説明

車載機

【課題】ブルートゥースによりHFP系デバイスと接続する場合に、HFP系デバイスからメッセージを受信したことを通知する新着通知を受信可能となるまでの期間を短縮することができる車載機を提供する。
【解決手段】携帯電話機とブルートゥースで接続する場合に、HFP接続に続けてMAP接続を実行するようにしたので、MAP接続を実行するタイミングが従来と比較して早くなった分だけ携帯電話機から「新着通知」を受信可能となるまでの期間の短縮を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブルートゥースによりHFP系デバイスと近距離通信する車載機に関する。
【背景技術】
【0002】
近距離無線技術であるブルートゥースにおいて、同じデバイス間に複数のプロファイルが接続される場合がある(マルチプロファイル)。このマルチプロファイルの接続状態において、複数のデータ通信系プロファイルを同時に使用すると、データ通信の帯域が枯渇してしまい、各プロファイルにおけるデータ通信速度が遅くなる。
そこで、車両に搭載された車載機がブルートゥース通信機能を有した例えば携帯電話機と接続する場合には、データ通信系プロファイルを排他制御により接続するようにしている。特許文献1では、データ通信系プロファイルの内、DUN(ダイアルアッププロファイル)の接続を優先することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−92643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、携帯電話機がSMS(ショートメッセージサービス)、MMS(マルチメディアサービス)、E−mail(電子メール)等のメッセージを受信したことを示す「新着通知」は、携帯電話機がメッセージを受信したタイミングでデータ通信系プロファイルであるMAP(メッセージアクセスプロファイル)を接続できていない場合は、車載機は携帯電話機から「新着通知」を受信できないことになる。つまり、現在のMAPの規格は、「新着通知」をリアルタイムで受信する仕組みであることから、メッセージの受信時にMAPの接続を終了して「新着通知」の待受け状態である必要がある。このため、携帯電話機がMAPよりも優先度の高い他のデータ通信系プロファイルの接続が終了するまでの間は、車載機は、携帯電話機がメッセージを受信するにしても携帯電話機から「新着通知」を受信できず、携帯電話機と接続してから「新着通知」を受信可能となるまでの期間が長いという問題がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、ブルートゥースによりHFP系デバイスと接続する場合に、HFP系デバイスからメッセージを受信したことを通知する新着通知を受信可能となるまでの期間を短縮することができる車載機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明によれば、HFP系デバイスとハンズフリープロファイルを接続することによりHFP系デバイスからの着信待受け状態を最優先に実行し、HFP系デバイスとデータ通信系プロファイルであるメッセージアクセスプロファイルを接続することにより新着通知を受信可能としてから、他のデータ通信系プロファイルを実行する。これにより、従来ではメッセージアクセスプロファイル以外のデータ通信系プロファイルを優先的に実行することにより新着通知を受信できなかった期間にも新着通知を受信可能となり、それだけ新着通知を受信可能となるまでの期間の短縮を図ることができる。
【0006】
請求項2の発明によれば、データ通信系プロファイルの接続を迅速に実行することができる。
請求項3の発明によれば、データ通信系プロファイルの接続を一層迅速に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態における車載機を示す機能ブロック図
【図2】携帯電話機とのブルートゥース接続時における接続過程を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は車載機の機能ブロック図である。車載機1は、表示装置2、操作装置3、マイク4、スピーカ5、ブルートゥースデバイス6、アンテナ7、フラッシュメモリ8、RAM9、ROM10およびCPUを主体とした制御回路11(第1接続手段、第2接続手段、第3接続手段、接続動作制御手段、通知手段に相当)を有しており、ハンズフリー機能を実現するように構成されている。
【0009】
表示装置2は液晶ディスプレイであり、制御回路11から入力された文字データ、画像データ等の表示を行う。操作装置3はメカニカルスイッチ、タッチパネル等であり、使用者による操作に基づいた信号を制御回路11に出力する。マイク4は、使用者が発した音声を音声信号に変換して制御回路11に出力する。スピーカ5は、制御回路11から入力された音声信号を音声として出力する。
【0010】
ブルートゥースデバイス6は、アンテナ7から受けた信号に対して、ブルートゥースの規格に従った所定の周波数変換、復調、増幅、A/D変換等を行い、その結果のデータを制御回路11に出力すると共に、制御回路11から受けたデータに対して、ブルートゥースの規格に従った所定のD/A変換、増幅、変調、周波数変換等を行って生成した信号をアンテナ7から出力する。本実施形態においては、ブルートゥースデバイス6は、ブルートゥース通信機能を有した携帯電話機12(HFP系デバイスに相当)と接続して通信するようになっている。フラッシュメモリ8は、電話番号とその電話番号に対応する人等の名称の対応関係を示す電話帳データ等を備えた書き換え可能な不揮発性の記憶媒体である。
【0011】
制御回路11は、ROM10から作動のためのプログラムを読み出して実行し、その実行の際にはフラッシュメモリ8、RAM9にデータを書き込み、またフラッシュメモリ8、RAM9、ROM10からデータを読み出す。また制御回路11は、その作動において、操作装置3、マイク4およびブルートゥースデバイス6から信号の入力を受け、また必要に応じてスピーカ5およびブルートゥースデバイス6に信号を出力する。
【0012】
車載機1とブルートゥース接続する携帯電話機12は、通常の携帯電話機の機能に加えて、ブルートゥースによって車載機1のブルートゥースデバイス6と通信する機能を有している。また、携帯電話機12は、ブルートゥースの規格において規定されているHFP(ハンズフリープロファイル)の機能と、DUN(ダイヤルアップネットワークプロファイル)等の機能とを併せ持っている。
【0013】
携帯電話機には、マルチプロファイル対応の携帯電話機、マルチプロファイル非対応の携帯電話機の2種類がある。マルチプロファイル対応の携帯電話機は、HFP、DUN等、複数のプロファイルのための作動を同時に実現することができ、マルチプロファイル非対応の携帯電話は、一時期にはただ1つだけのプロファイルのための作動しか実現できない。本実施形態では、車載機1がマルチプロファイル対応の携帯電話機と接続する場合を想定していることから、以下、携帯電話機12はマルチプロファイル対応として説明する。
【0014】
図2は、制御回路11による携帯電話機12とのマルチプロファイル接続過程を示している。車載機には、既に携帯電話機12が機器登録(ペアリング)されているものとする。
制御回路11は、イグニッションスイッチが操作されてアクセサリがオンすると、電源が投入されて動作する。車両に乗車した運転者が携帯電話機12を携帯していた場合は、制御回路11は、その携帯電話機12とブルートゥース接続を行い、ハンズフリープロファイルの機能を実現するためにHFP接続する。このようにHFP接続を最初に実行するのは、携帯電話機12に電話着信があったことを使用者に最優先で通知する必要があるからである。
【0015】
次に制御回路11は、後述するようにMAP(メッセージアクセスプロファイル)での無線接続を確立するが、先にHFP接続した状態での動作について説明する。
制御回路11は、携帯電話機12に電話着信があった旨の着信通知を、アンテナ7およびブルートゥースデバイス6を介して受けたか否かを判定し、携帯電話機12から着信通知を受けると、着信があった旨の表示を表示装置2またはスピーカ5に行わせる。表示装置2における着信があった旨の表示とは、例えば、受けた着信の発信元電話番号、および、フラッシュメモリ8において発信元電話番号に対応づけられている名称等の情報を文字表示させることである。また、スピーカ5における着信があった旨の表示とは、例えば、呼び出し音の出力である。
【0016】
また、制御回路11は、上記のような着信表示があった後に、使用者による操作装置3のオフフック操作があることに基づいて、当該着信に係る通話を開始する旨の信号をブルートゥースデバイス6を介して携帯電話機12に送信する。そして携帯電話機12がこの信号を受信して通話回線を確立し、その旨を車載機1に通知すると、ブルートゥースデバイス6を介してそれを受けた制御回路11は、当該通話回線を用いたハンズフリー電話通話を実現する。
【0017】
一方、使用者が操作装置3を操作することで、所定の電話番号に電話をかける旨の信号を操作装置3から受けたときは、ブルートゥースデバイス6を介して当該電話番号の電話端末を呼び出すよう携帯電話機12に通知する。そして、携帯電話機12がこの通知に応じて当該電話端末を呼び出し、当該電話端末との通話回線が確立した旨の通知を車載機1に送信すると、制御回路11は、その通知をブルートゥースデバイス6を介して受け取り、当該通話回線を用いた当該電話端末との通話を実現する。
【0018】
具体的には、携帯電話機12が電話端末からの受話音声信号を受信すると、その受話音声信号を車載機1に無線送信する。そして、制御回路11が、受信した受話音声信号を音声信号としてスピーカ5に出力すると、スピーカ5から当該受話音声が出力されることになる。また、制御回路11が、車両の乗員の音声信号をマイク4を介して受け取り、この音声信号を送話音声信号として、ブルートゥースデバイス6を用いて携帯電話機12に無線送信する。携帯電話機12は、この送話音声信号を受信すると、電話通信相手の電話端末宛に、この送話音声信号を送信する。このようにすることで、車載機1、携帯電話機12を用いたハンズフリー電話通話が実現される。
【0019】
さて、制御回路11は、上述のようにして携帯電話機12との間でHFP接続を確立すると、続けてMAPでの無線接続を確立する。このMAPは、携帯電話機12で受信したメッセージのリストを取得したり、メッセージを受信したことを示す「新着通知」を受信したりするプロファイルであるが、本実施形態ではメッセージの「新着通知」のみ受信するのみでリストを取得しないようになっている。さらに、「新着通知」を受信するにしても使用者に「新着通知」を通知することを保留している。これは、「新着通知」はリアルタイム性を要求されないことから、他のデータ通信系プロファイルを優先的に実行するためである。尚、メッセージとは、現時点ではSMS(ショートメッセージサービス)、MMS(マルチメディアメッセージングサービス)、E−mail(電子メール)のことであるが、今後発生する新規のサービスを含む概念である。
以上の動作により、HFPとMAPとが同時に無線接続されている状態、つまり電話着信を受けてリアルタイムで通知可能な状態と、メッセージの「新着通知」のみを通知可能なマルチプロファイル接続状態となる。
【0020】
制御回路11は、携帯電話機12との間でHFP及びMAPでのマルチプロファイル接続を確立すると、続けてデータ通信系プロファイルであるPBAP(フォンブックアクセスプロファイル)での無線接続により携帯電話機12に登録されている電話帳を転送して自己の電話帳に登録し、転送が終了したところでDUN(ダイヤルアップネットワークプロファイル)での無線接続の確立を行う。具体的には、ブルートゥースデバイス6を用いて携帯電話機12に対してダイヤルアップネットワークプロファイル接続要求の信号を送信し、携帯電話機12からのその送信に対するOKの旨のダイヤルアップネットワークプロファイル接続応答を、ブルートゥースデバイス6を介して受けるまで待つ。
【0021】
車載機1は、「OK」のダイヤルアップネットワークプロファイル接続応答を受けると、続けてデータ通信処理起動のための処理を行う。すなわち、ブルートゥースデバイス6を介して、携帯電話機12に所定のアクセスポイントに電話発呼させることを要求する信号(例えばATコマンドのATD)を送信し、そのアクセスポイントとの接続を介してインターネット等の広域ネットワークに参加し、その広域ネットワーク中の通信機器とデータの授受(例えばhttpプロトコルに従うWebページの要求および取得)を行い、取得したデータをフラッシュメモリ8に記憶させ、または表示装置2に表示させる。
【0022】
制御回路11は、例えばユーザによる操作装置3を用いたデータ通信終了の旨の操作があった場合はデータ通信が終了したことを判定し、続けてダイヤルアップネットワークプロファイルでの無線接続の切断のための処理を行う。具体的には、ブルートゥースデバイス6を用いて携帯電話機12に対してダイヤルアップネットワークプロファイル切断要求の信号を送信し、携帯電話機12から「OK」のダイヤルアップネットワークプロファイル切断応答を受けると、DUN接続を終了する。この時点で、車載機1と携帯電話機12との間では、HFP及びMAPでの無線接続のみが確立した状態となる。
以上のようにしてDUNが終了した以後においては、HFP接続による「着信通知」と、MAP接続による「新着通知」の受信及びその通知がリアルタイムに行われるのに加えて、新着リストを含む受信メッセージの取得がリアルタイムで行われるようになる。
【0023】
このような実施形態によれば、車載機1は、以下の効果を奏することができる。
携帯電話機12とブルートゥースで接続する場合に、HFP接続に続けてMAP接続を実行するようにしたので、MAP接続を実行するタイミングが従来と比較して早くなった分だけ携帯電話機12から「新着通知」を受信可能となるまでの期間の短縮を図ることができる。
【0024】
MAP接続により「新着通知」を受信した場合であっても、使用者に直ちに通知せず、他のデータ通信系プロファイルの全ての接続が終了したところで通知するようにしたので、PBAP或いはDUNによるデータ通信が途切れることがなく、それらの処理を迅速に行うことができる。
全てのデータ通信系プロファイルが終了したところで携帯電話機12からメッセージのリストを取得するようにしたので、PBAP或いはDUNの迅速な処理に一層貢献することができる。
【0025】
(他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、次のように変形または拡張できる。
HFP系デバイスとしては、ブルートゥースによりHFP接続及びMAP接続可能な構成であれば携帯電話機に限定されることはない。
プロファイルの例としては、ファイル送信プロファイル(FTP)、ヘッドセットプロファイル(HSP)、ヒューマンインターフェースプロファイル(HIP)、LANアクセスプロファイル(LAP)、オブジェクトプッシュプロファイル(OPP)、パーソナルネットワーキングプロファイル(PAN)等の相互運用プロファイル(Interoperability Profile)等、ブルートゥースに規定されたものであれば、どのようなものでもよい。
車載機としてカーナビゲーション装置に適用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0026】
図面中、1は車載機、11は制御回路(第1接続手段、第2接続手段、第3接続手段、接続動作制御手段、通知手段)、12は携帯電話機である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブルートゥースにより予め登録されているHFP系デバイスとマルチプロファイルを接続可能な車載機において、
前記HFP系デバイスとHFP接続することにより当該HFP系デバイスからの着信待受け状態とする第1接続手段と、
前記HFP系デバイスとMAP接続することにより当該HFP系デバイスからのメッセージの新着通知の受信可能状態とする第2接続手段と、
前記MAP以外のデータ通信系プロファイルを接続することにより前記HFP系デバイスとの間で所定のデータ通信を実行する第3接続手段と、
前記第1接続手段を動作させることにより着信待受け状態とした状態で、前記第2接続手段及び前記第3接続手段を排他的に動作させる接続動作制御手段と、
を備えたことを特徴とする車載機。
【請求項2】
前記第3接続手段の動作中に前記第2接続手段により新着通知を受信した場合は、前記第3接続手段の動作が終了してから新着通知を使用者に通知する通知手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の車載機。
【請求項3】
前記第2接続手段は、前記第3接続手段の動作終了後に前記HFP系デバイスからメッセージのリスト情報を受信することを特徴とする請求項1又は2記載の車載機。
【請求項4】
前記HFP系デバイスは携帯電話機であることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の車載機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−70049(P2012−70049A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210723(P2010−210723)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】