説明

転写冶具及び該転写冶具を用いた付着物の分析方法

【課題】対象物の表面がカーボン等で汚染されること無く、また、対象物表面の付着物がカーボンを含む場合であっても、その構成成分の分析を可能とする転写冶具を提供すること。
【解決手段】対象物の表面に配された付着物を転写すための転写冶具1であって、基体2と、基体2の一面2aに接着層3を介して配された軟性金属箔4とからなること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転写冶具に係り、より詳しくは、対象物に付着した付着物をカーボン汚染させることなく転写することが可能な転写冶具と、該転写冶具を用いて付着物の構成成分を分析する付着物の分析方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
観察対象表面の構造の型をとる方法として、例えば特許文献1−2や非特許文献1−3に記載のあるように、一段レプリカ法や二段レプリカ法が知られている。このレプリカ法の一例を挙げると、セルロースフィルムの小片を酢酸メチル中に短時間浸し、汚染物質が付着した観察対象物の表面上にしわのできないように貼り付け、十分に乾燥させた後、セルロースフィルムを対象物の表面より剥離させる。これにより、セルロースフィルムには、物質表面の構造が転写される。その後、このセルロースフィルムの表面にカーボン膜などを蒸着させ、分析する方法である。
【特許文献1】特開昭59−79832号公報
【特許文献2】特開昭62−66138号公報
【非特許文献1】電子顕微鏡学辞典、1990、p.984、朝倉書店
【非特許文献2】先端材料評価のための電子顕微鏡技法、1991、p.116、朝倉書店
【非特許文献3】電子顕微鏡、1990、p.139、共立出版
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながらレプリカ法は、対象物表面にセルロースフィルムを直接貼り付けるため、対象物の表面や汚染物質が、セルロースフィルムに含まれるカーボンで汚染されてしまう。さらに、セルロースフィルムを処理する酢酸メチル等の薬品でも汚染されてしまう。そのため、装置内に生じた汚染物質を分析する場合、該装置がカーボンや薬品等で汚染されてしまう。
また、レプリカ法を用いて、セルロースフィルムに付着した汚染物質の構成成分を解析することが行なわれているが、汚染物質がカーボンを含む物質であると、レプリカ法で検出されたカーボンは、セルロースフィルムに由来するものか、汚染物質に由来するものかの判別がし難い。そのため、汚染物質の構成成分を、レプリカ法を用いて詳細に分析することは困難である。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、対象物の表面や付着物がカーボンや薬品等で汚染されることが無く、また、対象物表面の付着物がカーボンを含む場合であっても、その構成成分の分析を可能とする転写冶具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に記載の転写冶具は、対象物の表面に配された付着物を転写するための転写冶具であって、基体と、該基体の一面に接着層を介して配された軟性金属箔とからなることを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の転写冶具は、請求項1において、前記軟性金属箔のモース硬度が1.2以上2.5以下であることを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の転写冶具は、請求項2において、前記軟性金属箔が少なくともインジウムを含むことを特徴とする。
本発明の請求項4に記載の転写冶具は、請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記接着層が導電性を有していることを特徴とする。
本発明の請求項5に記載の付着物の分析方法は、請求項1ないし4のいずれかに記載の転写冶具を用いて、対象物の表面に配された付着物の分析方法であって、前記転写冶具に配された前記軟性金属箔を、前記対象物の表面に押し当てる工程と、前記軟性金属箔の表面に転写された付着物の構成成分を分析する工程とを有することを特徴とする。
本発明の請求項6に記載の付着物の分析方法は、請求項5において、前記軟性金属箔の表面に転写された付着物を、電子線プローブマイクロアナライザを用いて分析することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の転写冶具において、基体の一面に軟性金属箔が配されていることにより、対象物の付着物を容易に該軟性金属箔に転写することができる。特に、軟性金属箔にはカーボンが含まれていないため、従来のセルロースからなる転写冶具を用いた場合とは異なり、付着物を転写する際に、対象物の表面と付着物とがカーボンで汚染されることがない。そのため、本発明の転写冶具を用いれば、付着物がカーボンを含む場合であっても、該付着物の構成成分を詳細に分析することが可能となる。また、転写する際に薬液が不要なため、対象物あるいは付着物が該薬液で汚染されることがなく、薬液にかかっていたコストを削減することができる。
また、本発明の転写冶具は持ち運びが容易なため、対象物の切出しが困難である大型フラットパネルやフラットパネル製造用大型装置の異常部等の目的箇所や、様々な対象物に対して適用できる。
さらに、軟性金属であるために、対象物や付着物の表面構造を、該軟性金属箔に簡便に転写することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を、図面を参照して詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0008】
図1は、本発明の転写冶具を模式的に示した図である。図1(a)は斜視図、図1(b)は、図1(a)におけるL−L断面図である。本発明の転写冶具は、対象物の表面に配された付着物が転写される転写冶具1であって、基体2と、基体2の一面2aに接着層3を介して配された軟性金属箔4とから概略構成されている。以下、本発明の転写冶具1を詳細に説明する。
【0009】
本明細書中、付着物とは、対象物の構成成分であってもよいし、対象物に生じた汚染物質であってもよい。汚染物質としては、例えば、転写対象物の母体部品がアルミニウム合金の場合は、プロセス成分の銅や、エッチングプロセスにおけるレジスト材料のカーボン元素等が挙げられる。
【0010】
基体2は、本発明の転写冶具1を対象物の表面に押圧した際に、基体2に凹み等が生じず、かつ軟性金属箔4を十分に支持でき、また接着層3が十分に接着できれば特に限定されるものではなく、例えばアルミニウム、真鍮、ステンレス鋼(SUS304等の非磁性鋼)、硬性プラスチック、グラファイト等からなるものが挙げられる。
軟性金属箔4に転写された対象物質の表面構造、あるいは、付着物の表面構造を走査型電子顕微鏡により観察する際は、該表面構造の観察が簡便に行なえるように、基体2は導電性を有していることが好ましい。このような、基体2としては、アルミニウムや真鍮等が挙げられる。
【0011】
基体2の形状としては、図1に示した方形に特に限定されるものではなく、例えば、かまぼこ型や、また、機械や手等で支持する部位に窪み等を備えたものであってもよい。
またその大きさは、手や機械等で担持できるサイズであればよく、例えば方形からなる場合、その大きさは5mm角〜20mm角である。10mm角サイズが押し込み圧の管理や、試料位置を採取するのに適し、フラットパネル製造用大型装置等の内部に生じた付着物を検出する際に、装置の分解や破壊等をする必要なく行なえる。そのため、装置が故障し汚染が生じた際は、装置を分解する前に該装置の汚染状況や汚染状態を把握することができ、短時間に装置の故障の原因を把握することが可能となる。
【0012】
基体2の一面2aは、その面2aに凹凸を配することで、基体2と軟性金属箔4との接着を強くすることができる。この場合、接着層3を省略し、基体2と軟性金属箔4とを直接接着させてもよい。基体2の一面2aに形成された凹凸は、軟性金属箔4の表面平滑性が維持でき、かつ対象物及び付着物の表面構造が軟性金属箔4に転写される際に、その構造に影響を及ぼすことが無い程度とする。
【0013】
接着層3としては、基体2に軟性金属箔4を接着できるものであれば特に限定されるものではなく、両面テープ等従来公知のものを用いることができる。この際、基体2に軟性金属箔4を接合させ、付着物を転写後に、軟性金属箔4と、例えば走査型電子顕微鏡等の評価装置本体の試料固定ステージとが同電位となるようにする必要がある。
軟性金属箔4に転写された対象物質の表面構造あるいは付着物の表面構造を走査型電子顕微鏡により観察する際は、該表面構造の観察が簡便に行なえるように、接着層3は導電性を有していることが好ましい。このような接着層3としては、導電性テープや導電性ペースト等が挙げられる。より具体的には、導電性テープとしては、ポリエステルフィルム上に銅メッキした粘着テープやカーボンで構成されたもの等が挙げられる。また、導電性ペーストとしては、カーボン、白金、銀などの導電性粒子を分散させたもの等が挙げられる。
【0014】
軟性金属箔4としては、対象物に本発明の転写冶具1を押し付けた際に、対象物がカーボンで汚染されないように、カーボンフリーであって、純度の高い金属を用いることが好ましい。また、軟性金属箔4は、対象物の表面に配された付着物や表面構造を転写できる硬度の金属を用いる。その硬度としては、モース硬度が1.2以上2.5以下が好ましい。このような金属としては、例えば硬度が1.2程度であるインジウム、硬度が1.5程度であるスズや鉛、ガリウム、硬度が1.8程度であるストロンチウム、硬度が2.0程度であるセレンやマグネシウム、硬度が2.5程度である亜鉛や、これらの合金等が挙げられる。また軟性金属箔4の厚さは、用いる金属により適宜調節することができるが、例えば50μm以上1000μm以下である。
【0015】
付着物の構成成分を分析する際は、簡便に付着物を軟性金属箔4に転写できることから、望ましくは単金属であるインジウムがよく、例えばその純度は、対象物や付着物の汚染を防止するために99.99%以上が望ましい。
または、スズや鉛、亜鉛等の上述した金属やこれらの合金を表面処理することによっても、付着物を軟性金属箔4に簡便に転写することができる。
【0016】
表面構造を転写する際には、モース硬度は1.2に近い方が簡便に転写することができ、好ましい。そのため、望ましくは単金属であるインジウムを用いる、あるいは、モース硬度が1.2に近くなるように合金を形成する。この際50nm程度の構造を転写することができる。
【0017】
本発明の転写冶具1によれば、基体2の一面2aに配された軟性金属箔4には、カーボンは含まれていないため、従来のセルロースフィルムを用いた場合とは異なり、付着物や対象物がカーボンで汚染されることがなくなる。そのため、付着物がカーボンを含む場合であっても、付着物中におけるカーボン含有量を精確に分析することが可能となる。
また、従来のセルロースフィルムを用いたレプリカ法では、セルロースフィルムに表面構造を転写する際は、薬液でセルロースフィルムを処理する必要があり、薬液による対象物の汚染が生じていた。本発明においては、転写冶具1を押圧するだけで付着物を転写することができるため、薬液による汚染が生じず、また薬液にかかっていたコストを削減することができる。
さらに、従来のセルロースフィルムを用いた転写冶具では、真空装置や半導体装置等に不都合が生じた際は、分析可能なサイズが小さかったため、これら装置の部品を分解あるいは破壊する必要があった。しかしながら、これら装置の部品は高価なものが多く、破壊できない場合が多いため、十分に汚染状況や汚染状態、故障の状況を把握する前に、該装置の修理を行なわなければならない状況が多かった。本発明の転写冶具1は小型で、取り扱い性に優れているため、例えば真空装置や半導体製造装置等に不都合が生じた場合であっても、装置の分解・破壊をすることなく、分析箇所を転写冶具の軟性金属箔4表面に転写することが可能となる。そのため、装置の故障や汚染が生じた際は、装置を分解して修理する前に該装置の汚染状況や汚染状態、故障の状況を把握することができ、短時間に装置の故障の原因を把握することが可能となる。
また、軟性金属箔4を用いているため、転写冶具1を対象物に押圧するだけで、簡便に付着物や対象物の表面構造を軟性金属箔4に転写させることができる。
【0018】
図2は、本発明の転写冶具1を用いて、対象物6の表面6aに付着した付着物5の分析を行なう際の様子を模式的に示した図である。
まず、図2に示すように、本発明の転写冶具1において、軟性金属箔4の表面4aを、対象物6の表面6aに押し付け、対象物6の表面6aに付着した付着物5を軟性金属箔4に転写する。
この際、付着物5の表面構造や、付着物5周辺の対象物6の表面構造も、軟性金属箔4に転写される。本発明の転写冶具1は、付着物5のみでなく、対象物6の表面構造をも転写できることから、対象物6の表面プロファイルを観察する際にも、用いることができる。
【0019】
転写冶具1を対象物6の表面6aに押し付ける際の押圧力としては、軟性金属箔4の厚さや対象物6の組成、構造等に応じて適宜調節して行なうことができるが、例えば30kPa/cm以上100kPa/cm以下である。押圧力が30kPa/cm未満であると、付着物5や対象物6あるいは付着物5の表面構造を軟性金属箔4に十分に転写することができず、付着物5の成分の分析、対象物6の表面構造や付着物の表面構造の分析を十分に行なうことが困難となる。一方、押圧力が100kPa/cm越えると、対象物6や付着物5の表面構造を軟性金属箔4に転写した際に、対象物5へ軟性金属箔4が癒着してしまう、もしくは該表面構造が破壊されてしまう虞がある。また、対象物6に損傷が生じてしまう虞がある。
【0020】
次に、軟性金属箔4の表面4aに転写された付着物5の構成成分や、対象物6あるいは付着物5の表面構造の分析を行なう。
【0021】
付着物5の構成成分の分析には、電子線プローブマイクロアナリシス(EPMA)、オージェ電子分光法等により行なうことができる。
従来のレプリカ法では、セルロースフィルムに付着物を転写させていたが、セルロースフィルムがカーボンを含んでいるため、付着物がカーボンを含んでいる際は、そのカーボン量を精確に検出することは困難であった。本発明の転写冶具1を用いることで、付着物5は、カーボンを含まない軟性金属箔4に転写されるため、付着物5がカーボンを含む場合であっても、付着物5中に含まれるカーボン量を精確に分析することが可能となる。
また、従来のセルロースフォルムを用いたレプリカ法では、セルロースフィルムに表面構造を転写する際は、薬液でセルロースフィルムを処理する必要があり、薬液による対象物の汚染が生じる虞があった。本発明の転写冶具を用いた分析方法によれば、転写冶具1を押圧するだけで付着物5を転写することができるため、薬液による汚染が生じず、また薬液にかかっていたコストを削減することができる。
さらに、押し付けるだけで付着物5を転写できるため、簡便に行うことができ、作業時間の短縮を図ることができる。
【0022】
付着物5や対象物6の表面構造の分析に関しては、例えば走査型電子顕微鏡、高解像度光学顕微鏡、レーザ顕微鏡等により行なうことができる。
上述したように、従来のセルロースフォルムを用いたレプリカ法では、セルロースフィルムに表面構造を転写する際は、薬液で該フィルムを処理する必要がある。そのため、対象物がセルロースフィルムを処理した薬液や、セルロースフィルムに含まれるカーボン等で汚染されていた。本発明の転写冶具1を用いることにより、転写冶具1を対象物6の表面6aに押圧するだけで表面構造を転写できるため、対象物6の表面6aを薬液やカーボン等で汚染することなく、簡便に対象物6の表面構造を分析することが可能となる。また、薬液が不必要であるため、該薬液にかかっていたコストを削減することができる。更に、表面構造の転写に要する作業時間を、短縮することができる。また、軟性金属箔4に転写された表面構造は、十分な強度を備えているため、二段レプリカ法よる解析に用いることもできる。
【実施例】
【0023】
アルミニウム合金からなる10mm角の基体の一面に、厚さ0.1mmのインジウム箔を両面粘着テープにより貼り付け、転写冶具を作製した。インジウム箔としては、対象物及び付着物の表面の汚染を避けるため、純度99.99%以上のものを使用した。両面粘着テープとしては導電性のものを用い、具体的には、住友3M社製の導電性テープ(銅メッキ;両面粘着性)を用いた。
この転写冶具を、半導体製造装置用ホットプレートの表面に押し付け、ホットプレートの表面の付着物をインジウム箔に転写させた。図3(a)及び(b)は、付着物が付着した半導体製造装置用ホットプレートの表面をデジタルカメラにより観察して得られた画像である。
【0024】
転写冶具のインジウム箔表面に転写されたホットプレートの表面構造および付着物の表面構造を、走査型電子顕微鏡を用いて観察をした。その結果を、図4に示す。図4(a)は、図3(a)のホットプレートに転写冶具を押圧して得られたインジウム箔表面の画像であり、図4(b)は、図3(a)のホットプレートに転写冶具を押圧して得られたインジウム箔表面の画像である。また、図5は、転写を行なう前のインジウム箔表面の走査型電子顕微鏡により得られた画像である。図4より、付着物の表面構造及びホットプレートの表面構造が転写されたインジウム箔の表面は、付着物及びホットプレートの表面構造と逆の凹凸関係となっていた。すなわち、付着物及びホットプレートの凸部は、インジウム箔の表面においては凹形状になり、その構造が転写されていることが確認された。特に図4、図5より、本発明の転写冶具を用いれば、ホットプレート物質の特有の段差構造も観察され、50nm程度の表面構造を分析可能なことが確認された。ホットプレートは層間化合物からなるため、ホットプレートの画像データ(図4)では、規則的な線状模様が観察される。この線状模様のうち、コントラストの強い黒色部は、層間(0.334nm)の数10層の段差が観察されているものである。したがって、図5の転写された線状模様の結果からすると、さらに微細なパターンも転写出来ることが示唆される。
【0025】
次に、図4(a)に示した転写された付着物の構成成分の分析を行なうため、転写後のインジウム箔の表面を電子線プローブマイクロアナライザにて分析した。その結果を表1に示す。表1には、付着物中において検出された各検出元素に対するそれぞれの検出強度、wt%、mol%を示した。なお、付着物としては、カーボンを含むものを用いた。電子線プローブマイクロアナライザとしては、波長分散型検出方式で、6チャンネルの分光結晶を用い、原子番号5番のボロン(B)から92番のウラン(U)までを検出出来る。また、EPMAの測定条件は、電子線加速15keV、入射電子線強度0.2μAで、試料電流は0.145μA、1箇所あたりの測定時間は10分、電子線ビーム径は20μm、取り出し角度は52.5°で行なった。
【0026】
【表1】

【0027】
従来のセルロースフィルムを用いたレプリカ法では、セルロースによるカーボンの汚染があるため、付着物がカーボンを含でいた場合、レプリカ法での分析によってwt%、mol%の合計が100%を越えてしまい、精確なカーボン含有量の測定は不可能であったが、表1に示すように本発明の転写冶具を用いた際には、wt%、mol%の合計が共に100%となり、カーボンを含む付着物においても精確に各構成成分を検出できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、物質表面の構造と付着物とをカーボン汚染させることなく、転写、採取することができ、かつ、転写冶具は持ち運びが容易なため、様々な対象物に対して簡便かつ迅速に転写を行なうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の転写冶具の一例を模式的に示した図である。
【図2】本発明の転写冶具を用いた付着物の転写方法の一例を模式的示した図である。
【図3】付着物が付着した対象物の表面の一例を示した画像である。
【図4】表面構造と付着物とが本発明の転写冶具に転写された際のインジウム箔を走査型電子顕微鏡で観察して得られた画像である。
【図5】表面構造と付着物とが転写される前のインジウム箔を走査型電子顕微鏡で観察して得られた画像である。
【符号の説明】
【0030】
1 転写冶具、2 基体、3 接着層、4 軟性金属箔、5 付着物、6 対象物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の表面に配された付着物を転写するための転写冶具であって、
基体と、該基体の一面に接着層を介して配された軟性金属箔とからなることを特徴とする転写冶具。
【請求項2】
前記軟性金属箔のモース硬度が1.2以上2.5以下であることを特徴とする請求項1に記載の転写冶具。
【請求項3】
前記軟性金属箔が少なくともインジウムを含むことを特徴とする請求項2に記載の転写冶具。
【請求項4】
前記接着層が導電性を有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の転写冶具。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の転写冶具を用いて、対象物の表面に配された付着物の分析方法であって、
前記転写冶具に配された前記軟性金属箔を、前記対象物の表面に押し当てる工程と、
前記軟性金属箔の表面に転写された付着物の構成成分を分析する工程とを有することを特徴とする付着物の分析方法。
【請求項6】
前記軟性金属箔の表面に転写された付着物を、電子線プローブマイクロアナライザを用いて分析することを特徴とする請求項5に記載の付着物の分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−71781(P2010−71781A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239059(P2008−239059)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】