説明

車体前部の補強構造

【課題】本発明の目的は、衝突の際に車体前部が受ける水平方向の荷重に対して十分な強度を確保しつつ、組付時の作業性も良く、コストも低減することが可能な車体前部の補強構造を提供することにある。
【解決手段】本発明においては、ダッシュパネル5とダッシュサイドパネル6とで形成された角部9に補強部材10を配置した車体前部の補強構造において、補強部材10は、角部9の近傍でダッシュパネル5とダッシュサイドパネル6との間に架け渡された本体部11と、本体部11の第1の端部11aにおいて車両上下方向に延在する第1の接続部12と、本体部11の第2の端部11bにおいて車両上下方向に延在する第2の接続部13とを備え、ダッシュパネル5と補強部材10の第1の接続部12とが、溶接により接合されるとともに、ダッシュサイドパネル6と補強部材10の第2の接続部13とが、溶接により接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部の補強構造に関し、詳しくは、車体前部に配設されたダッシュパネルと、ダッシュパネルの両端部に配設されたダッシュサイドパネルとで形成された角部における補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、衝突の際にダッシュパネル及びダッシュサイドパネルにかかる荷重を補強部材で受けることにより車体前部の変形を抑えるようにした車体前部の補強構造が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
図5は、従来の車体前部の補強構造の一例を示した断面図である。
図5に示すように、車体1の前部のフロントボデー21には、ダッシュパネル22が配設されており、ダッシュパネル22の車幅方向両端部には、車両前後方向に延びるダッシュサイドパネル23が配設されている。
【0004】
図5に示すように、ダッシュパネル22のフランジ部22aとダッシュサイドパネル23のフランジ部23aとは、スポット溶接により接合されている。また、ダッシュサイドパネル23の車幅方向外側には、サイドパネル24が配設されており、このサイドパネル24は、ダッシュパネル22のフランジ部22aとダッシュサイドパネル23のフランジ部23aとの接合部付近で接合されている。
【0005】
図5に示すように、ダッシュパネル22のフランジ部22aとダッシュサイドパネル23のフランジ部23aとで形成された角部25には、補強部材(ブレース)26が配置されている。補強部材26は、車両上下方向に幅を有するような板状部材で形成されており、角部25に沿ってL字状に湾曲して形成されている。
【0006】
図5に示すように、補強部材26のダッシュパネル22側の第1の端部26aは、第1の補強部品27を介してダッシュパネル22に取付けられている。ここで、補強部材26の第1の端部26aは、第1のボルト28と第1のナット32により第1の補強部品27に締結されている。
また、図5に示すように、補強部材26のダッシュサイドパネル23側の第2の端部26bは、第2の補強部品29を裏当てした状態で、第2のボルト30と第2のナット33によりダッシュサイドパネル23に締結されている。
【0007】
図5の従来の車体前部の補強構造の場合、以下のような手順で組付けが行われる。
まず、ダッシュパネル22のフランジ部22aとダッシュサイドパネル23のフランジ部23aとをスポット溶接により接合する。
次に、ダッシュパネル22のフランジ部22aとダッシュサイドパネル23のフランジ部23aとの接合部分にシーラー31を塗布する。
その後、補強部材26を第1のボルト28及び第1のナット32により第1の補強部品27に締結する。
最後に、補強部材26を第2のボルト30及び第2のナット33により締結する。
以上のような手順で従来の車体前部の補強構造の組付けが終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−154968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図5の従来の補強構造では、車体前部が衝突によって衝撃を受けた際に、補強部材26が水平方向に幅を有していないので、水平方向の荷重を十分に支えることができず、ダッシュパネル22及びダッシュサイドパネル23の強度が十分でなかったという問題があった。
【0010】
また、従来の補強構造では、シーラー31を塗装工程で塗るために、補強部品26を完成課で組み付ける必要があった。
更に、従来の補強構造の組付手順では、補強部材26は最後の完成課の工程で組付けられるので、ダッシュパネル22とダッシュサイドパネル23との間の結合剛性が確保されずに運搬や他の部品の組付けが行われることになる。したがって、運搬や他の部品の組付けの際に、ダッシュパネル22とダッシュサイドパネル23との間にズレ(第1及び第2のボルト28,30の位置の公差等)が生じ易くなる。
作業者は、ズレが生じた場合、完成課の工程においてズレを吸収しながら補強部材26の組付けを行わなければならず、また車室内に入っての作業性が悪いため、完成課の工程における作業者の負担が大きくなるという問題もあった。
【0011】
更に、従来では、第1及び第2のボルト28,30により補強部材26を固定する構成としているので、ダッシュパネル22等にボルト用の孔を直接設ける場合には、車室内への水や音の侵入を防止するために孔の位置にシール対策が必要となる。
一方、ダッシュパネル22等にボルト用の孔を直接設けない場合では、別部品(例えば、第1の補強部品27等)を介して補強部材26をダッシュパネル22に固定することになる。
したがって、従来のボルトを用いて補強部材26を固定する構成では、上述のいずれの場合でも、部品等のコストがかかるとともに、組付工数も多くなってしまうという問題があった。
また、補強部材26を完成課で取付けず、車体課で取付けてしまうと、ダッシュパネル22のフランジ部22aとダッシュサイドパネル23のフランジ部23aとの合わせ部分にシーラー31を塗布するために、ダッシュパネル22のフランジ部22aとダッシュサイドパネル23のフランジ部23aとの間にシーラー31を挟みこむなどの工夫が必要となり、設備の増加やコストの増加となる。
【0012】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、衝突の際に車体前部が受ける水平方向の荷重に対して十分な強度を確保しつつ、組付時の作業性も良く、塗装課においてシーラーを塗布することができ、コストも低減することが可能な車体前部の補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明によれば、車体前部に配設されたダッシュパネルと、該ダッシュパネルの車幅方向の両端部に配設されたダッシュサイドパネルとの間で形成された角部に補強部材を配置した車体前部の補強構造において、前記補強部材は、前記角部の近傍で前記ダッシュパネルと前記ダッシュサイドパネルとの間に架け渡され、水平方向に幅を有する板状の本体部と、該本体部の前記ダッシュパネル側の第1の端部において前記ダッシュパネルに沿って車両上下方向に延在する第1の接続部と、前記本体部の前記ダッシュサイドパネル側の第2の端部において前記ダッシュサイドパネルに沿って車両上下方向に延在する第2の接続部とを備え、前記ダッシュパネルと前記補強部材の前記第1の接続部とが、溶接により接合されるとともに、前記ダッシュサイドパネルと前記補強部材の前記第2の接続部とが、溶接により接合されている。
【0014】
また、本発明の別の実施態様によれば、前記ダッシュサイドパネルの車幅方向外側の側面には、前記補強部材の前記第2の接続部に対応する位置に車体のサイドパネルが延在しており、前記第2の接続部には、切欠部又は孔が形成されており、前記ダッシュサイドパネルと前記サイドパネルとが、前記第2の接続部の前記切欠部又は孔の位置で溶接により接合されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る車体前部の補強構造によれば、車体前部に配設されたダッシュパネルと、該ダッシュパネルの車幅方向の両端部に配設されたダッシュサイドパネルとの間で形成された角部に補強部材を配置した車体前部の補強構造において、前記補強部材は、前記角部の近傍で前記ダッシュパネルと前記ダッシュサイドパネルとの間に架け渡され、水平方向に幅を有する板状の本体部と、該本体部の前記ダッシュパネル側の第1の端部において前記ダッシュパネルに沿って車両上下方向に延在する第1の接続部と、前記本体部の前記ダッシュサイドパネル側の第2の端部において前記ダッシュサイドパネルに沿って車両上下方向に延在する第2の接続部とを備え、前記ダッシュパネルと前記補強部材の前記第1の接続部とが、溶接により接合されるとともに、前記ダッシュサイドパネルと前記補強部材の前記第2の接続部とが、溶接により接合されているので、衝突の際に車体前部が受ける水平方向の荷重を、角部に架け渡した水平方向に幅を有する本体部で支えることになり、水平方向の幅が狭い従来の補強部品に比べて水平方向の荷重に対する強度を高めることができる。
また、従来では、補強部材が最後の完成課の工程で組付けられるので、ダッシュパネルとダッシュサイドパネルとの間の結合剛性が確保されずに運搬や他の部品の組付けが行われ、精度の高い組み付けが難しくなるため、ダッシュパネルとダッシュサイドパネルとの間にズレが生じ易かった。これに対して、本発明によれば、補強部材の本体部が、水平方向に幅を有する板状に形成されているので、ダッシュパネルのフランジ部とダッシュサイドパネルのフランジ部との合わせ部分にシーラーを塗布することが可能となり、ダッシュパネルとダッシュサイドパネルと補強部材とを同時に接合することができる。これにより、後工程での運搬や他の部品の組付けの際にズレが生じることがない。
また、従来では、補強部材を取付ける際に、別部品(例えば、第1の補強部品等)を介して補強部材をダッシュパネルに固定していたが、本発明によれば、補強部材を直接ダッシュパネル等に溶接により固定できるので、ボルト等の部品を使用する必要がなくなり、コスト及び組付工数を低減することができる。
【0016】
また、本発明に係る車体前部の補強構造によれば、前記ダッシュサイドパネルの車幅方向外側の側面には、前記補強部材の前記第2の接続部に対応する位置に車体のサイドパネルが延在しており、前記第2の接続部には、切欠部又は孔が形成されており、前記ダッシュサイドパネルと前記サイドパネルとが、前記第2の接続部の前記切欠部又は孔の位置で溶接により接合されているので、衝突等により車体前部が衝撃を受けた場合、補強部材の第2の接続部にかかる荷重が、ダッシュサイドパネルとサイドパネルとの両方で支えられ、第2の接続部にかかる荷重をダッシュサイドパネルとサイドパネルの2つの部材で分散して受けることができる。これにより、第2の接続部にかかる荷重がダッシュサイドパネルに集中してかかることがなくなるので、ダッシュサイドパネル等の変形や後退などをより効果的に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る車体前部の補強構造を車室内側から見た斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車体前部の補強構造を上方から見た斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車体前部の補強構造を車室内側から見た図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】従来の車体前部の補強構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る車体前部の補強構造を、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る車体前部の補強構造を車室内側から見た斜視図であり、図2は、本発明の実施形態に係る車体前部の補強構造を上方から見た斜視図である。図3は、本発明の実施形態に係る車体前部の補強構造を車室内側から見た図であり、図4は、図3のA−A線断面図である。なお、図では、車体右側の部材を説明し、車体左側の部材については説明を省略する。
【0020】
図1及び図2に示すように、車体1の前部は、エンジン(図示せず)及びフロントサスペンション(図示せず)を支持するフロントボデー2と、フロントボデー2の後部の左右に連結されたサイドボデー3とを備えている。
【0021】
図1ないし図4に示すように、フロントボデー2は、エンジン室(図示せず)と車室4(図4参照)とを隔てるダッシュパネル5を備えている。このダッシュパネル5の車幅方向の両端部には、車両前後方向に延在するダッシュサイドパネル6が配設されている。
【0022】
図4に示すように、サイドボデー3は、ダッシュサイドパネル6に対して車幅方向外側に配設されている。サイドボデー3は、車室4側に配設されたサイドインナパネル7と、サイドインナパネル7の外側に配設されたサイドアウタパネル8とから構成されている。
【0023】
図3及び図4に示すように、ダッシュパネル5のフランジ部5aとダッシュサイドパネル6のフランジ部6aとの間で形成された角部9には、補強部材(ブレース)10が配設されている。
図1ないし図4に示すように、補強部材10は、角部9の近傍でダッシュパネル5とダッシュサイドパネル6との間に架け渡された本体部11と、本体部11のダッシュパネル5側の第1の端部11aにおいてダッシュパネル5に沿って下方に延在する第1の接続部12と、本体部11のダッシュサイドパネル6側の第2の端部11bにおいてダッシュサイドパネル6に沿って下方に延在する第2の接続部13とを備えている。
【0024】
図3及び図4に示すように、補強部材10の本体部11は、水平方向に幅を有する板状部材で形成されている。また、図4に示すように、本体部11は、第1の端部11aの近傍部分が幅広に形成されるとともに、第2の端部11bの近傍部分が幅広に形成されている。図4に示すように、本体部11の角部9側の第1の縁部11cは、切欠いて形成されている。また、本体部11の第1の縁部11cに対して反対側に位置する第2の縁部11dは、ダッシュパネル5とダッシュサイドパネル6とを斜めに結ぶように直線状に延びている。
【0025】
図3に示すように、補強部材10の第1の接続部12は、側面視で矩形形状に形成されている。一方、補強部材10の第2の接続部13も、側面視で矩形形状に形成されており、第2の接続部13の中央の位置には、接合用孔14が形成されている。
【0026】
図3及び図4に示すように、ダッシュパネル5のフランジ部5aとダッシュサイドパネル6のフランジ部6aとは、角部9の位置でスポット溶接により接合されている。また、ダッシュパネル5のフランジ部5aとダッシュサイドパネル6のフランジ部6aとの接合部には、車室4内への水や音の侵入を防止するためにシーラー15が塗布されている。
【0027】
また、図3に示すように、ダッシュパネル5と補強部材10の第1の接続部12とは、5点でスポット溶接されている。また、ダッシュサイドパネル6と補強部材10の第2の接続部13とは、接合用孔14を囲むように4点でスポット溶接されている。
【0028】
また、図4に示すように、ダッシュサイドパネル6の車幅方向外側の側面6bには、サイドインナパネル7のフランジ部7a及びサイドアウタパネル8のフランジ部8aが延在している。サイドインナパネル7のフランジ部7aとサイドアウタパネル8のフランジ部8aとは、補強部材10の第2の接続部13に対応する位置まで延在して互いに重なるように配置されている。図3及び図4に示すように、ダッシュサイドパネル6とサイドインナパネル7のフランジ部7aとサイドアウタパネル8のフランジ部8aの3枚が、第2の接続部13の接合用孔14の位置でスポット溶接により接合されている。
【0029】
次に、本発明の実施形態に係る車体前部の各部材を組付ける手順を、図面を用いて説明する。
【0030】
まず、図3及び図4に示すように、ダッシュパネル5のフランジ部5aとダッシュサイドパネル6のフランジ部6aとをスポット溶接により接合する。この際に、補強部材10もスポット溶接によりダッシュパネル5とダッシュサイドパネル6とに接合する。具体的には、補強部材10の第1の接続部12とダッシュパネル5とをスポット溶接により接合し、これと同時に、補強部材10の第2の接続部13とダッシュサイドパネル6とをスポット溶接により接合する。
次に、ダッシュサイドパネル6とサイドインナパネル7のフランジ部7aとサイドアウタパネル8のフランジ部8aの3枚を、第2の接続部13の接合用孔14の位置でスポット溶接により接合する。
最後に、ダッシュパネル5のフランジ部5aとダッシュサイドパネル6のフランジ部6aとの接合部にシーラー15を塗布する。この際、補強部材10が取付けられている箇所では、本体部11の第1の縁部11cの切欠形状を利用してシーラー15を塗布する。
以上の手順により、車体前部の各部材の組付けが完了する。
【0031】
このように本実施形態に係る車体前部の補強構造によれば、車体1の前部に配設されたダッシュパネル5と、ダッシュパネル5の車幅方向の両端部に配設されたダッシュサイドパネル6との間で形成された角部9に補強部材10を配置した車体前部の補強構造において、補強部材10は、角部9の近傍でダッシュパネル5とダッシュサイドパネル6との間に架け渡され、水平方向に幅を有する板状の本体部11と、本体部11のダッシュパネル5側の第1の端部11aにおいてダッシュパネル5に沿って下方に延在する第1の接続部12と、本体部11のダッシュサイドパネル6側の第2の端部11bにおいてダッシュサイドパネル6に沿って下方に延在する第2の接続部13とを備え、ダッシュパネル5と補強部材10の第1の接続部12とが、スポット溶接により接合されるとともに、ダッシュサイドパネル6と補強部材10の第2の接続部13とが、スポット溶接により接合されているので、衝突の際に車体前部が受ける水平方向の荷重を、角部9に架け渡した水平方向に幅を有する本体部11で支えることになり、水平方向の幅が狭い従来の補強部材に比べて水平方向の荷重に対する強度を高めることができる。
【0032】
また、図5の従来の例では、補強部材26が最後の完成課の工程で組付けられるので、ダッシュパネル22とダッシュサイドパネル23との間の結合剛性が確保されない場合があった。この状態で運搬や他の部品の組付けが行われ、ダッシュパネル22とダッシュサイドパネル23との間にズレが生じ易かった。
これに対して、本発明によれば、ダッシュパネル5とダッシュサイドパネル6とを接合する際に、補強部材10も同時に溶接により接合できるので、運搬や他の部品の組付けの際にズレが生じず、完成課の作業者の組付作業が不要となり、負担が軽減される。
【0033】
また、図5の従来の例では、補強部材26を取付ける際に、別部品(例えば、第1の補強部品27等)を介して補強部材26をダッシュパネル22に固定していた。
これに対して、本発明によれば、補強部材10を直接ダッシュパネル5等に溶接により固定できるので、別部品やボルト等を用いる必要がなくなり、コスト及び組付工数を低減することができる。
【0034】
また、本実施形態に係る車体前部の補強構造によれば、ダッシュサイドパネル6の車幅方向外側の側面6bには、補強部材10の第2の接続部13に対応する位置に車体1のサイドパネル3のサイドインナパネル7及びサイドアウタパネル8が延在しており、第2の接続部13には、接合用孔14が形成されており、ダッシュサイドパネル6とサイドインナパネル7のフランジ部7aとサイドアウタパネル8のフランジ部8aの3枚が、第2の接続部13の接合用孔14の位置でスポット溶接により接合されているので、衝突等により車体前部が衝撃を受けた場合、補強部材10の第2の接続部13にかかる荷重が、ダッシュサイドパネル6とサイドパネル3との両方で支えられ、第2の接続部13にかかる荷重をダッシュサイドパネル6とサイドパネル3の2つの部材で分散して受けることができる。これにより、第2の接続部13にかかる荷重がダッシュサイドパネル6に集中してかかることがなくなるので、ダッシュサイドパネ6ル等の変形や後退などをより効果的に防ぐことができる。
【0035】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものでなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【0036】
上述の実施形態では、補強部材10の第1の接続部12及び第2の接続部13が本体部11から下方に延在しているが、ダッシュパネル5やダッシュサイドパネル6に沿って延在していればよく、本体部11から上方に延在していてもよい。
【0037】
上述の実施形態では、第2の接続部13には、接合用孔14が形成されているが、孔に限定されず、切欠部を設けてもよい。
【0038】
上述の実施形態では、サイドパネル3のサイドインナパネル7及びサイドアウタパネル8を補強部材10の第2の接続部13に対応する位置まで延在させて、第2の接続部13の接合用孔14の位置でスポット溶接により接合しているが、サイドパネル3に限定されず、ダッシュパネル5やダッシュサイドパネル6の近傍にある他のパネルを補強部材10の第2の接続部13に対応する位置まで延在させて接合してもよい。
【0039】
上述の実施形態では、補強部材10をダッシュパネル5等に取付ける際は、スポット溶接により行っているが、COやレーザーによる溶接を用いてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 車体
2 フロントボデー
3 サイドボデー
4 車室
5 ダッシュパネル
6 ダッシュサイドパネル
7 サイドインナパネル
8 サイドアウタパネル
9 角部
10 補強部材
11 本体部
12 第1の接続部
13 第2の接続部
14 接合用孔
15 シーラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部に配設されたダッシュパネルと、該ダッシュパネルの車幅方向の両端部に配設されたダッシュサイドパネルとの間で形成された角部に補強部材を配置した車体前部の補強構造において、
前記補強部材は、
前記角部の近傍で前記ダッシュパネルと前記ダッシュサイドパネルとの間に架け渡され、水平方向に幅を有する板状の本体部と、
該本体部の前記ダッシュパネル側の第1の端部において前記ダッシュパネルに沿って車両上下方向に延在する第1の接続部と、
前記本体部の前記ダッシュサイドパネル側の第2の端部において前記ダッシュサイドパネルに沿って車両上下方向に延在する第2の接続部と
を備え、
前記ダッシュパネルと前記補強部材の前記第1の接続部とが、溶接により接合されるとともに、前記ダッシュサイドパネルと前記補強部材の前記第2の接続部とが、溶接により接合されていることを特徴とする車体前部の補強構造。
【請求項2】
前記ダッシュサイドパネルの車幅方向外側の側面には、前記補強部材の前記第2の接続部に対応する位置に車体のサイドパネルが延在しており、前記第2の接続部には、切欠部又は孔が形成されており、前記ダッシュサイドパネルと前記サイドパネルとが、前記第2の接続部の前記切欠部又は孔の位置で溶接により接合されていることを特徴とする請求項1に記載の車体前部の補強構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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