説明

軟質フィルムおよびその用途

【課題】柔軟性、耐傷付き性に優れた軟質フィルムを提供し、これを用いた耐汚染性および汚染除去性に優れた壁紙を提供すること。
【解決手段】融点が100℃以下の特定のプロピレン共重合体を主成分をした組成物から得られる軟質フィルム。さらには、基材上に、塩化ビニル樹脂またはポリオレフィン樹脂またはポリオレフィン樹脂組成物から形成される発泡層が積層された積層体の発泡樹脂層に、上記軟質フィルムを積層することにより壁紙とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の融点をもつプロピレン系共重合体を主成分とする組成物からなり、特定の弾性率を有する軟質フィルム、さらにはこの軟質フィルムを用いた耐傷付き性、耐汚染性、汚染除去性に優れた壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
壁紙は、紙基材の上に合成樹脂シートが表面側に貼り合わされた構造体になっているが、合成樹脂発泡シートとして塩化ビニル樹脂製のシートが広く使用されている。塩化ビニル樹脂シートは、成形加工性の良さ、難燃性を有すること、および低コストである利点が評価されて広く利用されている。しかし、塩化ビニル樹脂から得られる壁紙は、耐傷付き性、耐汚染性、汚染除去性に劣るため、これらを改良する方法が検討されている。
特開2000−281844号公報には、エチレン(共)重合体を主成分としたポリオレフィン樹脂組成物から形成される発泡樹脂層を基材に積層させた壁紙が開示されている。(特許文献1)
特開平9−193315号公報には、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂/ポリオレフィン樹脂からなる積層体に、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)を積層した壁紙が開示されている。(特許文献2)
特開2001−260287号公報には、発泡樹脂層にエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂フィルムが積層された壁紙が開示されている。(特許文献3)
これらの壁紙は塩化ビニル壁紙に比べ耐汚染性等に優れるが、実用的には未だ不充分であり、更なる改良が望まれている。
【特許文献1】特開2000−281844号公報
【特許文献2】特開平9−193315号公報
【特許文献3】特開2001−260287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは、耐傷付き性、耐汚染性、汚染除去性に優れた壁紙について、特定の発泡樹脂層に、プロピレン系共重合体からなる軟質フィルムを積層することにより上記課題を解決し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち本発明は、
示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が100℃以下のプロピレン系共重合体(a)90~100重量%およびエチレン系重合体(b)0〜90重量%からなる組成物から形成されるフィルムであり、JISK6781で測定される初期弾性率が500MPa以下であることを特徴とする軟質フィルムであり、
さらに本発明は、基材(A)上に、塩化ビニル樹脂またはポリオレフィン樹脂またはポリオレフィン樹脂組成物から形成される発泡樹脂層(B)が積層された積層体の発泡樹脂層に、請求項1記載の軟質フィルムが積層されてなることを特徴とする壁紙である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の軟質フィルムは、従来のポリプロピレン系フィルムと比較し柔軟性、耐引裂性に優れた軟質フィルムであり、また従来の低密度ポリエチレン系フィルムと比較しても柔軟性と強度のバランスに優れたフィルムである。
本発明の軟質フィルムを用いた壁紙は、カールが少なく耐傷つき性に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、特定の融点をもつプロピレン系共重合体を主成分とする樹脂組成物からなり、特定の弾性率を有する軟質フィルムに関する。さらに基材(A)上に、塩化ビニル樹脂またはポリオレフィン樹脂またはポリオレフィン樹脂組成物から形成される発泡樹脂層(B)が積層された積層体の樹脂層に、上記軟質フィルムが積層されてなることを特徴とする壁紙に関する。
【0007】
軟質フィルム
本発明の軟質フィルムは、DSC法により測定される融点(200℃にて5分間保持した後、降温速度−20℃/minで−20℃まで降温後、再度180℃まで20℃/minで昇温する際に観察されるときの吸熱ピーク)が100℃以下、好ましくは95℃以下、より好ましくは40〜90℃の範囲にあるプロピレン系共重合体(a)10〜100重量%、好ましくは20〜100重量%、より好ましくは30〜95重量%、エチレン系重合体(b)0〜90重量%、好ましくは0〜80重量%、より好ましくは5〜70重量%からなる樹脂組成物から形成され、JISK6781で測定される初期弾性率が500MPa以下、好ましくは480MPa以下、よりこのましくは450MPa以下であることを特徴とする。
【0008】
プロピレン系共重合体(a)は公知の立体規則性触媒を用いることができるが、特にメタロセン触媒を用いて重合されたものがフィルムのべた付きが少なく望ましい。この場合ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)から得られる分子量分布が1〜3の範囲を示す。
【0009】
またプロピレンとともに共重合されるコモノマーとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテンをはじめとする少なくとも1種以上の炭素数2〜20のα−オレフィン(プロピレンを除く)であるが、好ましくは1−ブテンもしくは1−ブテンを主成分とするものである。
【0010】
このようなプロピレン共重合体は例えば国際公開番号WO95/14717に記載されているような触媒を用いて得ることができる。このようなプロピレン共重合体は、該融点Tm(℃)と13C−NMRスペクトル測定にて求められるコモノマー構成単位含量M(モル%)が
146exp(−0.022M)≧Tm≧125exp(−0.032M)
の範囲にあるものが望ましく用いられる。
【0011】
プロピレン系共重合体(a)のASTM D−1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重下で測定したメルトフローレート(以下、MFR(230℃)と略記する)は1〜40(g/10分)、好ましくは3〜20(g/10分)の範囲にある。
【0012】
エチレン系重合体(b)は、エチレンを主成分とする共重合体であればあらゆるものを用いることが可能であるが、好ましくはエチレンと少なくとも1種の炭素数3〜20のαオレフィン、好ましくは炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体(エチレン・α―オレフィン共重合体)である。その分子構造は、直鎖状であってもよいし、長鎖または短鎖の側鎖を有する分岐状であってもよい。
【0013】
このようなエチレン・α―オレフィン共重合体のコモノマーとして使用される炭素数3から20のα−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンおよびそれらの組み合わせを挙げることができ、中でもプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。また、必要に応じて他のコノモマー、例えば1,6−ヘキサジエン、1,8−オクタジエン等のジエン類や、シクロペンテン等の環状オレフィン類等を少量含有してもよい。
【0014】
エチレン・α―オレフィン共重合体の密度(ASTM 1505 23℃)は0.850〜0.900g/cm3、好ましくは0.860〜0.897g/cm3、より好ましくは0.865〜0.895g/cm3である。
【0015】
エチレン・α―オレフィン共重合体のASTM D−1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重下で測定したメルトフローレート(以下、MFR(190℃)と略記する)は1〜150(g/10分)、好ましくは3〜75(g/10分)の範囲にある。エチレン・α―オレフィン共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布(Mw/Mn)が3以下、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.3以下である。
【0016】
このようなエチレン・α―オレフィン共重合体の製造法については特に制限はないが、ラジカル重合触媒、フィリップス触媒、チーグラー・ナッタ触媒、あるいはメタロセン触媒を用いて、エチレンとα−オレフィンとを共重合することによって製造することができる。特にメタロセン触媒を用いて製造された共重合体は通常分子量分布(Mw/Mn)が3以下であり、本発明に好ましく利用できる。
【0017】
上記プロピレン系共重合体(a)およびエチレン系重合体(b)からなる組成物には、必要に応じ耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、抗ブロッキング剤、スリップ剤、帯電防止剤、耐候安定剤、防曇剤、結晶核剤、塩基吸収剤、滑剤、難燃剤などを、本発明の目的を損なわない範囲で添加する事ができる。
【0018】
本発明の軟質フィルムは、上記プロピレン系共重合体(a)およびエチレン系重合体(b)からなる組成物を用い、インフレーション成形法やT-ダイ成形法など公知の成形方法によって製膜することができる。
フィルム厚みとしては、5〜1000μm、通常10〜500μmである。
【0019】
本発明の軟質フィルムは1軸ないしは2軸方向に延伸されていてもよい。また他の樹脂からなるフィルムや金属箔との積層体であってもよく、本発明のプロピレン系共重合体からなる軟質フィルムが少なくとも1層に用いられていればよい。積層体として用いる場合の他の樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエステルから得られるフィルム、その延伸フィルムや、これらのフィルムにアルミニウムやケイ素化合物を蒸着した金属蒸着フィルムを挙げることができる。このような積層体の製造方法としては、公知の共押出法、ドライラミネーション法、押出ドライラミネーション法あるいは真空蒸着などによる方法が好ましく利用できるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
また、上記本発明の軟質フィルムまたはその延伸フィルムに、直接アルミニウムやケイ素化合物を蒸着し、金属蒸着フィルムとして使用することも可能である。
【0021】
本発明の軟質フィルムは、柔軟性が望まれる用途に用いられることができ、例えばゴム原料の溶融袋、柔軟性・透明性・ガス透過性、ヒートシール性が優れることなどから野菜・菓子、パン等の食品や繊維等の包装用フィルム、壁紙等の発泡体あるいはその他建材の表皮材等に用いることができる。
【0022】
壁紙
本発明の壁紙は、基材(A)上に、塩化ビニル樹脂またはポリオレフィン樹脂またはポリオレフィン樹脂組成物から形成される発泡樹脂層(B)が積層された積層体の発泡樹脂層に、プロピレン系共重合体からなる軟質フィルムが積層されてなる。
【0023】
本発明の壁紙における基材(A)は、一般には紙基材が用いられる。紙基材としては、天然パルプや合成パルプから抄造した紙、それらに無機物を混ぜて混抄した紙など、壁紙に使用目的に沿って選択される。発泡樹脂層(B)(以下、発泡樹脂シート(層)と記載する場合もある)が、それ自身で耐水性、難燃性を有している場合は、紙基材に特にその性質を要求しなくても一般用途に使用できるが、基材(A)として無機物を含む難燃紙、例えば水酸化アルミニウム等を含む紙を使用すると一層難燃性が向上するので、安全性を高める上で好ましい。
上記基材(A)に積層して本発明の壁紙を構成する発泡樹脂層(B)は、塩化ビニル樹脂またはポリオレフィン樹脂またはポリオレフィン樹脂組成物から形成される。塩化ビニル樹脂またはポリオレフィン樹脂単独でも使用可能であるが、好ましくはポリオレフィン樹脂と難燃剤および/または無機フィラーからなるポリオレフィン樹脂組成物から形成される。さらに好ましくは、エチレン系(共)重合体を主成分としたポリオレフィン樹脂組成物である。エチレン系(共)重合体の具体例としては、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、エチレンと炭素数3〜20までのα−オレフィンとの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等、またはこれらの混合物を挙げることができる。
ポリオレフィン樹脂組成物に用いられるエチレン系(共)重合体の具体例としてはエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体単独または他のエチレン系(共)重合体との混合物が好ましい。エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体(エチレン系(共)重合体)の好ましいα−オレフィンとしては1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。またエチレン系(共)重合体の密度は0.850〜0.920g/cm3、好ましくは0.850〜0.900g/cm3、より好ましくは0.855〜0.890g/cm3であり、MFR(190℃)が0.1〜100g/10分、好ましくは1〜50g/10分である。このようなエチレン・α―オレフィン共重合体の製造方法については特許公開平10−212382号に記載されている。
ポリオレフィン樹脂組成物はエチレン系(共)重合体と高圧法低密度ポリエチレンとの樹脂組成物であることも好ましく、その場合、エチレン系(共)重合体が50〜90重量%、好ましくは60〜80重量%、高圧法低密度ポリエチレンが10〜50重量%、好ましくは20〜40重量%である。
【0024】
難燃剤としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水和酸化物を挙げることができる。無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム等を挙げることができるが、製品の品質と価格のバランスから炭酸カルシウムが好ましい。ポリオレフィン樹脂組成物に難燃剤および/または無機フィラーを含む場合、ポリオレフィン樹脂100重量部当たり難燃剤および/または無機フィラーを30〜200重量部、好ましくは50〜180重量部配合することができる。
【0025】
このような好ましい範囲の樹脂組成物を発泡樹脂層(B)とすることで、本発明の軟質フィルムとの接着強度が向上し、これらの層間に接着剤等の接着層が不要となり、難燃性、衛生性の面から好ましい。このような樹脂組成物には、本発明の壁紙としての性能を損なわない範囲で、必要に応じて他の合成樹脂やゴム、または酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、結晶核剤等、顔料、塩酸吸収剤等の添加物を含んでいてもよい。
【0026】
また、前記ポリオレフィン樹脂組成物の各成分および必要に応じて各種添加剤を、例えばヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、タンブラーミキサー、ロールや押出機等の混合機でブレンドした後、カレンダー成形、T−ダイ成形等の公知のシート成形機に供し、シートとすることが可能である。
【0027】
このような樹脂層に発泡剤を添加し、発泡温度および圧力条件下におくことによって発泡させることで、発泡樹脂層となる。発泡樹脂層の製造方法としては、予め発泡剤を添加した樹脂組成物から一旦未発泡シートを成形し、その後温度を上げて発泡樹脂シートへと変える方法を採用してもよく、または発泡剤を添加した樹脂組成物から直接発泡樹脂シートを得る方法であってもよい。
【0028】
使用可能な発泡剤としては、発泡樹脂シートの成形方法および成形温度を基準にして、化学発泡剤およびガス発泡剤(物理発泡剤)の中から適宜選ばれる。
【0029】
化学発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、ベンゾスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p‘−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等のヒドラジド化合物、ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、またはこれらの混合物等を例示することができ、これらは成形条件でそれ自身が分解して発泡成形用にガスを発生するものである。また、必要に応じてこれらの発泡剤とともに発泡助剤を使用してもよい。発泡助剤としては、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の亜鉛化合物、サリチル酸、フタル酸、しゅう酸等の有機酸などが挙げられる。
【0030】
ガス発泡剤(物理発泡剤)としては、炭酸ガス、ジフルオロジクロロメタンのようなハロゲン化炭化水素、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロブタン、シクロヘキサン等の炭化水素を例示することができ、これらは成形条件下でそれ自身がガスとなり、発泡成形に寄与するものである。ガス発泡剤(物理発泡剤)としては炭酸ガス、ブタンガス、フロンガスなどが適切である。発泡剤は、一種類を使用しても、あるいは複数種を併用してもかまわない。
【0031】
発泡シートの成形に際して、発泡剤を添加した樹脂組成物から一旦未発泡樹脂シートをロールまたはT−ダイを用いて成形し、その後その樹脂シートを発泡成形条件下に移すことによって発泡樹脂シートを製造する方法の場合には、ガス発泡剤よりも化学発泡剤の使用が好ましい。発泡成形については、エアーオーブンや加熱ロールの使用によって行うことができる。
【0032】
一方、樹脂組成物を押出機へ供給するとともに発泡剤を押出機の別の供給口から圧入して、ダイから直接発泡樹脂シートを成形する場合には、一般にガス発泡剤(物理発泡剤)が使用される。また、予め化学発泡剤を添加した樹脂組成物を押出機に供給し、同様にダイから直接発泡樹脂シートを引き取ることもできる。公知の発泡剤を添加し、発泡させることにより本発明の壁紙の発泡樹脂層(B)となる。発泡樹脂層(B)の厚みとしては、通常0.1〜2mm、好ましくは0.2〜1mmである。発泡シート層(発泡樹脂層(B))表面には印刷により、あるいはエンボス加工、シボ加工により壁紙としてのデザインが施される。
【0033】
このようにして得られる発泡樹脂シートは、前述の紙等の基材(A)と積層することによって本発明の構成の一部である積層体となる。
【0034】
基材(A)と発泡樹脂層(B)との積層体の製造は、例えば紙基材の上に予め発泡成形させた樹脂シートを重ね、両層間に接着剤を使用して積層してもよく、あるいは溶融ポリエチレン樹脂等を層間に押出すことによって圧着積層することもできる。また、別の方法として、紙基材の上に予め成形された未発泡の樹脂シートを積層接着しておき、あるいは紙基材上へ未発泡樹脂シートをラミネートして、その後この積層体を加熱炉や加熱ロールに通す等の発泡条件下におくことによって発泡させ、紙基材上に発泡樹脂シートが積層した積層体を得ることができる。その他に、紙基材上に、発泡剤を添加した樹脂組成物を押出機またはカレンダーロールから直接ラミネートして積層することもできる。
【0035】
前記のプロピレン系共重合体からなる軟質フィルムを積層する方法は、発泡樹脂層の間に接着剤を使用するドライラミネーション法、プロピレン系共重合体からなる軟質フィルムおよび/または発泡樹脂層を加熱ロール等で加熱して熱により積層する方法、またはプロピレン系共重合体からなる軟質フィルムの原料樹脂をダイスより押出し、溶融樹脂の状態にて発泡樹脂層と積層する押出ラミネーション法が使用できる。その他に、本発明の軟質フィルムに用いる組成物と、発泡樹脂層に用いる樹脂組成物を共押出法により積層することもできる。これらの中で、積層後の壁紙においてもカールが少ないことから押出ラミネーション法や熱により積層する方法が好ましく使用できる。また、予め未発泡樹脂層にプロピレン系共重合体からなる軟質フィルムを積層し、その後発泡させ、本発明の壁紙とすることもできる。
【0036】
本発明の壁紙として用いられる軟質フィルム層の厚みは1〜30μm、好ましくは2〜25μmである。
[実施例]
次に実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】
[実施例1]
MFR(190℃)が3.6g/10分、密度が0.885g/cm3のエチレン・1−ブテンランダム共重合体(1−ブテン含量19モル%)70重量%、MFR(190℃)が9.5g/10分、密度が0.917g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン30重量%、これら100重量部に対して、平均粒子径が0.8μmである炭酸カルシウム100重量部、さらに発泡剤としてアゾジカルボンアミド5重量部を加え、40mmφの押出機を兼備えたT−ダイ成形機にて、ダイス温度140℃で厚み130μmの未発泡樹脂シートを得た。得られた未発泡樹脂シートを目付量65g/m2の紙基材(普通紙)に140℃に加熱して貼り合わせた。さらにこれを210℃に設定した連続発泡炉に2分間通すことにより、発泡樹脂層の発泡倍率が4.5倍の積層体を得た。
【0038】
次に、以下の樹脂組成物からなる軟質フィルム(厚み20μm)をキャストフィルム成形機にて成形した(ダイス温度220℃)。
プロピレン系共重合体(a1):プロピレン・1−ブテン共重合体
ブテン含量:21%、Tm=81℃、MFR(230℃)=7g/10min
エチレン系重合体(b1):エチレン・1−ブテンランダム共重合体
MFR(190℃)=3.6g/10分、密度:0.885g/cm3

プロピレン系共重合体(a1)/エチレン系重合体(b1)=100/0 。
【0039】
上記積層体と上記プロピレン系共重合体からなる軟質フィルムを市販のアイロンにて熱ラミ(貼り合せ温度約120℃、軟質フィルムがアイロンに融着しないようにフッ素樹脂フィルムを使用)して壁紙サンプル1を得た。これを用いて以下の評価を行った。結果を表−1に示す。また、このとき用いた軟質フィルム(厚み50μm)の物性を表−2に示す。
【0040】
耐傷つき性 : 壁紙の裏と表とを擦り合わせ、ポリオレフィンフィルム面を観察し、傷付き性評価とした。
【0041】
接着強度 : 壁紙サンプルにガムテープを接着(接着面積10mm×10mm)させ、剥離させたときの軟質フィルムの剥離の有無
カール : 壁紙サンプルのTD方向における反り具合を観察し、カールの評価とした。
【0042】
[実施例2]
軟質フィルム用樹脂組成物を下記とし、実施例1と同様の評価を行った。
プロピレン系共重合体(a1):プロピレン・1−ブテン共重合体
ブテン含量:21%、Tm=81℃、MFR(230℃)=7g/10min
エチレン系重合体(b1):エチレン・1−ブテンランダム共重合体
MFR(190℃)=3.6g/10分、密度:0.885g/cm3

プロピレン系共重合体(a1)/エチレン系重合体(b1)=80/20 。
【0043】
[実施例3]
軟質フィルム用樹脂組成物を下記とし、実施例1と同様の評価を行った。
プロピレン系共重合体(a1):プロピレン・1−ブテン共重合体
ブテン含量:21%、Tm=81℃、MFR(230℃)=7g/10min
エチレン系重合体(b1):エチレン・1−ブテンランダム共重合体
MFR(190℃)=3.6g/10分、密度:0.885g/cm3

プロピレン系共重合体(a1)/エチレン系重合体(b1)=60/40 。
【0044】
[比較例1]
実施例1のプロピレン系共重合体からなる軟質フィルムのかわりに、以下のランダムポリプロピレンからなるフィルム(厚み20μm、貼り合せ温度190℃)を用い、実施例1と同様の評価を行った。
ランダムポリプロピレン:プロピレン−エチレン−ブテン共重合体
Tm=138℃、MFR(230℃)=7g/10min 。
【表−1】

【0045】

【表−2】

【0046】


本発明の軟質フィルムは、従来のポリプロピレン系フィルムと比較し柔軟性、耐引裂性に優れた軟質フィルムであり、また従来の低密度ポリエチレン系フィルムと比較しても柔軟性と強度のバランスに優れたフィルムである。
本発明の軟質フィルムを用いた壁紙は、カールが少なく耐傷つき性に優れたものとなる。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が100℃以下のプロピレン系共重合体(a)10〜100重量%およびエチレン系重合体(b)0〜90重量%からなる組成物から形成されるフィルムであり、JISK6781で測定される初期弾性率が500MPa以下であることを特徴とする軟質フィルム。
【請求項2】
プロピレン系共重合体(a)が、メタロセン触媒で得られるプロピレン−ブテン共重合体である請求項1記載の軟質フィルム
【請求項3】
基材(A)上に、塩化ビニル樹脂またはポリオレフィン樹脂またはポリオレフィン樹脂組成物から形成される発泡樹脂層(B)が積層された積層体の発泡樹脂層に、請求項1または2記載の軟質フィルムが積層されてなることを特徴とする壁紙。
【請求項4】
発泡樹脂層(B)がエチレン系(共)重合体および難燃剤および/または無機フィラーからなるポリオレフィン樹脂組成物であることを特徴とする請求項3記載の壁紙。







【公開番号】特開2006−1979(P2006−1979A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177496(P2004−177496)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】