説明

車室内フロア清掃装置

【課題】少なくとも塵等の異物を除去する除去機構については電気エネルギーの供給を受ける必要がなく、しかも車室フロアに侵入した塵等を効果的に車室外へ排出することができる車室内フロア清掃装置を得る。
【解決手段】車体フロア14のフロントシート前側には底面が傾斜した凹部24が形成されており、この凹部24の上部側にカーペット本体部30が配設されている。カーペット本体部30と凹部24の底壁部24Aとの間には、複数本の吊り紐46が張設されている。吊り紐46には、複数の錘部48が吊られている。錘部48の下面には、ブラシ50が植設されている。また、凹部24の底壁部24Aの傾斜方向下流側の最深部には、ダストボックス28が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内フロア清掃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に乗員は土足で乗車するため、そのたびに外部から塵等が車室内へ運び込まれる。運び込まれた塵等はフロアカーペットに付着するため、乗員自身又は作業者によって定期的に掃除機等で清掃される。しかし、その作業労力は決して軽いとはいえず、定期的に行うとなると作業負担も大きくなる。
【0003】
下記特許文献1には、こうした課題を解決し得る車室内フロア清掃装置、即ち走行風を利用して表面に付着した塵等を自動的に車外に排出することをコンセプトとした自動車用フロアマットが開示されている。簡単に説明すると、この自動車用フロアマットは、フロントシートの前側に載置可能な大きさのマット本体を備えている。このマット本体の内部は空洞とされており、又表面には多数の毛体が植設されていると共に内部空間に連通する多数の塵落とし孔が形成されている。さらに、マット本体の前端部には外気と連通する前側接続部が接続されていると共に、マット本体の後端部にも外気と連通する後側接続部が接続されている。
【0004】
上記構成によれば、車両走行時、前側接続部から車外の空気がマット本体の空洞部に流入する。流入した空気は、空洞部を通って後側接続部から抜けていく。このとき、ベンチュリ効果によってマット本体の内部に負圧が発生し、この負圧によってマット本体の表面に持ち込まれた塵等が塵落とし孔から吸い込まれて空洞部内に落下する。そして、落下した塵等は、後側接続部から車外へと排出される。
【0005】
このように上記先行技術は、フロアマットの清掃に要する乗員又は作業者の作業負担を無くした点及び何ら電気エネルギーの供給なしにフロアマットの清掃を行う点において非常に評価すべきものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−172968号公報
【特許文献2】特開平7−329624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示された先行技術による場合、以下に説明する課題がある。
【0008】
すなわち、上記先行技術の場合、車両走行時にマット本体内の空洞部に空気を流入させ、このとき生じる負圧を利用してマット本体上の塵等を塵落とし孔から吸引し、車外へと排出するが、負圧による吸引力だけではマット本体上の塵等が塵落とし孔から落としきれないことも充分考えられる。例えば、マット本体上に植設された毛体に引っ掛かって塵落とし孔に塵等がうまく入らないとか、走行速度がそれほど速くない場合には、当然負圧も低くなり、吸引力が低下するため、塵等をうまく吸い込めないといったことが考えられる。従って、より効果的に塵等を車外へ排出できる構成の案出が望まれている。
【0009】
その一方で、昨今のエコ重視の観点から、先行技術のように電動式ではない構成にするか、或いは仮にモータ等の駆動力を使うとしても装置の一部の機構についてのみ電気エネルギーを使用するといった配慮が求められている。
【0010】
本発明は上記事実を考慮し、少なくとも塵等の異物を除去する除去機構については電気エネルギーの供給を受ける必要がなく、しかも車室フロアに侵入した塵等を効果的に車室外へ排出することができる車室内フロア清掃装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明に係る車室内フロア清掃装置は、車体フロアに設けられ、上面側が開放されると共に底面が傾斜された凹部と、この凹部に装着されて凹部を覆うと共に車体フロアの一般面と共にフロア面を形成し、かつ車室内側に向けられるカーペット表面と凹部の底面側に向けられるカーペット裏面とが入れ替わり可能に構成されたカーペット本体部と、このカーペット本体部のカーペット裏面と凹部の底面との間に設けられ、当該カーペット裏面と対向する側に備えられると共に車両走行時の振動入力により上下動し上昇時に当該カーペット裏面を叩く錘部と、凹部の底面と対向する側に備えられると共に錘部と一体化され下降時に凹部の底面をその傾斜方向へ掃う掃い部と、を含んで構成された清掃手段と、を有している。
【0012】
請求項2記載の発明に係る車室内フロア清掃装置は、請求項1記載の発明において、前記清掃手段は、前記カーペット裏面と前記凹部の底面との間に張設された紐体と、この紐体に支持された複数個の前記錘部と、各錘部の下側に配置された前記掃い部と、を含んで構成されている、ことを特徴としている。
【0013】
請求項3記載の発明に係る車室内フロア清掃装置は、請求項1又は請求項2記載の発明において、前記掃い部はブラシで構成されており、更に当該ブラシの毛足の長さはブラシ先端から凹部の底面までの距離が略一定になるように揃えられている、ことを特徴としている。
【0014】
請求項4記載の発明に係る車室内フロア清掃装置は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記清掃手段は、車室内に発生する騒音を低減するダイナミックダンパを構成するように少なくとも前記錘部の重さとその配置間隔が設定されている、ことを特徴としている。
【0015】
請求項5記載の発明に係る車室内フロア清掃装置は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明において、複数個配置された前記錘部の少なくとも一つは磁性体で構成されており、当該磁性体で構成された錘部の移動軌跡上には電磁誘導用のコイルが立設されていると共に、当該錘部にはコイルを挿通させるコイル挿通孔が形成されている、ことを特徴としている。
【0016】
請求項6記載の発明に係る車室内フロア清掃装置は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の発明において、前記凹部内には、紫外線を照射する紫外線ランプが配設されており、当該紫外線ランプは前記磁性体で構成された錘部と前記コイルとで発生させた誘導起電力によって点灯するように構成されている、ことを特徴としている。
【0017】
請求項7記載の発明に係る車室内フロア清掃装置は、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の発明において、前記凹部の床面における傾斜方向の最深部には、異物を収容する収集部が着脱可能に設けられている、ことを特徴としている。
【0018】
請求項1記載の本発明によれば、カーペット本体部はそのカーペット表面がカーペット裏面と入れ替わり可能に構成されている。このため、乗員の乗車時にカーペット表面に持ち込まれた塵等の異物はカーペット裏面側へ移動し、凹部の底面側と対峙する。
【0019】
ここで、本発明では、カーペット裏面と凹部の底面との間には清掃手段が設けられており、車両走行時の振動が入力されると、カーペット裏面と対向する錘部が上下動する。これにより、錘部が上昇したときにカーペット裏面が叩かれ、塵等の異物がカーペット裏面からはたき落とされる。
【0020】
一方、凹部の底面と対向する側には掃い部が備えられている。掃い部は錘部と一体化されているため、錘部が車両走行時の振動入力により上下動すると、それに伴って掃い部も上下動する。そして、掃い部は下降したときに凹部の底面をその傾斜方向へ掃う。これにより、凹部の底面に落下した塵等が当該底面の傾斜方向へ掃い出される。
【0021】
このように本発明によれば、車両走行時に車体フロアに入力される振動を利用して錘部を上下動させる構成としたので、少なくとも清掃手段を作動させるためには電気エネルギーの供給を受ける必要がない。従って、エコ重視の傾向に添うことができる。
【0022】
また、錘部でカーペット本体部の裏面を直接叩いて当該裏面に付着した塵等を強制的に落とすようにしたので、前述した先行技術のように負圧を発生させて塵等を吸い出す吸引力方式に比べて、カーペット本体部の表面に付着した塵等を効果的に除去することができる。
【0023】
請求項2記載の本発明によれば、カーペット本体部のカーペット裏面と凹部の底面との間には紐体が張設されているため、車両走行時の振動が入力されると、紐体が上下に揺れる。紐体には錘部が支持されているため、紐体が上下動すると、それに伴って錘部が上下動する。錘部の下側には掃い部が配置されているため、錘部が下降した際に掃い部が凹部の底面を掃う。
【0024】
このように本発明では、カーペット本体部のカーペット裏面と凹部の底面との間に紐体を張設し、この紐体に錘部を支持させる構成としたので、車体フロア側の前後二箇所に開口部を設けて走行風の通り道を形成する必要がある前述した従来技術に比べて、車体フロアに与える影響が少ない。すなわち、車体フロアに比較的大きな開口部を形成すると、その部分の剛性が低下するため、補強の要否を検討する必要があり、補強すれば重量及びコストの増加に繋がる。
【0025】
これに対し、本発明では、凹部に比較的大きな開口部を形成する必要はないので、かかる問題は生じない。
【0026】
請求項3記載の本発明によれば、掃い部はブラシで構成されており、更に当該ブラシの毛足の長さはブラシ先端から凹部の底面までの距離が略一定になるように揃えられているので、凹部の底面に均一にブラシが当たる。
【0027】
請求項4記載の本発明によれば、清掃手段の少なくとも錘部の重さとその配置間隔が、車室内に発生する騒音を低減するダイナミックダンパを構成するように設定されているので、車両走行時の振動入力より車体フロアが振動して異音が発生している場合等に、その異音を低減又は消音する共振周波数となるように錘部の重さと配置間隔を設定することにより、異音の低減又は消音効果が得られる。
【0028】
請求項5記載の本発明によれば、複数個配置された錘部の少なくとも一つは磁性体で構成されている。この磁性体で構成された錘部にはコイルを挿通させるコイル挿通孔が形成されており、コイル挿通孔内には電磁誘導用のコイルが立設されているため、車両走行時の振動が入力されて磁性体で構成された錘部が上下動すると、コイルに誘導起電力が生じる。
【0029】
請求項6記載の本発明によれば、車体フロアの凹部内には紫外線ランプが配設されている。紫外線ランプは、磁性体で構成された錘部がコイルに沿って上下動することにより発生した誘導起電力を利用して点灯される。従って、バッテリの電力を使用することなく、凹部内を殺菌・消毒することができる。
【0030】
請求項7記載の本発明によれば、凹部の底面における傾斜方向の最深部には収集部が着脱可能に設けられており、掃い部によって掃われた塵等の異物は凹部の底面に沿って掃い出され、収集部内に収集される。そして、定期的に乗員又は作業者によって収集部が凹部から取り出され、内部の異物が廃棄される。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る車室内フロア清掃装置は、少なくとも塵等の異物を除去する除去機構については電気エネルギーの供給を受ける必要がなく、しかも車室フロアに侵入した塵等を効果的に車室外へ排出することができるという優れた効果を有する。
【0032】
請求項2記載の本発明に係る車室内フロア清掃装置は、車体フロアに強度及び剛性を犠牲にしなくてよいという優れた効果を有する。
【0033】
請求項3記載の本発明に係る車室内フロア清掃装置は、凹部の底面に掃きムラが生じることを抑制又は防止することができるという優れた効果を有する。
【0034】
請求項4記載の本発明に係る車室内フロア清掃装置は、車両走行時における車室内の静粛性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0035】
請求項5記載の本発明に係る車室内フロア清掃装置は、錘部を利用して発電することができるという優れた効果を有する。
【0036】
請求項6記載の本発明に係る車室内フロア清掃装置は、凹部内を衛生的に保つことができるという優れた効果を有する。
【0037】
請求項7記載の本発明に係る車室内フロア清掃装置は、塵等の異物を簡単に廃棄することができるので、使い勝手がよいという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1実施形態に係る車室内フロア清掃装置の全体構成を示す縦断面図である。
【図2】図1に示される車室内フロア清掃装置の分解斜視図である。
【図3】図1に示される車室内フロア清掃装置を備えた自動車の車体構造を底面側から見て示す斜視図である。
【図4】図1に示される状態から車室内フロア清掃装置のカーペット本体部が作動して異物が付着した上面が下面側に移動した状態を示す図1に対応する縦断面図である。
【図5】(A)は錘部が上昇した状態を示す要部拡大断面図であり、(B)は錘部が下降した状態を示す要部拡大断面図である。
【図6】(A)はブラシが凹部の底面に接触した状態を示す要部拡大断面図であり、(B)は更に錘部が下降してブラシが撓み異物をダストボックス側へ移動させた状態を示す要部拡大断面図である。
【図7】第2実施形態に係る車室内フロア清掃装置の全体構成を示す縦断面図である。
【図8】(A)は錘部が上昇した状態を示す要部拡大断面図であり、(B)は錘部が下降した状態を示す要部拡大断面図である。
【図9】第3実施形態に係る車室内フロア清掃装置の全体構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
〔第1実施形態〕
以下、図1〜図6を用いて、本発明に係る車室内フロア清掃装置の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
【0040】
図1には、本実施形態に係る車室内フロア清掃装置の縦断面図が示されている。また、図2には、当該車室内フロア清掃装置の分解斜視図が示されている。さらに、図3には、本実施形態に係る車室内フロア清掃装置を備えたミニバン系の自動車を裏面側から見た斜視図が示されている。
【0041】
図3に示されるように、自動車10の車室12の下部には、車体フロア14が配設されている。車体フロア14の下面側の両サイドには、車両前後方向に沿って左右一対のロッカ16が配設されている。さらに、左右一対のロッカ16の内側には、ロッカ16に対して略平行に左右一対のフロアサイドメンバ18が延在されている。また、左右一対のフロアサイドメンバ18間には、車両幅方向を長手方向として配置された複数のフロアクロスメンバ20が所定の間隔で架け渡されている。
【0042】
補足すると、上記図3に示される自動車10の車体構造はミニバン系のものであり、ミニバン系の自動車10の場合、フラットな床を実現するためにロッカ16やフロアサイドメンバ18、フロアクロスメンバ20等の車体構造部材(車体骨格部材)が車体フロア14の下面側に配置されている。換言すれば、車体構造部材を車体フロア14の下側に配置する分、車体フロア14が高い位置に配設されている。このため、車体フロア14の下面側には、フロアサイドメンバ18やフロアクロスメンバ20等の車体構造部材が配置されていないところにデッドスペースが存在し、本実施形態では、左右一対のフロアサイドメンバ18と前後に隣合うフロアクロスメンバ20とで囲まれた範囲(図3の斜線部)に形成されるデッドスペースSを利用して車室内フロア清掃装置22を設けている。
【0043】
具体的には、図1及び図2に示されるように、車体フロア14におけるフロントシートの前側には、車両下方側へ凹み上面側が開放された凹部24が形成されている。なお、本実施形態では、運転席及び助手席の双方を含めた範囲(図3に斜線を付した範囲)に亘って車両幅方向に連続した細長い凹部を形成したが、これに限らず、運転席及び助手席のそれぞれに対応して凹部を形成してもよいし、いずれか一方のみに凹部を設けてもよい。また、2列目シートの前、3列目シートの前に凹部を形成して本発明を適用するようにしてもよい。
【0044】
凹部24は平面視で矩形状に形成されており、底壁部24Aと前壁部24Bと後壁部24Cと左右の側壁部24Dとによって構成されている。底壁部24Aは前端側が後端側よりも高くなるように所定勾配で傾斜されている。なお、底壁部24Aの上面が本発明における「(凹部の)底面」に相当する。底壁部24Aの傾斜方向下流側の端部(最深部)には、車両幅方向に沿って車両下方側へ凹むダストボックス収容部26が形成されている。ダストボックス収容部26は左右の側壁部24D間に亘って形成されており、このダストボックス収容部26に細長いダストボックス28が着脱自在に収容されている。ダストボックス28の高さは、ダストボックス収容部26の深さと同じかこれよりも若干低い高さに設定されている。また、ダストボックス収容部26の両側部の上端幅は、ダストボックス収容部26の溝幅に略一致されている。
【0045】
上述した凹部24には、車室内フロア清掃装置22が配設されている。車室内フロア清掃装置22は、凹部24の上部側に配置されるカーペット本体部30と、凹部24の下部側に配置される清掃手段としての清掃部32と、によって構成されている。
【0046】
カーペット本体部30は、軸線が平行に配置された前後一対の駆動ローラ34及び従動ローラ36と、これらの駆動ローラ34及び従動ローラ36に巻き掛けられた無端ベルト38と、無端ベルト38の表面に固定されたカーペット40と、を含んで構成されている。無端ベルト38の上部側は車体フロア14と同じ高さに配置されており、車体フロア14の一般面と共にフロア面を形成している。また、駆動ローラ34は凹部24の後壁部24Cの近傍に配置されている。さらに、従動ローラ36は凹部24の前壁部24Bの近傍に配置されている。従って、無端ベルト38及び無端ベルト38に取り付けられたカーペット40は凹部24を略覆う範囲に亘って存在しており、カーペット40の表面側40Aが車室内側に露見されて乗員の足置きとされ、裏面側40Bが凹部24の底壁部24Aに対向して配置されている。なお、カーペット40は、無端ベルト38から取外しできるようにするのが好ましい。また、カーペット40の表面側40Aの高さは、車体フロア14の上面に敷設されたフロアカーペット41の高さに一致されている。
【0047】
また、駆動ローラ34の駆動軸42には、図示しない駆動ギヤが固着されている。駆動ギヤには、駆動手段である図示しないモータが減速ギヤを介して接続されている。モータには図示しないコントローラが接続されており、コントローラから駆動信号が出力されると、駆動回転するようになっている。駆動ギヤと従動ギヤとには樹脂製のチェーンベルトが巻き掛けられて駆動力を伝達するようになっている。なお、この駆動機構の構成は一例であり、他の構成を採ってもよいし、又図示しないハンドル等の操作手段を駆動軸に接続して手動で駆動ローラ34を回転させるようにしてもよい。さらに、駆動源を一切用いず、後述する車両走行時に車体フロアに入力される振動を利用して少しずつローラを回転させるようにしてもよい。また、停車時にドライバの意思でカーペット本体部30を作動させるように一定の制限機構を設けてもよい。
【0048】
上記カーペット本体部30は、凹部24の内部スペースの上部側に配置されている。従って、カーペット40の裏面側40Bと凹部24の底壁部24Aとの間には所定のスペース44が形成されており、このスペース44内に清掃部32が設けられている。
【0049】
清掃部32は、張設部材としての複数本の吊り紐46と、これらの複数本の吊り紐46に挿通された複数個の錘部48と、各錘部48の下面側に設けられた複数のブラシ50と、によって構成されている。
【0050】
吊り紐46は、車両前後方向を長手方向として張設されており、車両幅方向に所定の間隔で複数本配置されている。また、吊り紐46は弾性を有しており、一端部が凹部24の前壁部24Bを貫通してその前面側にて係止され、他端部が凹部24の後壁部24Cを貫通してその後面側にて係止されている。なお、吊り紐46は弾性を有していればよいので、紐でなくてもワイヤ等でもよい。
【0051】
上記複数本の吊り紐46には車両前後方向に所定ピッチで長尺状の錘部48が挿通されている。各錘部48は長尺なバー状に形成されており、車両前後方向に沿って切断した断面形状は矩形とされている。各錘部48は吊り紐46に挿通された後に位置がずれないように固定されている。固定の方法はいずれでもよく、錘部48の前後に位置ずれ防止用の玉止めを作ってもよいし、玉止めに相当する金具を吊り紐46に装着してもよい。また、錘部48が吊り紐46に対して多少動けるように玉止め等する位置を余裕をもって設定してもよい。また、錘部48の固定位置及び錘部48の重さは、これらの錘部48が車体フロア14との関係で異音を低減又は防止するダイナミックダンパとして機能するように設定されている。
【0052】
吊り紐46に錘部48が吊るされた状態では、錘部48の上面48Aがカーペット40の裏面側40Bに対向して配置されている。また、錘部48の下面には、ブラシ50が植設されている。ブラシ50は、凹部24の底壁部24Aの傾斜方向側へ傾いた状態で直設されている。また、各ブラシ50の毛足の長さは同一寸法に設定されている。
【0053】
上記清掃部32では、吊り紐46が車両上方側へ揺れると、錘部48の上面48Aがカーペット40の裏面側40Bに当接し、吊り紐46が車両下方側へ揺れると、ブラシ50の先端部が凹部24の底壁部24Aに接触してブラシ50の傾斜方向へ塵等の異物52(図4参照)を掃い出すようになっている。
【0054】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0055】
図1に示される状態が乗員が乗車したときの車室内フロア清掃装置22の状態である。この状態では、まだ車両走行時になっていないので、路面入力(振動)が車体フロア14に伝達されていない。従って、吊り紐46が上下に揺れることはない。
【0056】
この状態から車両走行時になると、図示しないコントローラによってモータが所定時間駆動され、駆動ローラ34が駆動軸42回りに駆動回転される。このため、従動ローラ36が従動軸43回りに従動回転し、無端ベルト38が図4の矢印A方向へ移動される。これにより、乗員が乗車したときに車室内に持ち込んだ塵等の異物52がカーペット40の表面側40Aに移り、更に表面側40Aから裏面側40Bへ搬送される。
【0057】
一方、車両走行時になると、路面入力(振動)が車体フロア14に伝達されて凹部24内に張設された複数本の吊り紐46が上下に揺れる。これにより、図5(A)に示されるように、錘部48が上昇してその上面48Aがカーペット40の裏面側40Bを叩いて、塵等の異物52がカーペット40の裏面側40Bから落とされる。錘部48は上昇後、今度は図5(B)に示される如く自重で落下し、ブラシ50が凹部24の底壁部24Aに押し付けられる。図6(A)はブラシ50の先端部が凹部24の底壁部24A上に接した状態を示しており、この状態では塵等の異物52はまだ落下した位置に止まっている。そして、ブラシ50の先端部が凹部24の底壁部24Aの上面に接した後も、錘部48が更に底壁部24A側へ慣性移動することにより、ブラシ50が底壁部24A側へ押し潰されて、異物52が底壁部24Aの傾斜方向下流側へ押出される。上記の繰り返しより、異物52はダストボックス28内へ掃い出されて収容される。ダストボックス28は定期的に車外へ取り出されて溜まった異物52が捨てられる。
【0058】
なお、上記車室内フロア清掃装置22は、例えば、エンジンを始動させると、タイマが起動すると共にモータが駆動回転され、清掃が終了したとみなせる所定時間が経過した時点でモータの駆動が停止されるようになっている。但し、これに限らず、車両走行中は常時モータを駆動回転させるようにしてもよいし、無端ベルト38の側面や駆動ローラ34又は従動ローラ36等のカーペット本体部30に荷重検知センサを設置し、乗員の足がカーペット40の表面側40Aに載せられたことが検知された場合に、所定時間モータが駆動回転されるようにしてもよい。
【0059】
このように本実施形態に係る車室内フロア清掃装置22では、車両走行時に車体フロア14に入力される振動を利用して錘部48を上下動させる構成としたので、少なくともブラシに相当する清掃手段を作動させるためには電気エネルギーの供給を受ける必要がない。従って、エコ重視の傾向に添うことができる。
【0060】
また、錘部48でカーペット40の裏面側40Bを直接叩いて当該裏面側40Bに付着した塵等の異物52を強制的に落とすようにしたので、前述した先行技術のように負圧を発生させて塵等の異物を吸い出す吸引力方式に比べて、カーペット40の裏面側40Bに付着した塵等の異物52を効果的に除去することができる。
【0061】
上記より、本実施形態に係る車室内フロア清掃装置22によれば、少なくとも塵等の異物52を除去する除去機構については電気エネルギーの供給を受ける必要がなく、しかも車体フロア14に侵入した塵等の異物52を効果的に車室外へ排出することができる。
【0062】
また、本実施形態では、カーペット本体部30の裏面と凹部24の底壁部24Aとの間に複数本の吊り紐46を張設し、この吊り紐46に錘部48を支持させる構成としたので、車体フロア側の前後二箇所に開口部を設けて走行風の通り道を形成する必要がある前述した先行技術に比べて、車体フロア14に与える影響が少ない。すなわち、車体フロアに比較的大きな開口部を形成すると、その部分の剛性が低下するため、補強の要否を検討する必要があり、補強すれば重量及びコストの増加に繋がる。これに対し、本実施形態では、凹部24に比較的大きな開口部を形成する必要はないので、かかる問題は生じない。その結果、本実施形態によれば、車体フロア14に強度及び剛性上の影響を与えることがない。つまり、車体フロア14の強度及び剛性を犠牲にしなくてよい。
【0063】
さらに、本実施形態では、錘部48の重さとその配置間隔が、車体フロア14との関係でダイナミックダンパを構成するように設定されている。つまり、車両走行時の振動入力より車体フロア14が振動して異音が発生している場合等に、この異音を低減又は消音する共振周波数となるように錘部48の重さとその配置間隔が決められている。これにより、車両走行時に車体フロア14等が振動して発生する異音が小さくなり、又は消音される。その結果、本実施形態によれば、車両走行時における車室12内の静粛性を向上させることができる。
【0064】
また、本実施形態では、凹部24の底壁部24Aにおける傾斜方向の最深部にダストボックス28を着脱可能に設けたので、塵等の異物52を簡単に廃棄することができ、使い勝手がよい。
【0065】
〔第2実施形態〕
次に、図7及び図8を用いて、本発明に係る車室内フロア清掃装置の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0066】
図7に示されるように、この車室内フロア清掃装置22では、上述した第1実施形態の構成に発光装置60を付加した点に特徴がある。
【0067】
具体的には、複数あるうちの任意の錘部62が永久磁石で構成されている。なお、本実施形態では、吊り紐46の振幅が一番大きい前後方向中間部に配置された錘部を永久磁石による錘部62としているが、それ以外の錘部48を永久磁石で構成してもよい。
【0068】
この錘部62の前後方向中間部には所定径寸法の円孔であるコイル挿通孔64が形成されており、このコイル挿通孔64内にコイル66が車両上下方向に貫通した状態で配置されている。コイル挿通孔64の内径寸法は、錘部48が上下動した際にコイル挿通孔64の内周面とコイル66とが接触しないようにコイル66の外径よりも大きく設定されている。また、コイル66は、凹部24の底壁部24Aに設けられた図示しない支持棒等の支持手段に巻装された状態で立設されている。
【0069】
一方、凹部24の後壁部24Cの上部側(吊り紐46とダストボックス28との間)には、紫外線LEDで構成されたランプ68が取り付けられている。ランプ68は、リード線70を介してコイル66の下端部と接続されている。
【0070】
なお、コイル66及びランプ68は、凹部24内で車両幅方向の左右二箇所又は左右と中央の三箇所等、適宜間隔で複数個設けられている。
【0071】
(作用・効果)
上記構成によれば、前述した第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0072】
加えて、車両走行時に車体振動が車体フロア14に入力されて吊り紐46が上下に揺れると、図8(A)、(B)に示されるように、他の錘部48と共に永久磁石で構成された錘部62が上下動する。これにより、錘部62とコイル66との間で電磁誘導が生じ、誘導起電力が発生する。このため、リード線70に電流が流れ、ランプ68が点灯する。ランプ68は紫外線LEDで構成されているため、紫外線が凹部24内のダストボックス28を含むスペース44全体に照射される。従って、このスペース44内を殺菌及び消毒することができ、衛生的に保つことができる。
【0073】
なお、スペース44は閉じた空間であるので、紫外線が車室12内に漏洩することはない。
【0074】
このように本実施形態では、錘部48を利用して発電することができる。そして、これにより、バッテリの電力を使用することなく、凹部24内のスペース44を殺菌・消毒して凹部24内を衛生的に保つことができる。
【0075】
なお、錘部62の上下動をより安定させるために、凹部24の左右の側壁部24Dに錘部62の長手方向の両端部の上下動をガイドするガイド手段を設けてもよい。
【0076】
〔第3実施形態〕
次に、図9を用いて、本発明に係る車室内フロア清掃装置の第3実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態等と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0077】
図9に示されるように、前述した第1実施形態において、ブラシ80の毛足の長さを車両前方側から車両後方側へ徐々に長くすることにより、ブラシ80の先端部から凹部24の底壁部24Aまでの距離が略一定になるようした点に特徴がある。
【0078】
(作用・効果)
上記構成によれば、錘部48が上下動した際に、ブラシ50の先端部が凹部24の底面に均一に当たる。このため、凹部24の底面に掃きムラが生じることを抑制又は防止することができる。
【0079】
〔上記実施形態の補足説明〕
なお、上述した各実施形態では、駆動ローラ34と従動ローラ36を車両前後方向に離間して配置してカーペット40を車両前方側へ移動させるようにしたが、これに限らず、車両後方側へ移動させてもよいし、駆動ローラ34と従動ローラ36を車両幅方向に離間して配置してカーペット40を車両幅方向へ移動させるようにしてもよい。さらに、駆動機構はローラ対及び無端ベルトを使った機構以外であってもよく、カーペット表面とカーペット裏面とを入れ替えることが可能な変更手段であればよい。
【0080】
また、上述した各実施形態では、ダストボックス28を設置したが、必ずしもダストボックス28は必須ではなく、廃止してもよい。この場合、ダストボックス収容部26をそのまま残して塵等の異物52を直接溜めるようにし、溜まった異物52はハンドクリーナ等で清掃するようにしてもよい。さらに、このダストボックス収容部26に相当する凹部又は凹溝さえもなくしてもよい。この場合においても、凹部24の底壁部24Aは傾斜しているので、塵等の異物52は傾斜方向下流側の最深部にある程度は溜められる。
【符号の説明】
【0081】
12 車室
14 車体フロア
22 車室内フロア清掃装置
24 凹部
24A 底壁部(底面)
28 ダストボックス
30 カーペット本体部
32 清掃部(清掃手段)
40 カーペット
40A 表面側(カーペット表面)
40B 裏面側(カーペット裏面)
46 吊り紐(紐体)
48 錘部
50 ブラシ(掃い部)
52 異物
62 錘部
64 コイル挿通孔
66 コイル
68 ランプ(紫外線ランプ)
80 ブラシ(掃い部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フロアに設けられ、上面側が開放されると共に底面が傾斜された凹部と、
この凹部に装着されて凹部を覆うと共に車体フロアの一般面と共にフロア面を形成し、かつ車室内側に向けられるカーペット表面と凹部の底面側に向けられるカーペット裏面とが入れ替わり可能に構成されたカーペット本体部と、
このカーペット本体部のカーペット裏面と凹部の底面との間に設けられ、当該カーペット裏面と対向する側に備えられると共に車両走行時の振動入力により上下動し上昇時に当該カーペット裏面を叩く錘部と、凹部の底面と対向する側に備えられると共に錘部と一体化され下降時に凹部の底面をその傾斜方向へ掃う掃い部と、を含んで構成された清掃手段と、
を有する車室内フロア清掃装置。
【請求項2】
前記清掃手段は、
前記カーペット裏面と前記凹部の底面との間に張設された紐体と、
この紐体に支持された複数個の前記錘部と、
各錘部の下側に配置された前記掃い部と、
を含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の車室内フロア清掃装置。
【請求項3】
前記掃い部はブラシで構成されており、
更に当該ブラシの毛足の長さはブラシ先端から凹部の底面までの距離が略一定になるように揃えられている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車室内フロア清掃装置。
【請求項4】
前記清掃手段は、車室内に発生する騒音を低減するダイナミックダンパを構成するように少なくとも前記錘部の重さとその配置間隔が設定されている、
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の車室内フロア清掃装置。
【請求項5】
複数個配置された前記錘部の少なくとも一つは磁性体で構成されており、
当該磁性体で構成された錘部の移動軌跡上には電磁誘導用のコイルが立設されていると共に、当該錘部にはコイルを挿通させるコイル挿通孔が形成されている、
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の車室内フロア清掃装置。
【請求項6】
前記凹部内には、紫外線を照射する紫外線ランプが配設されており、
当該紫外線ランプは前記磁性体で構成された錘部と前記コイルとで発生させた誘導起電力によって点灯するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の車室内フロア清掃装置。
【請求項7】
前記凹部の床面における傾斜方向の最深部には、異物を収容する収集部が着脱可能に設けられている、
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の車室内フロア清掃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−167910(P2010−167910A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12325(P2009−12325)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】