説明

車体骨格構造

【課題】少なくとも2枚の鋼板をレーザー溶接する際、その鋼板の意匠面に歪みが発生するのを抑制又は防止できる車体骨格構造の提供を課題とする。
【解決手段】本体部22、32と本体部22、32の端部に一体に形成されたフランジ部26、36とを有し、互いのフランジ部26、36がレーザー溶接されることで車体の骨格をなす少なくとも2枚の鋼板20、30と、フランジ部36の本体部32との境界部分に曲げにより形成され、フランジ部36の先端部36Aが当接する相手方フランジ部26との間に断面視略三角形状の間隙Sを設けるビード部38と、を備えた車体骨格構造10であって、ビード部38が形成されたフランジ部36を有する鋼板30を、そのフランジ部36の先端部36A及びビード部38が相手方フランジ部26に当接した状態で、そのフランジ部36と本体部32とでなす角度αが当接前よりも小さくなるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体骨格構造に関する。
【背景技術】
【0002】
2枚のメッキ鋼板同士をレーザー溶接する際、少なくとも片方のメッキ鋼板に突起部を設け、メッキ鋼板同士を重ね合わせて、クランプ部材によって圧接したときに、そのメッキ鋼板同士の間に断面視略三角形状の間隙を形成し、レーザー溶接時に発生する金属蒸気を、その間隙から逃がすようにした構造は、従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−162388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、重ね合わされた2枚の鋼板の位置がずれないように、その鋼板同士をクランプ部材で圧接させているため、そのクランプ部材の押圧力によって、鋼板の意匠面に歪みが発生するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、少なくとも2枚の鋼板をレーザー溶接する際、その鋼板の意匠面に歪みが発生するのを抑制又は防止できる車体骨格構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の車体骨格構造は、本体部と該本体部の端部に一体に形成されたフランジ部とを有し、互いのフランジ部がレーザー溶接されることで車体の骨格をなす少なくとも2枚の鋼板と、前記各鋼板のフランジ部のうち、少なくとも1つのフランジ部の前記本体部との境界部分に曲げにより形成され、該フランジ部の先端部が当接する相手方フランジ部との間に断面視略三角形状の間隙を設けるビード部と、を備え、前記ビード部が形成されたフランジ部を有する鋼板が、該フランジ部の先端部及び該ビード部が前記相手方フランジ部に当接した状態で、該フランジ部と前記本体部とでなす角度が当接前よりも小さくなるように構成されていることを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、ビード部が形成されているフランジ部は、そのビード部を曲げ起点として圧接方向とは反対方向に曲がり易くなるため、そのフランジ部を相手方フランジ部に当接させてレーザー溶接する際、そのフランジ部は相手方フランジ部に所望とする圧力で当接できる。したがって、両者を圧接させるためのクランプ部材の数量を低減することができ、鋼板の意匠面に歪みが発生するのを抑制又は防止することができる。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、少なくとも2枚の鋼板をレーザー溶接する際、その鋼板の意匠面に歪みが発生するのを抑制又は防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ルーフサイドレールの断面箇所を示す車両の概略斜視図
【図2】レーザー溶接後の第1実施例に係るルーフサイドレールを示す概略側断面図
【図3】レーザー溶接前の第1実施例に係るルーフサイドレールを示す概略側断面図
【図4】第2実施例に係るルーフサイドレールを示す概略側断面図
【図5】第3実施例に係るルーフサイドレールを示す概略側断面図
【図6】第4実施例に係るルーフサイドレールを示す概略側断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面に示す実施例を基に詳細に説明する。なお、各図において、車体上方向を矢印UP、車体前方向を矢印FRで示し、車幅方向内側を矢印INで示す。また、本実施形態に係る車体骨格構造10として、自動車(車体)12のルーフサイドレール18を例に採る。まず、第1実施例について説明する。
【0011】
図1、図2で示すように、自動車12のルーフ部14には、車室のルーフを構成するルーフパネル16が備えられている。そして、ルーフパネル16の車幅方向両側部には、車体前後方向に延在する左右一対のルーフサイドレール18が設けられている。ルーフサイドレール18は、車幅方向内側に配置されるレールインナ(鋼板)20と、車幅方向外側に配置されるレールアウタ(鋼板)30と、を有している。
【0012】
レールインナ20は、本体部22と、その本体部22の上端部側及び下端部側に、それぞれ上インナフランジ部24及び下インナフランジ部26とが一体に形成されて構成されており、レールアウタ30も、意匠面を構成する本体部32と、その本体部32の上端部側及び下端部側に、それぞれ上アウタフランジ部34及び下アウタフランジ部36とが一体に形成されて構成されている。
【0013】
なお、レールアウタ30の本体部32の車体下方側は、階段状に屈曲成形されたウエブ面32Aとされている。そして、上インナフランジ部24と上アウタフランジ部34、及び下インナフランジ部26と下アウタフランジ部36が、それぞれレーザー溶接によって互いに接合されることで、閉断面形状とされたルーフサイドレール18(車体骨格構造10)が構成されるようになっている。
【0014】
ここで、下インナフランジ部26と下アウタフランジ部36は、車体下方側へそれぞれ異なる長さで延在されている。すなわち、下インナフランジ部26の方が下アウタフランジ部36よりも車体下方側へ長く延在されている。そして、下アウタフランジ部36の根元、即ち本体部32(ウエブ面32A)と下アウタフランジ部36との境界部分には、下インナフランジ部26側(車幅方向内側)へ向けて凸状となるビード部38が車体前後方向に延在するように曲げにより形成されている。
【0015】
また、ビード部38が形成された下アウタフランジ部36を有するレールアウタ30は、図2で示すように、下アウタフランジ部36の下端部(先端部)36A及びビード部38が下インナフランジ部26に当接した状態において、下アウタフランジ部36と本体部32(ウエブ面32A)とでなす角度αが、その当接前よりも小さくなるように構成されている。
【0016】
すなわち、図3で示すように、レールインナ20とレールアウタ30とを接合する(レーザー溶接する)前におけるレールアウタ30の本体部32(ウエブ面32A)と下アウタフランジ部36とでなす角度βは、図2で示したように、レールインナ20とレールアウタ30とを接合した(レーザー溶接した)後におけるレールアウタ30の本体部32(ウエブ面32A)と下アウタフランジ部36とでなす角度αよりも大きく形成されている(β>αとされている)。
【0017】
したがって、レールインナ20とレールアウタ30とを接合するために、下アウタフランジ部36と下インナフランジ部26とが重ね合わされたときには、下アウタフランジ部36の下端部36Aが下インナフランジ部26に相対的に圧接されるが、このとき、下アウタフランジ部36は、その根元にビード部38が形成され、そのビード部38を曲げ起点として、車幅方向外側(圧接方向とは反対方向)へ曲がり易くなっている。
【0018】
そのため、下アウタフランジ部36は、その下端部36Aが下インナフランジ部26によって相対的に車幅方向外側へ押圧されるのに伴い、車幅方向外側へ容易に曲がり、これによって、下インナフランジ部26には、下アウタフランジ部36の下端部36Aとビード部38のみが所望とする圧力で当接することになる。よって、図2で示すように、下インナフランジ部26と下アウタフランジ部36との間には、所望の角度とされた断面視略三角形状の間隙Sが形成される。
【0019】
なお、図2で示すように、レールインナ20とレールアウタ30とを接合した(レーザー溶接した)後の下アウタフランジ部36と下インナフランジ部26とでなす角度γは、2°〜3°とするのが好ましい。また、図3で示すように、例えば下インナフランジ部26の長さLを、15mmとした場合には、ビード部38の突出高さHは、0.5mmとするのが好ましい。
【0020】
一方、図2で示すように、上インナフランジ部24と上アウタフランジ部34は、車幅方向内側へそれぞれの端部が同位置となるように所定長さで延在されて重ね合わされ、更にルーフパネル16の車幅方向外側端部16Aが上アウタフランジ部34の上に重ね合わされて接合されている(以下、この接合部分を接合部17という)。
【0021】
また、ルーフパネル16の車幅方向外側端部16Aと上アウタフランジ部34は、それぞれ接合部17の両側で階段状に屈曲成形されている。これにより、ルーフ部14の車幅方向両端部には、接合部17を底壁とする溝Gが車体前後方向に形成されるようになっている。
【0022】
以上のような構成のルーフサイドレール18(車体骨格構造10)において、次にその作用について説明する。レールインナ20とレールアウタ30とをレーザー溶接によって接合する際には、上インナフランジ部24と上アウタフランジ部34とを重ね合わせ、かつ下インナフランジ部26と下アウタフランジ部36とを重ね合わせる。
【0023】
ここで、下インナフランジ部26の方が下アウタフランジ部36よりも車体下方側へ長く延在され、下インナフランジ部26に重ね合わせる前(レーザー溶接する前)における本体部32(ウエブ面32A)と下アウタフランジ部36とでなす角度βは、下インナフランジ部26に重ね合わせた後(レーザー溶接した後)における本体部32(ウエブ面32A)と下アウタフランジ部36とでなす角度αよりも大きく形成されている。
【0024】
したがって、下アウタフランジ部36を下インナフランジ部26に重ね合わせたときに、下アウタフランジ部36の下端部36Aは、下インナフランジ部26に当接するか、又は下インナフランジ部26に相対的に押圧される。ここで、下アウタフランジ部36の根元には、下インナフランジ部26側(車幅方向内側)へ向けて凸状となるビード部38が形成されている。
【0025】
よって、下アウタフランジ部36は、その下端部36Aが下インナフランジ部26に相対的に押圧されつつ、ビード部38を曲げ起点として車幅方向外側へ容易に曲がることができる。これにより、下アウタフランジ部36の下端部36Aは、下インナフランジ部26に所望とする圧力で当接することができるため、下アウタフランジ部36と下インナフランジ部26とを圧接させるためのクランプ部材(図示省略)の数量を低減することができる。
【0026】
また、これにより、下アウタフランジ部36は、その下端部36Aとビード部38のみが下インナフランジ部26に当接するので、下アウタフランジ部36と下インナフランジ部26との間には断面視略三角形状の間隙Sが形成される。したがって、下アウタフランジ部36と下インナフランジ部26とをレーザー溶接するときに発生する金属蒸気(熱)を、その間隙Sから逃がす(放熱する)ことができる。
【0027】
つまり、以上のような構成によれば、レールアウタ30(本体部32)の意匠面や平面度などを管理すべき面に、下アウタフランジ部36と下インナフランジ部26とを圧接させるためのクランプ部材による歪みや、レーザー溶接時の熱による歪みが発生するのを抑制又は防止することができる。したがって、レールインナ20とレールアウタ30とをレーザー溶接するための組み付け時間や設備費用等も低減することができる。
【0028】
また、ビード部38は、下アウタフランジ部36の根元、即ち下アウタフランジ部36の下端部36Aから最も離れた、本体部32(ウエブ面32A)と下アウタフランジ部36との境界部分に形成されているので、ビード部38の突出高さHが多少ばらついても、断面視略三角形状の間隙Sにおいて、その角度変化を少なくすることができる。
【0029】
また、下インナフランジ部26の方が下アウタフランジ部36よりも車体下方側へ長く延在されているので、下インナフランジ部26に対して、下アウタフランジ部36の車体略上下方向における位置が多少ずれても、所望とする角度とされた断面視略三角形状の間隙Sを確実に形成することができる。
【0030】
次に、第2実施例について説明する。なお、上記第1実施例と同等の部位には同じ符号を付して詳細な説明は省略する。この第2実施例に係るルーフサイドレール18では、図4で示すように、レールインナ20とレールアウタ30との間に、レールリインフォースメント(鋼板)40が配置されている。
【0031】
レールリインフォースメント40は、本体部42と、その本体部42の上端部側及び下端部側に、それぞれ上フランジ部44及び下フランジ部46とが一体に形成されて構成されている。そして、レールインナ20の上インナフランジ部24とレールアウタ30の上アウタフランジ部34との間に、レールリインフォースメント40の上フランジ部44が重ね合わされ、上記第1実施例と同様に、ルーフパネル16の車幅方向外側端部16Aと共に接合されるようになっている。
【0032】
また、レールインナ20の下インナフランジ部26とレールアウタ30の下アウタフランジ部36との間には、レールリインフォースメント40の下フランジ部46が重ね合わされ、下インナフランジ部26と下フランジ部46と下アウタフランジ部36が、レーザー溶接によって接合されるようになっている。
【0033】
なお、このとき、レールリインフォースメント40の下フランジ部46が、下アウタフランジ部36よりも車体下方側へ長く延在され、下フランジ部46に重ね合わせる前(レーザー溶接する前)における本体部32(ウエブ面32A)と下アウタフランジ部36とでなす角度β(図示省略)が、下フランジ部46に重ね合わせた後(レーザー溶接した後)における本体部32(ウエブ面32A)と下アウタフランジ部36とでなす角度αよりも大きく形成されている。
【0034】
そして、同様に、レールリインフォースメント40の下フランジ部46は、下インナフランジ部26よりも車体下方側へ長く延在されており、下フランジ部46に重ね合わせる前(レーザー溶接する前)における本体部22と下インナフランジ部26とでなす角度(図示省略)が、下フランジ部46に重ね合わせた後(レーザー溶接した後)における本体部22と下インナフランジ部26とでなす角度よりも大きく形成されている。
【0035】
したがって、下アウタフランジ部36を下フランジ部46に車幅方向外側から重ね合わせ、かつ下インナフランジ部26を下フランジ部46に車幅方向内側から重ね合わせたときには、下アウタフランジ部36の下端部36A及び下インナフランジ部26の下端部(先端部)26Aは、それぞれ下フランジ部46に当接するか、又は下フランジ部46を車幅方向外側及び内側からそれぞれ押圧する。
【0036】
また、この第2実施例では、下アウタフランジ部36の根元、即ち本体部32(ウエブ面32A)と下アウタフランジ部36との境界部分に、下フランジ部46側(車幅方向内側)へ向けて凸状となるビード部38が曲げにより形成されるとともに、下インナフランジ部26の根元、即ち本体部22と下インナフランジ部26との境界部分にも、下フランジ部46側(車幅方向外側)へ向けて凸状となるビード部28が曲げにより形成されている。
【0037】
したがって、下アウタフランジ部36は、その下端部36Aが下フランジ部46に相対的に押圧されつつ、ビード部38を曲げ起点として車幅方向外側へ容易に曲がることができ、下インナフランジ部26も、その下端部26Aが下フランジ部46に相対的に押圧されつつ、ビード部28を曲げ起点として車幅方向内側へ容易に曲がることができる。
【0038】
これにより、下アウタフランジ部36の下端部36Aと下インナフランジ部26の下端部26Aは、それぞれ下フランジ部46に所望とする圧力で当接することができるため、下アウタフランジ部36と下フランジ部46と下インナフランジ部26とを圧接させるためのクランプ部材(図示省略)の数量を低減することができる。
【0039】
また、これにより、下アウタフランジ部36は、その下端部36Aとビード部38のみが下フランジ部46に当接し、下インナフランジ部26は、その下端部26Aとビード部28のみが下フランジ部46に当接する。
【0040】
したがって、下アウタフランジ部36と下フランジ部46との間には、ビード部38によって断面視略三角形状の間隙Sが形成され、下インナフランジ部26と下フランジ部46との間にも、ビード部28によって断面視略三角形状の間隙Sが形成される。よって、下アウタフランジ部36と下フランジ部46と下インナフランジ部26とをレーザー溶接するときに発生する金属蒸気(熱)を、各間隙Sから逃がす(放熱する)ことができる。
【0041】
つまり、以上のような構成によれば、レールアウタ30(本体部32)及びレールインナ20(本体部22)の意匠面や平面度などを管理すべき面に、下アウタフランジ部36と下フランジ部46と下インナフランジ部26とを圧接させるためのクランプ部材による歪みや、レーザー溶接時の熱による歪みが発生するのを抑制又は防止することができる。
【0042】
したがって、レールインナ20とレールアウタ30との間に、レールリインフォースメント40が設けられる構成であっても、上記第1実施例と同様に、それらをレーザー溶接するための組み付け時間や設備費用等を低減することができる。
【0043】
また、ビード部38は、下アウタフランジ部36の根元、即ち下アウタフランジ部36の下端部36Aから最も離れた、本体部32(ウエブ面32A)と下アウタフランジ部36との境界部分に形成され、ビード部28も、下インナフランジ部26の根元、即ち下インナフランジ部26の下端部26Aから最も離れた、本体部22と下インナフランジ部26との境界部分に形成されているので、各ビード部28、38の突出高さが多少ばらついても、断面視略三角形状の間隙Sにおいて、その角度変化を少なくすることができる。
【0044】
また、下フランジ部46の方が、下インナフランジ部26及び下アウタフランジ部36よりも車体下方側へ長く延在されているので、下フランジ部46に対して、下インナフランジ部26及び下アウタフランジ部36の車体略上下方向における位置が多少ずれても、所望とする角度とされた断面視略三角形状の間隙Sを確実に形成することができる。
【0045】
なお、この第2実施例の場合は、下アウタフランジ部36と下フランジ部46とでなす角度及び下インナフランジ部26と下フランジ部46とでなす角度が、共に上記第1実施例で示した角度γと同等になる。また、この第2実施例の場合は、例えば下フランジ部46の長さが15mmのときに、ビード部28、38の好適な突出高さが0.5mmとなる。
【0046】
次に、第3実施例について説明する。なお、上記第1実施例と同等の部位には同じ符号を付して詳細な説明は省略する。この第3実施例に係るルーフサイドレール18では、図5で示すように、レールインナ20の下インナフランジ部26の根元、即ち本体部22と下インナフランジ部26との境界部分に、車幅方向内側へ向けて凸状となるビード部29が曲げにより更に形成されている点が、上記第1実施例と異なっている。
【0047】
すなわち、この第3実施例では、下インナフランジ部26の根元に、車幅方向内側へ向けて凸状に形成されることで、車幅方向外側が凹状とされたビード部29が形成され、その車幅方向外側に形成された凹部29A内に、下アウタフランジ部36の根元に車幅方向内側へ向けて凸状に形成されたビード部38が当接した状態で収容されるようになっている。
【0048】
したがって、この第3実施例の場合には、レールインナ20とレールアウタ30との位置をビード部29、38によって相対的に規制することができる。また、この第3実施例の場合は、下インナフランジ部26の根元に形成するビード部29の突出高さは、上記第1実施例と同様に0.5mmが好ましいが、下アウタフランジ部36の根元に形成するビード部38の突出高さは、上記第1実施例よりも高く、例えば1.0mmとすることが好ましい。
【0049】
これにより、上記第1実施例と同等の作用を奏することができる。すなわち、下アウタフランジ部36を下インナフランジ部26に重ね合わせたときに、下アウタフランジ部36の下端部36Aは、下インナフランジ部26に当接するか、又は下インナフランジ部26に相対的に押圧される。ここで、下アウタフランジ部36の根元には、下インナフランジ部26側(車幅方向内側)へ向けて凸状となるビード部38が形成されている。
【0050】
よって、下アウタフランジ部36は、その下端部36Aが下インナフランジ部26に相対的に押圧されつつ、ビード部38を曲げ起点として車幅方向外側へ容易に曲がることができる。これにより、下アウタフランジ部36の下端部36Aは、下インナフランジ部26に所望とする圧力で当接することができるため、下アウタフランジ部36と下インナフランジ部26とを圧接させるためのクランプ部材(図示省略)の数量を低減することができる。また、このとき、ビード部29の凹部29A内にビード部38が収容されるため、下アウタフランジ部36と下インナフランジ部26との位置合わせが正確にできる。
【0051】
また、これにより、下アウタフランジ部36は、その下端部36Aとビード部38のみが下インナフランジ部26(凹部29A)に当接するので、下アウタフランジ部36と下インナフランジ部26との間には断面視略三角形状の間隙Sが形成される。したがって、下アウタフランジ部36と下インナフランジ部26とをレーザー溶接するときに発生する金属蒸気(熱)を、その間隙Sから逃がす(放熱する)ことができる。
【0052】
つまり、以上のような構成によれば、レールアウタ30(本体部32)の意匠面や平面度などを管理すべき面に、下アウタフランジ部36と下インナフランジ部26とを圧接させるためのクランプ部材による歪みや、レーザー溶接時の熱による歪みが発生するのを抑制又は防止することができる。したがって、レールインナ20とレールアウタ30とをレーザー溶接するための組み付け時間や設備費用等も低減することができる。
【0053】
また、ビード部38は、下アウタフランジ部36の根元、即ち下アウタフランジ部36の下端部36Aから最も離れた、本体部32(ウエブ面32A)と下アウタフランジ部36との境界部分に形成されているので、ビード部38の突出高さが多少ばらついても、断面視略三角形状の間隙Sにおいて、その角度変化を少なくすることができる。
【0054】
また、下インナフランジ部26の方が下アウタフランジ部36よりも車体下方側へ長く延在されているので、下インナフランジ部26に対して、下アウタフランジ部36の車体略上下方向における位置が多少ずれても、所望とする角度とされた断面視略三角形状の間隙Sを確実に形成することができる。
【0055】
最後に、第4実施例について説明する。なお、上記第2実施例と同等の部位には同じ符号を付して詳細な説明は省略する。この第4実施例に係るルーフサイドレール18は、図6で示すように、レールリインフォースメント40の下フランジ部46に、車幅方向外側へ向けて凸状となるビード部48と車幅方向内側へ向けて凸状となるビード部50が上下に連続して曲げにより形成されている点が、上記第2実施例と異なっている。
【0056】
すなわち、この第4実施例では、下フランジ部46の根元に、車幅方向外側へ向けて凸状に形成されることで、車幅方向内側が凹状とされたビード部48が形成され、その車幅方向内側に形成された凹部48A内に、下インナフランジ部26の根元に車幅方向外側へ向けて凸状に形成されたビード部28が当接した状態で収容されるようになっている。
【0057】
そして、同様に、下フランジ部46の根元で、かつビード部48の下方側に、車幅方向内側へ向けて凸状に形成されることで、車幅方向外側が凹状とされたビード部50が形成され、その車幅方向外側に形成された凹部50A内に、下アウタフランジ部36の根元に車幅方向内側へ向けて凸状に形成されたビード部38が当接した状態で収容されるようになっている。
【0058】
したがって、この第4実施例の場合には、レールリインフォースメント40に対するレールインナ20とレールアウタ30の位置を、ビード部28、38、48、50によって相対的に規制することができる。また、この第4実施例の場合は、下フランジ部46の根元に形成するビード部48、50の突出高さは、上記第1実施例と同様に0.5mmが好ましいが、下インナフランジ部26及び下アウタフランジ部36の根元に形成するビード部28、38の突出高さは、それぞれ上記第1実施例よりも高く、例えば1.0mmとすることが好ましい。
【0059】
これにより、上記第2実施例と同等の作用を奏することができる。すなわち、下アウタフランジ部36を下フランジ部46に車幅方向外側から重ね合わせ、かつ下インナフランジ部26を下フランジ部46に車幅方向内側から重ね合わせたときには、下アウタフランジ部36の下端部36A及び下インナフランジ部26の下端部26Aは、それぞれ下フランジ部46に当接するか、又は下フランジ部46を車幅方向外側及び内側からそれぞれ押圧する。
【0060】
ここで、下アウタフランジ部36の根元、即ち本体部32(ウエブ面32A)と下アウタフランジ部36との境界部分には、下フランジ部46側(車幅方向内側)へ向けて凸状となるビード部38が形成され、下インナフランジ部26の根元、即ち本体部22と下インナフランジ部26との境界部分にも、下フランジ部46側(車幅方向外側)へ向けて凸状となるビード部28が形成されている。
【0061】
したがって、下アウタフランジ部36は、その下端部36Aが下フランジ部46に相対的に押圧されつつ、ビード部38を曲げ起点として車幅方向外側へ容易に曲がることができ、下インナフランジ部26も、その下端部26Aが下フランジ部46に相対的に押圧されつつ、ビード部28を曲げ起点として車幅方向内側へ容易に曲がることができる。
【0062】
これにより、下アウタフランジ部36の下端部36Aと下インナフランジ部26の下端部26Aは、それぞれ下フランジ部46に所望とする圧力で当接することができるため、下アウタフランジ部36と下フランジ部46と下インナフランジ部26とを圧接させるためのクランプ部材(図示省略)の数量を低減することができる。
【0063】
また、このとき、ビード部50の凹部50A内にビード部38が収容され、ビード部48の凹部48A内にビード部28が収容される。したがって、下フランジ部46に対する下アウタフランジ部36及び下インナフランジ部26の位置合わせが、それぞれ正確にできる。
【0064】
また、これにより、下アウタフランジ部36は、その下端部36Aとビード部38のみが下フランジ部46(凹部50A)に当接し、下インナフランジ部26は、その下端部26Aとビード部28のみが下フランジ部46(凹部48A)に当接する。
【0065】
したがって、下アウタフランジ部36と下フランジ部46との間には、ビード部38によって断面視略三角形状の間隙Sが形成され、下インナフランジ部26と下フランジ部46との間にも、ビード部28によって断面視略三角形状の間隙Sが形成される。よって、下アウタフランジ部36と下フランジ部46と下インナフランジ部26とをレーザー溶接するときに発生する金属蒸気(熱)を、各間隙Sから逃がす(放熱する)ことができる。
【0066】
つまり、以上のような構成によれば、レールアウタ30(本体部32)及びレールインナ20(本体部22)の意匠面や平面度などを管理すべき面に、下アウタフランジ部36と下フランジ部46と下インナフランジ部26とを圧接させるためのクランプ部材による歪みや、レーザー溶接時の熱による歪みが発生するのを抑制又は防止することができる。したがって、レールインナ20とレールリインフォースメント40とレールアウタ30とをレーザー溶接するための組み付け時間や設備費用等を低減することができる。
【0067】
また、ビード部38は、下アウタフランジ部36の根元、即ち下アウタフランジ部36の下端部36Aから最も離れた、本体部32(ウエブ面32A)と下アウタフランジ部36との境界部分に形成され、ビード部28も、下インナフランジ部26の根元、即ち下インナフランジ部26の下端部26Aから最も離れた、本体部22と下インナフランジ部26との境界部分に形成されているので、各ビード部28、38の突出高さが多少ばらついても、断面視略三角形状の間隙Sにおいて、その角度変化を少なくすることができる。
【0068】
また、下フランジ部46の方が、下インナフランジ部26及び下アウタフランジ部36よりも車体下方側へ長く延在されているので、下フランジ部46に対して、下インナフランジ部26及び下アウタフランジ部36の車体略上下方向における位置が多少ずれても、所望とする角度とされた断面視略三角形状の間隙Sを確実に形成することができる。
【0069】
以上、本実施形態に係る車体骨格構造10について説明したが、本実施形態に係る車体骨格構造10は、図示のルーフサイドレール18に限定されるものではなく、本体部と、その本体部の端部に一体に形成されたフランジ部と、を有する少なくとも2枚の鋼板の各フランジ部をレーザー溶接することで構成される車体骨格構造10全般に対して適用が可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 車体骨格構造
12 自動車
14 ルーフ部
16 ルーフパネル
18 ルーフサイドレール
20 レールインナ(鋼板)
22 本体部
24 上インナフランジ部
26 下インナフランジ部(相手方フランジ部)
28 ビード部
29 ビード部
30 レールアウタ(鋼板)
32 本体部
34 上アウタフランジ部
36 下アウタフランジ部(フランジ部)
36A 下端部(先端部)
38 ビード部
40 レールリインフォースメント
42 本体部
44 上フランジ部
46 下フランジ部
48 ビード部
50 ビード部
S 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と該本体部の端部に一体に形成されたフランジ部とを有し、互いのフランジ部がレーザー溶接されることで車体の骨格をなす少なくとも2枚の鋼板と、
前記各鋼板のフランジ部のうち、少なくとも1つのフランジ部の前記本体部との境界部分に曲げにより形成され、該フランジ部の先端部が当接する相手方フランジ部との間に断面視略三角形状の間隙を設けるビード部と、
を備え、
前記ビード部が形成されたフランジ部を有する鋼板は、該フランジ部の先端部及び該ビード部が前記相手方フランジ部に当接した状態で、該フランジ部と前記本体部とでなす角度が当接前よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする車体骨格構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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