説明

車椅子乗車可能な自動車

【課題】運転席と助手席と後席のシートクッションをシートバックに重ね、かつ運転席を最後方位置に移動させ、助手席を前方に移動させた状態で、車体側部のドア開口から車椅子を乗車させることのできる自動車において、運転席と助手席と後席を、簡単に、車椅子乗車のための状態に設定できるようにする。
【解決手段】シートクッションをシートバックに重ねた運転席13を後方に移動させるとき、その運転席13によってスイッチ部材73を回動させ、これによって後席のシートクッションをロックしていたロック部材52,53を回動させて、該後席のシートクッションに対するロックを解除し、後席のシートクッションを後席のシートバックに重ねた位置に回動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転席と助手席とその後方に位置する後席とが配置された車室内に、車体側部のドア開口から車椅子を乗車させることのできる自動車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車椅子利用者が車椅子に乗ったまま車室内に乗車できる自動車は従来より周知である(特許文献1参照)。そのうちの1つに、車体側部のドア開口から車椅子を乗車させることのできる自動車が知られている。図20は、この形式の自動車の一例を示す側面図であり、図21及び図22は、車椅子を当該自動車の車室内に乗車させるときの概略を示した部分断面平面図である。これらの図における矢印Frは自動車の前進方向を示し、矢印Wは車幅方向を示している。
【0003】
図21及び図22に示すように、車室RA内には、運転席13Aと、その隣りに位置する助手席14Aと、その後方に位置する後席15Aとが配置されている。かかる自動車の車室RA内に車椅子を乗車させるときは、図21に示すように、後席15Aのシートクッション16Aを、そのシートバック17Aの着座者支え面18Aに重なった状態に立ち上げると共に、図20にも示したように、車体2Aの側部の後部側のドア4Aを開いて後部側のドア開口5Aを開放し、そのドア開口5Aの下部と路面29Aとに車椅子乗降板1Aを架け渡す。この状態で、図21に示すように、利用者PAが乗った車椅子11Aの前輪19Aと後輪20Aを車椅子乗降板1A上を転動させながら、当該車椅子11Aを矢印A方向に走行させて、図22に示したように、その車椅子11Aを車室RA内に移動させる。
【0004】
上述のようにして車椅子11Aを車室RA内に移動させたとき、車椅子11Aとその車椅子11Aに着座した利用者PAの姿勢は、自動車の前進方向Frに対して横を向いた状態となっている。そこで、利用者PAが前向きとなるように車椅子11Aを図22に矢印Kで示した方向に回転させようとすると、その車椅子11Aが運転席13Aに当ってしまい、車椅子11Aを矢印K方向に回転させることはできない。後席が、図22に示した後席15Aよりも大きく後方に位置している大型の自動車の場合には、車室内に移動させた車椅子11Aを、図22に矢印Yで示した方向に回転させることはできるが、この場合は車椅子11Aが後向きの姿勢となる。
【0005】
上述のように、従来公知の自動車の車室RA内には車椅子11Aを前向きに回転させるスペースがないため、車椅子11Aに着座した利用者PAは、横向きか又は後向きの姿勢で乗車せざるを得ず、自動車の走行時の快適性が失われる欠点を免れない。
【0006】
そこで、後席15Aのシートクッション16Aを図21及び図22に示したように立ち上げるだけでなく、運転席13Aのシートクッション30Aを、そのシートバック32Aの着座者支え面35Aに重なった状態に立ち上げ、かつ助手席14Aのシートクッション31Aも、そのシートバック33Aの着座者支え面36Aに重なった状態に立ち上げ、この状態で、助手席14Aを、車室RAの前部に位置するインストルメントパネル37Aに隣接した最前方位置に移動させ、かつ運転席13Aを、そのシートバック32Aが後席15Aの立ち上がったシートクッション16Aに当接した最後方位置に移動させることができるように自動車を構成することが考えられる。このように運転席13Aを最後方位置へ移動させ、かつ助手席14Aを最前方位置に移動させることができれば、車室RA内に大きなスペースができるので、車体側部のドア開口5Aを通して、車室RA内に乗車させた車椅子11Aを、楽に前方を向いた姿勢に回転させることができる。これにより、車椅子11Aに着座した利用者PAも、他の乗員と同様に前方を向いた姿勢で快くドライブを楽しむことができる。
【0007】
ところが、自動車を上述のように構成した場合、車椅子11Aを車室RA内に乗車させるのに先立って、運転席13Aと助手席14Aのシートクッション30A,31Aを立ち上がった状態の格納位置に回動させるだけでなく、後席15Aのシートクッション16Aを、手操作によって立ち上がった状態の格納位置に回動させなければならないため、その全操作が煩雑で手間のかかるものとならざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−281852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述した認識に基づきなされたものであって、その目的とするところは、簡単な操作によって、運転席、助手席及び後席を、車体側部のドア開口を通して車椅子を乗車させることのできる状態に設定することのできる自動車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、車室内に運転席と助手席とその後方に位置する後席とが配置され、該運転席と助手席と後席は、着座者の背部を支えるシートバックと着座者の尻部を支えるシートクッションをそれぞれ有し、該運転席と助手席のシートバックは、車体の床面を構成するフロアパネルに対してほぼ垂直に立ち上がったホームポジションから後方に傾倒可能に支持され、かつ該運転席と助手席のシートクッションは、着座者の尻部を支えることのできるほぼ水平な使用位置と、ホームポジションを占めたシートバックの着座者支え面に重なった格納位置との間を回動可能に支持され、前記後席のシートクッションは、自動車の前進方向に見て右側に位置する右クッションと、その左側に位置する左クッションとを具備し、該右クッションと左クッションは、着座者の尻部を支えることのできるほぼ水平な使用位置と、立ち上がった状態の後席のシートバックの着座者支え面に重なった格納位置との間をそれぞれ回動可能に支持され、前記運転席は、そのシートバックがホームポジションを占め、かつそのシートクッションが格納位置を占めた状態で、該シートバックが、格納位置を占めた後席の右クッションに当接した最後方位置に移動可能に支持され、前記助手席は、そのシートバックがホームポジションを占め、かつそのシートクッションが格納位置を占めた状態で、該シートクッションがインストルメントパネルに隣接した最前方位置へと移動可能に支持されていて、前記後席の右クッションと左クッションをそれぞれ前記格納位置に立ち上げ、前記運転席を前記最後方位置に移動させると共に、前記助手席を前記最前方位置に移動させた状態で、車体側部のドア開口を通して、車椅子を車室外から車室内に移動させ、或いは車室内から車室外に移動させることのできる自動車であって、前記後席の右クッションと左クッションをそれぞれその使用位置にロックする右ロック部材及び左ロック部材と、右クッションと左クッションをそれぞれ格納位置に向けて回動付勢する右付勢手段及び左付勢手段と、前記運転席をその最後方位置へ移動させるとき、該運転席によって作動させられて、前記右ロック部材と左ロック部材による右クションと左クッションに対するロックを解除するロック解除手段とを具備し、該ロック解除手段によって、右ロック部材と左ロック部材によるロックを解除された右クッションと左クッションは、前記右付勢手段と左付勢手段の作用によって、それぞれ自動的に格納位置に回動するように構成された自動車を提案するものである。
【0011】
また、上記自動車において、前記右ロック部材は、前記右クッションをその使用位置にロックするロック位置と該右クッションに対するロックを解除したアンロック位置との間を回動可能にフロアパネルに支持され、前記左ロック部材も、前記左クッションをその使用位置にロックするロック位置と該左クッションに対するロックを解除したアンロック位置との間を回動可能にフロアパネルに支持されていて、前記ロック解除手段は、最後方位置に向けて移動する運転席によって加圧されるように上方に突出した突出位置と、該運転席によって加圧されて下方に退避した退避位置との間を回動可能にフロアパネルに支持されたスイッチ部材と、該スイッチ部材が前記突出位置から退避位置へ回動することによって、前記右ロック部材と左ロック部材がロック位置からアンロック位置に回動するように、該右ロック部材及び左ロック部材と前記スイッチ部材とを連結する連結装置とを具備していると有利である。
【0012】
さらに、上記自動車において、前記右ロック部材と左ロック部材は、格納位置から使用位置へと回動する右クッションと左クッションによってそれぞれ加圧されてアンロック位置からロック位置へ回動するようにフロアパネルに回動可能に支持され、前記連結装置は、前位置と後位置との間を移動可能にフロアパネルに支持されたスライダと、前端部が前記スイッチ部材に係止され、後端側が前記スライダを相対摺動可能に貫通し、かつその後端部に第1の小ブロックが固定された第1の連結部材と、前端側が前記スライダを相対摺動可能に貫通し、その前端部に第2の小ブロックが固定され、かつ後端部が前記右ロック部材に係止された第2の連結部材と、前端側が前記スライダを相対摺動可能に貫通し、その前端部に第3の小ブロックが固定され、かつ後端部が前記左ロック部材に係止された第3の連結部材とを有し、前記スイッチ部材が突出位置を占めると共に、前記スライダが後位置を占め、かつ前記右ロック部材と左ロック部材がそれぞれロック位置を占めた状態で、前記運転席が最後方位置へ向けて移動するとき、該運転席によって加圧されて突出位置から退避位置に回動するスイッチ部材によって前記第1の連結部材が前方に引かれ、該第1の連結部材の後端部に固定された第1の小ブロックによって前記スライダが加圧されて該スライダが前位置に移動すると共に、前記第2及び第3の小ブロックが前位置へ向けて移動するスライダにより加圧されて第2及び第3の連結部材が前方に引かれ、これにより右ロック部材と左ロック部材が、それぞれロック位置からアンロック位置へと回動し、前記スイッチ部材が退避位置を占め、かつ前記スライダが前位置を占めた状態で、左ロック部材がアンロック位置に留まったまま、右ロック部材がアンロック位置からロック位置に回動して、第2の連結部材が後方に引かれたとき、前記スライダは前記第2の小ブロックにより加圧されて後位置に移動し、このとき第1の小ブロックが該スライダにより加圧されて第1の連結部材が後方に引かれ、かつスイッチ部材が突出位置へと回動すると共に、後位置に向けて移動するスライダは第3の連結部材に対して摺動し、該第3の連結部材は引かれることなく、左ロック部材はアンロック位置に留まったままとなるように、第1の小ブロックが固定された第1の連結部材と、第2の小ブロックが固定された第2の連結部材と、第3の小ブロックが固定された第3の連結部材が、スライダに組み付けられていると共に、スイッチ部材、右ロック部材及び左ロック部材にそれぞれ係止されていると有利である。
【0013】
また、上述した各自動車において、前記運転席は、そのシートバックをホームポジションに向けて回動付勢するバック付勢手段と、該バック付勢手段により付勢されてホームポジションに回動したシートバックをそのホームポジションに停止させるストッパと、該シートバックがいずれの角度位置にあるときも、該シートバックをその角度位置にロックすることのできるロック装置と、錠止位置と解錠位置との間を回動可能に支持されたリクライニングレバーと、該リクライニングレバーを錠止位置に向けて回動付勢するばねとを有し、前記リクライニングレバーを前記ばねの作用により錠止位置に回動させたとき、前記ロック装置によって、運転席のシートバックを任意の角度位置でロックできると共に、該リクライニングレバーを前記ばねの作用に抗して前記解錠位置に回動させることにより、前記ロック装置による運転席のシートバックに対するロックを解除できるように構成されていて、さらに該運転席は、そのシートクッションを使用位置から格納位置へ回動させるとき、それまで錠止位置を占めていたリクライニングレバーが解錠位置に回動するように、該リクライニングレバーとシートクッションを連結する連結手段を有していると有利である。
【0014】
さらに、上述した各自動車において、前記助手席は、そのシートバックをホームポジションに向けて回動付勢するバック付勢手段と、該バック付勢手段により付勢されてホームポジションに回動したシートバックをそのホームポジションに停止させるストッパと、該シートバックがいずれの角度位置にあるときも、該シートバックをその角度位置にロックすることのできるロック装置と、錠止位置と解錠位置との間を回動可能に支持されたリクライニングレバーと、該リクライニングレバーを錠止位置に向けて回動付勢するばねとを有し、前記リクライニングレバーを前記ばねの作用により錠止位置に回動させたとき、前記ロック装置によって、助手席のシートバックを任意の角度位置でロックできると共に、該リクライニングレバーを前記ばねの作用に抗して前記解錠位置に回動させることにより、前記ロック装置による助手席のシートバックに対するロックを解除できるように構成されていて、さらに該助手席は、そのシートクッションを使用位置から格納位置へ回動させるとき、それまで錠止位置を占めていたリクライニングレバーが解錠位置に回動するように、該リクライニングレバーとシートクッションを連結する連結手段を有していると有利である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、運転席をその最後方位置に移動させるとき、ロック解除手段によって後席の右クッションと左クッションに対するロックを解除でき、しかもロックを解除された右クッションと左クッションを、後席の立ち上がった状態のシートバックの着座者支え面に重なった格納位置に自動的に回動させることができるので、容易かつ簡単に、運転席、助手席及び後席を、車体側部のドア開口を通して車椅子を乗車させることのできる状態に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】車椅子乗降板の取り付けられた自動車の斜視図である。
【図2】自動車の車室内の概略を示す部分断面平面図である。
【図3】車室内に車椅子を乗車させるときの様子を示す部分断面平面図である。
【図4】車室内に車椅子を乗車させるときの様子を示す部分断面平面図である。
【図5】車室内に車椅子を乗車させるときの様子を示す部分断面平面図である。
【図6】車室内に車椅子を乗車させ終えたときの様子を示す部分断面平面図である。
【図7】車室内に配置された運転席と助手席を示す斜視図である。
【図8】運転席と助手席のシートクッションを立ち上げたときの斜視図である。
【図9】車室内に配置された後席の斜視図である。
【図10】後席のシートクッションを立ち上げたときの斜視図である。
【図11】後席の左クッションだけを立ち上げたときの斜視図である。
【図12】助手席を省略して、運転席と、連結装置の一部の構成を明らかにした斜視図である。
【図13】図9のP−P線及びQ−Q線拡大断面図である。
【図14】ケースに収容されたスライダの拡大平面図であって、ケースとスライダを断面で表わした図である。
【図15】連結装置の全体を模式的に示した部分断面平面図である。
【図16】右ロック部材、左ロック部材、スライダ及びスイッチ部材の動作を説明する説明図である。
【図17】運転席を図7の矢印S方向に見た側面図である。
【図18】運転席のシートクッションを格納位置に回動させたときのシートバックの動作を説明する側面図である。
【図19】図1に示した型式と異なる形式の自動車と、その自動車に取り付けられた車椅子乗降板を示す斜視図である。
【図20】従来の自動車の側面図である。
【図21】従来の自動車の車室内に車椅子を乗車させるときの様子を示す部分断面平面図である。
【図22】従来の自動車の車室内に車椅子を乗車させたときの様子を示す部分断面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態例を図面に従って詳細に説明する。
【0018】
図1は自動車の概略概観斜視図であり、図2乃至図6は、自動車の車室内の様子と、車椅子を車室内に乗車させるときの概略を示した部分断面平面図であって、自動車の車体2などを模式的に簡略化して示した図である。また図7乃至図12は、車室内に配置された座席を示す斜視図である。これらの図及び後述する図13乃至図19においては、自動車の前進方向を矢印Frで示し、その車幅方向を矢印Wで示してある。また、本明細書及び特許請求の範囲における「前」又は「後」なる文言は、自動車の前進方向を基準とした前後を意味する。
【0019】
ここで、先ず自動車の全体の概略構成と、その車室内に車椅子を乗車させるときの動作の概要を明らかにする。
【0020】
図1に示した自動車においては、その車体2の各側部に前部側ドア3と後部側ドア4とが回動開閉自在に支持されている。図1は後部側ドア4が全開位置を占め、後部側のドア開口5が開放された状態を示している。また、車体2の下部であって、車幅方向の側部は、前後方向に延びるロッカパネル6により構成され、その左右の両ロッカパネル6には、車体2の床面を構成するフロアパネル7の各側縁部が固着されている。
【0021】
図2に示すように、車室R内には、運転席13と、その隣りに位置する助手席14と、その後方に位置する後席15とが配置されている。図7にも示すように、運転席13と助手席14は、図示していない着座者の背部を支えるシートバック32,33と、着座者の尻部を支えるシートクッション30,31と、シートクッション30,31及びシートバック32,33をそれぞれ支える支持台44,45(図7)を有している。かかる運転席13と助手席14の前方にインストルメントパネル37(図2)が位置している。また、図2及び図9に示すように、後席15も、着座者の背部を支えるシートバック17と、着座者の尻部を支えるシートクッション16を有していると共に、シートクッション16に連結された脚部40,41を有している。図1には、各座席の図示は省略してある。
【0022】
図7に示すように、運転席13と助手席14のシートバック32,33は、そのシートバックフレーム(図示せず)に固着されたヒンジピン46,47が、支持台44,45の各側板60,61に回転可能に支持されている。これによって、運転席13と助手席14のシートバック32,33は、車体2の床面を構成するフロアパネル7に対してほぼ垂直に立ち上がった図2及び図7に示したホームポジションから、図7に矢印Xで示すように、各ヒンジピン46,47の軸線を中心として後方に傾倒可能に各支持台44,45に支持される。これにより、各シートバック32,33を所望する角度位置に傾倒させた上で、その運転席13と助手席14に着座した着座者の背部を、シートバック32,33の着座者支え面35,36で支えることができる。図2及び図7は、各シートバック32,33が、そのホームポジションにロックされて停止しているときの様子を示している(図8も同様)。
【0023】
図7及び図8に示すように、運転席13と助手席14のシートクッション30,31も、そのクッションフレーム(図示せず)に固着されたヒンジピン48,49が、支持台44,45の各側板60,61に回転可能に支持されている。これにより、運転席13と助手席14のシートクッション30,31は、各ヒンジピン48,49の軸線を中心として、着座者の尻部を支えることのできるほぼ水平な図7に示した使用位置と、図8に示したように、ホームポジションを占めた各シートバック32,33の着座者支え面35,36にそれぞれ重なった状態の格納位置との間を回動可能に各支持台44,45に支持されている。図7は、運転席13と助手席14の各シートクッション30,31が使用位置にロックされた状態を示しており、着座者は、使用位置を占めたシートクッション30,31の上面に着座する。
【0024】
図9に示すように、後席15のシートバック17は、立ち上がった状態で車体2に固定支持されていて、後席15に着座した着座者の背部は、そのシートバック17の着座者支え面18に支えられる。また、後席15のシートクッション16は、自動車の前進方向Frに見て右側に位置する右クッション38と、その左側に位置する左クッション39とを有し、その右クッション38と左クッション39は、着座者の尻部を支えることのできるほぼ水平な図9に示した使用位置と、図10に示したように、立ち上がった状態の後席15のシートバック17の着座者支え面18に重なった格納位置との間を回動可能にシートバック17に支持されている。すなわち、後席15のシートバック17の図示していないシートバックフレームには、ヒンジピン62が固着されていると共に、右クッション38と左クッション39のクッションフレーム(図示せず)には、ブラケット63,64が固着され、その各ブラケット63,64がヒンジピン62に回動可能に嵌合している。これにより、右クッション38と左クッション39は、ヒンジピン62の軸線を中心として、図9に示した使用位置と、図10に示した格納位置との間を回動することができる。図9に示した使用位置を占めた右クッション38と左クッション39は、後述するように、各ロック部材52,53によってその使用位置にロックされる。また、図11は左クッション39だけが格納位置に立ち上げられた状態を示している。
【0025】
図10に示すように、前述の脚部40,41は、右クッション38と左クッション39の底面にそれぞれピン58,59を介して回動可能に連結され、これらのクッション38,39が図9に示した使用位置を占めたとき、各脚部40,41は、車体2のフロアパネル7上に載置され、これにより使用位置を占めた右クッション38と左クッション39が支えられる。着座者は、このように使用位置を占めたシートクッション16に着座することができる。また、右クッション38と左クッション39より成るシートクッション16を図10に示した格納位置に回動させたとき、各脚部40,41は、右クッション38と左クッション39の底面に接した状態に折り畳まれる。
【0026】
上述のように、後席15のシートクッション16も、着座者が腰を下ろすことのできるほぼ水平な使用位置と、立ち上がった状態のシートバック17の着座者支え面18に重なった格納位置との間を回動可能に支持されていて、図示した例では、シートバック17は車体2に対して不動に固定されている。その際、シートバック17が、車体2のフロアパネル7に対してほぼ垂直に立ち上がったホームポジションと、そのホームポジションよりも後方に倒れた傾倒位置との間を回動可能に支持されている場合には、シートバック17がそのホームポジションを占めたときの状態が、当該シートバック17の立ち上がった状態である。
【0027】
また、図7に示した運転席13の支持台44の底面には、互いに平行に前後方向に延びる一対のアッパレール(図示せず)が固定されている。一方、図7及び図9に示すように、車体2のフロアパネル7には、互いに平行に前後方向に延びる一対のロアレール42が固定され、その各ロアレール42に、上述のアッパレールがそれぞれ前後方向に摺動自在に嵌合している。同じく、助手席14の支持台45の底面にも一対のアッパレール(図示せず)が固定され、フロアパネル7には、図7に示すように、互いに平行に前後方向に延びる一対のロアレール43が固定され、その各ロアレール43に、支持台45の底面に固定された上述のアッパレールがそれぞれ前後方向に摺動自在に嵌合している。
【0028】
上述した構成により、運転席13は、図7に示した通常の前後方向位置よりも後方にスライドすることができ、助手席14も、図7に示した通常の前後方向位置よりも前方にスライドすることができる。通常は、運転席13と助手席14は、図7に示した前後方向位置にロックされている。上述したアッパレールとロアレール42,43は、一般の自動車の座席に広く採用されているシートトラックと同様な構造の装置である。なお、図1乃至図6においては、ロアレール42,43の図示を省略してある。
【0029】
次に、図1に示した自動車の車室R内に、車体側部のドア開口5から車椅子を乗車させる車椅子乗車方法の一例を明らかにする。
【0030】
図2、図7及び図9は、各座席13,14,15に着座者が着座するときの各座席13,14,15の状態を示している。これに対し、車椅子を車室R内に乗車させるときは、図7及び図8に示したように、各支持台44,45に回動可能に支持されたチップアップレバー69,70を手操作にて、図7に矢印で示した方向に回動させる。これにより、運転席13と助手席14の各シートクッション30,31に対するロックが解除されて、そのシートクッション30,31を、図8に示したように、ホームポジションを占めた各シートバック32,33の着座者支え面35,36にそれぞれ重なった状態の格納位置に立ち上げることができる。
【0031】
その際、本例の運転席13と助手席14には、シートクッション30,31を格納位置に向けて回動付勢するクッション付勢手段がそれぞれ設けられていて、チップアップレバー69,70を上述のように回動させると、各シートクッション30,31は、自動的に格納位置に回動する。かかるクッション付勢手段としては、例えば、それ自体周知のように、各端部がシートクッション30,31と支持台44,45にそれぞれ係止されたスパイラルスプリング(図示せず)を用いることができる。
【0032】
さらに、図8及び図17に示したように、各支持台44,45に回動可能に支持されたスライドレバー71,72を、図17に矢印で示した方向に回動すると、運転席13と助手席14の前後方向の移動を禁止するロックが解除される。そこで、その助手席14を、図3に示したように、車室前部に位置するインストルメントパネル37に隣接した最前方位置に移動させる。このとき、助手席14のシートクッション31がインストルメントパネル37に近接して位置していてもよいが、図示した例では、シートクッション31がインストルメントパネル37に当接するところまで、助手席14を前方に移動させるように構成されている。
【0033】
上述のように、助手席14を前方に移動させると共に、図3に矢印Lで示したように、運転席13を後方に移動させる。運転席13を後方に移動させるとき、その運転席13の移動に伴って、後述するように、後席15のシートクッション16の右クッション38と左クッション39が図9に示した使用位置から図10に示したように立ち上がった状態の格納位置に自動的に回動し、運転席13が図3に示した最後方位置に移動したとき、運転席13のシートバック32は、後席15の格納位置に立ち上がったシートクッション16の右クッション38に当接する。
【0034】
上述のように、本例の自動車の運転席13は、そのシートバック32がホームポジションを占め、かつそのシートクッション30が格納位置を占めた状態で、該シートバック32が、格納位置を占めた後席15の右クッション38に当接した最後方位置に移動可能に支持され、助手席14は、そのシートバック33がホームポジションを占め、かつそのシートクッション31が格納位置を占めた状態で、該シートクッション31がインストルメントパネル37に隣接した最前方位置へと移動可能に支持されているのである。
【0035】
一方、図1に示したように、後部側ドア4を全開位置に回動させてドア開口5を開放し、そのドア開口5の下部と路面29とに車椅子乗降板1を架け渡す。図1に示した車椅子乗降板1は、水平プレート9と、傾斜プレート10とを有し、水平プレート9は、車体側部のドア開口5の下部を区画するロッカパネル6に、ほぼ水平な状態で、固定手段によって着脱可能に連結されている。
【0036】
ここに示した固定手段は、水平プレート9と車体2の側にそれぞれ形成された取付孔に着脱可能に嵌合した係止ピン12により構成されている。係止ピン12を上方に引き抜くことによって、水平プレート9をロッカパネル6から外すことができる。
【0037】
また、水平プレート9の下面には、スタンド22が矢印B,C方向に回動可能に連結されていて、そのスタンド22を図1に示した起立位置に回動し、該スタンド22の下部を路面29に接地させることにより、そのスタンド22によって水平プレート9を下から支えることができる。水平プレート9を車体2から外してこれを格納するときは、スタンド22を矢印C方向に回動させて、これを折り畳む。
【0038】
また、図1に示すように、水平プレート9には、プレート側フック23が固着され、このプレート側フック23は、図1に示すように全開位置を占めた後部側ドア4に固定されたドア側フック24に着脱可能に係合している。これにより、水平プレート9を安定した状態に支持できると共に、後部側ドア4をその全開位置にロックすることができる。
【0039】
一方、傾斜プレート10の上端部25には爪26が固定され、その爪26が、水平プレート9に形成された係止孔8に着脱自在に嵌合し、これによって傾斜プレート10の上端部25が水平プレート9の車幅方向外端部27に連結されている。また傾斜プレート10の下端部28は、路面29に接地されている。これにより、傾斜プレート10は傾斜状態で配置される。
【0040】
また、水平プレート9の車幅方向外端部27は、車体2の車幅方向最外部よりも車幅方向外方に位置し、水平プレート9が車幅方向外方に大きく突出している。このように、本例の車椅子乗降板1は、後部側ドア開口5の下部に配置された水平プレート9と、上端部25が水平プレート9の車幅方向外端部27に連結され、下端部28が路面29に接地された傾斜プレート10とを有している。なお、図2乃至図6においては、上述したドア4,5、係止ピン12、フック23,24、係止孔8及び爪26などの図示を省略してある。
【0041】
以上のように、後席15の右クッション38と左クッション39をそれぞれ格納位置に立ち上げ、運転席13を前述のようにして最後方位置に移動させると共に、助手席14を前述のようにして最前方位置に移動させた状態で、車椅子乗降板1をドア開口5の下部と路面29とに架け渡す。これによって、車体側部のドア開口5を通して、車椅子を次のように車室外から車室内に移動させ、或いはその車椅子を車室内から車室外に移動させることができる。
【0042】
先ず、図3に示したように、車椅子乗降板1上で、利用者Pが着座した車椅子11の車輪、すなわちその前輪19と後輪20を転動させながら、当該車椅子11を矢印A方向に走行させて、該車椅子11を路面29から車室R内に移動させる。このとき、図3に示したように、後席15のシートクッション16は、そのシートバック17の着座者支え面18に重なった状態に立ち上がっており、しかも最後方位置を占めた運転席13のシートクッション30も立ち上がっているので、これらに邪魔されることなく、車椅子11を車室R内に移動させることができる。
【0043】
図4は、上述のようにして車椅子11を車室R内に移動させたときの様子を示している。このとき、車椅子11と、これに着座した利用者Pは、自動車の前進方向Frに対して横方向を向いている。そこで、車室R内に移動させた車椅子11を、図4に矢印Kで示した方向に回転させる。これにより、図5に示したように、その車椅子11とその利用者Pは前方を向くことができる。このとき、運転席13は最後方位置を占め、助手席14は最前方位置を占めているので、車室R内に移動した車椅子11を、これらの座席13,14に邪魔されることなく、容易に前方を向いた姿勢にさせることができる。このように、車室R内に移動した車椅子11を前方を向いた姿勢に回転させ、次いで図6に示したように、車椅子11を後方に移動させる。この状態で、その車椅子11を図示していないロック装置によって車体2に対してロックすると共に、図6に示したように、運転席13を通常の運転時の位置に移動させ、該運転席13をこの位置にロックする。しかも、そのシートクッション30を水平な使用位置に回動させて、該シートクッション30をその使用位置にロックする。
【0044】
上述のようにして、車室R内に入った車椅子11と、これに乗った利用者Pが、容易に前向きの姿勢となることができ、その利用者Pは、他の乗員と同様に快くドライブを楽しむことができる。また、図6及び図11に示したように、後席15の脚部40を突出した位置に回動させた後、右クッション38を水平な使用位置に戻し、その右クッション38を使用位置にロックすることにより、ここに図示していない介護者などが着座することができる。
【0045】
上述したところと逆の手順で、車椅子11を車室外に移動させることができる。車椅子を車室外にもたらした後、助手席14を図2に示した通常の使用時の位置に戻して、助手席14をこの位置にロックすると共に、シートクッション31を水平な使用位置に回動して、その使用位置にロックする。これにより、助手席14を支障なく使用することができる。同様に、図9に示したように、後席15の脚部41を、突出した位置に回動させた後、左クッション39を水平な使用位置に戻し、その左クッション39を使用位置にロックする。
【0046】
次に、運転席13を前述の如く図3に示した最後方位置に移動させるだけで、後席15の右クッション38と左クッション39より成るシートクッション16を、図2及び図9に示した使用位置から、図3及び図10に示した格納位置に自動的に回動させることができるようにした構成について説明する。
【0047】
先ず、後席15には、その右クッション38と左クッション39を、それぞれ図10に示した格納位置に向けて回動付勢する右付勢手段と左付勢手段が設けられている。右付勢手段は、例えば、それ自体周知なように、一端がシートバック17のヒンジピン62に係止され、他端がブラケット63に係止され、かつヒンジピン62のまわりに巻回されたスパイラルスプリング(図示せず)により構成される。同様に、左付勢手段も、例えば、一端がシートバック17のヒンジピン62に係止され、他端がブラケット64に係止され、かつそのヒンジピン62のまわりに巻回されたスパイラルスプリング(図示せず)により構成される。かかるスパイラルスプリングのばね力によって、右クッション38と左クッション39がそれぞれ図10に示した格納位置に向けて回動付勢される。
【0048】
また、図13の(a)は、図9のP−P線及びQ−Q線拡大断面図であって、前述の右ロック部材52と左ロック部材53を共に示す図である。この図に示すように、フロアパネル7には、枢ピン65を介して、右ロック部材52と左ロック部材53がそれぞれ回動可能に支持されている。右ロック部材52と左ロック部材53は、図13の(a)に示したロック位置と、図13の(b)に示したアンロック位置との間を、それぞれ矢印E,F方向に回動可能にフロアパネル7に支持されている。
【0049】
図9に示したように、後席15の右クッション38と左クッション39がそれぞれ使用位置にあるとき、右ロック部材52と左ロック部材53は、それぞれ図13の(a)に示したロック位置を占め、その各ロック部材52,53が後席の各脚部40,41に係合して、右クッション38と左クッション39をそれぞれその使用位置にロックする。
【0050】
これに対し、右ロック部材52と左ロック部材53が、図13の(b)に示したアンロック位置に回動すると、各脚部40,41に対する拘束が解かれ、右クッション38と左クッション39のロックが解除される。これにより、右クッション38と左クッション39は、前述の右付勢手段と左付勢手段の作用によって、図10に示した格納位置にそれぞれ回動し、シートバック17に当接した格納位置に収められる。
【0051】
また、図13に示したように、右ロック部材52とフロアパネル7には、引張ばね93の各端部が係止され、同じく左ロック部材53とフロアパネル7にも、引張ばね94の各端部が係止されている。右ロック部材52と左ロック部材53が図13の(a)に示したロック位置にあるとき、引張ばね93,94は、各枢ピン65の中心軸線よりも、図13の(a)における左側に位置しているので、右ロック部材52と左ロック部材53は、引張ばね93,94の引張作用によって、矢印F方向に回動付勢されて、脚部40,41にそれぞれ圧接し、これによってこれらのロック部材52,53がそのロック位置に保持される。また、右ロック部材52と左ロック部材53が図13の(b)に示したアンロック位置を占めたときは、引張ばね93,94が、各枢ピン65の中心軸線よりも、図13の(b)における右側に位置するので、これらのロック部材52,53は、引張ばね93,94の引張作用によって、矢印E方向に回動付勢され、フロアパネル7に固定されたストッパ54に圧接してアンロック位置に保持される。
【0052】
上述のように、本例の自動車は、後席15の右クッション38と左クッション39をそれぞれその使用位置にロックする右ロック部材52及び左ロック部材53を有し、右ロック部材52は、右クッション38をその使用位置にロックするロック位置と該右クッション38に対するロックを解除したアンロック位置との間を回動可能にフロアパネル7に支持され、左ロック部材53も、左クッション39をその使用位置にロックするロック位置と該左クッション39に対するロックを解除したアンロック位置との間を回動可能にフロアパネルに支持されている。
【0053】
一方、図12に示すように、通常の運転時の位置を占めた運転席13よりも後方の位置にスイッチ部材73が配置され、このスイッチ部材73は、図16に示すように、枢軸74を介して、フロアパネル7に矢印I,J方向に回動可能に支持されている。
【0054】
また、図12及び図16に示したスイッチ部材73と、図9及び図13に示したロック部材52,53は、連結装置75を介して連結されている。図に一例として示した連結装置75は、図12及び図14乃至図16に示したように、ケース76内に前後方向に摺動可能に配置されたスライダ77と、例えばワイヤ又はケーブルなどから構成された第1乃至第3の連結部材78,79,80とを有している。図14乃至図16においては、ケース76の内部の様子を明らかにするため、ケース76を断面で示してある。また、ワイヤ又はケーブルより成る第1乃至第3の連結部材78,79,80は、図9、図13及び図14に示すように、アウタチューブ81,82,83内を摺動自在に挿通されているが、図12、図15及び図16には、そのアウタチューブの図示は省略してある。
【0055】
図16に示すように、スイッチ部材73の基端部と、枢軸74と、ケース76と、第1乃至第3の連結部材78,79,80及びそのアウタチューブ81,82,83は、フロアパネル7に形成された溝84内に位置している。また、本例のスライダ77は、ケース76を介して、図15の(b)及び図16の(b)に示した前位置と、図15の(a),(c)及び図16の(a)に示した後位置との間を移動可能にフロアパネル7に支持されているが、このスライダ77をフロアパネル7に直に支持することも可能である。
【0056】
スイッチ部材73は、図16の(a)に示したようにフロアパネル7の上面よりも上方に突出した突出位置と、図16の(b)に示したように、フロアパネル7の上面以下の高さレベルに退避した退避位置との間を回動可能にフロアパネル7に支持されている。
【0057】
図15及び図16に示すように、第1の連結部材78の前端部は、スイッチ部材73に係止され、その第1の連結部材78の後端側は、図14に明示するように、スライダ77に形成された孔85を相対摺動可能に貫通し、かつその後端部には第1の小ブロック88が固定されている。また、第2の連結部材79の前端側は、図14に明示したように、スライダ77に形成された孔86を相対摺動可能に貫通し、その前端部に第2の小ブロック89が固定されている。また、この第2の連結部材79の後端部は図9、図13及び図15に示したように、右ロック部材52に係止されている。さらに、第3の連結部材80の前端側は、図14に明示するように、スライダ77に形成された孔87を相対摺動可能に貫通し、その前端部に第3の小ブロック90が固定され、図9、図13及び図15に示したように、第3の連結部材80の後端部は左ロック部材53に係止されている。
【0058】
上述のように第1の小ブロック88が固定された第1の連結部材78と、第2の小ブロック89が固定された第2の連結部材79と、第3の小ブロック90が固定された第3の連結部材80は、次の動作が得られるように、スライダ77に組み付けられていると共に、スイッチ部材73、右ロック部材52及び左ロック部材53にそれぞれ係止されている。
【0059】
運転席13が、図7、図8及び図12に示した通常の運転時の位置にあり、スイッチ部材73が図12及び図16の(a)に示した突出位置を占めているとき、スライダ77は、図15の(a)及び図16の(a)に示した後位置を占めている。しかも、右ロック部材52と左ロック部材53は、それぞれ図9及び図13、図15、図16の(a)に示したロック位置を占め、各脚部40,41が右ロック部材52と左ロック部材53によってそれぞれ係止され、右クッション38と左クッション39がそれぞれ使用位置にロックされている。
【0060】
上述した状態で、運転席13が、先に説明し、かつ図3及び図16の(a)に矢印Lで示したように最後方位置に向けて移動する。本例の運転席13の支持台44には、図16に示すように、凹部105が形成され、運転席13が後方に移動するとき、その凹部105の前面106によって、スイッチ部材73が加圧され、そのスイッチ部材73は図16の(a)で示した突出位置から図16の(b)に示した退避位置に回動する。このとき、このように回動するスイッチ部材73によって、第1の連結部材78が、前方に引かれ、その第1の連結部材78の後端部に固定された第1の小ブロック88によってスライダ77が加圧されて、該スライダ77が図15及び図16の(b)に示した前位置に移動する。同時に、第2及び第3の連結部材79,80の前端部にそれぞれ固定された第2及び第3の小ブロック89,90が、前位置へ向けて移動するスライダ77により加圧され、第2及び第3の連結部材79,80が、図13、図15及び図16の(b)に矢印Mで示したように前方に引かれる。これにより、図13の(a)に示したロック位置を占めていた右ロック部材52と左ロック部材53が、それぞれ図13の(b)に矢印Eで示した方向に回動して、図13、図15及び図16の(b)に示したアンロック位置へと回動する。これによって、先に説明したように、右クッション38と左クッション39に対するロックが解除されて、両クッション38,39は、右付勢手段と左付勢手段の作用によって、図10に示した格納位置に回動する。
【0061】
上述のように、運転席13を最後方位置へ向けて移動させるだけで、後席15のシートクッション16の右クッション38と左クッション39を自動的に格納位置に回動させることができる。このため、簡単かつ短時間で、運転席13と助手席14と後席15を、車椅子11をドア開口15を通して車室R内に移動させることのできる状態にセットすることができる。
【0062】
上述のように、スイッチ部材73は、最後方位置に向けて移動する運転席13によって加圧されるように上方に突出した突出位置と、最後方位置に向けて移動する運転席13によって加圧されて下方に退避した退避位置との間を回動可能にフロアパネル7に支持され、連結装置75は、スイッチ部材73がその突出位置から退避位置へ回動することによって、右ロック部材52と左ロック部材53がロック位置からアンロック位置に回動するように、該右ロック部材52及び左ロック部材53とスイッチ部材73とを連結している。
【0063】
上述の連結装置75とスイッチ部材73は、運転席13をその最後方位置へ移動させるとき、該運転席13によって作動させられて、右ロック部材52と左ロック部材53による右クション38と左クッション39に対するロックを解除するロック解除手段の一例を構成している。かかるロック解除手段によって、右ロック部材52と左ロック部材53によるロックを解除された右クッション38と左クッション39は、前述の右付勢手段と左付勢手段の作用によって、それぞれ自動的に格納位置に回動するのである。
【0064】
前述の如く、運転席13を最後方位置へ移動させ、かつ助手席14を最前方位置に移動させた後、車椅子11を車室内に走行させてその車椅子11を所定の位置にロックし、次いで運転席13を再び通常の運転時の前方位置に移動させるが、このときスイッチ部材73は、図16の(b)に示した退避位置を占めているので、そのスイッチ部材73は、前方に向けて移動する運転席13によって作動させられることはない。従って、スライダ77は図15及び図16の(b)に示した前位置から動くことはなく、右ロック部材52と左ロック部材53も、図13及び図16の(b)に示したアンロック位置に留められている。
【0065】
次に、図11に示し、かつ先に説明したように、左クッション39を格納位置に留めたまま、脚部40を突出位置に回動させた後、右クッション38を格納位置から使用位置へ回動させる。このとき、脚部40が、図13の(b)に示したアンロック位置にある右ロック部材52の被加圧部91(図9には示さず)を加圧するので、右ロック部材52は図13の(b)に矢印Fで示した方向に回動して、図13の(a)に示したロック位置に戻される。これによって、右クッション38の脚部40が図13の(a)に示したように右ロック部材52によって押え付けられて、右クッション38が使用位置にロックされる。このとき、第2の連結部材79は、図13及び図16の(a)及び図15の(c)に矢印Nで示すように後方に引かれる。
【0066】
上述のように、スイッチ部材73が退避位置を占め、かつスライダ77が前位置を占めた状態で、左ロック部材53がアンロック位置に留まったまま、右ロック部材52が、右クッション38により加圧されて、アンロック位置からロック位置に回動することにより、第2の連結部材79が後方に引かれるのである。このとき、スライダ77は、第2の小ブロック89により加圧されて、図15の(c)に示したように後位置に移動し、第1の小ブロック88がスライダ77により加圧されて第1の連結部材78が後方に引かれ、スイッチ部材73が図16の(a)に示した突出位置に回動する。このように、スイッチ部材73を自動的に突出位置に戻すことができるのである。
【0067】
これに対し、スライダ77が後位置に向けて移動するとき、そのスライダ77は、第3の連結部材80に対しては摺動するので、図15の(c)に示すように、第3の連結部材80は引かれることはなく、左ロック部材53は、図13の(b)に示したアンロック位置に留まったままとなる。
【0068】
次に、前述の如く車椅子11を車室Rの外に走行させた後、後席15の脚部41を突出位置に回動させて左クッション39を格納位置から使用位置へと回動させると、その脚部41が、図13の(b)に示したアンロック位置にある左ロック部材53の被加圧部92(図9には示さず)を加圧するので、左ロック部材53は図13の(b)に矢印Fで示した方向へ回動してロック位置に戻され、左クッション39の脚部41が図13の(a)に示したように左ロック部材53によって押え付けられて、左クッション39が使用位置にロックされる。このとき、第3の連結部材80が、図13と図16の(b)に矢印Nで示したように、後方に引かれて図15の(a)に示した位置に戻される。このとき、スライダ77は既に後位置に移動しているので、第3の連結部材80はスライダ77に対して摺動するだけであり、従ってスライダ77及び第1及び第2の連結部材78,79が作動することはなく、右ロック部材52は図13の(a)に示したロック位置に留まったままである。
【0069】
上述のように、右ロック部材52と左ロック部材53は、格納位置から使用位置へと回動する右クッション38と左クッショ39ンによってそれぞれ加圧されてアンロック位置からロック位置へ回動するようにフロアパネルに回動可能に支持されているので、格納位置にあった右クション38と左クッション39を使用位置に回動させるだけで、自動的に右クッション38と左クッション39を右ロック部材52と左ロック部材53によってそれぞれロックすることができる。
【0070】
次に、運転席13のシートバック32が、そのホームポジションよりも後方に倒れた位置を占めた状態で、使用位置にあったシートクション30をその格納位置に回動させると、シートバック32が自動的にそのホームポジションに回動する構成について説明する。この構成は、次に示すそれ自体周知な構成を前提とする。
【0071】
先ず、運転席13は、そのシートバック32をホームポジションに向けて回動付勢する図示していないバック付勢手段を有している。このバック付勢手段は、例えば、それ自体周知のように、一端がシートバック32に係止され、他端が支持台44に係止されたスパイラルスプリング(図示せず)により構成される。また、運転席13は、上述のバック付勢手段により付勢されてホームポジションに回動したシートバック32を、そのホームポジションに停止させるストッパ(図示せず)を有している。
【0072】
図17は、運転席13を図7の矢印S方向に見た側面図である。この図に示すように、運転席13のシートバック32のヒンジピン46には、リクライニングレバー95が回動自在に支持されていて、このリクライニングレバー95の自由端側は、支持台44の側板60に形成された切欠97を通して、その側板60の車幅方向外方に突出し、そのリクライニングレバー95の自由端に把手50が固定されている。
【0073】
上述したリクライニングレバー95は、図17に示した錠止位置と、図18に示した解錠位置との間を回動可能にシートバック32のヒンジピン46に支持され、しかもこのリクライニングレバー95は、運転席13に設けられた図示していないばねによって図17に示した錠止位置に向けて回動付勢されている。従って、リクライニングレバー95から手を離せば、リクライニングレバー95は上述のばねの作用によって自動的に錠止位置に回動する。また、シートバック32が、そのホームポジションと、該ホームポジションよりも後方に傾倒したときのいずれの角度位置にあるときも、シートバック32を、その角度位置にロックするロック装置(図示せず)が、運転席13に設けられている。
【0074】
上述した把手50を掴んで、リクライニングレバー95を手操作により前述のばねの作用に抗して図18に示した解錠位置に回動させると、上述のロック装置によるシートバック32に対するロックが解除される。従って、この状態でシートバック32を後方に押せば、前述のバック付勢手段の作用に抗してシートバック32を後方に倒すことができる。このようにして、シートバック32を所望する角度位置に回動させたところで、把手50から手を離すと、上述のばねの作用によってリクライニングレバー95は図17に示した錠止位置に回動し、このとき上述のロック装置の作用により、シートバック32は、その角度位置にロックされる。
【0075】
再び、把手50を掴んで、リクライニングレバー95を図18に示した解錠位置に回動させると、ロック装置によるシートバック32に対するロックが解除されるので、そのシートバック32から手を離せば、シートバック32は、前述のバック付勢手段の作用によってホームポジションに回動し、前述のストッパによって、そのホームポジションに停止させられる。次いで、把手50から手を離し、リクライニングレバー95をばねの作用で図17に示した錠止位置に回動させれば、シートバック32はロック装置によってホームポジションにロックされる。
【0076】
上述のように、本例の運転席13は、そのシートバック32をホームポジションに向けて回動付勢するバック付勢手段と、該バック付勢手段により付勢されてホームポジションに回動したシートバック32をそのホームポジションに停止させるストッパと、該シートバック32がいずれの角度位置にあるときも、該シートバック32をその角度位置にロックすることのできるロック装置と、錠止位置と解錠位置との間を回動可能に支持されたリクライニングレバー95と、該リクライニングレバー95を錠止位置に向けて回動付勢するばねとを有し、リクライニングレバー95を上記ばねの作用により錠止位置に回動させたとき、上記ロック装置によって、運転席13のシートバック32を任意の角度位置でロックできると共に、該リクライニングレバー95を上記ばねの作用に抗して解錠位置に回動させることにより、上記ロック装置による運転席13のシートバック32に対するロックを解除できるように構成されている。かかる前提構成自体は従来より周知であるため、これ以上の説明は省略する。
【0077】
ここで、本例の自動車の特徴とするところは、図17及び図18に示すように、リクライニングレバー95とシートクッション30のクッションフレーム101とに、ワイヤー又はケーブルなどから成る連結手段102の各端部が固定連結され、その連結手段102を介してリクライニングレバー95とシートクッション30が連結されている点である。
【0078】
図18においては、ホームポジションにあるシートバック32を実線で示し、そのホームポジションよりも後方に傾倒した位置にあるシートバック32を二点鎖線で示してある。同様に格納位置にあるシートクッション30を実線で示し、使用位置にあるシートクッション30を二点鎖線で示してある。ここで、シートクッション30が二点鎖線で示した使用位置にあり、シートバック32が二点鎖線で示した後倒位置にあるものとする。このときリクライニングレバー95は、図17に示したロック位置を占めている。この状態で、前述のように、シートクッション30を、前述のクッション付勢手段の作用によって実線で示した格納位置に回動させると、そのクッションフレーム101に連結手段102を介して連結されたリクライニングレバー95が引かれるので、そのリクライニングレバー95は、ヒンジピン46のまわりに、図17における反時計方向に回動する。従って、シートクッション30が図18に実線で示した格納位置に至るまでに、リクライニングレバー95は図18に示した解錠位置に回動し、前述のロック装置によるシートバック32に対するロックが解除される。このため、それまで図18に二点鎖線で示した後退位置を占めていたシートバック32が、前述のバック付勢手段の作用によって、図18に実線で示したホームポジションに自動的に回動し、ここで止められる。このようにシートバック32が後倒位置を占めた状態で、シートクッション30を格納位置に回動させると、シートバック32が自動的にそのホームポジションに回動するのである。このため、車椅子11を乗車させるときの準備作業をより一層簡単に行うことができる。
【0079】
上述のように、本例の運転席13は、そのシートクッション30を使用位置から格納位置へ回動させるとき、それまで錠止位置を占めていたリクライニングレバー95が解錠位置に回動するように、該リクライニングレバー95とシートクッション30を連結する連結手段102を有しているのである。
【0080】
上述した構成は、助手席14にもそのまま採用されていて、この助手席14も、そのシートバック33が後倒位置を占めた状態で、シートクッション31を格納位置に回動させると、シートバック33が自動的にそのホームポジションに回動するように構成されている。すなわち、助手席14は、そのシートバック33をホームポジションに向けて回動付勢するバック付勢手段と、該バック付勢手段により付勢されてホームポジションに回動したシートバック33をそのホームポジションに停止させるストッパと、該シートバック33がいずれの角度位置にあるときも、該シートバックをその角度位置にロックすることのできるロック装置と、錠止位置と解錠位置との間を回動可能に支持されたリクライニングレバー96(図7及び図8参照)と、該リクライニングレバー96を錠止位置に向けて回動付勢するばねとを有し、上記リクライニングレバー96を上述のばねの作用により錠止位置に回動させたとき、上記ロック装置によって、助手席14のシートバック33を任意の角度位置でロックできると共に、該リクライニングレバー96を上記ばねの作用に抗して前記解錠位置に回動させることにより、上記ロック装置による助手席14のシートバック33に対するロックを解除できるように構成されていて、さらに該助手席14は、そのシートクッション31を使用位置から格納位置へ回動させるとき、それまで錠止位置を占めていたリクライニングレバー96が解錠位置に回動するように、該リクライニングレバー96とシートクッション31を連結する連結手段を有している。図7及び図8に示したように、助手席14のリクライニングレバー96も、その自由端側が支持台45の側板61に形成された切欠98を通して、側板61の車幅方向外方に突出し、そのリクライニングレバー96の自由端に把手51が固定されている。これらの構成は、運転席13の前述の構成と実質的に同一であるため、これ以上の説明は省略する。
【0081】
図1に示した自動車は、その後部側ドア4が車体2に回動開閉可能に支持されているが、本発明は、図19に示したように、後部側ドア4が前後方向Hにスライド可能に車体2に支持された自動車にも適用できる。図19に示した前部側ドア3は、矢印Gで示したように、回動開閉可能に車体2に支持されている。図19は、前部側ドア3と後部側ドア4が共に全開位置を占め、車体側部のドア開口5が開放された状態を示している。この状態でドア開口5の下部と路面29とに車椅子乗降板1を架け渡し、前述の実施形態例の場合と同様にして、車椅子を車室R内に移動させることができる。
【0082】
図19に示した車椅子乗降板1は、その全体が上下方向に傾斜していて、その車椅子乗降板1の上部と車体2のロッカパネル6に形成された取付孔に係止ピン12を嵌合することによって、その車椅子乗降板1を車体2に連結する。係止ピン12を取付孔から抜き出せば、車椅子乗降板1を車体2から取り外すことができる。図19に示した自動車の他の構成は、先に説明した実施形態例と実質的に変わりはなく、図19における先の実施形態例と同一又は対応する部分には、先の実施形態例で使用した符号と同じ符号を付してある。図19は、運転席(図示せず)を最後方位置に移動させ、助手席14を最前方位置に移動させたときの様子を示している。なお、図19においては、先に説明した実施形態例の一部の構成についての図示を省略してある。
【符号の説明】
【0083】
2 車体
5 ドア開口
7 フロアパネル
11 車椅子
13 運転席
14 助手席
15 後席
16,30,31 シートクッション
17,32,33 シートバック
18,35,36 着座者支え面
37 インストルメントパネル
38 右クッション
39 左クッション
52 右ロック部材
53 左ロック部材
73 スイッチ部材
75 連結装置
77 スライダ
78 第1の連結部材
79 第2の連結部材
80 第3の連結部材
88 第1の小ブロック
89 第2の小ブロック
90 第3の小ブロック
95,96 リクライニングレバー
102 連結手段
R 車室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に運転席と助手席とその後方に位置する後席とが配置され、該運転席と助手席と後席は、着座者の背部を支えるシートバックと着座者の尻部を支えるシートクッションをそれぞれ有し、該運転席と助手席のシートバックは、車体の床面を構成するフロアパネルに対してほぼ垂直に立ち上がったホームポジションから後方に傾倒可能に支持され、かつ該運転席と助手席のシートクッションは、着座者の尻部を支えることのできるほぼ水平な使用位置と、ホームポジションを占めたシートバックの着座者支え面に重なった格納位置との間を回動可能に支持され、前記後席のシートクッションは、自動車の前進方向に見て右側に位置する右クッションと、その左側に位置する左クッションとを具備し、該右クッションと左クッションは、着座者の尻部を支えることのできるほぼ水平な使用位置と、立ち上がった状態の後席のシートバックの着座者支え面に重なった格納位置との間をそれぞれ回動可能に支持され、前記運転席は、そのシートバックがホームポジションを占め、かつそのシートクッションが格納位置を占めた状態で、該シートバックが、格納位置を占めた後席の右クッションに当接した最後方位置に移動可能に支持され、前記助手席は、そのシートバックがホームポジションを占め、かつそのシートクッションが格納位置を占めた状態で、該シートクッションがインストルメントパネルに隣接した最前方位置へと移動可能に支持されていて、前記後席の右クッションと左クッションをそれぞれ前記格納位置に立ち上げ、前記運転席を前記最後方位置に移動させると共に、前記助手席を前記最前方位置に移動させた状態で、車体側部のドア開口を通して、車椅子を車室外から車室内に移動させ、或いは車室内から車室外に移動させることのできる自動車であって、前記後席の右クッションと左クッションをそれぞれその使用位置にロックする右ロック部材及び左ロック部材と、右クッションと左クッションをそれぞれ格納位置に向けて回動付勢する右付勢手段及び左付勢手段と、前記運転席をその最後方位置へ移動させるとき、該運転席によって作動させられて、前記右ロック部材と左ロック部材による右クションと左クッションに対するロックを解除するロック解除手段とを具備し、該ロック解除手段によって、右ロック部材と左ロック部材によるロックを解除された右クッションと左クッションは、前記右付勢手段と左付勢手段の作用によって、それぞれ自動的に格納位置に回動するように構成された自動車。
【請求項2】
前記右ロック部材は、前記右クッションをその使用位置にロックするロック位置と該右クッションに対するロックを解除したアンロック位置との間を回動可能にフロアパネルに支持され、前記左ロック部材も、前記左クッションをその使用位置にロックするロック位置と該左クッションに対するロックを解除したアンロック位置との間を回動可能にフロアパネルに支持されていて、前記ロック解除手段は、最後方位置に向けて移動する運転席によって加圧されるように上方に突出した突出位置と、該運転席によって加圧されて下方に退避した退避位置との間を回動可能にフロアパネルに支持されたスイッチ部材と、該スイッチ部材が前記突出位置から退避位置へ回動することによって、前記右ロック部材と左ロック部材がロック位置からアンロック位置に回動するように、該右ロック部材及び左ロック部材と前記スイッチ部材とを連結する連結装置とを具備する請求項1に記載の自動車。
【請求項3】
前記右ロック部材と左ロック部材は、格納位置から使用位置へと回動する右クッションと左クッションによってそれぞれ加圧されてアンロック位置からロック位置へ回動するようにフロアパネルに回動可能に支持され、前記連結装置は、前位置と後位置との間を移動可能にフロアパネルに支持されたスライダと、前端部が前記スイッチ部材に係止され、後端側が前記スライダを相対摺動可能に貫通し、かつその後端部に第1の小ブロックが固定された第1の連結部材と、前端側が前記スライダを相対摺動可能に貫通し、その前端部に第2の小ブロックが固定され、かつ後端部が前記右ロック部材に係止された第2の連結部材と、前端側が前記スライダを相対摺動可能に貫通し、その前端部に第3の小ブロックが固定され、かつ後端部が前記左ロック部材に係止された第3の連結部材とを有し、前記スイッチ部材が突出位置を占めると共に、前記スライダが後位置を占め、かつ前記右ロック部材と左ロック部材がそれぞれロック位置を占めた状態で、前記運転席が最後方位置へ向けて移動するとき、該運転席によって加圧されて突出位置から退避位置に回動するスイッチ部材によって前記第1の連結部材が前方に引かれ、該第1の連結部材の後端部に固定された第1の小ブロックによって前記スライダが加圧されて該スライダが前位置に移動すると共に、前記第2及び第3の小ブロックが前位置へ向けて移動するスライダにより加圧されて第2及び第3の連結部材が前方に引かれ、これにより右ロック部材と左ロック部材が、それぞれロック位置からアンロック位置へと回動し、前記スイッチ部材が退避位置を占め、かつ前記スライダが前位置を占めた状態で、左ロック部材がアンロック位置に留まったまま、右ロック部材がアンロック位置からロック位置に回動して、第2の連結部材が後方に引かれたとき、前記スライダは前記第2の小ブロックにより加圧されて後位置に移動し、このとき第1の小ブロックが該スライダにより加圧されて第1の連結部材が後方に引かれ、かつスイッチ部材が突出位置へと回動すると共に、後位置に向けて移動するスライダは第3の連結部材に対して摺動し、該第3の連結部材は引かれることなく、左ロック部材はアンロック位置に留まったままとなるように、第1の小ブロックが固定された第1の連結部材と、第2の小ブロックが固定された第2の連結部材と、第3の小ブロックが固定された第3の連結部材が、スライダに組み付けられていると共に、スイッチ部材、右ロック部材及び左ロック部材にそれぞれ係止されている請求項2に記載の自動車。
【請求項4】
前記運転席は、そのシートバックをホームポジションに向けて回動付勢するバック付勢手段と、該バック付勢手段により付勢されてホームポジションに回動したシートバックをそのホームポジションに停止させるストッパと、該シートバックがいずれの角度位置にあるときも、該シートバックをその角度位置にロックすることのできるロック装置と、錠止位置と解錠位置との間を回動可能に支持されたリクライニングレバーと、該リクライニングレバーを錠止位置に向けて回動付勢するばねとを有し、前記リクライニングレバーを前記ばねの作用により錠止位置に回動させたとき、前記ロック装置によって、運転席のシートバックを任意の角度位置でロックできると共に、該リクライニングレバーを前記ばねの作用に抗して前記解錠位置に回動させることにより、前記ロック装置による運転席のシートバックに対するロックを解除できるように構成されていて、さらに該運転席は、そのシートクッションを使用位置から格納位置へ回動させるとき、それまで錠止位置を占めていたリクライニングレバーが解錠位置に回動するように、該リクライニングレバーとシートクッションを連結する連結手段を有している請求項1乃至3のいずれかに記載の自動車。
【請求項5】
前記助手席は、そのシートバックをホームポジションに向けて回動付勢するバック付勢手段と、該バック付勢手段により付勢されてホームポジションに回動したシートバックをそのホームポジションに停止させるストッパと、該シートバックがいずれの角度位置にあるときも、該シートバックをその角度位置にロックすることのできるロック装置と、錠止位置と解錠位置との間を回動可能に支持されたリクライニングレバーと、該リクライニングレバーを錠止位置に向けて回動付勢するばねとを有し、前記リクライニングレバーを前記ばねの作用により錠止位置に回動させたとき、前記ロック装置によって、助手席のシートバックを任意の角度位置でロックできると共に、該リクライニングレバーを前記ばねの作用に抗して前記解錠位置に回動させることにより、前記ロック装置による助手席のシートバックに対するロックを解除できるように構成されていて、さらに該助手席は、そのシートクッションを使用位置から格納位置へ回動させるとき、それまで錠止位置を占めていたリクライニングレバーが解錠位置に回動するように、該リクライニングレバーとシートクッションを連結する連結手段を有している請求項1乃至4のいずれかに記載の自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−259598(P2010−259598A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112218(P2009−112218)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】