説明

軟質ポリウレタンフォーム用材料の選択方法、及び軟質ポリウレタンフォーム成型体の製造方法

【課題】自動車用のシートクッションパッドとして使用したときに、硬度や反発弾性率を大きく変動させることなく、共振振動数を同等レベルに保ちつつ、2〜4Hz付近での共振倍率を低下させた軟質ポリウレタンフォーム成型体の選択方法、及びに軟質ポリウレタンフォーム成型体の製造方法を提供する。
【解決手段】発泡剤として水を含むポリオール成分とイソシアネート成分とからなる軟質ポリウレタンフォーム用材料の選択方法において、無発泡のポリウレタン成型体とした場合における周波数4.0Hzにおける貯蔵弾性率が10〜25N/mmの範囲となるように前記軟質ポリウレタンフォーム用材料を選択することを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム用材料の選択方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軟質ポリウレタンフォーム用材料の選択方法、及び軟質ポリウレタンフォーム成型体の製造方法に関する。特に本発明により得られる軟質ポリウレタンフォーム成型体は、その使用に際して振動を伴う車両、特に自動車用のシートクッションパッドに適する。
【背景技術】
【0002】
一般に、軟質ポリウレタンフォームは、そのクッション性を利用して自動車用のシートクッション材料、家具等のクッション材料等に広く利用されている。軟質ポリウレタンフォーム成型体は、表面が柔軟であるために座り心地がよく、かつ長時間の運転によっても、運転者に疲労が生じにくいものであり、軟質ポリウレタンフォーム成型体から成るシートクッションパッドは公知である。
【0003】
従来より、自動車用シートクッションの乗り心地性を向上させるためには、JASO B−407規定の振動伝達率特性に関して、人が不快と感じる振動数領域(4〜10Hz:評価値としては6Hzの振動伝達率が通常採用される)を大きく減衰させることが有効であるといわれている。特に6Hz前後の振動は、車酔いを起こす原因となる振動数といわれているため、ウレタンフォーム成型体からなる自動車用シートクッションパッドにおいても、前記振動伝達率を低く抑えるための開発が行われてきた。
【0004】
しかし、6Hzでの振動伝達率を低く抑えた従来のシートクッションパッドは、振動伝達率特性における、2〜4Hz付近に現れる共振倍率(共振ピーク)が大きいため、乗員が自動車用シートクッションに着座して走行する際に、車体の振動によって身体の安定感がなくなり、身体が上下に振れる感覚(いわゆるヒョコヒョコ感)を十分に防止することができなかった。
【0005】
こうした事情から、自動車をはじめとする車両用のシートクッションパッドは、乗員の車酔いや疲労を低減するために、6Hz付近での振動伝達率を低く抑えるだけでなく、運転操作時の安全性向上(シートクッションに着座時の安定性向上)も必要であり、より広い範囲の振動数においても低い振動伝達率を示すものが好ましいと考えられる。
【0006】
しかし、一般的に振動伝達率特性の2〜4Hz付近に現れる共振倍率を下げると、振動伝達率特性曲線(縦軸:振動伝達率、横軸:振動数)において、共振ピーク位置が高振動数側にシフトしてしまい、クッション性に関連する比較的高振動数側(たとえば、6Hz)での振動伝達率が上昇し、結果として全体的にブロードな好ましくない振動伝達率特性曲線となる。すなわち、振動伝達率特性曲線において、共振倍率の低下と共振振動数の保持、または低振動数領域へのシフト、及び結果的に示される6Hz付近での振動伝達率低下の両立は難しい技術とされてきた。
【0007】
これまでに、振動伝達率特性の2〜4Hz付近の測定での共振倍率を下げる試みとして、特定の物性値に注目した軟質ポリウレタンフォーム成型体から成るシートクッションパッド(たとえば、特許文献1参照)、親水基を有するフッ素系界面活性剤を整泡剤として用いた軟質ポリウレタンフォーム成型体(たとえば、特許文献2参照)が開示されている。
【0008】
しかし、これらの特性はポリウレタン樹脂自身の特性とセル形状や通気度といった発泡体としての特性が大きく影響している。すなわち、この軟質ポリウレタンフォーム成型体の振動伝達率特性改善を目的に材料構成を変更しても、その効果がポリウレタン樹脂特性改善によるものか、発泡体特性改善によるものか明確に判断、区別することができなかった。そのため、上記以外の特性やコストダウンなども考慮した軟質ポリウレタンフォーム成型体の開発には材料構成の微調整や成型条件の最適化検討など多数の実験を必要とするものであった。
【特許文献1】特開平11−146821号公報
【特許文献2】特開平11−322875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、自動車用のシートクッションパッドとして使用したときに、硬度や反発弾性率を大きく変動させることなく、共振振動数を同等レベルに保ちつつ、2〜4Hz付近の測定での共振倍率を低下させた軟質ポリウレタンフォーム用材料の選択方法、及びに軟質ポリウレタンフォーム成型体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、主に軟質ポリウレタンフォーム用材料の配合等を用いて得られた実質的に無発泡のポリウレタン成型体の物理特性に関して鋭意研究した結果、軟質ポリウレタンフォーム用材料の選択方法、及び軟質ポリウレタンフォーム成型体の製造方法として以下に示すものを用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明の軟質ポリウレタンフォーム用材料の選択方法は、発泡剤として水を含むポリオール成分とイソシアネート成分とからなる軟質ポリウレタンフォーム用材料の選択方法において、無発泡のポリウレタン成型体とした場合における周波数4.0Hzにおける貯蔵弾性率が10〜25N/mmの範囲となるように前記軟質ポリウレタンフォーム用材料を選択することを特徴とする。
【0012】
本発明の軟質ポリウレタンフォーム成型体の選択方法により得られる軟質ポリウレタンフォーム成型体によると、実施例の結果に示すように、本発明の選択方法及び製造方法により樹脂成分の特性のみを評価することができ、整泡剤により通気度を調整するだけで、共振振動数が3.6Hz以下、及び共振倍率が3.0以下である軟質ポリウレタンフォーム成型体を容易に選択し、得ることができる。従来のように一成分の変更に伴う多数の実験を行う必要がなく、材料変更が容易となった。
【0013】
本発明における無発泡のポリウレタン成型体とは、実質的に気泡を含まないポリウレタン成型体をいい、全く気泡を含まないポリウレタン成型体であることが好ましいが、わずかに気泡を混入している場合であってもよい。無発泡のポリウレタン成型の手法は特には限定されないが、たとえば、下記の条件下での遠心成型等が好適な例としてあげられる。
【0014】
本発明においては、得られた実質的に無発泡のポリウレタン成型体の周波数4.0Hzにおける貯蔵弾性率が10〜25N/mmの範囲となるポリウレタンフォーム用材料を用いて所定のポリウレタンフォーム成型体を選択することを特徴とする。貯蔵弾性率は15〜21N/mmの範囲であることがより好ましい。10N/mmより小さくなる場合、及び、25N/mmより大きくなる場合には、通気度を調整しても目的とする軟質ポリウレタンフォーム成型体が得られない。
【0015】
本発明における貯蔵弾性率とは、正弦波振動においてひずみと同位相の応力を、ひずみで除した値(N/mm)を指すものであり、たとえば、動的粘弾性測定装置である粘弾性スペクトロメーター(VES)を用いて測定することができるものである。
【0016】
また、本発明は、上記無発泡のポリウレタン成型体製造工程が、上記ポリオール成分とイソシアネート成分とを混合して型内に注入した後に、回転数400rpm以上で、90℃以上で10分間以上遠心成型する成型工程を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明によると、実施例の結果が示すように、上記無発泡のポリウレタン成型体製造工程において、上記ポリオール成分とイソシアネート成分とを混合して型内に注入した後に、回転数400rpm以上で、90℃以上で10分間以上遠心成型する成型工程を含むことにより、気泡の混入を大きく低減させたポリウレタン成型体、特に無発泡のポリウレタン成型体を得ることができる。上記の製造方法により得たポリウレタン成型体の気泡が低減され、さらには無発泡体となる理由の詳細は明らかではないが、回転数条件、及び熱処理条件の組み合わせが、水とイソシアネート基との泡化反応により発生する気泡を効果的に破泡し、ウレタン組成物外部に除去したものと推測される。
【0018】
本発明のポリウレタン成型体の選択方法は、前記無発泡のポリウレタン成型体の製造工程が、前記ポリオール成分とイソシアネート成分とを混合して型内に注入した後に、回転数400rpm以上で、90℃以上で10分間以上遠心成型する成型工程を含むことを特徴とする。かかる遠心成型における回転数は、600rpm以上であることが好ましく、600〜1000rpm程度であることがより好ましいものとしてあげられる。回転数が200rpmより小さくなると、ポリウレタン成型体内部に発泡が残存してしまう場合があり、一方、1200rpmより大きくなると液が飛散する傾向があるため好ましくない。
【0019】
さらに、成型処理条件として、90℃以上で10分間以上加熱成型する成型工程を含むことを特徴とする。100〜130℃で10〜60分間遠心成型することが好ましく、100〜110℃で10〜60分間遠心成型することがより好ましい。
【0020】
上記選択方法において、回転数400rpm以上で、90℃以上で10分間以上遠心成型する成型工程、次いで、130℃以上で10分間以上加熱成型する成型工程、を含むことが好ましい。さらには、回転数600rpm以上で、100〜130℃で10〜60分間遠心成型する成型工程、次いで、130〜170℃で10〜60分間加熱成型する成型工程、を含むことがよりこのましい。この範囲外の処理条件で成型処理すると、成型工程中に炭酸ガスによる気泡がポリウレタン成型体内部に残存してしまう場合が多くなるため好ましくない。
【0021】
また、本発明は、さらに軟質ポリウレタンフォーム成型体の通気度が4.22〜42.2L/minの範囲となるように整泡剤を選択する工程を含むことを特徴とする。通気度が上記の範囲となるように整泡剤を選択することにより、共振振動数が3.6Hz以下、及び共振倍率が3.0以下である軟質ポリウレタンフォーム成型体を得ることができる。
【0022】
本発明における通気度の調整については、軟質ポリウレタンフォーム成型体、及び軟質ポリウレタンフォーム成型体、又はシートクッションパッドの通気度の調整に一般に使用できる公知手法が適宜使用できる。
【0023】
また、軟質ポリウレタンフォーム成型体の製造方法において、上記選択方法によって軟質ポリウレタンフォーム用材料を選択する工程、及び、上記工程により選択した軟質ポリウレタンフォーム用材料を用いて軟質ポリウレタンフォーム成型体を作製する工程、を含むことを特徴とする。
【0024】
また、本発明により得られたポリウレタン成型体は、水を含んだ成型材の原料から、成型工程における水分子による作用が反映された無発泡のポリウレタン成型体が得られたものと考えられる。この無発泡のポリウレタン成型体を評価することにより、これまで困難であった水を発泡剤として用いることからなるポリウレタンフォーム成型体のセルを構成する樹脂の物理特性の評価に有益であると推測される。
【0025】
本発明により得られた軟質ポリウレタンフォーム成型体は、その使用に際して振動を伴う車両、特に自動車用のシートクッションパッドに特に適する。また、本発明により得られた軟質ポリウレタンフォーム成型体をシートクッションパッドとして用いるにあたり、シートクッション成型に用いられる公知な一般的手法を適宜適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明のポリオール成分に用いるポリオール化合物としては、ポリウレタンの技術分野において、通常ポリオール化合物として用いられるものをあげることができる。たとえば、ヒドロキシ末端ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリエーテル、ポリエーテルカーボネート、ポリエステルアミド等の、ポリウレタンの技術分野において、ポリオール化合物として公知の化合物があげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0027】
ポリエーテルポリオールとしては、たとえば、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレングリコール(PEG)等があげられる。
【0028】
ポリエステルポリオ−ルとしては、たとえば、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペ−ト、ポリカプロラクトンポリオ−ル等があげられる。
【0029】
ポリエステルポリカーボネートポリオールとしては、たとえば、ポリカプロラクトンポリオ−ル等のポリエステルグリコ−ルとアルキレンカーボネートとの反応生成物、エチレンカーボネ−トを多価アルコ−ルと反応させ、次いで得られた反応生成物と有機ジカルボン酸との反応により得られた反応生成物などがあげられる。
【0030】
また、本発明においては、ポリオール成分中にポリマー粒子を微粒子状にて分散させたポリマーポリオールを使用してもよい。
【0031】
上記のポリマー粒子としては、たとえば、アクリロニトリル、スチレン、アルキルメタクリレート、アルキルアクリレート等のビニルモノマーのホモポリマー又はコポリマー等の付加重合系ポリマーや、ポリエステル、ポリウレア、メラミン樹脂等の縮重合系ポリマー等の粒子があげられる。これらのなかでも、アクリロニトリル、スチレンのホモポリマー又はコポリマーが好ましい。特にアクリロニトリルのホモポリマーが好ましい。なお、ポリマー粒子としては、アクリロニトリル重合体微粒子の含有系が、シートクッションパッドの成型性が良好であり、好ましい。
【0032】
ポリオール成分全体における、上記ポリマー粒子の割合は、その割合が多すぎると経済的に不都合が生じるため、40重量%以下、さらには20重量%以下とするのが好ましい。また、シートクッションパッドの硬度や耐久性などの物性を有効に向上させるには、ポリオール成分全体におけるポリマー粒子の含有率を1重量%以上、さらには2重量%以上存在するのが好ましい。
【0033】
かかるポリマー粒子のポリオール成分中への導入方法は特に制限されないが、たとえば、ポリマー粒子が付加重合系ポリマーの場合には、ポリオキシアルキレンポリオール等のポリオール中で、ラジカル重合開始剤の存在下に、スチレン、アクリロニトリル等のビニル系モノマーを重合させることにより、ポリオール成分に安定に分散させることができる。ポリマーポリオール(POP)は三井武田ケミカル製、旭硝子製等が市販されており、好適に使用可能である。
【0034】
上記のポリエーテルポリオール、ポリマーポリオールを構成するポリオキシアルキレンポリオールも共に末端の不飽和基濃度は低い方が好ましく、具体的には、末端の不飽和基濃度は0.1meq/g以下であることが好ましい。不飽和基濃度が高くなると軟質ポリウレタンフォーム成型体の圧縮永久歪が大きくなり、耐久性が低下する等の問題が発生する。
【0035】
ポリカーボネートポリオールとしては、たとえば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及び/又はポリテトラメチレングリコール等のジオールとホスゲン、ジアリルカーボネート(たとえばジフェニルカーボネート)もしくは環式カーボネート(たとえばプロピレンカーボネート)との反応生成物があげられる。
【0036】
本発明におけるイソシアネート成分として用いるイソシアネート化合物としては、ポリウレタンの分野において公知の化合物を特に限定なく使用できる。たとえば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート類、粗製MDI等があげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0037】
イソシアネート化合物としては、上記ジイソシアネート化合物の他に、3官能以上の多官能イソシアネート化合物も使用可能である。多官能のイソシアネート化合物としては、たとえば、デスモジュール−N(バイエル社製)やデュラネート(旭化成工業社製)として一連のジイソシアネートアダクト体化合物が市販されている。
【0038】
本発明においては、軟質ポリウレタンフォーム用材料としてイソシアネート末端プレポリマーを適宜用いることができる。イソシアネート末端プレポリマーとは、一般にポリオール化合物とイソシアネート化合物の重付加反応により得られるが、他の方法により合成したものでもよい。また、イソシアネート末端プレポリマーは、一般に、イソシアネート化合物を、ポリオール化合物に対するモル当量より過剰に反応させることで得られるが、他の方法により合成したものでもよい。
【0039】
また、イソシアネート末端プレポリマーの構成成分としては、上述したポリオールに加えて、たとえば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等の低分子量多価アルコールを併用しても構わない。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0040】
本発明におけるポリオール化合物とイソシアネート化合物の比は、各々の分子量や成型体の所望物性などにより適宜選択できる。
【0041】
本発明における発泡剤には少なくとも水が含まれるが、水以外の公知の発泡剤を適宜併用してもよい。水以外の発泡剤は1種を単独に水に併せて用いてもよく、又は2種以上を使用してもよい。水以外の発泡剤として、たとえば、HCFC−141b、HFC−134a、HFC−245fa、HFC−365mfc等のハロゲン化炭化水素、シクロペンタンやn−ペンタン等の低沸点脂肪族ないし脂環式炭化水素、液化炭酸ガス等があげられる。
【0042】
本発明のポリウレタン成型体における原料としては、上記成分のほかに、鎖延長剤、反応触媒、架橋剤を適宜含有することができる。また、これらの各成分は特に限定されず、ポリウレタン樹脂の原料として一般的に用いられるものは適宜使用でき、またこれらは1種のみ単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0043】
本発明においては反応触媒を使用してもよい。反応触媒としては、たとえば、トリエチレンジアミン(TEDA)、ビス(N,N−ジメチルアミノ−2−エチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル(TOYOCAT−ET、東ソー社製)等のアミン系触媒や、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム等のカルボン酸金属塩、ジブチル錫ジラウレート等の有機金属化合物等があげられる。これらのなかでも水発泡系ポリウレタンフォームの製造に適している点でアミン系触媒の使用が好ましい。これらの反応触媒は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0044】
本発明の軟質ポリウレタンフォーム成型体の製造において、必要に応じて低分子量の多価活性水素化合物を架橋剤として適宜使用することもできる。このような低分子量の多価活性水素化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の多価アルコール類、並びにこれらの多価アルコール類を開始剤としてエチレンオキシドやプロピレンオキシドを重合させて得られる水酸基価が300〜1000mgKOH/gの化合物、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン類等があげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。これらの化合物を使用した市販品の使用も好適であり、たとえば、KL−210(三井武田ケミカル社製)、ハードマスター17(第一工業製薬社製)、EL−980(旭硝子社製)等があげられる。
【0045】
また、本発明におけるポリウレタン成型体には、上記成分の他に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、充填剤、難燃剤、可塑剤、着色剤、消泡剤、防黴・防菌剤等の各種添加剤を、必要に応じて添加することもできる。
【0046】
また、本発明の軟質ポリウレタンフォーム成型体を作製する工程において、軟質ポリウレタンフォーム成型体に一般に使用できる公知手法が適宜使用できる。
【0047】
本発明の材料選択において、樹脂成分の特性を評価するための無発泡のポリウレタン成型体において、遠心成型の手法は特に制限なく、一般に樹脂等の遠心成型に使用できる遠心成型機は適宜使用できる。成型工程において、遠心力を利用して気泡の残存の抑制、さらには無発泡化する手法であれば、その遠心成型の形態は特に限定せず用いることができる。
【0048】
本発明における遠心成型機を図1に例示する。遠心成型機1は、内面に円筒状シートを成型する成型部14を有する円筒状金型10と前記円筒状金型10を回転させる回転軸12を有する。円筒状金型10を回転させつつ、内面に形成された成型部にポリウレタン成型体の混合原料液を供給し、遠心成型することにより、実質的に気泡のない円筒状シートが成型できる。
【0049】
図1に示した円筒状金型10の開口側端部近傍の断面形状を図2に示した。円筒状金型10の開口端部には段部18が形成されており、成型部14とでシート成型が可能であり、ポリウレタン成型体の混合原料液により水とイソシアネート基との泡化反応に由来するウレア結合を含む無発泡のポリウレタンシート16が成型される。
【0050】
本発明における原料混合液の調整は、ポリウレタン樹脂に一般に使用される方法を適宜使用することができる。たとえば、ポリオール化合物及び水等を含有した液と、イソシアネート化合物を含有した液をそれぞれ調整し、これらを混合したものを遠心成型機の金型に注入する手法があげられる。かかる原料混合液においては、整泡剤を添加しないことが好ましい。本発明における整泡剤は主として通気度の調整に関与するものであり、整泡剤が系内に存在することにより発生した気泡の破泡が起こりにくくなり、無発泡成型において弊害となりやすい。なお、水の存在の有無はセルを構成する樹脂の化学特性及び物理特性に影響を与えるが、これに対し、通常の使用量範囲での系中における整泡剤の存在はセルを構成する樹脂の化学特性及び物理特性に特に影響を与えるものではないと推測される。また、この際、消泡剤を添加することが好ましく、各液に反応触媒等の添加剤を加えてもよい。
【0051】
また、本発明における遠心成型において、遠心成型に付随して一般的に用いられている公知手法を適宜用いることができる。たとえば、離型性、生産性の向上のために、あらかじめ壁面に離型剤を塗布しておくか、金型にポリテトラフルオロエチレンコート等の離型処理をしておくことができる。
【0052】
整泡剤を使用した通気度の調整は、たとえば、ポリウレタンフォームの気泡(セル)径を調整することにより行うことが可能である。セル径を小さくすると通気度を低下させることができる。
【0053】
軟質ポリウレタンフォーム成型体の通気度の調整する工程は、上記軟質ポリウレタンフォーム成型体の成型時点において調整する方法と軟質ポリウレタンフォーム成型体を成型した後の後処理によって調整する方法があり、一方又は双方を任意に使用可能である。
【0054】
上記通気度を調整した軟質ポリウレタンフォーム成型体の製造する工程において、通気度の調整は整泡剤の種類、添加量で行うことができる。上記により選択された軟質ポリウレタンフォーム成型体の原料配合に、たとえば、整泡剤などのポリウレタンフォーム形成に一般に使用できる成分を適宜使用してもよい。
【0055】
また、本発明における整泡剤としては、通常の軟質ポリウレタンフォームの製造に用いられるものを特に制限なく使用できる。たとえば、ジメチルシロキサン系、ポリエーテルジメチルシロキサン系、フェニルメチルシロキサン系等の各種の整泡剤があげられる。整泡剤の使用量は、通常ポリオール成分100重量部に対して、0.01〜5重量部(可塑剤等で希釈した整泡剤の場合には有効成分を基準とする)、好ましくは0.1〜2重量部である。
【0056】
活性の高いシリコーン系整泡剤としては、ポリジメチルシロキサンやその誘導体である公知の整泡剤と適宜併用して使用可能である。活性の高いシリコーン系整泡剤としては市販品の使用が好適であり、具体的には、たとえば、SF2965,SF2962,SF2904,SF2908,SRX294A,(東レダウコーニングシリコン製)、L−5366,L−5309(日本ユニカー社製)、B8680(ゴールドシュミット社製)等が市販されている。特に表面張力低下能(ポリオール成分に添加前と添加後の表面張力の差)が1(dyne/cm)程度の整泡剤の使用が有効であり、SF2965,SF2962、B8680、L−5366,L−5309が特に好適である。ただし、単独の整泡剤ではなく、複数の整泡剤を併用して表面張力や表面張力低下能を調整することにより通気度を調整することも可能である。
【0057】
こうしてシートクッションパッドである所定形状に成型された軟質ポリウレタンフォーム成型体が得られるが、シートクッションパッドの裏面には、たとえばポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン又はその発泡体からなる樹脂のサポーターやPPクロス、粗毛布、不織布等のサポーター(補強材)を、成型時に予め金型にインサートする一体成型法ないしフォーム成型後の接着により積層することもできる。
【0058】
実際に車両に装着される座席シート等は、本発明のシートクッションパッドに本皮、モケット、トリコット、ジャージ、織物等の外層を被覆し、さらに金具を取り付けて車両の組み立てに供される。外層をシートクッションパッドに被覆する際には、シートクッションパッドに面ファスナーの一部材を接着等により取り付けることも好適である。
【実施例】
【0059】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における物性等の評価方法は次の通りである。
【0060】
〔無発泡のポリウレタン成型体用材料、及び軟質ポリウレタンフォーム用材料〕
ポリウレタン成型体の製造に使用した材料の内容、サプライヤーは以下のとおりである。
【0061】
a)ポリオール:EP901、水酸基価=24±2(mgKOH/g)(三井武田ケミカル社製)
b)ポリオール:EP3033、水酸基価=34±2(mgKOH/g)(三井武田ケミカル社製)
c)ポリオール:EP3028、水酸基価=28±2(mgKOH/g)(三井武田ケミカル社製)
d)ポリマーポリオール:POP3690、水酸基価=21±2(mgKOH/g)(三井武田ケミカル社製)
e)ポリマーポリオール:POP3628、水酸基価=26±2(mgKOH/g)(三井武田ケミカル社製)
f)ポリマーポリオール:POP3128、水酸基価=27.5±1.5(mgKOH/g)(三井武田ケミカル社製)
g)架橋剤:DEA、ジエタノールアミン(三井化学社製)
h)整泡剤:SF2962(東レダウコーニングシリコン社製)
i)整泡剤:SF2969(東レダウコーニングシリコン社製)
j)整泡剤:SRX274C(東レダウコーニングシリコン社製、シリコン系整泡剤)
k)触媒:TEDA−L33、トリエチレンジアミン33%溶液(東ソー社製)
l)触媒:TOYOCAT−ET:ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル(東ソー社製)
m)イソシアネート成分A:クルード−MDI/TDI−80=20/80混合イソシアネート
n)イソシアネート成分B:クルード−MDI/TDI−80=90/10混合イソシアネート
〔無発泡のポリウレタン成型体の作製〕
遠心成型機:ES−400型(東邦機械工業社製)
遠心回転部、直径330mm、奥行き420mm
遠心成型条件:遠心回転数700rpmで、100℃で30分、次いで130℃で1時間の加熱処理を行った。
【0062】
原料投入方法:無発泡のポリウレタン成型体用材料の配合量を表1に示した。各成分を同表に記載の重量比率で常法にて配合し、上記a)〜g)、及びk)の各化合物と水を混合した液と、上記m)〜n)の化合物からなる液を、25℃で1分間撹拌反応させた混合原料を上記遠心成型機に投入し、遠心成型することにより、ポリウレタンシートを作製した(420×1000×2(mm))。
【0063】
〔貯蔵弾性率の測定〕
作製した無発泡のポリウレタンシートの貯蔵弾性率は、粘弾性スペクトロメーター(VES)を用いた引っ張り試験により測定した。
【0064】
装置:ユービーエム社製、型番Rheogel−E4000
モード:引張り
波形:正弦波
振動数:1〜10Hz
初期歪み:3mm
振幅:30μm
温度:23℃
サンプルサイズ:5×1.3×20mm
【0065】
〔軟質ポリウレタンフォーム成型体の作製〕
軟質ポリウレタンフォーム用材料の配合量を表2に示した。これらのポリオール成分a)〜f)、架橋剤g)、整泡剤h)〜j)、触媒k)〜l)、イソシアネート成分m)〜n)、及び発泡剤としての水の各成分を同表に記載の重量比率で常法にて配合し、均一に混合した後、あらかじめモールドを60℃に保ち、所定量を所定形状の軟質フォーム成型金型に注入し、発泡硬化させて軟質ポリウレタンフォーム成型体を得た。
【0066】
〔軟質ポリウレタンフォーム成型体の物理物性〕
a)フォーム密度(kg/m):軟質ポリウレタンフォーム成型体について測定した密度である。
【0067】
b)25%ILD(Indentation Load Deflection)(kgf/314cm):シートクッションパッドを直径200mmの加圧板で25%圧縮したときの荷重である(JIS K6400準拠)。この値は、20(kgf/314cm)程度とすることが、座り心地の点で好適である。
【0068】
c)通気度(L/min):ASTM D−1564に準拠して測定した。すなわち、シートクッションパッドの着座面となる、ヒップポイント下のスキン部を含めて縦50mm、横50mm、厚さ25mmの測定サンプルを3箇所から採取して、FLUID DATA社製の測定器を用いて測定した値である(DOW法)。
【0069】
〔軟質ポリウレタンフォーム成型体の振動伝達率特性〕
60℃×6分の条件でキュアし、400×400×100mmの形状のサンプルを作製して評価した。JASO B−407に準拠して、50kgの鉄研形加圧板を負荷し振幅±2.5mmで強制振動試験を行うことにより得られた振動伝達率曲線から、1〜10Hzの振動数領域における共振振動数(Hz)、共振倍率を計測した。振動特性の計測には、シートクッション振動試験機C−1002DL(伊藤精機社製)を使用した。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
【表3】

(実施例、比較例)
上述した手法に従い、実施例1〜2及び比較例1〜3に対応する無発泡ウレタン成型体、及び軟質ポリウレタンフォーム成型体を得た。
【0073】
得られた無発泡ウレタン成型体、及び軟質ポリウレタンフォーム成型体のそれぞれの評価結果を表3に示した。これらの結果から、本発明に従って、無発泡成型した際に貯蔵弾性率が10〜25N/mmの範囲内にある配合を選択し、かかる配合を用いて通気度を4.22〜42.2L/minの範囲となるように作製した実施例1及び2のいずれにおいても、共振振動数が3.6Hz以下、及び共振倍率が3.0以下である軟質ポリウレタンフォーム成型体を選択し、得ることができた。一方、本発明の構成要件を満たさず、通気度を42.2L/minを超えるように作製した比較例1及び2においては、共振倍率が3.0を超えてしまい、また貯蔵弾性率が25N/mmを超えた比較例3においては、共振振動数が3.6Hzを超えてしまった。
【0074】
以上より、本発明の選択方法及び製造方法により、共振振動数が3.6Hz以下、及び共振倍率が3.0以下である軟質ポリウレタンフォーム成型体を容易に選択し、得ることができることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】遠心成型機例1の斜視図である。
【図2】遠心成型機例1の樹脂成型時における部分断面図である。
【符号の説明】
【0076】
10 円筒状金型
12 回転軸
14 成型部
16 ポリウレタンシート
18 段部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡剤として水を含むポリオール成分とイソシアネート成分とからなる軟質ポリウレタンフォーム用材料の選択方法において、無発泡のポリウレタン成型体とした場合における周波数4.0Hzにおける貯蔵弾性率が10〜25N/mmの範囲となるように前記軟質ポリウレタンフォーム用材料を選択することを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム用材料の選択方法。
【請求項2】
前記無発泡のポリウレタン成型体の製造工程が、前記ポリオール成分とイソシアネート成分とを混合して型内に注入した後に、回転数400rpm以上で、90℃以上で10分間以上遠心成型する成型工程を含むことを特徴とする請求項1記載の軟質ポリウレタンフォーム用材料の選択方法。
【請求項3】
前記回転数が600〜1000rpmであることを特徴とする請求項2記載の軟質ポリウレタンフォーム用材料の選択方法。
【請求項4】
前記成型工程についで、130℃以上で10分間以上加熱成型する第二成型工程を含むことを特徴とする請求項2又は3記載の軟質ポリウレタンフォーム用材料の選択方法。
【請求項5】
さらに軟質ポリウレタンフォーム成型体の通気度が4.22〜42.2L/minの範囲となるように整泡剤を選択することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の軟質ポリウレタンフォーム用材料の選択方法。
【請求項6】
軟質ポリウレタンフォーム成型体の製造方法において、
請求項1〜5のいずれかに記載の選択方法によって軟質ポリウレタンフォーム用材料を選択する工程、及び、
前記工程により選択した軟質ポリウレタンフォーム用材料を用いて軟質ポリウレタンフォーム成型体を作製する工程、
を含むことを特徴とする軟質ポリウレタンフォーム成型体の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−37019(P2006−37019A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222168(P2004−222168)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】