説明

車載ランプ制御装置

【課題】重量及び設計工数を削減でき、ランプ毎のバラツキにも対応できて、ランプの明るさを等しくできる車載ランプ制御装置の提供。
【解決手段】発電機3及びバッテリBから複数のランプLl ,Lr への電力をそれぞれオン/オフする複数の半導体スイッチSRl ,SRr を備え、ランプLl ,Lr への電力供給をPWM(Pulse Width Modulation)制御する車載ランプ制御装置。ランプLl ,Lr それぞれに供給される電力を算出する複数の電力算出手段(1)と、電力算出手段(1)がそれぞれ算出した電力と所定電力とに基づき、ランプLl ,Lr それぞれに供給される電力が所定電力となるように、半導体スイッチSRl ,SRr へのそれぞれのオン信号をPWM制御する複数の手段(1)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機及びバッテリから複数のランプへの電力をそれぞれオン/オフする複数の半導体スイッチを備え、ランプへの電力供給をPWM(Pulse Width Modulation)制御する車載ランプ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるヘッドランプ等のランプ負荷は、電源からの距離に応じてそれぞれへの電力供給線の長さに差があると、電力供給線の電圧降下分に差が生じるので、ランプの明るさが異なることになる。
そこで、従来は、本来短くても良いランプへの電力供給線を、他方のランプへの電力供給線に合わせて、長くするなどの調整を行っている。
【0003】
特許文献1には、車両の電装部品側に装着されるコネクタ兼用リレーホルダと、このコネクタ兼用リレーホルダに装着されるリレーとを備えた車両の電圧降下防止装置が開示されている。コネクタ兼用リレーホルダには車両の電装部品側への既設電源線路を接続すると共に、バッテリ電源側からの追加電源線路を接続して、車両の電装部品側に所定電圧の電力を供給する。電装部品側にコネクタ兼用リレーホルダが取付けられる為、電源線路の短縮化が図られ、電圧降下が防止されるが、追加部品が必要であり、部品コストが上昇する。
【特許文献1】実開平6−69016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車載ランプでは、上述したように、ランプの明るさを等しくする為に、短くても良いランプへの電力供給線を、他方の電力供給線に合わせて、長くしている。しかし、その長くした分、車両の重量が増加し、その長くした電力供給線を収納するスペース等を検討する為の設計工数が増加するという問題がある。また、ランプ毎の抵抗特性等のバラツキには対応できないという問題もある。
【0005】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであり、重量及び設計工数を削減でき、ランプ毎のバラツキにも対応できて、ランプの明るさを等しくできる車載ランプ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明に係る車載ランプ制御装置は、発電機及びバッテリから複数のランプへの電力をそれぞれオン/オフする複数の半導体スイッチを備え、前記ランプへの電力供給をPWM(Pulse Width Modulation)制御する車載ランプ制御装置であって、前記ランプそれぞれに供給される電力を算出する複数の電力算出手段と、該電力算出手段がそれぞれ算出した電力と所定電力とに基づき、前記ランプそれぞれに供給される電力が前記所定電力となるように、前記半導体スイッチへのそれぞれのオン信号をPWM制御する複数の手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
この車載ランプ制御装置では、複数の半導体スイッチが、発電機及びバッテリから複数のランプへの電力をそれぞれオン/オフし、ランプへの電力供給をPWM(Pulse Width Modulation)制御する。複数の電力算出手段が、ランプそれぞれに供給される電力を算出する。複数のPWM制御する手段は、電力算出手段がそれぞれ算出した電力と所定電力とに基づき、ランプそれぞれに供給される電力が所定電力となるように、半導体スイッチへのそれぞれのオン信号をPWM制御する。
【0008】
第2発明に係る車載ランプ制御装置は、発電機及びバッテリから複数のランプへの電力をそれぞれオン/オフする複数の半導体スイッチを備え、前記ランプへの電力供給をPWM制御する車載ランプ制御装置であって、前記ランプそれぞれに供給される電力を算出する複数の電力算出手段と、該電力算出手段がそれぞれ算出した電力を比較して最小値を求める比較手段と、前記ランプそれぞれに供給される電力が、前記比較手段が求めた最小値となるように、前記半導体スイッチへのそれぞれのオン信号をPWM制御する複数の手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
この車載ランプ制御装置では、複数の半導体スイッチが、発電機及びバッテリから複数のランプへの電力をそれぞれオン/オフし、ランプへの電力供給をPWM制御する。複数の電力算出手段が、ランプそれぞれに供給される電力を算出し、比較手段が、電力算出手段がそれぞれ算出した電力を比較して最小値を求める。複数のPWM制御する手段は、ランプそれぞれに供給される電力が、比較手段が求めた最小値となるように、半導体スイッチへのそれぞれのオン信号をPWM制御する。
【0010】
第3発明に係る車載ランプ制御装置は、前記半導体スイッチが内蔵し、該半導体スイッチに流れる電流を検出する電流検出手段と、前記発電機及びバッテリの出力電圧を検出する電圧検出手段とを備え、前記電力算出手段は、前記バッテリ及びランプ間の既知である配線抵抗と、前記電流検出手段が検出した電流と、前記電圧検出手段が検出した電圧とに基づき、前記ランプに供給される電力を算出するように構成してあることを特徴とする。
【0011】
この車載ランプ制御装置では、半導体スイッチに内蔵された電流検出手段が、その半導体スイッチに流れる電流を検出し、電圧検出手段が、発電機及びバッテリの出力電圧を検出する。電力算出手段は、バッテリ及びランプ間の既知である配線抵抗と、電流検出手段が検出した電流と、電圧検出手段が検出した電圧とに基づき、ランプに供給される電力を算出する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る車載ランプ制御装置によれば、重量及び設計工数を削減でき、ランプ毎のバラツキにも対応できて、ランプの明るさを等しくできる車載ランプ制御装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る車載ランプ制御装置の実施の形態1の概略構成を示すブロック図である。
この車両用電源装置は、図示しないエンジンに連動して、オルタネータ(発電機、交流発電機)3が発電し、発電した電力は、オルタネータ3内で整流され、バッテリBに充電される。
【0014】
オルタネータ3及びバッテリBからの電力は、半導体リレー(半導体スイッチ;IPS(Intelligent Power Switch))SRl を通じて、例えばヘッドランプの左ランプLl に与えられる。また、半導体リレー(半導体スイッチ)SRr を通じて右ランプLr に与えられる。半導体リレーSRl ,SRr は、制御部1からオン/オフ信号を与えられる。
【0015】
半導体リレーSRl ,SRr は、それぞれに流れる電流Il ,Ir を検出する電流検出機能を有しており、それぞれが検出した電流情報Il ,Ir は、制御部1に与えられる。
オルタネータ3及びバッテリBからの出力電圧Vは、制御部1が内蔵する電圧検出手段4により検出される。
制御部1には、左ランプLl 及び右ランプLr を操作するランプスイッチ2の操作信号が与えられる。
【0016】
ここで、図2に示すように、バッテリBからの電力供給線のうち、バッテリBと半導体リレーSRl ,SRr への分岐節点との間の配線抵抗をR1 、分岐節点と半導体リレーSRl との間の配線抵抗をR2 、半導体リレーSRl と左ランプLl との間の配線抵抗をR3 とする。また、分岐節点と半導体リレーSRr との間の配線抵抗をR4 、半導体リレーSRr と右ランプLr との間の配線抵抗をR5 とすると、配線抵抗R1 ,R2 ,R3 ,R4 ,R5 は、電力供給線のそれぞれの長さ、断面積、抵抗率及びコネクタ抵抗からそれぞれ既知とすることができる。
【0017】
以上から、左ランプLl の両端電圧Vl は、(1)式で算出し推定することができる。
l =V−(Il +Ir )R1 −Il (R2 +R3 ) (1)
右ランプLr の両端電圧Vr は、(2)式で算出し推定することができる。
r =V−(Il +Ir )R1 −Ir (R4 +R5 ) (2)
【0018】
以下に、このような構成の車載ランプ制御装置の動作例を、それを示す図3のフローチャートを参照しながら説明する。
制御部1は、ランプスイッチ2がオンにされる迄待機しており(S1)、ランプスイッチ2がオンにされると、半導体リレーSRl ,SRr をオンにする(S3)。次いで、電源電圧(出力電圧)V、及び左ランプLl に流れる電流Il を読込み(S5)、(1)式で、左ランプLl の両端電圧Vl を算出する(S7)。
【0019】
次に、制御部1は、半導体リレーSRl がオンしている時の左ランプLl への供給電力Pl を、Pl =Vl ×Il により算出する(S9)。次いで、算出した供給電力Pl が、目標電力(所定電力)P0 より大きいか否かを判定する(S11)。尚、目標電力P0 は、例えば車両電源の公称値12VDC及びランプLl ,Lr の定格に基づき定める。
【0020】
制御部1は、算出した供給電力Pl が、目標電力P0 より大きければ(S11)、左ランプLl への供給電力をPWM制御する為のデューティ比Dl を、Dl =100×P0 /Pl により算出する(S13)。次いで、算出したデューティ比Dl により、左ランプLl への供給電力をPWM制御する為のPWM信号の、半導体リレーSRl への出力を開始する(S15)。
制御部1は、算出した供給電力Pl が、目標電力P0 より大きくなければ(S11)、デューティ比Dl を100%として(S33)、ランプLl への供給電力をPWM制御する為のPWM信号の、半導体リレーSRl への出力を開始する(S15)。
【0021】
制御部1は、次に、電源電圧(出力電圧)V、及び右ランプLr に流れる電流Ir を読込み(S17)、(2)式で、右ランプLr の両端電圧Vr を算出する(S19)。
次に、制御部1は、半導体リレーSRr がオンしている時の右ランプLr への供給電力Pr を、Pr =Vr ×Ir により算出する(S21)。次いで、算出した供給電力Pr が、目標電力P0 より大きいか否かを判定する(S23)。
【0022】
制御部1は、算出した供給電力Pr が、目標電力P0 より大きければ(S23)、右ランプLr への供給電力をPWM制御する為のデューティ比Dr を、Dr =100×P0 /Pr により算出する(S25)。次いで、算出したデューティ比Dr により、右ランプLr への供給電力をPWM制御する為のPWM信号の、半導体リレーSRr への出力を開始する(S27)。
制御部1は、算出した供給電力Pr が、目標電力P0 より大きくなければ(S23)、デューティ比Dr を100%として(S35)、ランプLr への供給電力をPWM制御する為のPWM信号の、半導体リレーSRr への出力を開始する(S27)。
【0023】
次に、制御部1は、ランプスイッチ2がオフにされているか否かを判定し(S29)、オフにされていれば、半導体リレーSRl ,SRr をオフにした(S31)後、ランプスイッチ2がオンにされる迄待機する(S1)。
制御部1は、ランプスイッチ2がオフにされていなければ(S29)、電源電圧(出力電圧)V、及び左ランプLl に流れる電流Il を読込む(S5)。
【0024】
(実施の形態2)
図4は、本発明に係る車載ランプ制御装置の実施の形態2の動作を示すフローチャートである。本実施の形態2の概略構成は、実施の形態1で説明した図1のブロック図と同様であるので、説明を省略する。
この車載ランプ制御装置では、目標電力P0 を定めず、算出した左ランプLl への供給電力Pl 、及び右ランプLr への供給電力Pr を比較する。比較した結果、その小さい方の供給電力をPWM制御する為のデューティ比を100%として(つまり、半導体リレーはオン状態)、大きい方の供給電力を、小さい方の供給電力と等しくなるようにPWM制御する。
【0025】
以下に、この車載ランプ制御装置の動作例を、図4のフローチャートを参照しながら説明する。
制御部1は、ランプスイッチ2がオンにされる迄待機しており(S41)、ランプスイッチ2がオンにされると、半導体リレーSRl ,SRr をオンにする(S43)。次いで、電源電圧(出力電圧)V、左ランプLl に流れる電流Il 、及び右ランプLr に流れる電流Ir を読込み(S45)、(1),(2)式で、左ランプLl の両端電圧Vl 、及び右ランプLr の両端電圧Vr を算出する(S47)。
【0026】
次に、制御部1は、半導体リレーSRl がオンしている時の左ランプLl への供給電力Pl を、Pl =Vl ×Il により算出し、半導体リレーSRr がオンしている時の右ランプLr への供給電力Pr を、Pr =Vr ×Ir により算出する(S49)。次いで、算出した供給電力Pr が、算出した供給電力Pl 以上であるか否かを判定する(S51)。
【0027】
制御部1は、算出した供給電力Pr が、算出した供給電力Pl 以上であれば(S51)、右ランプLr への供給電力をPWM制御する為のデューティ比Dr を、Dr =100×Pl /Pr により算出する(S53)。次いで、算出したデューティ比Dr により、右ランプLr への供給電力をPWM制御する為のPWM信号の、半導体リレーSRr への出力を開始する(S55)。尚、この際、半導体リレーSRl はオン状態を維持する。
【0028】
制御部1は、算出した供給電力Pr が、算出した供給電力Pl 以上でなければ(S51)、左ランプLl への供給電力をPWM制御する為のデューティ比Dl を、Dl =100×Pr /Pl により算出する(S61)。次いで、算出したデューティ比Dl により、左ランプLl への供給電力をPWM制御する為のPWM信号の、半導体リレーSRl への出力を開始する(S63)。尚、この際、半導体リレーSRr はオン状態を維持する。
【0029】
次に、制御部1は、ランプスイッチ2がオフにされているか否かを判定し(S57)、オフにされていれば、半導体リレーSRl ,SRr をオフにした(S59)後、ランプスイッチ2がオンにされる迄待機する(S41)。
制御部1は、ランプスイッチ2がオフにされていなければ(S57)、電源電圧(出力電圧)V、左ランプLl に流れる電流Il 、及び右ランプLr に流れる電流Ir を読込む(S45)。
尚、上述した実施の形態1,2では、ランプ数は2つであったが、ランプ数が3つ以上である場合でも、上述したような動作は可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る車載ランプ制御装置の実施の形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る車載ランプ制御装置の動作を説明する為の説明図である。
【図3】本発明に係る車載ランプ制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る車載ランプ制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
1 制御部(電力算出手段、PWM制御する複数の手段)
2 ランプスイッチ
3 オルタネータ(発電機、交流発電機)
4 電圧検出手段
B バッテリ
l 左ランプ
r 右ランプ
SRl ,SRr 半導体リレー(半導体スイッチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機及びバッテリから複数のランプへの電力をそれぞれオン/オフする複数の半導体スイッチを備え、前記ランプへの電力供給をPWM(Pulse Width Modulation)制御する車載ランプ制御装置であって、
前記ランプそれぞれに供給される電力を算出する複数の電力算出手段と、該電力算出手段がそれぞれ算出した電力と所定電力とに基づき、前記ランプそれぞれに供給される電力が前記所定電力となるように、前記半導体スイッチへのそれぞれのオン信号をPWM制御する複数の手段とを備えることを特徴とする車載ランプ制御装置。
【請求項2】
発電機及びバッテリから複数のランプへの電力をそれぞれオン/オフする複数の半導体スイッチを備え、前記ランプへの電力供給をPWM制御する車載ランプ制御装置であって、
前記ランプそれぞれに供給される電力を算出する複数の電力算出手段と、該電力算出手段がそれぞれ算出した電力を比較して最小値を求める比較手段と、前記ランプそれぞれに供給される電力が、前記比較手段が求めた最小値となるように、前記半導体スイッチへのそれぞれのオン信号をPWM制御する複数の手段とを備えることを特徴とする車載ランプ制御装置。
【請求項3】
前記半導体スイッチが内蔵し、該半導体スイッチに流れる電流を検出する電流検出手段と、前記発電機及びバッテリの出力電圧を検出する電圧検出手段とを備え、前記電力算出手段は、前記バッテリ及びランプ間の既知である配線抵抗と、前記電流検出手段が検出した電流と、前記電圧検出手段が検出した電圧とに基づき、前記ランプに供給される電力を算出するように構成してある請求項1又は2記載の車載ランプ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−55890(P2010−55890A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218564(P2008−218564)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】