説明

転写箔の製造方法

【課題】 表面に凹凸が発生しにくく外観に優れ、しかも、材料費アップもなく、低コストで製造できる転写箔の製造方法を提供する。
【解決手段】 (1)巻取状の基材11へ離型層12及び剥離層13を全面に形成する巻取工程と、(2)複数列の非スリット部分33A〜nのみを加熱して、該スリット部分31A〜n+1の離型層12と剥離層13との間の剥離力を非スリット部分33の剥離力の150%以上とする剥離力増加工程と、(3)複数列のスリット部分31A〜n+1でスリット加工しても、スリット部分が箔こぼれしないスリット工程と、からなり、剥離層13が透明樹脂層13A又は電離放射線硬化樹脂層13Bであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写箔の製造方法に関し、さらに詳しくは、複数列の転写構造を有する巻取をスリットして1列の転写箔とする場合のスリット時の箔こぼれを防いだ転写箔の製造方法に関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)従来、転写箔は、例えば、家具、キャビネット、家電製品の表示窓、雑貨等の各種物品の表面化粧や表面硬度付与等の目的で、幅広く利用されている。この様な転写箔は、基本的に、離型性の基材上に転写層を設けた構成であり、通常は転写層の構成内容を用途に合わせて、剥離層、絵柄層、ハードコート層、接着剤層等を適宜組合わせた構成としている。また、幅の狭い転写箔は、通常、広幅で製造したものを所定の幅にスリット加工する事で得ている。ところが、スリット加工は転写層形成後に行うものであり、スリット付近の転写層の一部が支持体から剥離し脱落する、いわゆる「箔こぼれ」の原因となる。箔こぼれが生じると、脱落した転写層の屑は、転写層表面や支持体裏面に付着する。転写層表面に付着した転写層の屑は、転写不良や転写製品の外観不良の原因となる。また、支持体の裏面に付着した屑も、不良原因となる。それは、例えば、インモールド転写等の射出成形同時転写では、支持体シート裏面側に付着した屑は金型面との間に挟まれた状態で成形される結果、支持体シートを通して、その部分の成形品表面に凹みが発生する成形不良となって現れるからである。箔こぼれは、転写層が厚い場合に特に起こりやすい。転写層が厚くなるのは、例えば、絵柄部分の色の重ねが多い場合や、転写後に最表面層となる剥離層の表面物性強化を目的に行う厚塗りコートやハードコート層等とする場合等である。そして、絵柄意匠が例えば砂目模様や石目模様等の模様ならば目立ち難く直ちに製品不良となる事はないが、濃淡の無い金属光沢意匠、鏡面光沢意匠、或いは液晶表示部のカバー等となる家電製品や携帯電子機器の表示窓等では、特に目立ち易く注意が必要であった。
従って、転写箔の製造方法は、外観の悪さが特に目立ち易い金属光沢意匠、鏡面光沢意匠、或いは液晶表示部のカバー等となる家電製品や携帯電子機器の表示窓等の転写層が厚い構成でも、表面に凹凸が発生しにくく外観に優れ、しかも、材料費アップもなく、低コストで製造することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−65258号公報
【特許文献2】実開平6−65259号公報
【特許文献3】実開平4−45799号公報
【特許文献4】特開平6−183124号公報
【特許文献5】特開平11−58584号公報
【特許文献6】特開2003−291594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(従来技術)従来、支持体シート上のスリット部分のみに、転写層と支持体シートの両方に密着が良い箔こぼれ防止層をストライプ状に設けた構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、支持体シート上の転写層として剥離層、絵柄層、接着剤層を順次設ける際に、支持体シートに接する剥離層をスリット部分を外して設けた上から、該スリット部分に支持体シートと絵柄層との両方に接着の良い箔こぼれ防止層を設けた構成が知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、特許文献1、2では、箔こぼれ防止層を追加的に設ける必要がある為に、印刷ユニット数や製造工程数の増加に繋がり、コストアップの要因となるという欠点がある。
さらに、支持体シート上に転写層を設ける際に、スリット部分は転写層非形成部として外して、それ以外の部分のみに転写層の全層を設けた構成が知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、全ての転写層の構成層をストライプ状に設ける必要があることから、転写層の形成手段はパターン状に形成可能な印刷法に限られ、塗工法が採用できない。この為、例えば最表面となる剥離層の膜強度を強くする等の目的で、厚みの厚い層(例えば5μm程度)を設ける転写箔には適さない。なお、印刷法でも厚い層を重ね刷り印刷で多少なりとも対応可能であるが、印刷ユニット数増加の問題という問題点がある。
さらにまた、支持体シート上に転写層を設ける際に、支持体シートに接する剥離層をスリット部分を外して設けた上から、絵柄層は剥離層上のみに設け、それから全面にアンカー層、接着剤層等を順次設けた構成が知られている(例えば、特許文献4参照。)。しかしながら、上記公報の場合と同様に、最表面となる剥離層の膜強度を強くする等の目的で、厚みの厚い層として塗工法で全面に設けてしまう転写箔には適さないという欠点がある。
さらにまた、支持体シートとして、予め易接着処理が施された基材シート上にスリット部分を外して離型層を設けた構成のものを用いて、転写層の剥離層は全面に設けた構成が知られている(例えば、特許文献5参照。)。しかしながら、厚みの厚い剥離層を塗工法で形成する事も可能となる。しかし、この構成では、使用する基材シートが易接着処理が施されているものとなり、その分、易接着処理が未処理の基材シートよりも材料費がアップしてしまうという問題点がある。
さらにまた、支持体シートはその離型層がスリット部分を外して設けられ、更に、離型層部分及びスリット部分の上から全面に易接着処理が施されてなり、前記剥離層はスリット部分及び離型層部分に設けられ、離型層部分の支持体シートからは容易に剥離するがスリット部分の支持体シートからは容易に剥離しない層である構成が知られている(例えば、特許文献6参照。)。しかしながら、易接着処理が施されているものとなり、その分、易接着処理が未処理の基材シートよりも材料費がアップしてしまうという欠点がある。
【0006】
そこで、本発明は上記のような問題点を解消するために、本発明者らは鋭意研究を進め、本発明の完成に至ったものである。その目的は、外観の悪さが特に目立ち易い金属光沢意匠、鏡面光沢意匠、或いは液晶表示部のカバー等となる家電製品や携帯電子機器の表示窓等の転写層が厚い構成でも、表面に凹凸が発生しにくく外観に優れ、しかも、材料費アップもなく、低コストで製造できる転写箔の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1の発明に係わる転写箔の製造方法は、支持体10の一方の面へ剥離自在に転写層20Aが構成され、前記転写層20Aは幅方向に複数列のスリット部分31A、31B、31C、・・、31n、31n+1と複数列の非スリット部分33A、33B、33C、・・、33nとが交互に設けられ、かつ、前記転写層20Aは少なくとも透明樹脂層である剥離層13Aを有する層構成を有し、前記支持体10は基材11と離型層12との層構成からなり、前記剥離層13Aは前記離型層12と接するように層構成され、かつ、前記離型層12と前記剥離層13Aとの層間で剥離させることができ、幅方向に複数列のスリット部分と複数列の非スリット部分とが設けられてなる巻取状の転写箔1Aから、複数列のスリット部分でスリットして、1列の非スリット部分を有する転写箔1の製造方法であって、(1)巻取状の前記基材11へ離型層組成物を全面に塗布し乾燥して前記離型層12を形成し、該離型層12面へ剥離層組成物を全面に塗布し乾燥して前記剥離層13Aを形成して、巻取状の転写箔1Aを製造する巻取工程と、(2)前記複数列のスリット部分31A、31B、31C、・・、31n、31n+1のみを加熱して、該スリット部分31A、31B、31C、・・、31n、31n+1の前記離型層12と前記剥離層13Aとの間の剥離力を前記非スリット部分33A、33B、33C、・・、33nの前記離型層12と前記剥離層13Aとの間の剥離力の150%以上とする剥離力増加工程と、(3)複数列の前記スリット部分31A、31B、31C、・・、31n、31n+1でスリット加工しても、スリット部分が箔こぼれしないで、1列の非スリット部分を有する転写箔1とすることのできるスリット工程と、からなるように、したものである。
請求項2の発明に係わる転写箔の製造方法は、支持体10の一方の面へ剥離自在に転写層20Bが構成され、前記転写層20Bは幅方向に複数列のスリット部分31A、31B、31C、・・、31n、31n+1と複数列の非スリット部分33A、33B、33C、・・、33nとが交互に設けられ、かつ、前記転写層20Bは少なくとも電離放射線硬化樹脂層である剥離層13Bを有する層構成を有し、前記支持体10は基材11と離型層12との層構成からなり、前記剥離層13Bは前記離型層12と接するように層構成され、かつ、前記離型層12と前記剥離層13Bとの層間で剥離させることができ、幅方向に複数列のスリット部分と複数列の非スリット部分とが設けられてなる巻取状の転写箔1Aから、複数列のスリット部分でスリットして、1列の非スリット部分を有する転写箔1の製造方法であって、(1)巻取状の前記基材11へ離型層組成物を全面に塗布し乾燥して前記離型層12を形成し、該離型層12面へ剥離層組成物を全面に塗布し乾燥して前記剥離層13Bを形成して、巻取状の転写箔1Bを製造する巻取工程と、(2)前記複数列のスリット部分31A、31B、31C、・・、31n、31n+1のみへ電離放射線を照射して、該スリット部分31A、31B、31C、・・、31n、31n+1の前記離型層12と前記剥離層13Bとの間の剥離力を前記非スリット部分33A、33B、33C、・・、33nの前記離型層12と前記剥離層13Bとの間の剥離力の150%以上とする剥離力増加工程と、(3)複数列の前記スリット部分31A、31B、31C、・・、31n、31n+1でスリット加工しても、スリット部分が箔こぼれしないで、1列の非スリット部分を有する転写箔1とすることのできるスリット工程と、からなるように、したものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1、2の本発明によれば、外観の悪さが特に目立ち易い金属光沢意匠、鏡面光沢意匠、或いは液晶表示部のカバー等となる家電製品や携帯電子機器の表示窓等の転写層が厚い構成でも、表面に凹凸が発生しにくく外観に優れ、しかも、材料費アップもなく、低コストで製造できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】幅方向に複数列のスリット部分及び非スリット部分とが設けられてなる本願発明の製造途上の巻取状の転写箔1Aを示す断面図である。
【図2】幅方向に複数列のスリット部分及び非スリット部分とが設けられてなる本願発明の製造途上の巻取状の転写箔1Bを示す断面図である。
【図3】転写箔1A及び1Bの複数列のスリット部分及び非スリット部分の配置、並びに、スリット部分をスリットして1列の転写箔1とすることを説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0011】
(製造方法)本願発明の転写箔1Aの製造方法は、図1に示すように、支持体10の一方の面へ剥離自在に転写層20Aが構成され、図3に示すように、前記転写層20Aは幅方向に複数列のスリット部分31A、31B、31C、・・、31n、31n+1と複数列の非スリット部分33A、33B、33C、・・、33nとが交互に設けられている。かつ、前記転写層20Aは少なくとも透明樹脂層である剥離層13Aを有する層構成を有し、前記支持体10は基材11と離型層12との層構成からなり、前記剥離層13Aは前記離型層12と接するように層構成され、かつ、前記離型層12と前記剥離層13Aとの層間で剥離させることができる。そして、(1)巻取状の前記基材11へ離型層組成物を全面に塗布し乾燥して前記離型層12を形成し、該離型層12面へ剥離層組成物を全面に塗布し乾燥して前記剥離層13Aを形成して、巻取状の転写箔1Aを製造し、(2)前記複数列のスリット部分31A、31B、31C、・・、31n、31n+1のみを加熱して、該スリット部分31A、31B、31C、・・、31n、31n+1の前記離型層12と前記剥離層13Aとの間の剥離力を前記非スリット部分33A、33B、33C、・・、33nの前記離型層12と前記剥離層13Aとの間の剥離力の150%以上と剥離力を増加させて、(3)幅方向に複数列のスリット部分と複数列の非スリット部分とが設けられてなる巻取状の転写箔1Aから、1列の非スリット部分を有する転写箔1とするために、複数列のスリット部分31A、31B、31C、・・、31n、31n+1でスリットする、製造方法である。即ち、スリット部分31A〜n+1の前記離型層12と前記剥離層13Aとの間の剥離力を増加させることで、スリット加工しても、スリット部分の箔こぼれを防止することができる。なお、図3では作図の都合上、「31C、・・、31n、」及び「33C、・・、33n」の「・・」部分は省略して図示している。
【0012】
請求項2の発明に係わる転写箔1の製造方法は、請求項1と層構成や、スリット部分と非スリット部分の配置は同じであるが、剥離層13Bとして電離放射線硬化樹脂層を用い、スリット部分31A、31B、31C、・・31n、31n+1の前記離型層12と前記剥離層13Bとの間の剥離力の増加を電離放射線を照射することで行う。
【0013】
なお、非スリット部分33A、33B、33C、・・33nを、非スリット部分33A〜nと表記するか、まとめて非スリット部分33と表記し、また、スリット部分31A、31B、31C、・・、31n、31n+1を、スリット部分31A〜n+1と表記するか、まとめてスリット部分31と表記する。また、本願発明は剥離層13が透明樹脂層13A又は電離放射線硬化樹脂層13Bであり、これ対応して転写層20A又は転写層20Bとなり、さらに、これ対応して複数列の巻取状の転写箔1A又は複数列の巻取状の転写箔1Bとなり、さらにまた、転写層20Aと転写層20Bとを合わせて転写層20と表記する。さらにまた、転写箔1A又は転写箔1Bから、スリットされて1列となった転写箔を転写箔1として説明する。
【0014】
(効果)本発明によれば、既存の印刷機を用い、剥離層等の転写層の厚さは自由に設定することができ、材料費のコストアップも起こさずに、スリット時の箔こぼれが防止できる。このために、表面に凹凸が発生すると、外観の悪さが特に目立ち易い金属光沢意匠、鏡面光沢意匠、或いは液晶表示部のカバー等となる家電製品や携帯電子機器の表示窓等の用途への転写箔に使用できる。
【0015】
(基材)基材11としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド樹脂、セロファン等のセルロース系樹脂などが用いられる。これら樹脂の単体、或いは2種以上の混合樹脂したらり、単層或いは積層体としてもよい。厚さとしては、用途に応じた厚みのもを用いれば良いが、通常厚み5〜200μm程度、機械的強度、コスト等を勘案すると、より好ましくは10〜75μm程度が望ましい。
【0016】
(離型層)離型層12は、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の各種熱硬化性樹脂、或いは、アクリレート系、ポリエステル系、エポキシ系等の電離放射線硬化性樹脂等の硬化性樹脂を1種又は2種以上混合したものが使用できる。なお、これら硬化性樹脂は、樹脂それ自体でも離型性を付与する事もできるが、更に離型性を向上させる必要がある場合には、フッ素樹脂やワックス、シリコーン等の公知の離型剤をインキ中に添加しても良い。また、例えば、アクリル樹脂等のビニル系樹脂、セルロース系樹脂等を用いたインキ中に、上記の如き公知の離型剤を添加したものを用いても良い。なお、離型層の形成法としては、例えば、グラビア印刷法、ロールコート法などの公知の印刷法やコート法でよい。また、離型層の厚みは特に限定はないが、通常は0.01〜5μm程度、好ましくは0.1〜2μmとする。
【0017】
(転写層)転写層20としては、基材11に設けられた離型層12とからなる支持体10の離型層12面に設けられており、転写層20には少なくとも剥離層13を有している。必要に応じて、保護層、印刷層、各種の機能層、接着層などを設けてもよい。剥離層13は離型層12に対して剥離性を有するが、剥離層13及び離型層12を全面に塗布して形成した後に、スリット部分31のみの剥離力を増加させて、剥離性を悪くさせることで、スリット部分31をスリット加工しても、スリット部分の箔こぼれを防止することができるのである。
【0018】
(剥離層)転写層20には少なくとも剥離層13を有しており、転写後は被転写体側に移行し転写された転写層の表面になる。例えば、耐擦傷性、耐摩耗性、耐薬品性、耐汚染性などの機能をもたせる。特に剥離層をハードコート層として設けて耐擦傷性や耐摩耗性の機能を担わせる場合では、本発明による箔こぼれ防止効果が効果的である。それは、剥離層をハードコート層とする場合は、剥離層は厚め(例えば1μm以上)に且つ硬質膜とすべく硬化性樹脂の硬化物層として設けるからである。なお、耐薬品性や耐汚染性等も剥離層は、硬化性樹脂の硬化物層とするのが通常好ましく、効果的である。
【0019】
剥離層に用いる樹脂としては、前記機能を考慮しつつ、用途に応じて要求されるその他の機能を果たすことのできる物性を有する熱可塑性樹脂、或いは熱硬化性樹脂などの透明層樹脂層13Aを適宜選択すれば良い(請求項1の発明)。また、例えば、電離放射線硬化性樹脂等の硬化性樹脂である電離放射線硬化樹脂層13Bを適宜選択すれば良い(請求項2の発明)。
【0020】
(透明樹脂層)透明層樹脂層13Aとしての熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、セルロース系樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、或いは、酢酸ビニル樹脂等のビニル重合体等を使用することができる。また、熱硬化性樹脂としては、メラミン樹脂、2液硬化型ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を使用することができる。
【0021】
(電離放射線硬化樹脂層)電離放射線硬化樹脂層13Bとしては、アクリレート系やエポキシ系等の電離放射線硬化性樹脂を使用することができる。紫外線や電子線等の電離放射線によって硬化可能な樹脂組成物であり、具体的には、分子中にラジカル重合性不飽和結合、又はカチオン重合性官能基を有する、プレポリマー(所謂オリゴマーも包含する)及び/又はモノマーを適宜混合した樹脂組成物が好ましくは用いられる。これらプレポリマー又はモノマーは、単体又は複数種を混合して用いる。
【0022】
上記プレポリマー又はモノマーは、具体的には、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物からなる。また、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも用いられる。なお、例えば(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。また、以下の(メタ)アクリレートも同様に、アクリレート又はメタクリレートの意味である。また、本明細書では、それらのアクリレート化合物及びメタクリレート化合物を総称して、単にアクリレート(化合物)とも呼ぶ。
【0023】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーの例としては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が使用できる。分子量としては、通常250〜100,000程度のものが用いられる。
【0024】
ラジカル重合性不飽和基を有するモノマーの例としては、単官能モノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等がある。また、多官能モノマーとして、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等もある。
【0025】
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーの例としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーがある。チオールとしては、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールがある。また、ポリエンとしては、ジオールとジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したもの等がある。
【0026】
なお、電離放射線としては、電離放射線硬化性樹脂(組成物)中の分子を硬化反応させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子が用いられる。通常用いられるものは、紫外線又は電子線であるが、この他、可視光線、X線、イオン線等を用いる事も可能である。紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用される。紫外線の波長としては通常190〜380nmの波長域が主として用いられる。電子線源としては、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、或いは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用い、100〜1000keV、好ましくは、100〜300keVのエネルギーをもつ電子を照射するものが使用される。
【0027】
剥離層は、上記の如き樹脂を用いた塗液を用いて、公知の塗工法で形成することができる。なお、本発明の剥離層はパターン状に部分的に形成する必要がないので、特に印刷法で形成しなくてもよいが、印刷法で形成しても良い。但し、印刷法の場合には、厚い剥離層とする場合には、重ね刷りが必要となる。なお、剥離層の厚みは、要求される物性に応じて選択されるが、一般には0.1〜20μm程度、表面強度を要求される場合には好ましくは1〜20μm程度で、通常は1〜10μmである。
【0028】
また、ハードコート層としてより優れた性能が必要な場合には、熱可塑性樹脂よりは硬化性樹脂を、さらに硬化性樹脂においては電離放射線硬化性樹脂を使用するのが好ましい。そして、これらの各種樹脂のなかでも、熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂等の硬化性樹脂は、従来から箔こぼれが生じ易かった為に、その防止効果という点で本発明には好適である。
【0029】
(他の層)転写層20には少なくとも剥離層13A又は剥離層13Bを有し、上記した層以外にも、支持体や転写層には、本願発明の機能に影響のない範囲で、他の層を設けてもよい。例えば、保護層、帯電防止層、プライマ層、印刷層15などの装飾層、各種の機能層、接着層19などである。
【0030】
(装飾層)装飾層としては印刷層15などで、公知の材料、方法によって形成すればよい。印刷層の絵柄は、特に限定されるものではないが、木目、石目、布目等の天然物の意匠や動植物模様、図形、記号、各種抽象模様、文字、或いは全面ベタ柄等を表現する層であり、通常は公知のインキを用いた公知の印刷法やコティング法によって形成できる。
【0031】
(接着層)接着層19は、転写層20を被転写体に転移、接着させる為の層であるが、以外の転写層の構成層が被転写体に対して接着性を有する場合、或いは被転写体側に接着剤を施して転写する場合、或いは被転写体自体が接着性を有する場合等では、設けなくても良い。接着層は、公知の感熱接着剤、溶剤型接着剤、電離放射線硬化性接着剤等の中から用途に応じて選択すれば良い。例えば、感熱接着剤としては、アクリル樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、ポリアミド樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル、ロジンエステル樹脂、ゴム系樹脂、アイオノマー、クマロン樹脂等の樹脂を1種又は2種以上混合して用いる。通常は公知の印刷法やコティング法によって形成できる。なお、接着剤層の厚みは、一般的には0.5〜10μm程度であり、好ましくは、1〜5μm程度である。
【0032】
(製造工程)製造方法は、
(1)巻取状の前記基材11へ離型層組成物を全面に塗布し乾燥して前記離型層12を形成し、該離型層12面へ剥離層組成物を全面に塗布し乾燥して前記剥離層13Aを形成して、巻取状の転写箔1Aを製造する巻取工程と、(2)前記複数列のスリット部分31A、31B、31C、・・、31n、31n+1のみを加熱して、該スリット部分31A、31B、31C、・・、31n、31n+1の前記離型層12と前記剥離層13Aとの間の剥離力を前記非スリット部分33A、33B、33C、・・、33nの前記離型層12と前記剥離層13Aとの間の剥離力の150%以上とする剥離力増加工程と、(3)複数列の前記スリット部分31A、31B、31C、・・、31n、31n+1でスリット加工しても、スリット部分が箔こぼれしないで、1列の非スリット部分を有する転写箔1とすることのできるスリット工程と、からなる。
【0033】
(第1工程)第1工程は、巻取状の基材11へ離型層組成物を全面に塗布し乾燥して離型層12を形成し、該離型層12面へ剥離層組成物を全面に塗布し乾燥して剥離層13Aを形成する巻取工程であり、前述してきた層の材料及び形成方法で層構成の巻取30とする。なお、図3に示すように、転写層20Aは幅方向に設けてなる複数列のスリット部分31A〜n+1でスリットされて、1列の非スリット部分33A〜nとから構成されている。また、剥離層13Aは透明樹脂層である。
【0034】
(第2工程)第2工程は、第1工程で得られた複数列の巻取状の転写箔1Aから、1列の転写層20Aを有する転写箔1とするために、スリット部分の剥離力を増加させるように調整する剥離力増加工程である。即ち、複数列のスリット部分31A〜n+1のみを加熱して、該スリット部分31A〜n+1の前記離型層12と前記剥離層13Aとの間の剥離力を前記非スリット部分33A〜nの前記離型層12と前記剥離層13Aとの間の剥離力の150%以上とする。図3に示すように、スリット部分31でスリットされ、1列の転写箔1となる。通常、スリット部分31A〜nでスリットされて、複数の転写箔1でが得られる。
【0035】
図3では作図の都合上、スリット部分31A〜nは線で表しているが、スリット部分31A〜nには幅があり、該幅はスリット加工での精度を考えると、5〜15mm程度が好ましい。この範囲未満であると、スリット位置が離型層部分に進入し易くなり、逆にこの範囲を超過すると、余白部分が無意味に広くなり無駄なコスト増につながる。また、スリット部分31A〜n+1の数や配置は、転写箔1の幅や列数で適宜定めればよく、nが1以上の整数である。転写箔1の幅や列数の設定の自由度が高く、また、幅や列数の異なる異種製品にも流用できる。なお、スリット部分31A〜n+1以外は、非スリット部分33A〜nとなり、転写箔1の転写層20Aとなる。
【0036】
複数のスリット部分31を加熱することで、スリット部分31の離型層12と剥離層13との間の剥離力を、非スリット部分33の離型層12と剥離層13Aとの間の剥離力の150%以上となるように、剥離力を増加させる。該剥離層力としては、好ましくは0.2N/18mm以上とし、非スリット部分33の剥離力は転写作業時に支障がないように剥離しやすく、弱い剥離力を維持させる。
【0037】
このように、離型層12および剥離層13を基材11の全面に設け、スリット前にスリット部分31の剥離重さを箔こぼれが発生しないレベルまで増加させて重くするというものである。これにより、転写箔製造時にストライプ塗工がいらず、また、従来のように転写箔の製品幅に合わせて層構成しないでも、自由で所望な製品巾に合わせてスリット可能となる。
【0038】
(第3工程)第3工程は、スリット加工時に前記スリット部分31が箔こぼれしないで1列の転写箔1Aとするスリット工程である。スリット部分31A〜n+1でスリットして、1列で個々の転写箔1となり、スリット部分31A〜n+1においては剥離性を悪くしてあるので、箔こぼれせず、かつ、1列となった転写箔1の非スリット部分33では剥離力が維持されているので、剥離性がよく、被転写体へ容易に転写することができる。なお、スリット部分31A、31n+1の両端部は通常廃棄される。
【0039】
(他の製造方法)また他の製造方法は、層構成やスリット部分と非スリット部分の配置は同じであるが、剥離層13Bとして電離放射線硬化樹脂層を用い、スリット部分31A、31B、31C、・・、31n、31n+1の前記離型層12と前記剥離層13Bとの間の剥離力の増加を電離放射線を照射することで行うものである。
【0040】
(第1、2工程)第1工程は、剥離層13として電離放射線硬化樹脂層を用いる以外は同様であり、同様に製造する。第2工程では、加熱の代わりに電離放射線を用いる。
【0041】
(電離放射線)電離放射線としては、紫外線や電子線などの他に活性エネルギーを含めてもよく、例えば、可視光線、紫外線、電子線、X線、イオン線などであるが、紫外線が好ましい。紫外線としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプなどの紫外線で、紫外線の波長としては通常190〜380nmの波長域が主として用いられる。スリット部分31に電離放射線などの活性エネルギーを照射して、スリット部分31の離型層12と剥離層13との間の剥離力を、スリット部分33のそれと比較して150%以上となるように、剥離力を増加させる。該剥離層力としては、好ましくは0.2N/18mm以上とし、非スリット部分33の剥離力は転写作業時に支障がないように剥離しやすく、弱い剥離力を維持させる。
【0042】
(第3工程)第3工程は、スリット加工時に前記スリット部分31が箔こぼれしないで1列の転写箔1とするスリット工程である。スリット部分31A〜n+1でスリットして、1列で個々の転写箔1となり、スリット部分31A〜n+1においては剥離性を悪くしてあるので、箔こぼれせず、かつ、1列となった転写箔1の非スリット部分33では剥離力が維持されているので、剥離性がよく、被転写体へ容易に転写することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
(産業上の利用可能性)本発明の主なる用途としては、外観の悪さが特に目立ち易い金属光沢意匠、鏡面光沢意匠、或いは液晶表示部のカバー等となる家電製品や携帯電子機器の表示窓等の転写層が厚い構成でも、表面に凹凸が発生しにくく外観に優れ、しかも、材料費アップもなく、低コストで製造できるものである。しかしながら、表面に凹凸が発生しにくく外観に優れ、しかも、材料費アップもなく、低コストで製造できる用途であれば、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0044】
1、1A、1B:転写箔
10:支持体
11:基材
12:離型層
13、13A、13B:剥離層
15:印刷層
19:接着層
20、20A、20B:転写層
31:スリット部分
33:非スリット部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体10の一方の面へ剥離自在に転写層20Aが構成され、前記転写層20Aは幅方向に複数列のスリット部分31A、31B、31C、・・、31n、31n+1と複数列の非スリット部分33A、33B、33C、・・、33nとが交互に設けられ、かつ、前記転写層20Aは少なくとも透明樹脂層である剥離層13Aを有する層構成を有し、前記支持体10は基材11と離型層12との層構成からなり、前記剥離層13Aは前記離型層12と接するように層構成され、かつ、前記離型層12と前記剥離層13Aとの層間で剥離させることができ、幅方向に複数列のスリット部分と複数列の非スリット部分とが設けられてなる巻取状の転写箔1Aから、複数列のスリット部分でスリットして、1列の非スリット部分を有する転写箔1の製造方法であって、(1)巻取状の前記基材11へ離型層組成物を全面に塗布し乾燥して前記離型層12を形成し、該離型層12面へ剥離層組成物を全面に塗布し乾燥して前記剥離層13Aを形成して、巻取状の転写箔1Aを製造する巻取工程と、(2)前記複数列のスリット部分31A、31B、31C、・・、31n、31n+1のみを加熱して、該スリット部分31A、31B、31C、・・31n、31n+1の前記離型層12と前記剥離層13Aとの間の剥離力を前記非スリット部分33A、33B、33C、・・、33nの前記離型層12と前記剥離層13Aとの間の剥離力の150%以上とする剥離力増加工程と、(3)複数列の前記スリット部分31A、31B、31C、・・、31n、31n+1でスリット加工しても、スリット部分が箔こぼれしないで、1列の非スリット部分を有する転写箔1とすることのできるスリット工程と、からなることを特徴とする転写箔の製造方法。
【請求項2】
支持体10の一方の面へ剥離自在に転写層20Bが構成され、前記転写層20Bは幅方向に複数列のスリット部分31A、31B、31C、・・、31n、31n+1と複数列の非スリット部分33A、33B、33C、・・、33nとが交互に設けられ、かつ、前記転写層20Bは少なくとも電離放射線硬化樹脂層である剥離層13Bを有する層構成を有し、前記支持体10は基材11と離型層12との層構成からなり、前記剥離層13Bは前記離型層12と接するように層構成され、かつ、前記離型層12と前記剥離層13Bとの層間で剥離させることができ、幅方向に複数列のスリット部分と複数列の非スリット部分とが設けられてなる巻取状の転写箔1Aから、複数列のスリット部分でスリットして、1列の非スリット部分を有する転写箔1の製造方法であって、(1)巻取状の前記基材11へ離型層組成物を全面に塗布し乾燥して前記離型層12を形成し、該離型層12面へ剥離層組成物を全面に塗布し乾燥して前記剥離層13Bを形成して、巻取状の転写箔1Bを製造する巻取工程と、(2)前記複数列のスリット部分31A、31B、31C、・・、31n、31n+1のみへ電離放射線を照射して、該スリット部分31A、31B、31C、・・、31n、31n+1の前記離型層12と前記剥離層13Bとの間の剥離力を前記非スリット部分33A、33B、33C、・・、33nの前記離型層12と前記剥離層13Bとの間の剥離力の150%以上とする剥離力増加工程と、(3)複数列の前記スリット部分31A、31B、31C、・・、31n、31n+1でスリット加工しても、スリット部分が箔こぼれしないで、1列の非スリット部分を有する転写箔1とすることのできるスリット工程と、からなることを特徴とする転写箔の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−11711(P2012−11711A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151622(P2010−151622)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】