバック35の背面が上面となる「収納位置」との間で移動可能となっている。
【0036】
図3は、後席がダイブダウンした状態である場合において、車室内に自転車が積み込まれた状態を模式的に示す側面図である。
車室内に自転車100を積み込んだ状態では、自転車100の後輪101がリアフロア13に接し、自転車100の前輪102が、ダイブダウンされた後席30のシートバック35の背面に乗り上げることとなる。
【0037】
ちなみに、前記したように、ミッドフロア12には、車椅子200を車室に引き込んだ際に、車椅子200の前輪202がはまり込む凹部12aが形成されている(図9参照)。仮に、(車椅子200ではなく)自転車100を車室後部に積み込む際に凹部12aが露出していると、シートバック35の背面と凹部12aとの間で段差ができてしまう。そうすると、自転車100を積み込む際に前輪102を持ち上げて前記段差を乗り越える必要があり、手間がかかる。
そこで、本実施形態に係る車両1では、後席30がダイブダウンした状態(収納位置に収納された状態)において、後脚33の上方に、後席30の背面及びリアフロア13と連続するスロープ面が形成される。
なお、本実施形態に係る車両1では、前記スロープ面が、一対の脚部材からなる後脚33に対して着脱可能であるカバー部材70によって形成される。
【0038】
図4は、後席背面に設置された支承板に、カバーを取り付ける際の手順を示す斜視図である。なお、図4は、車両の右側の後席を左斜め後方から見た斜視図である。
前記したように、左右一対の後脚33,33の一端はそれぞれ、リアフロア13に固定されているブラケットB,Bに取り付けられ、他端がシートバック35に固定されている。
【0039】
また、図4に示すように、左右一対の後脚33,33の背面にはそれぞれ、支承板37が設置されている。支承板37,37は例えば金属製であり、溶接又はネジ止めなどによって後脚33,33の背面及び内側面に密着している。また、支承板37,37は、内側(後席30の幅方向中央)に向かって延在するフランジ37a,37aを備えている。さらに、支承板37a,37aにはそれぞれ、ロック部材73,73に対応する孔37b,37bが設けられている。
【0040】
カバー部材70は、樹脂部材71と鉄板72とを、例えば、樹脂部材71の裏面に形成されている複数の爪(図示せず)で咬止し、一体化させたものである。樹脂部材71は、第1板状部71aと、第2板状部71cとを一体成形したものである。
第1板状部71aは、平面視で逆U字状の板状部材である。また、第1板状部71aは、前記逆U字状の内側が下方に傾斜する傾斜面71bを有している。第2板状部71cは、平面視において長方形状であり、傾斜面71bの逆U字状の縁部と連続している。また、第2板状部71cは第1板状部71aに対し、側面視において所定角度だけ下方に傾斜している。
【0041】
また、第1板状部71aの傾斜面71bの左右両端にはそれぞれ、第2板状部71cの上面と略垂直な周壁面71dが形成されている。さらに、周壁面71dによって決まる2つの円形領域にはそれぞれ、ロック部材73,73の下部に形成されている直線状の螺着部73d(図5参照)に対応する孔71e,71eが形成されている。
【0042】
鉄板72は、カバー部材71の強度を高めるためのものである。鉄板72は、樹脂部材71に対応する形状を呈しており、第2板状部71cに対応する領域には、複数の凹部72aが形成されている。また、鉄板72の左右両端には、樹脂部材71に形成された孔71e,71eに対応する略半円形の切欠き72b,72bが形成されている。
【0043】
図5は、カバー部材を支承板に取り付けるためのロック部材の正面図である。ロック部材73の上部には、使用者がロック部材73を取り付ける際、又は、取り外す際につまむための操作部73aが設けられている。また、操作部73aの下方には、斜め下方に延びる球冠状の取付部73bが設けられ、取付部73bの裏面には下向きに突出する2つの凸部73c,73cが設けられている。ちなみに、上面から見た取付部73bの大きさは、孔73eの左右方向の長さよりも大きく、取付部73bによって孔73eが隠れるようになっている。
【0044】
また、取付部73bの下部には、カバー部材70を支承板37に螺着するための直線状の螺着部73dが設けられている。なお、取付部73bの円周状の縁部と、螺着部73dの上面とは、カバー部材の厚さに対応した所定の間隔が空けられている。
さらに、取付部73bと螺着部73dとの間には、右向き及び左向きにそれぞれ突出している突起部73e,73eが設けられている。突起部73e,73eは、ロック部材73を回した場合に、孔71e及び孔37bの中央にそれぞれ設けられた逃げ部にはまることで、使用者にクリック感を与えるものである。
【0045】
再び図4に戻って説明を続ける。ブラケット80は、溶接又はネジ止めなどによってミッドフロア12に固定されている。また、ブラケット80には、後方に向かうにつれて下方に傾斜する傾斜面80aが形成されている。なお、傾斜面80aは、後席30がダイブダウンした状態において樹脂部材71の第2板状部71cの上面と略面一となる。
【0046】
また、ブラケット80には、傾斜面80aの上端縁と連続して前方斜め下方に傾斜する段差面80bが形成されている。なお、リアフロア13に対する段差面80aの傾斜角度は、カバー部材70が設置されたままで後席30が立設可能なように、つまり、後席30を立設する際にカバー部材70の下端が段差面80aに当たらないように設定されている。
【0047】
さらに、ブラケット80には、段差面80aの下端と連続し、支承板37aと略同一平面上にある傾斜面80cが形成されている。そして、カバー部材70を後席30の背面に設置すると、カバー部材70がフランジ37a,37a及びブラケット80の傾斜面80cに当接するようになっている。
【0048】
図6は、カバー部材が取り付けられた状態の後脚を背面から見た部分拡大斜視図である。
カバー部材70を後脚33の背面に取り付ける際には、第1板状部71の左右両端の下面と支承板37,37の上面とが当接し、鉄板72(図4参照)の下面がブラケット80の傾斜面80cに当接し、さらに、第2板状部71cの下端、及び、鉄板72の下端がブラケット80の段差面80bに当接するように設置する。
【0049】
カバー部材70を後脚33の背面に取り付けた後、ロック部材73を、カバー部材70に取り付ける。すなわち、図5に示すロック部材73の螺着部73dを、カバー部材70の孔71e、及び支承板73の孔37bに入り込ませ、取付部73bの円周状の縁及び凸部73c,73cを、カバー部材70の上面に当接させる。
さらに、操作部73aをひねって、ロック部材73を所定角度(例えば、右回りに90°)だけ回転させる。そうすると、ロック部材73の螺着部73dが延びる方向(例えば、前後方向)と、孔37bの方向(左右方向)とが異なるため、ロック部材73と支承板37とが係合される。
【0050】
なお、カバー部材71を取り外す際には、ロック部材73の螺着部73dが孔37b及び孔71eから抜けるように、ロック部材73を所定角度(例えば、左回りに90°)だけ回転して取り外し、さらにカバー部材70を取り外す。
ちなみに、後席30をダイブダウンの状態から立設状態に戻す際に、カバー部材70を取り外す必要はない。なぜなら、後席30が立設状態に戻る際に、カバー部材70の(立設状態における)下端がブラケット80に接触しないように、段差面80bが所定角度だけ傾斜しているからである。
【0051】
図7は、後席をダイブダウンしてカバー部材を取り付け、スライド板を展開させた状態を示す斜視図である。
後席30にカバー部材70を取り付けた状態でダイブダウンさせると、カバー部材70の第1板状部71aが略水平となり、第2板状部71cが所定角度で傾斜する。ここで、第1板状部71aは、図7に示すように後席30の背面と略面一となっている。また、第2板状部71cは、ブラケット80を介してリアフロア13の傾斜面に連なっている。
すなわち、後席30がダイブダウンした状態(収納位置に収納された状態)において、後脚33の上方に、シートバック35の背面及びリアフロア13と連続するスロープ面が形成される。
【0052】
さらに、図7に示すように、スライド板50を展開する(つまり、第1プレート50a、第2プレート50b、及び第3プレート50cを展開する)と、リアフロア13とスライド板50とで連続する傾斜面ができる。なお、スライド板50の下端は車両1が停まっている路面に接している。
【0053】
例えば、自転車100などを車室に積み込む際には、路面からスライド板50上に自転車100を載せて上方に移動させる。さらに、スライド板50、リアフロア13、ブラケット80、及び、カバー部材70の順で形成されるスロープ面に沿って自転車100を車室内に移動させる。
【0054】
さらに、自転車100の前輪102が後席30のシートバック35の背面上に載るように前方に移動させる。ここで、カバー部材70が、シートバック35の背面及びリアフロア13と連続するスロープ面を形成している。したがって、前輪102を持ち上げることなく、自転車100をスムーズに車室内に積み込むことができる。
【0055】
図8は、後席をダイブダウンしてカバー部材を取り外し、スライド板を展開させた状態を示す斜視図である。
図8に示すように、後席30をダイブダウンしてカバー部材70を取り外すと、凹部12aが露出する。なお、凹部12aは、車椅子200を車室内に積み込んだ際に、車椅子200の前輪202を載置するために設けられている。
なお、車椅子200を積み込む際には、一対の後席30に対応するカバー部材70をそれぞれ取り外すようにする。
【0056】
ちなみに、図8に示す2つの凹部12a,12aの左右方向の幅は、車椅子200の前輪202,202の幅よりも大きい。また、それぞれの凹部12aは、車椅子200の前輪202が凹部12aの内壁面に当接するように形成され、その底面は略水平となっている。
【0057】
図9は、車室内に車椅子が積み込まれた状態を模式的に示す側面図である。
車椅子200を車室内に移動する際には、前記したように後席30をダイブダウンし、カバー部材70を取り外して、凹部12aが露出する状態とする。さらに、スライド板50を展開した上で、電動ウインチ40のベルトPの先端に取り付けられている鉤Qを車椅子200の左右の骨格にそれぞれ引っ掛ける。
【0058】
そして、電動ウインチ40を駆動させると、ベルトPが電動ウインチ40に巻き込まれる。これによって、車椅子200はスライド板50、リアフロア13及びブラケット80によって形成されるスロープ面に沿って、車室内に引き込まれる。
【0059】
そして、車椅子200の前輪202が凹部12aにはまり込む。なお、後席30がダイブダウンしていることによって、シートバック35の背面と凹部12aの底面との距離が短くなっている。ここで、前記距離は、車椅子200の前輪202の最下点と車椅子200のフットレスト(足台)203との距離よりも小さくなっている。したがって、フットレスト203がシートバック35の背面の上方に位置し、かつ、車椅子200の前輪202が凹部12aにはまり込んでいる状態とすることができる。
車椅子200を車室内に積み込んだ後、図9に示すようにスライド板50を立設し、バックドア60を閉める。
【0060】
<効果>
本実施形態に係る車両1によれば、後席30の後脚33の背面にカバー部材70を取り付けることによって、カバー部材70が、シートバック35の背面及びリアフロア13と連続するスロープ面を形成することとなる。したがって、リアフロア13、カバー部材70によってできるスロープ面、及びシートバック35の背面に沿って、自転車100などを車室内に容易に積み込むことができる。
【0061】
また、ダイブダウンされたシートバック35の前端からリアフロア13の後端まで、前後方向に長い収納エリアができ、自転車100などをシートバック35の背面まで案内することができる。
また、カバー部材70は裏面に鉄板72を備えているため、十分な強度を有している。したがって、重量が大きいバイク(図示せず)などをカバー部材70の上に載せた場合でも、カバー部材70が破損することはない。
【0062】
また、カバー部材70を取り付けたままで後席30をダイブダウンの状態から立設状態とすることができるため、自転車100などを積み込む際の作業負担が軽減される。
また、後席30を立設状態とした場合で、荷室側に配置した荷物が急ブレーキ等の場合に前方に飛び出す場合が考えられるが、カバー部材70は裏面に鉄板72を備えているため、荷物がカバー部材70に当たったとしても十分な隔壁強度を発揮することができる。
また、カバー部材70は後席30の後脚33と一体に形成されておらず、着脱可能となっている。ちなみに、カバー部材と後席30の後脚33とをそのまま一体成形する際には後席30の重量などを考慮して、後脚の断面積を小さくする(つまり、細くする)必要が生じる。
これに対して、本実施形態に係る車両1では、カバー部材70が後脚33に着脱可能となっているため、簡易な構成で後脚の剛性を十分に確保することができる。
【0063】
さらに、カバー部材70を後脚33に対して着脱する際、又は、後脚33から取り外す際には、ロック部材73をひねって支承板37と係合する、又は、前記係合を解除するのみでよく、カバー部材70を簡単に着脱することができる。
また、後席30がダイブダウンした状態において、カバー部材70が、シートバック35の背面及びリアフロア13と連続するスロープ面を形成する。つまり、前記特許文献1に記載された車両のように、後席30をダイブダウンさせないで単に前倒しする場合と比較して、後席30の背面と車室の天井面との距離を大きくすることができる。これによって、自転車100などを傾斜させずに車室内に収容することができ、ユーザの作業負担が軽減される。
【0064】
さらに、カバー部材70を取り外した状態で後席30を立設すると、カバー部材30の下側で後脚33の間にスペースができる。ちなみに、当該スペースの下面には凹部12aが形成されている。したがって、例えば、凹部12aに車椅子200の前輪202を凹部12aに載置するなどすることによって、前記スペースを有効利用することができる。
なお、車椅子200の前輪202を凹部12aに載置することによって、車椅子の傾斜角度が小さくなる、つまり、被介護者の後傾角度が低減される。したがって、被介護者の不安感を和らげることができる。
【0065】
≪変形例≫
以上、本発明に係る車両1について、各実施形態により説明したが、本発明の実施態様はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更などを行うことができる。
例えば、前記実施形態では、カバー部材70を後席30の後脚33から着脱可能な構成としていたが、これにかぎらない。
すなわち、カバー部材70と後脚33とを一体に形成することとしてもよい。
また、カバー部材70を後脚33に取り付けるのではなく、後席30の収納状態においてシートバック35の背面に、シートバック35の後端よりも後方に長く、後部にスロープ面を有するシートバックボード(図示せず)を備え、当該シートバックボードのスロープ面が後脚33の上方に配置されるようにしてもよい。この場合、シートバックボードにスロープ面が前方に折畳み可能なヒンジ(図示せず)を設けるとよい。これによって、スロープ面を前方に折畳んで、スロープ面の下側のスペースを有効に利用することができる。
【0066】
また、前記実施形態では、ミッドフロア12上にブラケット80を設置する構成としたが、これに限らない。すなわち、ブラケット80を設けずに、カバー部材70の後端までリアフロア13を延在する構成としてもよい。この場合には、後席30がダイブダウンされた状態において、カバー部材70及びリアフロア13で連続するスロープ面が形成される。
【0067】
また、前記実施形態では、スライド板50を設置する構成としていたが、スライド板50を有しない構成としてもよい。この場合でも、カバー部材70及びリアフロア13で形成されるスロープ面に沿って、自転車100などをスムーズに車室内に積み込むことができる。
また、前記実施形態では、ロック部材を支承板37に螺着することによって、カバー部材70を後脚33に設置する構成としたが、これに限らない。例えば、ネジを螺合することによってカバー部材70を後脚33に設置してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 車両
11 フロントフロア
12 ミッドフロア
12a 凹部
13 リアフロア
20 前席
30 後席(車両用シート)
32 前脚
33 後脚(後脚部、脚部材)
34 シートクッション
35 シートバック
36 アーム
37 支承部材
40 電動ウインチ
50 スライド板
60 バックドア
70 カバー部材
100 自転車
200 車椅子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントフロアと、
前記フロントフロアの後部から高位に形成されたミッドフロアと、
前記ミッドフロアの後部から後方に向けて下がる傾斜面を有するリアフロアと、
シートバックと、シートクッションと、前記ミッドフロアに回動可能に軸支された後脚部と、を有する車両用シートと、を備える車両であって、
前記車両用シートは、
前記シートクッションが前記ミッドフロアの上方に配置される着座位置と、
前記後脚部が前方に回動され、前記シートクッションが前記フロントフロアの上方に配置されるとともに当該シートクッションの上に前記シートバックが重ねられ、当該シートバックの背面が上面となる収納位置との間で移動可能であり、
前記車両用シートが前記収納位置に収納された状態において、前記後脚部の上方に、前記シートバックの背面及び前記リアフロアと連続するスロープ面を有すること
を特徴とする車両。
【請求項2】
前記後脚部は、車幅方向に離間した一対の脚部材であり、
前記一対の脚部材に対して着脱可能であり、前記スロープ面が前記一対の脚部材の間に形成されるカバー部材を備えること
を特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記ミッドフロアには、車椅子の前輪が載置される凹部が形成され、
前記カバー部材を前記後脚部から取り外し、前記車両用シートが前記収納位置に収納された状態において、前記凹部が露出すること
を特徴とする請求項2に記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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