説明

軌間計測装置

【課題】レール間に介装しておくのみで、脱線に繋がるような大きな軌間の狂いを簡易かつ的確に計測できるようにした軌間計測装置を提供する。
【解決手段】本発明は、軸方向に対向させた二つの筒体を、その一方から延出し他方に挿入した突杆を介してスライド結合し、該突杆が挿入された側の筒体内に、前記突杆の先端に設けた楔体の楔面に摺接し、前記両筒体の接近ないし離反に伴い突杆とともにスライドする楔体に追従変位する板状バネ体を設け、該板状バネ体の変位部位に歪ゲージを設置したことを特徴とし、レール間に介装するだけで近接工事等において生ずることのある軌間の狂いを的確に計測できるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接工事等において生ずることのある地盤変動、不同沈下その他の原因による影響により既設鉄道レールの軌間の狂いを計測するための軌間計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道レールの軌間(レール間の距離)の狂いは、走行する列車に動揺を与え、乗り心地を悪くするほか、脱線事故に繋がるおそれがあることから、特に、近接工事等に伴って地盤変動や不同沈下などが起こるおそれがある区間では、軌間の計測は極めて重要である。一般に軌間は、直線及び半径600mを越える曲線では、20(+14)mm、半径200m以上600mまでの曲線では、25(+19)mm、半径200m未満の曲線では、20(+14)mm(高速軌道検測車による動的値である。かっこ内は静的値である。)とその基準値が定められ、これを越える軌間の変位があるときは、列車を止める必要がある。
【0003】
上記軌間の計測装置として、特開平6−340258号が開示されていた。これは図5(a)の如く、一定の長さaを有する車軸51で支持された一対のフランジ付き車輪52で、レール53上を走行させ、該レール53と車輪52のフランジ52′との間隔の長さb、cに応じた信号をスリップリング54から演算ユニット55に出力できるように構成させていた。
【特許文献1】特開平6−340258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記装置において軌間の計測は、a+b+cで求められ、しかも、車軸長aは一定であるから、レール53と車輪52のフランジ52′との間隔b、cを求めればよいとし、車輪52のフランジ52′のレール対向面に、前記レール53との間隔を計測するためのセンサ56を、図5(b)の如く、埋設してなるが、これでは近接工事等において生ずることのある地盤変動や不同沈下などを原因として脱線に繋がるような大きな軌間の狂いを計測することは現実的に不可能であった。
【0005】

本発明は、上記の課題を解決するためのもので、その目的とするところは、レール間に介装しておくのみで、脱線に繋がるような大きな軌間の狂いを簡易かつ的確に計測できるようにした軌間計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、軸方向に対向させた二つの筒体を、その一方から延出し他方に挿入した突杆を介してスライド結合し、該突杆が挿入された側の筒体内に、前記突杆の先端に設けた楔体の楔面に摺接し、前記両筒体の接近ないし離反に伴い突杆とともにスライドする楔体に追従変位する板状バネ体を設け、該板状バネ体の変位部位に歪ゲージを設置したことを特徴とし、レール間に介装するだけで近接工事等において生ずることのある軌間の狂いを的確に計測できるように構成した。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、前記楔体が、前記突杆の先端面に着脱自在になっていることを特徴とし、楔体と突杆とを材質的に異ならせることができるように構成した。
【0008】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記板状バネ体が、前記楔体を挟んで対向するように筒体固定部材からほほぼ平行に延出し、各先端に楔体へ摺接するローラを備えたことを特徴とし、ほぼ平行な板状バネ体が楔体のスライドに伴って拡開/縮小するように対向的にスムーズに変位し、しかも、楔体に摺接するローラの転動作用により変位が極めて良好に行われるように構成した。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、近接工事等において生ずることのある地盤変動、不同沈下その他の原因による既設鉄道レールの軌間が、本願装置の設置点によって軌間が狭まると、板状バネ体が楔体の楔面の作用により外方に反らせられ(変位し)、その反った部位(変位部位)に設置した歪ゲージが、軌間が基準値より狭まったことの信号を出力する一方、軌間が拡大すると、板状バネ体が楔体の楔面の作用により内方に変位し、その変位部位に設置した歪ゲージが、軌間が基準値より拡大したことの信号を出力することから、近接工事等において生ずることのある地盤変動、不同沈下その他の原因による脱線に繋がるような既設鉄道レールの軌間の狂いの計測が的確にできるという優れた効果を奏するものである。
【0010】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記楔体が、前記突杆の先端面に着脱自在になっていることを特徴としているから、楔体を、突杆の材質とは無関係に摩耗に強い材料にて形成できるという優れた効果を奏するものである。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、前記板状バネ体が、前記楔体を挟んで対向するように筒体固定部材からほほぼ平行に延出し、各先端に楔体へ摺接するローラを備えたことを特徴としているから、ほぼ平行な板状バネ体が楔体のスライドに伴って拡開/縮小するように対向的にスムーズに変位し、しかも、楔体に摺接するローラの転動作用により変位が極めて良好に行われる結果、歪ゲージの感知性能がより高められるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1は本願軌間計測装置の要部の正面断面図、図2は本願軌間計測装置の要部の平面断面図、図3は本願軌間計測装置の設置状態を示す正面図、図4は本願軌間計測装置の設置状態を示す斜視図である。
【0013】
図において、1は本願軌間計測装置(以下、本願装置という)である。本願装置1は軸方向に対向させた二つの筒体2、3を、その一方の筒体2から延出した突杆4を他方の筒体3に挿入してスライド結合し、その突杆4が挿入された側の筒体3内に、前記突杆4の先端に設けた楔体5の楔面に摺接し、前記両筒体2、3の接近ないし離反に伴い突杆4とともにスライドする楔体5に追従変位する板状バネ体6を設け、該板状バネ体6の変位部位に歪ゲージ7を設置してなる。
【0014】
前記二つの筒体2、3は、図4の場合は、円筒形であるがこれに限らず、四角や多角筒体であってもよい。材質的にはステンレス、アルミニウムなどの金属材を使用して満足できるが、耐候性にして高強度、電気的に絶縁されるプラスチック材を用いることも可能である。
【0015】
前記突杆4は、一方の筒体2に対しては基端側がピン8を介して枢着され、他方の筒体3内に対してはスライド結合部9を介して挿入されている。このスライド結合部9は筒体3内に、内面にコロ(球体)10を保留した管状部材11を圧入してなる。このコロ保留の構造は具体的には図示していないが、管状部材11の内面に環状蟻溝を設け、該溝内に球体を転動可能に嵌入している。すなわち、突杆4の先端側はコロ10の転動により筒体3内をスムーズにスライドし、両筒体2、3が接近ないし離反作用が良好に行えるようにしている。
【0016】
前記楔体5は、前記突杆4の先端面に設けた凹部4aに基端側をピン12を介して着脱自在に嵌入し、突杆4の材質とは無関係に耐摩耗性の高い材料(たとえば、焼入れ鋼材)にて形成することができるようにしている。この楔体5は正面から見て二等辺三角形状になっている。換言すれば、上下面が先端に向けて細くなるような傾斜面(楔面)になっている。
【0017】
前記板状バネ体6は、基端6aを前記突杆4が挿入された側の筒体3内に締付部材(ネジ部材)13にて固着された固定部材14に固定され、先端6bがフリーになっているバネ鋼板からなる。この板状バネ体6は、前記楔体5の楔面(上下面)を挟んで平行に対峙するように設けられ、先端6bを二股にしてローラ15を軸支し、該ローラ15を介して楔体5の楔面に摺接させている。したがって、前記両筒体2、3が接近ないし離反すると板状バネ体6もそのバネ力により外方(拡開方向)ないし内方(縮小方向)に追従変位することとなる。
【0018】
前記歪ゲージ7は、前記板状バネ体6の初期セット位置、すなわち、板状バネ体6の先端6bに軸支したローラ15が、楔体5の楔面の中点に接しているときを“0”とし、前記両筒体2、3が接近ないし離反することに伴い、これに追従してローラ15が細い側あるいは太い側に転動移動することにより板状バネ体6が変位し、その曲げ量を変位量として電気的に変換してその値を信号として出力できるようになっている。
【0019】
すなわち、前記歪ゲージ7により得た計測値は、コンピュータ(図示せず)を介して累積(圧縮)され、グラフ化され、記憶される。また、プリンタ(図示せず)を作動させてプリントアウトさせることも可能である。さらに、累積値をリアルタイムに工事現場の監視モニター(図示せず)に表示したり、鉄道などの信号基地へ情報信号として発信したりすることができるようにしている。
【0020】
前記筒体3の上面及び下面には、本願装置1の要部(筒体3に設置の楔体5、該楔体5の楔面に摺接する板状バネ体6、該板状バネ体6の変位部位に設置した歪ゲージ7)を露出させる窓16が設けられ、該窓16から必要な調整ができるようになっている。
【0021】
次に、本願装置1の作用を説明する。まず、鉄道レールの近接部位の掘削工事等に伴い地盤変動等が予測される区間の鉄道軌道を構成する左右のレール17a、17bのベースに支持部材18a、18bを把持させ、該支持部材18a、18b間に前記区間にわたって適当な間隔を介して本願装置1を多数設置する。
【0022】
この場合、一方の筒体2の外端側を、前記支持部材18aに設けた突壁18a′との間は挿通したピン19にて結合し、他方の筒体3の外端側を、支持部材18bに接続プレート20を介してネジ21にて固定している。勿論、他の手段を用いて結合ないし固定してもよい。なお、22はマクラギ、23はバラストである。
【0023】
しかして、本願装置1が設置されたレール17a、17b間にて地盤の変動が生じた場合には、各本願装置1の設置点によっては軌間が狭まったり拡大したりする。すなわち、レール17a、17bの軌間が狭まると、板状バネ体6、6間に楔体5が深く入り込み、板状バネ体6を外方(拡開方向)に変位させ、その変位部位に設置した歪ゲージ7は、軌間が基準値より狭まったことの値を信号として出力する一方、軌間が拡大すると、板状バネ体6間から楔体5が引き抜かれる格好となり、板状バネ体6を内方(縮小方向)に変位させ、その変位部位に設置した歪ゲージ7は、軌間が基準値より拡大したことの値を信号として出力する。
【0024】
前記歪ゲージ7から出力された値はコンピュータにより累積され、グラフ化され、記憶される。その情報はリアルタイムに工事現場の監視モニタに表示させることもできるし、計測地点に接近中の列車に警報信号として発信することも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、近接工事等において生ずることのある地盤変動、不同沈下その他の原因による影響により既設鉄道レールの軌間(レール間の距離)の狂いを的確に計測かつ監視できるようにした軌間計測装置である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本願軌間計測装置の要部の正面断面図である。
【図2】本願軌間計測装置の要部の平面断面図である。
【図3】本願軌間計測装置の設置状態を示す正面図である。
【図4】本願軌間計測装置の設置状態を示す斜視図である。
【図5】従来装置を示し、(a)は断面図、(b)は部分拡大図である。
【符号の説明】
【0027】
1 本願軌間計測装置(本願装置)
2、3 筒体
4 突杆
5 楔体
6 板状バネ体
7 歪ゲージ
8 ピン
9 スライド結合部
10 コロ(球体)
11 管状部材
12 ピン
13 締付部材(ネジ部材)
14 固定部材
15 ローラ
16 窓
17a、17b レール
18a、18b 支持部材
19 ピン
20 接続プレート
21 ネジ
22 マクラギ
23 バラスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に対向させた二つの筒体を、その一方から延出し他方に挿入した突杆を介してスライド結合し、該突杆が挿入された側の筒体内に、前記突杆の先端に設けた楔体の楔面に摺接し、前記両筒体の接近ないし離反に伴い突杆とともにスライドする楔体に追従変位する板状バネ体を設け、該板状バネ体の変位部位に歪ゲージを設置したことを特徴とする軌間計測装置。
【請求項2】
前記楔体が、前記突杆の先端面に着脱自在になっていることを特徴とする請求項1に記載の軌間計測装置。
【請求項3】
前記板状バネ体が、前記楔体を挟んで対向するように筒体固定部材からほほぼ平行に延出し、各先端に楔体へ摺接するローラを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の軌間計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−263699(P2007−263699A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88232(P2006−88232)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(594144980)株式会社東京計測 (12)
【Fターム(参考)】