車体前部構造
【課題】製造コストを安価に抑えることができるとともに、必要に応じてリフレクタ部材を適正に設置することが可能な車体前部構造を提供する。
【解決手段】左右前輪のホイールハウス4の前縁部から車両の前方に向けて傾斜しつつ突出する車体前部意匠面がバンパフェイシャ3により形成された車体前部構造であって、上記バンパフェイシャ3の左右側方部には、車両の正面視および側面視で視認できる領域に側方開口部9が形成され、この側方開口部9の全部または一部がカバー部材10により覆われるとともに、このカバー部材10の車幅方向外方部に、リフレクタ部材26が車外側を指向した状態で取り付けられた。
【解決手段】左右前輪のホイールハウス4の前縁部から車両の前方に向けて傾斜しつつ突出する車体前部意匠面がバンパフェイシャ3により形成された車体前部構造であって、上記バンパフェイシャ3の左右側方部には、車両の正面視および側面視で視認できる領域に側方開口部9が形成され、この側方開口部9の全部または一部がカバー部材10により覆われるとともに、このカバー部材10の車幅方向外方部に、リフレクタ部材26が車外側を指向した状態で取り付けられた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部意匠面がバンパフェイシャにより形成された車体前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、車体の前面に装着されて、車体の前面から側面にかけて形成されるコーナ部の近傍に、走行風を車体側面から剥離させる剥離生成部がバンパ本体から突出されている車両用バンパにおいて、上記バンパ本体の左右端部に、バンパ表面から車体後方に向けて凹んだ凹部が、その車外側の端部を上記コーナ部の近傍に配置されて形成され、この凹部の車外側端部に、上記剥離生成部が凹部の底面から立ち上がってバンパ表面より突出して形成された構造とすることが行われている。
【特許文献1】特開2002−293206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示された車両用バンパでは、車両の前面に斜めから吹き付けた走行風がバンパ表面に沿って車両の側方へ回る際に、突形状の剥離生成部により乱流を生じさせて上記走行風が車体側面から剥離されることになるため、車両が横風を受けたときに車体を旋回させようとする走行負圧に応じたヨーイングモーメントが効率よく低減されることにより、車両の走行安定性を効果的に向上させることが可能である。
【0004】
しかし、上記のように車体の前面に設置されるバンパ本体からなるバンパフェイシャの左右両方部に形成されたフォグランプ用凹部の車外側端部等に剥離生成部を設けて車外側に突出させるように構成した場合には、車体の前面を覆うように設置される上記バンパフェイシャの形状が複雑化してその製造コストが高騰することが避けられないという問題がある。
【0005】
また、車体側面の前部位置を歩行者や他車の乗員等に認識させるためのリフレクタ部材を上記バンパフェイシャの側面部等に取り付けることが行われている。この場合には、上記リフレクタ部材を設置する必要がある車両の仕向け地(例えば米国)と、これを設置する必要がない仕向け地(例えば日本国内)とが存在するため、このリフレクタ部材を設置するための開口部が側端面に開穿されたバンパフェイシャと、この開口部のないバンパフェイシャと取り揃えなければならず、製造コストがさらに高騰するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、製造コストを安価に抑えることができるとともに、必要に応じてリフレクタ部材を適正に設置することが可能な車体前部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、左右前輪のホイールハウスの前縁部から車両の前方に向けて傾斜しつつ突出する車体前部意匠面がバンパフェイシャにより形成された車体前部構造であって、上記バンパフェイシャの左右側方部には、車両の正面視および側面視で視認できる領域に側方開口部が形成され、この側方開口部の全部または一部がカバー部材により覆われるとともに、このカバー部材の車幅方向外方部に、リフレクタ部材が車外側を指向した状態で取り付けられたものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車体前部構造において、カバー部材の車幅方向外方部が、上記側方開口部よりも車外側に位置するバンパフェイシャの側方傾斜面よりも急角度で車外側を指向するように傾斜しつつ、バンパフェイシャの左右側方部よりも車両の前方側に突出されるとともに、上記カバー部材の車幅方向外方部の車外側面に上記リフレクタ部材が取り付けられるように構成されたものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、上記請求項2に記載の車体前部構造において、上記バンパフェイシャに形成された側方開口部の枠内に、前面がレンズ面となった補助ランプが配設され、かつカバー部材には、上記レンズ面に合致したランプ設置孔が形成されるとともに、このカバー部材の車幅方向外方部が、補助ランプの本体部と側面視で重合してこれを隠蔽するように設置されたものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、上記請求項2または3に記載の車体前部構造において、上記側方開口部の外縁部が、円弧状に湾曲しつつ斜め後方に向けて立ち上がる上記ホイールハウスの前縁部に対応して斜め後方に切れ上がるように形成されるとともに、上記リフレクタ部材の車幅方向外側辺部が、上記側方開口部の外縁部に沿って設置されたものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、上記バンパフェイシャの側方開口部に設置されたカバー部材にリフレクタ部材を取り付けるように構成したため、このリフレクタ部材の取付部をバンパフェイシャに設けた場合のように、車体の側面にリフレクタ部材を設置する必要がある車両の仕向け地と、これを設置する必要がない仕向け地とで、バンパフェイシャの形状を変更することなく、必要に応じて上記リフレクタ部材を適正に設置することができる。したがって、車両の製造コストが高騰するのを防止しつつ、上記リフレクタ部材が車両の正面および側面の両方から視認可能なように設置された車体前部構造を容易に形成できるとともに、上記リフレクタ部材を省略し、かつ必要に応じて上記カバー部材の形状を一部変更するだけで、上記車体前部構造をリフレクタ部材を設ける必要がない仕向け地用に容易に変更できる等の利点がある。
【0012】
請求項2に係る発明では、カバー部材の車幅方向外方部を、上記側方開口部よりも車外側に位置するバンパフェイシャの左右側方部により構成された側方傾斜面よりも急角度で車外側を指向させるように傾斜させつつ、バンパフェイシャの左右側方部よりも車両の前方側に上記車幅方向外方部を突出させるとともに、この車幅方向外方部の車外側面に上記リフレクタ部材を取り付けるように構成したため、このリフレクタ部材の側面視における面積を充分に確保してリフレクタ部材の視認性を効果的に向上できるとともに、車両が横風を受けたときに車体を旋回させようとするヨーイングモーメントが生成されるのを効果的に抑制できるという利点がある。
【0013】
請求項3に係る発明では、バンパフェイシャに形成された側方開口部の枠内に、前面がレンズ面となった補助ランプを配設し、かつカバー部材に、上記レンズ面に合致したランプ設置孔を形成するとともに、カバー部材の車幅方向外方部を、補助ランプの本体部と側面視で重合させてこれを隠蔽するように設置したため、車両の前方に向けて光を照射する上記補助ランプと、外部から入射した光を反射する上記リフレクタ部材とを一個所にまとめて配設することにより、車体前部の外観をシンプルにして美観を効果的に向上できるという利点がある。
【0014】
請求項4に係る発明では、バンパフェイシャに形成された側方開口部の外縁部を、円弧状に湾曲しつつ斜め後方に向けて立ち上がるホイールハウスの前縁部に対応して斜め後方に切れ上がるように形成するとともに、上記側方開口部の外縁部に沿ってリフレクタ部材の車幅方向外側辺部を設置したため、車体前部のデザイン性を損なうことなく、大きな面積を有するリフレクタ部材を上記側方開口部内に設置してその視認性を効果的に確保できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1〜図4は、本発明に係る車体前部構造の実施形態を示している。この車体前部構造は、エンジンルームの上面を覆うように設置されるボンネットフード1と、前部車体の左右外側面部を構成するフロントフェンダパネル2と、このフロントフェンダパネル2の前方側に設置されて車体前部意匠面を構成するバンパフェイシャ3とを有している。上記フロントフェンダパネル2の前端部とバンパフェイシャ3の左右両側端部との間には、左右の前輪が設置部されるホイールハウス4に対応して円弧状に湾曲した開口部が形成されている。
【0016】
上記バンパフェイシャ3は、図3に示すように、中央部が車両の前方側に突出するとともに、左右の外側方部分が円弧状に湾曲しつつ、車幅方向の車体前端面Aに対して10°程度の傾斜角度θ1をもって車両の斜め後方側に延びる前面部5と、その左右両端部から円弧状に湾曲しつつ、上記車体前端面Aに対して20°〜50°程度の傾斜角度θ2をもって車両の斜め後方側に延びる左右側方部6とを有している。そして、上記バンパフェイシャ3の前面部5と、左右側方部6とにより、ホイールハウス4の前縁部から円弧状に傾斜しつつ車両の前方に向けて前突する車体前部意匠面が形成されている。
【0017】
上記バンパフェイシャ3の前面部5には、フロントグリル7を設置するための開口部8が車幅方向の中央部位に設けられている。また、上記バンパフェイシャ3の左右側方部6には、その車両の正面視および側面視において視認できる領域に側方開口部9が形成されるとともに、この側方開口部9を覆うカバー部材10が設置され、その上方部には、ヘッドランプユニット11の設置孔12が形成されている。
【0018】
上記バンパフェイシャ3の左右側方部6に形成された側方開口部9は、その外縁部9aが、円弧状に湾曲しつつ斜め後方側に向けて立ち上がる上記ホイールハウス4の前縁部13に対応して斜め後方に切れ上がるとともに、内縁部9bが内下がりに傾斜することにより、正面から見て猫の目形状に形成されている。また、上記側方開口部9の裏面側周縁部には、図5および図6に示すように、カバー部材10が係止される5個所のスリット孔14と、フォグランプ15からなる補助ランプを保持する後述のランプ保持枠16が係止される係止部17と、上記カバー部材10の位置決め孔18および取付孔19とを有するフランジ部20が設けられている。
【0019】
上記カバー部材10は、図7および図8に示すように、上記側方開口部9のスリット孔14に対応した係止部21が外周部の5個所に設けられるとともに、フォグランプ15のレンズ面に合致したランプ設置孔23が中央部に形成されたカバー本体22と、このランプ設置孔23の周縁部を被覆するように取り付けられる筒状のランプ支持部24とを有している。そして、上記ランプ支持部24がビスを介してカバー本体22に固定された状態で、カバー本体22の係止部21がバンパフェイシャ3の側方開口部9に形成されたスリット孔14に車体の前方側から挿入されて係止され、かつランプ支持部24の位置決めピン36が上記側面開口部9の位置決め孔18に挿入されるとともに、上記取付孔19を挿通した図外の固定ボルトがランプ支持部24の係止部37の螺着されることにより、上記ランプ設置孔23の設置部を除く側方開口部9の略全体が上記カバー部材10により覆われるように構成されている。
【0020】
上記カバー本体22の車幅方向外方部25は、上記側方開口部9よりも車外側に位置するバンパフェイシャ3の左右側方部6からなる側方傾斜面よりも急角度で車外側を指向するように傾斜しつつ、上記左右側方部6の車両の前方側に突設されるとともに、その車外側面にリフレクタ部材26が取り付けられるようになっている。
【0021】
すなわち、上記カバー本体22の車幅方向外方部25は、車幅方向の車体前端面Aに対する傾斜角度が70°〜80°程度に設定されるとともに、上記車幅方向外方部25の前端部がバンパフェイシャ3の左右側方部6よりも車体の前方側に位置するように突設されることにより、側面視で上記フォグランプ15の本体部と重合してこれを隠蔽するように設置されている。そして、上記車幅方向外方部25の車外側面を覆うようにリフレクタ部材26が取り付けられるように構成されている。
【0022】
上記フォグランプ15は、電球27およびその前方に配設されたレンズ28等を支持するランプリテーナ29からなるランプ本体と、このランプリテーナ29を保持するランプ保持枠16とを有し、上記フォグランプ15のランプ保持枠16が、ビス等を介して側方開口部9のフランジ部20に設けられた係止部17に固定されている。これにより上記ランプリテーナ29がランプ設置孔23およびランプ支持部24内に配設された状態で、上記側方開口部9の車幅方向中央側部位に、前面がレンズ面となったフォグランプ15が取り付けられるように構成されている。
【0023】
上記リフレクタ部材26は、図9〜図11に示すように、正面から見て下窄まりの略三角形状に形成された反射板30と、その裏面を覆う背面板31とを有し、外部から入射した光を上記反射板30によって反射するように構成されている。また、上記リフレクタ部材26の車幅方向外側辺部26aは、上記側方開口部9の外縁部9aに沿って斜め後方に切れ上がった状態で設置されている。さらに、上記背面板31の上方部には、発光ランプ32を保持する保持部33が裏面側に突設され、この発光ランプ32を点灯状態とすることにより、夜間等における上記反射板30の視認性が向上するようになっている。
【0024】
上記カバー本体22の車幅方向外方部25には、図12に示すように、リフレクタ部材26が設置されるリセス部(凹部)34と、上記発光ランプ32の保持部33が挿通される挿通孔35とが形成されている。この挿通孔35を介して発光ランプ32の保持部33がカバー部材10の内方側(エンジンルーム内側)に配設された状態で、上記リフレクタ部材26の背面板31がリセス部34に接着され、あるいはビス止めされる等により、上記カバー本体22の車幅方向外方部25の車外側面に、リフレクタ部材26が取り付けられるようになっている。
【0025】
本発明に係る車体前部を製造する場合には、まず図7に示すように、カバー本体22にランプ支持部24を取り付けるとともに、カバー本体22の車幅方向外方部25に上記リフレクタ部材26を取り付けてこれらを一体化する。その後、上記カバー本体22の係止部21を、バンパフェイシャ3の側方開口部9に形成されたスリット孔14に車体の前方側から挿入して係止することにより、上記側方開口部9をカバー部材10により覆うように取り付ける(図6参照)。
【0026】
次いで、図8に示すように、上記フォグランプ15のランプリテーナ29をランプ保持枠16に保持させた状態で、このランプ保持枠16を、上記バンパフェイシャ3の後方側からカバー部材10に固定することにより、上記ランプリテーナ29をランプ設置孔23およびランプ支持部24内に配設した状態で、上記側方開口部9の車幅方向中央側部位にフォグランプ15を取り付ける。
【0027】
上記のようにして左右前輪のホイールハウス4の前縁部から車両の前方に向けて傾斜しつつ突出する車体前部意匠面がバンパフェイシャ3により形成され、上記バンパフェイシャ3の左右側方部6には、車両の正面視および側面視において視認できる領域に側方開口部9が形成され、この側方開口部9がカバー部材10により覆われるとともに、このカバー部材10の車幅方向外方部25に、リフレクタ部材26が車外側を指向した状態で取り付けられることにより、製造コストを安価に抑えることができるとともに、必要に応じてリフレクタ部材26を適正に設置することが可能な車体前部構造が得られるという利点がある。
【0028】
すなわち、上記バンパフェイシャ3の側方開口部9に設置されたカバー部材10にリフレクタ部材26を取り付けるように構成した場合には、このリフレクタ部材26の取付部をバンパフェイシャ3に形成した場合のように、車体の側面にリフレクタ部材26を設置する必要がある車両の仕向け地(例えば米国)と、これを設置する必要がない仕向け地(例えば日本国内)とで、バンパフェイシャ3の形状を変更することなく、必要に応じて上記リフレクタ部材26を適正位置に設置することができる。したがって、車両の製造コストが高騰するのを防止しつつ、上記リフレクタ部材26が車両の正面および側面の両方から視認可能なように設置された車体前部構造を容易に形成できるとともに、上記リフレクタ部材26を省略し、かつ必要に応じて上記カバー部材10の形状を一部変更するだけで、上記リフレクタ部材26を設ける必要がない仕向け地用に上記車体前部構造を容易に変更できるという利点がある。
【0029】
また、上記実施形態では、カバー部材10の車幅方向外方部25を、上記側方開口部9よりも車外側に位置するバンパフェイシャ3の左右側方部6により構成された側方傾斜面よりも急角度で車外側を指向させるように傾斜させつつ、バンパフェイシャ3の左右側方部6よりも車両の前方側に上記車幅方向外方部25を突出させるとともに、この車幅方向外方部25の車外側面に上記リフレクタ部材26を取り付けるように構成したため、このリフレクタ部材26の側面視における面積を充分に確保してリフレクタ部材26の視認性を効果的に向上できるとともに、車両が横風を受けたときに車体を旋回させようとするヨーイングモーメントが生成されるのを効果的に抑制できるという利点がある。
【0030】
すなわち、図13に示すように、車両の前面に斜めから吹き付けた走行風Sがバンパフェイシャ3に沿って車両の側方へ回る際に、上記カバー部材10に設けられた車幅方向外方部25の前端部およびその外面に取り付けられたリフレクタ部材26に干渉して乱流Rを生じさせ上記走行風Sが車体側面から剥離されることになるため、車両が横風を受けたときに車体を旋回させようとする走行負圧に生じることに起因したヨーイングモーメントを効率よく低減することができる。したがって、簡単な構成で車両の走行安定性を効果的に向上できるという利点がある。
【0031】
また、上記走行風Sは、リフレクタ部材26の存在により車体側面から剥離する他、このリフレクタ部材26の上方、または下方を迂回して側面後方に流れる成分T・Uを発生することにより(図1および図4参照)、上記車体側面から剥離する走行風Sの流量が少なくなる。このことは、前輪用のホイールハウス4とタイヤとの隙間またはホイールのスポーク間から車外側に流れ出る流れと、上記剥離した走行風Sとがぶつかって車体側方に向かう流れを起こし、これが車両の後方で発生する渦Rを大型化させる要因となるため、車両の走行風空気抵抗(Cd値)を悪化させるというメカニズムを抑制できることを示している。
【0032】
なお、ヘッドランプの補助ランプとしての機能を有する上記フォグランプ15の設置部、つまり上記ランプ設置孔23の設置領域を除く上記側方開口部9の一部を、カバー部材10により覆うように構成された上記実施形態に代え、上記フォグランプ15を省略した車両において、上記側方開口部9の全部をカバー部材10により覆うように構成することも可能である。
【0033】
しかし、上記実施形態に示すように、バンパフェイシャ3に形成された側方開口部9の枠内に、前面がレンズ面となったフォグランプ15からなる補助ランプを配設し、かつカバー部材10に、上記レンズ面に合致したランプ設置孔23を形成するとともに、カバー部材10の車幅方向外方部25を、フォグランプ15の本体部(ランプリテーナ29)と側面視で重合させてこれを隠蔽するように設置した場合には、車両の前方に向けて光を照射する上記フォグランプ15と、外部から入射した光を反射する反射板30を備えた上記リフレクタ部材26とを一個所にまとめて配設することにより、車体前部の外観をシンプルにして美観を効果的に向上できるという利点がある。
【0034】
特に、上記実施形態に示すように、リフレクタ部材26の背面板31に発光ランプ32の保持部33を設け、上記バンパフェイシャ3の側方開口部9に発光ランプ32を配設するように構成した場合には、この発光ランプ32を上記フォグランプ15に近接させて配設することにより、これらのフォグランプ15および発光ランプ32に対するハーネスの配策を容易化できるとともに、発光ランプ32を夜間等に点灯状態として反射板30の視認性を効果的に向上できるという利点がある。
【0035】
なお、上記発光ランプ32およびその保持部33を省略し、図14および図15に示すように、反射板33と、その裏面を覆う偏平な裏面板38とによりリフレクタ部材26を構成してもよい。このように構成した場合には、上記発光ランプ32の保持部33が挿通される挿通孔35を上記カバー本体22の車幅方向外方部25に形成する必要がないので、車体側面の前後にリフレクタ部材26を設置する必要がある車両の仕向け地(例えば米国)と、これを設置する必要がない仕向け地(例えば日本国内)とで、上記カバー部材10を共通化することにより、その製造コストを効果的に低減できるという利点がある。特に、図16に示すように、カバー本体22にリフレクタ部材26を設置するためのリセス部34を省略した構造とすることにより、カバー部材10の構造を簡略してその製造コストを効果的に低減することができる。
【0036】
また、上記実施形態では、バンパフェイシャ3に形成された側方開口部9の外縁部9bを、円弧状に湾曲しつつ斜め後方に向けて立ち上がる上記ホイールハウス4の前縁部13に対応して斜め後方に切れ上がるように形成するとともに、上記側方開口部9の外縁部9bに沿ってリフレクタ部材26の車幅方向外側辺部26aを設置したため、車体前部のデザイン性を損なうことなく、大きな面積を有するリフレクタ部材26を上記側方開口部9内に設置してその視認性を効果的に確保できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る車体前部構造の実施形態を示す斜視図である。
【図2】車体前部構造の正面図である。
【図3】車体前部構造の平面図である。
【図4】車体前部構造の側面図である。
【図5】側方開口部を背面から見た状態を示す説明図である。
【図6】カバー部材の取付状態を示す図5相当図である。
【図7】カバー部材の具体的構成を示す図5相当図である。
【図8】カバー部材の取付状態を示す平面断面図である。
【図9】リフレクタ部材の具体的構成を示す斜視図である。
【図10】リフレクタ部材の具体的構成を示す断面図である。
【図11】リフレクタ部材の取り付け状態を示す斜視図である。
【図12】カバー部材を正面から見た状態を示す斜視図である。
【図13】本発明に係る車体前部構造の作用を示す平面断面図である。
【図14】リフレクタ部材の他の例を示す斜視図である。
【図15】リフレクタ部材の他の例を示す平面断面図である。
【図16】カバー部材の他の例を示す図11相当図である。
【符号の説明】
【0038】
3 バンパフェイシャ
4 ホイールハウス
6 左右側方部
9 側方開口部
10 カバー部材
15 フォグランプ(補助ランプ)
23 ランプ設置孔
25 車幅方向外方部
26 リフレクタ部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部意匠面がバンパフェイシャにより形成された車体前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、車体の前面に装着されて、車体の前面から側面にかけて形成されるコーナ部の近傍に、走行風を車体側面から剥離させる剥離生成部がバンパ本体から突出されている車両用バンパにおいて、上記バンパ本体の左右端部に、バンパ表面から車体後方に向けて凹んだ凹部が、その車外側の端部を上記コーナ部の近傍に配置されて形成され、この凹部の車外側端部に、上記剥離生成部が凹部の底面から立ち上がってバンパ表面より突出して形成された構造とすることが行われている。
【特許文献1】特開2002−293206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示された車両用バンパでは、車両の前面に斜めから吹き付けた走行風がバンパ表面に沿って車両の側方へ回る際に、突形状の剥離生成部により乱流を生じさせて上記走行風が車体側面から剥離されることになるため、車両が横風を受けたときに車体を旋回させようとする走行負圧に応じたヨーイングモーメントが効率よく低減されることにより、車両の走行安定性を効果的に向上させることが可能である。
【0004】
しかし、上記のように車体の前面に設置されるバンパ本体からなるバンパフェイシャの左右両方部に形成されたフォグランプ用凹部の車外側端部等に剥離生成部を設けて車外側に突出させるように構成した場合には、車体の前面を覆うように設置される上記バンパフェイシャの形状が複雑化してその製造コストが高騰することが避けられないという問題がある。
【0005】
また、車体側面の前部位置を歩行者や他車の乗員等に認識させるためのリフレクタ部材を上記バンパフェイシャの側面部等に取り付けることが行われている。この場合には、上記リフレクタ部材を設置する必要がある車両の仕向け地(例えば米国)と、これを設置する必要がない仕向け地(例えば日本国内)とが存在するため、このリフレクタ部材を設置するための開口部が側端面に開穿されたバンパフェイシャと、この開口部のないバンパフェイシャと取り揃えなければならず、製造コストがさらに高騰するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、製造コストを安価に抑えることができるとともに、必要に応じてリフレクタ部材を適正に設置することが可能な車体前部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、左右前輪のホイールハウスの前縁部から車両の前方に向けて傾斜しつつ突出する車体前部意匠面がバンパフェイシャにより形成された車体前部構造であって、上記バンパフェイシャの左右側方部には、車両の正面視および側面視で視認できる領域に側方開口部が形成され、この側方開口部の全部または一部がカバー部材により覆われるとともに、このカバー部材の車幅方向外方部に、リフレクタ部材が車外側を指向した状態で取り付けられたものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車体前部構造において、カバー部材の車幅方向外方部が、上記側方開口部よりも車外側に位置するバンパフェイシャの側方傾斜面よりも急角度で車外側を指向するように傾斜しつつ、バンパフェイシャの左右側方部よりも車両の前方側に突出されるとともに、上記カバー部材の車幅方向外方部の車外側面に上記リフレクタ部材が取り付けられるように構成されたものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、上記請求項2に記載の車体前部構造において、上記バンパフェイシャに形成された側方開口部の枠内に、前面がレンズ面となった補助ランプが配設され、かつカバー部材には、上記レンズ面に合致したランプ設置孔が形成されるとともに、このカバー部材の車幅方向外方部が、補助ランプの本体部と側面視で重合してこれを隠蔽するように設置されたものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、上記請求項2または3に記載の車体前部構造において、上記側方開口部の外縁部が、円弧状に湾曲しつつ斜め後方に向けて立ち上がる上記ホイールハウスの前縁部に対応して斜め後方に切れ上がるように形成されるとともに、上記リフレクタ部材の車幅方向外側辺部が、上記側方開口部の外縁部に沿って設置されたものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、上記バンパフェイシャの側方開口部に設置されたカバー部材にリフレクタ部材を取り付けるように構成したため、このリフレクタ部材の取付部をバンパフェイシャに設けた場合のように、車体の側面にリフレクタ部材を設置する必要がある車両の仕向け地と、これを設置する必要がない仕向け地とで、バンパフェイシャの形状を変更することなく、必要に応じて上記リフレクタ部材を適正に設置することができる。したがって、車両の製造コストが高騰するのを防止しつつ、上記リフレクタ部材が車両の正面および側面の両方から視認可能なように設置された車体前部構造を容易に形成できるとともに、上記リフレクタ部材を省略し、かつ必要に応じて上記カバー部材の形状を一部変更するだけで、上記車体前部構造をリフレクタ部材を設ける必要がない仕向け地用に容易に変更できる等の利点がある。
【0012】
請求項2に係る発明では、カバー部材の車幅方向外方部を、上記側方開口部よりも車外側に位置するバンパフェイシャの左右側方部により構成された側方傾斜面よりも急角度で車外側を指向させるように傾斜させつつ、バンパフェイシャの左右側方部よりも車両の前方側に上記車幅方向外方部を突出させるとともに、この車幅方向外方部の車外側面に上記リフレクタ部材を取り付けるように構成したため、このリフレクタ部材の側面視における面積を充分に確保してリフレクタ部材の視認性を効果的に向上できるとともに、車両が横風を受けたときに車体を旋回させようとするヨーイングモーメントが生成されるのを効果的に抑制できるという利点がある。
【0013】
請求項3に係る発明では、バンパフェイシャに形成された側方開口部の枠内に、前面がレンズ面となった補助ランプを配設し、かつカバー部材に、上記レンズ面に合致したランプ設置孔を形成するとともに、カバー部材の車幅方向外方部を、補助ランプの本体部と側面視で重合させてこれを隠蔽するように設置したため、車両の前方に向けて光を照射する上記補助ランプと、外部から入射した光を反射する上記リフレクタ部材とを一個所にまとめて配設することにより、車体前部の外観をシンプルにして美観を効果的に向上できるという利点がある。
【0014】
請求項4に係る発明では、バンパフェイシャに形成された側方開口部の外縁部を、円弧状に湾曲しつつ斜め後方に向けて立ち上がるホイールハウスの前縁部に対応して斜め後方に切れ上がるように形成するとともに、上記側方開口部の外縁部に沿ってリフレクタ部材の車幅方向外側辺部を設置したため、車体前部のデザイン性を損なうことなく、大きな面積を有するリフレクタ部材を上記側方開口部内に設置してその視認性を効果的に確保できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1〜図4は、本発明に係る車体前部構造の実施形態を示している。この車体前部構造は、エンジンルームの上面を覆うように設置されるボンネットフード1と、前部車体の左右外側面部を構成するフロントフェンダパネル2と、このフロントフェンダパネル2の前方側に設置されて車体前部意匠面を構成するバンパフェイシャ3とを有している。上記フロントフェンダパネル2の前端部とバンパフェイシャ3の左右両側端部との間には、左右の前輪が設置部されるホイールハウス4に対応して円弧状に湾曲した開口部が形成されている。
【0016】
上記バンパフェイシャ3は、図3に示すように、中央部が車両の前方側に突出するとともに、左右の外側方部分が円弧状に湾曲しつつ、車幅方向の車体前端面Aに対して10°程度の傾斜角度θ1をもって車両の斜め後方側に延びる前面部5と、その左右両端部から円弧状に湾曲しつつ、上記車体前端面Aに対して20°〜50°程度の傾斜角度θ2をもって車両の斜め後方側に延びる左右側方部6とを有している。そして、上記バンパフェイシャ3の前面部5と、左右側方部6とにより、ホイールハウス4の前縁部から円弧状に傾斜しつつ車両の前方に向けて前突する車体前部意匠面が形成されている。
【0017】
上記バンパフェイシャ3の前面部5には、フロントグリル7を設置するための開口部8が車幅方向の中央部位に設けられている。また、上記バンパフェイシャ3の左右側方部6には、その車両の正面視および側面視において視認できる領域に側方開口部9が形成されるとともに、この側方開口部9を覆うカバー部材10が設置され、その上方部には、ヘッドランプユニット11の設置孔12が形成されている。
【0018】
上記バンパフェイシャ3の左右側方部6に形成された側方開口部9は、その外縁部9aが、円弧状に湾曲しつつ斜め後方側に向けて立ち上がる上記ホイールハウス4の前縁部13に対応して斜め後方に切れ上がるとともに、内縁部9bが内下がりに傾斜することにより、正面から見て猫の目形状に形成されている。また、上記側方開口部9の裏面側周縁部には、図5および図6に示すように、カバー部材10が係止される5個所のスリット孔14と、フォグランプ15からなる補助ランプを保持する後述のランプ保持枠16が係止される係止部17と、上記カバー部材10の位置決め孔18および取付孔19とを有するフランジ部20が設けられている。
【0019】
上記カバー部材10は、図7および図8に示すように、上記側方開口部9のスリット孔14に対応した係止部21が外周部の5個所に設けられるとともに、フォグランプ15のレンズ面に合致したランプ設置孔23が中央部に形成されたカバー本体22と、このランプ設置孔23の周縁部を被覆するように取り付けられる筒状のランプ支持部24とを有している。そして、上記ランプ支持部24がビスを介してカバー本体22に固定された状態で、カバー本体22の係止部21がバンパフェイシャ3の側方開口部9に形成されたスリット孔14に車体の前方側から挿入されて係止され、かつランプ支持部24の位置決めピン36が上記側面開口部9の位置決め孔18に挿入されるとともに、上記取付孔19を挿通した図外の固定ボルトがランプ支持部24の係止部37の螺着されることにより、上記ランプ設置孔23の設置部を除く側方開口部9の略全体が上記カバー部材10により覆われるように構成されている。
【0020】
上記カバー本体22の車幅方向外方部25は、上記側方開口部9よりも車外側に位置するバンパフェイシャ3の左右側方部6からなる側方傾斜面よりも急角度で車外側を指向するように傾斜しつつ、上記左右側方部6の車両の前方側に突設されるとともに、その車外側面にリフレクタ部材26が取り付けられるようになっている。
【0021】
すなわち、上記カバー本体22の車幅方向外方部25は、車幅方向の車体前端面Aに対する傾斜角度が70°〜80°程度に設定されるとともに、上記車幅方向外方部25の前端部がバンパフェイシャ3の左右側方部6よりも車体の前方側に位置するように突設されることにより、側面視で上記フォグランプ15の本体部と重合してこれを隠蔽するように設置されている。そして、上記車幅方向外方部25の車外側面を覆うようにリフレクタ部材26が取り付けられるように構成されている。
【0022】
上記フォグランプ15は、電球27およびその前方に配設されたレンズ28等を支持するランプリテーナ29からなるランプ本体と、このランプリテーナ29を保持するランプ保持枠16とを有し、上記フォグランプ15のランプ保持枠16が、ビス等を介して側方開口部9のフランジ部20に設けられた係止部17に固定されている。これにより上記ランプリテーナ29がランプ設置孔23およびランプ支持部24内に配設された状態で、上記側方開口部9の車幅方向中央側部位に、前面がレンズ面となったフォグランプ15が取り付けられるように構成されている。
【0023】
上記リフレクタ部材26は、図9〜図11に示すように、正面から見て下窄まりの略三角形状に形成された反射板30と、その裏面を覆う背面板31とを有し、外部から入射した光を上記反射板30によって反射するように構成されている。また、上記リフレクタ部材26の車幅方向外側辺部26aは、上記側方開口部9の外縁部9aに沿って斜め後方に切れ上がった状態で設置されている。さらに、上記背面板31の上方部には、発光ランプ32を保持する保持部33が裏面側に突設され、この発光ランプ32を点灯状態とすることにより、夜間等における上記反射板30の視認性が向上するようになっている。
【0024】
上記カバー本体22の車幅方向外方部25には、図12に示すように、リフレクタ部材26が設置されるリセス部(凹部)34と、上記発光ランプ32の保持部33が挿通される挿通孔35とが形成されている。この挿通孔35を介して発光ランプ32の保持部33がカバー部材10の内方側(エンジンルーム内側)に配設された状態で、上記リフレクタ部材26の背面板31がリセス部34に接着され、あるいはビス止めされる等により、上記カバー本体22の車幅方向外方部25の車外側面に、リフレクタ部材26が取り付けられるようになっている。
【0025】
本発明に係る車体前部を製造する場合には、まず図7に示すように、カバー本体22にランプ支持部24を取り付けるとともに、カバー本体22の車幅方向外方部25に上記リフレクタ部材26を取り付けてこれらを一体化する。その後、上記カバー本体22の係止部21を、バンパフェイシャ3の側方開口部9に形成されたスリット孔14に車体の前方側から挿入して係止することにより、上記側方開口部9をカバー部材10により覆うように取り付ける(図6参照)。
【0026】
次いで、図8に示すように、上記フォグランプ15のランプリテーナ29をランプ保持枠16に保持させた状態で、このランプ保持枠16を、上記バンパフェイシャ3の後方側からカバー部材10に固定することにより、上記ランプリテーナ29をランプ設置孔23およびランプ支持部24内に配設した状態で、上記側方開口部9の車幅方向中央側部位にフォグランプ15を取り付ける。
【0027】
上記のようにして左右前輪のホイールハウス4の前縁部から車両の前方に向けて傾斜しつつ突出する車体前部意匠面がバンパフェイシャ3により形成され、上記バンパフェイシャ3の左右側方部6には、車両の正面視および側面視において視認できる領域に側方開口部9が形成され、この側方開口部9がカバー部材10により覆われるとともに、このカバー部材10の車幅方向外方部25に、リフレクタ部材26が車外側を指向した状態で取り付けられることにより、製造コストを安価に抑えることができるとともに、必要に応じてリフレクタ部材26を適正に設置することが可能な車体前部構造が得られるという利点がある。
【0028】
すなわち、上記バンパフェイシャ3の側方開口部9に設置されたカバー部材10にリフレクタ部材26を取り付けるように構成した場合には、このリフレクタ部材26の取付部をバンパフェイシャ3に形成した場合のように、車体の側面にリフレクタ部材26を設置する必要がある車両の仕向け地(例えば米国)と、これを設置する必要がない仕向け地(例えば日本国内)とで、バンパフェイシャ3の形状を変更することなく、必要に応じて上記リフレクタ部材26を適正位置に設置することができる。したがって、車両の製造コストが高騰するのを防止しつつ、上記リフレクタ部材26が車両の正面および側面の両方から視認可能なように設置された車体前部構造を容易に形成できるとともに、上記リフレクタ部材26を省略し、かつ必要に応じて上記カバー部材10の形状を一部変更するだけで、上記リフレクタ部材26を設ける必要がない仕向け地用に上記車体前部構造を容易に変更できるという利点がある。
【0029】
また、上記実施形態では、カバー部材10の車幅方向外方部25を、上記側方開口部9よりも車外側に位置するバンパフェイシャ3の左右側方部6により構成された側方傾斜面よりも急角度で車外側を指向させるように傾斜させつつ、バンパフェイシャ3の左右側方部6よりも車両の前方側に上記車幅方向外方部25を突出させるとともに、この車幅方向外方部25の車外側面に上記リフレクタ部材26を取り付けるように構成したため、このリフレクタ部材26の側面視における面積を充分に確保してリフレクタ部材26の視認性を効果的に向上できるとともに、車両が横風を受けたときに車体を旋回させようとするヨーイングモーメントが生成されるのを効果的に抑制できるという利点がある。
【0030】
すなわち、図13に示すように、車両の前面に斜めから吹き付けた走行風Sがバンパフェイシャ3に沿って車両の側方へ回る際に、上記カバー部材10に設けられた車幅方向外方部25の前端部およびその外面に取り付けられたリフレクタ部材26に干渉して乱流Rを生じさせ上記走行風Sが車体側面から剥離されることになるため、車両が横風を受けたときに車体を旋回させようとする走行負圧に生じることに起因したヨーイングモーメントを効率よく低減することができる。したがって、簡単な構成で車両の走行安定性を効果的に向上できるという利点がある。
【0031】
また、上記走行風Sは、リフレクタ部材26の存在により車体側面から剥離する他、このリフレクタ部材26の上方、または下方を迂回して側面後方に流れる成分T・Uを発生することにより(図1および図4参照)、上記車体側面から剥離する走行風Sの流量が少なくなる。このことは、前輪用のホイールハウス4とタイヤとの隙間またはホイールのスポーク間から車外側に流れ出る流れと、上記剥離した走行風Sとがぶつかって車体側方に向かう流れを起こし、これが車両の後方で発生する渦Rを大型化させる要因となるため、車両の走行風空気抵抗(Cd値)を悪化させるというメカニズムを抑制できることを示している。
【0032】
なお、ヘッドランプの補助ランプとしての機能を有する上記フォグランプ15の設置部、つまり上記ランプ設置孔23の設置領域を除く上記側方開口部9の一部を、カバー部材10により覆うように構成された上記実施形態に代え、上記フォグランプ15を省略した車両において、上記側方開口部9の全部をカバー部材10により覆うように構成することも可能である。
【0033】
しかし、上記実施形態に示すように、バンパフェイシャ3に形成された側方開口部9の枠内に、前面がレンズ面となったフォグランプ15からなる補助ランプを配設し、かつカバー部材10に、上記レンズ面に合致したランプ設置孔23を形成するとともに、カバー部材10の車幅方向外方部25を、フォグランプ15の本体部(ランプリテーナ29)と側面視で重合させてこれを隠蔽するように設置した場合には、車両の前方に向けて光を照射する上記フォグランプ15と、外部から入射した光を反射する反射板30を備えた上記リフレクタ部材26とを一個所にまとめて配設することにより、車体前部の外観をシンプルにして美観を効果的に向上できるという利点がある。
【0034】
特に、上記実施形態に示すように、リフレクタ部材26の背面板31に発光ランプ32の保持部33を設け、上記バンパフェイシャ3の側方開口部9に発光ランプ32を配設するように構成した場合には、この発光ランプ32を上記フォグランプ15に近接させて配設することにより、これらのフォグランプ15および発光ランプ32に対するハーネスの配策を容易化できるとともに、発光ランプ32を夜間等に点灯状態として反射板30の視認性を効果的に向上できるという利点がある。
【0035】
なお、上記発光ランプ32およびその保持部33を省略し、図14および図15に示すように、反射板33と、その裏面を覆う偏平な裏面板38とによりリフレクタ部材26を構成してもよい。このように構成した場合には、上記発光ランプ32の保持部33が挿通される挿通孔35を上記カバー本体22の車幅方向外方部25に形成する必要がないので、車体側面の前後にリフレクタ部材26を設置する必要がある車両の仕向け地(例えば米国)と、これを設置する必要がない仕向け地(例えば日本国内)とで、上記カバー部材10を共通化することにより、その製造コストを効果的に低減できるという利点がある。特に、図16に示すように、カバー本体22にリフレクタ部材26を設置するためのリセス部34を省略した構造とすることにより、カバー部材10の構造を簡略してその製造コストを効果的に低減することができる。
【0036】
また、上記実施形態では、バンパフェイシャ3に形成された側方開口部9の外縁部9bを、円弧状に湾曲しつつ斜め後方に向けて立ち上がる上記ホイールハウス4の前縁部13に対応して斜め後方に切れ上がるように形成するとともに、上記側方開口部9の外縁部9bに沿ってリフレクタ部材26の車幅方向外側辺部26aを設置したため、車体前部のデザイン性を損なうことなく、大きな面積を有するリフレクタ部材26を上記側方開口部9内に設置してその視認性を効果的に確保できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る車体前部構造の実施形態を示す斜視図である。
【図2】車体前部構造の正面図である。
【図3】車体前部構造の平面図である。
【図4】車体前部構造の側面図である。
【図5】側方開口部を背面から見た状態を示す説明図である。
【図6】カバー部材の取付状態を示す図5相当図である。
【図7】カバー部材の具体的構成を示す図5相当図である。
【図8】カバー部材の取付状態を示す平面断面図である。
【図9】リフレクタ部材の具体的構成を示す斜視図である。
【図10】リフレクタ部材の具体的構成を示す断面図である。
【図11】リフレクタ部材の取り付け状態を示す斜視図である。
【図12】カバー部材を正面から見た状態を示す斜視図である。
【図13】本発明に係る車体前部構造の作用を示す平面断面図である。
【図14】リフレクタ部材の他の例を示す斜視図である。
【図15】リフレクタ部材の他の例を示す平面断面図である。
【図16】カバー部材の他の例を示す図11相当図である。
【符号の説明】
【0038】
3 バンパフェイシャ
4 ホイールハウス
6 左右側方部
9 側方開口部
10 カバー部材
15 フォグランプ(補助ランプ)
23 ランプ設置孔
25 車幅方向外方部
26 リフレクタ部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右前輪のホイールハウスの前縁部から車両の前方に向けて傾斜しつつ突出する車体前部意匠面がバンパフェイシャにより形成された車体前部構造であって、上記バンパフェイシャの左右側方部には、車両の正面視および側面視で視認できる領域に側方開口部が形成され、この側方開口部の全部または一部がカバー部材により覆われるとともに、このカバー部材の車幅方向外方部に、リフレクタ部材が車外側を指向した状態で取り付けられたことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
カバー部材の車幅方向外方部が、上記側方開口部よりも車外側に位置するバンパフェイシャの側方傾斜面よりも急角度で車外側を指向するように傾斜しつつ、バンパフェイシャの左右側方部よりも車両の前方側に突出されるとともに、上記カバー部材の車幅方向外方部の車外側面に上記リフレクタ部材が取り付けられるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
上記バンパフェイシャに形成された側方開口部の枠内に、前面がレンズ面となった補助ランプが配設され、かつカバー部材には、上記レンズ面に合致したランプ設置孔が形成されるとともに、このカバー部材の車幅方向外方部が、補助ランプの本体部と側面視で重合してこれを隠蔽するように設置されたことを特徴とする請求項2に記載の車体前部構造。
【請求項4】
上記側方開口部の外縁部は、円弧状に湾曲しつつ斜め後方に向けて立ち上がる上記ホイールハウスの前縁部に対応して斜め後方に切れ上がるように形成されるとともに、上記リフレクタ部材の車幅方向外側辺部が、上記側方開口部の外縁部に沿って設置されたことを特徴とする請求項2または3に記載の車体前部構造。
【請求項1】
左右前輪のホイールハウスの前縁部から車両の前方に向けて傾斜しつつ突出する車体前部意匠面がバンパフェイシャにより形成された車体前部構造であって、上記バンパフェイシャの左右側方部には、車両の正面視および側面視で視認できる領域に側方開口部が形成され、この側方開口部の全部または一部がカバー部材により覆われるとともに、このカバー部材の車幅方向外方部に、リフレクタ部材が車外側を指向した状態で取り付けられたことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
カバー部材の車幅方向外方部が、上記側方開口部よりも車外側に位置するバンパフェイシャの側方傾斜面よりも急角度で車外側を指向するように傾斜しつつ、バンパフェイシャの左右側方部よりも車両の前方側に突出されるとともに、上記カバー部材の車幅方向外方部の車外側面に上記リフレクタ部材が取り付けられるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
上記バンパフェイシャに形成された側方開口部の枠内に、前面がレンズ面となった補助ランプが配設され、かつカバー部材には、上記レンズ面に合致したランプ設置孔が形成されるとともに、このカバー部材の車幅方向外方部が、補助ランプの本体部と側面視で重合してこれを隠蔽するように設置されたことを特徴とする請求項2に記載の車体前部構造。
【請求項4】
上記側方開口部の外縁部は、円弧状に湾曲しつつ斜め後方に向けて立ち上がる上記ホイールハウスの前縁部に対応して斜め後方に切れ上がるように形成されるとともに、上記リフレクタ部材の車幅方向外側辺部が、上記側方開口部の外縁部に沿って設置されたことを特徴とする請求項2または3に記載の車体前部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−12927(P2010−12927A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174423(P2008−174423)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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