説明

車載型情報伝達装置

【課題】与えられた情報を車両の振動と区別して搭乗者が容易に判別可能な車載型情報伝達装置を提供する。
【解決手段】車両7の一部分に設置され、入力される動作指令信号に応じて加振力を発生するアクチュエータA1〜A5と、アクチュエータA1〜A5の設置場所と関連づけられる車両7の一部分における振動を検出する加速度センサS1〜S5と、アクチュエータA1〜A5に対して動作指令信号を出力することでアクチュエータA1〜A5により生じる振動を制御する制御部2とを備えており、制御部2が、加速度センサS1〜S5による振動の検出信号を基にしてアクチュエータA1〜A5の設置場所における振動を相殺する相殺信号を生成する相殺信号生成部21a〜21eと、搭乗者に伝達する情報に応じた情報信号を生成する情報信号生成部22a〜22eとを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内の搭乗者に対して情報を伝達するための車載型情報伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両からはその車両の内部にいる搭乗者に対して様々な情報が与えられるようになっている。例えば、ウインカー作動時や後退時においては運転者に対して対応する動作音が発せられ、運転動作の補助としてこれらの動作確認ができるようになっている。また、ドアが開放状態にある場合にはランプ等で注意喚起がなされる。さらには、車両周囲の障害物をセンサが検知した際には、警報によって注意喚起を行うものもある。また、近年では、車両の走行状態を検知しながら、走行車線をはみ出した場合や、進路上にある障害物や他車との衝突の危険を感知した場合には警報を発するものもあり、より高度な情報が搭乗者に伝達されるようになってきている。
【0003】
こうした情報の伝達手段としては様々なものが提案されており、その中でも下記特許文献1記載のもののように、ハンドルを介して運転者に情報を伝達するものがある。このものは、車両状態情報および周囲環境情報等に基づいてハンドル(操舵)の把持部を変形させることで運転者の掌に機械的刺激を与えるように構成されている。こうすることで、運転に必要な情報を運転者のみに伝達し、他の搭乗者には不要な情報を与えないようにすることで車内環境を良好に維持することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−22340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1のように情報を必要とする者のみに伝達を行い、不要な者には伝達を行わないようにすることが車内環境を保つためには好ましいといえるものの、情報を必要とする者に対しては確実に伝達を行うことが重要といえる。そのためには、走行中の振動や騒音によって与えるべき情報が埋もれ、搭乗者による判別が不能とならないようにする必要がある。
【0006】
また、上述の特許文献1における構成では、把持部の変形による機械的刺激によって情報伝達を行うため、情報の伝達速度が小さくなり、緊急を要する種類の情報を与えるためには適さない。また、同じ手段を用いて多様な情報を伝達することも困難といえる。
【0007】
本発明は、このような課題を有効に解決することを目的としており、具体的には、搭乗者に対して与える情報を、車両の振動とは区別して容易に判別可能な形態で伝達できるとともに、情報の伝達速度が大きく多様な形態で情報を与えることが可能な車載型情報伝達装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0009】
すなわち、本発明の車載型情報伝達装置は、車両の一部分に設置され、入力される動作指令信号に応じて加振力を発生する加振手段と、当該加振手段の設置場所と関連づけられる車両の一部分における振動を検出する振動検出手段と、前記加振手段に対して前記動作指令信号を出力することで前記加振手段により生じる振動を制御する制御部とを備えており、前記制御部が、前記振動検出手段による振動の検出信号を基にして前記加振手段の設置場所における振動を相殺する相殺信号を生成する相殺信号生成部と、搭乗者に伝達する情報に応じた情報信号を生成する情報信号生成部と、前記相殺信号生成部による相殺信号と前記情報信号生成部による情報信号とを重畳させた重畳信号を生成する重畳部とを備え、前記重畳部による重畳信号を基にして前記動作指令信号を決定するように構成していることを特徴とする。
【0010】
このように構成すると、搭乗者に対して車両から伝わる振動を低減しつつ、必要な情報を小さな振動として与えることで適切に通知することが可能となる。また、情報の伝達が振動によって直接行われるため、車内が騒がしくても確実に搭乗者が判別することが可能となる。さらに、伝達速度の速い振動を情報伝達手段として用いていることから、様々な振動パターンを形成できて多様な情報を区別して扱うことも可能となる、
【0011】
また、複数の搭乗者に対してそれぞれ適切に情報を通知できるようにするためには、前記振動検出手段と前記加振手段とが対応する情報伝達ユニットとして構成されているとともに、当該情報伝達ユニットが搭乗者の着座位置に対応する複数箇所に各々設けられており、各着座位置における振動の相殺信号と情報信号とを重畳させた重畳信号を基にして、着座位置毎に動作指令信号を決定して加振手段に出力するように構成することが好適である。
【0012】
また、搭乗者毎に必要となる情報のみを与え、不要な情報の伝達により不快な思いを生じさせることがないようにするためには、着座位置によって前記情報信号生成部を通じて与える情報信号を異ならせるように構成することが好適である。
【0013】
また、状況に応じて、加振手段による加振力の発生のない非作動モードと、車両振動の相殺のみを行う制振モードと、さらに振動による情報伝達を行う情報通知モードとを使い分けることができるようにするためには、前記相殺信号生成部および前記情報信号生成部に対してオンオフ信号を出力する信号設定部を備えており、前記相殺信号生成部および前記情報信号生成部が、入力されるオンオフ信号に応じて信号生成動作を実行状態と停止状態との間で切り替えるように構成することが好適である。
【0014】
また、着座位置ごとに加振手段による振動発生のない非作動モードと、制振モードと情報通知モードとを使い分けることができるようにするためには、前記制御部が、前記情報伝達ユニット毎に対応する前記相殺信号生成部と前記情報信号生成部と前記重畳部とを備えており、前記信号設定部が、各相殺信号生成部および各情報信号生成部に対して個別のオンオフ信号を出力することで、各信号生成部における信号生成動作を実行状態と停止状態との間で個々に切り替えるように構成することが好適である。
【0015】
さらには、搭乗者に対してより適切に情報伝達を行うことを可能とするためには、前記加振手段および振動検出手段の設置場所がハンドル、シート、シートベルト巻取装置の少なくともいずれかであるように構成することが好適である。
【発明の効果】
【0016】
以上説明した本発明によれば、与えられた情報を車両の振動や騒音と区別して搭乗者が容易に判別可能であるとともに、多様な情報の伝達が可能な車載型情報伝達装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る車載型情報伝達装置のブロック図。
【図2】同車載型情報伝達装置を車両に搭載した場合の一例を示す側断面図。
【図3】同車載型情報伝達装置を車両に搭載した場合の一例を示す平断面図。
【図4】同車載型情報伝達装置における各ブロックより発生する信号を説明するための模式図。
【図5】同車載型情報伝達装置を用いて搭乗者に伝達する情報信号の例を示す表。
【図6】図1に係る車載型情報伝達装置の一部を変形した変形例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
この実施形態の車載型情報伝達装置は、図1のブロック図に示すような構成としており、大きくは、搭乗者に情報を伝達するための加振手段としての電磁式アクチュエータ(以下、単に「アクチュエータと」称す。)A1〜A5と、振動検出手段としての加速度センサS1〜S5とを1個ずつ対応させて構成した5つの情報伝達ユニット(以下、単に「ユニット」と称す。)U1〜U5と、これらと接続される制御部2とから構成される。
【0020】
アクチュエータA1〜A5は、電圧によって制御され、その電圧のパターンに従って本体に対して可動子を往復動作させる機器であり、例えば特開2004−343964号公報に記載のリニアアクチュエータを駆動源として用いることができる。さらに、可動子の先端に錘を取り付けることでより強い反力を発生させて加振力を増大させることができることが広く知られており、本実施形態においても各アクチュエータA1〜A5を同様に構成している。こうしたアクチュエータA1〜A5を用いることで、大きな加振力を発生させることができるとともに、その加振力の周波数や波形を電圧によって制御することが可能である。
【0021】
アクチュエータA1と加速度センサS1より構成されるユニットU1は、運転者に対する情報の伝達を行うものとして、図2および図3に示すように運転席に設けている。より具体的には、アクチュエータA1は情報伝達場所としてのハンドル74の内部に組み込み、加速度センサS1はハンドル74を支持するダッシュボード73内に設けている。
【0022】
また、アクチュエータA2と加速度センサS2より構成されるユニットU2は、助手席のシート82の内部に組み込むとともに、アクチュエータA3〜A5および加速度センサS3〜S5よりそれぞれ構成されるユニットU3〜U5は、後部の各着座位置におけるシート83〜85の内部に設けている。また、制御部2はダッシュボード73の内部に収められており、図中では一部省略されてはいるが、エンジン71の制御を行うための車載コンピュータ72や上記各ユニットU1〜U5と電気的に接続されている。
【0023】
上記のように各アクチュエータA1〜A5と、対応する加速度センサS1〜S5とは各々近接させた位置に設置し、少なくとも振動伝達の点で関連づけられた位置にすることが肝要である。すなわち、ここでいうユニットとは、必ずしも一体化されて構成されている場合のみならず、一対一で対応関係にあり、伝達関数が把握されている二点に各々取り付ける場合を含むものである。これは、後述するように、加速度センサS1〜S5の設置場所を参照点として、そこで得られる振動の検出信号を基にして、応答点としてのアクチュエータA1〜A5の設置場所における振動を把握した上で、アクチュエータA1〜A5の制御を行うことで応答点における制振を図った上で、情報信号としての別の振動を生じさせるためである。
【0024】
以下、図1に戻って、詳細な構成の説明を行う。
【0025】
制御部2は、各ユニットU1〜U5に対応する相殺信号および情報信号を各々生成する相殺信号生成部21a〜21eと情報信号生成部22a〜22eとを有している。さらに、これらにより生成された相殺信号と情報信号とを重畳させた重畳信号を作成して出力する重畳部23a〜23eを備えるとともに、この重畳信号をアンプ24a〜24eによって増幅させた上で動作指令信号として各アクチュエータA1〜A5に与えるように構成している。
【0026】
上記の各相殺信号生成部21a〜21eは、各加速度センサS1〜S5を通じて得られる振動の検出信号が入力され、これに基づいてアクチュエータA1〜A5の設置位置における振動を相殺するための相殺信号を生成する。また、各相殺信号生成部21a〜21eには、車載コンピュータ72よりエンジン71の回転数信号が入力されるようになっており、この信号も基準として用いることで高精度に相殺信号の生成ができるようになっている。
【0027】
他方、情報信号生成部22a〜22eは、図示しない情報入力部を通じて搭乗者に通知すべき多種の情報が与えられ、これらの情報に応じた形態の情報信号を生成するようになっている。
【0028】
上述したように、相殺信号生成部21a〜21eによる相殺信号と情報信号生成部22a〜22eによる相殺信号は、重畳部23a〜23eに入力され、ここで両信号を重畳させた重畳信号が生成され、アンプ24a〜24eによって増幅させた上で動作指令信号として各アクチュエータA1〜A5に与えられる。
【0029】
後述するように、情報信号の生成が停止状態にあり、アクチュエータA1〜A5に与えられる信号が、相殺信号のみを基にした動作指令信号である場合には、単なる制振として機能するものである。このように制振技術のみに着目した場合、この制御手段は特開2009−275814号公報に記載のものとほぼ同様のものといえる。そのため、詳細な制振の原理および詳細な構成については省略する。
【0030】
また、相殺信号生成部21a〜21eおよび情報信号生成部22a〜22eには、切替部31a〜31e、32a〜32eが各々接続されており、これらよりオン信号またはオフ信号が入力されるようになっている。そして、相殺信号生成部21a〜21eおよび情報信号生成部22a〜22eは、オン信号の入力時には信号の生成動作が実行状態となるとともに、オフ信号の入力時には信号の生成動作が停止状態となるようにしている。
【0031】
さらに、切替部31a〜31e、32a〜32eは一個のオンオフ信号出力部3を構成するとともに、このオンオフ信号出力部3は、信号設定部4からの入力に応じて各切替部31a〜31e、32a〜32eの出力をオン信号とオフ信号との間で個別に変化させることができるようにしている。すなわち、信号設定部4からの入力により、任意の信号生成部における信号の生成動作の実行と停止とを適宜切替えることができる。
【0032】
また、上記のような切替は、各着座位置毎に相殺信号生成部21a〜21eと情報信号生成部22a〜22eの双方を停止状態とした非作動モード、相殺信号生成部21a〜21eのみを実行状態とした制振モード、相殺信号生成部21a〜21eと情報信号生成部22a〜22eの双方を実行状態とした情報通知モードの3つのモードの間で切り替えることを可能としている、
【0033】
上記のように構成することで、具体的には次のように動作させることができる。以下、図3を参照しつつ図4を用いて説明を行う。
【0034】
例えば、運転席に取り付けたユニットU1により情報伝達を行う場合、まずは、情報伝達場所(応答点)であるハンドル74に近接するとともに、その回転軸を支え、振動伝達の点で関連づけられているダッシュボード73内(参照点)に設けた加速度センサ74により振動の検出信号を出力する。
【0035】
そして、相殺信号生成部21aにおいては、アクチュエータA1の設置場所における振動を相殺するための相殺信号を生成する。加速度センサS1とアクチュエータA1の設置場所が近接している場合には、ほぼ同じ振動を行っているものとみなすことができるために、相殺信号は加速度センサS1による検出信号の位相を反転させたものとすることができる。しかしながら、アクチュエータA1と加速度センサS1との位置が一致しているとみなせない場合には、両者の取り付け位置の間での伝達関数をあらかじめ調べた上で、その伝達関数を用いて参照点における振動の検出信号より応答点で生じる振動波形を求め、その振動波形と逆位相の波形を相殺信号とすることが必要となる。
【0036】
また、車両内の振動はエンジン71からの振動が多く含まれるために、上述のようにあらかじめ車載コンピュータ72より得られるエンジン回転数成分の波形を基準波形として生成した上で、これを基にして相殺信号を生成するようにしている。こうすることで、エンジン回転数の増減に対応して制御上の遅れを生じることなく適切に相殺信号を生成することが可能となっている。
【0037】
他方、情報信号生成部22aにおいては、運転者に与えるべき情報が入力されることで、その情報の種類に応じた形態の情報信号を生成する。図中においては、一例として矩形波状の信号を生成した状態を記載している。この情報信号は、矩形波だけでなく三角波等の任意の形にすることが可能であるとともに、周波数や振幅または間欠のパターンなどを組み合わせて様々な形態で作成することができる。こうしたパターンは細かな変化の組み合わせによって形成されるが、伝達速度が大きな振動を伝達手段として用いていることから、搭乗者にとって容易に区別を行うことが可能となる。
【0038】
相殺信号生成部21aにより生成された相殺信号と、情報信号生成部22aにより生成された情報信号は、重畳部23aに入力され、ここで双方の信号が足し合わされた重畳信号が生成される。
【0039】
そして、この重畳信号はアンプ24aを通じて増幅されて動作指令信号としてアクチュエータA1に出力されることで、同じ波形の加振力を発生させる。こうすることで、もともとアクチュエータA1の設置場所に発生していた車両本来の振動は、重畳信号に含まれる相殺信号に相当する振動によって相殺されて制振される。そして、重畳信号に同時に含まれていた情報信号に相当する信号が残ることとなり、情報に応じた所定パターンの振動としてハンドル74を通じて運転者に伝達される。
【0040】
このように、相殺信号によってアクチュエータA1の設置場所における車両本来の振動を抑えた上で、新たに情報信号としての振動を生じさせることができる。そのため、情報信号としての振動は、車両本来の振動とは区別して搭乗者が判別を行い易くなる。また、この情報信号としての振動は小さくすることが可能であるために、情報を与えるべき運転者のみに対して伝達して、それ以外の搭乗者に対しては伝達しないようにすることができ、情報を不要とする者が余計な情報を与えられて不快な思いをすることがなくなる。さらに、情報の伝達手段が振動であることから、車内が騒がしい状態であっても、確実に運転者に伝達を行うことが可能となる。また、情報信号の種別によって細かく変化する振動パターンで信号を形成していても、車両による元々の振動が低減されていることから判別が容易となる。そのため多様なパターンに分けて情報の伝達を行わせることも可能となる。
【0041】
ここまでは運転者に対する情報伝達を主体として説明を行ったが、運転者以外の搭乗者に対しても着座位置に応じて、シート82〜85の内部にアクチュエータA2〜A5およびセンサS2〜S5からなるユニットU2〜U5を組み込み、これらに対して制御部2により制御を行うことによって、車両本来の振動の抑制と情報の伝達とが行われる。運転者に対するハンドル74と同様、シート82〜85を通じて情報の伝達を行うことで運転者以外の搭乗者に対しても車両本来の振動や騒音とは区別して適切に情報の伝達を行うことができる。
【0042】
センサS2〜S5がそれぞれアクチュエータA2〜A5と対応して設けられており、両者の位置を振動伝達の点で関連付けられるようにすることで、車両本来の振動を適切に抑制することが可能である。
【0043】
運転者以外の搭乗者に対して与える情報として、まずは障害物との衝突の危険を感知した場合の危険通知信号が考えられる。こうした情報を与えることで、運転者以外の同乗者にも危険に対する身構えを行わせて衝突による衝撃の緩和を促すことが可能となる。また、着座位置毎に異なる情報として、ドア側のシート82、83、85には隣接するドアの開放通知信号を与えることが考えられる。こうすることで、ドアを操作する者に限定してドアの閉止確認を促すための情報を与えることができる。また、シートベルトを非装着の者に限定して、その着座位置のみにシートベルト装着を促すための情報を与えることができる。上記のように着座位置毎に区分して、情報に関係が有る者のみを対象として情報の伝達を行うようにすることができる。
【0044】
さらには、こうした情報の伝達を不要とする者のために、図1に記載した信号設定部4よりオンオフ信号出力部3を通じて、着座位置毎に、情報信号生成部22a〜22eによる情報信号の生成を停止状態とした制振モードに切り替えることができる。こうすることで、制振のみの機能を使用して情報伝達の機能を使用しないようにすることができる。例えば、こうしたモードは乳児を乗せる場合に好適に使用できる。
【0045】
また、車両本来の振動を好む者に対しては各信号生成を停止させた非作動モードを好適に使用できる。また、この非作動モードは着座位置に搭乗者がいない場合にも好適に使用でき、余計なエネルギ消費を抑えることもできる。
【0046】
こうした信号設定部4を通じたモードの切替は、着座位置に応じて個別に行うことができ、制振を行った上で情報の伝達を行う情報通知モードと、上記の非作動モードおよび制振モードとの間で切り替えることで多様な搭乗者の好みに対応させることができる。
【0047】
運転者および同乗者の区別を考えることなく、一般的に搭乗者に対して与える情報は図5に記載した表のように考えられ、本発明を適用することで現在の通知方法を振動パターンを主体とした情報伝達方法に置き換えることができる。また、同表の中で記載しているように振動パターンのみでの情報伝達では情報が不足する恐れがあるもの、例えばカーナビゲーションからの情報伝達等においては、振動パターンとディスプレイ表示とを組み合わせることが可能であり、こうすることで運転者がディスプレイを注視する時間を短縮させて、より安全性を向上させつつ情報伝達を行うようにすることもできるようになる。
【0048】
以上のように、本実施形態の車載型情報伝達装置は、車両7の一部分に設置され、入力される動作指令信号に応じて加振力を発生するアクチュエータA1〜A5と、当該アクチュエータA1〜A5の設置場所と関連づけられる車両7の一部分における振動を検出する加速度センサS1〜S5と、前記アクチュエータA1〜A5に対して前記動作指令信号を出力することで前記アクチュエータA1〜A5により生じる振動を制御する制御部2とを備えており、前記制御部2が、前記加速度センサS1〜S5による振動の検出信号を基にして前記アクチュエータA1〜A5の設置場所における振動を相殺する相殺信号を生成する相殺信号生成部21a〜21eと、搭乗者に伝達する情報に応じた情報信号を生成する情報信号生成部22a〜22eと、前記相殺信号生成部21a〜21eによる相殺信号と前記情報信号生成部22a〜22eによる情報信号とを重畳させた重畳信号を生成する重畳部23a〜23eとを備え、前記重畳部23a〜23eによる重畳信号を基にして前記動作指令信号を決定するように構成したものである。
【0049】
このように構成しているため、搭乗者に対して車両7から伝わる振動を低減しつつ、関係のない他の者には伝わらない程度の小さな振動でもって必要な情報を適切に通知することが可能となる。また、情報が振動により与えられることから搭乗者にとって感知が容易であり、車内が騒がしい状態であっても確実に情報の伝達を行うことができる。さらに、振動という伝達速度の大きな手段を用いていることから、情報の種類によって振動パターンを異ならせても判別が容易であり、こうすることで多様な情報を与えることも可能となる。
【0050】
また、前記加速度センサS1〜S5と前記アクチュエータA1〜A5とが対応する情報伝達ユニットU1〜U5として構成されているとともに、当該情報伝達ユニットU1〜U5が搭乗者の着座位置に対応する複数箇所に各々設けられており、各着座位置における振動の相殺信号と情報信号とを重畳させた重畳信号を基にして、着座位置毎に動作指令信号を決定してアクチュエータA1〜A5に出力するように構成しているため、複数の搭乗者がいる場合でも、それぞれの搭乗者に対して適切に情報を通知することができるようになっている。
【0051】
また、着座位置によって前記情報信号生成部22a〜22eを通じて与える情報信号を異ならせるように構成しているために、搭乗者毎に必要となる情報のみを与えて、不要な情報を与えないことで、搭乗者に不快な思いを生じさせることがなくなる。
【0052】
また、前記相殺信号生成部21a〜21eおよび前記情報信号生成部22a〜22eに対してオンオフ信号を出力する信号設定部4を備えており、前記相殺信号生成部21a〜21eおよび前記情報信号生成部22a〜22eが、入力されるオンオフ信号に応じて信号生成動作を実行状態と停止状態との間で切り替えるように構成しているため、状況に応じて、アクチュエータA1〜A5による振動発生のない非作動モードと、制振モードと情報通知モードとを使い分けることができ、非作動モードや制振モードとした場合にはエネルギ消費を抑制することができる。
【0053】
また、前記制御部2が、前記情報伝達ユニットU1〜U5毎に対応する前記相殺信号生成部21a〜21eと前記情報信号生成部22a〜22eと前記重畳部23a〜31eとを備えており、前記信号設定部4が、各相殺信号生成部21a〜21eおよび各情報信号生成部22a〜22eに対して個別のオンオフ信号を出力することで、各信号生成部21a〜21a、22a〜22eにおける信号生成動作を実行状態と停止状態との間で個々に切り替えるように構成しているため、着座位置ごとにアクチュエータA1〜A5による振動発生のない非作動モードと、制振のみを行う制振モードと、制振と情報の通知を行う情報通知モードとを設定することができるため、搭乗者に応じて適切な動作モードを選択することができるようになる。
【0054】
また、前記アクチュエータA1〜A5および加速度センサS1〜S5の設置場所がハンドル74、シート82〜85の少なくともいずれかであることから、効果的に搭乗者に情報伝達を行うことができる。
【0055】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0056】
例えば、上述の実施形態の一部を変形して、図6のような車載型情報伝達装置101として構成することも可能である。なお、図1〜図4と共通する部分には同じ符号を付してある。この図6に示すように、本発明の主旨はアクチュエータA11〜と加速度センサS11〜とが必ずしも一対一で対応している場合にはとどまらない。すなわち、加速度センサS11〜よりなるセンサ群SAからの共通の信号によって各アクチュエータA11〜の設置場所で生じる振動を各々求めて、それらの各振動に応じた相殺信号を生成するように各相殺信号生成部21a〜21eを構成してもよい。要は、各アクチュエータA11〜の設置場所である各応答点と、振動を検出する参照点との間の伝達関数が把握できていれば良いのであり、正確に応答点での振動を求めることができるならば、上記の参照点は一点であっても複数の点であってもよい。そのため、制振の精度が落ちる可能性は有るものの、1個の加速度センサS11のみでセンサ群SAを構成することも可能である。
【0057】
また、振動検出手段としての加速度センサS11は図6の形態に限らず、参照点における振動の大きさおよび位相を含めた振動波形に関する情報を相殺信号生成部21a〜21eに出力することができる限り、これと代替する様々な手段を用いることも可能である。例えば、車中で最も大きな振動源となるエンジン71の振動のみを対象に制振を行う構成とする場合には、エンジン71の振動の大きさは回転数によってほぼ判別可能であるため、車載コンピュータ72を通じてエンジン71の回転数信号を抽出するのみで、参照点としてのエンジン71の振動の大きさおよび振動波形を求め、これを基にして相殺信号生成部21a〜21eに相殺信号を生成させることも可能である。こうした場合には、車載コンピュータ72そのものがセンサ群SAに代替する手段として機能することになる。
【0058】
さらに、図6に示したように、アクチュエータA11〜の位置関係によっては、必ずしもアンプ24a〜24eとの間でも一対一の対応付けがなされていることも必須ではなく、例えば一個のアンプ24aによって複数のアクチュエータA11を駆動させても良いし、一個のアクチュエータA11に対する動作指令信号として複数のアンプ24a〜24eより出力される信号を切り替えつつ用いても良い。すなわち、これらの間では、アクチュエータA11〜により構成されるアクチュエータ群AAに対して、アンプ24a〜24eによって動作指令信号が与えられるとの関係性があるのみで足りる。また、アンプ24a〜24eの個数も5個に限定されるものではない。
【0059】
また、上述した実施形態では、振動検出手段として加速度センサS1〜S5を用いていたが、振動の検出が可能である限りこの構成には限らず、振動速度や振動の変位を検出可能な一般的なセンサを用いることができる。
【0060】
また、上述の実施形態では、加振手段として電磁式のリニアアクチュエータA1〜A5を用いていたが、振動の波形を細かく制御することのできるものであれは、上記の構成に限らず、他の構成の電磁石やバイブレータを用いることもできる。
【0061】
また、本実施形態では、乗車定員が5名の車両を前提として、これに取り付けるための車載型情報伝達装置として構成したが、車両の大きさに応じて適宜変更することは可能である。すなわち、乗車定員が5名より増減する場合には、ユニットU1〜U5を増減させた上で、これに制御部2を対応させることで足りる。
【0062】
また、上述の実施形態では、アクチュエータA1〜A5および加速度センサS1〜S5の設置場所をハンドル74またはシート82〜85としていたが、シートベルト巻取装置に取り付けてシートベルトを介して搭乗者に情報伝達を行ってもよい。
【0063】
また、一つの着座位置に対して、複数の情報伝達ユニットを設けて、一人の搭乗者に対して複数箇所より情報の伝達を行うようにすることも可能である。
【0064】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1…車載型情報伝達装置
2…制御部
4…信号設定部
7…車両
21a〜21e…相殺信号生成部
22a〜22e…情報信号生成部
23a〜23e…重畳部
74…ハンドル
81〜85…シート
A1〜A5…アクチュエータ(加振手段)
S1〜S5…加速度センサ(振動検出手段)
U1〜U5…ユニット(情報伝達ユニット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の一部分に設置され、入力される動作指令信号に応じて加振力を発生する加振手段と、
当該加振手段の設置場所と関連づけられる車両の一部分における振動を検出する振動検出手段と、
前記加振手段に対して前記動作指令信号を出力することで前記加振手段により生じる振動を制御する制御部とを備えており、
前記制御部が、
前記振動検出手段による振動の検出信号を基にして前記加振手段の設置場所における振動を相殺する相殺信号を生成する相殺信号生成部と、
搭乗者に伝達する情報に応じた情報信号を生成する情報信号生成部と、
前記相殺信号生成部による相殺信号と前記情報信号生成部による情報信号とを重畳させた重畳信号を生成する重畳部とを備え、
前記重畳部による重畳信号を基にして前記動作指令信号を決定するように構成していることを特徴とする車載型情報伝達装置。
【請求項2】
前記振動検出手段と前記加振手段とが対応する情報伝達ユニットとして構成されているとともに、
当該情報伝達ユニットが搭乗者の着座位置に対応する複数箇所に各々設けられており、
各着座位置における振動の相殺信号と情報信号とを重畳させた重畳信号を基にして、着座位置毎に動作指令信号を決定して加振手段に出力するように構成していることを特徴とする請求項1に記載の車載型情報伝達装置。
【請求項3】
着座位置によって前記情報信号生成部を通じて与える情報信号を異ならせるように構成していることを特徴とする請求項2に記載の車載型情報伝達装置。
【請求項4】
前記相殺信号生成部および前記情報信号生成部に対してオンオフ信号を出力する信号設定部を備えており、
前記相殺信号生成部および前記情報信号生成部が、入力されるオンオフ信号に応じて信号生成動作を実行状態と停止状態との間で切り替えるように構成していることを特徴とする請求項2または3に記載の車載情報伝達装置。
【請求項5】
前記制御部が、
前記情報伝達ユニット毎に対応する前記相殺信号生成部と前記情報信号生成部と前記重畳部とを備えており、
前記信号設定部が、
各相殺信号生成部および各情報信号生成部に対して個別のオンオフ信号を出力することで、各信号生成部における信号生成動作を実行状態と停止状態との間で個々に切り替えるように構成していることを特徴とする請求項4に記載の車載情報伝達装置。
【請求項6】
前記加振手段および振動検出手段の設置場所がハンドル、シート、シートベルト巻取装置の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の車載情報伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−75627(P2013−75627A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217470(P2011−217470)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】