説明

車内二酸化炭素濃度上昇判別装置及び車内安全支援システム

【課題】二酸化炭素濃度の上昇が乗員の呼気によるものか否かを判別する。
【解決手段】車内の呼気による二酸化炭素濃度の第1上昇速度よりも速く設定され、且つ、二酸化炭素センサに対する呼気の吹き掛け及び車内への排気ガスの引き込みによる二酸化炭素濃度の第2上昇速度よりも遅く設定された上昇速度条件と、呼気による濃度上昇と判定するための上昇速度条件を満たす継続時間条件と、を有する判別条件情報を記憶する判別条件情報記憶手段D1と、二酸化炭素センサが検出した車内における二酸化炭素の濃度情報を取得する濃度情報取得手段P1と、該取得した濃度情報に基づいて上昇速度条件を満たす濃度の上昇速度を検出する上昇速度検出手段P2と、該検出した上昇速度の継続時間が継続時間条件を満たしている場合、呼気による二酸化炭素濃度の上昇であると判別する判別手段P3と、警報情報を車内の乗員に対して出力する警報情報出力手段P4と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車内における二酸化炭素の濃度の上昇原因を判別する車内二酸化炭素濃度上昇判別装置及び車内安全支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両において、車内の空気中の二酸化炭素の濃度に応じて警報したり、空調装置を制御することは、従来から行われている(特許文献1を参照)。そして、特許文献2等に示す車両用空調装置は、図9に示すように、二酸化炭素(CO2)センサが検出したCO2濃度が基準となる判定閾値Pを越えた時に、冷媒が漏れていると判定して、警報を発すると共に、内外気を切り替えて換気を行うことが知られている。そして、空調の制御例としては、閾値Pを境に、CO2濃度が閾値Pよりも低い場合は内気循環、また、閾値P以上の場合は外気吸入となるように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−26087号公報
【特許文献2】特開2008−290701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のCO2濃度の異常判定方法では、CO2濃度が前記閾値Pを越えたとき、車内の換気を強制的に行っていたが、CO2濃度の上昇には、空調の冷媒漏れ、、排気ガスの引き込み、乗員の呼気、等が要因として挙げられる。しかしながら、車内の換気を強制的に行うと、車両用空調装置が突然動作するために、運転者を驚かせてしまうという問題があった。
【0005】
また、車内のCO2濃度を上昇させる要因としては、空調からのCO2漏れ、排気ガスの取り込み、乗員の呼気による、等が挙げられる。しかしながら、それらの要因を特定するのは困難なため、人命の危険性を考慮すると、上記閾値は低めに設定する必要があり、換気の頻度が高まってしまう。しかも、換気のために送風機が駆動されると、エネルギーを消費してしまうため、省エネルギーに貢献することが困難であった。
【0006】
よって本発明は、上述した問題点に鑑み、二酸化炭素濃度の上昇が乗員の呼気によるものか否かを迅速に判別することを可能とする車内二酸化炭素濃度上昇判別装置及び車内安全支援システムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項1記載の車内二酸化炭素濃度上昇判別装置は、図1の基本構成図に示すように、車内における二酸化炭素の濃度の上昇原因を判別する車内二酸化炭素濃度上昇判別装置であって、前記車内の呼気による二酸化炭素濃度の第1上昇速度よりも速く設定され、且つ、二酸化炭素センサに対する呼気の吹き掛け及び前記車内への排気ガスの引き込みの少なくとも一方による二酸化炭素濃度の第2上昇速度よりも遅く設定された上昇速度条件と、前記呼気による濃度上昇と判定するための前記上昇速度条件を満たす継続時間条件と、を有する判別条件情報を記憶する判別条件情報記憶手段D1と、前記二酸化炭素センサが検出した前記車内における二酸化炭素の濃度情報を取得する濃度情報取得手段P1と、前記取得した濃度情報に基づいて、前記上昇速度条件を満たす濃度の上昇速度を検出する上昇速度検出手段P2と、前記検出した上昇速度の継続時間が前記継続時間条件を満たしている場合に、呼気による前記二酸化炭素濃度の上昇であると判別する判別手段P3と、前記判別手段P3が呼気による前記二酸化炭素濃度の上昇と判別したことを警報する警報情報を前記車内の乗員に対して出力する警報情報出力手段P4と、を有することを特徴とする。
【0008】
上記請求項1に記載した本発明の車内二酸化炭素濃度上昇判別装置によれば、判別条件情報記憶手段D1には、車両のクラス、車内の大きさ、等に対応した判別条件情報が記憶される。そして、上昇速度条件は、例えば閾値以下、所定の速度範囲等が設定され、継続時間条件は、例えば閾値以上、継続時間範囲、等が設定されている。そして、濃度情報取得手段P1によって濃度情報が取得されると、該濃度情報に基づいて上昇速度条件を満たす濃度の上昇速度が上昇速度検出手段P2によって検出される。そして、検出した上昇速度の継続時間が継続時間条件を満たしている場合、判別手段P3によって呼気による二酸化炭素濃度の上昇であると判別され、警報情報出力手段P4によって警報情報が車内の乗員に対して表示、音声、等によって出力される。
【0009】
請求項2記載の発明は、図1の基本構成図に示すように、請求項1に記載の車内二酸化炭素濃度上昇判別装置において、前記判別手段P3は、前記検出した上昇速度の継続時間が前記継続時間条件を逸脱している場合に、前記呼気以外の要因による前記二酸化炭素濃度の上昇と判別する手段であり、前記判別手段P3が前記呼気以外の要因による前記二酸化炭素濃度の上昇と判別した場合、前記車内の換気の開始を予告する予告情報を前記乗員に出力した後に、前記車内の換気を要求するための換気要求を予め定められた要求先に出力する換気要求出力手段P5を有することを特徴とする。
【0010】
上記請求項2に記載した本発明の車内二酸化炭素濃度上昇判別装置によれば、検出した上昇速度の継続時間が継続時間条件を逸脱している場合、判別手段P3によって呼気以外、例えば空調の冷媒漏れ、排気ガスの引き込み、等の要因による二酸化炭素の上昇と判別される。そして、換気要求出力手段P5によって予告情報が乗員に対して出力された後に、換気要求が要求先に出力される。
【0011】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項3記載の車内安全支援システムは、図1の基本構成図に示すように、車内を換気する換気装置2を有する車内安全支援システム100において、請求項2に記載の車内二酸化炭素濃度上昇判別装置1を有し、前記換気要求出力手段P5は、前記要求先を前記換気装置2とし、前記換気装置2は、前記換気要求出力手段P5からの換気要求に応じて前記車内の換気を行うことを特著とする。
【0012】
上記請求項3に記載した本発明の車内安全支援システムによれば、検出した上昇速度の継続時間が継続時間条件を満たしている場合、警報情報出力手段P4によって警報情報が車内の乗員に対して表示、音声、等によって出力される。また、検出した上昇速度の継続時間が継続時間条件を逸脱している場合、乗員に予告情報が出力された後、車内二酸化炭素濃度上昇判別装置1の換気要求出力手段P5によって換気要求が換気装置2に出力されると、換気装置2は車内の換気を行う。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように請求項1に記載した本発明によれば、呼気による二酸化炭素濃度の上昇をその上昇速度に着目して判別するようにしたことから、従来の強制的に換気を開始するための判定閾値に到達する前に、二酸化炭素濃度の上昇が乗員の呼気によるものか否かを迅速に判別できる。また、検出した上昇速度の継続時間が継続時間条件を満たしている場合、呼気による二酸化炭素濃度の上昇であると判別して警報情報を乗員に出力するようにしたことから、該警報によって乗員に車内の換気を促すことができ、強制的に換気を行う必要性の低下を期待できる。従って、空調装置等を強制的に動作させる必要性を低下させることができるため、空調装置等が突然動作して乗員を驚かせる頻度を低下させることができると共に、省エネルギー化に貢献することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、検出した上昇速度の継続時間が継続時間条件を逸脱している場合、予告情報を乗員に対して出力した後に、換気要求を要求先に出力するようにしたことから、人命に危険性がある場合は、換気開始を乗員に予告した上で、車内の換気を開始できるため、換気動作の開始によって乗員を驚かせてしまうことを防止できる。
【0015】
以上説明したように請求項3に記載した本発明によれば、呼気による二酸化炭素濃度の上昇をその上昇速度に着目して判別するようにしたことから、従来の強制的に換気を開始するための判定閾値に到達する前に、二酸化炭素濃度の上昇が乗員の呼気によるものか否かを迅速に判別できる。また、検出した上昇速度の継続時間が継続時間条件を満たしている場合、呼気による二酸化炭素濃度の上昇であると判別して警報情報を乗員に出力するようにしたことから、該警報によって乗員に車内の換気を促すことができ、強制的に換気を行う必要性の低下を期待できる。従って、空調装置等を強制的に動作させる必要性を低下させることができるため、空調装置等が突然動作して乗員を驚かせる頻度を低下させることができると共に、省エネルギー化に貢献することができる。また、人命に危険性がある場合は、換気開始を乗員に予告した上で、車内の換気を開始できるため、換気動作の開始によって乗員を驚かせてしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る車内二酸化炭素濃度上昇判別装置及び車内安全支援システムの基本構成を示す構成図である。
【図2】本発明に係る車内安全支援システムの概略構成を示す構成図である。
【図3】本発明の車内二酸化炭素濃度上昇判別装置を適用したメータECUの一例を示す正面図である。
【図4】本発明に係る車内二酸化炭素濃度上昇判別装置の概略構成の一例を示すシステム構成図である。
【図5】CO2濃度と経過時間との関係から呼気による濃度上昇の判別例を説明するためのグラフである。
【図6】図4中のCPUが実行する本発明に係る濃度上昇判別処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】警報情報の一例を説明するための図である。
【図8】予告情報の一例を説明するための図である。
【図9】従来の空調装置による内外気の切り替えを説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る車内二酸化炭素濃度上昇判別装置を、車内安全支援システムに組み込まれたメータECUに適用する場合の一実施形態を、図2〜図8の図面を参照して以下に説明する。
【0018】
図2において、車内安全支援システム100は、乗用車、トラック、等の車両に搭載れている。車内安全支援システム100は、メータECU(Electronic Control Unit)1と、エアコンECU2と、二酸化炭素(CO2)センサ5と、を有して構成している。そして、メータECU1とエアコンECU2は、車両ネットワーク3に通信可能に接続されている。なお、本実施形態では車両ネットワーク3における通信プロトコルを、公知であるCAN(Controller Area Network)とする場合について説明するが、例えばLIN(Local Interconnect Network)等の各種通信プロトコルを採用することができる。
【0019】
まず、エアコンECU2は、上述した特許文献2等に示す車両用空調装置である。エアコンECU2は、必要な吹き出し温度を算出してサーボモータやブロワモータ等を制御すると共に、CO2センサ5の出力信号に基づいて二酸化炭素濃度が予め定められた基準値を超えているか否かを判定し、二酸化炭素濃度が異常に高くなっている場合には、警報装置、サーボモータ及びブロワモータを制御する。そして、エアコンECU2は、サーボモータによって内外気切替ドアを駆動させることで、内気を導入する内気導入口及び外気を導入する外気導入口を選択的に開閉して、内気循環と外気吸入を切り替えている。
【0020】
CO2センサ5は、車内、エアコンECU2のケース内、等に設けられ、CO2の濃度を検出し、該濃度を示す濃度信号を出力する。CO2センサ5を車内に設ける場合、助手席乗員の足下近傍、助手席シート下、等の配置される。また、CO2センサ5は車内に複数個設けてもよい。
【0021】
メータECU1は、公知であるコンビネーションメータであり、図3及び図4に示すように、車両速度、エンジン回転、燃料残量、温度等の計測値を表示する複数の計器20と、液晶ディスプレイ(LCD)30と、複数のウォーニング40と、を有して構成している。そして、メータECU1は、周知であるように、複数の計器20とLCD30との間は見返し10aが配置されており、それらを表ガラス10bで覆った状態で車両の運転席の前方に配置されている。
【0022】
複数の計器20の各々は、周知であるように、表面に目盛及び数字、文字または記号等の指標が設けられた文字板と、該文字板の前面に配置される指針と、計測量に応じて指針を駆動する内機と、を有して構成している。本実施形態の複数の計器20は、図3に示すように、速度計(SPEED)20aと回転計(REV)20bとを有している。
【0023】
メータECU1は、図4に示すように、CPU(central processing unit)11と、ROM(read only memory)12と、RAM(random access memory)13と、EEPROM14と、通信部15と、を有している。
【0024】
CPU11は、メータECU1全体の制御を司り、ROM12に記憶されているプログラムに従った制御を行う。CPU11は、電源回路11bを介して車両のバッテリーから供給される電力によって動作する。CPU11は、インタフェース(I/F)11iを介して車両のイグニッションスイッチ(IGN+)のOFF状態からON状態への変化に応じて起動し、IGN+のON状態からOFF状態への変化に応じて動作を終了する。
【0025】
CPU11は、I/F11iを介して上記CO2センサ5と電気的に接続されている。CPU11は、CO2センサ5から濃度信号が入力されると、その信号が示すCO2の濃度を濃度情報として取得する。
【0026】
ROM12は、図1に示す請求項中の濃度情報取得手段P1、上昇速度検出手段P2、判別手段P3、警報情報出力手段P4、換気要求出力手段P5、等の各種手段としてCPU11を機能させるための濃度上昇判別プログラム、等を記憶している。CPU11は、濃度上昇判別プログラムを実行することで、濃度情報取得手段P1、上昇速度検出手段P2、判別手段P3、警報情報出力手段P4、換気要求出力手段P5、等の各種手段として機能することになる。
【0027】
RAM13は、各種のデータを格納するとともにCPU11の処理作業に必要なエリアを有している。そして、EEPROM14は、電気的消去/書き換え可能な読み出し専用のメモリであり、CPU11に電気的に接続されている。EEPROM14は、CO2センサ5から取得した濃度情報を、所定の時間にわたって時系列的に複数記憶することが可能な記憶領域を有している。
【0028】
通信部15は、車両に構築されているCAN等の車載ネットワーク3にI/F11iを介して通信可能に接続され、CAN等の通信プロトコルで車載ネットワーク3に接続された他の電子機器と通信を行う。通信部15は、CPU11から入力される情報を送信先に送信すると共に、他の電子機器から受信した情報をCPU11に出力する。
【0029】
また、CPU11にはモータドライバ16とLCDドライバ17が電気的に接続されている。そして、モータドライバ16には、速度計20a、回転計20bの2つの計器2が電気的に接続されている。モータドライバ16は、CPU11の制御により各計器2の内機(モータ)を駆動させる。これにより、各計器2は指針を計測量に応じた指示位置まで回動させ、文字板の指標と協働して計測量を表示する。
【0030】
LCDドライバ17には、LCD30が電気的に接続されており、CPU11の制御によりLCD30を駆動させる。LCD30は、CPU11からの要求に応じた情報を表示することが可能な構成となっている。そして、本実施形態では、CPU11から要求された警報情報等を、LCDドライバ17がLCD3に表示させる場合について説明する。
【0031】
次に、本発明の判別条件情報について、図5の図面を参照して以下に説明する。なお、判別条件情報は、車両の種類、クラス、車内容積、等に応じて予め定められる。
【0032】
判別条件情報は、車内の呼気による二酸化炭素濃度の第1上昇速度V1よりも速く設定され、且つ、CO2センサ5に対する呼気の吹き掛け及び前記車内への排気ガスの引き込みの少なくとも一方による二酸化炭素濃度の第2上昇速度V2よりも遅く設定された上昇速度条件Vと、前記呼気による濃度上昇と判定するための前記上昇速度条件を満たす継続時間条件Tと、を有して構成している。
【0033】
ここで、判別条件情報の詳細の一例を以下に説明する。なお、該判別条件情報の上昇速度条件Vと計測時間条件Tは、例えば実車を用いた実験結果から予め設定する場合について説明するが、シミュレーション結果等から設定してもよい。
【0034】
図5に示すグラフは、1500ccクラスの小型乗用車にCO2センサ5を設けて、実際にCO2濃度を計測した結果を示している。図5において、縦軸はCO2濃度[ppm]、横軸はCO2濃度の計測を開始してからの経過時間[sec]をそれぞれ示している。そして、グラフG1は、4名の乗員が車両に乗車した場合に、車内の呼気によるCO2濃度の上昇を計測した結果を示している。該グラフG1の上昇速度は上記第1上昇速度V1を示しており、2ppm/secとなっている。
【0035】
グラフG2は、排気ガスを車内に引き込んだ場合に、車内のCO2濃度の上昇を計測した結果を示しており、その上昇速度は270ppm/secとなっている。また、グラフG3は、CO2センサ5に呼気を吹き掛けた場合に、車内のCO2濃度の上昇を計測した結果を示しており、その上昇速度は80ppm/secとなっている。そして、グラフG2,G3の上昇速度は上記第2上昇速度V2を示している。なお、本実施形態では、グラフG2,G3の双方とした場合について説明するが、これに代えて、例えばグラフG2,G3のうちの上昇速度の遅い方のみを上記第2上昇速度V2とする、等の実施形態とすることもできる。
【0036】
グラフG4は、上述したグラフG1〜G3に基づいて予め定められた上昇速度条件Vである4ppm/secに対応したグラフを示している。ここで、グラフG3は呼気を吹き掛けているため、図5に示すように、CO2濃度は最初のうちは上昇するが、ピークに達した後は徐々に低下することから、上昇速度条件Vはグラフ3とは区別できるように設定することが好ましい。
【0037】
また、図5の結果が得られた場合、呼気による濃度上昇と判別するために、グラフG3は約30sec前付近からCO2濃度が減少している点に着目し、継続時間条件Tを30secと設定している。よって、図5において、上昇速度条件Vの4ppm/secより小さな上昇速度が計測時間条件Tである30sec以上継続している場合は、呼気によるCO2濃度の上昇と判定することができる。即ち、人命の危険性に発展する可能性が低いと判断できるため、乗員に対して換気を促せばよいことになる。一方、4ppm/sec以上の上昇速度が30sec以上継続している場合は、排気ガスの引き込み、空調の冷媒漏れ等の発生によるCO2濃度の上昇と判定することができる。即ち、人命の危険性に発展する可能性が高いと判断できるため、空調の内外気のダンパー切り替えや車両の窓の開閉等を強制的に行う。
【0038】
従って、図5に示す計測結果に対応した判別条件情報は、CO2濃度上昇が4ppm/secよりも小さく2ppm/sec以上の範囲、且つ該範囲内の上昇速度が30sec以上継続した場合を呼気による異常と判別し、CO2濃度上昇が4ppm/sec以上且つ30sec以上継続した場合を呼気以外による異常と判別するための情報となっている。そして、本実施形態では、該判別条件情報をEEPROM14に予め記憶しておくことから、EEPROM14が請求項中の判別条件情報記憶手段として機能している。また、上昇速度条件Vは4ppm/secより小さな上昇速度全般と設定してもよいし、4ppm/sec±誤差と設定してもよい。即ち、車内のCO2濃度の上昇特性等に応じて種々異なる実施形態とすることができる。
【0039】
次に、上述したCPU11が実行する濃度上昇判別処理の一例を、図6のフローチャートを参照して以下に説明する。なお、該濃度上昇判別処理は、所定のタイミングで上位処理から呼び出され、終了要求に応じて処理を終了することを前提としている。
【0040】
CPU11は、前記濃度上昇判別プログラムを実行すると、ステップS11(濃度情報取得手段に相当)において、予め定められたサンプリング間隔で、CO2センサ5から入力された濃度信号が示す濃度を濃度情報として取得し、該濃度情報と検出時間を関連付けてEEPROM14に時系列的に記憶し、その後ステップS12の処理に進む。
【0041】
CPU11は、ステップS12(上昇速度検出手段に相当)において、EEPROM14の濃度情報に基づいて上昇速度を検出してRAM13に記憶し、その後ステップS13の処理に進む。なお、上昇速度の検出方法の一例としては、CO2濃度が上昇を開始してからの上昇速度、または、CO2濃度が上昇を開始した後の単位時間当たりの上昇速度、等を検出する方法が挙げられる。
【0042】
CPU11は、ステップS13において、RAM13の上昇速度とEEPROMの判別条件情報の上昇速度条件Vとを比較して、上昇速度条件Vを満たしているか否かを判定する。本実施形態では、上昇速度条件Vが4ppm/secより小さく2ppm/sec以上であるか否かを判定する。
【0043】
CPU11は、上昇速度条件Vを満たしていると判定した場合(S13でY)、ステップS14において、上昇速度条件Vを満たしている継続時間を検出し、その後ステップS15の処理に進む。なお、継続時間の検出方法の一例としては、濃度情報とその検出時間とに基づいて継続時間を検出する、上述したサンプリング間隔に基づいて検出する、等の方法が挙げられる。
【0044】
CPU11は、ステップS15(判別手段)において、検出した継続時間とEEPROMの判別条件情報の継続時間条件Tとを比較して、呼気による上昇であるか否かを判定する。そして、CPU11は、継続時間条件T以上にわたって継続していない、即ち呼気による上昇ではないと判定した場合(S15でN)、ステップS11の処理に戻り、一連の処理を繰り返す。一方、CPU11は、継続時間条件T以上にわたって継続している、即ち呼気による上昇であると判定した場合(S15でY)、ステップS16の処理に進む。
【0045】
CPU11は、ステップS16(警報情報出力手段)において、図7に示す警報画面M1をLCD30に表示するための警報情報をLCDドライバ17に出力して表示を要求することで、LCD30に警報画面M1を表示させ、その後ステップS11の処理に戻り、一連の処理を繰り返す。そして、本実施形態の警報情報は、「車室内CO2濃度警告 濃度が警告レベルです。窓を開けて下さい。」等の換気を乗員に促すコメントを、車両の積算走行距離と共に表示する内容となっている。なお、警報画面M1は、所定の表示時間が経過した後に自動で消去してもよいし、乗員による所定の操作に応じて消去してもよい。また、警報画面M1を表示すると共に、警報音や警報音声を出力してもよい。
【0046】
また、CPU11は、ステップS13で上昇速度条件Vを満たしていないと判定した場合(S13でN)、ステップS17において、上昇速度が上昇速度条件V以上であるか否かを判定する。そして、CPU11は、上昇速度条件V以上ではないと判定した場合(S17でN)、ステップS11の処理に戻り、一連の処理を繰り返す。一方、CPU11は、上昇速度条件V以上であると判定した場合(S17でY)、ステップS18において、上述したように上昇速度条件V以上の上昇速度の継続時間を検出してRAM13に記憶し、その後ステップS19の処理に進む。
【0047】
CPU11は、ステップS19において、検出した継続時間とEEPROMの判別条件情報の継続時間条件Tとを比較して、呼気以外による上昇であるか否かを判定する。なお、本実施形態では、呼気か呼気以外かの判定に同一の継続時間条件Tを用いた場合について説明するが、これに代えて、異なる継続時間としてもよい。そして、CPU11は、呼気以外による上昇ではないと判定した場合(S19でN)、ステップS11の処理に戻り、一連の処理を繰り返す。
【0048】
一方、CPU11は、呼気以外による上昇であると判定した場合(S19でY)、ステップS20(換気要求出力手段に相当)において、車内の換気の開始を予告する予告情報をLCDドライバ17に出力して表示を要求することで、LCD30に図8に示す予告画面M2を表示させ、その後ステップS21の処理に進む。そして、本実施形態の予告情報は、CO2濃度と、「CO2濃度の上昇が異常です。5秒後にエアコンが動きます。」のコメントとを、車両の積算走行距離と共にLCD30に表示させるための情報となっている。
【0049】
CPU11は、ステップS21(換気要求出力手段に相当)において、エアコンECU3への換気要求の送信を通信部15に要求することで、換気要求をエアコンECU3に出力(送信)し、ステップS11の処理に戻り、一連の処理を繰り返す。なお、換気要求の一例としては、エアコンの換気を開始する、換気を強に切り替える、等の種々異なる実施形態とすることができる。
【0050】
次に、上述した車内安全支援システム100におけるメータECU1とエアコンECU2との本発明に係る動作(作用)の一例を以下に説明する。
【0051】
メータECU1は、CO2センサ5から取得した濃度情報に基づいて、CO2濃度の上昇速度を検出する。メータECU1は、検出した上昇速度と、車両又は車内に対応した判別条件情報の上昇速度条件Vとを比較して、上昇速度条件Vを満たすか否かを判定する。そして、メータECU1は、上昇速度条件Vを満たす上昇速度が、前記判別条件情報の継続時間条件T以上であると、呼気によるCO2濃度の上昇であると判別し、図7に示す内容の警報情報をLCD30に表示する。これにより、乗員が警報情報を参照することで、乗員の窓開け、エアコンの操作、等によって車内が換気されることを期待できる。
【0052】
また、メータECU1は、上昇速度条件V以上の上昇速度が前記継続時間条件T以上にわたって継続していると、図8に示す内容の予告情報をLCD30に表示する。これにより、乗員が予告情報を参照することで、5秒後にエアコンが動き出すことを事前に認識させることができる。そして、メータECU1は、予告情報を出力した後、換気要求をエアコンECU2に送信する。そして、エアコンECU2は、換気要求をメータECU1から受信すると、外気吸入となるように、内外気切替ドアを駆動させ、送風機を駆動させる。これにより、外気が車内に導入されて換気が行われる。
【0053】
以上説明した車内安全支援システム100によれば、呼気によるCO2濃度の上昇をその上昇速度に着目して判別するようにしたことから、従来の強制的に換気を開始するための判定閾値P(図9参照)に到達する前に、CO2濃度の上昇が乗員の呼気によるものか否かを迅速に判別できる。また、検出した上昇速度の継続時間が継続時間条件を満たしている場合、呼気によるCO2濃度の上昇であると判別して警報情報を乗員に出力するようにしたことから、該警報によって乗員に車内の換気を促すことができ、強制的に換気を行う必要性の低下を期待できる。従って、エアコンECU2等を強制的に動作させる必要性を低下させることができるため、エアコンECU2等が突然動作して乗員を驚かせる頻度を低下させることができると共に、省エネルギー化に貢献することができる。また、人命に危険性がある場合は、換気開始を予告情報によって乗員に予告した上で、車内の換気を開始できるため、換気動作の開始によって乗員を驚かせてしまうことを防止できる。
【0054】
なお、上述した本実施形態では、メータECU1(車内二酸化炭素濃度上昇判別装置)がエアコンECU2を制御して、車内を強制的に換気する場合について説明した。これに代えて、メータECU1が上記警報情報を乗員に出力するだけで、エアコンECU2を制御しない実施形態でも、乗員による車内の換気を促せるため、空調装置等を強制的に動作させる必要性を低下させることができ、空調装置等が突然動作して乗員を驚かせる頻度を低下させることができると共に、省エネルギー化に貢献することができる。
【0055】
さらに、本実施形態では、車内二酸化炭素濃度上昇判別装置をメータECU1で実現した場合について説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、車内で乗員に対する表示機能、音声出力機能、等を備えた例えばカーナビゲーション、カーオーディオ、タクシーメータ、等の各種車載機器で実現することもできる。
【0056】
このように上述した実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 車内二酸化炭素濃度上昇判別装置(メータECU)
2 換気装置(エアコンECU)
100 車内安全支援システム
P1 濃度情報取得手段(CPU)
P2 上昇速度検出手段(CPU)
P3 判別手段(CPU)
P4 警報情報出力手段(CPU)
P5 換気要求出力手段(CPU)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内における二酸化炭素の濃度の上昇原因を判別する車内二酸化炭素濃度上昇判別装置であって、
前記車内の呼気による二酸化炭素濃度の第1上昇速度よりも速く設定され、且つ、二酸化炭素センサに対する呼気の吹き掛け及び前記車内への排気ガスの引き込みの少なくとも一方による二酸化炭素濃度の第2上昇速度よりも遅く設定された上昇速度条件と、前記呼気による濃度上昇と判定するための前記上昇速度条件を満たす継続時間条件と、を有する判別条件情報を記憶する判別条件情報記憶手段と、
前記二酸化炭素センサが検出した前記車内における二酸化炭素の濃度情報を取得する濃度情報取得手段と、
前記取得した濃度情報に基づいて、前記上昇速度条件を満たす濃度の上昇速度を検出する上昇速度検出手段と、
前記検出した上昇速度の継続時間が前記継続時間条件を満たしている場合に、呼気による前記二酸化炭素濃度の上昇であると判別する判別手段と、
前記判別手段が呼気による前記二酸化炭素濃度の上昇と判別したことを警報する警報情報を前記車内の乗員に対して出力する警報情報出力手段と、
を有することを特徴とする車内二酸化炭素濃度上昇判別装置。
【請求項2】
前記判別手段は、前記検出した上昇速度の継続時間が前記継続時間条件を逸脱している場合に、前記呼気以外の要因による前記二酸化炭素濃度の上昇と判別する手段であり、
前記判別手段が前記呼気以外の要因による前記二酸化炭素濃度の上昇と判別した場合、前記車内の換気の開始を予告する予告情報を前記乗員に出力した後に、前記車内の換気を要求するための換気要求を予め定められた要求先に出力する換気要求出力手段を有することを特徴とする請求項1に記載の車内二酸化炭素濃度上昇判別装置。
【請求項3】
車内を換気する換気装置を有する車内安全支援システムにおいて、
請求項2に記載の車内二酸化炭素濃度上昇判別装置を有し、
前記換気要求出力手段は、前記要求先を前記換気装置とし、
前記換気装置は、前記換気要求出力手段からの換気要求に応じて前記車内の換気を行うことを特著とする車内安全支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−162096(P2011−162096A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28410(P2010−28410)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】