説明

車輪支持用ハブユニット

【課題】外輪の固定側フランジとナックルとの当接状態が不均等な場合でも、この当接状態に基づいて発生する歪が、前記外輪の外輪軌道の真円度を含む形状精度に影響を及ぼす事を防止できる構造を実現する。
【解決手段】前記固定側フランジ6aを構成する大径部18の軸方向内側面の基端部と、小径部19の軸方向内側面の全面に、対向する前記ナックル16の側面から離れる方向へ凹んだ凹溝20を、全周に亙り連続した状態で設ける。そして、組み付け状態でこの凹溝20を形成した部分と、前記ナックル16とを当接させない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車等の車両の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持する為に利用す
る、車輪支持用ハブユニットの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持する為に従来から、車輪支持用ハブユニットが使用されている。図5は、この車輪支持用ハブユニットの従来構造の第1例として、特許文献1に記載されたものを示している。この図5に示した車輪支持用ハブユニットは、外輪1と、ハブ2と、内輪3と、それぞれが転動体である複数個の玉4、4とを備える。このうちの外輪1は、内周面に第一、第二の外輪軌道5a、5bを、外周面に固定側フランジ6を、それぞれ有する。又、この固定側フランジ6は、軸方向に貫通する複数個のフランジ側取付孔7を有する。
【0003】
又、前記ハブ2は、外周面の軸方向外端(軸方向に関して外とは、自動車への組み付け状態で車両の幅方向外側を言い、図1、3〜5の左側。反対に、車両の幅方向中央側となる図1、3〜5の右側を、軸方向に関して内と言う。本明細書及び特許請求の範囲の全体で同じ。)寄り部分に回転側フランジ8を、軸方向中間部に第一の内輪軌道9aを、軸方向内端部に小径段部10を、それぞれ有する。又、前記ハブ2の外端部には、パイロット部と呼ばれる円筒部11を、このハブ2と同心に設けている。又、このハブ2の中心部には、スプライン孔12を設けている。
【0004】
又、上記内輪3は、外周面に第二の内輪軌道9bを有すると共に、上記ハブ2の小径段部10に、締り嵌めで、外嵌固定している。又、この状態で、上記内輪3の軸方向内端面を、このハブ2の軸方向内端部に形成したかしめ部14により抑え付けている。又、上記各玉4、4は、前記第一、第二の各外輪軌道5a、5bと上記第一、第二の各内輪軌道9a、9bとの間に、それぞれ複数個ずつ、転動自在に設けている。
【0005】
上述の様に構成する車輪支持用ハブユニットを自動車に組み付ける場合には、前記固定側フランジ6のフランジ側取付孔7を軸方向外側から挿通したボルト15を、懸架装置を構成するナックル16に形成したねじ孔17に螺合し、更に締め付ける。尚、ナックル16の側に設けた通孔に挿通したボルトを、固定側フランジ6のねじ孔に螺合し、更に締め付ける場合もある。何れにしても、前記外輪1を前記ナックル16に結合固定すると共に、等速ジョイントに結合した駆動軸であるスプライン軸(図示せず)を、上記スプライン孔12に係合させる。又、車輪を構成するホイール並びに制動装置を構成するディスク等の制動用回転部材(図示せず)を、上記円筒部11に外嵌した状態で、上記回転側フランジ8に結合固定する。尚、図5に示した構造は、駆動輪(FF車の前輪、FR車の後輪、4WD車の全車輪)用の車輪支持用ハブユニットである為、上記ハブ2の中心部に上記スプライン孔12を設けているが、従動輪(FF車の後輪、FR車の前輪)用の車輪支持用ハブユニットの場合には、ハブの中心部にスプライン孔を設けない(特許文献2参照)。
【0006】
ところで、前記固定側フランジ6を取り付ける前記ナックル16の軸方向外側面(図5の左側面)は、鍛造又は鋳造により成形した後、機械加工等により精度良く仕上げられている場合もあるが、軽量化の為にプレスした鋼板を溶接して組み上げられたり、防錆の為に厚く塗装が施されている場合がある。この様な場合、前記ナックル16の軸方向外側面は、表面の仕上げ精度が良くない(凹凸部、段部等が存在する)。その結果、前記固定側フランジ6と前記ナックル16の当接状態が不均等になる。
【0007】
上述の様に前記固定側フランジ6とナックル16との当接状態が不均等な場合、前記ボルト15を締め付けると、この固定側フランジ6が歪み、更にはこの歪みが前記外輪軌道5a、5bに伝わる。その結果、これら両外輪軌道5a、5bの真円度を含む形状精度が悪化する可能性がある。
【0008】
このような事情に対応して、特許文献3には、固定側フランジとナックルとの不均等な当接状態に基づいて発生する歪が、外輪軌道の真円度に影響を及ぼす事の防止を図った車輪支持用ハブユニットの構造が記載されている。この構造の場合、前記固定側フランジとして、円周方向に関して小径部と大径部とを交互に配置した非円形状のものを使用し、このうちの大径部の軸方向内側面(前記ナックルと対向する側面)の基端側部分(径方向内側部分)に、対向するこのナックルの側面から離れる方向に凹んだ凹部(窪み)を形成して、当該部分の軸方向に関する厚みを小さくしている。従って、前記固定側フランジを前記ナックルに組み付けた状態では、前記大径部の軸方向内側面に関しては、この軸方向内側面のうちの取付孔周辺と、前記ナックルの軸方向外側面とのみが当接する。一方、前記小径部には、凹部が形成されていない為、前記固定側フランジを前記ナックルに組み付けた状態では、前記小径部の軸方向内側面とナックルの軸方向外側面とが、ほぼ全面に亙り当接する。
【0009】
この様な構造によれば、前記固定側フランジと前記ナックルとの不均等な当接状態に基づいて生じた歪を、この固定側フランジの凹部を形成した部分(軸方向に関する厚みが小さい部分)で吸収する事ができる。その結果、この歪が、外輪軌道の真円度に影響を及ぼす事を抑えられる。
【0010】
但し、前記小径部の軸方向内側面とナックルの軸方向外側面とは、ほぼ全面に亙り当接している。この為、この小径部の軸方向内側面とこのナックルの当接状態が不均等である場合、この当接状態に基づいて発生する歪により、前記外輪軌道の真円度を含む形状精度が悪化する可能性がある。又、前記窪みは、高い応力が作用する前記大径フランジの基端部にのみ形成されている。この為、この窪み部分に応力集中が発生し、耐久性が低下する可能性がある。
【0011】
又、前記特許文献3には、前記窪みの加工方法に関する記載はないが、この窪みを、例えば、熱間鍛造により形成する場合、この窪み部分の表面の炭素濃度が低下する、所謂脱炭が発生する可能性がある。この為、耐久性が低下する可能性がある。一方、円周方向に不連続な形状を有する前記窪み部分を、切削加工等の機械加工で形成する事は面倒で、しかもバイト等の工具に掛ける負担も大きくなり、加工コストが嵩んでしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−320323号公報
【特許文献2】特開2010−175079号公報
【特許文献3】特開2006−7820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、車輪支持用ハブユニットを構成する外輪の固定側フランジと懸架装置との当接状態が不均等な場合でも、この当接状態に基づいて発生する歪が、前記外輪の内周面に存在する外輪軌道の、真円度を含む形状精度に悪影響を及ぼす事の防止を図れる構造を、低コストで実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の車輪支持用ハブユニットは、前述した従来構造の車輪支持用ハブユニットと同様に、外輪と、ハブと、複数の転動体とを備える。
このうちの外輪は、外周面に懸架装置に結合固定する為の固定側フランジを、内周面に複列の外輪軌道を、それぞれ有する。
又、前記ハブは、外周面の軸方向外端寄り部分に回転側フランジを、外周面の軸方向中間部に複列の内輪軌道を、それぞれ有する。尚、これら両内輪軌道は、前記ハブの外周面に直接形成するだけでなく、前記ハブに外嵌固定した部材(内輪部材等)の外周面に形成する事もできる。
又、前記各転動体は、前記複列の外輪軌道と複列の内輪軌道との間に、それぞれ複数個ずつ転動自在に設けられている。
【0015】
特に、本発明の車輪支持用ハブユニットに於いては、前記固定側フランジが、円周方向に関して大径部と小径部とを交互に配置した、非円形状である。
このうちの大径部は、前記外輪の外周面の円周方向複数個所に設けられ、それぞれにフランジ側取付孔(ねじ孔又は通孔)が形成されている。
又、前記小径部は、円周方向に隣り合う前記各大径部同士の間に、隣り合う大径部と連続した状態で形成されている。
更に、前記大径部の軸方向内側面の基端寄り部分、及び、前記小径部の軸方向内側面の全面に、前記懸架装置に組み付けた状態で、これら各部の軸方向内側面が対向する、この懸架装置の軸方向外側面と当接しない、非当接部を形成している。
【0016】
又、本発明の車輪支持用ハブユニットを実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した発明の様に、前記非当接部を、前記大径部の軸方向内側面の基端寄り部分及び前記小径部の軸方向内側面の全面に、機械加工により全周に亙り連続した状態で形成した凹溝により構成する。
又、上述の様な請求項2に記載した発明を実施する場合に好ましくは、前記凹溝の最深部を、前記大径フランジ及び小径フランジの何れにも存在させる。尚、最深部とは、凹溝の底部のうち、対向する懸架装置の側面から軸方向に関して最も遠くなる位置を言う。
【発明の効果】
【0017】
本発明の車輪支持用ハブユニットによれば、固定側フランジと懸架装置との当接状態が不均等な場合にも、この当接状態に基づいて発生する歪が、外輪の外輪軌道の真円度を含む形状精度に悪影響を及ぼす事を有効に防止できる。即ち、前記固定側フランジの大径部の軸方向内側面の基端寄り部分及び小径部の軸方向内側面の全面に、懸架装置に組み付けた状態で、この懸架装置の側面と当接しない非当接部を設けている。言い換えると、懸架装置に組み付けた状態で、前記固定側フランジの軸方向内側面のうち、前記大径部のフランジ側取付孔の周辺部分のみが、前記懸架装置の軸方向外側面と当接する。その結果、前記固定側フランジとこの懸架装置との当接面積が狭くなり、前記懸架装置の表面の性状に基づく歪の影響の度合いを小さくする事ができる。
又、前記固定側フランジと懸架装置との不均等な当接状態に基づく歪が発生した場合でも、前記非当接部が形成された部分でこの歪を吸収できる。即ち、この非当接部を設けた部分は、他の部分と比べて弾性変形し易く、この弾性変形に基づいて前記歪を吸収する事ができる。その結果、この歪が、前記外輪軌道の真円度を含む形状精度に影響を及ぼす事を有効に防止できる。
【0018】
又、請求項2に記載した発明の場合、機械加工(例えば、旋削加工等)により前記非当接部を構成する凹溝を形成している。この為、熱間鍛造等で凹溝を形成する場合とは異なり、この凹溝の表面の炭素濃度が低下する、所謂脱炭が発生する事を防止できる。その結果、この凹部の表面の性状を良好にでき、応力集中が発生する事を防止できる。
又、前記凹溝は、前記固定側フランジの全周に亙り連続した状態で形成されている。この為、この凹溝を、一般的な旋削加工により容易に形成でき、前記特許文献3に記載された発明構造の窪みの様な形状を機械加工で形成する場合と比べて、加工コストを抑える事ができる。
又、前記固定側フランジの軸方向内側面に仕上加工を施す際に、この仕上加工と同時に、同一の加工工具により前記凹溝を形成する事ができる。この為、加工コストをより一層低減する事ができる。
又、請求項3に記載した発明によれば、前記大径部及び小径部に形成した凹溝の最深部の性状を良好にして、応力集中が発生する事の防止を有効に図る事ができる。即ち、前記凹溝の最深部は、機械加工(切削加工等)により全周に亙り連続した状態で形成している。この為、この凹溝を、所謂連続切削加工により行う事ができる。その結果、前記凹溝の円周方向に関する輪郭形状を安定させて、応力集中が発生する事の防止を有効に図る事ができる
更に、前記凹溝の加工を前記連続切削加工により行える。この為、切削状態と非切削状態とが交互に発生する様な所謂断続切削加工の場合と比べて、加工工具の損傷が発生する事を抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す、車輪支持用ハブユニットの断面図。
【図2】同じく、外輪のみを取り出して、図1の右側から見た図。
【図3】同じく、図1のX部拡大図(A)と、Y部拡大図(B)。
【図4】本発明の実施の形態の第2例を示す、図3と同様の図。
【図5】従来構造の1例を示す、車輪支持用ハブユニットの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[実施の形態の第1例]
図1〜3は、総ての請求項に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例の構造を含めて本発明の特徴は、車輪支持用ハブユニットを懸架装置(ナックル)に固定する為に設けられた、外輪の固定側フランジの構造を工夫した点にある。又、本発明は、前述した特許文献1に記載された駆動輪用の車輪支持用ハブユニット及び前記特許文献2に記載された従動輪用の車輪支持用ハブユニットの何れの構造にも適用する事ができる。この為、本発明の特徴部分以外の構造で、前記特許文献1又は特許文献2に記載された構造と同等部分に関する説明は、省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
【0021】
本例の車輪支持用ハブユニットは、前記特許文献2に記載された構造と同様に、従動輪用の車輪支持用ハブユニットであり、この車輪支持用ハブユニットを構成する外輪1aは、内周面に第一、第二の外輪軌道5a、5bを有する。又、外周面の軸方向内端寄り部分に、この外周面から径方向外方へ突出した状態で設けられた固定側フランジ6aを有する。
【0022】
この固定側フランジ6aは、大径部18、18と、小径部19、19とを、円周方向に関して交互に配置して成る。
このうちの大径部18、18は、前記外輪1aの外周面の円周方向複数個所(本例の場合4箇所)に設けられている。又、前記各大径部18、18の径方向中間部に、それぞれこれら各大径部18、18を軸方向に貫通した状態で、フランジ側取付孔7a、7aが形成されている。これらフランジ側取付孔7a、7aは、ねじ孔若しくは通孔である。
【0023】
又、前記小径部19、19は、前記各大径部18、18よりも径方向に関する寸法(当該部分に関する外接円の直径)が小さく、円周方向に隣り合うこれら各大径部18、18同士の間に、隣り合うこれら各大径部18、18と連続した状態で形成されている。
【0024】
又、前記各大径部18、18の軸方向内側面(図1の右側面)の基端寄り部分及び前記各小径部19、19の軸方向内側面(図1の右側面)の全面に、全周に亙り連続した状態で凹溝20が形成されている。この凹溝20は、旋削加工により形成したもので、前記固定側フランジ6aの軸方向内側面から、対向するナックル16の軸方向外側面から離れる方向(図1の左方向)に凹んだ状態で形成されている。尚、本例の場合、前記各大径部18、18に形成した凹溝20の径方向外端縁は、前記各小径部19、19の外端縁よりも径方向外方に位置している。但し、前記各大径部18、18に形成した凹溝20の径方向外端縁と、前記小径部19、19の外端縁とを径方向に関して同位置としても良い。即ち、全周に亙り凹溝20の径方向に関する幅を同じにしても良い。
【0025】
又、前記凹溝20の最深部21(ナックル16に組み付けた状態で、対向するこのナックル16の側面から軸方向に関して最も遠くなる部分)は、前記各大径部18、18及び各小径部19、19の何れにも存在している(図3参照)。即ち、前記凹溝20を旋削加工により形成する際、この最深部21は、円周方向に関して連続して形成する所謂連続旋削加工により形成する。
尚、上述した様に、前記各大径部18、18に形成した凹溝20の径方向外端縁と、前記小径部19、19の外端縁との径方向に関する位置を同じにすれば、前記凹溝20全体を、連続旋削加工により形成する事ができる。
【0026】
上述した様な本例の車輪支持用ハブユニットを、前記ナックル16に固定する場合、前記固定側フランジ6aの各フランジ側取付孔7a、7aと、このナックル16に形成したねじ孔17(各フランジ側取付孔7aがねじ孔である場合には通孔)とを整合させる。そして、これら各フランジ側取付孔7a、7aに軸方向外側から挿通したボルト15のねじ部を、前記ねじ孔17に螺合し、更に締め付ける。
【0027】
この状態で、前記固定側フランジ6aの軸方向内側面と、前記ナックル16の軸方向外側面とは、前記凹溝20以外の部分のみで当接する。即ち、この凹溝20は、前記各小径部19、19の軸方向内側面の全面に形成されている。この為、これら各小径部19、19が、前記ナックル16の軸方向外側面と当接する事はない。
一方、前記各大径部18、18の基端部には、前記凹溝20が形成されている。この為、前記各フランジ側取付孔7a、7aの周辺部分のみが、前記ナックル16の軸方向外側面に当接している。
【0028】
この様な本例の車輪支持用ハブユニットによれば、前記固定側フランジ6aの軸方向内側面と、前記ナックル16の軸方向外側面との不均等な当接状態に基づく歪が、前記外輪1aの外輪軌道5a、5bの、真円度を含む形状精度に悪影響を及ぼす事を防止できる。即ち、本例の車輪支持用ハブユニットの場合、前記固定側フランジ6aの軸方向内側面と、前記ナックル16の軸方向外側面とが、前記各大径部18、18の各フランジ側取付孔7a、7aの周辺部分のみで当接している。この為、前記特許文献3に記載された構造と比べて、前記固定側フランジ6aと前記ナックル16との当接面積が小さくできる。その結果、このナックル16の軸方向外側面の仕上げ精度が良くない場合でも、前記外輪1aがこの精度の影響を受ける度合いを小さくできる。
【0029】
又、前記固定側フランジ6aの軸方向内側面と前記ナックル16の軸方向外側面との不均等な当接状態に基づく歪が発生した場合でも、前記固定側フランジ6aの基端部に形成した凹溝20部分でこの歪を吸収する事ができる。即ち、この凹溝20が形成された部分は、他の部分と比べて弾性変形し易い。この為、前記歪をこの凹溝20が形成された部分の弾性変形により吸収できる。その結果、この歪が、前記外輪1aの外輪軌道5a、5bの、真円度を含む形状精度に影響を及ぼす事を有効に防止できる。
【0030】
又、前記凹溝20は、旋削加工により形成している。この為、熱間鍛造等で凹溝を形成する場合と比べて、凹溝の表面の炭素濃度が低下する所謂脱炭が発生する事を防止できる。その結果、この凹部の表面の性状を良好にでき、応力集中が発生する事を防止できる。
【0031】
又、前記凹溝20は、前記固定側フランジ6aの全周に亙り連続した状態で形成されている。この為、前記特許文献3の窪みの様な形状を機械加工で形成する場合と比べて、加工コストを抑える事ができる。
【0032】
又、前記固定側フランジ6aの軸方向内側面に仕上加工(旋削加工)を施す際に、この仕上加工と同時に、同一の加工工具により前記凹溝20を形成する事ができる。この為、加工コストをより一層低減する事ができる。
【0033】
又、前記凹溝20の最深部21は、前記各大径部18、18及び小径部19、19の何れにも存在する状態で形成されている。この為、前記最深部21は、連続旋削加工により形成する事ができる。その結果、この最深部21の円周方向に関する輪郭形状が安定して、応力集中が発生する事の防止を有効に図れる。
更に、前記最深部21の加工を前記連続切削加工により行える。この為、切削状態と非切削状態とが交互に発生する様な所謂断続切削加工の場合と比べて、加工工具の損傷を抑えられる。
【0034】
[実施の形態の第2例]
図4は、総ての請求項に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の車輪支持用ハブユニットの場合、外輪1bの固定側フランジ6bに形成した凹溝20aの最深部21aから径方向外端縁に掛けて、平坦部22を形成している。
この為、前記実施の形態の第1例の構造と比べて、前記凹溝20aの径方向外端縁と、ナックル16の軸方向外側面との軸方向に関する距離を大きくできる。その結果、前記固定側フランジ6bを前記ナックル16に固定する際、この固定側フランジ6bが、このナックル16に近付く方向に弾性変形した場合でも、前記凹溝20aの底部が、このナックル16の軸方向外側面と当接する事を確実に防止できる。その他の構造、及び作用、効果は前記実施の形態の第1例と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
前述した各実施の形態では、本発明を従動輪用の車輪支持用ハブユニットに適用した例に就いて説明したが、本発明は、前記特許文献1に記載されている様な、駆動輪用の車輪支持用ハブユニットに適用する事もできる。
【符号の説明】
【0036】
1、1a、1b 外輪
2 ハブ
3 内輪
4 玉
5a、5b 外輪軌道
6、6a、6b 固定側フランジ
7、7a フランジ側取付孔
8 回転側フランジ
9a、9b 内輪軌道
10 小径段部
11 円筒部
12 スプライン孔
13 面取り部
14 かしめ部
15 ボルト
16 ナックル
17 ねじ孔
18 大径部
19 小径部
20、20a 凹溝
21、21a 最深部
22 平坦部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪と、ハブと、内輪と、複数の転動体とを備え、
このうちの外輪は、外周面に懸架装置に結合固定する為の固定側フランジを、内周面に複列の外輪軌道を、それぞれ有するものであり、
前記ハブは、外周面の軸方向外端寄り部分に回転側フランジを、外周面の軸方向中間部に複列の内輪軌道を、それぞれ有するものであり、
前記各転動体は、前記複列の外輪軌道と複列の内輪軌道との間に、それぞれ複数個ずつ転動自在に設けられているものである車輪支持用ハブユニットに於いて、
前記固定側フランジは、大径部と、小径部とを円周方向に関して交互に配置した非円形であり、
このうちの大径部は、前記外輪の外周面の円周方向複数個所に設けられ、それぞれにフランジ側取付孔が形成されており、
前記小径部は、円周方向に隣り合う前記各大径部同士の間に、隣り合う大径部と連続した状態で形成されており、
この大径部の軸方向内側面の基端寄り部分及び前記小径部の軸方向内側面の全面に、前記懸架装置に組み付けた状態で、対向するこの懸架装置の軸方向外側面と当接しない非当接部が形成されている事を特徴とする車輪支持用ハブユニット。
【請求項2】
前記非当接部が、前記大径部の軸方向内側面の基端寄り部分及び前記小径部の軸方向内側面の全面に、機械加工により全周に亙り連続した状態で形成された凹溝から成るものである、請求項1に記載した、車輪支持用ハブユニット。
【請求項3】
前記凹溝の最深部が、前記大径部及び小径部の何れにも存在する、請求項2に記載した、車輪支持用ハブユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−228909(P2012−228909A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97183(P2011−97183)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】