説明

転写装置、画像形成装置

【課題】像保持体に形成されたトナー画像を放電電極を用いて記録媒体に転写する際に、トナー画像の転写不良を抑制することができる転写装置及び画像形成装置を得る。
【解決手段】搬送されるシート部材Pの先端が、放電領域56で進入して像保持体ベルト16に静電吸着された後に、転写ブレード64が規制位置から押圧位置へ移動する。シート部材Pの先端が像保持体ベルト16から離間(浮く)することが抑制される。また、像保持体ベルト16が撓むことで、シート部材Pの搬送経路が側面視で曲線状となり搬送方向が変えられるため、シート部材Pのシワが伸ばされる。シート部材Pに生じたシワが伸ばされるため、トナー画像をシート部材Pに転写する際に、トナー画像の転写不良が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の転写装置に用いられる転写補助ブレードの先端は、記録シートの進行方向に対して、中央が膨らんだ円弧状とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−267482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、像保持体に形成されたトナー画像を放電電極を用いて記録媒体に転写する際に、トナー画像の転写不良を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る転写装置は、トナー画像を表面に保持しながら周回する無端状の像保持体の裏面に当たり、周回する前記像保持体の周回経路を規制する第一規制部材と、前記第一規制部材によって周回経路が規制された前記像保持体に向けて放電し、放電領域で前記像保持体に保持されたトナー画像を前記像保持体の表面に重なりながら搬送されるシート状の記録媒体に転写する転写部材と、前記第一規制部材と前記像保持体の裏面とが当たる接触点に対して、前記像保持体の周回方向の上流側に設けられ、前記像保持体との間で前記記録媒体を押圧して挟むことで前記記録媒体の搬送位置を規制する第二規制部材と、搬送される前記記録媒体の先端が前記転写部材の放電領域に進入した後で、前記第二規制部材による前記像保持体の表面を押圧する押圧力を強くする又は押圧量を大きくする制御部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る転写装置は、請求項1に記載において、前記制御部は、一の記録媒体を用いる際には、一の記録媒体より薄い他の記録媒体を用いる場合と比して、前記押圧力を強くするタイミング又は押圧量を大きくするタイミングを遅らせることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3に係る転写装置は、請求項1又は2に記載において、前記制御部は、一の記録媒体を用いる際には、一の記録媒体より薄い他の記録媒体を用いる場合と比して、前記記録媒体が前記放電領域に進入した前の押圧力又は押圧量と、前記記録媒体が前記放電領域に進入した後の押圧力又は押圧量との変化量を少なくすることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項4に係る画像形成装置は、トナー画像を表面に保持すると共に周回する無端状の前記像保持体と、前記像保持体の表面に保持されたトナー画像を記録媒体に転写する請求項1〜3の何れか1項に記載された転写装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1の転写装置によれば、搬送される記録媒体の先端が、転写部材の放電領域に進入する前後で、第二規制部材による像保持体の表面を押圧する押圧力又は押圧量が変化しない場合と比して、像保持体に形成されたトナー画像を放電電極を用いて記録媒体に転写する際に、トナー画像の転写不良(白抜け)を抑制することができる。
【0010】
本発明の請求項2の転写装置によれば、紙種によって第二規制部材による押圧力又は押圧量を変化させるタイミングを変えない場合と比して、効果的にトナー画像の転写不良を抑制することができる。
【0011】
本発明の請求項3の転写装置によれば、紙種によって第二規制部材による押圧力又は押圧量の変化量を変えない場合と比して、効果的にトナー画像の転写不良を抑制することができる。
【0012】
本発明の請求項4の画像形成装置によれば、請求項1〜3の何れか1項に記載された転写装置が設けられていない場合と比して、特に記録媒体が厚紙である場合に、トナー画像の転写不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(A)(B)(C)発明の第1実施形態に係る転写装置を示した側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る転写装置に備えられた制御部による制御をグラフで示した図面である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る転写装置を示した側面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る転写装置を示した斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る転写装置を示した側面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る転写装置を示した側面図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置を示した概略構成図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る転写装置に備えられた制御部による制御をグラフで示した図面である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る転写装置に備えられた制御部による制御をグラフで示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1実施形態に係る転写装置及び画像形成装置の一例について図1〜図7に従って説明する。なお、図中矢印UPは、鉛直方向上方を示す。
【0015】
(全体構成)
図7に示されるように、画像形成装置10は、電子写真方式を用いた画像形成装置であって、内部には、記録媒体としてのシート部材Pが装填された給紙カセット20と、シート部材Pに転写されるトナー画像を形成する画像形成部14と、トナー画像をシート部材Pに転写させる転写装置の一例としての転写部22と、トナー画像をシート部材Pに定着させる定着装置12と、シート部材Pを搬送経路30に沿って搬送する搬送ロール18を具備した用紙搬送系と、画像形成装置10全体の動作を司るコントロールユニット50とを備えている。なお、本実施形態では、給紙カセット20は4個設けられている。
【0016】
また、画像形成部14には、像保持体の一例としての無端状の像保持体ベルト16と、この像保持体ベルト16が巻き掛けられると共に回転して駆動力を像保持体ベルト16に伝達する駆動ロール32と、像保持体ベルト16が巻き掛けられる複数個の従動ロール34とが設けられている。
【0017】
さらに、従動ロール34は、駆動ロール32の鉛直方向下方に配置される従動ロール34Aと、駆動ロール32に対して水平方向に並んで配置される従動ロール34Bと、従動ロール34Bの鉛直方向下方であって従動ロール34Aに対して水平方向に並んで配置される従動ロール34Cとを備えている。
【0018】
そして、像保持体ベルト16は、駆動ロール32及び各従動ロール34に巻き掛けられた状態で、水平方向に延びるように設けられている。
【0019】
さらに、画像形成部14には、像保持体ベルト16の表面にトナー画像を形成するプリントエンジン36が備えられている。プリントエンジン36には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色のトナー画像を像保持体ベルト16の表面に形成する各色のプリントエンジン36Y、36M、36C、36Kが有る。そして、プリントエンジン36Y、36M、36C、36Kは、像保持体ベルト16の表面と対向するように像保持体ベルト16の周回方向(図中矢印A方向)に沿ってこの順番に水平方向に並んで配置されている。
【0020】
さらに、各色のプリントエンジン36は、像保持体ベルト16の周回方向に順に配設された帯電器37と、露光ヘッド38と、現像器39とを備えている。
【0021】
詳細には、帯電器37は、帯電コロトロンや帯電ロール等で、像保持体ベルト16を一様に帯電するようになっている。また、露光ヘッド38は、LEDアレイや光走査装置(Raster Optical Scanner)等で、像保持体ベルト16の帯電した表面(帯電面)を露光して像保持体ベルト16上に画像データに基づいた静電潜像を形成するようになっている。
【0022】
また、現像器39は、トナーからなる1成分現像剤、或いはトナー及びキャリアからなる2成分現像剤を収容している。さらに、現像器39は、収容する現像剤に含まれるトナーを回転しながら像保持体ベルト16の静電潜像上へ移動させる現像ロール39Aを備えている。つまり、像保持体ベルト16上の静電潜像がトナーにより現像され、トナー画像として可視化されるようになる。
【0023】
また、画像形成部14には、像保持体ベルト16の表面に形成されたトナー画像をシート部材Pに転写させる転写部22が設けられている。そして、転写部22には、プリントエンジン36に対して像保持体ベルト16の周回方向の下流側に配置され、駆動ロール32と従動ロール34Aとの間を周回する像保持体ベルト16の表面と対向するように配置された転写部材の一例としての転写コロトロン42が設けられている。
【0024】
図5に示されるように、転写コロトロン42は、像保持体ベルト16側が開放された断面コ字状の筐体42Aと、筐体42Aの内部に配置されると共に像保持体ベルト16の幅方向(紙面奥行方向)に延びる放電ワイヤ42Bとを備えている。そして、この転写コロトロン42は、像保持体ベルト16の表面に重なりながら搬送されるシート部材Pの裏面にトナー電荷と逆極性の電荷を非接触で与え、像保持体ベルト16上のトナー画像をシート部材Pへ転写するようになっている。なお、転写部22については、詳細を後述する。
【0025】
また、図7に示されるように、転写部22に対して像保持体ベルト16の周回方向下流側(以下単に周回方向下流側という)には、像保持体ベルト16上に残留した未転写残留トナーを像保持体ベルト16から除去するクリーニング機構44が設けられている。
【0026】
さらに、転写部22(画像形成部14)に対してシート部材Pの搬送方向下流側には、定着装置12が設けられている。この定着装置12には、シート部材Pの転写面に接触して回転する加熱するヒートロール46と、ヒートロール46にシート部材Pを回転しながら押圧する加圧ロール48とが設けられている。そして、ヒートロール46と加圧ロール48とで定着ニップNが形成されている。
【0027】
さらに、定着装置12に対してシート部材Pの搬送方向下流側には、画像が形成されたシート部材Pが排紙ロール24によって排出されるスタッカ26と、搬送中に何らかの不具合が発生して不要となったシート部材Pが排出されるパージトレイ27とが設けられている。なお、本実施形態では、スタッカ26は2個設けられている。
【0028】
また、定着装置12に対してシート部材Pの搬送方向下流側には、シート部材Pの表裏に画像を形成する場合に、表面にトナー画像が定着されたシート部材Pが、表裏を反転するために送り込まれる裏面搬送路28が設けられている。さらに、裏面搬送路28の鉛直方向下方には、裏面搬送路28から搬出されたシート部材Pを搬送経路30に向けて搬送する搬送ベルト29が設けられている。なお、裏面搬送路28の鉛直方向下方に配置された給紙カセット20から搬出されたシート部材Pもこの搬送ベルト29によって搬送経路30に向けて搬送されるようになっている。
【0029】
以上の構成により、この画像形成装置10では、先ず、画像形成部14に設けられた各色のプリントエンジン36によって、像保持体ベルト16上にトナー画像が形成される。一方、給紙カセット20から搬出されて複数個の搬送ロール18及び搬送ベルト29によって搬送経路30に沿って搬送されたシート部材Pは、転写部22へ搬送される。転写部22では、像保持体ベルト16に重なるようにシート部材Pが搬送され、転写コロトロン42によって像保持体ベルト16上のトナー画像がシート部材Pに転写される。
【0030】
具体的には、転写コロトロン42は、後述するバックアップロール60によって周回経路が規制された像保持体ベルト16に向けて放電し、シート部材Pを放電領域で像保持体ベルト16に静電吸着させる。さらに、転写コロトロン42は、放電領域で搬送されるシート部材Pの裏面にトナー電荷と逆極性の電荷を非接触で与え、像保持体ベルト16上のトナー画像を像保持体ベルト16の表面に重なりながら搬送されるシート部材Pへ転写する。
【0031】
そして、トナー画像が転写されたシート部材Pが転写部22の搬送方向下流側で定着装置12によって加圧、加熱され、トナー画像がシート部材Pに定着される。さらに、トナー画像が定着されたシート部材Pは、搬送ロール18及び排紙ロール24によってスタッカ26へ排紙される。
【0032】
また、シート部材Pの両面(表面及び裏面)に画像を形成する場合には、表面にトナー画像が定着されたシート部材Pは、定着装置12の搬送方向下流側の搬送経路が切替えられて、表裏を反転するための裏面搬送路28へ搬送される。そして、表裏が反転されたシート部材Pは、搬送ベルト29によって転写部22へ搬送され、再び像保持体ベルト16から裏面にトナー画像が転写される。そして、シート部材Pは定着装置12を通過し、シート部材Pの裏面にトナー画像が定着され、シート部材Pは排紙ロール24によってスタッカ26へ排紙される。
【0033】
(要部構成)
次に、転写部22等について説明する。
【0034】
図6に示されるように、転写部22にシート部材Pを送り込む搬送ロール18Aと転写部22との間には、搬送ロール18Aから送り出されたシート部材Pを像保持体ベルト16に重なるようにガイドするガイド部材54が設けられている。
【0035】
また、駆動ロール32と従動ロール34Aとの間に設けられる転写部22は、前述した転写コロトロン42と、像保持体ベルト16の裏面を支持する第一規制部材の一例としてのバックアップロール60と、像保持体ベルト16との間でシート部材Pを挟むことでシート部材Pの搬送位置を規制する第二規制部材の一例としての転写ブレード64とを備えている。
【0036】
詳細には、円柱状に形成されたバックアップロール60は、駆動ロール32と従動ロール34Aとの間に配置され、像保持体ベルト16の裏面と当って周回する像保持体ベルト16に対して従動回転するようになっている。
【0037】
さらに、バックアップロール60に対して周回方向下流側には、バックアップロール60と同様に、像保持体ベルト16の裏面と当って従動回転するバックアップロール62が設けられている。そして、バックアップロール62とバックアップロール60とが、像保持体ベルト16の裏面と当ることで周回する像保持体ベルト16の周回経路が規制されるようになっている。
【0038】
そして、転写コロトロン42による像保持体ベルト16の放電領域は、バックアップロール60と像保持体ベルト16の接触点Cに対して、周回方向下流側となるように転写コロトロン42の取り付け位置が決められている。つまり、転写コロトロン42は、バックアップロール60によって周回経路が規制された像保持体ベルト16に向けて放電するようになっている。
【0039】
また、接触点Cに対して像保持体ベルト16の周回方向上流側(以下単に周回方向上流側という)には、接触点Cに対して周回方向上流側の像保持体ベルト16との間でシート部材Pを押圧して挟む前述した転写ブレード64が設けられている。
【0040】
図1(A)(B)(C)に示されるように、転写ブレード64は樹脂材料で成形された板状とされ、像保持体ベルト16の幅方向に延びる回転軸66回りに回転可能に支持されている。
【0041】
そして、転写ブレード64は、像保持体ベルト16から離間して退避する退避位置(図1(A)参照)と、像保持体ベルト16との間でシート部材Pを挟みシート部材Pの搬送姿勢を規制する規制位置(図1(B)参照)と、シート部材Pを介して像保持体ベルト16の表面を押圧する押圧位置(図1(C)参照)との間を移動可能とされている。つまり、転写ブレード64による像保持体ベルト16の表面を押圧する押圧力を強くすることで、転写ブレード64が規制位置から押圧位置へ移動するようになっている。詳細には、押圧位置では、バックアップロール60が転写ブレード64による押圧力を支持するようになっている。
【0042】
また、この回転軸66には、回転駆動力を回転軸66に伝達するステッピングモータ68(以下単にモータ68と言う)が連結されている。さらに、このモータ68の負荷トルクを制御して、転写ブレード64を退避位置と規制位置と押圧位置とに切り替える制御部70が設けられている。なお、制御部70によるモータ68の制御方法については、後述する作用と共に説明する。
【0043】
また、図4に示されるように、シート部材Pと当る転写ブレード64の先端は、転写ブレード64の板厚方向から見て、幅方向中央側が周回方向下流側に向けて凸となる円弧形状とされている。
【0044】
(作用)
次に、転写部22の作用について説明する。
【0045】
図6に示されるように、転写部22にシート部材Pが搬送されていない状態では、制御部70が、モータ68の回転角度及び負荷トルクを制御して、転写ブレード64は退避位置に配置されている。
【0046】
転写ブレード64は退避位置に配置された状態で、搬送ロール18Aによって搬送されるシート部材Pは、周回する像保持体ベルト16に重なるようにガイド部材54によってガイドされ、転写部22に向けて搬送される。
【0047】
図1(A)(B)に示されるように、シート部材Pの先端が転写ブレード64の先端を通過する際に、制御部70が、モータ68の負荷トルクを制御して、転写ブレード64を退避位置から規制位置へ移動させる。
【0048】
さらに、図1(B)(C)に示されるように、シート部材Pの先端が、転写コロトロン42の放電領域56に進入した後で、制御部70が、モータ68の負荷トルクを制御して転写ブレード64が像保持体ベルト16の表面を押圧する押圧力を強くし、転写ブレード64を規制位置から押圧位置へ移動させる。なお、転写コロトロン42の放電領域56とは、図5に示されるように、放電ワイヤ42Bから筐体42Aの開口端43を通る直線に囲まれる領域である。
【0049】
つまり、シート部材Pの先端が放電領域56に進入することでシート部材Pの先端が、像保持体ベルト16に静電吸着された後に、転写ブレード64による像保持体ベルト16の表面を押圧する押圧力を強くする。これにより、転写ブレード64が規制位置から押圧位置へ移動する。
【0050】
ここで、制御部70は、一のシート部材Pを用いる際には、一のシート部材Pより薄い他のシート部材Pを用いる場合と比して、転写ブレード64を規制位置から押圧位置へ移動させるタイミングを遅らせるようになっている。
【0051】
例えば、一例として、厚紙であるOKプリンスの坪量84.5g/mのシート部材Pと、坪量125g/mのシート部材Pと、坪量208g/mのシート部材Pとを比較すると、転写ブレード64を規制位置から押圧位置へ移動させるタイミングを変えるようになっている。なお、この場合に、シート部材Pの薄い順に記載すると、坪量84.5g/mのシート部材P、坪量125g/mのシート部材P、坪量208g/mのシート部材Pである。
【0052】
図2に示されたグラフの縦軸には転写ブレード64がシート部材Pを介して像保持体ベルト16を押圧する力(F)が記載され、横軸にはシート部材Pの先端が転写ブレード64の先端を通過してから経過した時間(t)が記載されている。また、このグラフに記載する直線Dは、シート部材Pの先端が放電領域56に進入した時点である。
【0053】
そして、実線は、坪量84.5g/mのシート部材Pを用いる場合の制御部70の制御を示し、一点鎖線は、坪量125g/mのシート部材Pを用いる場合の制御部70の制御を示し、破線は、坪量208g/mのシート部材Pを用いる場合の制御部70の制御を示している。
【0054】
つまり、坪量84.5g/mのシート部材Pを用いる場合は、制御部70は、シート部材Pの先端が放電領域56に進入した後で、転写ブレード64を規制位置から押圧位置へ移動させる。
【0055】
また、坪量84.5g/mよりも厚さが厚い坪量125g/mのシート部材Pを用いる場合は、制御部70は、シート部材Pの先端が放電領域56に入って一定時間(図に示す時間G)経過後、転写ブレード64を規制位置から押圧位置へ移動させる。
【0056】
さらに、坪量125g/mよりも厚さが厚い坪量208g/mのシート部材Pを用いる場合は、制御部70は、シート部材Pの先端が放電領域56に入って一定時間(図に示す時間H)経過後、転写ブレード64を退避位置から押圧位置へ移動させる。坪量208g/mのシート部材Pは、前述したように、坪量125g/mのシート部材Pよりも厚さが厚いため、時間Hは、時間Gより長くされている。
【0057】
つまり、厚さが厚い一のシート部材を用いる場合は、一のシート部材Pより薄い他のシート部材Pを用いる場合と比して、制御部70は、転写ブレード64を規制位置から押圧位置へ移動させるタイミングを遅らせる。これにより、厚さが厚く剛性が高いシート部材Pを用いる場合は、厚さが薄い場合と比して、シート部材Pの先端が放電領域56に進入する進入量が大きくなる。このため、厚さが厚く剛性が高いシート部材Pについては、厚さが薄い場合と比して、シート部材Pの先端が像保持体ベルト16に静電吸着される静電吸着力が増した後、転写ブレード64が規制位置から押圧位置へ移動する。
【0058】
具体的には、図1(B)(C)に示されるように、制御部70は、ユーザがインプットした紙種と、搬送されるシート部材Pの先端を検知する検知部材(図示省略)の検知信号と、検知信号を受信してから経過した時間とを考慮して、制御部70は、モータ68の負荷トルクを制御して、転写ブレード64を規制位置から押圧位置へ移動させる。
【0059】
そして、転写ブレード64が押圧位置へ移動することで、転写ブレード64は、シート部材Pを介して像保持体ベルト16の表面を押圧する。これにより、像保持体ベルト16が撓むことで像保持体ベルト16の一部がバックアップロール60の表面に巻き付く。
【0060】
像保持体ベルト16が転写ブレード64によって押圧されて撓むことで、搬送されるシート部材Pの搬送経路が側面視で曲線状となり、シート部材Pの搬送方向が変えられる(図1(C)に示す矢印F方向から矢印E方向に変えられる)。
【0061】
さらに、図4に示されるように、樹脂材料で成形された転写ブレード64の先端は、周回方向下流側に撓みながら像保持体ベルト16を押圧する。
【0062】
また、図3に示されるように、搬送されるシート部材Pの後端が、転写ブレード64の先端をすり抜けるタイミングで、制御部70が、モータ68の回転角度及び負荷トルクを制御して、転写ブレード64を押圧位置から退避位置へ移動させる。
【0063】
以上説明したように、像保持体ベルト16が転写ブレード64によって押圧されて撓むことで、搬送されるシート部材Pの搬送経路が側面視で曲線状となり搬送方向が変えられる。このため、シート部材Pに幅方向に延びようとする力が作用してシート部材Pのシワが伸ばされる。
【0064】
また、シート部材Pに生じたシワが伸ばされるため、トナー画像をシート部材Pに転写する際に、トナー画像の転写不良が抑制される。
【0065】
また、搬送されるシート部材Pの先端が、放電領域56で進入して像保持体ベルト16に静電吸着された後に、転写ブレード64が規制位置から押圧位置へ移動する。これにより、搬送されるシート部材Pの搬送経路が変えられても、シート部材Pの先端が像保持体ベルト16から離間(浮く)することが抑制される。
【0066】
特に、シート部材Pが厚紙(剛性が高い紙)の場合には、シート部材Pの搬送経路が変えられることで、シート部材Pの先端が像保持体ベルト16から離間(浮く)することが考えられる。しかし、シート部材Pの先端が、像保持体ベルト16に静電吸着された後に、転写ブレード64が規制位置から押圧位置へ移動するため、シート部材Pの先端が像保持体ベルト16から離間(浮く)することが抑制される。
【0067】
また、厚さが厚く剛性が高いシート部材Pについては、厚さが薄い場合と比して、シート部材Pの先端が像保持体ベルト16に静電吸着される静電吸着力が増した後、転写ブレード64が規制位置から押圧位置へ移動する。これにより、効果的にシート部材Pの先端が像保持体ベルト16から離間(浮く)することが抑制される。なお、シワの生じ易さを考慮しても、剛性が高いシート部材Pはシワが生じにくいため、転写ブレード64が規制位置から押圧位置へ移動するタイミングを遅らせても問題は生じない。
【0068】
また、転写ブレード64の先端の形状が円弧状とされているため、搬送されるシート部材Pの幅方向中央側での転写ブレード64がシート部材Pを押圧する押圧力が、シート部材Pの幅方向外側での押圧力より大きくなる。これにより、シート部材Pが幅方向外側に引っ張られ、シート部材Pに生じたシワが伸ばされる。
【0069】
次ぎに、本発明の第2実施形態に係る転写装置及び画像形成装置の一例について図8に従って説明する。なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0070】
図8に示されるように、第2実施形態では、坪量84.5g/mのシート部材Pを用いる場合(実線)には、制御部70は、シート部材Pの先端が放電領域56に進入した後で、転写ブレード64を規制位置から押圧位置へ移動させる。そして、転写ブレード64は、第1押圧力(図8に示す押圧力J)でシート部材Pを介して像保持体ベルト16の表面を押圧するようになっている。
【0071】
一方、坪量84.5g/mよりも厚さが厚い坪量125g/mのシート部材Pを用いる場合(一点鎖線)には、制御部70は、シート部材Pの先端が放電領域56に進入した後で、転写ブレード64を規制位置から押圧位置へ移動させる。そして、転写ブレード64は、第1押圧力(図8に示す押圧力J)も押圧力が弱い第2押圧力(図8に示す押圧力K)でシート部材Pを介して像保持体ベルト16の表面を押圧するようになっている。
【0072】
これに対し、坪量125g/mよりも厚さが厚い坪量208g/mのシート部材Pを用いる場合(破線)には、制御部70は、シート部材Pの先端が放電領域56に進入した後で、転写ブレード64を規制位置から押圧位置へ移動させる。そして、転写ブレード64は、第2押圧力(図8に示す押圧力K)も押圧力が弱い第3押圧力(図8に示す押圧力L)でシート部材Pを介して像保持体ベルト16の表面を押圧するようになっている。
【0073】
以上説明したように、制御部70は、一のシート部材Pを用いる際には、一のシート部材Pより薄い他のシート部材Pを用いる場合と比して、シート部材Pが放電領域56に進入した前の押圧力と、シート部材Pが放電領域56に進入した後の押圧力との変化量を少なくするようになっている。これにより、厚さが厚く剛性が高いシート部材Pを用いる場合は、厚さが薄い場合と比して、転写ブレード64が像保持体ベルト16の表面を押圧する押圧力が弱くなる。
【0074】
このため、厚さが厚く剛性が高いシート部材Pについては、厚さが薄い場合と比して、シート部材Pの先端が像保持体ベルト16から離間しようとする力が弱められる。これにより、効果的にシート部材Pの先端が像保持体ベルト16から離間(浮く)することが抑制される。
【0075】
次ぎに、本発明の第3実施形態に係る転写装置及び画像形成装置の一例について図9に従って説明する。なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0076】
図9の実線は、坪量84.5g/mのシート部材Pを用いる場合の制御部70の制御を示し、一点鎖線は、坪量125g/mのシート部材Pを用いる場合の制御部70の制御を示し、破線は、坪量208g/mのシート部材Pを用いる場合の制御部70の制御を示している。
【0077】
具体的には、坪量84.5g/mのシート部材Pを用いる場合は、制御部70は、シート部材Pの先端が放電領域56に進入した後で、転写ブレード64を規制位置から押圧位置へ移動させる。そして、転写ブレード64は、第1押圧力(図9に示す押圧力J)でシート部材Pを介して像保持体ベルト16の表面を押圧するようになっている。
【0078】
また、坪量84.5g/mよりも厚さが厚い坪量125g/mのシート部材Pを用いる場合は、制御部70は、シート部材Pの先端が放電領域56に入って一定時間(図9に示す時間G)経過後、転写ブレード64を規制位置から押圧位置へ移動させる。そして、転写ブレード64は、第1押圧力(図9に示す押圧力J)も押圧力が弱い第2押圧力(図9に示す押圧力K)でシート部材Pを介して像保持体ベルト16の表面を押圧するようになっている。
【0079】
さらに、坪量125g/mよりも厚さが厚い坪量208g/mのシート部材Pを用いる場合は、制御部70は、シート部材Pの先端が放電領域56に入って一定時間(図9に示す時間H)経過後、転写ブレード64を退避位置から押圧位置へ移動させる。坪量208g/mのシート部材Pは、前述したように、坪量125g/mのシート部材Pよりも厚さが厚いため、時間Hは、時間Gより長くされている。そして、転写ブレード64は、第2押圧力(図9に示す押圧力K)も押圧力が弱い第3押圧力(図9に示す押圧力L)でシート部材Pを介して像保持体ベルト16の表面を押圧するようになっている。
【0080】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、制御部70は、転写ブレード64が像保持体ベルト16を押圧する押圧力を制御することで、紙種の違いによる転写不良を抑制したが、転写ブレードが像保持体ベルトを押圧する押圧量を制御することで紙種の違いによる転写不良を抑制してもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、像保持体ベルトとして、ベルトに直接トナー画像が形成される所謂感光体ベルトを例にとって説明したが、トナー画像が転写される所謂転写ベルトに本発明の構成を用いてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、特に言及しなかったが、例えば、普通紙であるOKプリンスの坪量64g/mのシート部材Pを用いる場合には、シート部材Pの先端が転写ブレード64の先端を通過する際に、転写ブレード64が、規制位置を経由することなく退避位置から押圧位置へ移動するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0083】
10 画像形成装置
16 像保持体ベルト(像保持体の一例)
22 転写部(転写装置の一例)
42 転写コロトロン(転写部材の一例)
60 バックアップロール(第一規制部の一例)
64 転写ブレード(第二規制部材の一例)
70 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー画像を表面に保持しながら周回する無端状の像保持体の裏面に当たり、周回する前記像保持体の周回経路を規制する第一規制部材と、
前記第一規制部材によって周回経路が規制された前記像保持体に向けて放電し、放電領域で前記像保持体に保持されたトナー画像を前記像保持体の表面に重なりながら搬送されるシート状の記録媒体に転写する転写部材と、
前記第一規制部材と前記像保持体の裏面とが当たる接触点に対して、前記像保持体の周回方向の上流側に設けられ、前記像保持体との間で前記記録媒体を押圧して挟むことで前記記録媒体の搬送位置を規制する第二規制部材と、
搬送される前記記録媒体の先端が前記転写部材の放電領域に進入した後で、前記第二規制部材による前記像保持体の表面を押圧する押圧力を強くする又は押圧量を大きくする制御部と、
を備える転写装置。
【請求項2】
前記制御部は、一の記録媒体を用いる際には、一の記録媒体より薄い他の記録媒体を用いる場合と比して、前記押圧力を強くするタイミング又は押圧量を大きくするタイミングを遅らせる請求項1に記載の転写装置。
【請求項3】
前記制御部は、一の記録媒体を用いる際には、一の記録媒体より薄い他の記録媒体を用いる場合と比して、前記記録媒体が前記放電領域に進入した前の押圧力又は押圧量と、前記記録媒体が前記放電領域に進入した後の押圧力又は押圧量との変化量を少なくする請求項1又は2に記載の転写装置。
【請求項4】
トナー画像を表面に保持すると共に周回する無端状の前記像保持体と、
前記像保持体の表面に保持されたトナー画像を記録媒体に転写する請求項1〜3の何れか1項に記載された転写装置と、
を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−185456(P2012−185456A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50348(P2011−50348)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】