説明

車載用機器昇降装置

【課題】この発明は、簡易な構成で、外部からの熱の影響を受けることなく、信頼性の高い高精度な位置決めを実現し得るようにすることにある。
【解決手段】伸縮ポール11のオイル排出管143に配した作動オイル排出に供する下降用バルブ20を、車両10の走行時に開に設定し、車載用機器12の運用時に閉に設定するようにして、車両10の走行時、油圧機構の作動オイルが温度上昇等により体積が膨張した場合、作動オイルの膨張分が下降用バルブ20を通ってオイル排出管143からオイルタンク15に排出されて油圧を所期状態に保つたうえで、車載用機器12の運用時における確実な位置決めを行うように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば送受信機等の車載用機器を車両に伸縮自在に配置するのに用いられる車載用機器昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の車載用機器昇降装置は、車載用機器の設置される伸縮ポールが車両に伸縮駆動自在に立設され、この伸縮ポールが油圧機構を介して伸縮駆動される(例えば、特許文献1参照。)。そして、この伸縮ポールは、その昇降(伸縮)により、車載用機器を、車両の走行が可能な収納位置、及び収納位置から上昇させた運用位置(未収納位置)に移動案内する。
【0003】
ところで、このような車載用機器昇降装置は、車両に搭載される構成上、車両走行時、搭載機器を下降させた収納位置に配置して電源系をオフ制御し、運用時においても、調整が完了されると、一旦、電源系をオフ制御して油圧機構の駆動を停止させて搭載用機器の運用に供される。そして、機器運用時において、車載用機器の伸縮調整を行う必要が生じた場合には、再び、電源系をオンさせて油圧機構を駆動可能に設定して、油圧機構を駆動操作し、伸縮ポールを昇降調整するようにして、使用上における安全が得られるように構成される。
【0004】
しかしながら、上記車載用機器昇降装置では、例えば車両の走行時、車両のエンジンや環境温度等の外部からの熱により、油圧機構の作動オイルの温度が上昇して、その体積が膨張し、収納位置にある伸縮ポールを上昇させるという不都合を有する。
【0005】
このような油圧機構における温度変化による誤作動を防止する油圧制御手段としては、油圧式遠隔操縦装置における油圧回路内に、専用の調相弁を配して、この調相弁により油圧を一定圧に保つように構成したり、あるいは起動ピストンの固定ピストンに油導通用の細穴を設けて、起動ピストンの中立位置において、この固定ピストンの細穴、左右の油室を経由して加圧油槽に連通させることで、油圧回路を一定圧に保つように構成したものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2004−19176号公報
【特許文献2】特開平5−312205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記油圧制御手段では、車載用機器昇降装置の走行時における車両のエンジンや環境温度等の外部からの熱による作動オイルの膨張による誤作動を防止するのに適用する場合、調相弁を配して構成すると、部品点数が多くなり、油圧回路が複雑となるという問題を有する。また、起動ピストンに、油導通用の細穴を形成する構成では、その加工処理が面倒であるうえ、油圧回路が複雑となるという問題を有する。
【0007】
この発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、簡易な構成で、且つ、外部からの熱の影響を受けることなく、信頼性の高い高精度な位置決めを実現し得るようにした車載用機器昇降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、車載用機器を支持して車両に伸縮自在に配置される伸縮ポールを、前記車載用機器の運用位置及び収納位置に伸縮制御する油圧機構と、この油圧機構に作動オイルを供給制御して前記伸縮ポールを上昇駆動し、前記油圧機構に供給した作動オイルを排出制御して前記伸縮ポールを下降駆動する、前記車両の走行時及び前記車載用機器の運用時にオフ制御される油圧制御手段と、前記油圧機構のオイル排出管に設けられ、前記車両の走行時に開され、前記車載用機器の運用時に閉される開閉操作自在なバルブ手段とを備えて車載用機器昇降装置を構成した。
【0009】
上記構成によれば、車両の走行時、油圧機構の作動オイルが、車両エンジンや環境温度等の外部からの熱により体積が膨張すると、該作動オイルの膨張分がバルブ手段を通ってオイル排出管に排出されることにより、油圧機構の誤作動による伸縮ポールの上昇が防止される。従って、車両の走行時、車両エンジンからの熱や環境温度等の外部からの熱の影響を受けることが無く、信頼性の高い確実な収納保持が可能となり、安全な走行を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
以上述べたように、この発明によれば、簡易な構成で、且つ、外部からの熱の影響を受けることなく、信頼性の高い高精度な位置決めを実現し得るようにした車載用機器昇降装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1及び図2は、この発明の一実施の形態に係る車載用機器昇降装置の外観構成を示すもので、図1は、走行自在な車両10の側部から見た状態を示し、図2は、車両10の上部から見た状態を示す。
【0013】
即ち、車両10には、伸縮ポール11が矢印方向(伸縮方向)に昇降自在に立設され、この伸縮ポール11の先端部には、車載用機器12が取付けられる。この車載用機器12は、上記車両10内に配置される機器ラック13に内装される図示しない制御部に接続される。この車載用機器12としては、例えば送受信機、カメラ等の光学機器、アンテナ装置等が含まれる。
【0014】
上記伸縮ポール11には、油圧機構を構成する油圧ユニット14及びオイルタンク15が配管接続され、作動オイルの供給・排出に連動して伸縮(昇降)される。この油圧ユニット14には、図3に示すように作動オイル管141が設けられ、この作動オイル管141は、その一端が上記伸縮ポール11のオイル給排出口に連結される。そして、この作動オイル管141の他端には、オイル吸引管142及びオイル排出管243の各一端が連結される。
【0015】
このうちオイル吸引管142には、吸引ポンプ16が逆止弁17を介して接続され、この吸引ポンプ16の吸引側には、上記オイルタンク15のオイル吸引口が連結される。この吸引ポンプ16には、駆動モータ18が連結され、この駆動モータ18には、油圧制御手段である油圧制御部19が接続される。
【0016】
油圧制御部19は、例えば上記機器ラック13内に配置され、上記駆動モータ18を駆動して吸引ポンプ16を吸引駆動する。吸引ポンプ16は、オイルタンク15に貯蓄される作動オイルを、オイル吸引管142を通して吸引し、逆止弁17を経由して作動オイル管141に供給し、上記伸縮ポール11を上昇(伸長)駆動する。
【0017】
上記逆止弁17は、閉に設定されており、上記吸引ポンプ16を介してオイルタンク15の作動オイルがオイル吸引管142に導かれると、その圧力により開に切替わり、作動オイルを作動オイル管141に供給する。
【0018】
他方、上記オイル排出管143には、上記オイルタンク15のオイル供給口が、例えば電磁弁で形成されるバルブ手段である下降用バルブ20を介して連結される。この下降用バルブ20には、その信号入力端に上記油圧制御部19が接続され、この油圧制御部19からの切替信号に応動して開・閉切替え制御される。下降用バルブ20は、油圧制御部19を介して選択的に開・閉切替え設定されると、上記伸縮ポール11への作動オイルの供給、あるいは排出を可能として伸縮ポール11の上昇(伸長)・下降(収縮)を実現して、搭載用機器12を伸縮移動させる。
【0019】
また、下降用バルブ20は、図示しない電源系がオフ制御されると共に、上記伸縮ポール11が収納位置に下降される車両10の走行時、開状態に設定されて作動オイルのオイル排出管143への排出を可能とする。そして、上記電源系がオフ制御されると共に、上記伸縮ポール11が上昇位置にある運用時、上記下降用バルブ20は、閉状態に設定されて伸縮ポール11の運用位置における位置決めを行う。この下降用バルブ20の走行時及び運用時における開・閉切替えは、例えば伸縮ポール11に配される図示しないリミットスイッチの検出情報に基づいて伸縮ポール11の収納位置及び運用位置を検出して行われる。
【0020】
なお、この車両10の走行時、及び車載用機器12の運用時における下降用バルブ20の開・閉切替えは、例えば上記油圧制御部19で、走行状態及び運用状態を判定して選択的に行うように構成しても良い。
【0021】
また、上記油圧ユニット14には、伸縮ポール11の収納を警告する図示しない警告手段である警報部が設けられ、伸縮ポール11が収納位置に到達していない未収納状態で、上記車両10が始動されると、この警報部(図示せず)が上記油圧制御部19を介して作動されて警告音を発生して、危険を知らせる。これにより、車両10の走行時における安全が確保される。なお、この警告部としては、警告音に代えて警告を表示するようにしても良い。
【0022】
上記構成において、車両10を走行して目的地等に移動する場合には、伸縮ポール11を下降させた車載用機器12の収納位置において、後述するように下降用バルブ20を開状態に設定して、作動オイル管141を、オイル排出管143を介してオイルタンク15に連通させると共に、電源系をオフ制御し、車両10の走行が行われる。そして、車載用機器12を運用位置に昇降調整する場合には、車両10の走行を停止させ、電源系をオン制御して行われる。
【0023】
先ず、伸縮ポール11を上昇制御して車載用機器12を上昇させる場合には、例えば図示しないリモコンの上昇スイッチをオン操作する。すると、上記油圧制御部19は、下降用バルブ20を図4に示すように閉状態に切替えて、駆動モータ18を駆動して吸引ポンプ16を作動させる。
【0024】
ここで、吸引ポンプ16は、オイルタンク15からの作動オイルを、オイル吸引管142を通して吸引し、逆止弁17に案内する。逆止弁17は、作動オイルの圧力により閉状態から開状態となりオイル吸引管142から作動オイルを、作動オイル管141に送り込み伸縮ポール11を伸長させて車載用機器12を上昇させる。
【0025】
そして、伸縮ポール11の上昇を停止させる場合には、上記リモコン(図示せず)の上昇スイッチをオフ操作する。すると、上記駆動モータ18の駆動が停止されて、吸引ポンプ16の吸引動作が停止される。ここで、逆止弁17が、オイル吸引管142の圧力低下に伴って閉状態となり、オイルタンク15からオイル吸引管142を通って作動オイル管141への作動オイルの供給が停止される。これにより、伸縮ポール11は、上昇位置において位置決めされる。
【0026】
また、上記伸縮ポール11を下降制御する場合には、上記リモコン(図示せず)の下降スイッチをオン操作する。すると、油圧制御部19は、下降用バルブ20を、図5に示すように開状態に切替える。
【0027】
ここで、伸縮ポール11は、車載用機器12を含む重量により、その作動オイル管141内の作動オイルが排出され、その排出された作動オイルが、下降用バルブ20を通ってオイル排出管143からオイルタンク15に導かれて排出されることで下降される。この際、作動オイル管141からの作動オイルは、逆止弁17の作用によりオイル吸引管142への逆流が阻止されてオイル排出管143のみに流入される。
【0028】
そして、上記伸縮ポール11の下降動作を停止させる場合には、上記リモコン(図示せず)の下降スイッチをオフ操作する。すると、上記油圧制御部19は、下降用バルブ20を開状態から閉に切替えて、上記伸縮ポール11から排出される作動オイルのオイル排出管143からオイルタンク15への流出を停止させる。これにより、作動オイル管141からの作動オイルの排出が停止され、伸縮ポール11は、その下降動作が停止されて、その下降位置において位置決めされる。
【0029】
また、上述した伸縮ポール11の伸縮調整が完了した車載用機器12の運用、あるいは車両10の走行を行う場合には、それぞれ上記電源系がオフ制御されて、上記下降用バルブ20が、図6に示す手順で開・閉切替え設定される。
【0030】
即ち、ステップS1において、上記電源系がオフ制御される。すると、ステップS2において、例えば上記油圧制御部19は、伸縮ポール11が収納位置にあるか否かを判定して、ノオを判定すると、車載用機器12の運用状態である上昇(伸長)位置にあるものとして、上記下降用バルブ20を図7に示すように閉状態に設定する(ステップS3)。ここで、伸縮ポール11は、運用位置に位置決めされて運用準備が完了される。これにより、伸縮ポール11に配した車載用機器12は、伸縮ポール11を介して運用位置に位置決めされ、運用に供される。
【0031】
この伸縮ポール11の運用位置において、再度、昇降調整を行う場合には、上述したように再び、下降用バルブ20を選択的に切替え制御すると共に、駆動モータ28を選択的に駆動制御して、その昇降位置を調整し、その後、同様に下降用バルブ20が閉に設定されて、電源系がオフ制御されて車載用機器12による運用が行われる。
【0032】
また、上記ステップS2において、油圧制御部19は、伸縮ポール11が下降された収納位置にあるイエスを判定すると、上記下降用バルブ20は、図3に示すように開状態に設定される(ステップS4)。ここで、伸縮ポール11に連結される作動オイル管141は、下降用バルブ20及びオイル排出管143を介してオイルタンク15に連通され、車両10の走行準備が完了される。
【0033】
この状態で車両10の走行が行われる。この際、作動オイル管141内の作動オイルは、車両エンジンからの熱や環境温度が上昇して、熱量が熱伝達されると、温度が上がり、その体積が膨張される。すると、この作動オイル管141内の作動オイルは、その膨張分だけが、下降用バルブ20を通りオイル排出管143に導かれてオイルタンク15に排出される。
【0034】
これにより、伸縮ポール11は、車両エンジンからの熱や環境温度等の外部からの熱が熱伝達されても、上昇されることが無くなり、所期の収納位置に確実に位置決め保持され、車両10の走行時における安全が得られる。
【0035】
このように、上記車載用機器昇降装置は、伸縮ポール11のオイル排出管143に配した作動オイル排出に供する下降用バルブ20を、車両10の走行時に開に設定し、車載用機器12の運用時に閉に設定するようにして、車両10の走行時、油圧機構の作動オイルが温度上昇等により体積が膨張した場合、作動オイルの膨張分が下降用バルブ20を通ってオイル排出管143からオイルタンク15に排出されて油圧を所期状態に保つたうえで、車載用機器12の運用時における確実な位置決めを行うように構成した。
【0036】
これによれば、車両10の走行時、車両エンジンからの熱や環境温度等の外部からの熱の影響を受けることなく、所期の油圧が確保されて、走行中における油圧機構の誤作動による伸縮ポール11の上昇(伸長)を確実に防止することができる。この結果、簡単な構成を確保したうえで、車両走行上における安全が図れ、しかも、運用時における車載用機器12の高精度な運用を実現することが可能となる。
【0037】
なお、上記実施の形態では、専用の油圧回路を用いて構成した場合で説明したが、これに限ることなく、車両に搭載される他の油圧機構の油圧回路と兼用するように構成することも可能である。
【0038】
よって、この発明は、上記実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得る。
【0039】
例えば実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の一実施の形態に係る車載用機器昇降装置の外観を車両の側部から見た状態を示した平面図である。
【図2】図1の外観を車両の上部から見た状態を示した平面図である。
【図3】図1の油圧ユニットの構成を示した油圧回路図である。
【図4】図3の伸縮ポールの上昇動作状態を示した油圧回路図である。
【図5】図3の伸縮ポールの下降動作状態を示した油圧回路図である。
【図6】図1の車両の走行及び車載用機器の運用を行う手順を説明するために示したフローチャートである。
【図7】図3の運用状態を示した油圧回路図である。
【符号の説明】
【0041】
10…車両、11…伸縮ポール、12…車載用機器、13…機器ラック、14…油圧ユニット、141…作動オイル管、142…オイル吸引管、143…オイル排出管、15…オイルタンク、16…吸引ポンプ、17…逆止弁、18…駆動モータ、19…油圧制御部、20…下降用バルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載用機器を支持して車両に伸縮自在に配置される伸縮ポールを、前記車載用機器の運用位置及び収納位置に伸縮制御する油圧機構と、
この油圧機構に作動オイルを供給制御して前記伸縮ポールを上昇駆動し、前記油圧機構に供給した作動オイルを排出制御して前記伸縮ポールを下降駆動する、前記車両の走行時及び前記車載用機器の運用時にオフ制御される油圧制御手段と、
前記油圧機構のオイル排出管に設けられ、前記車両の走行時に開され、前記車載用機器の運用時に閉される開閉操作自在なバルブ手段と、
を具備することを特徴とする車載用機器昇降装置。
【請求項2】
前記バルブ手段は、前記油圧制御手段のオフ制御状態において、前記伸縮ポールの収納状態で開され、前記伸縮ポールの未収納状態で閉されることを特徴とする請求項1記載の車載用機器昇降装置。
【請求項3】
前記バルブ手段は、手動切替え操作部を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の車載用機器昇降装置。
【請求項4】
前記車載用機器は、送受信機であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の車載用機器昇降装置。
【請求項5】
前記伸縮ポールが上昇位置にある状態で、前記車両が始動されると、該伸縮ポールの未収納を警告する警告手段を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の車載用機器昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−168483(P2007−168483A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365055(P2005−365055)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】