説明

軟質ポリウレタン発泡体

【課題】 硬化性及び収縮性を維持しつつ、クラックを抑制することができる軟質ポリウレタン発泡体を提供する。
【解決手段】 軟質ポリウレタン発泡体13は、ポリオール類、ポリイソシアネート類、触媒、発泡剤としての水及び整泡剤を含む軟質ポリウレタン発泡体13の原料を120〜150℃で反応、発泡及び硬化させて得られ、見掛け密度が20〜30kg/mで、かつ下記に示す発泡高さHの比が0〜3%である。
発泡高さHの比={〔(50℃での発泡高さH)−(20℃での発泡高さH)〕/(20℃での発泡高さH)}×100

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車内のシート、家具、寝具等の材料として用いられる軟質ポリウレタン発泡体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の軟質ポリウレタン発泡体には、120〜150℃の高温で発泡させて得られるいわゆるホットフォーム(ホット発泡体)と、60〜80℃の低温で発泡させて得られるコールドフォーム(コールド発泡体)とが知られている。ホットフォームはコールドフォームに比べてセルがクローズド(密閉)されやすいため、発泡ガスがセル内に残留しやすい。従って、そのようなセルが集中する部分では発泡体が破裂する現象(以下、クラックと称する)が見られる。
【0003】
そのようなクラックを防止するために、例えば触媒としてスズ触媒を使用せず、特定構造のアミン化合物を使用する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。係るアミン化合物は、分子内に少なくとも1つの1級アミノ基、2級アミノ基又はヒドロキシアルキル基を含有する6種類の化合物である。
【特許文献1】特開2004−27010号公報(第2頁から第8頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、軟質ポリウレタン発泡体の製造時において、発泡状態を制御する要因としては温度のほか、ポリオール類、ポリイソシアネート類、発泡剤としての水、整泡剤、触媒等の種類及び配合量が考えられ、これらの条件が最適に組合されてはじめて発泡の進行及びセルの形成を良好に制御することができる。従って、特許文献1に開示されているように、触媒として特定のアミン化合物を使用するだけでは発泡の進行及びセルの形成を十分に制御することができない。その結果、セルの形成が安定した状態で行われないため、発泡過程でセルのクローズド化が起きてクラックを十分に抑制することができず、クラックを抑制しようとすると、発泡体の硬化性や収縮性が低下する場合があるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的とするところは、硬化性及び収縮性を維持しつつ、クラックを抑制することができる軟質ポリウレタン発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の軟質ポリウレタン発泡体は、ポリオール類、ポリイソシアネート類、触媒、発泡剤としての水及び整泡剤を含む軟質ポリウレタン発泡体の原料を120〜150℃で反応、発泡及び硬化させて得られ、見掛け密度が20〜30kg/mである軟質ポリウレタン発泡体であって、下記に示す発泡高さの比が0〜3%であることを特徴とするものである。
【0007】
発泡高さの比={〔(50℃での発泡高さ)−(20℃での発泡高さ)〕/(20℃での発泡高さ)}×100
請求項2に記載の発明の軟質ポリウレタン発泡体は、請求項1に係る発明において、前記水の配合量がポリオール類100質量部当たり5〜8質量部であることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3に記載の発明の軟質ポリウレタン発泡体は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記整泡剤の配合量がポリオール類100質量部当たり1.7〜1.9質量部であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4に記載の発明の軟質ポリウレタン発泡体は、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明において、前記触媒は樹脂化触媒と泡化触媒とにより構成され、樹脂化触媒の配合量はポリオール類100質量部当たり0.15〜0.25質量部であり、泡化触媒の配合量はポリオール類100質量部当たり0.05〜0.2質量部であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
請求項1に記載の発明の軟質ポリウレタン発泡体では、前記式で表される50℃と20℃での発泡高さの比が0〜3%に設定されている。このような発泡高さの比を所定範囲に保持することで、軟質ポリウレタン発泡体の製造時における樹脂化反応(ウレタン化反応)、泡化反応及び硬化反応(架橋反応)を適度なものにすることができ、セルの形成が安定した状態で行われ、セルのクローズド化を抑えることができる。その結果、発泡体の硬化性及び収縮性を維持しつつ、クラックを抑制することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明の軟質ポリウレタン発泡体では、水の配合量がポリオール類100質量部当たり5〜8質量部に設定されるため、泡化反応の進行が所定範囲に抑えられる。従って、請求項1に係る発明の効果を向上させることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明の軟質ポリウレタン発泡体では、整泡剤の配合量がポリオール類100質量部当たり1.7〜1.9質量部に設定されるため、泡化反応の進行に伴って整泡作用が一定範囲で均一に発現される。このため、請求項1又は請求項2に係る発明の効果をより向上させることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明の軟質ポリウレタン発泡体では、触媒は樹脂化触媒と泡化触媒とにより構成され、樹脂化触媒の配合量はポリオール類100質量部当たり0.15〜0.25質量部であり、泡化触媒の配合量はポリオール類100質量部当たり0.05〜0.2質量部に設定される。このため、樹脂化反応及び泡化反応が制御され、樹脂化と泡化とが円滑に進行し、セルが安定して形成される。従って、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果を一層向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の軟質ポリウレタン発泡体(以下、単に発泡体ともいう)は、ポリオール類、ポリイソシアネート類、触媒、発泡剤としての水及び整泡剤を含む軟質ポリウレタン発泡体の原料を120〜150℃の温度に加熱して反応、発泡及び硬化させて得られ、見掛け密度が20〜30kg/mである。120〜150℃の高温に加熱するのは、自動車用のシート材等として好適ないわゆるホットフォームを得るためである。この温度が120℃未満では発泡体原料の反応、発泡及び硬化が不十分となりやすく、150℃を越えると発泡体が変色しやすくなって好ましくない。見掛け密度は、JIS K 7222:1999の規定に基づく値である。見掛け密度が20〜30kg/mであることにより、発泡体は軽量で、クッション性に富むものとなる。ここで、軟質ポリウレタン発泡体は、連続気泡構造を有し、柔軟性があって復元性を有する発泡体を意味する。
【0015】
さらに、下記に示す発泡高さの比が0〜3%に設定される。発泡高さの比をこの範囲に設定することで、セルの形成を安定させることができ、クラックの形成を抑えることができる。このクラックは、発泡体の形状が直方体のような平坦面で構成されている場合には起こりにくく、凹凸形状である場合にその凹凸部分でセルの形成が阻害されて起こりやすくなる。従って、発泡体が凹凸形状である場合に発泡高さの比を上記のような範囲に設定することが有効である。
【0016】
発泡高さの比={〔(50℃での発泡高さ)−(20℃での発泡高さ)〕/(20℃での発泡高さ)}×100
この発泡高さの比を得るための軟質ポリウレタン発泡体の製造装置について説明する。図1に示すように、発泡用容器10は有底四角筒状に形成され、その周囲には熱媒体としての水11を収容して発泡用容器10内を所定温度に設定する熱媒体収容部12が設けられている。そして、水11の温度を20℃又は50℃にした状態で発泡用容器10内に軟質ポリウレタン発泡体の原料を一定量投入し、発泡させて得られた発泡体13の高さH(それぞれの高さH又はH)を測定する。従って、これらのH又はHを用い、前記の式から発泡高さの比が算出される。
【0017】
次に、前記軟質ポリウレタン発泡体の原料について順に説明する。
ポリオール類としては、ポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールが用いられる。ポリエーテルポリオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、それらの変性体、グリセリンにアルキレンオキサイドを付加した化合物等が挙げられる。具体的には、グリセリンにプロピレンオキシドを付加重合させ、さらにエチレンオキシドを付加重合させたトリオール、ジプロピレングリコールにプロピレンオキシドを付加重合させ、さらにエチレンオキシドを付加重合させたジオール等が挙げられる。これらのポリエーテルポリオールは、末端に第1級のヒドロキシル基を有していることから、ポリイソシアネート類との反応性が高く、ポリエステルポリオールのように加水分解をしないという点から好ましい。ポリエーテルポリオールの平均分子量は2000〜6000であることが好ましい。この平均分子量が2000未満の場合には得られる発泡体の成形時における安定性が低下し、6000を越える場合には発泡体の反発が大きくなり、クッション性が低下する。このポリエーテルポリオールは、原料成分の種類、分子量、縮合度等を調整することによって、ヒドロキシル基の官能基数やヒドロキシル基価を変えることができる。
【0018】
ポリエステルポリオールとしては、アジピン酸、フタル酸等のポリカルボン酸を、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のポリオールと反応させることによって得られる縮合系ポリエステルポリオールのほか、ラクトン系ポリエステルポリオール及びポリカーボネート系ポリオールが挙げられる。このポリオール類は、原料成分の種類、分子量、縮合度等を調整することによって、水酸基の数や水酸基価を変えることができる。
【0019】
ポリオール類の水酸基価は、250(mgKOH/g)未満であることが好ましく、50〜70(mgKOH/g)であることがより好ましい。このような水酸基価を有するポリオール類を用いることにより、ポリイソシアネート類との反応性に優れ、適度に架橋されたポリウレタン発泡体を得ることができる。ポリオール類の水酸基価が250(mgKOH/g)以上の場合、架橋密度が高くなり過ぎて発泡体が硬くなる傾向を示す。一方、水酸基価が50(mgKOH/g)未満の場合、水酸基価が小さくなり過ぎ、ポリウレタン発泡体の架橋密度が低くなって発泡体の強度が低下しやすくなる傾向を示す。
【0020】
続いて、上記のポリオール類と反応させるポリイソシアネート類はイソシアネート基を複数有する化合物であって、具体的にはトリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族ポリイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ポリイソシアネート類、又はこれらとポリオールとの反応による遊離イソシアネートプレポリマー類、カルボジイミド変性ポリイソシアネート類等の変性ポリイソシアネート類、さらにはこれらの混合ポリイソシアネート等が用いられる。
【0021】
これらのうち、トリレンジイソシアネート及びその誘導体、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート及びその誘導体が好ましく、これらを混合して使用することもできる。トリレンジイソシアネート及びその誘導体としては、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物、トリレンジイソシアネートのイソシアネートプレポリマー誘導体が挙げられる。4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート及びその誘導体としては、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートとその重合体のポリフェニルポリメチレンジイソシアネートの混合物及び末端イソシアネート基を有するジフェニルメタンジイソシアネート誘導体を挙げることができる。
【0022】
ポリイソシアネート類のイソシアネート指数(イソシアネートインデックス)は、発泡体原料の硬化反応を抑え、発泡体の収縮性を抑制するために、80〜95の範囲であることが好ましい。イソシアネート指数が80未満の場合には硬化性が不十分となり、95を越える場合には硬化反応が過剰に進行して発泡体の収縮性が悪くなる傾向を示す。ここで、イソシアネート指数は、ポリオール類、発泡剤としての水等の活性水素の当量数に対するポリイソシアネート類のイソシアネート基の当量数の比を百分率で表したものである。
【0023】
次いで、触媒はポリオール類とポリイソシアネート類との樹脂化反応(ウレタン化反応)を促進させる樹脂化触媒と、ポリイソシアネート類と水との泡化反応を促進させ、炭酸ガスを効果的に発生させて原料の流動性、発泡体の寸法安定性の改良に用いられる泡化触媒とがあり、これらを組合せて用いることが好ましい。樹脂化触媒として具体的にはトリエチレンジアミン(TEDA)、トリエチレンジアミンとポリプロピレングリコールとの混合物、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N′,N″,N″−ペンタメチル−(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N′,N″,N″−ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルグアニジン、135−トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の第3級アミン、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、その他N,N,N′,N′−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N−メチル−N′−(2−ジメチルアミノエチル)ピペラジン、N,N′−ジメチルピペラジン、N−メチルピペラジン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等が挙げられる。
【0024】
泡化触媒として具体的には、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N′,N″,N″−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N′,N″,N''',N'''−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン等が挙げられる。
【0025】
前記樹脂化触媒の配合量はポリオール類100質量部当たり0.15〜0.25質量部であることが好ましい。この配合量が0.15質量部未満の場合には樹脂化反応が十分に促進されず、発泡体の硬さ等の物性が不足し、0.25質量部を越える場合には樹脂化反応の進行が過剰に促進され、セルの形成が不均一になりやすい。また、泡化触媒の配合量はポリオール類100質量部当たり0.05〜0.2質量部であることが好ましい。その配合量が0.05質量部未満の場合には泡化反応の促進が十分になされず、0.2質量部を越える場合には泡化反応が進行し過ぎて発泡が局部的に過剰となって好ましくない。
【0026】
発泡剤は、軟質ポリウレタン発泡体の原料を発泡させて軟質ポリウレタン発泡体を得るためのもので、少なくとも化学的発泡剤としての水が含まれる。水は主にポリイソシアネート類と反応(泡化反応)して炭酸ガスを発生する。発泡剤としては、水以外にその他の化学的発泡剤又は物理的発泡剤を併用することができる。化学的発泡剤としては、有機酸、硼酸等の無機酸類、炭酸アルカリ金属塩、環状カーボネート類、ジアルキルカーボネート等が挙げられる。これらの化学的発泡剤は、発泡体原料成分との反応又は加熱による分解によってガスを発生する。一方、物理的発泡剤としては、ペンタン、シクロペンタン等の炭化水素類、HCFC−22、141b等のハイドロクロロフルオロカーボン類、HFC−245類、356類等のハイドロフルオロカーボン類、空気、窒素、炭酸ガス(二酸化炭素)等のガスが挙げられる。
【0027】
発泡剤としての水の配合量は、ポリオール類100質量部当たり5〜8質量部であることが好ましい。水の配合量が5質量部未満の場合には泡化反応が不十分となって低密度の発泡体が得られ難くなり、またクッション性も損なわれやすくなり、8質量部を越える場合には泡化反応が過剰になってセルの形成が不均一になって部分的にセルがクローズドされやすくなる。
【0028】
整泡剤は軟質ポリウレタン発泡体の原料に通常配合されるもののいずれも使用することができるが、例えばオルガノシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体、シリコーン−グリース共重合体等の非イオン系界面活性剤、又はそれらの混合物等が挙げられる。整泡剤の配合量は、ポリオール類100質量部当たり1.7〜1.9質量部であることが好ましい。この配合量が1.7質量部未満のときには整泡作用が十分に発揮されず、セルの形成に偏りが生じやすくなり、1.9質量部を越えるときには過剰量の整泡剤によって発泡過程の安定化が阻害されやすくなる。
【0029】
その他軟質ポリウレタンの原料には、ポリアルキレンオキシドポリオール等のセルオープナー、縮合リン酸エステル等の難燃剤、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、着色剤等を配合することができる。
【0030】
前記ポリオール類とポリイソシアネート類とのウレタン化反応を行なう場合には、成形用金型を用いるモールド成形法、発泡体原料をベルトコンベア上に吐出し、常温、大気圧下で自然発泡し、硬化するスラブ成形法等のいずれも採用される。また、ウレタン化反応の際には、ワンショット法又はプレポリマー法が採用される。ワンショット法は、ポリオール類とポリイソシアネート類とを直接反応させる方法である。プレポリマー法は、ポリオール類とポリイソシアネート類との各一部を事前に反応させて末端にイソシアネート基又はヒドロキシル基を有するプレポリマーを得、それにポリオール又はポリイソシアネートを反応させる方法である。
【0031】
さて、本実施形態の作用について説明すると、ホットフォームである軟質ポリウレタン発泡体は、ポリオール類、ポリイソシアネート類、触媒、発泡剤としての水及び整泡剤を含む発泡体原料を120〜150℃で反応、発泡及び硬化させることによって製造される。この場合、発泡体のクラックを抑制する指標として、20℃と50℃とで発泡させた場合における発泡高さの比が0〜3%に設定される。このため、発泡体製造時における樹脂化反応、泡化反応及び硬化反応がバランス良く進行し、セルの形成が均一かつ適度に行われる。従って、セルのクローズド化を抑えることができ、発泡体のクラックを抑制することができる。
【0032】
以上の実施形態によって発揮される効果について、以下にまとめて記載する。
・ 実施形態における軟質ポリウレタン発泡体では、前記発泡高さの比が0〜3%に設定されている。このような発泡高さの比を所定範囲に保持することで、軟質ポリウレタン発泡体の製造時における樹脂化反応、泡化反応及び硬化反応を適度なものにすることができ、セルの形成が円滑に行われ、セルのクローズド化を抑えることができる。その結果、硬化性及び収縮性を維持しつつ、クラックを抑制することができる。
【0033】
・ また、水の配合量をポリオール類100質量部当たり5〜8質量部に設定することにより、泡化反応を所定範囲に抑えることができる。
・ さらに、整泡剤の配合量をポリオール類100質量部当たり1.7〜1.9質量部に設定することによって、整泡作用を一定範囲で均一に行うことができる。
【0034】
・ 触媒として、樹脂化触媒と泡化触媒とを併用し、樹脂化触媒の配合量をポリオール類100質量部当たり0.15〜0.25質量部、泡化触媒の配合量をポリオール類100質量部当たり0.05〜0.2質量部に設定することで、樹脂化反応及び泡化反応を制御することができ、樹脂化と発泡とを円滑に進行させることができる。
【実施例】
【0035】
以下に、実施例及び比較例を挙げ、前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1〜7及び比較例1〜4)
軟質ポリウレタン発泡体の原料として、ポリエーテルポリオール、トリレンジイソシアネート(TDI)、発泡剤としての水、樹脂化触媒、泡化触媒及び整泡剤を表1に示すように設定した。各成分の内容について以下に説明する。
【0036】
ポリエーテルポリオール: グリセリンにプロピレンオキシドを付加重合し、さらにエチレンオキシドを付加重合して得られ、平均分子量が3000、水酸基価60mgKOH/gの重合体で、ポリエチレンオキシド単位が12モル%のポリエーテルポリオール
TDI: トリレンジイソシアネート(2,4-トリレンジイソシアネート80質量%と2,6-トリレンジイソシアネート20質量%の混合物)、日本ポリウレタン工業(株)製T−80
樹脂化触媒: 1−イソブチル−2−メチルイミダゾールとN−メチルモルホリンとを1:2の割合で使用した。
【0037】
泡化触媒: ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル
整泡剤: シリコーン系整泡剤、東レ・ダウシリコーン社製、SRX294A
そして、ポリエーテルポリオールとTDIを混合した後、3枚羽根の撹拌機により1800rpmで3秒間撹拌し、アルミニウム製の四角筒状をなす発泡用容器(内容積20L)に300gを投入して発泡を行い、軟質ポリウレタン発泡体を製造した。この場合、原料の温度を20℃とし、発泡用容器の温度を20℃及び50℃として実施し、それぞれの発泡高さから発泡高さを求め、下記の式で発泡高さの比を算出した。
【0038】
発泡高さの比={〔(H)−(H)〕/(H)}×100
但し、Hは50℃での発泡高さを表し、Hは20℃での発泡高さを表す。
得られた軟質ポリウレタン発泡体について、密度、クラック、硬化性及び収縮性を下記に示す方法で測定し、それらの結果を表1に示した。
(密度)
JIS K 7222:1999の規定に準じて測定した見掛け密度(kg/m)である。
(クラック)
軟質ポリウレタン発泡体について、目視によりセルの状態を確認し、発泡体断面において1cm角未満の空洞が2個以下の場合には○、1cm角未満の空洞が3〜5個の場合には△、1cm角以上の空洞が1個以上の場合には×として評価した。
(硬化性)
軟質ポリウレタン発泡体を手で押さえることにより測定し、硬さが適切である場合を○、軟らかいと感じる場合を△として評価した。
(収縮性)
軟質ポリウレタン発泡体を容器から取り出したときの収縮状態を観察し、収縮率が10%未満の場合を○、収縮率が10%以上の場合を×として評価した。
【0039】
一方、比較例1では発泡高さ比を7%、比較例2では発泡高さ比を5%及び比較例3、4では発泡高さ比を4%に設定し、実施例1と同様にして軟質ポリウレタン発泡体を製造した。そして、実施例1と同様にして、密度、クラック、硬化性及び収縮性を評価し、その結果を表2に示した。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

表1に示したように、実施例1〜7では発泡高さ比が0〜3%の範囲に設定されていることから、クラック、硬化性及び収縮性がいずれも良好であった。これに対し、表2に示した結果より、比較例1〜4では発泡高さ比が4〜7%の範囲に設定されていることから、セルが崩れてクラックが不良であった。
(実施例8〜14及び比較例5〜8)
軟質ポリウレタン発泡体の原料として、実施例8〜14ではそれぞれ実施例1〜7と同じとし、比較例5〜8では比較例1〜4と同じとした。そして、それらの原料を発泡用容器に投入し、ホットフォームの反応温度である145℃に加熱して原料を反応、発泡及び硬化させ、軟質ポリウレタン発泡体を製造した。
【0042】
その結果、実施例8〜14の発泡体については、セルの形成が良好に行われ、クラックの発生はなく、硬化性及び収縮性も良好であった。これに対し、比較例5〜8では、セルの形成が不均一で局部的にクローズドされ、クラックが発生する結果となった。以上の事実から、ホットフォームの製造に際し、50℃での発泡高さと20℃での発泡高さとの発泡高さ比を、クラックについての指標にできることが明らかとなった。
【0043】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 発泡高さの比として、50℃以外に60〜80℃程度の範囲で発泡させたときの発泡高さを求め、その発泡高さと20℃での発泡高さとの比を算出して、その比をも参酌してホットフォームを製造することも可能である。
【0044】
・ また、発泡高さの比として、20℃以外に15℃、25℃等で発泡させたときの発泡高さを求め、その発泡高さと50℃での発泡高さとの比を算出して、その比をも参酌してホットフォームを製造することも可能である。
【0045】
・ 発泡体原料としてグリセリン、トリメチロールプロパン等の架橋剤を配合し、その配合量によって発泡体原料の硬化性を調整することもできる。
さらに、前記実施形態より把握される技術的思想について以下に記載する。
【0046】
・ 凹凸形状を有することを特徴とする請求項1から請求4のいずれか一項に記載の軟質ポリウレタン発泡体。このように構成した場合には、請求項1から請求4のいずれかに係る発明の効果を有効に発揮させることができる。
【0047】
・ 前記樹脂化触媒には、モルホリン系化合物を含有することを特徴とする請求項4に記載の軟質ポリウレタン発泡体。このように構成した場合には、樹脂化の最終段階で発泡体表面における硬化性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】軟質ポリウレタン発泡体を製造するための装置の断面を模式的に示す説明図。
【符号の説明】
【0049】
13…発泡体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール類、ポリイソシアネート類、触媒、発泡剤としての水及び整泡剤を含む軟質ポリウレタン発泡体の原料を120〜150℃で反応、発泡及び硬化させて得られ、見掛け密度が20〜30kg/mである軟質ポリウレタン発泡体であって、下記に示す発泡高さの比が0〜3%であることを特徴とする軟質ポリウレタン発泡体。
発泡高さの比={〔(50℃での発泡高さ)−(20℃での発泡高さ)〕/(20℃での発泡高さ)}×100
【請求項2】
前記水の配合量がポリオール類100質量部当たり5〜8質量部であることを特徴とする請求項1に記載の軟質ポリウレタン発泡体。
【請求項3】
前記整泡剤の配合量がポリオール類100質量部当たり1.7〜1.9質量部であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の軟質ポリウレタン発泡体。
【請求項4】
前記触媒は樹脂化触媒と泡化触媒とにより構成され、樹脂化触媒の配合量はポリオール類100質量部当たり0.15〜0.25質量部であり、泡化触媒の配合量はポリオール類100質量部当たり0.05〜0.2質量部であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の軟質ポリウレタン発泡体。

【図1】
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【公開番号】特開2007−56212(P2007−56212A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−246283(P2005−246283)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】