説明

車載用ディスプレイ装置

【課題】 本発明の目的は、傾き動作が可能なディスプレイ部を備えた車載用ディスプレイ装置において、輻射ノイズや静電気への耐性を向上させることにある。
【解決手段】
本発明に係る車載用ディスプレイ装置は、画像表示面を有するディスプレイ部と、前記ディスプレイ部を収納するインナーエスカッションと、前記ディスプレイ部の傾き動作を行うためのチルト機構と、を備え、前記インナーエスカッションの側面には、溝部が設けられており、前記溝部は、前記ディスプレイ装置の筐体との電気的導通が可能な素材で構成される波状の突起を有する壁面を備え、前記ディスプレイ部は、側面に、前記溝部の壁面の突起に嵌るギヤ部を回転可能に備え、前記ギヤ部は、前記ディスプレイ部との電気的導通が可能な素材で構成され、前記溝部の底面方向に力を発生させる弾性部材により付勢されている、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用ディスプレイ装置の中には、画像表示面を有するディスプレイ部の傾きを変更可能なものがある。このような車載用ディスプレイ装置では、ディスプレイ部を支持する部材がヒンジ機構やスライド機構により結合し、部材間の位置関係の変位により、ディスプレイ部の傾き動作を達成している(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−309388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ヒンジ機構やスライド機構で部材間が結合されている場合、その部分の部材の間には、スムーズな動作のため、所定のクリアランスが設けられている。そのため、シャシーとの電気的導通が確保しづらく、ディスプレイ部のアースを安定して確保することが難しい場合がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、傾き動作が可能なディスプレイ部を備えた車載用ディスプレイ装置において、輻射ノイズや静電気への耐性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本願発明の車載用ディスプレイ装置は、画像表示面を有するディスプレイ部と、前記ディスプレイ部を収納するインナーエスカッションと、前記ディスプレイ部の傾き動作を行うためのチルト機構と、を備え、前記インナーエスカッションの側面には、溝部が設けられており、前記溝部は、前記ディスプレイ装置の筐体との電気的導通が可能な素材で構成される波状の突起を有する壁面を備え、前記ディスプレイ部は、側面に、前記溝部の壁面の突起に嵌るギヤ部を回転可能に備え、前記ギヤ部は、前記ディスプレイ部との電気的導通が可能な素材で構成され、前記溝部の底面方向に力を発生させる弾性部材により付勢されている、ことを特徴とする。
【0007】
また、本願発明の車載用ディスプレイ装置は、画像表示面を有するディスプレイ部と、前記ディスプレイ部を収納するインナーエスカッションと、前記ディスプレイ部の上方部を前記インナーエスカッションとの距離を所定に保ちつつ移動させるとともに、前記ディスプレイ部の下方部を前記インナーエスカッションとの距離が変化するように移動させることにより、前記ディスプレイ部の傾き動作を行うチルト機構と、を備え、前記インナーエスカッションの側面には、溝部が設けられており、前記溝部は、前記ディスプレイ装置の筐体との電気的導通が可能な素材で構成される波状の突起を有する壁面を備え、前記ディスプレイ部は、側面に、前記溝部の壁面の突起に嵌るギヤ部を回転可能に備え、前記ギヤ部は、前記ディスプレイ部との電気的導通が可能な素材で構成され、前記溝部と嵌め合わされることで上下方向に移動を制限され、前記溝部の底面方向に力を発生させる弾性部材により付勢されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本願発明によれば、傾き動作が可能なディスプレイ部を備えた車載用ディスプレイ装置において、輻射ノイズや静電気への耐性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】車載器の斜視図である。
【図2】Aはディスプレイ部のローラ部の移動原理を説明する模式図である。 Bはディスプレイ部のローラ部の移動原理を説明する模式図である。
【図3】第一の実施形態に係るディスプレイ部のローラ部の構造を示す図である。
【図4】第二の実施形態に係るディスプレイ部のローラ部の構造を示す図である。
【図5】Aは第二の実施形態に係るディスプレイ部のローラ部の構造を示す図である。 Bは第二の実施形態に係るディスプレイ部のローラ部の構造を示す図である。
【図6】第三の実施形態に係るディスプレイ部のローラ部の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明が適用された車載器1について、図1〜図6を参照して説明する。なお、図1〜図6は、車載器1の全ての構成を示すものではなく、理解容易のため、適宜、構成の一部を省略して描いている。なお、図1〜3は、本発明の第一の実施形態にあたり、図4および図5は第二の実施形態にあたり、図6は第三の実施形態にあたる。第一の実施形態と、第二の実施形態と、第三の実施形態は、基本的に同様の構成を備えるため、相違する点を中心に説明する。
【0011】
図1は、車載器1のディスプレイ部100がチルトして傾いた状態、すなわちディスプレイ部100が開いた状態を示す外観の斜視図である。なお、画像表示面が、向かって左手前に配置するようにしている。
【0012】
車載器1は、画像表示面を備えるディスプレイ部100と、筐体200と、スライド部300と、インナーエスカッション400と、を備えて構成される。
【0013】
ディスプレイ部100は、扁平直方体形状のケース内に、ディスプレイ基板を格納している。ディスプレイ部100の画像表示面には、液晶パネルなどの表示装置の他に、つまみ等、各種の操作ボタンが配置されている。なお、ディスプレイ部100の正面の一部及び側面は、樹脂製のケースで覆われている。
【0014】
ディスプレイ部100の左側の側面であるディスプレイ部左側面の上方には、左側ギヤ部500が設けられている。図示しないが、同様に、ディスプレイ部100の右側の側面であるディスプレイ部右側面の上方の左側ギヤ部500に対応する位置には、右側ギヤ部が設けられている。また、ディスプレイ部右側面の下方と、ディスプレイ部左側面の下方とには、それぞれにディスプレイ部100を支持する支持部取付け部が設けられている。
【0015】
筐体200は、ディスプレイ部100側の面が開放された箱型の部材である。筐体200内には、CDやDVDのドライブユニット、ハードディスク、各種処理を行うための回路基板等が格納されている。なお、筐体200は、金属等の導電性のある素材により構成される。
【0016】
また、図示しないが、筐体200には、スライド部300がスライド移動を行うためのガイドとなるレールと、スライド移動の駆動源となるモータと、モータの駆動力をスライド部300に伝えるギア等が配置されている。
【0017】
スライド部300は、筐体200内のレールに沿ってスライドするアーム部320と、ディスプレイ部100とヒンジ結合しディスプレイ部100を支持するディスプレイ支持部とを備えている。アーム部320は、ギアを介してモータと連結しており、モータの駆動方向に応じて、インナーエスカッション400の主面に直交する方向(図1の左手前方向およびその反対方向)にスライド移動する。
【0018】
ディスプレイ支持部には、ディスプレイ部100のディスプレイ支持部取付け部に対向する部分に、ネジ貫通孔が設けられており、ネジ貫通孔に取り付けられるネジは、ネジ貫通孔を貫通して、ディスプレイ支持部取付け部に結合する。これにより、ヒンジ機構が構成され、ディスプレイ部100は、ネジの軸を中心に回転可能である。
【0019】
インナーエスカッション400は、ディスプレイ部100を筐体200に収納するための部材であり、ディスプレイ部100の画像表示面の背面側の形状に対応した箱型をしている。インナーエスカッション400は、矩形の主面と、その4つの辺に結合した上下左右の壁面とからなる。
【0020】
インナーエスカッション400の主面は、ディスプレイ部100の収納時においてディスプレイ部100の背面と対向する面である。上下左右の4つの壁面は、ディスプレイ部100の収納時にディスプレイ部100の左右上下の側面と対向する面である。
【0021】
インナーエスカッション400の左右の内壁面である左側壁面411L、右側壁面には、ディスプレイ部100の左側面および右側面にそれぞれ設けられた左側ギヤ部500と、右側ギヤ部とが嵌り込み、かつ上下のみにスライド移動を制限する左側壁面溝412L、右側壁面溝が設けられている。ディスプレイ部100がチルト動作を行うときは、ディスプレイ部100の左側ギヤ部500と、右側ギヤ部とは、それぞれ左側壁面溝412L、右側壁面溝に沿って上方向又は下方向にスライド移動する。
【0022】
また、インナーエスカッション400には、CDやDVDなどのディスクの挿入、摘出を行うことができるディスク挿入部が設けられている。また、インナーエスカッション400には、スライド部300のアーム部320がくぐり抜けるためのスライド部材口が設けられている(図1参照)。
【0023】
なお、インナーエスカッション400は、筐体200のディスプレイ部100側の口型の開放部分に嵌めこまれている。ディスプレイ部100のチルト動作時には、ディスプレイ部100の下方部分は、スライド部300の画像表示面方向への突出に従って、インナーエスカッション400から引き離される。一方、ディスプレイ部100の上方部分はインナーエスカッション400と接近したまま下方向に移動するので、ディスプレイ部100は、徐々に水平に近づくように傾けられる。これにより、ディスク挿入部が露出し、ユーザは、CDやDVDの交換を行うことができる。
【0024】
一方、ディスプレイ部左側面の上方に設けられた左側ギヤ部500は、ギヤの先端部がインナーエスカッション400の左側の壁面である左側壁面411Lの内側に設けられた上下方向に延びる溝である左側壁面溝412Lに嵌り込んでいる(図3参照)。同様に、ディスプレイ部右側面の上方に設けられた右側ギヤ部は、インナーエスカッション400の右側の壁面である右側壁面の内側に設けられた上下方向に延びる溝である右側壁面溝に嵌り込んでいる。
【0025】
左側ギヤ部500は、所定以上の導電性を備える素材、例えば金属あるいは導電性樹脂を含んで構成されており、ギヤの回転支持部とギヤの溝および突起部との間に導電性を備える。ギヤの回転支持部は、導電性を備える部材で構成されており、ディスプレイ部100の内部基板と電気的に導通される。したがって、ギヤの溝および突起部と、ディスプレイ部100の内部基板との間に導電性があるといえる。また、右側ギヤ部は、左側ギヤ部500と基本的に同様の構成を備え、左右対称の形状を備える。
【0026】
左側ギヤ部500は、図2Aに示すように、ディスプレイ部100が図のP方向(鉛直下向きから前面水平方向までのいずれかの方向)への力を受ける際、すなわちディスプレイ部100がチルト動作を行う際にスライド部300が突出する際に、左側壁面溝412Lの前面側縁413Fに沿って移動し、回転する。前面側縁413Fには、その延伸方向と直行する方向に起伏する波状の突起(ラック)が複数設けられている。当該波状の突起は、所定以上の導電性を備える素材、例えば金属あるいは導電性樹脂を含んで構成されており、導電性を備える筐体200との間で導電性を備える。当該波状の突起に接触した状態でディスプレイ部100が図のP方向へ力を受けることで、左側ギヤ部500は図上時計回りに回転する方向に力を付勢される。したがって、左側ギヤ部500と、前面側縁413Fとは、P方向への力を受ける間は、常に所定の接点(電気的接点および物理的接点)を維持するといえる。
【0027】
左側ギヤ部500は、図2Bに示すように、ディスプレイ部100が図のQ方向への力を受ける際、すなわちディスプレイ部100がチルト状態から復帰する動作を行う際において、スライド部300が収納される際に、左側壁面溝412Lの後面側縁413Bに沿って移動し、回転する。後面側縁413Bには、その延伸方向と直行する方向に起伏する波状の突起が複数設けられている。当該波状の突起に接触した状態でディスプレイ部100が図のQ方向へ力を受けることで、左側ギヤ部500は図上時計回りに回転する方向に力を付勢される。したがって、右側ギヤ部と、後面側縁413Bとは、Q方向への力を受ける間は、常に所定の接点(電気的接点および物理的接点)を維持するといえる。
【0028】
図3は、インナーエスカッション400の左側面を、筐体200の上方から見下ろした状態の断面図を模した図である。図3に示すように、左側ギヤ部500は、ギヤの回転の中心軸となる所定の導電性を有する軸510と、当該軸の回転方向と直交する方向に延びる波状の溝が設けられ、該軸510に回転可能に取り付けられたギヤ520(いわゆるピニオンギヤ)と、ギヤ520と前面側縁413Fまたは後面側縁413Bと、の接触をガイドするテーパを有する所定以上の導電性を有するガイド530と、ガイド530をインナーエスカッション400の内壁に近づける方向(W方向)へ付勢する弾性体であるばね540と、により構成される。軸510は、ギヤの回転支持部であり、ディスプレイ部100の外側面から、ディスプレイ部100のチルト動作における移動方向の直交方向と平行な方向に突出するよう設けられている。なお、ギヤ520と、ガイド530とは、固着されているか、一体成形されているものであるのが望ましい。
【0029】
ガイド530は、本実施形態においては、ギヤ520の外径よりも大きい外径を備え、軸510の延伸方向に垂直な円形面530Bを備える。当該円形面530Bは、軸510を中心として回転し、ばね540により付勢される力を受け止める。ガイド530は、円形面530Bからギヤ520との境界面にかけて徐々にその外径が小さくなり、ギヤ520との境界面においてはギヤ520の外径と略同一の外径を備える。いいかえると、ガイド530は、ギヤ520側からばね側に向かって直径が大きくなる円柱状の部材であるといえる。そのため、左側壁面溝412Lには、ギヤ520のみが嵌り込む。なお、図3においては、ガイド530は、円形面530Bからギヤ520との境界面にかけて略均一にその外径が小さくなっているが、これに限られず、例えば円形面530Bからギヤ520との境界面にかけて徐々に外径の縮小幅が少なくなるようにしてもよい。このようにすることで、ギヤ520の回転をよりスムーズなものとすることができる。
【0030】
ばね540は、本実施形態においては、らせん状のつるまきばねであり、軸510の周囲をらせんの中心とするよう取り付けられている。ばね540は、軸510に回転可能に取り付けられたギヤ520と固定されたガイド530とを、インナーエスカッション400の内壁に近づける方向(W方向)へ付勢する。これにより、ガイド530およびギヤ520が前面側縁413Fまたは後面側縁413Bのいずれかと接触する。また、ディスプレイ部100に対してP方向あるいはQ方向のいずれかの力が加えられると、ギヤ520と、前面側縁413Fまたは後面側縁413Bと、の距離、すなわちインナーエスカッションの側面に設けられた前面側縁413Fおよび後面側縁413Bのいずれの縁にギヤ歯が噛み合うか、が決定される。
【0031】
すなわち、ギヤ520は、導電性を有し、同様に導電性を有する前面側縁413Fまたは後面側縁413Bのいずれかとギヤ歯のいずれかの部位が接触する。したがって、ディスプレイ部100で発生した電気的ノイズを、シャシーへ逃がすアースの役割を担うことができるといえる。構成に着目すると、ギヤ520は、ディスプレイ部100との電気的導通が可能な素材で構成され、インナーエスカッションの溝部と嵌め合わされることで上下方向に移動を制限され、溝部の底面方向に力を発生させる弾性部材により付勢されているといえる。なお、右側ギヤ部は、左側ギヤ部500と左右が対称となるように構成されており、同様にアースの役割を担うことができる。
【0032】
以上、本発明に係る第一の実施形態を説明した。第一の実施形態によると、ディスプレイ部100で発生した電気的ノイズは、ギヤ520を介してシャシーへ逃がされるため、輻射ノイズや静電気への耐性を向上させることができるといえる。
【0033】
次に、第二の実施形態について、図4および図5を用いて説明する。第二の実施形態では、車載器1の全体的な構成は第一の実施形態で説明した構成と同様の構成を備える。そのため、第一の実施形態との相違を中心に、以下説明する。
【0034】
図4は、インナーエスカッション400の左側面を、筐体200の上方から見下ろした状態の断面図を模した図である。図4に示すように、左側ギヤ部500は、ギヤの回転の中心軸となる所定の導電性を有する軸610と、当該軸の回転方向と直交する方向に延びる波状の溝が設けられ、該軸610に回転可能に取り付けられた外側ギヤ620および内側ギヤ630と、内側ギヤ630とディスプレイ部100の外側面との間に設けられたスペーサー640と、により構成される。軸610は、外側ギヤ620と、内側ギヤ630と、の回転支持部であり、ディスプレイ部100の外側面から、ディスプレイ部100のチルト動作における移動方向の直交方向と平行な方向に突出するよう設けられている。
【0035】
外側ギヤ620と、内側ギヤ630とは、いずれも、所定以上の導電性を備える素材、例えば金属あるいは導電性樹脂を含んで構成されており、ギヤの回転支持部とギヤの溝および突起部との間に導電性を備える。両ギヤの回転支持部である軸610は、導電性を備える部材で構成されており、ディスプレイ部100の内部基板と電気的に導通される。したがって、ギヤの溝および突起部と、ディスプレイ部100の内部基板との間に導電性があるといえる。また、右側ギヤ部は、左側ギヤ部500と基本的に同様の構成を備え、左右対称の形状を備える。
【0036】
外側ギヤ620と、内側ギヤ630とは、図5Aに示されるようなはさみばね650により互いの位置が調整される機構を備えて、軸610を中心として取り付けられる。はさみばね650は、軸610を中心とするらせん状のばねであり、ばねの両端は、外側ギヤ620および内側ギヤ630の回転軸と垂直な面にそれぞれ設けられた凹部621、631にはめ込まれて取り付けられる。はさみばね650は、外側ギヤ620と内側ギヤ630との回転方向に対する相対位置を、ばねの弾性により調整する。なお、望ましくは、外側ギヤ620のギヤを構成する突起と、内側ギヤ630のギヤを構成する突起とは、若干の位相差があるようはさみばね650が取り付けられるのが望ましい。すなわち、外側ギヤ620の突起の頂と、内側ギヤ630の突起の底(すなわち、溝)とが重なるように取り付けられるのが望ましい。
【0037】
具体的には、はさみばね650は、それぞれの回転の角速度が相異なるように外側ギヤ620および内側ギヤ630が回転する場合に、両者の角速度の差を吸収する方向に付勢する。つまり、回転による位相のずれを補正するための位相調整手段として機能する。そのため、外側ギヤ620と内側ギヤ630は、図5Bのようにギヤ歯の間隙が一定となるよう付勢され、前面側縁413Fまたは後面側縁413Bの波状の突起とほぼ確実に接地することとなる。
【0038】
すなわち、外側ギヤ620および内側ギヤ630は、導電性を有し、同様に導電性を有する前面側縁413Fまたは後面側縁413Bのいずれかとギヤ歯のいずれかの部位がほぼ確実に接触する。したがって、ディスプレイ部100で発生した電気的ノイズを、シャシーへ逃がすアースの役割を担うことが可能といえる。なお、右側ギヤ部は、左側ギヤ部500と左右が対称となるように構成されており、同様にアースの役割を担うことができる。
【0039】
以上、本発明に係る第二の実施形態を説明した。第二の実施形態によると、ディスプレイ部100で発生した電気的ノイズは、左側ギヤ部500および右側ギヤ部を介してシャシーへ逃がされるため、輻射ノイズや静電気への耐性を向上させることができるといえる。
【0040】
次に、第三の実施形態について、図6を用いて説明する。第三の実施形態では、車載器1の全体的な構成は第一の実施形態で説明した構成と同様の構成を備える。そのため、第一の実施形態との相違を中心に、以下説明する。
【0041】
図6は、インナーエスカッション400の左側面を、筐体200の上方から見下ろした状態の断面図を模した図である。図6に示すように、左側ギヤ部500は、ギヤの回転の中心軸となる所定の導電性を有する軸510と、当該軸の回転方向と直交する方向に延びる波状の溝が設けられ、該軸510に回転可能に取り付けられた外側ギヤ620および内側ギヤ630と、外側ギヤ620および内側ギヤ630と前面側縁413Fまたは後面側縁413Bと、の接触をガイドするテーパを有する所定以上の導電性を有するガイド530と、ガイド530をインナーエスカッション400の内壁に近づける方向(W方向)へ付勢する弾性体であるばね540と、により構成される。軸510は、ディスプレイ部100の外側面から、ディスプレイ部100のチルト動作における移動方向の直交方向と平行な方向に突出するよう設けられている。なお、内側ギヤ630と、ガイド530とは、固着されているか、一体成形されているものであるのが望ましい。
【0042】
ガイド530は、本実施形態においては、内側ギヤ630の外径よりも大きい外径を備え、軸510の延伸方向に垂直な円形面530Bを備える。当該円形面530Bは、軸510を中心として回転し、ばね540により付勢される力を受け止める。ガイド530は、円形面530Bから内側ギヤ630との境界面にかけて徐々にその外径が小さくなり、内側ギヤ630との境界面においては内側ギヤ630の外径と略同一の外径を備える。そのため、左側壁面溝412Lには、外側ギヤ620および内側ギヤ630が嵌り込む。なお、図6においては、ガイド530は、円形面530Bから内側ギヤ630との境界面にかけて略均一にその外径が小さくなっているが、これに限られず、例えば円形面530Bから内側ギヤ630との境界面にかけて徐々に外径の縮小幅が少なくなるようにしてもよい。このようにすることで、内側ギヤ630の回転をよりスムーズなものとすることができる。
【0043】
外側ギヤ620と、内側ギヤ630とは、いずれも、所定以上の導電性を備える素材、例えば金属あるいは導電性樹脂を含んで構成されており、ギヤの回転支持部とギヤの溝および突起部との間に導電性を備える。また、右側ギヤ部は、左側ギヤ部500と基本的に同様の構成を備え、左右対称の形状を備える。
【0044】
外側ギヤ620と、内側ギヤ630とは、図5Aに示されるようなはさみばね650により互いの位置が調整される機構を備えて、軸510を中心として取り付けられる。はさみばね650は、軸510を中心とするらせん状のばねであり、ばねの両端は、外側ギヤ620および内側ギヤ630の回転軸と垂直な面にそれぞれ設けられた凹部621、631にはめ込まれて取り付けられる。はさみばね650は、外側ギヤ620と内側ギヤ630との回転方向に対する相対位置を、ばねの弾性により調整する。なお、望ましくは、外側ギヤ620のギヤを構成する突起と、内側ギヤ630のギヤを構成する突起とは、若干の位相差があるようはさみばね650が取り付けられるのが望ましい。すなわち、外側ギヤ620の突起の頂と、内側ギヤ630の突起の底(すなわち、溝)とが重なるように取り付けられるのが望ましい。
【0045】
具体的には、はさみばね650は、それぞれの回転の角速度が相異なるように外側ギヤ620および内側ギヤ630が回転する場合に、両者の角速度の差を吸収する方向に付勢する。そのため、外側ギヤ620と内側ギヤ630は、図5Bのようにギヤ歯の間隙が一定となるよう付勢され、前面側縁413Fまたは後面側縁413Bの波状の突起とほぼ確実に接地することとなる。
【0046】
ばね540は、本実施形態においては、らせん状のつるまきばねであり、軸510の周囲をらせんの中心とするよう取り付けられている。軸510に回転可能に取り付けられた内側ギヤ630と固定されたガイド530とを、インナーエスカッション400の内壁に近づける方向(W方向)へ付勢する。これにより、ガイド530と、外側ギヤ620と、内側ギヤ630のいずれかが前面側縁413Fまたは後面側縁413Bのいずれかと接触する。また、ディスプレイ部100に対してP方向あるいはQ方向のいずれかの力が加えられると、外側ギヤ620および内側ギヤ630と、前面側縁413Fまたは後面側縁413Bと、の距離、すなわちインナーエスカッションの側面に設けられた前面側縁413Fおよび後面側縁413Bのいずれの縁にギヤ歯が噛み合うか、が決定される。
【0047】
すなわち、外側ギヤ620および内側ギヤ630は、導電性を有し、チルト動作時あるいはチルト収納時には、同様に導電性を有する前面側縁413Fまたは後面側縁413Bのいずれかとギヤ歯のいずれかの部位が略確実に接触する。したがって、ディスプレイ部100で発生した電気的ノイズを、シャシーへ逃がすアースの役割を担うことができるといえる。なお、右側ギヤ部は、左側ギヤ部500と左右が対称となるように構成されており、同様にアースの役割を担うことができる。
【0048】
以上、本発明に係る第三の実施形態を説明した。第三の実施形態によると、ディスプレイ部100で発生した電気的ノイズは、左側ギヤ部500および右側ギヤ部を介してシャシーへ逃がされるため、輻射ノイズや静電気への耐性を向上させることができるといえる。
【0049】
なお、上記第一〜第三の実施形態は、様々な変形が可能である。例えば、図3に示したギヤ520の形状、配置(例えば、前面側縁413Fとの間で発生する摩擦力軽減のために、ギヤ520の回転軸との間にベアリング等を設ける、あるいは電気的な接触面を増やすためにギヤの形状を変形する等)は、適宜選択することができる。
【0050】
また、軸510に回転可能に取り付けられたギヤ520と固定されたガイド530とを、インナーエスカッション400の内壁に近づける方向(W方向)へ付勢する付勢するばね540の代わりに、他の弾性部材、例えばゴム部材等を用いてもよい。その際には、接触面にゴムの摩擦力を軽減する素材(樹脂や金属等の滑りをよくする部材)で覆うようにしてもよい。
【0051】
また、上記第一の実施形態から第三の実施形態に示された構成に限らず、例えば、図1に示す左側壁面溝412Lおよび右側壁面溝の両方またはいずれか片方に、筐体200と電気的に接触する部材を取り付けるようにしてもよい。このようにして左側ギヤ部500あるいは右側ギヤ部との電気的な導通を確保することで、ディスプレイ部100からの不要輻射の抑制が可能である。もちろん、図1に示す左側壁面溝412Lおよび右側壁面溝の両方またはいずれか片方を、筐体200と電気的に接触する部材で構成するようにしてもよい。
【0052】
また、上記第一の実施形態から第三の実施形態に示された構成においては、スライド機構においてもアースを行うものであってもよい。具体的には、ディスプレイ支持部取付け部を、ディスプレイ部100の内部の電子機器の基板のGND端子と電気的に接触するように構成し、筐体と電気的に接触するスライド部材300と当該ディスプレイ支持部取付け部とが電気的に接触するようにしてもよい。
【0053】
また、上記第一の実施形態から第三の実施形態に示された構成のうち、いずれかの任意の構成を一つだけ適用してもよいし、複数の構成を組み合わせて適用しても良い。例えば、左右両方のギヤ部を電気的に接触させるものに限らず、片方のみ、例えば左側ギヤ部500のみに対して筐体200と電気的接触を持つようにしてもよい。すなわち、それぞれの部材の大きさ、重さ、位置、コスト、等によりどの構成を採用するか決めることができる。
【符号の説明】
【0054】
1・・・車載器、100・・・ディスプレイ部、200・・・筐体、300・・・スライド部材、320・・・アーム部、400・・・インナーエスカッション、411L・・・左側壁面、412L・・・左側壁面溝、413F・・・前面側縁、413B・・・後面側縁、500・・・左側ギヤ部、510・・・軸、520・・・ギヤ、530・・・ガイド、530B・・・円形面、540・・・ばね、610・・・軸、620・・・外側ギヤ、621・・・凹部、630・・・内側ギヤ、631・・・凹部、640・・・スペーサー、650・・・はさみばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示面を有するディスプレイ部と、
前記ディスプレイ部を収納するインナーエスカッションと、
前記ディスプレイ部の傾き動作を行うためのチルト機構と、を備え、
前記インナーエスカッションの側面には、溝部が設けられており、
前記溝部は、前記ディスプレイ装置の筐体との電気的導通が可能な素材で構成される波状の突起を有する壁面を備え、
前記ディスプレイ部は、側面に、前記溝部の壁面の突起に嵌るギヤ部を回転可能に備え、
前記ギヤ部は、前記ディスプレイ部との電気的導通が可能な素材で構成され、前記溝部の底面方向に力を発生させる弾性部材により付勢されている、
ことを特徴とする車載用ディスプレイ装置。
【請求項2】
画像表示面を有するディスプレイ部と、
前記ディスプレイ部を収納するインナーエスカッションと、
前記ディスプレイ部の上方部を前記インナーエスカッションとの距離を所定に保ちつつ移動させるとともに、前記ディスプレイ部の下方部を前記インナーエスカッションとの距離が変化するように移動させることにより、前記ディスプレイ部の傾き動作を行うチルト機構と、を備え、
前記インナーエスカッションの側面には、溝部が設けられており、
前記溝部は、前記ディスプレイ装置の筐体との電気的導通が可能な素材で構成される波状の突起を有する壁面を備え、
前記ディスプレイ部は、側面に、前記溝部の壁面の突起に嵌るギヤ部を回転可能に備え、
前記ギヤ部は、前記ディスプレイ部との電気的導通が可能な素材で構成され、前記溝部と嵌め合わされることで上下方向に移動を制限され、前記溝部の底面方向に力を発生させる弾性部材により付勢されている、
ことを特徴とする車載用ディスプレイ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車載用ディスプレイ装置であって、
前記弾性部材は、
前記ディスプレイ部のギヤ部を前記インナーエスカッションの内壁面方向に押し付ける力を発生させるばねである
ことを特徴とする車載用ディスプレイ装置。
【請求項4】
請求項1または3に記載の車載用ディスプレイ装置であって、
前記ディスプレイ部の前記ギヤ部は、前記インナーエスカッションの溝部の前記突起に沿って回転しながら上下方向にスライド移動可能であり、
前記ギヤ部は、前記弾性部材との間にガイド部を備え、
前記ガイド部は、前記ギヤ部側から前記弾性部材側に向かって直径が大きくなる円柱状の部材である、
ことを特徴とする車載用ディスプレイ装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車載用ディスプレイ装置であって、
前記チルト機構は、前記ディスプレイ部の下方部とヒンジ結合し、かつ前記インナーエスカッションの主面に対して直行方向にスライド移動可能なスライド部材を含んで構成される、
ことを特徴とする車載用ディスプレイ装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車載用ディスプレイ装置であって、
前記スライド部材は、モータによりギアを介してスライド移動がなされる
ことを特徴とする車載用ディスプレイ装置。
【請求項7】
画像表示面を有するディスプレイ部と、
前記ディスプレイ部を収納するインナーエスカッションと、
前記ディスプレイ部の傾き動作を行うためのチルト機構と、を備え、
前記インナーエスカッションの側面には、溝部が設けられており、
前記溝部は、前記ディスプレイ装置の筐体との電気的導通が可能な素材で構成される波状の突起を有する壁面を備え、
前記ディスプレイ部は、側面に、前記溝部の壁面の突起に嵌るギヤ部を回転可能に備え、
前記ギヤ部は、
前記ディスプレイ部との電気的導通が可能な素材で構成され、
前記ディスプレイ部の外側面から、前記ディスプレイ部のチルト動作における移動方向の直交方向と平行な方向に突出する軸を共通の回転の軸とする第一のギヤと第二のギヤとを有し、
前記第一のギヤと、前記第二のギヤとは、回転による位相のずれを補正するための位相調整手段を備える、
ことを特徴とする車載用ディスプレイ装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車載用ディスプレイ装置であって、
前記位相調整手段は、はさみばねを含んで構成される、
ことを特徴とする車載用ディスプレイ装置。
【請求項9】
画像表示面を有するディスプレイ部と、
前記ディスプレイ部を収納するインナーエスカッションと、
前記ディスプレイ部の傾き動作を行うためのチルト機構と、を備え、
前記インナーエスカッションの側面には、溝部が設けられており、
前記溝部は、前記ディスプレイ装置の筐体との電気的導通が可能な素材で構成される波状の突起を有する壁面を備え、
前記ディスプレイ部は、側面に、前記溝部の壁面の突起に嵌るギヤ部を回転可能に備え、
前記ギヤ部は、
前記ディスプレイ部との電気的導通が可能な素材で構成され、前記溝部の底面方向に力を発生させる弾性部材により付勢されており、
前記ディスプレイ部の外側面から、前記ディスプレイ部のチルト動作における移動方向の直交方向と平行な方向に突出する軸を共通の回転の軸とする第一のギヤと第二のギヤとを有し、
前記第一のギヤと、前記第二のギヤとは、回転による位相のずれを補正するための位相調整手段を備える、
ことを特徴とする車載用ディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−6558(P2013−6558A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141815(P2011−141815)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】