説明

車載機器制御装置および該装置を用いた車載機器設定方法

【課題】操作者による設定の自由度を確保し、かつ、単純なボタン構成を維持しながらも、各種車載機器を動作させるために変更される設定値を簡単に所定値に移行させることができる車載機器制御装置および該装置を用いた車載機器設定方法を提供すること。
【解決手段】車載機器の設定値を増減させる入力手段2、3を有する車載機器制御装置Sは、入力手段2、3により設定値が継続して増減され、設定値が予め定められた所定値に至った場合に、設定値の増減を停止させる設定値増減停止手段13を備える。また、車載機器制御装置Sは、設定値増減停止手段13により設定値の増減が停止された後、入力手段2、3による入力が所定時間継続された場合に、設定値の増減を再開させる設定値増減再開手段14を備えるようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載機器制御装置および該装置を用いた車載機器設定方法に関し、より詳細には、各種車載機器を動作させるために設定される設定値を簡単に所定値に移行させることができる車載機器制御装置および該装置を用いた車載機器設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、設定温度を調節するためのスイッチを備え、設定温度が最低温度または最高温度に設定変更された後に車室内の温度が予め設定された設定変更解除条件温度となった場合に、設定温度を、予め記憶された解除後設定温度に自動的に戻す車両用空調制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この車両用空調制御装置は、乗車時に車室内が高温となっている場合に、車室内を迅速に冷却するために設定温度が最低温度まで下げられた後、車室内の温度が設定変更解除条件温度となったときに、設定温度を最低温度から解除後設定温度(快適温度)に自動的に変更し、操作者に設定温度を再調整させることなく車室内の温度を早期に快適温度に移行させることができる。
【0004】
また、設定温度を調節するための下降方向および上昇方向の押しボタンスイッチに加え、設定温度を登録された初期設定温度にリセットするためのリセットボタンを備えた自動車用空調制御装置も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
この自動車用空調制御装置は、設定温度が所望の温度と異なる場合であってもリセットボタンが押下されることにより登録された初期設定温度を読み出すことができるので、操作者は、読み出した初期設定温度を基準として設定温度を調整することができる。
【特許文献1】特開2004−230997号公報
【特許文献2】実開平3−19705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用空調制御装置は、一旦、設定温度が最低温度または最高温度に設定変更された後に車室内の温度が設定変更解除条件温度となった場合に、設定温度を自動的に解除後設定温度とするので、最低温度または最高温度と解除後設定温度との間にある値に設定温度を設定することができず、操作者による設定の自由度を狭めてしまう。
【0007】
また、特許文献2に記載の自動車用空調制御装置は、操作者による設定の自由度を狭めることはないものの、下降方向ボタンおよび上昇方向ボタンとは別に、リセットボタンを備える必要があり、各種ボタンを配する操作パネルを設計する上でもスペース上の制約となってしまう。
【0008】
かかる状況に鑑み、本発明は、操作者による設定の自由度を確保し、かつ、単純なボタン構成を維持しながらも、各種車載機器を動作させるために設定される設定値を簡単に所定値に移行させることができる車載機器制御装置および該装置を用いた車載機器設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、第1の発明に係る車載機器制御装置は、車載機器の設定値を増減させる入力手段を有する車載機器制御装置であって、前記入力手段により前記設定値が継続して増減され、前記設定値が予め定められた所定値に至った場合に、前記設定値の増減を停止させる設定値増減停止手段を備えることを特徴とする。
【0010】
また、第2の発明は、第1の発明に係る車載機器制御装置であって、前記設定値増減停止手段により前記設定値の増減が停止された後、前記入力手段による入力が所定時間継続された場合に、前記設定値の増減を再開させる設定値増減再開手段を備えることを特徴とする。
【0011】
また、第3の発明は、第1または第2の発明に係る車載機器制御装置であって、前記入力手段は、前記設定値を増加させるための第1の入力手段と前記設定値を減少させるための第2の入力手段とを有することを特徴とする。
【0012】
また、第4の発明は、第1乃至第3の何れかの発明に係る車載機器制御装置であって、前記入力手段により前記設定値が継続して増減され前記設定値が前記所定値に至った場合に操作者の注意を喚起する注意喚起手段を備えることを特徴とする。
【0013】
また、第5の発明は、第1乃至第4の何れかの発明に係る車載機器制御装置であって、前記車載機器は、車載エアコンであり、前記設定値は、前記車載エアコンの設定温度または設定湿度であることを特徴とする。
【0014】
また、第6の発明は、第1乃至第5の何れかの発明に係る車載機器制御装置であって、当該車載機器制御装置の設定条件は、操作者毎に登録されることを特徴とする。
【0015】
また、第7の発明は、第6の発明に係る車載機器制御装置であって、前記設定条件は、推奨設定温度、増減間隔または増減幅であることを特徴とする。
【0016】
また、第8の発明に係る車載機器設定方法は、車載機器の設定値を増減させる入力手段を有する車載機器制御装置により車載機器の動作内容を設定する車載機器設定方法であって、前記入力手段により前記設定値が継続して増減され、前記設定値が予め定められた所定値に至った場合に、前記設定値の増減を停止させる設定値増減停止ステップを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上述の手段により、本発明は、操作者による設定の自由度を確保し、かつ、単純なボタン構成を維持しながらも、各種車載機器を動作させるために設定される設定値を簡単に所定値に移行させることができる車載機器制御装置および該装置を用いた車載機器設定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0019】
図1は、本発明に係る車載機器制御装置Sの構成例を示す図である。
【0020】
車載機器制御装置Sは、制御部1、アップスイッチ2、ダウンスイッチ3、表示装置4および音声出力装置5で構成され、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)等の車載ネットワークを介してエアコン6に接続される。なお、車載機器制御装置Sは、エアコン6に統合されエアコン6の一部品として機能する態様であってもよい。
【0021】
制御部1は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)等を備えたコンピュータであり、入力状態判定手段10、設定値増減手段11、設定値増減継続手段12、設定値増減停止手段13、設定値増減再開手段14および注意喚起手段15に対応するプログラムをNVRAMに記憶し、それらプログラムをRAM上に展開して対応する処理をCPUに実行させる。
【0022】
アップスイッチ2およびダウンスイッチ3は、車載機器の各種設定値を増減させるための入力手段の1つであり、例えば、アップスイッチ2とダウンスイッチ3とが独立して配置されるメンブレンスイッチ、タッチパネルスイッチがある。また、これらスイッチは、図2に示すように、アップスイッチ2とダウンスイッチ3とが一体化され、アップスイッチ2またはダウンスイッチ3を押下した後、手を離すと中立位置に戻るシーソースイッチであってもよい。
【0023】
アップスイッチ2およびダウンスイッチ3は、例えば、エアコン6の設定温度や設定湿度、室内灯の設定照度、車載スピーカの設定音量、ワイパーの設定速度等を増減させるために利用される。
【0024】
表示装置4は、アップスイッチ2およびダウンスイッチ3により増減させた設定値を表示する装置であり、例えば、LED(Light Emitting Diode)ディスプレイ、LCD(Liquid Crystal Display)ディスプレイ等がある。表示装置4は、デジタル表示、アナログ表示、または、バーグラフ表示等で設定値を表示させる。
【0025】
音声出力装置5は、アップスイッチ2およびダウンスイッチ3により増減させた設定値が所定値に至ったことを通知するための装置であり、例えば、車載スピーカ、ブザー等である。
【0026】
次に、制御部1が有する各種手段について説明する。
【0027】
入力状態判定手段10は、スイッチの入力状態を判定するための手段であり、例えば、アップスイッチ2またはダウンスイッチ3が長押し状態となっているか短押し状態となっているかを判定する。
【0028】
「入力状態」とは、スイッチに対する操作者の入力の態様をいい、長押し状態、短押し状態、強押し状態、弱押し状態、断続押し状態等がある。
【0029】
「長押し状態」とは、スイッチを所定時間(例えば、1秒)以上継続して押下した状態をいい、「短押し状態」とは、所定時間(例えば、1秒)未満でスイッチを押下した状態をいう。なお、長押し状態または短押し状態は、スイッチを押下した時間によって判定される場合に加え、スイッチがダイアルタイプやトグルタイプの場合には、ダイアルまたはトグルを所定角度に回転または傾斜させ、その状態を維持させた時間によって判定される場合も含む概念である。
【0030】
また、「強押し状態」または「弱押し状態」とは、所定圧以上または所定圧未満の圧力でスイッチを押下した状態をいい、「断続押し状態」とは、所定時間以内に所定回数以上スイッチを押下した状態をいう。
【0031】
設定値増減手段11は、入力状態判定手段10により短押し状態であると判定された場合に、設定値を1単位(例えば、0.5℃)増減させる手段であり、例えば、アップスイッチ2が押下され、短押し状態であると判定された場合、変更前の設定値(例えば、25℃)に0.5℃を加算して変更後の設定値を表示装置4に表示させ、かつ、0.5℃分が加算された変更後の設定値(この場合、25.5℃)をエアコン6に通知する。また、アップスイッチ2の短押しが断続的に複数回行われた場合、設定値増減手段11は、その都度、0.5℃を設定値に加算する。増減方向は逆となるが、ダウンスイッチ3が短押しされた場合も同様である。
【0032】
また、車載機器制御装置Sは、設定値が一単位または複数単位増減する度に音声出力装置5から増減音を出力させるようにしてもよい。操作者に表示装置4を注視させることなく、設定温度がどの位置にあるかを認識させるためである。
【0033】
設定値増減継続手段12は、入力状態判定手段10により長押し状態であると判定された場合に、設定値を継続して増減させる手段であり、例えば、アップスイッチ2が押下され、長押し状態であると判定された場合、設定値(例えば、25℃)に所定時間間隔(例えば、0.4秒)で0.5℃を加算して得た変更後の設定値を表示装置4に表示させ、かつ、変更後の設定値(例えば、4秒間長押しされた場合、30℃となる。)をエアコン6に通知する。
【0034】
設定値増減停止手段13は、設定値が継続して増減され所定値に至った場合にその設定値の増減を停止させる手段である。
【0035】
例えば、推奨設定温度として25℃が登録された車両の車室内を急速に冷却するためにエアコン6の設定温度が一旦許容最低温度(例えば、18℃)に設定され車室内が十分に冷却されたときにアップスイッチ2が長押しされると、設定値増減継続手段12により設定温度(18℃)が0.4秒間隔で0.5℃ずつ増大され、5.6秒経過した時点で設定温度は推奨設定温度(25℃)に至る。
【0036】
しかし、設定値増減停止手段13は、設定温度が推奨設定温度に至った時点で設定温度の増大を停止させる。
【0037】
すなわち、設定値増減停止手段13は、設定温度が推奨設定温度(25℃)に至ると、アップスイッチ2の長押しがそのまま継続された場合であっても設定温度を増大させず、設定温度を推奨設定温度(25℃)に維持する。
【0038】
この構成により、車載機器制御装置Sは、運転者に操作パネルP(図2参照。)を注視させたり、表示装置4で現在の設定温度を確認させたりすることなく、設定温度の急激な増減操作および推奨設定温度への復帰操作を簡易迅速に行わせることができる。
【0039】
設定値増減再開手段14は、設定値増減停止手段13により設定値の増減が停止された後、設定値を増減させるためのスイッチによる入力が所定時間にわたって継続された場合に、設定値の増減を再開させる手段である。
【0040】
例えば、設定値増減停止手段13によりエアコン6の設定温度の増大が25℃で停止された後、アップスイッチ2の長押しがそのまま増減停止時間(2秒間)にわたって継続された場合に、設定温度の増大を再開させ、増大が停止される前と同様に、0.4秒間隔で0.5℃ずつ設定温度を増大させる。
【0041】
なお、設定値増減再開手段14は、推奨設定温度を挟んで設定温度の増減幅(例えば、0.5℃刻みを1℃刻みに切り替える。)や増減間隔(0.4秒間隔を1秒間隔に切り替える。)を切り替えるようにしてもよい。推奨設定温度を超えた後は、微妙な調整を行う機会が多いと考えられるからである。
【0042】
また、増減停止時間は、推奨設定温度で増減を確実に停止させることができる時間と、増減を再開させるまでの時間が長すぎると操作者に感じさせない時間とを考慮して決定される。
【0043】
例えば、設定温度が推奨設定温度に至ったことを操作者が認知するための時間Taは約1秒であるとした。0.4秒間隔で出力されていた増減音が2乃至3回にわたって出力されなくなれば、増減が行われていないことが認知され得ると考えられるからである。
【0044】
また、実験に基づいて、増減が行われていないことを操作者が認知してスイッチから手を離すまでの反応時間Tbは約0.5秒間であるとし、また、推奨設定温度に至ったことを認知した操作者に、増減を再開させるまでの時間が長すぎると感じさせる時間Tcは1秒間であるとした。
【0045】
以上より、増減を停止させてから増減を再開させるまでの時間として設定できる最小時間Tdは、TaにTbを加えた1.5秒とし、最大時間Teは、TaにTcを加えた2秒とした。最小時間Tdより短いと、推奨設定温度で増減を確実に停止させることが困難となり、最大時間Teより長いと、操作者に反応が遅すぎると感じさせてしまうからである。
【0046】
上述の増減停止時間は、推奨設定温度で確実に増減を停止させることができるよう、最大時間Teが採用されている。
【0047】
なお、設定値増減再開手段14は、設定値増減停止手段13により設定値の増減が停止された後、操作者が一旦スイッチから手を離し、再度、設定値の増減を再開させる操作を禁止するものではない。操作者は、スイッチを押下し続けて設定値の増減が再開されるのを待つ必要はなく、一旦スイッチから手を離し再度押下することで、設定温度の増減を早期に再開させてもよい。
【0048】
注意喚起手段15は、設定値が継続して増減され所定値に至った場合に操作者の注意を喚起するための各種装置を駆動させる手段であり、例えば、アップスイッチ2が長押しされ、エアコン6の設定温度が推奨設定温度に至った場合に、音声出力装置5により音声を出力させて推奨設定温度に至った旨を操作者に通知する。なお、注意喚起手段15は、発光装置や振動発生装置を用いて光や振動により推奨設定温度に至った旨を操作者に通知するようにしてもよい。
【0049】
また、車載機器制御装置Sは、設定値が一単位または数単位増減する度に音声出力装置5から増減音を出力させる場合、注意喚起手段15により増減音とは異なる音声を出力させるようにする。設定値の増減と所定値に至った旨の通知とを区別させるためである。
【0050】
この構成により、操作者は、設定値が推奨設定値に至ったことを知った上で設定値の更なる微調整を簡単に行うことができる。
【0051】
次に、図3を参照しながら、エアコン6の設定温度を設定する処理の流れについて説明する。
【0052】
最初に、車載機器制御装置Sは、操作パネルPのアップスイッチ2またはダウンスイッチ3が押下されるのを監視し(ステップS1)、何れかのスイッチが押下されるまで待機する(ステップS1のNO)。
【0053】
車載機器制御装置Sは、何れかのスイッチが押下されると(ステップS1のYES)、入力状態判定手段10によりスイッチの入力状態を判定する(ステップS2)。アップスイッチ2の押下が検知され入力状態が短押し状態であると判定されると(ステップS2の短押し)、車載機器制御装置Sは、設定値増減手段11によりエアコン6の設定温度を1単位(例えば、0.5℃)増大させて(ステップS3)、処理を終了する。
【0054】
一方、アップスイッチ2の押下が検知され入力状態が長押し状態であると判定されると(ステップS2の長押し)、車載機器制御装置Sは、アップスイッチ2の押下が中断されない限り、設定値増減継続手段12によりエアコン6の設定温度(例えば、20℃)を1単位ずつ増大させながら(ステップS4)、所定温度(例えば、25℃)に到達したか否かを監視する(ステップS5)。アップスイッチ2の押下が継続され、かつ、設定温度が所定温度未満の場合(ステップS5のNO)、車載機器制御装置Sは、エアコン6の設定温度の増大を継続させる。
【0055】
一方、アップスイッチ2の押下が継続され、かつ、設定温度が所定温度に到達すると(ステップS5のYES)、設定値増大停止手段13によりエアコン6の設定温度の増大を停止させ(ステップS6)、注意喚起手段15により音声出力装置5からアラーム音を吹鳴させて(ステップS7)、処理を終了する。
【0056】
なお、車載機器制御装置Sは、入力状態判定手段10により強押し状態または弱押し状態を判定して、同様の処理を行ってもよい。
【0057】
次に、図4を参照しながら、スイッチからの信号と設定温度の推移との間の関係を説明する。
【0058】
図4は、上段に、スイッチから出力される信号の電圧レベル、下段に、エアコン6の設定温度の推移を示し、左から右に時間経過を示す。また、図4(A)は、設定温度が19.5℃の状態でアップスイッチ2を長押しし、設定温度を推奨設定温度25℃まで増大させた場合の図を示し、図4(B)は、設定温度が19.5℃の状態でアップスイッチ2を長押しし、推奨設定温度25℃を超えて設定温度を増大させた場合の図を示し、図4(C)は、設定温度が24.5℃の状態でアップスイッチ2を長押しし、推奨設定温度25℃を超えて設定温度を増大させた場合の図を示し、図4(D)は、設定温度が23.0℃の状態でダウンスイッチ3を長押しし、許容最低温度18℃を超えて設定温度を変化させた場合の図を示す。
【0059】
図4(A)は、設定温度が19.5℃の状態でアップスイッチ2が長押しされ、T1(例えば、0.4)秒刻みで1単位(0.5℃)ずつ継続的に増大され、推奨設定温度(25℃)に至ったときに増大が停止された状態を示す。この設定方法では、操作者は、設定温度を推奨設定温度(25℃)以上に増大させる場合には、一旦、アップスイッチ2から手を離し、改めてアップスイッチ2を押下する必要がある。
【0060】
図4(B)は、図4(A)とは異なる設定方法であり、設定温度が推奨設定温度(25℃)に至った後もアップスイッチ2の押下を継続させた場合、推奨設定温度(25℃)でT2(例えば、2)秒だけ留まった後、増大を再開させた状態を示す。この設定方法では、操作者は、設定温度を推奨設定温度(25℃)以上に増大させる場合であっても、一旦アップスイッチ2から手を離す必要がない。
【0061】
図4(C)は、図4(A)および(B)とは異なる設定方法であり、設定温度が24.5℃の状態でアップスイッチ2が長押しされ、T1(例えば、0.4)秒刻みで1単位(0.5℃)ずつ継続的に許容最大温度まで増大させた状態を示す。この場合、操作者は、設定温度を推奨設定温度(25℃)以上に増大させる場合であっても、推奨設定温度(25℃)に至ったときに増大が停止されることがない。
【0062】
当初の設定温度が推奨設定温度から1単位だけ低い温度であり、操作者は、アップスイッチ2を1回短押しするだけで推奨設定温度に設定でき、設定温度を容易に推奨設定温度へ移行させることができるからである。
【0063】
また、一方で、アップスイッチ2が長押しされる場合、車載機器制御装置Sは、推奨設定温度より高い設定温度まで増大させたい操作者の意思を推認でき、係る場合に推奨設定温度(25℃)で増大を停止させることは却って操作者に不便さを感じさせてしまうからである。
【0064】
なお、車載機器制御装置Sは、当初の設定温度と推奨設定温度との差が1単位の場合に限らず、2単位以上の場合に同様の処理を行ってもよい。
【0065】
図4(D)は、図4(A)乃至(C)とは異なる設定方法であり、設定温度が23.0℃の状態でダウンスイッチ3が長押しされ、設定温度がT1(例えば、0.4)秒刻みで1単位(0.5℃)ずつ継続的に許容最小温度まで低減され、かつ、設定温度が許容最小温度(18℃)に至った後もダウンスイッチ3の押下が継続された場合に、許容最小温度(18℃)でT2(例えば、2)秒だけ留まった後、許容最大温度(32℃)からの低減を再開させる状態を示す。
【0066】
このように許容最小温度から許容最大温度へ設定温度を巡回させることで、車載機器制御装置Sは、アップスイッチ2およびダウンスイッチ3の2つのスイッチを備えることなく、設定温度を変更するスイッチを1つだけ備えるだけで、設定温度を所望の値に移行させることができる。
【0067】
なお、車載機器制御装置Sは、スイッチを1つだけ備える場合には、設定温度の増減方向を外気温または車室内の気温に基づいて決定するようにしてもよい。例えば、外気温が推奨設定温度より高い場合には、スイッチを押下すると設定温度が低減されるようにし、一方で、外気温が推奨設定温度より低い場合には、スイッチを押下すると設定温度が増大されるようにする。さらに、変更前の設定温度が推奨設定温度に接近するように増減方向を決定するようにしてもよい。
【0068】
また、車載機器制御装置Sは、許容最大温度、推奨設定温度および許容最小温度等、設定温度の増減を停止させる複数の値を備えることで、操作者に操作パネルPを注視させることなく設定温度を簡単に所望の値に移行させることができる。また、車載機器制御装置Sは、それぞれの値に至ったことを通知する音声を変化させて出力してもよい。設定値が何れの値にあるかを分かり易くするためである。
【0069】
以上の構成から、車載機器制御装置Sは、スイッチの数を増やしたり、複雑な操作を操作者に要求したりすることなく、エアコン6の設定温度を急激に増減させてから適当な設定温度に戻すという操作を迅速かつ容易に実行させることができる。
【0070】
図5は、操作パネルPの別の構成例を示す図であり、図2に示す操作パネルPがシーソースイッチを備えるのに対し、図5に示す操作パネルPaがダイヤルスイッチを備える点で異なる。
【0071】
ダイヤルスイッチは、時計回りに回転されると1単位だけ設定温度を増大させ、反時計回りに回転されると1単位だけ設定温度を低減させ、手を離すと中立位置に戻る仕組みになっている。
【0072】
また、ダイヤルスイッチは、時計回りまたは反時計回りに回転させた状態を維持させる(長押し状態に相当する。)と、設定温度の増減を継続させる。車載機器制御装置Sは、このダイヤルスイッチによりシーソースイッチと同様の処理を実現する。
【0073】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0074】
例えば、上述の実施例では、アップスイッチ2またはダウンスイッチ3が長押しされて設定温度が推奨設定温度に至った場合に、設定温度の増減を停止させるが、増減前の設定温度、車室内気温、増減方向に基づいて増減を停止させるか否かを判定するようにしてもよい。例えば、増減前の設定温度が26℃、車室内気温が35℃以上で、かつ、ダウンスイッチ3が長押しされた場合、操作者は設定温度を低めに設定するものと推認されるので、推奨設定温度(25℃)で増減を停止させないようにする。
【0075】
このように、増減前の設定温度および車室内気温が共に推奨設定温度より高く、車室内気温が所定値(例えば、35℃)より高いような場合には、推奨設定温度で設定温度の低減を一旦停止させることなく、より低い設定温度までそのまま継続して低減させることで、早期に設定温度を低減させたい操作者の利便性を向上させることができる。なお、早期に設定温度を増大させたい場合も同様である。
【0076】
また、上述の実施例では、推奨設定温度を25℃とするが、他の値を推奨設定温度として登録してもよく、また、推奨設定温度、増減間隔、増減幅等の設定条件を操作者毎に登録しておき、指紋、虹彩、パスワード等により認証した操作者毎に推奨設定温度を切り替えるようにしてもよい。
【0077】
また、上述の実施例では、増減停止時間として2秒間を採用するが、反応時間Tbは操作者によって異なるため、車載機器制御装置Sは、反応時間Tbを学習することにより増減停止時間を操作者毎に自動的に調整するようにしてもよい。操作者の利便性を向上させるためである。
【0078】
なお、上述の実施例においては、アップスイッチ2、ダウンスイッチ3が特許請求の範囲に記載した「第1の入力手段」、「第2の入力手段」にそれぞれ相当する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に係る車載機器制御装置の構成例を示す図である。
【図2】操作パネルの構成例を示す図(その1)である。
【図3】エアコンの設定温度を設定する処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】スイッチからの出力信号と設定温度の推移との間の関係を示す図である。
【図5】操作パネルの構成例を示す図(その2)である。
【符号の説明】
【0080】
1 制御部
2、2a アップスイッチ
3、3a ダウンスイッチ
4、4a 表示装置
5 音声出力装置
6 エアコン
10 入力状態判定手段
11 設定値増減手段
12 設定値増減継続手段
13 設定値増減停止手段
14 設定値増減再開手段
15 注意喚起手段
P、Pa 操作パネル
S 車載機器制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載機器の設定値を増減させる入力手段を有する車載機器制御装置であって、
前記入力手段により前記設定値が継続して増減され、前記設定値が予め定められた所定値に至った場合に、前記設定値の増減を停止させる設定値増減停止手段、
を備えることを特徴とする車載機器制御装置。
【請求項2】
前記設定値増減停止手段により前記設定値の増減が停止された後、前記入力手段による入力が所定時間継続された場合に、前記設定値の増減を再開させる設定値増減再開手段、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の車載機器制御装置。
【請求項3】
前記入力手段は、前記設定値を増加させるための第1の入力手段と前記設定値を減少させるための第2の入力手段とを有する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車載機器制御装置。
【請求項4】
前記入力手段により前記設定値が継続して増減され前記設定値が前記所定値に至った場合に操作者の注意を喚起する注意喚起手段、
を備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の車載機器制御装置。
【請求項5】
前記車載機器は、車載エアコンであり、
前記設定値は、前記車載エアコンの設定温度または設定湿度である、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の車載機器制御装置。
【請求項6】
当該車載機器制御装置の設定条件は、操作者毎に登録される、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の車載機器制御装置。
【請求項7】
前記設定条件は、推奨設定温度、増減間隔または増減幅である、
ことを特徴とする請求項6に記載の車載機器制御装置。
【請求項8】
車載機器の設定値を増減させる入力手段を有する車載機器制御装置により車載機器の動作内容を設定する車載機器設定方法であって、
前記入力手段により前記設定値が継続して増減され、前記設定値が予め定められた所定値に至った場合に、前記設定値の増減を停止させる設定値増減停止ステップ、
を備えることを特徴とする車載機器設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−6992(P2008−6992A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180171(P2006−180171)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】