説明

車載用ガス検出装置

【構成】 上ケース9の側壁17の内部にガスセンサ5,6を配置し、開口10をガス透過膜22で覆う。カバー20に内外二重の突起25,26を設け、外側の突起26を側壁17に溶着し、突起25,26の隙間をガス通路とする。
【効果】 ガス検出装置を上下逆にしても、ガス透過膜22とカバー20との間に溜まった水を逃がすことができる。また側壁17に対するカバー20の高さを一定にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池自動車等での水素漏れや、自動車の車室への空気供給を外気導入と内気循環との間で切り替えるために外気汚染を検出する、等の車載用ガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ケースに設けた開口内にガスセンサを収容し、PTFE膜等の撥水膜を介して雰囲気を導入する車載用のガス検出装置が知られている。車載用のガス検出装置では、水滴や塵芥がガスセンサに触れないようにすること、雰囲気の変化に対する応答が速いことが要求される。特許文献1は、ケースの開口に被せるキャップの脚にガス導入孔を設けて、キャップとケースの隙間をガス通路として、開口の上部のPTFE膜までガスを導くことを開示している。しかしながらこのガス検出装置では、キャップを下にして使用するとキャップとケースの間に溜まった水が抜けない、ケースに対するキャップの高さを一定にする機構がないという問題がある。
【特許文献1】特許3743718
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の課題は、取り付け方向を問わず、ケースとカバーの間に入り込んだ水が抜け、かつケースとカバーの間の隙間を一定にできる、車載用のガス検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、ケースから突き出し、周囲にケースと一体の側壁を備え、かつガス透過膜で覆われた開口の内部に、ガスセンサを配置し、該開口を覆うカバーを設けて、該カバーと開口との隙間から前記ガス透過膜を介して雰囲気をガスセンサへ導くようにした車載用のガス検出装置において、
前記カバーが、平坦な板部と、板部の周囲からケースの側壁側へ突き出しかつ切れ目の有る、内外2重の環状の突起とを備え、外側の突起の切れ目の奧を塞ぐように内側の突起を配置し、外側の突起の切れ目と内外の突起の隙間及び内側の突起の切れ目を連通させて、前記ガス透過膜へのガス通路とし、さらに内外いずれかの突起を前記側壁に溶着したことを特徴とする。
好ましくは、燃料電池からの水素を検出する。
【発明の効果】
【0005】
この発明では、ガス透過膜とガス通路とがほぼ同じ高さにあるので、ガス検出装置を上下逆に取り付けても、水が溜まる窪みが生じない。このためガス透過膜とカバーの間に溜まった水を抜くことができる。雰囲気中の塵芥は内側の突起等に衝突して気流から除かれ、ガス透過膜には余り達しない。次にカバーを溶着で側壁に取り付けるので、側壁に対するカバーの高さは一定で、ガス通路の高さ方向のサイズも一定になる。さらに溶着を用いるので、カバーを側壁に取り付ける際の量産性が高い。この発明では外部からガス透過膜までのガス通路が短く、この間に通路の向きを曲げる回数が少ないので、雰囲気への応答性が高い。このため、燃料電池からの水素漏れを素早く検出して安全性を保つこと等に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0007】
図1〜図5に実施例のガス検出装置2を示す。図において、4は接触燃焼式ガスセンサで、検知片5と補償片6とから成り、ガスセンサは金属酸化物半導体ガスセンサや、プロトン導電体ガスセンサ、あるいは電気化学ガスセンサなどでもよい。7は基板で、8は下ケース、9は上ケースで、各々プラスチックから成る。上ケース9は上側に突き出した開口10を備え、開口10の内部に検知片5と補償片6を収容し、17は開口10の環状の側壁である。ケース8,9間の隙間からの浸水を防止するためパッキン11を設け、12は配線用のケーブル、13はブッシュ、14はケース8,9を固定するためのボルトである。15はガスセンサ4の周囲に水やその他の異物が侵入することを防止するためのパッキンで、上ケース9と基板7の間に配置されている。16は上下のケース8,9を位置決めするためのカラーで、18はOリングで設けなくても良い。Oリング18は、燃料電池の排気管などにガス検出装置2を気密にセットする際に用る。
【0008】
20はカバーで、22はPTFEなどのガス透過膜で、水を通さずガスを透過させる膜であればよく、燃料電池の場合、水素選択性透過膜などでも良い。カバー20は、開口10に対応する円板状の平らな天板部24を備え、周辺に同心円状に2重の環状の突起25,26を備え、各々切れ目を備えている。そしてカバー20の外から中心側を見た際に、外側の突起25の切れ目の奧を内側の突起26でブロックし、突起25,26の切れ目と切れ目が半径方向に重ならないように配置する。外側の突起25の切れ目と、内外の突起25,26の隙間、及び内側の突起26の切れ目が連通してガス通路28となる。外側の突起25は上ケース9の側壁17上面に溶着部30で溶着されているが、外側の突起25ではなく、内側の突起26を側壁17に溶着しても良い。また内側の突起26とガス透過膜22との間にはほとんど隙間がない。
【0009】
実施例の動作を示す。ガス検出装置2を燃料タンクの周囲や燃料電池の排気管、あるいは車室内などに配置して、燃料電池自動車での水素漏れを検出する。あるいはエンジンルームなどに配置して外気の汚染を検出し、車室への外気導入を制御する。雰囲気は突起25,26の間のガス通路28からガス透過膜22の上部に達し、ガス透過膜22を通過してガスセンサ4の周囲のスペースへと導かれる。周囲の雰囲気は、突起26に衝突して旋回流としてガス透過膜22の上部に達する。雰囲気の流れ方向を大きく変えるのは突起26に衝突した際の1箇所のみなので、応答時間を短くできる。
【0010】
水滴などは突起26でブロックされて、ガス透過膜22の上部まで達しにくい。仮にガス透過膜22の上部まで水滴などが達しても、気流などにより吹き飛ばされる。塵芥は突起26等に触れて除かれ、突起25,25の隙間から針状の異物などが侵入しようとしても、突起26によりブロックされて、ガス透過膜22に達することが難しい。このため尖った異物などによりガス透過膜22が損傷することを防止できる。
【0011】
ガス検出装置2の組立では、基板7を下ケース8にセットし、上ケース9と下ケース8をボルト14で一体にした後、ガス透過膜22とカバー20を配置して、超音波などでカバー20を側壁17の上面に溶着する。ガス透過膜22は、カバー20の溶着前に接着もしくは溶着し、あるいはカバー20の溶着と同時に側壁17の上部に溶着する。カバー20は上ケース9に溶着されるので、上ケース9に対する天板部24の高さは一定で、ガス通路28の高さも一定である。このためガス透過膜22までの通気性を一定に保つことができる。また溶着では、量産時にカバー20の取付の生産性が高い。

【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例のガス検出装置の分解状態を示す図
【図2】実施例でのカバーの斜視図
【図3】図2のカバーを底面側から見た斜視図
【図4】実施例のガス検出装置の断面図
【図5】図4の要部拡大断面図
【符号の説明】
【0013】
2 ガス検出装置
4 接触燃焼式ガスセンサ
5 検知片
6 補償片
7 基板
8 下ケース
9 上ケース
10 開口
11,15 パッキン
12 ケーブル
13 ブッシュ
14 ボルト
16 カラー
17 側壁
18 Oリング
20 カバー
22 ガス透過膜
24 天板部
25,26 突起
28 ガス通路
30 溶着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースから突き出し、周囲にケースと一体の側壁を備え、かつガス透過膜で覆われた開口の内部に、ガスセンサを配置し、該開口を覆うカバーを設けて、該カバーと開口との隙間から前記ガス透過膜を介して雰囲気をガスセンサへ導くようにしたガス検出装置において、
前記カバーが、平坦な板部と、板部の周囲からケースの側壁側へ突き出しかつ切れ目の有る、内外2重の環状の突起とを備え、外側の突起の切れ目の奧を塞ぐように内側の突起を配置し、外側の突起の切れ目と内外の突起の隙間及び内側の突起の切れ目を連通させて、前記ガス透過膜へのガス通路とし、さらに内外いずれかの突起を前記側壁に溶着したことを特徴とする、車載用のガス検出装置。
【請求項2】
燃料電池からの水素を検出することを特徴とする、請求項1の車載用のガス検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−128687(P2008−128687A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310990(P2006−310990)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000112439)フィガロ技研株式会社 (58)
【Fターム(参考)】