説明

車線境界線認識装置

【課題】車線境界線の検出精度の改善。
【解決手段】車両の進行方向の路面の画像を所定時間の経過毎に取得し(ステップ210)、その画像に基いて輝度の変化点をエッジ点として抽出する(ステップ220)。更に、抽出されたエッジ点を通る白線候補線を抽出し(ステップ230)、その抽出された白線候補線の中から所定の条件を満足する白線候補線を車線境界線として選択する(ステップ250)。この車線境界線認識装置は、前記抽出されたエッジ点のうちの前記白線候補線が通過するエッジ点の個数をシグナル量Sと見做すとともに、前記抽出されたエッジ点のうちの前記白線候補線が通過しないエッジ点の個数をノイズ量Nと見做し、前記ノイズ量に対する前記シグナル量の割合に応じた値(S/N比)に基づいて算出される画像評価値(ステップ240を参照。)が閾値よりも小さい場合には前記画像に基く前記車線境界線の選択結果を破棄する(ステップ260)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走路(車両前方の道路、車両の進行方向の路面)を撮像する撮像手段により取得された画像に基いて道路上に描かれた白線等の道路の車線境界線を検出する車線境界線認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られる車線境界線認識装置(以下、「従来装置」とも称呼する。)は、車両に搭載されたカメラにより所定時間(例えば、0.1秒)の経過毎に車両前方の路面の画像(画像信号)を取得する。一回の撮像により得られる画像信号の集合は1フレームとも称呼される。更に、従来装置は、その画像に基いて道路の車線境界線(例えば、白線)を検出する。
【0003】
より具体的に述べると、従来装置は、取得した画像に基づいて輝度の変化点をエッジ点として抽出し、その抽出されたエッジ点を最も多く貫く線を車線境界線(白線)として選択(認識)するようになっている。
【0004】
加えて、従来技術は、選択した車線境界線に基づいて算出される道路形状を表す道路パラメータからその車線境界線上の点を白線候補点として推定するとともに、その推定された白線候補点の位置と実際に検出されていたエッジ点(白線候補線の選択に使用された点)の位置との二乗誤差が大きい場合、及び、検出された白線候補点の数が小さい場合、選択した車線境界線の信頼度は低いと判定している(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−67755号公報
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、路面状況によっては、ノイズであるエッジ点が多数得られる場合があり、エッジ点を最も多く貫く線が車線境界線ではない場合があるので、上記のように評価される信頼度自体が正しくない場合がある。
【0007】
本発明は、上述した課題に対処するためになされたものである。即ち、本発明の目的の一つは、ノイズである可能性が高いエッジ点の割合が高いか否か、即ち、取得された画像自体が車線境界線の元となる白線候補線を選択するのに適した画像でないか否か、を判定することができ、その判定結果に基づいて、不適切な画像に基づいては車線境界線を選択しない(選択された車線境界線を破棄・削除する)車線境界線認識装置を提供することにある。
【0008】
本発明による車線境界線認識装置(以下、「本発明装置」とも称呼する。)は、撮像手段と、エッジ点抽出手段と、候補線抽出手段と、車線境界線選択手段と、を備える。
【0009】
前記撮像手段は、車両に搭載されるとともに、その車両の進行方向の路面の画像を取得する。前記撮像手段は、例えば、車両前方に固定されたカメラ(例えば、CCDカメラ)等を含む。
前記エッジ点抽出手段は、前記取得された画像に基いて輝度の変化点をエッジ点として抽出する。
【0010】
前記候補線抽出手段は、前記抽出されたエッジ点を通る白線候補線を抽出する。この白線候補線の抽出は、例えば、ハフ変換等の周知の手法により行うことができる。
前記車線境界線選択手段は、前記抽出された白線候補線の中から所定の条件を満足する白線候補線を車線境界線として選択する。所定の条件とは、例えば、車線境界線として選択される候補線に対し、一本の白線の幅程度の距離だけ離間した位置にその候補線と平行な別の候補線が存在していることである。
【0011】
更に、前記車線境界線選択手段は、
前記画像のうちの所定の画像領域において前記抽出されたエッジ点のうちの前記白線候補線が通過するエッジ点の個数をシグナル量と見做すとともに、前記所定の画像領域において前記抽出されたエッジ点のうちの前記白線候補線が通過しないエッジ点の個数をノイズ量と見做し、前記ノイズ量に対する前記シグナル量の割合に応じた値に基づいて画像評価値を取得し、前記画像評価値が所定の閾値よりも小さい場合には前記画像に基く前記車線境界線の選択結果を破棄するように構成される。
【0012】
前記ノイズ量(N)に対する前記シグナル量(S)の割合に応じた値とは、ノイズ量に対するシグナル量の比(S/N)であってもよく、後述する(1)式に示したような周知のS/N比であってもよい。更に、前記ノイズ量(N)に対する前記シグナル量(S)の割合に応じた値に基づいて取得される画像評価値は、後述するように「前記ノイズ量(N)に対する前記シグナル量(S)の割合に応じた値そのもの(瞬時値)」であってもよく、複数の「前記ノイズ量(N)に対する前記シグナル量(S)の割合に応じた値」の平均値に基づく値であってもよい。
【0013】
白線は一般に直線であり、且つ、最終的に選択される車線境界線は直線により近似された線である。従って、上述した本発明装置のように、抽出されたエッジ点のうちの白線候補線が通過するエッジ点の個数をシグナル量と見做すとともに、抽出されたエッジ点のうちの白線候補線が通過しないエッジ点の個数をノイズ量と見做した上で「画像のノイズの程度を示す画像評価値」を算出すれば、画像のノイズの程度を精度良く示す画像評価値を得ることができる。従って、この画像評価値に基づいて「選択された車線境界線の採用・不採用(破棄)」を決定することにより、ノイズの存在により間違って選択された車線境界線を真の車線境界線として認識してしまう可能性を低減することができる。
【0014】
更に、前記撮像手段は、
所定時間が経過する毎に1フレーム分の前記画像を取得するように構成され、
前記車線境界線選択手段は、
前記取得されたフレームのうちの最新のフレームについての前記ノイズ量に対する前記シグナル量の割合に応じた値(即ち、瞬時値)を前記画像評価値として取得するように構成され得る。
【0015】
これによれば、取得された最新の画像に基づいて選択された車線境界線が信頼性の高いものであるか否かが精度良く判定される。
【0016】
更に、前記車線境界線選択手段は、
前記取得されたフレームのうちの最新のフレームを含む所定数のフレームのそれぞれについての「前記ノイズ量に対する前記シグナル量の割合に応じた値」の平均値(前記ノイズ量に対する前記シグナル量の割合に応じた値の所定数のフレームについての平均値)を取得するとともに、同平均値に基づいて前記画像評価値を取得するように構成され得る。
【0017】
これによれば、最新の画像のノイズの割合のみならず直近の複数の画像のノイズの割合が多い場合、最新の画像に基づいて選択された車線境界線の信頼性は低いと判定され、その車線境界線は真の車線境界線として用いられない。
【0018】
より具体的に述べると、
前記車線境界線選択手段は、
前記画像評価値を、前記平均値と、前記平均値を取得する元となった複数の画像の前記ノイズ量に対する前記シグナル量の割合に応じた値の標準偏差と、に基づいて算出するように構成され得る(例えば、下記の(2)式及び条件2を参照。)。
【0019】
これによれば、ノイズ量の平均的な割合のみでなく、そのばらつきも考慮した上で、選択された車線境界線の信頼性が評価される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る車線境界線認識装置の概略構成図である。
【図2】図1に示した処理部のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図3】撮像手段により取得される画像を示した図である。
【図4】図1に示した処理部のCPUが行うエッジ点抽出処理を説明するための図である。
【図5】図1に示した処理部のCPUが行う白線候補線抽出処理を説明するための図である。
【図6】図1に示した処理部のCPUが行うS/N比等の算出処理を説明するための図である。
【図7】図1に示した処理部のCPUが行う車線境界線選択処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る車線境界線認識装置(以下、「境界線認識装置」とも称呼する。)について図面を参照しながら説明する。この境界線認識装置は、車両の走行を支援する車両走行支援装置の一部でもある。
【0022】
(構成)
図1は、車両(自動車、自車両)に搭載された車両走行支援装置10の概略構成を示している。車両走行支援装置10は、境界線認識装置20、車線維持制御装置30及び警報装置(車線逸脱警報装置)40を含んでいる。
【0023】
境界線認識装置20は、カメラ(撮像手段)21及び処理部(画像処理手段)22を含んでいる。
【0024】
カメラ21は、車体前部のインナーリアビューミラー(所謂、ルームミラー)のステイ等に固定されている。カメラ21の光軸は、カメラ21が車体に固定された状態において、所定の俯角を有し且つ車体前後方向(車両進行方向)に一致している。従って、カメラ21は車両進行方向(車両前方)の路面を撮像(撮影)することができるようになっている。より具体的に述べると、カメラ21は、処理部22からの指示に従って、車両から前方に所定距離だけ離間した位置から遠方の位置までの路面を撮像することができる。撮像された画像は、例えば、図3に示したような風景に応じた画像(実際には、輝度に応じて変化する信号からなる画像信号)である。カメラ21は例えばCCDカメラである。
【0025】
処理部22は周知のマイクロコンピュータを含む電子回路装置である。処理部22は、後に詳述するように、カメラ21によって取得(撮像)された画像(画像信号)を処理することにより、道路に描かれた白線等による車線境界線(車線区画線)を検出するようになっている。更に、処理部22は、その検出した境界線に対する自車両の左右方向の位置(相対位置)を推定するようになっている。処理部22は、その推定した相対位置に基いて、車線維持制御装置30及び/又は警報装置40に制御信号を送出するようになっている。
【0026】
車線維持制御装置30は、操舵制御装置31、パワーステアリング装置32及び車速センサ33を含んでいる。
【0027】
操舵制御装置31は周知のマイクロコンピュータを含む電子回路装置である。操舵制御装置31は車速センサ33からの入力信号である車速SPDと、処理部22からの制御信号と、に基きパワーステアリング装置32に駆動信号を送出するようになっている。なお、操舵制御装置31は、図示しないセンサ(例えば、操舵角センサ及びヨーレイトセンサ等)からの信号に基いてパワーステアリング装置32に駆動信号を送出し、運転者による操舵操作をアシストするようになっている。
【0028】
パワーステアリング装置32は周知の電動式パワーステアリング装置である。パワーステアリング装置32は操舵制御装置31からの駆動信号に基いて車両の舵角を変更することができるようになっている。
【0029】
警報装置40は車室内に設けられた周知の警報装置であり、インストルメントパネルに配設された警告ランプ及び/又は警告音発生装置(ブザー)を含んでいる。警報装置40は、処理部22からの制御信号に応答して乗員(運転者)に「自車両が車線を逸脱したか又は逸脱する可能性が高い旨」の情報を提供するようになっている。
【0030】
(作動)
次に、上述したように構成された車両走行支援装置10の作動について説明する。この作動は、実際には、境界線認識装置20の処理部22が備えるCPU(以下、単に「CPU」と称呼する。)が次に述べる処理を実行することによって実現される。
【0031】
CPUは、図2にフローチャートにより示したルーチンの処理を所定時間(例えば、0.1秒、即ち、100m秒)が経過する毎に繰り返し実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは図2のステップ200から処理を開始し、以下に述べるステップ210乃至ステップ280の処理を順に行い、ステップ295に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0032】
ステップ210:CPUは、カメラ21に撮像(撮影)指示信号を送出してカメラ21に撮影を行わせる。更に、CPUは、カメラ21が撮像した「図3に示したような画像」を取得する。従って、1フレーム(1つの画像)は0.1秒毎に取得される。
【0033】
より具体的に述べると、道路は一般にアスファルト等により舗装され、その上に白線等によって境界線が描かれている。従って、アスファルトが露呈している面の輝度は低く、アスファルトの上の白線の輝度は高い。カメラ21は、この輝度の高低に応じた画像信号を取得し、CPUへ送出する。
【0034】
ステップ220:CPUは、図4に示したように、取得した画像を車両横方向に走査して画像信号を取得し、更に、取得した画像信号にフィルタ処理を施すことによってエッジ点Peを抽出する。エッジ点とは取得した画像信号の輝度が急激に増大する点及び急激に減少する点である。輝度が急激に増大する点は便宜上「立ち上がりエッジ点」とも称呼される。輝度が急激に減少する点は便宜上「立ち下がりエッジ点」とも称呼される。なお、ステップ220はエッジ点抽出手段の機能を実現するステップである。
【0035】
ステップ230:CPUは、周知のハフ変換等を用いて、取得したエッジ点を平面視画像へと変換する。更に、CPUは、図5の(A)に示したように、その平面視画像において複数のエッジ点Peを通る直線を、白線の候補線L1、L2…、R1、R2、…として抽出する。なお、ハフ変換等により平面視画像へと変換される領域は、図4の破線により示されたような「撮影された画像の一部」であってもよい。
【0036】
ところで、複数のエッジ点Peを通る直線は多数取得される。但し、図5の(B)に示したように、白線の候補線は、それらの直線のうち、車両左右方向の位置の制約を満たし(横位置制限を満たし)且つ車両の進行方向から想定され得る所定の角度範囲内の(角度制限を満たす)直線に限定される。例えば、線X1は、角度制限を満足するものの左側の横位置制限を満足しないので、白線候補線として選択されない。線X2は、左側の横位置制限を満足するものの角度制限を満足しないので白線候補線として選択されない。なお、ステップ230は候補線抽出手段の機能を実現するステップである。
【0037】
ステップ240:CPUは、S/N比(ノイズ量(N)に対するシグナル量(S)の比)及びS/N比に応じた値である各種の画像評価値(評価指標値)を以下に述べるように算出・取得する。なお、これらの値は、図5の(A)の破線LA及び破線RAに示されているように、左右別々の所定の画像領域毎に取得される。また、以下に述べるように、画像評価値には、瞬時エッジ点S/N比、第1エッジ点S/N比平均、第2エッジ点S/N比平均、エッジ点S/N比標準偏差、第1エッジ点S/N比平均にエッジ点S/N比標準偏差と値αとの積を加えた値等が含まれる。
【0038】
<瞬時エッジ点S/N比:SNTi>
先ず、CPUは、シグナル量S及びノイズ量Nを以下のようにして求める。
【0039】
シグナル量Sは、前記所定の画像領域内において前記抽出された白線候補線が通過するエッジ点の個数(または、その個数に対応した数)である。なお、シグナル量Sは、周知のハフ変換を用いて抽出された候補線の得票数(ハフ投票数)の総和に対応した値である。
【0040】
ノイズ量Nは、前記所定の画像領域内において、前記抽出されたエッジ点の総数Tからシグナル量Sを減じた値(N=T−S)である。即ち、ノイズ量Nは、前記所定の画像領域内において前記抽出された白線候補線が通過しないエッジ点の個数(または、その個数に対応した数)である。
【0041】
例えば、単純化された図6に示した例において、シグナルと見做されるエッジ点は丸のプロットにより示され、ノイズと見做されるエッジ点は三角のプロットにより示されている。この図6に示した例において、シグナル量Sは26であり、ノイズ量Nは7である。
【0042】
CPUは、瞬時エッジ点S/N比SNTiを下記の(1)式に従って算出する。
【数1】

【0043】
<エッジ点S/N比平均:AveSNA,AveSNB>
次に、CPUは、エッジ点S/N比平均(第1エッジ点S/N比平均:AveSNA、及び、第2エッジ点S/N比平均:AveSNB)を以下のようにして求める。
【0044】
第1エッジ点S/N比平均AveSNAは、最新のフレームを含む過去の連続する50フレームのうち前記画像領域において抽出されたエッジ点の個数が1つ以上である直近の10フレーム(第1所定数)の瞬時エッジ点S/N比SNTiの平均値(算術平均値)である。なお、第1エッジ点S/N比平均AveSNAは、最新のフレームを含む過去の連続する第1所定数の瞬時エッジ点S/N比SNTiの平均値であってもよい。
【0045】
第2エッジ点S/N比平均AveSNBは、最新のフレームを含む過去の連続する50フレームのうち前記画像領域において抽出されたエッジ点の個数が1つ以上であるフレーム(第2所定数)の瞬時エッジ点S/N比SNTiの平均値(算術平均値)である。第2所定数は第1所定数よりも大きい。よって、第2エッジ点S/N比平均AveSNBは、第1エッジ点S/N比平均AveSNAよりも、より長い期間における瞬時エッジ点S/N比SNTiの平均値であると言うことができる。なお、第2エッジ点S/N比平均AveSNBは、最新のフレームを含む過去の連続する第2所定数の瞬時エッジ点S/N比SNTiの平均値であってもよい。
【0046】
<エッジ点S/N比標準偏差:SDSN>
次に、CPUは、エッジ点S/N比標準偏差SDSNを周知の標準偏差を求める式である下記の(2)式に従って算出する。用いられるデータは、第1エッジ点S/N比平均AveSNAの算出に使用された瞬時エッジ点S/N比SNTiである。従って、(2)式における値Nは、第1エッジ点S/N比平均AveSNAの算出に使用された瞬時エッジ点S/N比SNTiの数である。更に、(2)式の平方根内の分母はNであってもよい。
【数2】

【0047】
ステップ250:CPUは、ステップ230にて抽出した白線候補線の中から所定の条件を満足する2本の線(左右各1本の線)を車線境界線として選択する(図7を参照。)。この所定の条件とは、1本の白線の幅に実質的に相当する幅を有する2本で一組の実質的に平行な白線候補線のうちの一つであること(これを「条件A」と称呼する。)、及び、そのような二組の白線候補線(計4本)が車両の左側と右側に存在していて、それら二組間の距離が車線幅として許容される距離だけ離間していること(これを「条件B」と称呼する。)等である(図5(B)の線L1と線L2、及び、線R2及び線R3を参照。)。そのような二組の車線境界線が存在している場合、左側の二本の白線候補線のうち右側(車線中央側)の白線候補線(図5の(B)の線L2)、及び、右側の二本の白線候補線のうち左側(車線中央側)の白線候補線(図5の(B)の線R2)が車線境界線として選択される。なお、条件Aのみにより片側の車線境界線を選択してもよい。この結果、例えば、図7に示した線L2,R2が車線境界線として選択される。
【0048】
ステップ260:CPUは、以下の条件1及び条件2の何れかが成立した場合、先のステップ250にて「最新のフレームの画像に基づいて選択された車線境界線」を後述する走行支援制御に用いないようにするための処理を施す。即ち、CPUは、以下の条件1及び条件2の何れかが成立した場合、「最新のフレームの画像に基づいて選択された車線境界線」を破棄(除去)する。なお、ステップ240乃至ステップ260は車線境界線選択手段の機能を実現するステップである。
【0049】
<条件1>
SNTi<Ath
即ち、瞬時エッジ点S/N比SNTiが第1閾値Ath(例えば、−10)よりも小さい。CPUは、この条件1が満足されるとき、最新のフレームの画像がノイズを多く含むと判断されるので、最新のフレームの画像に基づく車線境界線の信頼性が低いと判断し、その最新のフレームの画像に基づいて選択された車線境界線を破棄(除去)する。
【0050】
<条件2>
AveSNA+α・SDSN<Bth
即ち、第1エッジ点S/N比平均AveSNAと、エッジ点S/N比標準偏差SDSNと所定の係数α(例えば、2)との積と、の和が第2閾値Bth(例えば、0)よりも小さい。CPUは、この条件2が満足されるとき、最新のフレームの画像のみでなく直近のフレームの画像をも考慮した結果、現時点の状態はノイズを多く含む状態にあると判断する。その結果、CPUは、最新のフレームの画像に基づく車線境界線の信頼性が低いと判断し、その最新のフレームの画像に基づいて選択された車線境界線を破棄(除去)する。
【0051】
ステップ270:CPUは、現時点の検出モードが慎重検出モードでなければ、以下の条件3が成立するか否かを判定し、その条件3が成立した場合に検出モードを通常検出モードから慎重検出モードに移行する。
【0052】
<条件3>
車線境界線の検出状態がロスト状態となったとき、AveSNB<Cthである。
即ち、車線境界線の検出状態がロスト状態となったとき、第2エッジ点S/N比平均AveSNBが第3閾値Cth(例えば、−6)よりも小さい。
【0053】
ここで、通常検出モード、慎重検出モード、車線境界線の認識状態及びロスト状態について説明を加える。検出モードが通常検出モードにある場合、例えば、直近の10フレームの画像において連続して車線境界線が選択できないとき(白線の候補線が抽出できない場合を含む。)、CPUは車線境界線の検出状態が「ロスト状態(車線境界線ロスト状態)」であると判定し、ロスト状態に応じた車両走行支援制御を行う。
【0054】
ロスト状態に応じた車両走行支援制御とは、実際には車線境界線に基づく車両走行支援制御を行わないことである。車線境界線に基づく車両走行支援制御は、例えば、「自車両が車線を逸脱したか又は逸脱する可能性が高い」場合にその旨の情報を警報装置40から提供する制御(車線逸脱警報制御)である。或いは、車線境界線に基づく車両走行支援制御は、例えば、自車両が車線境界線に沿って走行できるように車線維持制御装置30を作動させる制御(車線維持制御)である。
【0055】
検出モードが通常検出モードにあり、且つ、車線境界線検出状態がロスト状態にある場合、例えば、直近の10フレームの画像において連続して車線境界線が選択できたとき、CPUは車線境界線の検出状態が「認識状態」であると判定し、認識状態に応じた車両走行支援制御を行う。即ち、CPUは、認識又は推定されている車線境界線に基づいて、車線逸脱警報制御及び/又は車線維持制御を行う。
【0056】
一方、CPUは、検出モードが慎重検出モードである場合、車線境界線の検出状態がロスト状態にあるときに例え直近の10フレームの画像において連続して車線境界線が選択できたとしても、車線境界線の検出状態が認識状態となったと判定しない。即ち、CPUは、検出モードが慎重検出モードから通常検出モードへと変化した後に直近の10フレームの画像において連続して車線境界線が選択できたとき、CPUは車線境界線検出状態が「認識状態」であると判定する。
【0057】
CPUは、現時点が慎重検出モードであれば、以下の条件4が成立するか否かを判定し、その条件4が成立した場合に慎重検出モードから通常検出モードへと移行する。
【0058】
<条件4>
車線幅(ステップ250にて選択された左右の境界線の距離)の分散値<D1th
且つ
ピッチ角の分散値<D2th
且つ
第2エッジ点S/N比平均AveSNB>Eth(例えば、0)
【0059】
なお、ピッチ角は、路面に対する車両(従って、カメラ21の光軸)の前後方向の傾斜角度である。CPUは、ピッチ角を平面視画像に変換した後の左右の車線境界線から算出する。即ち、車両が路面に水平な状態であるときにピッチ角が「0」であるとすると、平面視画像において左右の車線境界線は互いに平行になる。一方、車両前部が車両後部よりも下方に位置するように車両が傾斜すると、平面視画像における左右の車線境界線は、車両近傍の車線境界線の左右の幅のほうが車両遠方の車線境界線の左右の幅よりも小さくなる。他方、車両後部が車両前部よりも下方に位置するように車両が傾斜すると、平面視画像における左右の車線境界線は、車両近傍の車線境界線の左右の幅のほうが車両遠方の車線境界線の左右の幅よりも大きくなる。そこで、CPUはこの平面視画像における左右の車線境界線の傾斜傾向に基づいてピッチ角を算出する。
【0060】
ステップ280:CPUは、現時点の車線境界線検出状態が認識状態にあるとき、前述した車両走行支援制御を実行する。
【0061】
以上、説明したように、本実施形態に係る車線境界線認識装置は、
車両に搭載されるとともに同車両の進行方向の路面の画像を(所定時間の経過毎に1フレーム分ずつ)取得する撮像手段(カメラ21及び図2のステップ210)と、
前記取得された画像に基いて輝度の変化点をエッジ点として抽出するエッジ点抽出手段(ステップ220)と、
前記抽出されたエッジ点を通る白線候補線を抽出する候補線抽出手段(ステップ230)と、
前記抽出された白線候補線の中から所定の条件を満足する白線候補線を車線境界線として選択する車線境界線選択手段(ステップ250)と、
を備えた車線境界線認識装置において、
前記車線境界線選択手段は、
前記画像のうちの所定の画像領域において前記抽出されたエッジ点のうちの前記白線候補線が通過するエッジ点の個数をシグナル量と見做すとともに、前記所定の画像領域において前記抽出されたエッジ点のうちの前記白線候補線が通過しないエッジ点の個数をノイズ量と見做し、前記ノイズ量に対する前記シグナル量の割合に応じた値に基づいて画像評価値を取得し(ステップ240)、前記画像評価値が所定の閾値よりも小さい場合には前記画像に基く前記車線境界線の選択結果を破棄する(ステップ260)。
【0062】
白線は一般に直線であり、且つ、最終的に選択される車線境界線は直線により近似された線である。従って、上述した実施形態のように、抽出されたエッジ点のうちの白線候補線が通過するエッジ点の個数をシグナル量と見做すとともに、抽出されたエッジ点のうちの白線候補線が通過しないエッジ点の個数をノイズ量と見做した上で「画像のノイズの程度を示す画像評価値」を算出すれば、画像のノイズの程度を精度良く示す画像評価値を得ることができる。更に、上述の実施形態は、この画像評価値に基づいて「選択された車線境界線の採用・不採用(破棄)」を決定する。よって、ノイズの存在により間違って選択された車線境界線を真の車線境界線として認識してしまう可能性を低減することができる。
【0063】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、瞬時エッジ点S/N比SNTiは上記(1)式に基づいて求められていたが、瞬時エッジ点S/N比は、ノイズ量Nに対するシグナル量Sの比そのもの(S/N)であってもよい。
【0064】
また、最新のフレームを含む所定数のフレームについての瞬時エッジ点S/N比SNTiの算術平均値を画像評価値として求め、その画像評価値が所定の閾値よりも小さいとき、最新のフレームに基づいて選択された車線境界線を破棄してもよい。
【符号の説明】
【0065】
10…車両走行支援装置、20…境界線認識装置、21…カメラ、22…処理部、30…車線維持制御装置、31…操舵制御装置、32…パワーステアリング装置、33…車速センサ、40…警報装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるとともに同車両の進行方向の路面の画像を取得する撮像手段と、
前記取得された画像に基いて輝度の変化点をエッジ点として抽出するエッジ点抽出手段と、
前記抽出されたエッジ点を通る白線候補線を抽出する候補線抽出手段と、
前記抽出された白線候補線の中から所定の条件を満足する白線候補線を車線境界線として選択する車線境界線選択手段と、
を備えた車線境界線認識装置において、
前記車線境界線選択手段は、
前記画像のうちの所定の画像領域において前記抽出されたエッジ点のうちの前記白線候補線が通過するエッジ点の個数をシグナル量と見做すとともに、前記所定の画像領域において前記抽出されたエッジ点のうちの前記白線候補線が通過しないエッジ点の個数をノイズ量と見做し、前記ノイズ量に対する前記シグナル量の割合に応じた値に基づいて画像評価値を取得し、前記画像評価値が所定の閾値よりも小さい場合には前記画像に基く前記車線境界線の選択結果を破棄するように構成された車線境界線認識装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車線境界線認識装置において、
前記撮像手段は、
所定時間が経過する毎に1フレーム分の前記画像を取得するように構成され、
前記車線境界線選択手段は、
前記取得されたフレームのうちの最新のフレームについての前記ノイズ量に対する前記シグナル量の割合に応じた値を前記画像評価値として取得するように構成された車線境界線認識装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車線境界線認識装置において、
前記撮像手段は、
所定時間が経過する毎に1フレーム分の前記画像を取得するように構成され、
前記車線境界線選択手段は、
前記取得されたフレームのうちの最新のフレームを含む所定数のフレームのそれぞれについての前記ノイズ量に対する前記シグナル量の割合に応じた値の平均値を取得するとともに、同平均値に基づいて前記画像評価値を取得するように構成された車線境界線認識装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車線境界線認識装置において、
前記車線境界線選択手段は、
前記画像評価値を、前記平均値と、前記平均値を取得する元となった複数の画像の前記ノイズ量に対する前記シグナル量の割合に応じた値の標準偏差と、に基づいて算出するように構成された車線境界線認識装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−105179(P2013−105179A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246142(P2011−246142)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】