説明

車体パネルシール構造

【課題】無駄なシール材を用いることなく、確実にシール性を確保できる車体パネルシール構造を提供する。
【解決手段】車外側にパネル端部14が露出する第1パネル11と車内側にパネル端部15が露出する第2パネル12との接合部をシールする車体パネルシール構造において、前記第1パネル11および前記第2パネル12の少なくとも一方に設けられた開口18を介して、前記第2パネル12のパネル端部15と前記第1パネル11との間に設けられた車内側シール部22と、前記第1パネル11のパネル端部14と前記第2パネル12との間に設けた車外側シール部23とを連続させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体パネル同士の接合部をシールする車体パネルシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車体パネルは、複数のパネル部材を接合して構成されるが、塗装工程前において、パネル同士の接合部に塗装シールが施される。かかる塗装シールは原則として車内側から行い、車内側に露出したパネル端部に沿って施されるが、このパネル端部を覆うように他の部材が接合されている場合、車内側から塗装シールを施せない場合がある。この場合、車外側に露出したパネル端部に塗装シールを行い、車内側の塗装シールと車外側の塗装シールとをオーバーラップさせることにより塗装シールを完成させていた。
【0003】
この種の技術を開示する従来技術としては、車体パネル同士の接合部分において、塗装シールと車体シールとをラップさせる技術が開示されている(特許文献1参照)。この技術では、ラップさせる領域において、塗装シールをパネル同士の重なり部分の隙間を介して反対側まではみ出させて、そのはみ出した塗装シールに重なるように車体シールを設けて両者を連続させるというものである。
【0004】
このような従来技術においては、シール性を確実に保持するためにはオーバーラップする領域を十分にとる必要があり、また、特許文献1の技術では、オーバーラップ領域のパネルの重なり部分の隙間全体に塗装シールを施す必要があり、何れにしても、作業性に問題があり、また、必要量以上のシール材を用いる必要があり、コスト高になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−211159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、無駄なシール材を用いることなく、確実にシール性を確保できる車体パネルシール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明は、車外側にパネル端部が露出する第1パネルと車内側にパネル端部が露出する第2パネルとの接合部をシールする車体パネルシール構造において、前記第1パネルおよび前記第2パネルの少なくとも一方に設けられた開口を介して、前記第2パネルのパネル端部と前記第1パネルとの間に設けられた車内側シール部と、前記第1パネルのパネル端部と前記第2パネルとの間に設けた車外側シール部とを連続させたことを特徴とする車体パネルシール構造にある。
【0008】
かかる本発明では、車内側シール部と車外側シール部とを開口を介して確実に連続して設けることで、第1パネルと第2パネルとのシール性を確実に確保でき、無駄なシール材を省くことができる。
【0009】
ここで、前記第1パネルおよび第2パネルの車内側には、前記第2パネルのパネル端部の一部を覆う他の部材が設けられており、前記開口が前記他の部材を挟む位置に設けられ、当該開口の間の領域に前記車外側シールが設けられているのが好ましい。
【0010】
これによれば、他の部材により車内側シール部を設けることができない箇所のシールを、車外側シール部で行い、両者の開口を介して確実に連続して設けることができる。
【0011】
また、前記開口は、前記第1パネルおよび第2パネルの一方にパネル端部に設けられた切り欠き状の開口であり、当該開口を介して他方のパネル端部が臨めるのが好ましい。
【0012】
これによれば、開口内にシールを確実に充填できるので、車内側シール部と車外側シール部を確実に連続して設けることができ、その作業性も良好である。
【0013】
また、前記開口は、前記車内側シール部と前記車外側シールとを連続するシール部で埋められているのが好ましい。
【0014】
これによれば、開口をシール材で確実に封止してシール性を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車体パネルシール構造は、車内側シール部と車外側シール部とを開口を介して確実に連続して設けることで、第1パネルと第2パネルとのシール性を確実に確保でき、無駄なシール材を省くことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例に係る車体パネルシール構図を表す車内側からの斜視図である。
【図2】本発明の一実施例に係る車体パネルシール構図を表す車外側からの正面図である。
【図3】本発明の一実施例に係る車体パネルシール構図を表す車外側からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の車体パネルシール構造を一実施例に基づいて説明する。
【0018】
図1には本発明の一実施例に係る車体パネルシール構造を車内側から見た斜視図、図2にはそれを車外側から見た正面図、図3には車外側から見た斜視図を示す。
【0019】
図1は、車外側パネルである第1パネルに相当するサイドシルパネル11と、車内側パネルである第2パネルに相当するフロアパネル12との接合部の一部を示し、サイドシルパネル11の下端部の内側に、フロアパネル12のフランジ部13を当接した状態で、両者が溶接により接合されている。ここで、車外側にはサイドシルパネル11のパネル端部14が露出し、車内側にはフロアパネル12のパネル端部15が露出している。また、両者の接合部の車内側には補強部材16のフランジ部17が溶接により接合され、補強部材16により、車内側に露出したフロアパネル12のパネル端部15の一部が覆われている。
【0020】
また、フロアパネル12のフランジ部13の補強部材16を挟む位置には、本実施例の開口である切り欠き18、19が設けられている。切り欠き18、19は、それぞれ車内側からサイドシルパネル11のパネル端部14を臨める位置まで設けられており、フランジ部13の厚さ方向の平面視において、車内側と車外側とを貫通する貫通孔20、21となっている。
【0021】
かかる車体パネルの接合部においては、基本的には車内側パネルであるフロアパネル12のフランジ部13のパネル端部15とサイドシルパネル11の車内側表面との間にシール材を充填して車内側シール部22を形成し、サイドシルパネル11とフロアパネル12との隙間をシールする。そして、補強部材16により覆われて車内側シール部22が設けられない領域においては、サイドシルパネル11のパネル端部14とフロアパネル12のフランジ部13の車外側表面との間にシール材を充填して車外側シール部23が形成される。そして、車内側シール部22は、切り欠き18、19内のパネル端部15とサイドシルパネル11の車内側表面との間にも設けられ、貫通孔20、21に充填されるまで連続的に設けられている。一方、車外側シール部23も、貫通孔20、21に充填されるまで設けられている。この結果、貫通孔20、21に充填されるシール部24、25を介して車内側シール部22と車外側シール部23とが連続し、且つ貫通孔20、21が封止されている。
【0022】
これにより、サイドシルパネル11とフロアパネル12のフランジ部13との隙間は、車内側シール部22および車外側シール部23と、これらを連結すると共に貫通孔20、21を塞ぐシール部24、25とにより完全にシールされている。
【0023】
このように、切り欠き18、19、特に貫通孔20、21ができるように切り欠き18、19を設けることにより、車内側シール部22又は車外側シール部23を設ける際に、貫通孔20、21を封止するようにすることにより、車内側シール部22と車外側シール部23とを確実に連結することができ、作業性良好にサイドシルパネル11とフロアパネル12のフランジ部13との隙間を連続するシール部により確実にシールすることができる。また、車内側シール部22と車外側シール部23とを無駄にオーバーラップさせることなく、貫通孔20、21を塞ぐシール部24、25により確実に連結させてシールを完全に行うことができるので、コストを低減することができる。さらに、本実施例のように、反対側のパネル端部14が目視できるような貫通孔20、21を設けることにより、作業性良好にシール部24、25を設けることができ、この際に、車内側シール部22と車外側シール部23とを確実に連続させることができる。
【0024】
本発明において、開口は、上述したような切り欠きではなく、例えば、フランジ部13を屈曲させて設けたトンネル状の連通孔としてもよいが、トンネル状の連通孔内にシール材が確実に充填されているかどうかを確実に確認するのが困難であり、シール不良の可能性もあり、また、作業性の面でも問題があるので、板厚方向の平面視で他方側のパネル端部が目視により確認できる貫通孔とするのがよい。
【0025】
また、フランジ部13のパネル端部15に対向する位置に貫通孔のみを設けてもパネル端部が臨めるが、この場合、車内側シール部22と車外側シール部23とを連続するシール部が、フロアパネル12のパネル端部15に沿って設けることができず、サイドシルパネル11とフロアパネル12のフランジ部13との隙間を確実にシールすることができない。すなわち、上述した実施例では、車内側シール部22は、切り欠き18、19内のパネル端部15とサイドシルパネル11の車内側表面との間にも設けられた状態で、貫通孔20、21まで連続しているのが重要である。
【0026】
さらに、本発明の開口として上述したような切り欠きを車外側パネルに設けても、上述した実施例と同様な効果が得られることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、シールを必要とする車体パネルの接合部のシール構造として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
11 サイドシルパネル
12 フロアパネル
13 フランジ部
14、15 パネル端部
16 補強部材
17 フランジ部
18、19 切り欠き
20、21 貫通孔
22 車内側シール部
23 車外側シール部
24、25 シール部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外側にパネル端部が露出する第1パネルと車内側にパネル端部が露出する第2パネルとの接合部をシールする車体パネルシール構造において、前記第1パネルおよび前記第2パネルの少なくとも一方に設けられた開口を介して、前記第2パネルのパネル端部と前記第1パネルとの間に設けられた車内側シール部と、前記第1パネルのパネル端部と前記第2パネルとの間に設けた車外側シール部とを連続させた
ことを特徴とする車体パネルシール構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車体パネルシール構造において、
前記第1パネルおよび第2パネルの車内側には、前記第2パネルのパネル端部の一部を覆う他の部材が設けられており、前記開口が前記他の部材を挟む位置に設けられ、当該開口の間の領域に前記車外側シールが設けられている
ことを特徴とする車体パネルシール構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車体パネルシール構造において、
前記開口は、前記第1パネルおよび第2パネルの一方にパネル端部に設けられた切り欠き状の開口であり、当該開口を介して他方のパネル端部が臨める
ことを特徴とする車体パネルシール構造。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の車体パネルシール構造において、
前記開口は、前記車内側シール部と前記車外側シールとを連続するシール部で埋められている
ことを特徴とする車体パネルシール構造。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate