説明

転動装置部品の検査方法及び転動装置部品用検査装置

【課題】検査コストの上昇を招くことなく転動装置部品を精度よく検査することのできる転動装置部品の検査方法及び転動装置部品用検査装置を提供する。
【解決手段】軌道輪素材として用いられる棒鋼の内部にあるか否かを検査する際に、棒鋼に交流磁界を付与する励磁コイル2aと、励磁コイル2aから棒鋼に付与された交流磁界の磁束密度の変化を検出するための誘導コイル2bと、誘導コイル2bに発生した誘導起電力の大きさを検出するインダクタンス変化検出回路3と、インダクタンス変化検出回路3で検出された誘導起電力の大きさを閾値と比較して欠陥の有無を判定する比較判定回路4とを備えてなる検査装置を用いて欠陥の有無を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受、ボールねじ、直動案内装置等の転動装置の転動装置部品を検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、転がり軸受の軌道輪はSUJ2等の軸受鋼からなる棒鋼を加工して形成されており、軌道輪素材として用いられる棒鋼の内部に欠陥が存在すると転がり軸受の寿命を大きく低下させる原因となる。したがって、棒鋼を加工して軌道輪を作製する際には、棒鋼の内部に欠陥が存在しないことを確認する必要があり、棒鋼の内部にクラック等の欠陥が存在するか否かを検査する方法としては、従来、棒鋼の表面に対向して配置された超音波プローブを棒鋼の軸方向に棒鋼を回転させながら動かすことによって方向性の良好な超音波を棒鋼の内部に送波し、欠陥からの反射エコーを受波することで棒鋼の全断面を超音波探傷する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、軸受寿命に大きな影響を及ぼす非金属介在物が軌道輪の表層部に存在するか否かを検査する方法としては、軌道輪の内部を探傷するプローブとして超音波探傷プローブを用い、この超音波探傷プローブから出力された信号に基づいて非金属介在物の有無を検査する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第3653984号公報
【特許文献2】再表02/057656公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載された方法は、超音波伝達媒体を使用するため、洗浄等の工程が必要となり、検査コストの上昇を招くという問題があった。
本発明は上述した点に着目してなされたものであり、その目的は、検査コストの上昇を招くことなく転動装置部品を精度よく検査することのできる転動装置部品の検査方法及び転動装置部品用検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明に係る転動装置部品の検査方法は、転動装置部品の欠陥または非金属介在物または熱処理または異材混入の有無あるいは表面硬さを検査する方法において、前記転動装置部品が旋削加工前または研削加工前または超仕上げ加工前の素材もしくは鍛造加工後または転造加工後の素材であって、前記転動装置部品に電磁誘導センサの励磁コイルから交流磁界を付与し、前記電磁誘導センサの誘導コイルに電磁誘導により発生した起電力の振幅と位相のうち少なくとも一方の変化量を測定することにより、前記転動装置部品を検査して品質保証を行うことを特徴とする。
【0006】
請求項1記載の発明に係る転動装置部品の検査方法は、転動装置部品を検査する方法において、前記転動装置部品が溶接または圧入の少なくとも一方の方法で複数の部品からなる保持器であって、前記転動装置部品に電磁誘導センサの励磁コイルから交流磁界を付与し、前記電磁誘導センサの誘導コイルに電磁誘導により発生した起電力の振幅と位相のうち少なくとも一方の変化量を測定することにより、前記保持器の溶接または圧入に伴う欠陥もしくは損傷を検査して品質保証を行うことを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明に係る転動装置部品用検査装置は、請求項1記載の方法に用いられる転動装置部品用検査装置であって、旋削加工前または研削加工または超仕上げ加工前の素材もしくは鍛造加工後または転造加工後の転動装置部品に交流磁界を付与する励磁コイルと該励磁コイルから転動装置部品に付与された交流磁界の磁束密度の変化を検出するための誘導コイルとを有する電磁誘導センサと、該電磁誘導センサの出力を処理するデータ処理部と、該データ処理部のデータ処理値を閾値と比較して判定する判定部とを具備したことを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明に係る転動装置部品用検査装置は、請求項2記載の方法に用いられる転動装置部品用検査装置であって、溶接または圧入の少なくとも一方の方法で複数の部品からなる保持器に交流磁界を付与する励磁コイルと該励磁コイルから保持器に付与された交流磁界の磁束密度の変化を検出するための誘導コイルとを有する電磁誘導センサと、該電磁誘導センサの出力を処理するデータ処理部と、該データ処理部のデータ処理値を閾値と比較して判定する判定部とを具備したことを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明に係る転動装置部品用検査装置は、請求項3または4記載の転動装置部品用検査装置において、前記電磁誘導センサと被検査物のうち少なくとも一方が回転、直動、揺動可能であることを特徴とする。
請求項6記載の発明に係る転動装置部品用検査装置は、請求項3〜5のいずれか一項記載の転動装置部品用検査装置において、前記転動装置部品の検査を複数の電磁誘導センサで行なうことを特徴とする。
【0010】
請求項7記載の発明に係る転動装置部品用検査装置は、請求項3〜6のいずれか一項記載の転動装置部品用検査装置において、前記判定部の判定結果を表示する表示手段と前記データ処理部のデータ処理値を記憶する記憶手段のうち少なくとも一方を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、転動装置部品内を探傷するプローブと被測定物(軌道輪等の転動装置部品)との間に超音波伝達媒体を介在させる必要がないため、測定後に被測定物(軌道輪等の転動装置部品)を洗浄する工程が不要となり、検査コストの上昇を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の第1の実施形態に係る転動装置部品用検査装置の概略構成を図1に示す。同図に示される転動装置部品用検査装置は被測定物(軌道輪等の転動装置部品)1に交流磁界を付与する励磁コイル2aと、この励磁コイル2aから被測定物1に付与された交流磁界の磁束密度の変化を検出するための誘導コイル2bとを備えており、これらの両コイル2a,2bは電磁誘導センサ2を構成している。
【0013】
また、第1の実施形態に係る転動装置部品用検査装置は誘導コイル2bのインダクタンス変化(誘導コイル2bに発生した誘導起電力の振幅変化量または位相変化量)を検出するインダクタンス変化検出回路(データ処理部)3と、このインダクタンス変化検出回路3で検出された誘導コイル2bのインダクタンス変化を予め設定された閾値と比較して欠陥の有無を判定する判定部としての比較判定回路4を備えており、この比較判定回路4から出力された信号は、比較判定回路4の判定結果を表示する表示装置5に供給されるとともに、比較判定回路4の判定結果を記録用紙等の記録媒体に記録する記録装置6に供給されるようになっている。
【0014】
さらに、第1の実施形態に係る転動装置部品用検査装置は記憶装置7を備えており、この記憶装置7では、インダクタンス変化検出回路3で検出された誘導コイル2bのインダクタンス変化を記憶している。なお、図1において符号8は電磁誘導センサ2の励磁コイル2aに交流電流を供給する交流電源を示している。
図1に示した検査装置を用いて、例えば軌道輪の軌道面表層部にクラック等の欠陥が存在するか否かを検査する場合は、先ず、電磁誘導センサ2を軌道輪の軌道面に近づける。そして、この状態で電磁誘導センサ2の励磁コイル2aに交流電流を供給し、励磁コイル2aから軌道輪に交流磁界を付与すると、電磁誘導センサ2の誘導コイル2bに誘導起電力が発生する。このとき、電磁誘導センサ2の誘導コイル2bに発生した誘導起電力は軌道輪に付与された交流磁界の磁束密度に応じて変化し、交流磁界の磁束密度は軌道輪の軌道面表層部に存在する欠陥の大きさに応じて変化する。
【0015】
したがって、電磁誘導センサ2の誘導コイル2bに発生した誘導起電力の振幅変化量または位相変化量をインダクタンス変化検出回路3で検出し、インダクタンス変化検出回路3で検出された誘導起電力の振幅変化量または位相変化量を予め設定された閾値と比較することで、旋削加工または研削加工または超仕上げ加工が施される前もしくは鍛造加工または転造加工が施された後の転動装置部品(被測定物1)の内部にクラック等の欠陥が存在するか否かを精度よく検査することができる。これにより、被測定物1の内部を探傷するプローブとして超音波探傷プローブを用いる必要がなく、被測定物1に付着した超音波伝達媒体を取り除くための洗浄工程を検査後に行う必要がないので、検査コストの上昇を抑えることができる。
【0016】
図1に示した本発明の第1の実施形態では、比較判定回路4の判定結果を表示する表示装置5と、比較判定回路4の判定結果を記録用紙等の記録媒体に記録する記録装置6と、インダクタンス変化検出回路3の出力を記憶する記憶装置7とを備えたものを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。たとえば、表示装置5、記録装置6及び記憶装置7のうちの少なくとも1つを備えた構成のものでもよい。
【0017】
また、第1の実施形態ではクラック等の欠陥が転動装置部品の内部に存在するか否かを検査したが、非金属介在物の有無、熱処理の有無、異材混入の有無または表面硬さ等を検査してもよい。なお、データ処理部で処理されたデータは、データ処理値として出力することができるとともに、閾値と比較して合否判定として出力することもできる。
次に、図2〜図4を参照して本発明の第2の実施形態について説明する。
【0018】
図2は本発明の第2の実施形態に係る転動装置部品用検査装置の概略構成を示す図であり、同図に示される転動装置部品用検査装置は軌道輪素材として用いられる棒鋼10の表面に対向して配置される電磁誘導センサ2と、この電磁誘導センサ2を床面に対して垂直に支持する支持軸11と、この支持軸11を介して電磁誘導センサ2をZ軸回り(図中矢印θ方向)に揺動駆動するセンサ揺動機構12と、このセンサ揺動機構12を介して電磁誘導センサ2を図中Z軸方向に昇降駆動するセンサ昇降機構13と、電磁誘導センサ2を図中X軸方向及びY軸方向に動かして電磁誘導センサ2を位置決めするセンサ位置決め機構14とを備えている。
【0019】
電磁誘導センサ2の概略構成を図3に示す。同図に示されるように、電磁誘導センサ2は、内輪等の転動装置部品に交流磁界を付与する励磁コイル2aと、この励磁コイル2aから転動装置部品に付与された交流磁界の磁束密度の変化を検出するための誘導コイル2bとからなり、励磁コイル2a及び誘導コイル2bは1つの筐体内に収容されている。また、誘導コイル2bは励磁コイル2aに一部を接触させて励磁コイル2aと同軸に巻回されている。
【0020】
このように構成される転動装置部品用検査装置を用いて棒鋼10の内部にクラック等の欠陥があるか否かを検査する場合は、先ず、棒鋼10の表面に電磁誘導センサ2の先端を近づける。そして、この状態で棒鋼10を軸芯回りに回転させながら電磁誘導センサ2の励磁コイル2aに交流電流を供給して棒鋼10に交流磁界9(図4参照)を付与すると、電磁誘導センサ2の誘導コイル2bに誘導起電力が発生する。このとき、誘導コイル2bに発生した誘導起電力の大きさは棒鋼10に付与された交流磁界9の磁束密度に応じて変化し、交流磁界の磁束密度は棒鋼10の内部に発生した欠陥の大きさに応じて変化する。
【0021】
したがって、電磁誘導センサ2の誘導コイル2bに発生した誘導起電力の大きさを予め設定された閾値と比較することで、クラック等の欠陥が棒鋼10の内部に存在するか否かを精度よく検査することができる。これにより、棒鋼10の内部を探傷するプローブとして超音波探傷プローブを用いる必要がなく、棒鋼10に付着した超音波伝達媒体を取り除くための洗浄工程を検査後に行う必要がないので、検査コストの上昇を抑えることができる。
【0022】
次に、本発明の第3の実施形態に係る転動装置部品用検査装置の概略構成を図5に示す。同図に示される転動装置部品用検査装置は軌道輪素材を鍛造加工して形成された外輪15を載置するためのターンテーブル16と、このターンテーブル16の上方に設けられた電磁誘導センサ2と、この電磁誘導センサ2をターンテーブル16の上面に対して水平に支持する支持軸11と、この支持軸11を介して電磁誘導センサ2をZ軸回り(図中矢印θ方向)に揺動駆動するセンサ揺動機構12と、このセンサ揺動機構12を介して電磁誘導センサ2を図中Z軸方向に昇降駆動するセンサ昇降機構13と、電磁誘導センサ2を図中X軸方向及びY軸方向に動かして電磁誘導センサ2を位置決めするセンサ位置決め機構14と、ターンテーブル16を図中X軸方向に動かして検査対象物を位置決めする位置決め機構17とを備えており、電磁誘導センサ2は、図3に示すように、外輪に交流磁界を付与する励磁コイル2aと、この励磁コイル2aから外輪に付与された交流磁界の磁束密度の変化を検出するための誘導コイル2bとから構成されている。
【0023】
このように構成される検査装置を用いて外輪15の内部に欠陥が存在するか否かを検査する場合は、先ず、外輪15をターンテーブル16上に載置する。次に、センサ揺動機構12、センサ昇降機構13、センサ位置決め機構14及び位置決め機構17を駆動して電磁誘導センサ2を外輪15の内周面に近づけた後、電磁誘導センサ2の励磁コイル2aに交流電流を供給して外輪15に交流磁界を付与すると、電磁誘導センサ2の誘導コイル2bに誘導起電力が発生する。このとき、誘導コイル2bに発生した誘導起電力の大きさは外輪15に付与された交流磁界の磁束密度に応じて変化し、交流磁界の磁束密度は外輪15の内部に発生した欠陥の大きさに応じて変化する。
【0024】
したがって、電磁誘導センサ2の誘導コイル2bに発生した誘導起電力の大きさを予め設定された閾値と比較することで、クラック等の欠陥が外輪15の内部に存在するか否かを精度よく検査することができる。これにより、外輪15の内部を探傷するプローブとして超音波探傷プローブを用いる必要がなく、外輪15に付着した超音波伝達媒体を取り除くための洗浄工程を検査後に行う必要がないので、検査コストの上昇を抑えることができる。
【0025】
次に、本発明の第4の実施形態に係る転動装置部品用検査装置の概略構成を図6に示す。同図に示される転動装置部品用検査装置は内輪18を載置するためのターンテーブル16と、このターンテーブル16の上方に設けられた電磁誘導センサ2と、この電磁誘導センサ2をターンテーブル16の上面に対して水平に支持する支持軸11と、この支持軸11を介して電磁誘導センサ2をZ軸回り(図中矢印θ方向)に揺動駆動するセンサ揺動機構12と、このセンサ揺動機構12を介して電磁誘導センサ2を図中Z軸方向に昇降駆動するセンサ昇降機構13と、電磁誘導センサ2を図中X軸方向及びY軸方向に動かして電磁誘導センサ2を位置決めするセンサ位置決め機構14とを備えており、電磁誘導センサ2は、図3に示すように、内輪に交流磁界を付与する励磁コイル2aと、この励磁コイル2aから内輪に付与された交流磁界の磁束密度の変化を検出するための誘導コイル2bとから構成されている。なお、内輪18の外周面には、内輪軌道18aが転造により形成されている。
【0026】
このように構成される検査装置を用いて内輪18の内部に欠陥が存在するか否かを検査する場合は、先ず、内輪18をターンテーブル16上に載置する。次に、センサ揺動機構12、センサ昇降機構13及びセンサ位置決め機構14を駆動して電磁誘導センサ2を内輪18の外周面に近づけた後、電磁誘導センサ2の励磁コイル2aに交流電流を供給して内輪18に交流磁界を付与すると、電磁誘導センサ2の誘導コイル2bに誘導起電力が発生する。このとき、誘導コイル2bに発生した誘導起電力の大きさは内輪18に付与された交流磁界の磁束密度に応じて変化し、交流磁界の磁束密度は内輪18の内部に発生した欠陥の大きさに応じて変化する。
【0027】
したがって、電磁誘導センサ2の誘導コイル2bに発生した誘導起電力の大きさを予め設定された閾値と比較することで、クラック等の欠陥が内輪18の内部に存在するか否かを精度よく検査することができる。これにより、内輪18の内部を探傷するプローブとして超音波探傷プローブを用いる必要がなく、内輪18に付着した超音波伝達媒体を取り除くための洗浄工程を検査後に行う必要がないので、検査コストの上昇を抑えることができる。
【0028】
次に、本発明の第5の実施形態に係る転動装置部品用検査装置の概略構成を図7に示す。同図に示される転動装置部品用検査装置はピンタイプ保持器19を載置するためのターンテーブル16と、このターンテーブル16の上方に設けられた電磁誘導センサ2と、この電磁誘導センサ2をターンテーブル16の上面に対して垂直に支持する支持軸20と、この支持軸20を介して電磁誘導センサ2をX軸回り(図中矢印θ方向)に揺動駆動するセンサ揺動機構21と、このセンサ揺動機構21を介して電磁誘導センサ2を図中Z軸方向に昇降駆動するセンサ昇降機構13と、電磁誘導センサ2を図中X軸方向及びY軸方向に動かして電磁誘導センサ2を位置決めするセンサ位置決め機構14と、ターンテーブル16を図中X軸方向に動かして検査対象物を位置決めする位置決め機構17とを備えており、電磁誘導センサ2は、図3に示すように、ピンタイプ保持器19に交流磁界を付与する励磁コイル2aと、この励磁コイル2aから内輪に付与された交流磁界の磁束密度の変化を検出するための誘導コイル2bとから構成されている。なお、ころ軸受の転動体(ころ)22を保持するピンタイプ保持器19は保持器本体19aに複数本のピン23を圧入して組立てられている。
【0029】
このように構成される検査装置を用いて圧入による傷やクラック等がピンタイプ保持器19に存在するか否かを検査する場合は、先ず、ピンタイプ保持器19をターンテーブル16上に載置する。次に、センサ揺動機構21、センサ昇降機構13、センサ位置決め機構14及び位置決め機構17を駆動して電磁誘導センサ2をピンタイプ保持器19の端面に近づけた後、電磁誘導センサ2の励磁コイル2aに交流電流を供給してピンタイプ保持器19に交流磁界を付与すると、電磁誘導センサ2の誘導コイル2bに誘導起電力が発生する。このとき、誘導コイル2bに発生した誘導起電力の大きさはピンタイプ保持器19に付与された交流磁界の磁束密度に応じて変化し、交流磁界の磁束密度はピンタイプ保持器19の内部に発生した欠陥の大きさに応じて変化する。
【0030】
したがって、電磁誘導センサ2の誘導コイル2bに発生した誘導起電力の大きさを予め設定された閾値と比較することで、圧入による傷やクラック等がピンタイプ保持器19に存在するか否かを精度よく検査することができる。これにより、ピンタイプ保持器19の内部を探傷するプローブとして超音波探傷プローブを用いる必要がなく、ピンタイプ保持器19に付着した超音波伝達媒体を取り除くための洗浄工程を検査後に行う必要がないので、検査コストの上昇を抑えることができる。
【0031】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば保持器本体にピンを溶接して組立てられる保持器に溶接欠陥が存在するか否かを検査する場合にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る転動装置部品用検査装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る転動装置部品用検査装置の概略構成を示す図である。
【図3】電磁誘導センサの概略構成を示す図である。
【図4】電磁誘導センサの励磁コイルから検査対象物に付与される交流磁界を説明するための図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る転動装置部品用検査装置の概略構成を示す図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る転動装置部品用検査装置の概略構成を示す図である。
【図7】本発明の第5の実施形態に係る転動装置部品用検査装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 被測定物
2 電磁誘導センサ
2a 励磁コイル
2b 誘導コイル
3 インダクタンス変化検出回路(データ処理部)
4 比較判定回路(判定部)
5 表示装置
6 記録装置
7 記憶装置
10 棒鋼
11,20 支持軸
12,21 センサ揺動機構
13 センサ昇降機構
14 センサ位置決め機構
15 外輪
16 ターンテーブル
17 位置決め機構
18 内輪
19 ピンタイプ保持器
22 転動体(ころ)
23 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転動装置部品の欠陥または非金属介在物または熱処理または異材混入の有無あるいは表面硬さを検査する方法において、前記転動装置部品が旋削加工前または研削加工前または超仕上げ加工前の素材もしくは鍛造加工後または転造加工後の素材であって、前記転動装置部品に電磁誘導センサの励磁コイルから交流磁界を付与し、前記電磁誘導センサの誘導コイルに電磁誘導により発生した起電力の振幅と位相のうち少なくとも一方の変化量を測定することにより、前記転動装置部品を検査して品質保証を行うことを特徴とする転動装置部品の検査方法。
【請求項2】
転動装置部品を検査する方法において、前記転動装置部品が溶接または圧入の少なくとも一方の方法で複数の部品からなる保持器であって、前記転動装置部品に電磁誘導センサの励磁コイルから交流磁界を付与し、前記電磁誘導センサの誘導コイルに電磁誘導により発生した起電力の振幅と位相のうち少なくとも一方の変化量を測定することにより、前記保持器の溶接または圧入に伴う欠陥もしくは損傷を検査して品質保証を行うことを特徴とする転動装置部品の検査方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法に用いられる転動装置部品用検査装置であって、旋削加工前または研削加工または超仕上げ加工前の素材もしくは鍛造加工後または転造加工後の転動装置部品に交流磁界を付与する励磁コイルと該励磁コイルから転動装置部品に付与された交流磁界の磁束密度の変化を検出するための誘導コイルとを有する電磁誘導センサと、該電磁誘導センサの出力を処理するデータ処理部と、該データ処理部のデータ処理値を閾値と比較して判定する判定部とを具備したことを特徴とする転動装置部品用検査装置。
【請求項4】
請求項2記載の方法に用いられる転動装置部品用検査装置であって、溶接または圧入の少なくとも一方の方法で複数の部品からなる保持器に交流磁界を付与する励磁コイルと該励磁コイルから保持器に付与された交流磁界の磁束密度の変化を検出するための誘導コイルとを有する電磁誘導センサと、該電磁誘導センサの出力を処理するデータ処理部と、該データ処理部のデータ処理値を閾値と比較して判定する判定部とを具備したことを特徴とする転動装置部品用検査装置。
【請求項5】
請求項3または4記載の転動装置部品用検査装置において、前記電磁誘導センサと被検査物のうち少なくとも一方が回転、直動、揺動可能であることを特徴とする転動装置部品用検査装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか一項記載の転動装置部品用検査装置において、前記転動装置部品の検査を複数の電磁誘導センサで行なうことを特徴とする転動装置部品用検査装置。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか一項記載の転動装置部品用検査装置において、前記判定部の判定結果を表示する表示手段と前記データ処理部のデータ処理値を記憶する記憶手段のうち少なくとも一方を具備したことを特徴とする転動装置部品用検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−32682(P2008−32682A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8092(P2007−8092)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】