説明

車載機器操作装置

【課題】操作する度に操作体を確認することなく、スムーズな操作を可能にする車載機器操作装置を提供する。
【解決手段】ユーザが操作する操作ノブ1が所定の角度範囲内で回動し、回転軸Xと直交する方向に摺動し、回転軸Xに対して傾動し、かつ、回転時Xに沿って押圧するように、操作ノブ1を支持する。操作ノブ1が回動、摺動、傾動又は押圧したことを検知し、検知結果に応じて車載機器に係る信号を出力する。この操作ノブ1が回動、摺動、傾動又は押圧した場合、操作ノブ1を回動前、摺動前、傾動前又は押圧前の状態に復帰させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の方向に移動可能な操作体の移動に応じて、車載機器に係る信号を出力する車載機器操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車両には、エアーコンディショナ(以下、エアコンと言う)、オーディオ機器及びカーナビゲーション装置など多数の車載機器が搭載されている。車載機器を操作する操作スイッチなどは、一般的にはインストルメントパネル(以下、インパネと言う)の乗員が操作し易い位置に設置されている。このため、車載機器の数が増加することにより操作スイッチの数も増加するため、インパネに操作スイッチの設置スペースを確保する必要がある。そこで、操作スイッチの数を減少させるために、複数の入力操作が可能な所謂複合スイッチが提案されている。例えば特許文献1に記載の入力装置は、ユーザが操作する摘みを回転させる回転操作、摘みを押圧する押圧操作、及び摘みを傾倒する傾倒操作が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−14158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の入力装置では、ユーザが操作する摘みは円筒状となっている。このため、摘みの回転操作を行った場合、ユーザは摘みがどの程度回転しているかが判らなくなる場合がある。このため、摘みから一度手を離し再度操作しようとする際、ユーザは摘みの状態を眼又は手などで確認する必要があり、スムーズに操作を行えない場合がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、操作する度に操作体を確認することなく、スムーズな操作を可能にする車載機器操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車載機器操作装置は、複数の方向に移動可能な操作体の移動に応じて、車載機器に係る信号を出力する車載機器操作装置において、前記操作体を支持し、該操作体を所定の角度範囲内で回動可能にする手段、回転軸と直交する方向に摺動可能にする手段、前記回転軸に対して傾動可能にする手段、及び前記回転軸方向に押圧可能にする手段の少なくとも二以上を有する支持部と、回動、摺動、傾動又は押圧した前記操作体を、回動前、摺動前、傾動前又は押圧前の状態に復帰させる手段と、前記操作体が回動、摺動、傾動又は押圧したことを検知する検知手段と、前記操作体の回転、摺動、傾動又は押圧を検知した場合、検知結果に応じた信号を出力する出力手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明においては、回動、摺動、傾動又は押圧した操作体は、回動前、摺動前、傾動前又は押圧前の状態に復帰するようになっているため、ユーザは、操作体を操作する都度、操作体の状態を確認する必要がなくなる。これにより、ユーザは、スムーズに操作を開始することができ、操作時間を短縮することができる。また運転者が操作する場合には、運転中のわき見運転による事故を防ぐことができる。
【0008】
本発明に係る車載機器操作装置は、前記出力手段は、前記操作体が押圧された場合、操作対象を切り替える信号を出力するようにしてあることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、操作体を押圧することにより操作対象を切り替えることができるため、ユーザは、押圧操作のために摘んだ操作体を、持ち替えることなくそのままの状態で、他の操作を続行することができる。
【0010】
本発明に係る車載機器操作装置は、前記操作体は、平面部、及び、前記平面部に対して凸となった摘み部を有し、前記摘み部は、平行な二側面を有し、該二側面の平行な方向の寸法が側面間寸法よりも長いことを特徴とする。
【0011】
本発明においては、操作体の摘み部は、側面の平行な方向の寸法が側面間寸法よりも長くなっているため、ユーザが摘み部の側面を指で摘み易い形状となっている。
【0012】
本発明に係る車載機器操作装置は、前記支持部は、前記摘み部の長手方向が回動角度範囲の中心となるように前記操作体を支持していることを特徴とする。
【0013】
本発明においては、ユーザは摘み部の側面を指で摘み、その状態で正逆に摘み部を回動させることで、回動操作を行うことができる。これにより、回動操作時に、ユーザの手首にかかる負担を軽減することができる。
【0014】
本発明に係る車載機器操作装置は、前記支持部は、前記長手方向が傾動する方向となるように前記操作体を支持していることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、操作体は長手方向に傾動可能となっているため、ユーザは、回動操作のために摘んだ操作体を、持ち替えることなくそのままの状態で傾動操作を行うことができる。
【0016】
本発明に係る車載機器操作装置は、前記支持部は、前記長手方向と直交する方向が摺動する方向となるように前記操作体を支持していることを特徴とする。
【0017】
本発明においては、操作体は長手方向と直交する方向に摺動可能となっているため、ユーザは、回動操作のために摘んだ操作体を、持ち替えることなくそのままの状態で摺動操作を行うことができる。
【0018】
本発明に係る車載機器操作装置は、前記操作体が、同時に回動、摺動及び傾動することを禁止する手段をさらに備えることを特徴とする。
【0019】
本発明においては、操作体を同時に回動、摺動及び傾動できないため、誤操作を防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、回動、摺動、傾動又は押圧した操作体は、回動前、摺動前、傾動前又は押圧前の状態に復帰するようになっているため、ユーザは、操作体を操作する都度、操作体の状態を確認する必要がなくなる。これにより、ユーザは、スムーズに操作を開始することができ、操作時間を短縮することができる。また運転者が操作する場合には、運転中のわき見運転による事故を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態に係る操作装置の操作ノブの構成を示す三面図である。
【図2】実施の形態に係る操作装置の側面断面図である。
【図3】実施の形態に係る操作装置の側面断面図である。
【図4】実施の形態に係る操作装置の分解斜視図である。
【図5】プリント基板の上面を示す概略図である。
【図6】ダイヤルの凸部と光学式センサとの関係を示す模式図である。
【図7】操作ノブが傾動した場合のホルダの動作を説明するための模式図である。
【図8】操作ノブが摺動した場合のシーソーの動作を説明するための模式図である。
【図9】ダイヤル、回転ガイド及びセルフリターンを説明するための模式図である。
【図10】操作装置により操作する操作画面を示す模式図である。
【図11】操作対象を切り替えた場合の操作画面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る車載機器操作装置の好適な実施の形態について図面を参照して説明する。
【0023】
図1は、本実施の形態に係る操作装置の操作ノブの構成を示す三面図である。本実施の形態に係る操作装置は、車両に搭載されているエアコン及びオーディオなど複数の車載機器を操作することができる。操作装置は、ユーザにより操作される操作ノブ(操作体)1を備えている。操作ノブ1は、長方形状で長手方向における両端部がR形状となった板部材(平面部)1aと、長手方向を板部材1aと一致させ、板部材1aの略中央に立設された略直方体形状の摘み部1bと、摘み部1bとは反対側の板部材1aの面に設けられた支持部1cを備えている。操作ノブ1は、板部材1aが外装部分100と略平行となるよう、支持部1cが外装部分100の内側で支持されている。外装部分100は、例えば運転席及び助手席の間のセンタークラスター又はインパネなど、ユーザが操作し易い位置である。
【0024】
操作ノブ1は、摘み部1bの長手方向、及び長手方向に直交する方向(以下、幅方向と言う)の中心を回転軸Xとして、長手方向を中心として正逆に約30度回転可能となっている。また、操作ノブ1は、摘み部1bの幅方向に摺動可能となっている。さらに操作ノブ1は、摘み部1bの長手方向における両端部(図中の摘み部1bの三角印部分)を外装部分100側に押圧することで、回転軸Xに対して長手方向に傾動可能となっている。また操作ノブ1は、摘み部1bの中心部が設置面側に押圧可能となっている。以下の説明では、操作ノブ1を回転させる操作を回転操作、操作ノブ1を摺動させる操作を摺動操作、操作ノブ1を傾動させる操作を傾動操作、摘み部1bの中心部を押圧する操作を押圧操作と言う。
【0025】
なお、操作装置は、長手方向を中心として操作ノブ1が正逆に約30度回転する場合、操作ノブ1の回転角度が15度となったときに、操作ノブ1を操作するユーザの手に所謂「クリック感」を伝えるようになっている。すなわち、操作装置は、二段階に分けた回転操作を可能としている。
【0026】
また操作ノブ1は、外装部分100側となる板部材1aの面にピン1d,1dが設けられている。外装部分100には、各操作がされていない状態の操作ノブ1のピン1d,1dと対向する位置に切欠(図示せず)が形成されている。そして、操作ノブ1が傾動操作又は押圧操作された場合、ピン1d,1dは、外装部分100側に移動し、切欠に係合するようになっている。ピン1d,1dが切欠に係合した場合、操作ノブ1は、回転及び摺動できないようになっている。また操作ノブ1が回転操作又は摺動操作された場合、ピン1d,1dと切欠との位置がずれ、操作ノブ1が傾動操作又は押圧操作されたとき、ピン1d,1dは外装部分100に接触するようになる。このため、操作ノブ1は、外装部分100側に移動できないようになっている。すなわち、本実施の形態に係る操作装置では、操作ノブ1の傾動操作又は押圧操作と、回転操作又は摺動操作とを同時に行えないようになっている。
【0027】
以下、操作装置の具体的な構成について説明する。図2及び図3は、本実施の形態に係る操作装置の側面断面図である。図2は、図3に示すII−II線における断面図であり、図3は、図2に示すIII−III線における断面図である。図4は、本実施の形態に係る操作装置の分解斜視図である。
【0028】
操作装置は、支持ケース8を備えている。支持ケース8は、空洞の略直方体形状であって、一方の開口部にはプリント基板9が設けられており、他方の開口部にはパネル3が設けられている。支持ケース8は、パネル3が図1に示す外装部分100の一部を形成するように外装部分100の内側に配されており、操作ノブ1がパネル3から突出するようにして操作ノブ1を支持している。以下の説明において、パネル3が設けられた開口部側(図2及び図3の上方向)を上側とし、プリント基板9が設けられた開口部側(図2及び図3の下方向)を下側として説明する。
【0029】
図5は、プリント基板9の上面を示す概略図である。プリント基板9は、支持ケース8の開口部と同じ略長方形を有しており、上側の面にはタクトスイッチなどの押圧でスイッチング可能なスイッチ素子10a,10b,10c,10d,10e、及び、フォトインタラプタなどの光学式センサ11a,11bが設けられている。スイッチ素子10a,10b,10cは、プリント基板9の長手方向(以下、左右方向と言う)の略中央で、長手方向と直交する方向(以下、前後方向と言う)に沿って設けられている。スイッチ素子10d,10eは、前後方向の略中央で、スイッチ素子10a,10b,10cを通過する線(以下、中心線と言う)に対して対称となるように設けられている。
【0030】
光学式センサ11a,11bは、断面がU字形状の経路を有しており、この経路に位置する物体を検出する。光学式センサ11aはスイッチ素子10a,10bの間に設けられ、光学式センサ11bはスイッチ素子10b,10cの間に設けられている。そして光学式センサ11a,11bは何れも中心線よりスイッチ素子10d側にずれて、U字形状の経路が左右方向に沿うように設けられている。以下の説明では、左右方向においてスイッチ素子10d側(図3及び図5の左方向)を左方向、スイッチ素子10e側(図3及び図5の右方向)を右方向とする。また、前後方向においてスイッチ素子10a側(図2の右方向)を前方向、スイッチ素子10c側(図2の左方向)を後方向とする。
【0031】
パネル3は、支持ケース8の開口部と同じ長方形状であって、中央部に穴3aが形成されている。パネル3には、穴3aの壁面から半径方向の外方側に凹む切欠部3bが形成されている。切欠部3b,3bは、前後方向に沿って対向している。穴3aには、上述した操作ノブ1の支持部1cが挿入され、パネル3の下側で支持部1cが支持されるようになっている。切欠部3b,3bには、操作ノブ1のピン1d,1dが係合するようになっている。
【0032】
支持ケース8は、下側の開口部の近傍にプリント基板9と対向するように板状の底部材81が設けられている。底部材81には、プリント基板9に設けられたスイッチ素子10a,10b,10c,10d,10eと重合する位置に、円筒状のピンガイド8a,8b,8c,8d,8eが設けられている。各ピンガイド8a,8b,8c,8d,8eには、ピン9a,9b,9c,9d,9eが摺動可能に挿入されている。ピン9a,9b,9c,9d,9eは、各プッシュスイッチ10a,10b,10c,10d,10eに載置され、上端がピンガイド8a,8b,8c,8d,8eから突出するようになっている。なお、ピン9a,9b,9cは、ピン9d,9eよりも長くなっている。
【0033】
また板部材81には、ピンガイド8bと同軸で、内側にピンガイド8bが位置する円筒状の回転ガイド8fが形成されている。回転ガイド8fは、回転ガイド8fより大きい径を有する有底筒形状のダイヤル2を支持している。ダイヤル2は、底面がピンガイド8bに挿入されたピン9bの上端に載置されるように開口部を下側にして回転ガイド8fに被せられている。このとき、ダイヤル2の中心軸は、回転ガイド8fの中心軸、すなわちピン9bと一致するようになっている。これにより、ダイヤル2は、ピン9bを回転軸として回転ガイド8fの外周面に沿って周方向に正逆に回転することができる。また、ピン9bは、スイッチ素子10bに載置されているため、ダイヤル2はピン9bがスイッチ素子10bを押し下げる距離だけ、軸方向に沿って下方に移動可能となっている。スイッチ素子10bが押圧されることで、ダイヤル2の下方への移動が検出される。
【0034】
ダイヤル2には、円柱状のピン2bを摺動可能に挿入できる挿入孔2aが径方向に沿って底面中央に形成されている。挿入孔2aは、中心軸がダイヤル2の中心軸と直交するように形成されている。またダイヤル2には、開口部の縁から軸方向に突出し、中心軸を介して対向する一対の凸部2c,2cが設けられている。挿入孔2a及び凸部2c,2cは、挿入孔2aの軸方向と直交する方向に沿って凸部2c,2cが対向する関係としてある。
【0035】
ダイヤル2を回転ガイド8fに被せた場合、凸部2c,2cは底部材81に形成された切欠溝(図示せず)を介して底部材81の下方に突出するようになっている。切欠溝は円弧状となっており、ダイヤル2は凸部2c,2cが切欠溝に沿って移動できる範囲内で回転可能となっている。本実施の形態では、底部材81の下方に突出する凸部2c,2cが光学式センサ11a,11bの経路上に位置するようになっており、この状態からダイヤル2は正逆に約30度回転可能となっている。なお、凸部2c,2cを光学式センサ11a,11bの経路上に位置させた場合、図3に示すように、挿入孔2aの軸方向が左右方向と一致するようになる。
【0036】
図6は、ダイヤル2の凸部2c,2cと光学式センサ11a,11bとの関係を示す模式図である。光学式センサ11a,11bは、プリント基板9の中心線より左側にずれて配されている。ダイヤル2は、中心線上のスイッチ素子10bに載置されたピン9bを回転軸として回転する。このため、ダイヤル2の凸部2c,2cを中心線上に位置させた場合、図6(a)に示すように、凸部2c,2cは一部が光学式センサ11a,11bの経路上に位置するようになっている。ダイヤル2を中心線より右側に15度回転させた場合、図6(b)に示すように、凸部2c,2cの一方が中心線より右側に動き、他方が左側に動く。右側に動く凸部2cは光学式センサ11aの経路上から外れ、左側に動く凸部2cは光学式センサ11bの経路上から外れないようになっている。ダイヤル2をさらに右側に15度回転させた場合、図6(c)に示すように、左側に動く凸部2cも、光学式センサ11bの経路上から外れるようになっている。このように、光学式センサ11a,11bが凸部2c,2cの一方を検出することで、ダイヤル2が15度回転したことを検出することができる。また光学式センサ11a,11bが凸部2c,2cの両方を検出しなくなることで、ダイヤル2が30度回転したことを検出することができる。なお、ダイヤル2が左側に回転する場合には、上述の光学式センサ11a,11bの説明が反対となる。
【0037】
ダイヤル2は、底面側で操作ノブ1を支持している。操作ノブ1は、上述したように、板部材1a、摘み部1b、支持部1c、及びピン1d,1dとから形成されている。支持部1cは、円筒形状をなし、中心軸が回転軸Xと一致するように、摘み部1bとは反対側の板部材1aの面に設けられている。ピン1d,1dは、回転軸Xを介して対向するように、板部材1aと支持部1cとの接続部分に長手方向に沿って設けられている。支持部1cの側面には、回転軸Xを介して対向し、中心軸が幅方向に一致する穴1e,1eが形成されている。穴1e,1eには、ダイヤル2の挿入孔2aに挿入されたピン2bの両端が係合するようになっている。
【0038】
操作ノブ1は、パネル3の下側で穴1e,1eにピン2bの両端を係合することでダイヤル2に支持されている。これにより、操作ノブ1は、ダイヤル2を介して回転ガイド8fの周方向に沿って正逆に回転し、また回転ガイド8fの軸方向に沿って下方に移動することができる。上述したように、スイッチ素子10bによりダイヤル2の下方への移動を検出することで、操作ノブ1の下方への移動、すなわち操作ノブ1の押圧操作を検出することができる。また、光学式センサ11a,11bによりダイヤル2の回転を検出することで、操作ノブ1の回転、すなわち操作ノブ1の回転操作を検出することができる。また、ピン2bは挿入孔2aに対して摺動可能であるため、操作ノブ1は、ピン2bを中心として回転軸Xに対して長手方向に摺動可能で、かつ、ピン2bの軸方向、すなわち幅方向に摺動可能となる。
【0039】
なお、ピン2bはダイヤル2の中心軸及び操作ノブ1の回転軸Xそれぞれと直交しているため、操作ノブ1を傾動及び摺動させることで、回転軸Xとダイヤル2の中心軸とを一致させることができる。以下の説明では、ピン2bの軸方向を左右方向と一致させ、かつ、操作ノブ1の回転軸Xとダイヤル2の中心軸とを一致させた操作ノブ1及びダイヤル2の状態を初期状態と言う。初期状態の場合、操作ノブ1の長手方向は前後方向となり、幅方向は左右方向となる。また初期状態の場合、操作ノブ1のピン1d,1dは、パネル3の切欠部3b,3bと対向するようになる。
【0040】
ダイヤル2に支持されている操作ノブ1にはホルダ4が設けられている。ホルダ4は、略正方形の板部材で、中央に穴4aが形成されている。ホルダ4は、操作ノブ1の板部材1aとの間にパネル3が介在するように穴4aの内周面で支持部1cの外周面を支持し、操作ノブ1と共に傾動又は摺動するようになっている。
【0041】
スライダ5は、ピン2bを中心として傾動可能にホルダ4を支持している。スライダ5は、底面及び対向する二側面からなり、底面の中央には内側にダイヤル2を位置させる穴5aが形成されている。スライダ5は、前後方向の両側面部が上下方向に揺動するように、二側面が左右方向に沿って対向するよう配され、二側面でホルダ4の左右方向における両側面を挟持している。また揺動する両側面部には、ピン9a,9cの上端が当接するようになっている。
【0042】
図7は、操作ノブ1が傾動した場合のホルダ4の動作を説明するための模式図である。また図7は、前後方向の前側に操作ノブ1が傾動した状態を示している。操作ノブ1がピン2bを中心に前側に傾動した場合、ホルダ4も共に前側に傾動する。このとき、操作ノブ1の傾動方向のホルダ4の側面部が下方に移動し、ピン9aが押し下げられ、スイッチ素子10aが押圧される。これにより、ホルダ4の傾動、すなわち操作ノブ1が前側に傾動したことを検出することができる。なお、押し下げられたピン9aがスイッチ素子10aにより押し上げられることで、下方に移動したホルダ4の側面部が元の位置に戻る。これにより、操作ノブ1は傾動操作前の初期状態に復帰するようになっている。
【0043】
また、操作ノブ1の傾動方向にあるピン1dが切欠部3bに係合するため、操作ノブ1が傾動した状態では、摺動又は回転しないようになっている。これにより、同時に複数の操作が行われないようにすることができる。
【0044】
シーソー6は、ホルダ4と共に左右方向に摺動可能にスライダ5を支持している。シーソー6は、略正方形の中央に穴6aが形成されている底面、平行な二側面及び底面から外側に傾斜する二側面から形成されている。シーソー6は、傾斜する二側面が左右方向に沿って対向するよう配され、傾斜する二側面が上下方向に揺動可能に支持ケース8に支持されている。すなわち、シーソー6の揺動軸が前後方向となっている。また傾斜する二側面の上側端部には、ピン9d,9eの上端が当接するようになっている。ホルダ4を支持するスライダ5は、シーソー6の傾斜する二側面上に載置されている。
【0045】
図8は、操作ノブ1が摺動した場合のシーソー6の動作を説明するための模式図である。また図8は、左右方向における左側に操作ノブ1が摺動した状態を示している。操作ノブ1が左右方向に摺動した場合、ホルダ4及びスライダ5も共に摺動する。シーソー6は、傾斜する二側面が上下方向に揺動可能となっているため、スライダ5が左右方向に摺動する場合、スライダ5は、摺動方向のシーソー6の側面を下方に押し下げながら摺動する。これにより、押し下げられた側面に当接しているピン9dが押し下げられて、スイッチ素子10dが押圧される。これにより、スライダ5、すなわち操作ノブ1の摺動を検出することができる。なお、押し下げられたピン9dが、スイッチ素子10dにより押し上げられることで、下方に移動したシーソー6の側面部が元の位置に戻る。これにより、スライダ5がシーソー6の側面部に押し戻され、シーソー6すなわち操作ノブ1は摺動操作前の初期状態に復帰するようになっている。
【0046】
ダイヤル2には、セルフリターン7が設けられている。セルフリターン7は、ダイヤル2が初期状態から正逆に回転した場合に、ダイヤル2を回転前の初期状態に復帰させる。図9は、ダイヤル2、回転ガイド8f及びセルフリターン7を説明するための模式図である。また、図9は図3のIX−IX線における断面図の一部でもある。ダイヤル2には、外周面の周方向に半周に延びた凸部2dが沿って設けられている。凸部2dは、ダイヤル2が初期状態にある場合に、プリント基板9の中心線より左側となるよう設けられている。セルフリターン7は、板状の一端部に半円状の切欠部7aが形成されている。セルフリターン7の切欠部7aは、凸部2dが設けられていない側の外周面に嵌合するようになっている。そしてセルフリターン7は、バネ7b,7bにより、左右方向の右側から左側に向かってダイヤル2を押圧している。この状態において、ダイヤル2が初期位置から正逆に回転した場合、図9の下図に示すように、凸部2dがセルフリターン7と接触し、凸部2dがセルフリターン7を中心線の右側に押圧するようになる。右側に押圧されたセルフリターン7は、バネ7b,7bの弾性力により左側に戻ろうとする。このとき、セルフリターン7が凸部2dを押圧することで、図9の上図に示すように、ダイヤル2を回転前の状態、すなわち初期位置に復帰させる。このように、ダイヤル2が回転した場合、ダイヤル2は、セルフリターン7により回転前の状態に復帰するようになっている。
【0047】
また、ダイヤル2の凸部2dの中央には、ボールプランジャ21が設けられている。ボールプランジャ21は、図9に示すように、有底筒形状のハウジング21aと、ハウジング21a内に収容されたコイルスプリング21bと、ハウジング21aの開口部に配設されたボール21cとを備える。ハウジング21aは、ダイヤル2の内周面に開口が形成されるようにダイヤル2に設けられている。コイルスプリング21bは、定常の長さで、ハウジング21aからダイヤル2の内側に略半球分だけ突出した状態でボール21cを支持している。ボール21cは、コイルスプリング21bの外側からの圧力を受けると、コイルスプリング21bの付勢力に対抗しつつ、ハウジング21aの内部に後退し、ハウジング21a外への突出量を減少させるようになっている。
【0048】
一方、回転ガイド8fには、周回方向に沿った一部の外径を段差状に小さくした凹部81a,81bが形成されている。凹部81a,81b間の中央には、上述のボール21cが当接している。そしてダイヤル2が回転し、ハウジング21aの開口が凹部81a,81bと一致した場合、図8の下図に示すように、コイルスプリング21bの付勢力によりボール21cが凹部81a,81bに係合するようになっている。このとき、操作ノブ1を回転操作するユーザの手には、ダイヤル2を介してクリック感が伝わるようになっている。なお、凹部81a,81bは、ダイヤル2が正逆に15度回転したときに、ボール21cが係合する位置に形成されている。すなわち、操作ノブ1の回転操作を行うユーザは、クリック感があったとき操作ノブ1が15度回転したと把握することができる。これにより、ユーザは、二段階の操作ノブ1の回転操作を行うことができる。
【0049】
以上のように、操作ノブ1が長手方向を中心に正逆回転し、かつ回転後に元の初期状態に復帰するようになっているため、ユーザは手首を大きく回転させなくても操作ノブ1の回転操作が可能となる。これにより、回転操作時にユーザの手首かかる負担を軽減することができる。また操作ノブ1は操作後に初期状態に復帰することで、ユーザは、操作ノブ1を持ち替えることなく回転操作、傾動操作及び摺動操作など複数の操作を行うことができる。
【0050】
次に、上述のように構成される操作装置により車載機器を操作する操作方法の一例について説明する。
【0051】
図10は、操作装置により操作する操作画面を示す模式図である。図10は、エアコンの操作画面を示している。
【0052】
操作画面の下側には、「PASS TEMP」、「MODE」、「BLOWER」及び「TEMP」などのエアコンの機能が横一列に表示されている。また操作画面の下側中央には、操作ノブ1の摘み部1bを示す画像102が表示されている。画像102には、上述のエアコンの機能の一つが重合して表示されている。また画像102の左右には、画像102の左右方向を指し示す三角マークが表示されている。三角マークにより、画像102、すなわち操作ノブ1を左右に移動させることで、表示されているエアコンの機能が左右に移動することを、ユーザに直感的に把握させるようにしている。
【0053】
ユーザは、操作ノブ1を左右に移動させることで、エアコンの機能を選択する。例えば、図10(a)では、画像102に「MODE」が重合しているが、操作ノブ1を右に移動させた場合、図10(b)に示すように、「MODE」の右側の「BLOWER」が画像102に重合するようになり、操作画面の上側には、風量を調節する画像が表示される。さらに操作ノブ1を右に移動させた場合、図10(c)に示すように、「BLOWER」の右側の「TEMP」が画像102に重合するようになり、操作画面の上側には、温度を調節する画像が表示される。機能が画像102と重合した表示状態で、ユーザは、操作ノブ1を前側に傾動操作することで、画像102と重合した機能の選択を決定する。これにより、操作画面の上側に表示された機能の詳細な設定項目を、操作ノブ1により操作することができる。
【0054】
図10(b)では、「BLOWER」の機能が選択されており、操作画面の上側には、風量を調節する画像が表示されている。また、図10(c)は、「TEMP」の機能が選択されており、操作画面の上側には、温度を調節する画像が表示されている。ユーザは、操作ノブ1の回転操作を行って風量・温度を調節することができる。具体的には、操作ノブ1を右に回転させることで風量・温度を大きくすることができ、左に回転させることで風量・温度を小さくすることができる。このとき、操作ノブ1が15度回転した場合、風量・温度は一定時間ごとに一段階ずつ大きく又は小さくなり、操作ノブ1が30度回転した場合、風量・温度は短時間で複数段階大きく又は小さくなる。なお、エアコンの機能を再度選択したい場合には、操作ノブ1を後側に傾動操作することで、エアコンの機能の選択を行うことができる。なお、機能の選択の決定は、操作ノブ1の押圧操作により行えるようにしてもよい。
【0055】
操作ノブ1は、ユーザにより操作されるごとに操作前の状態に復帰するようになっているため、ユーザは、上述の一連の操作を操作ノブ1を持ち替えることなく行うことができる。例えば、ユーザが操作ノブ1を一方向に回転させた場合、操作ノブ1は回転前の状態に復帰するため、ユーザは操作ノブ1を持ち替えることなく操作ノブ1を反対方向に回転させることができ、また摺動操作、押圧操作及び傾動操作などを行うことができる。
【0056】
なお、図10ではエアコンの操作方法について説明しているが、操作装置で他の車載機器も操作ができるようになっている。例えば、図10(a)で説明したエアコンの機能選択の操作と同様に複数の車載機器から操作対象の車載機器を選択できるようにしてもよい。また、操作ノブ1を押圧操作することで、操作対象の車載機器を選択できるようにしてもよい。図11は、操作対象を切り替えた場合の操作画面を示す模式図である。図11(a)は、エアコンの操作画面を示している。この状態で、操作ノブ1の押圧操作を行うことで、図11(b)に示すCDの操作画面に切り替えることができる。CDの操作画面では、例えば複数のディスクからの選択、選択したディスク内の曲目の選択などを行う。さらに、操作ノブ1の押圧操作を行うことで、図11(c)に示すラジオの操作画面に切り替えることができる。ラジオの操作画面では、周波数の選択などを行う。このように、ユーザは、操作ノブ1を持ち替えることなくそのままの状態で、他の車載機器の操作を続行することができる。また、一の操作装置で複数の車載機器の操作が行えるため、複数の操作装置を車内に設置する必要がないため、操作装置の設置スペースを軽減することができる。
【0057】
以上説明したように、本実施の形態では、回動、摺動又は傾動した操作ノブ1は、回動前、摺動前又は傾動前の初期状態に復帰するようになっているため、ユーザは、操作ノブ1を操作する都度、操作ノブ1の状態を確認する必要がなくなる。これにより、ユーザは、スムーズに操作を開始することができ、操作時間を短縮することができる。また運転者が操作する場合には、運転中のわき見運転による事故を防ぐことができる。また操作ノブ1は、ユーザが摘みやすい形状となっており、長手方向を中心に正逆に回動可能となっているため、操作ノブ1の回転操作時に、ユーザの手首にかかる負担を軽減することができる。
【0058】
本発明の好適な一実施の形態について、具体的に説明したが、各構成及び動作等は適宜変更可能であって、上述の実施の形態に限定されることはない。上述の実施の形態では、操作装置は、操作ノブ1の回転操作、摺動操作、傾動操作及び押圧操作すべてを可能としているが、何れか二以上の操作が可能であればよい。例えば、回転操作及び摺動操作のみが可能な操作装置としてもよい。また、操作装置における車載機器の操作方法は、上述の実施の形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0059】
1 操作ノブ
1b 摘み部
2 ダイヤル
2b ピン
2c,2c 凸部
9a,9b,9c,9d,9e ピン
10a,10b,10c,10d,10e スイッチ素子(検知手段、出力手段)
11a,11b 光学式センサ(検知手段、出力手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の方向に移動可能な操作体の移動に応じて、車載機器に係る信号を出力する車載機器操作装置において、
前記操作体を支持し、該操作体を所定の角度範囲内で回動可能にする手段、回転軸と直交する方向に摺動可能にする手段、前記回転軸に対して傾動可能にする手段、及び前記回転軸方向に押圧可能にする手段の少なくとも二以上を有する支持部と、
回動、摺動、傾動又は押圧した前記操作体を、回動前、摺動前、傾動前又は押圧前の状態に復帰させる手段と、
前記操作体が回動、摺動、傾動又は押圧したことを検知する検知手段と、
前記操作体の回転、摺動、傾動又は押圧を検知した場合、検知結果に応じた信号を出力する出力手段と
を備えることを特徴とする車載機器操作装置。
【請求項2】
前記出力手段は、
前記操作体が押圧された場合、操作対象を切り替える信号を出力するようにしてある
ことを特徴とする請求項1に記載の車載機器操作装置。
【請求項3】
前記操作体は、
平面部、及び、
前記平面部に対して凸となった摘み部
を有し、
前記摘み部は、
平行な二側面を有し、該二側面の平行な方向の寸法が側面間寸法よりも長い
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車載機器操作装置。
【請求項4】
前記支持部は、
前記摘み部の長手方向が回動角度範囲の中心となるように前記操作体を支持している
ことを特徴とする請求項3に記載の車載機器操作装置。
【請求項5】
前記支持部は、
前記長手方向が傾動する方向となるように前記操作体を支持している
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の車載機器操作装置。
【請求項6】
前記支持部は、
前記長手方向と直交する方向が摺動する方向となるように前記操作体を支持している
ことを特徴とする請求項3から5の何れか一つに記載の車載機器操作装置。
【請求項7】
前記操作体が、同時に回動、摺動及び傾動することを禁止する手段
をさらに備えることを特徴とする請求項1から6の何れか一つに記載の車載機器操作装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−60724(P2011−60724A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212272(P2009−212272)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】