説明

転移に関連する徴候および決定因子、ならびにそれらの使用方法

本発明は、生物マーカーを使用して癌を検出する方法を提供する。本発明は、1つには、タンパク質、核酸、多型、代謝産物、およびその他の分析物などの、ある生物学的マーカー(本明細書では、「DETERMINANT」と呼ぶ)、ならびにある生理学的条件および状態が、転移性腫瘍を発症するリスクの高い被験体において存在し、または変化するという発見に関する。したがって、一態様では、本発明は、被験体における転移性腫瘍を発症するリスクを評価するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2008年6月26日に出願された米国出願第61/075,933号の利益を主張し、この内容は、本明細書においてその全体が参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に、癌転移に伴う生物学的徴候および癌転移をもたらす遺伝的決定因子の同定と、そのような生物学的徴候および決定因子を癌のスクリーニング、予防、診断、治療、モニタリング、および予後に使用する方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
転移は、ほとんどの致死性固形腫瘍の主な特徴であり、局所制御を飛び越えかつ周囲のマトリックスを通して浸潤する能力を腫瘍細胞に与え、脈管構造またはリンパ管内に移行して生存し、最終的には外来の土壌でコロニー化し成長する、遺伝的なまたは後成的な変質によって誘導される複雑な多段階の生物学的プロセスを示す(Gaorav P.GuptaおよびJoan Massague(2006年)Cell)。そのような転移をもたらす遺伝的事象が、腫瘍が成長し拡大するにつれて確率的に獲得できることに関しては、全体として意見の一致が見られるものであり、確かに、全身腫瘍組織量は転移のリスクに関する正の予測子である。一方、山のような証拠は、一部の腫瘍がその最も早い段階から転移する能力を得ている可能性がある(またはない)という主張を普及させた。一部の腫瘍がその生活史の初期において、転移に関して「生来のものである」という考えは、同等に初期段階の腫瘍(すなわち、同様の腫瘍組織量)に関する広く様々な結果の臨床観察によって裏付けされる。これに対して、転移の転写状態は、他の転移よりもそれに一致した原発性のものにより類似していることが示されてきた(Perouら、2000年)。さらに、癌ゲノムにおける大規模なゲノム異常は、良性から悪性の状態に移行する初期に生じることが、実証されている(非特許文献1;非特許文献2)。その他の著者にはMarcus Bosenbergが含まれ、その進化の初期段階に獲得された遺伝的事象の特定の補体が、少なくとも一部では、その転移能を含む腫瘍の生物学的挙動を最終的には決定することになることを示唆している。したがって本発明者らは、腫瘍の転移能の遺伝的決定因子が、初期段階の原発性悪性腫瘍において以前から存在しており、そのような決定因子は、転移性播種に寄与するまさにそのプロセスにおいて機能的に活性であると推論する。したがって、そのような転移決定因子は、可能性ある治療標的であるだけでなく癌性疾患の攻撃性の決定因子でもあり、したがって転移決定因子は、予後決定因子でもある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Chin,K.、de Solorzano,C.O.、Knowles,D.、Jones,A.、Chou,W.、Rodriguez,E.G.、Kuo,W.L.、Ljung,B.M.、Chew,K.、Myambo,K.ら(2004年)、In situ analyses of genome instability in breast cancer、Nat Genet36巻、984〜988頁
【非特許文献2】Rudolph,K.L.、Millard,M.、Bosenberg,M.W.、およびDePinho,R.A.(2001年)、Telomere dysfunction and evolution of intestinal carcinoma in mice and humans、Nat Genet28巻、155〜159頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、1つには、タンパク質、核酸、多型、代謝産物、およびその他の分析物などの、ある生物学的マーカー(本明細書では、「DETERMINANT」と呼ぶ)、ならびにある生理学的条件および状態が、転移性腫瘍を発症するリスクの高い被験体において存在し、または変化するという発見に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、一態様では、本発明は、被験体における転移性腫瘍を発症するリスクを評価するための方法を提供する。転移性腫瘍を発症するリスクは、被験体から得たサンプル中のDETERMINANTの有効量のレベルを測定することによって決定される。被験体が転移性腫瘍を発症するリスクが高いことは、サンプル中のDETERMINANTのレベルの臨床的に有意な変化を測定することによって決定される。あるいは、被験体が転移性腫瘍を発症するリスクが高いことは、有効量のDETERMINANTのレベルを基準値と比較することによって決定される。いくつかの態様では、この基準値が指標である。
【0007】
別の態様では、本発明は、第1の期間で、被験体から得た第1のサンプル中のDETERMINANTの有効量のレベルを検出し、第2の期間で、被験体から得た第2のサンプル中のDETERMINANTの有効量のレベルを検出し、検出されたDETERMINANTのレベルを基準値と比較することによって、被験体における腫瘍の進行を評価するための方法を提供する。いくつかの態様では、第1のサンプルは、腫瘍の治療前に被験体から採取され、第2のサンプルは、腫瘍の治療後に被験体から採取される。
【0008】
さらなる態様では、本発明は、第1の期間で、被験体から得た第1のサンプル中のDETERMINANTの有効量のレベルを検出し、任意選択で第2の期間で、被験体から得た第2のサンプル中のDETERMINANTの有効量のレベルを検出することによって、治療の有効性をモニタし、または転移性腫瘍の治療レジメンを選択するための方法を提供する。第1の期間で検出されたDETERMINANTの有効量のレベルを、第2の期間で検出されたレベルまたは基準値と比較する。治療の有効性は、被験体から得たDETERMINANTの有効量のレベルの変化によってモニタされる。
【0009】
さらに別の態様では、本発明は、DETERMINANTの有効量が、腫瘍から得たサンプルにおいて測定して臨床的に有意に変化した場合に、患者が腫瘍を有していると特定し、腫瘍転移を予防または低減する治療レジメンで患者を治療することによって、腫瘍を有する患者を治療する方法を提供する。
【0010】
一態様では、本発明は、DETERMINANTの有効量を測定することにより、患者における転移のリスクを評価することによって、アジュバント治療を必要とする腫瘍患者を選択する方法であって、患者から得た腫瘍サンプル中の2個以上のDETERMINANTの臨床的に有意な変化は、患者がアジュバント治療を必要としていることを示す方法を提供する。
【0011】
別の態様では、本発明は、患者から得た腫瘍サンプル中のDETERMINANTの有効量に関する情報を得、2個以上のDETERMINANTが臨床的に有意に変化した場合に、患者における腫瘍転移を予防または低減する治療レジメンを選択することによって、腫瘍患者に治療決定を知らせる方法を提供する。
【0012】
様々な実施形態では、評価/モニタリングは、所定レベルの予測性により実現される。所定レベルの予測性とは、その方法が、許容されるレベルの臨床または診断精度を提供することを意味する。臨床および診断精度は、本明細書に記述される方法など、当技術分野で公知の方法によって決定される。
【0013】
DETERMINANTには、例えば、本明細書に記述されるDETERMINANT1〜360が含まれる。1、2、3、4、5、10、またはそれ以上のDETERMINANTが測定される。好ましくは、DETERMINANT1〜25、41、61、62、63、66、74、96、99、103、126、135、137、138、177、190、210、212、217、218、227、239、261、および271から選択された少なくとも2個のDETERMINANTが測定される。任意選択で、本発明の方法は、腫瘍に関連する少なくとも1つの標準的なパラメータを測定するステップをさらに含む。
【0014】
DETERMINANTのレベルは、電気泳動または免疫化学的手法によって測定される。例えば、決定因子のレベルは、ラジオイムノアッセイ、免疫蛍光アッセイ、または酵素結合免疫吸着アッセイによって検出される。
【0015】
被験体は、原発性腫瘍、再発性腫瘍、または転移性腫瘍を有する。いくつかの態様では、サンプルは、腫瘍の治療を事前に受けている被験体から採取される。あるいは、サンプルは、腫瘍の治療前に被験体から採取される。サンプルは、コア生検標本、切除組織生検標本、もしくは切開組織生検標本などの腫瘍生検標本、または循環腫瘍細胞を有する血液サンプルである。
【0016】
本発明には、DETERMINANT1〜360から選択された2個以上のマーカーの有効量の、マーカーレベルのパターンを含有する、転移性腫瘍基準発現プロファイルも含まれる。好ましくは、このプロファイルは、DETERMINANT1〜25、41、61、62、63、66、74、96、99、103、126、135、137、138、177、190、210、212、217、218、227、239、261、および271のマーカーレベルのパターンを含有する。1つまたは複数の転移性腫瘍基準発現プロファイルと、任意選択で追加の試験結果および被験体情報とを含有する機械可読媒体も含まれる。別の態様では、本発明は、対応するDETERMINANTを検出する複数のDETERMINANT検出試薬を含むキットを提供する。検出試薬は、例えば、抗体またはその断片、オリゴヌクレオチド、またはアプタマーである。
【0017】
別の態様では、本発明は、生理学的または生化学的な経路に関連した腫瘍の転移または進行を示す1個または複数のDETERMINANTを含有するDETERMINANTパネルを提供する。生理学的または生化学的経路には、例えば、含まれる。
【0018】
さらに別の態様では、本発明は、対照と比較して疾患において示差的に発現した1つまたは複数の遺伝子を同定して、遺伝子標的リストが作成し;疾患の進行の機能的局面に関連した標的リストの1つまたは複数の遺伝子を同定することによって、疾患の予後を示す生物マーカーを同定する方法を提供する。機能的局面は、例えば、細胞移動、血管新生、細胞外マトリックス分解、またはアノイキス耐性である。任意選択で、この方法は、進化的に保存された変化を含む、遺伝子標的リストの1つまたは複数の遺伝子を同定して、第2の遺伝子標的リストが作成するステップを含む。この疾患は、例えば、転移性癌などの癌である。
【0019】
DETERMINANTを発現する細胞を提供し、細胞を、候補化合物を含む組成物と接触させ(例えば、インビボ、エキソビボ、またはインビトロ)、物質がDETERMINANTの活性または発現を変化させるか否かを決定することによって、DETERMINANTの活性または発現を調節する化合物が同定される。化合物の存在下で観察された変化が、細胞を、化合物を含まない組成物と接触させたときに観察されない場合、同定された化合物は、DETERMINANTの活性または発現を調節する。
【0020】
DETERMINANTの活性もしくは発現を調節する化合物を被験体に投与することによって、またはDETERMINANTにより調節された化合物の活性もしくは発現を調節する薬剤を被験体に投与することによって、被験体の癌が治療される。化合物は、例えば、(i)DETERMINANTポリペプチド;(ii)DETERMINANTをコードする核酸;(iii)DETERMINANTをコードする核酸の発現または活性を低下させる核酸、その誘導体、断片、類似体、および相同体;(iv DETERMINANTに特異的な抗体などのDETERMINANTの発現または活性を低下させるポリペプチドであってもよい。本明細書で使用される「抗体」(Ab)という用語は、所望の生物活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異的抗体(例えば、2重特異的抗体)、ヒト化またはヒト抗体、Fv抗体、ダイアボディ、および抗体断片を含む。例えば、化合物はTGFβであり、薬剤はTGFβ阻害剤である。別の例は、CXCR4であり、薬剤はCXCR4拮抗薬である。
【0021】
他に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、本発明が関係する当業者に一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記述されるものと同様のまたは均等な方法および材料を、本発明の実施に際して使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記述する。本明細書に記述される全ての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、その全体が参照により明らかに組み込まれる。矛盾する場合、定義を含めた本発明の明細書が優先する。さらに、本明細書に記述される材料、方法、および実施例は、単なる例示であり、限定しようとするものではない。
【0022】
本発明のその他の特徴および利点は、以下の詳細な記述および特許請求の範囲から明らかにされ、そのような記述および範囲に包含されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1−1】図1は、メラノサイト特異的MET発現が、皮膚メラノーマの形成を促進させることを示す図である。(A)メラノサイトを、指示される動物から収集し、培養に適応させた。total RNAを、デオキシサイクリン(DOX)の存在下でまたは存在させない状態で成長させた培養メラノサイトから抽出し、METの発現(Tg MET)を、導入遺伝子特異的プライマーを使用するRT−PCRにより評価した。R15、リボソームタンパク質R15内部対照;−RT、逆転写酵素PCR対照なし。(B)原発性腫瘍(T1〜T6)を、ドキシサイクリンに関してiMet動物から収集し、遺伝子特異的プライマーを使用したRT−PCRによって、メラノサイトマーカーチロシナーゼ、TRP1、およびDctの発現を評価した。XB2、マウスケラチノサイト細胞系;B16F10、マウスメラノーマ細胞系;R15、リボソームタンパク質R15内部対照;−RT、逆転写酵素PCR対照なし。(C)MET誘発性原発性メラノーマにおける、S100のメラノサイト特異的免疫組織化学的染色。t、腫瘍;f、濾胞;fm、濾胞性メラノサイト;a、脂肪細胞。(D)MET誘発性原発性メラノーマにおける、total c−Metおよびリン酸化c−Metの免疫組織化学的染色。(E)RT−qPCRは、MET誘発性原発性メラノーマにおけるHGF発現を分析するために行った(T1〜T6)。腫瘍発現データは、2種のInk4a/Arfメラノサイト細胞系での発現に対して正規化される。
【図1−2】図1は、メラノサイト特異的MET発現が、皮膚メラノーマの形成を促進させることを示す図である。(A)メラノサイトを、指示される動物から収集し、培養に適応させた。total RNAを、デオキシサイクリン(DOX)の存在下でまたは存在させない状態で成長させた培養メラノサイトから抽出し、METの発現(Tg MET)を、導入遺伝子特異的プライマーを使用するRT−PCRにより評価した。R15、リボソームタンパク質R15内部対照;−RT、逆転写酵素PCR対照なし。(B)原発性腫瘍(T1〜T6)を、ドキシサイクリンに関してiMet動物から収集し、遺伝子特異的プライマーを使用したRT−PCRによって、メラノサイトマーカーチロシナーゼ、TRP1、およびDctの発現を評価した。XB2、マウスケラチノサイト細胞系;B16F10、マウスメラノーマ細胞系;R15、リボソームタンパク質R15内部対照;−RT、逆転写酵素PCR対照なし。(C)MET誘発性原発性メラノーマにおける、S100のメラノサイト特異的免疫組織化学的染色。t、腫瘍;f、濾胞;fm、濾胞性メラノサイト;a、脂肪細胞。(D)MET誘発性原発性メラノーマにおける、total c−Metおよびリン酸化c−Metの免疫組織化学的染色。(E)RT−qPCRは、MET誘発性原発性メラノーマにおけるHGF発現を分析するために行った(T1〜T6)。腫瘍発現データは、2種のInk4a/Arfメラノサイト細胞系での発現に対して正規化される。
【図2−1】図2は、Met活性化が転移性メラノーマの発症を誘導させ、肺への播種を促進させることを示す図である。(A)Boydenチャンバに、無血清媒体に加えた5×10iMet腫瘍細胞(系BC014)を播いた。チャンバを、50ng/mlの組換えHGFを含まないおよび含む化学誘引物質(10%の血清を含有する媒体)内に置き、24時間インキュベートした。浸潤性細胞を、クリスタルバイオレットで染色することにより可視化した。(B)ドキシサイクリンで誘発させたiMetトランスジェニックマウスの背部皮膚の原発性皮膚紡錘体細胞メラノーマのH&E染色切片であり、遠位転移がリンパ節副腎および肺に存在している。(C)5×10細胞を、SCIDおよびマウスの尾部静脈に注射し、肺結節の形成を追跡し、転移性播種を相関させた。左パネル:HRASメラノーマ細胞系を注射した(0/4マウス)SCID動物の尾部静脈から収集した無結節肺組織のH&E染色切片;右パネル:MET誘導BC014細胞系(iMet)(3/4マウス)を注射したSCID尾部静脈から収集した、結節浸潤肺組織のH&E染色切片。t、腫瘍。
【図2−2】図2は、Met活性化が転移性メラノーマの発症を誘導させ、肺への播種を促進させることを示す図である。(A)Boydenチャンバに、無血清媒体に加えた5×10iMet腫瘍細胞(系BC014)を播いた。チャンバを、50ng/mlの組換えHGFを含まないおよび含む化学誘引物質(10%の血清を含有する媒体)内に置き、24時間インキュベートした。浸潤性細胞を、クリスタルバイオレットで染色することにより可視化した。(B)ドキシサイクリンで誘発させたiMetトランスジェニックマウスの背部皮膚の原発性皮膚紡錘体細胞メラノーマのH&E染色切片であり、遠位転移がリンパ節副腎および肺に存在している。(C)5×10細胞を、SCIDおよびマウスの尾部静脈に注射し、肺結節の形成を追跡し、転移性播種を相関させた。左パネル:HRASメラノーマ細胞系を注射した(0/4マウス)SCID動物の尾部静脈から収集した無結節肺組織のH&E染色切片;右パネル:MET誘導BC014細胞系(iMet)(3/4マウス)を注射したSCID尾部静脈から収集した、結節浸潤肺組織のH&E染色切片。t、腫瘍。
【図3−1】図3は、細胞浸潤に関する低複雑性の機能的遺伝的スクリーニングと結びつけた多次元異種間ゲノム分析により、転移DETERMINANTが同定されることを示す図である。(A)iHRASおよびiMet皮膚メラノーマから作成された発現プロファイルのSAM分析によって差別的に発現した遺伝子(1597プローブ集合)を、ヒト転移性メラノーマにおける増幅および欠失領域内に存在する遺伝子でまたはヒト原発性および転移性メラノーマの間で差別的に発現した遺伝子を用いたオルソログマッピングで二分して、360候補を定めた。(B)iHRASおよびiMetマウスメラノーマの間で差別的に発現した遺伝子のIngenuity経路分析(1597プローブ集合、上部)と、異種間積算遺伝子リスト(360のフィルタリング済み遺伝子リスト、下部)とを、等サイズの9個のランダムに引き出した遺伝子集合と比較した。上位4つの有意な機能的分類を示す。破線は、IPAによる有意性を示す。(C)浸潤に関して低複雑性の遺伝子スクリーニングを示すフローチャート。レンチウイルス系で発現した295の上方制御/増幅候補のうち199を表す230クローンを、TERT不死化ヒト原発性メラノサイト(HMEL468)に個々に形質導入し、96ウエルマトリゲル浸潤プレートで浸潤に関してアッセイをした。浸潤性は、蛍光媒介定量を介して測定し、値をGFP対照に対して正規化した。2つの独立したスクリーニングでベクター対照から2×標準偏差だけ大きいスコアを示す候補(n=45)を、標準的な24ウエルマトリゲル浸潤チャンバを使用するHMEL468またはWM3211での2次確認スクリーニング用に選択した。(D)浸潤前遺伝子に関する低複雑性の遺伝子スクリーニングのヒストグラム概要。HMEL468プライム化メラノサイトに個々の転移前候補cDNAウイルスを形質導入し、その後、96ウエルトランスウエル浸潤アッセイプレートに投入した。浸潤性を、蛍光媒介定量を介して測定し、値を空ベクター対照に対して正規化した。2つの独立したスクリーニングの試みにおいて、GFP対照から2×標準偏差の浸潤を誘導する候補cDNAは、プライマリースクリーニングヒット(n=45)と見なした。(E)対照31に対する浸潤活性の倍数増加のサマリーヒストグラムは、転移DETERMINANTを確認した。
【図3−2】図3は、細胞浸潤に関する低複雑性の機能的遺伝的スクリーニングと結びつけた多次元異種間ゲノム分析により、転移DETERMINANTが同定されることを示す図である。(A)iHRASおよびiMet皮膚メラノーマから作成された発現プロファイルのSAM分析によって差別的に発現した遺伝子(1597プローブ集合)を、ヒト転移性メラノーマにおける増幅および欠失領域内に存在する遺伝子でまたはヒト原発性および転移性メラノーマの間で差別的に発現した遺伝子を用いたオルソログマッピングで二分して、360候補を定めた。(B)iHRASおよびiMetマウスメラノーマの間で差別的に発現した遺伝子のIngenuity経路分析(1597プローブ集合、上部)と、異種間積算遺伝子リスト(360のフィルタリング済み遺伝子リスト、下部)とを、等サイズの9個のランダムに引き出した遺伝子集合と比較した。上位4つの有意な機能的分類を示す。破線は、IPAによる有意性を示す。(C)浸潤に関して低複雑性の遺伝子スクリーニングを示すフローチャート。レンチウイルス系で発現した295の上方制御/増幅候補のうち199を表す230クローンを、TERT不死化ヒト原発性メラノサイト(HMEL468)に個々に形質導入し、96ウエルマトリゲル浸潤プレートで浸潤に関してアッセイをした。浸潤性は、蛍光媒介定量を介して測定し、値をGFP対照に対して正規化した。2つの独立したスクリーニングでベクター対照から2×標準偏差だけ大きいスコアを示す候補(n=45)を、標準的な24ウエルマトリゲル浸潤チャンバを使用するHMEL468またはWM3211での2次確認スクリーニング用に選択した。(D)浸潤前遺伝子に関する低複雑性の遺伝子スクリーニングのヒストグラム概要。HMEL468プライム化メラノサイトに個々の転移前候補cDNAウイルスを形質導入し、その後、96ウエルトランスウエル浸潤アッセイプレートに投入した。浸潤性を、蛍光媒介定量を介して測定し、値を空ベクター対照に対して正規化した。2つの独立したスクリーニングの試みにおいて、GFP対照から2×標準偏差の浸潤を誘導する候補cDNAは、プライマリースクリーニングヒット(n=45)と見なした。(E)対照31に対する浸潤活性の倍数増加のサマリーヒストグラムは、転移DETERMINANTを確認した。
【図4】図4は、記述されるnevi、原発性、および転移性メラノーマ腫瘍試験片の組織マイクロアレイ(TMA)で行われた代表的なDETERMINANT(A)Fascin1(FSCN1)および(B)HSF1に関する、タンパク質発現の自動化定量分析(AQUA(登録商標))を示す図である[Camp,R.L.、Chung,G.G.、およびRimm,D.L.、Automated subcellular localization and quantification of protein expression in tissue microarrays. Nat Med 8(11巻)、1323〜1327頁(2002年)]。情報コアは、それぞれ細胞質および核細胞区画が染色されるFSCN1およびHSF1のAQUA(登録商標)スコアに関して評価した。有意性(S;5%)は、Fisher検定に基づく。結果の概要に関しては表2を参照されたい。
【図5】図5は、(A)K平均階層クラスタリングと、(B)295のステージI〜IIの乳癌のコホートにおける上記から得た2つのサブクラスの全体(上部)および転移無し(下部)の生存に関するKaplan−Meier分析とを示す図である[乳癌のデータは:van de Vijver, M.J.ら、A gene−expression signature as a predictor of survival in breast cancer. N Engl J Med 347(25巻)、1999〜2009頁(2002年); van’t Veer, L.J.ら、Gene expression profiling predicts clinical outcome of breast cancer. Nature 415(6871巻)、530〜536頁(2002年)]。
【図6】図6は、インビトロアノイキススクリーニング法を示す図である。(A)インビトロアノイキススクリーニング戦略。(B)ラット腸上皮(RIE)細胞は、低接着プレートに塗布したときに生存度が低下した。RIE細胞は、96ウエルULCプレートまたは接着プレートに24時間塗布した。ATPレベルを、細胞生存度に関して測定し、24時/0時の時間でのレベルの比として得た。(C)RIEはV5−mTrkBを発現する。RIE細胞を感染させ、48時間で細胞溶解物を単離し、SDS−PAGEにより分解した。ウェスタンブロット分析を、α−V5抗体で行った。
【図7】図7は、様々な遺伝子がRIE細胞にアノイキス耐性を与えることを示す図である。RIE細胞を、候補遺伝子の1種を発現するレトロウイルスに感染させ、超低クラスタープレートに塗布し、細胞の生存度を塗布後24時間で測定した。値を、0時間の生存度に対して示す。全ての読取りは、3回ずつ行った。強調されているのは、空ベクター、BDNF、またはmTrkB(正の対照)の読取りである。
【図8】図8は、中央値よりも2標準偏差大きいラット腸上皮(RIE)細胞にアノイキス耐性を与えた20個の候補遺伝子を示す図である。9個の候補遺伝子(HNRPR、CDC20、PRIM2A、HRSP12、ENY2、MGC14141、RECQL、STK3、およびMX2)は、2つの独立したスクリーニングに関して中央値よりも1標準偏差大きい値を与えた。これらの遺伝子は、指示された染色体上に位置付けられる。
【図9】図9は、遺伝子によって、RIE細胞が懸濁液中に維持された後に付着するという能力が与えられることを示す図である。候補遺伝子を発現するRIE細胞を、ULCプレート上に24時間塗布した。懸濁液中の細胞を接着プレートに移し、24時間後に接着した細胞をクリスタルバイオレットで染色した。細胞生存度を、24時間/0時間として示す。全ての読取りは、それぞれ3回行った。
【図10】図10は、転移DETERMINANTが、腫瘍原性を促進させる状態を示す図である。(A)GFPまたは示された転移DETERMINANTを安定に発現するHMEL468細胞を、SCIDマウス(n=6)に皮下注射し、これらを臨床試験によって腫瘍形成をモニタした。周囲の筋線維(m)および脂肪細胞(a)を通した局所浸潤を示す、代表的なH&E染色原発性腫瘍(t)が示されている。(B)DETERMINANT誘導腫瘍原性アッセイから収集されたデータをまとめた表である。
【図11−1】図11は、DETERMINANT HOXA1が、細胞浸潤および肺播種能を促進させる状態を示す。(A)HMEL468におけるHOXA1の異所性発現は、FAK(Tyr397;左パネル)の高い活性化をもたらし、それに応じてトランスウエル浸潤アッセイでのマトリゲルを通し浸潤の増大をもたらした(右パネル;図11Cにおいて定量化されている。)。(B)図11Cで定量化された、WM115およびWM3211形質導入細胞系でのHOXA1発現を確認するための、HOXA1−V5に関するウェスタンブロット分析(左パネル)、およびトランスウエル浸潤アッセイの代表的な画像(右パネル)。(C)図11A〜Bに示された浸潤チャンバデータの定量化。(D)GFPまたはHOXA1を安定に発現するHMEL468細胞を、SCIDマウス(n=6)の尾部静脈に静脈内注射し、注射後12週での肺結節に関して剖検により試験をした。巨視的(および微視的)な肺結節を、HOXA1コホート(n=3)の50%で検出したが、対照では検出されなかった。1匹の、HMEL468−HOXA1を注射した動物から切除した、肺結節(t)および周囲の肺実質(l)の代表的なH&E顕微鏡写真。(E)空ベクター(EV)またはHOXA1を発現するWM115メラノーマ細胞を、ヌードマウスに皮下注射し、注射後46日目に測定した。(F)皮内注射されたWM115−HOXA1細胞を保持するヌードマウスから単離した肺の、代表的な転移。
【図11−2】図11は、DETERMINANT HOXA1が、細胞浸潤および肺播種能を促進させる状態を示す。(A)HMEL468におけるHOXA1の異所性発現は、FAK(Tyr397;左パネル)の高い活性化をもたらし、それに応じてトランスウエル浸潤アッセイでのマトリゲルを通し浸潤の増大をもたらした(右パネル;図11Cにおいて定量化されている。)。(B)図11Cで定量化された、WM115およびWM3211形質導入細胞系でのHOXA1発現を確認するための、HOXA1−V5に関するウェスタンブロット分析(左パネル)、およびトランスウエル浸潤アッセイの代表的な画像(右パネル)。(C)図11A〜Bに示された浸潤チャンバデータの定量化。(D)GFPまたはHOXA1を安定に発現するHMEL468細胞を、SCIDマウス(n=6)の尾部静脈に静脈内注射し、注射後12週での肺結節に関して剖検により試験をした。巨視的(および微視的)な肺結節を、HOXA1コホート(n=3)の50%で検出したが、対照では検出されなかった。1匹の、HMEL468−HOXA1を注射した動物から切除した、肺結節(t)および周囲の肺実質(l)の代表的なH&E顕微鏡写真。(E)空ベクター(EV)またはHOXA1を発現するWM115メラノーマ細胞を、ヌードマウスに皮下注射し、注射後46日目に測定した。(F)皮内注射されたWM115−HOXA1細胞を保持するヌードマウスから単離した肺の、代表的な転移。
【図12】図12は、HOXA1により誘導されたトランスクリプトーム分析により、Ingenuity経路分析によって定義されたSmad3網状組織を特定した状態を示す図である。分子網状構造は、Ingenuity経路分析(Ingenuity Systems Inc.)を使用して生成された。網状構造は、結節(遺伝子)および縁部(結節間の生物学的関係)として、グラフにより示す。実線は、直接的な相互作用を示し、破線は、間接的な相互作用を示す。赤および緑色は、それぞれトランスクリプトーム分析で過発現しまたは未発現した遺伝子を示す。物体の形状は、タンパク質が属する機能的ファミリーを示す。遺伝子のファミリーおよび内容については、補助的な表s3を参照されたい。(B)示されるHOXA1形質導入細胞系を、RT−qPCRを使用してSMAD3発現に関して評価した。値は、GAPDH内部対照およびGFP実験対照に対して計算した。誤差棒は、標準誤差を示す。
【図13−1】図13は、HOXA1の異所性発現が、TGFβ情報伝達応答の上方制御を通して細胞浸潤を強化することを示す。(A)HOXA1を異所的に発現するWM115細胞を、TGFβ誘発性3TP−Luxルシフェラーゼ受容体でトランスフェクトし、その後、TGFβを用いてまたは用いずに処理することにより、GFP発現対照と比較した応答性を評価した。誤差棒は、標準誤差を示す;両側t検定:−TGFβ、p=0.003;+TGFβ、p<0.0001。(B)TGFβと共にまたはTGFβ無しで10%血清または1%血清中に繁殖させたWM115細胞を安定に発現するGFPまたはHOXA1からの全細胞溶解物を、指示される抗体を使用してウェスタンブロットにより分析した。(C)HOXA1を安定に発現するWM115細胞に、SMAD3 shRNA(shSMAD3)または非標的shRNA(shNT)を形質導入し、マトリゲルトランスウエル浸潤チャンバに投入して、GFP対照ウイルス(GFP)が形質導入されたWM115親細胞系と比較した細胞浸潤のアッセイを行った。浸潤チャンバの代表的な画像を右パネルに示す、両側t検定:GFP対shNT、p=0.0008;shNT対shSNAD3、p=0.0022。(D)空ベクター(EV)またはHOXA1を発現するWM115メラノーマ細胞を、ヌードマウスに皮下注射した。得られた異種移植腫瘍切片を、抗ホスホSMAD3で免疫染色することにより、HOXA1腫瘍試験片でのSMAD3活性化を確認した。
【図13−2】図13は、HOXA1の異所性発現が、TGFβ情報伝達応答の上方制御を通して細胞浸潤を強化することを示す。(A)HOXA1を異所的に発現するWM115細胞を、TGFβ誘発性3TP−Luxルシフェラーゼ受容体でトランスフェクトし、その後、TGFβを用いてまたは用いずに処理することにより、GFP発現対照と比較した応答性を評価した。誤差棒は、標準誤差を示す;両側t検定:−TGFβ、p=0.003;+TGFβ、p<0.0001。(B)TGFβと共にまたはTGFβ無しで10%血清または1%血清中に繁殖させたWM115細胞を安定に発現するGFPまたはHOXA1からの全細胞溶解物を、指示される抗体を使用してウェスタンブロットにより分析した。(C)HOXA1を安定に発現するWM115細胞に、SMAD3 shRNA(shSMAD3)または非標的shRNA(shNT)を形質導入し、マトリゲルトランスウエル浸潤チャンバに投入して、GFP対照ウイルス(GFP)が形質導入されたWM115親細胞系と比較した細胞浸潤のアッセイを行った。浸潤チャンバの代表的な画像を右パネルに示す、両側t検定:GFP対shNT、p=0.0008;shNT対shSNAD3、p=0.0022。(D)空ベクター(EV)またはHOXA1を発現するWM115メラノーマ細胞を、ヌードマウスに皮下注射した。得られた異種移植腫瘍切片を、抗ホスホSMAD3で免疫染色することにより、HOXA1腫瘍試験片でのSMAD3活性化を確認した。
【図14】図14は、FSCN1またはHOXA1を過発現するHRAS(M3HRAS)が形質導入されたlnk4a/Arf−/−マウス誘導メラノサイトを示す図である。(A)トランスウエル浸潤アッセイでマトリゲルを通して高められた浸潤。(B)ヌードマウスで高められた皮下腫瘍成長。(C)SCIDマウスに静脈内尾部静脈注射をした後の、高い肺結節形成。Cにおいて、FSCN1コホートの肺/肥満度指数の差は、極めて病的なHOXA1コホートによって要求されたアッセイ終点でのこれら動物の比較的良好な健康状態により、有意ではないことに留意されたい。
【図15−1】図15は、空ベクター(対照群)またはHOXA1(群1)を発現する(A)WM115メラノーマ細胞および(B)形質転換されたヒトメラノサイト(HMEL468)から抽出されたRNAを、RTプロファイラーPCRアレイ(Supperarray)を使用する定量的qPCR分析に使用して、転移に関連する遺伝子のパネルの発現を分析した。得られる異種移植腫瘍切片を、抗CXCR4で免疫染色して、HOXA1腫瘍試験片(図13)の過発現を確認した。対照と実験群との間の閾値差次発現を満足する遺伝子が示されている。
【図15−2】図15は、空ベクター(対照群)またはHOXA1(群1)を発現する(A)WM115メラノーマ細胞および(B)形質転換されたヒトメラノサイト(HMEL468)から抽出されたRNAを、RTプロファイラーPCRアレイ(Supperarray)を使用する定量的qPCR分析に使用して、転移に関連する遺伝子のパネルの発現を分析した。得られる異種移植腫瘍切片を、抗CXCR4で免疫染色して、HOXA1腫瘍試験片(図13)の過発現を確認した。対照と実験群との間の閾値差次発現を満足する遺伝子が示されている。
【図16】図16は、空ベクター(EV)またはHOXA1を発現するWM115メラノーマ細胞および形質転換したヒトメラノサイト(HMEL468)を、ヌードマウスに皮下注射した状態を示す。得られる異種移植切片を、抗CXCR4で免疫染色することにより、HOXA1腫瘍試験片での過発現を確認した。
【図17】図17(A)は、スピッツ母斑およびメラノーマFFPE試験片のコホートにおけるUBE2CのRNA発現のQuantiGene分析を示す。(B)原発性Ink4a/Arf欠損MEFに、HRASV12、MYC、およびUBE2Cを発現する示されたベクターをトランスフェクトした。Vcc=LacZベクター対照;棒は±S.D.を示す。
【図18】図18(A)は、空ベクター(ev)、Geminin、またはNedd9(正の対照)を安定に発現するWM3211メラノーマ細胞を、トランスウエル浸潤アッセイでのマトリゲルを通して、浸潤に関してアッセイを行った。(B)空ベクター(ev)、Geminin、またはCaveolin 1(負の対照)を安定に発現するWM3211細胞から抽出した全細胞溶解物の免疫ブロット分析。抗ホスホFAKおよび抗ホスホERKは、それぞれ活性化したFAKおよびERK種を示す。(C)空ベクター(EV)またはGeminin(GEMN)を安定に発現するWM3211細胞を、ホスホ−FAK(P−FAK;赤)に関して免疫染色することにより、図18Bで観察された高いFAK活性化を確認した。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、転移性腫瘍を有し、または転移性腫瘍を発症するリスクのある被験体に関連した徴候、およびそのような被験体をもたらす決定因子の同定に関する。
【0025】
ヒトおよびマウスのデータ集合同士の異種間比較によれば、ヒトメラノーマの生物学に関する偶発的癌遺伝子を同定するための生物学的フィルタをもたらすことが証明されている。本発明の研究において、その原発性腫瘍が転移する明白な可能性を示すメラノーマの2匹のマウスモデルを使用して、転移において示差的に発現する遺伝子を同定した。転移性(iMet)および非転移性(iHRAS)GEMモデル由来の原発性腫瘍の発現プロファイル比較では、異種間分析による生物学的フィルタリングによって優先順位が付けられかつアレイCGHにより得られた増幅および欠失のパターンに重ねられた、1597個の示差的に発現した遺伝子のリストが明らかにされた。進化的に保存された変化(例えば、マウスおよびヒトにおいて)は、より本質的なものであると仮定され;したがって、ヒト転移性腫瘍から得たゲノムデータを有するGEMモデル(定義された遺伝的背景の利点および明らかな表現型相関を有する。)から得た発現データの三角法は、優先順位付けを可能にし、ヒトの関連性を1597個の候補に割り当てた。
【0026】
295個の上方制御され/増幅された、および65個の下方制御され/欠失された遺伝子の、表現型により誘導される進化的に保存された転移候補リストは、示差的転移性を有する皮膚メラノーマの2つの遺伝子組換えマウスモデルのトランスクリプトームを比較し、その後、ヒト原発性および転移性メラノーマのゲノムおよびトランスクリプトームのプロファイルに関して三角法を行うことによって、明らかにされた。これらの候補は、転移拡散での3つの主なステップ(すなわち、原発性腫瘍部位からの回避、循環、最後に遠位異種部位でコロニー化および増殖する。)に対応する、循環およびコロニー化における浸潤、アノイキス耐性、または生存に関する低複雑性遺伝子スクリーニングに入れられた。これまで、浸潤スクリーニングは、TERT固定化ヒトメラノサイトおよびメラノーマ細胞に浸潤促進活性を与えることが可能な31個の確認された転移DETERMINANTを定めてきた。転移候補の独立した部分集合は、仮にそうであるとしても一部だけが浸潤スクリーニングのDETERMINANTと重なり合う、アノイキス耐性またはコロニー化スクリーニングから得た追加のDETERMINANTとして定義されることになると予測される。これまで、アノイキス耐性スクリーニングは、浸潤DETERMINANTと重なることなく懸濁液中に生存を与えることが可能な、定義された9個の確認されたDETERMINANTを有している。これらのDETERMINANTは一緒にまたはその部分集合として、転移性播種に関与する主なステップを包含することになる。
【0027】
原発性腫瘍は、遺伝的に不均質であると認識される。原発性腫瘍内の副集団における転移DETERMINANTが増殖上の利点を与え最終的に遠位部位への播種を誘導させる場合、転移性誘導体は、その原発性の対応物よりも均質になり、したがってそのような転移DETERMINANTの発現の進行相関パターンを示すことが予測される。これらDETERMINANTの25個の発現パターンを評価するために、本発明者らは、Oncomineの発現プロファイリングデータの概要を利用した(Rhodes D.R.ら、ONCOMINE: a cancer microarray database and integrated data−mining platform. Neoplasia 6巻、1〜6頁、2004年)。しかし、これら25個の転移DETERMINANTの大多数は、浸潤または転移に特異的に結び付けられていないが、これらの全ては、メラノーマおよび非メラノーマ固形腫瘍の両方で進行する腫瘍グレードまたは予後に有意に相関した発現パターンを示す。例えば、25個のDETERMINANTのうち12個は、原発性疾患よりも転移において高い発現を示す。脳(グリオーマ)腫瘍、メラノーマのような別の間葉腫瘍では、転移DETERMINANTの13個が、進行相関発現パターンを示し、すなわち、より高いグレードのグリオーマで発現が増大した。これらの中で6個は、結果に対して正の相関を示した。前立腺癌では、転移DETERMINANTの10個が、原発性から転移まで発現の有意な増加を示した。肺では、5個が、高い腫瘍グレードと相関を示した。最も有意な重なり合いは、乳腺癌で観察され、25個の転移DETERMINANTのうち13個は、腫瘍進行のステージまたはグレードと相関を示した。さらに、DETERMINANTの13個は、予後と相関することが報告された。
【0028】
したがって本発明は、転移性腫瘍に関連したDETERMINANTを検出することによって、転移性腫瘍を持ちまたは転移性腫瘍を経験するリスクのある、転移性腫瘍に対して無症候性の被験体も含めた被験体を、同定するための方法を提供する。これらの徴候およびDETERMINANTは、癌の治療および療法を受けた被験体をモニタし、癌を有する被験体で有効となり得る療法および治療を選択しもしくは修正するのにも有用であり、そのような治療および療法の選択および使用は、腫瘍の進行を遅くし、またはその発症を実質的に遅延させもしくは予防し、または腫瘍転移の発生を低下させもしくは予防するものである。
【0029】
(定義)
「精度」は、測定されまたは計算された量(試験で報告された値)と、その実際の(または真の)値との適合性の程度を指す。臨床精度は、真の結果(真陽性(TP)または真陰性(TN))対誤判別された結果(偽陽性(FP)または偽陰性(FN))の割合に関係し、感受性、特異性、陽性的中率(PPV)、もしくは陰性的中率(NPV)、またはその他の尺度の中でも可能性、オッズ比と言える。
【0030】
本発明の文脈における「DETERMINANT」は、限定するものではないが、タンパク質、核酸、および代謝産物を、これらの多型、変異、変種、修飾、サブ単位、断片、タンパク質−リガンド複合体、および分解生成物、タンパク質−リガンド複合体、元素、関連する代謝産物、およびその他の分析物またはサンプル由来の尺度と共に包含する。DETERMINANTは、変異タンパク質または変異核酸を含むこともできる。DETERMINANTは、非血液感染性因子または健康状態の非分析的生理学的マーカー、例えば本明細書で定義された「臨床パラメータ」、ならびに本明細書でも定義される「伝統的な実験室でのリスク因子」も包含する。DETERMINANTは、数学的に生成された任意の計算された指標、または、時間的傾向および差を含む前述の測定のいずれか1つもしくは複数の組合せも含む。利用可能な場合には、および本明細書で他に記述されない場合、遺伝子産物であるDETERMINANTは、公文書での略称、またはthe international Human Genome Organization Naming Committee (HGNC)によって割り当てられかつthe US National Center for Biotechnology Information (NCBI)ウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?db=gene)にこの出願日に列挙された遺伝子記号をベースにして同定され、Entrez Geneとも呼ばれる。
【0031】
「(1個または複数の)DETERMINANT」は、そのレベルが転移性腫瘍を有しまたは転移性腫瘍を発症し易くなりまたは転移性腫瘍のリスクのある被験体において変化する、全ての核酸またはポリペプチドの1種または複数を包含する。個々のDETERMINANTを表1にまとめ、これらをまとめて本明細書では、とりわけ「転移性腫瘍関連タンパク質」、「DETERMINANTポリペプチド」、または「DETERMINANTタンパク質」と呼ぶ。ポリペプチドをコードする、対応する核酸を、「転移性腫瘍関連核酸」、「転移性腫瘍関連遺伝子」、「DETERMINANT核酸」、または「DETERMINANT遺伝子」と呼ぶ。他に指示しない限り、「DETERMINANT」、「転移性腫瘍関連タンパク質」、「転移性腫瘍関連核酸」は、本明細書に開示される配列のいずれかを指すことを意味する。DETERMINANTタンパク質または核酸の、対応する代謝産物も、前述の伝統的なリスクマーカー代謝産物と同様に測定することができる。
【0032】
健康状態(例えば、年齢、家族歴、および伝統的なリスク因子として一般に使用されるその他の測定値)の生理学的マーカーを、「DETERMINANT生理機能」と呼ぶ。DETERMINANTの前述の種類の1つまたは複数、好ましくは2つ以上を数学的に組み合わせた測定値から得た計算された指標を、「DETERMINANT指標」と呼ぶ。
【0033】
「臨床パラメータ」は、限定するものではないが、年齢(Age)、人種(RACE)、性別(Sex)、または家族歴(FamHX)など、被験体の健康状態またはその他の特徴の全ての非サンプルまたは非分析物生物マーカーを包含する。
【0034】
「循環内皮細胞」(「CEC」)は、炎症を含めたある状況で、血流に剥落する血管内壁からの内皮細胞であり、癌の病因に関連した新しい脈管構造の形成に寄与する。CECは、腫瘍進行および/または抗新脈管形成療法に対する応答のマーカーとして役立てることができる。
【0035】
「循環腫瘍細胞」(「CTC」)は、原発性腫瘍から転移に剥落する上皮由来の腫瘍細胞であり、循環内に進入する。末梢血中の循環腫瘍細胞の数は、転移性癌を有する患者の予後に関連する。これらの細胞は、上皮細胞を検出する免疫学的方法を使用して、分離し定量することができる。
【0036】
「FN」は、偽陽性であり、疾患状態の試験では、疾患被験体を誤って非疾患または正常であると分類することを意味する。
【0037】
「FP」は、偽陽性であり、疾患状態の試験では、正常な被験体を誤って疾患を有すると分類することを意味する。
【0038】
「式」、「アルゴリズム」、または「モデル」は、任意の数学的方程式、アルゴリズム的、分析的、もしくはプログラムされたプロセス、または1つもしくは複数の連続したもしくはカテゴリー的入力(本明細書では、「パラメータ」と呼ぶ。)を得、かつ出力値を計算する統計的技法であり、時々「指標」または「指標値」と呼ばれる。「式」の非限定的な例には、合計、比、および回帰演算子が含まれ、例えば、係数または指数、生物マーカー値の変換および正規化(限定するものではないが、性別、年齢、または人種などの臨床パラメータをベースにした正規化スキームを含む。)、規則および指針、統計的分類モデル、および歴史的集団で訓練された神経回路網がある。DETERMINANTおよびその他のDETERMINANTを組み合わせる際に特に使用されるものは、被験体サンプルで検出されたDETERMINANTのレベルと転移性疾患の被験体のリスクとの関係を決定するための、1次および非1次方程式と統計的分類分析である。パネルおよび組合せ構成において、特に興味深いものは、構造的および共同統計分類アルゴリズムであり、リスク指標構成の方法であり、とりわけ、相互相関、主成分分析、(PCA)、因子軸回転、ロジスティック回帰(LogReg)、線形判別分析(LDA)、Eigengene線形判別分析(ELDA)、サポートベクターマシン(SVM)、ランダム予報(RF)、帰納的分配木(RPART)、ならびにその他の関連ある決定木分類技法、収縮重心(SC)、StepAIC、Kth最短隣接、ブースティング、判別木、神経回路網、Bayscianネットワーク、サポートベクターマシン、および隠れマルコフモデルなどの確立された技法を含む、パターン認識フィーチャーを利用するものである。その他の技法は、当業者に周知のCox、Weibull、Kaplan−Meier、およびGreenwoodモデルも含めた、生存および時間事象ハザード分析で使用することができる。これら技法の多くは、順方向選択、逆方向選択、または段階的選択などのDETERMINANT選択技法、所与のサイズの遺伝的アルゴリズムの全ての可能性あるパネルの全数調査と組み合わせて有用であり、またはこれら技法そのものは、それ自体の技法において生物マーカー選択法を含んでいてもよい。これらは、追加の生物マーカーとモデル改良とのトレードオフを定量するために、かつ過剰適合を最小限に抑えるのを助けるために、Akaike情報基準(AIC)またはBayer情報基準(BIC)と結合してもよい。得られる予測モデルは、ブートストラップ、リーブワンアウト(LOO)、および10倍クロス確認(10倍CV)などの技法を使用して、その他の研究で確認することができまたは当初慣れていた研究でクロス確認することができる。様々なステップで、誤検出率(false discovery rate)は、当技術分野で公知の技法により、値の順列によって推定することができる。「医療経済効用関数」は、ケア基準に診断または治療の介入を導入する前後で理想化された適用可能な患者集団での臨床結果範囲の予測された確率の組合せから得られた式である。これは、そのような介入の精度、有効性、および性能特性の推測値と、各結果に関連した費用および/または値の測定(有用性)であって、ケアの実際の医療制度コスト(サービス、サプライ、装置、および薬物など)から得ることができ、かつ/または各結果をもたらす生活の質で調整した年数(QALY)当たりの推定許容値として包含する。全ての予測された結果全体を通して、ある結果に関して予測される集団サイズとそれぞれの結果の期待効用との積の合計は、ケアの所与の基準の全医療経済効用である。(i)介入のあるケア基準に関して計算された全医療経済効用と、(ii)介入の無いケア基準に関する全医療経済効用との差は、医療経済コストまたは介入の値の全体的な尺度をもたらす。これは、それ自体が分析される全患者群の中で(または介入群の中でのみ)分割されて、単位介入当たりのコストに到達し、市場ポジショニング、価格決定、および医療制度の受入れの前提事項として、そのような決定を案内する。そのような医療経済効用関数は、介入の費用効果を比較するのに一般に使用されるが、保険制度が支払いをしようとするQALY当たりの許容される値、または、新しい介入に必要な許容される費用効果のある臨床性能特性を推定するのに変換してもよい。
【0039】
本発明の診断(または予後)介入では、各結果(疾患分類診断試験では、TP、FP、TN、またはFNであってもよい。)が異なるコストを有するので、医療経済効用関数は、特異性よりも感受性を、またはNPVよりもPPVを、臨床状況および個々の結果のコストおよび値に基づいて優先的に支持してもよく、したがって、より直接的な臨床または分析性能尺度とは異なる可能性のある医療経済性能および値の別の尺度をもたらす。これらの異なる測定および相対的なトレードオフは、一般に、全ての性能尺度が不完全を好むことになるが異なる程度まで、エラー率0の完全試験(0予測被験体結果誤判別またはFPおよびFNとも呼ばれる。)の場合でのみ集中することになる。
【0040】
「測定する」または「測定」、あるいは「検出する」または「検出」は、そのような物質の定性的または定量的な濃度レベルの誘導を含めた、臨床または被験体由来サンプル中の、所与の物質の存在、不存在、定量、活性、または量(有効量にすることができる。)を評価すること、または、被験体の非分析物臨床パラメータの値もしくは分類を別の方法で評価することを意味する。
【0041】
「陰性予測値」または「NPV」は、TN/(TN+FN)または全ての陰性試験結果の真陰性率によって計算される。これは、試験をしようとする集団の、疾患の有病率および試験前確率によっても本質的に影響を受ける。
【0042】
例えば、臨床診断試験などの試験の特異性、感受性と、陽性および陰性予測値について論じている、O’Marcaigh AS、Jacobson RM、「Estimating The Predictive Value Of A Diagnostic Test, How To Prevent Misleading Or Confusing Results」、Clin.Ped.1993年、32(8巻):485〜491頁を参照されたい。しばしば、連続診断試験測定を使用する2元疾患状態分類アプローチでは、感受性および特異性は、Pepeら、「Limitations of the Odds Ratio in Gauging the Performance of a Diagnostic, Prognostic, or Screening Marker」、Am.J.Epidemiol、2004年、159(9巻):882〜890頁による受信者動作特性(ROC)曲線によってまとめられ、また、曲線下面積(AUC)またはc統計、すなわち、単一の値でのみ試験(またはアッセイ)カットポイントの全範囲にわたって試験、アッセイ、または方法の感受性および特異性の表示を可能にする指標によってまとめられる。例えば、Shultz、「Clinical Interpretation Of Laboratory Procedures」、14章、Teitz、Fundamentals of Clinical Chemistry、BurtisおよびAshwood(編)、4版、1996年、W.B.Saunders Company、192〜199頁;およびZweigら、「ROC Curve Analysis: An Example Showing The Relationships Among Serum Lipid And Apolipoprotein Concentrations In Identifying Subjects With Coronory Artery Disease」、Clin.Chem.、1992年、38(8巻):1425〜1428頁も参照されたい。尤度関数、オッズ比、情報理論、予測値、較正(適合度を含む。)、および再分類測定を使用する代替の手法は、Cook、「Use and Misuse of the Receiver Operating Characteristic Curve in Risk Prediction」、Circulation、2007年、115巻:928〜935頁に要約されている。
【0043】
最後に、試験によって定義された被験体コホートでのハザード率と絶対および相対リスク率は、臨床精度および有効性のさらなる測定値である。基準限界、識別限界、およびリスク閾値を含めた異常なまたは疾患値を定義するのに、多数の方法が頻繁に使用されている。
【0044】
「分析精度」は、測定プロセスそのものの再現性および予測精度を指し、変動係数などの測定値と、異なる時間、使用者、装置、および/または試薬を用いた同じサンプルまたは対照の一致および較正の試験にまとめることができる。新しい生物マーカーを評価する際のこれらおよびその他の課題は、Vasan、2006年にもまとめられている。
【0045】
「性能」は、とりわけ臨床および分析精度、使用特性(例えば、安定性、使い易さ)、医療経済値、および試験の成分の相対コストなどのその他の分析およびプロセス特性も含めた、診断または予後試験の全体的な有用性および質に関する用語である。これら因子のいずれかは、優れた性能の源であってよく、したがって試験に役立てることができ、関連あるものとしてAUCや結果までの時間、寿命などの、適切な「性能マトリックス」によって測定してもよい。
【0046】
「陽性予測値」または「PPV」は、TP/(TP+FP)または全ての陽性試験結果の真陽性率によって計算される。これは疾患の有病率および試験がなされる集団の試験前確率の影響を本質的に受ける。
【0047】
本発明の文脈における「リスク」は、転移性事象への変換のように、ある事象が特定の期間にわたって生じる確率に関し、対照の「絶対」リスクまたは「相対」リスクを意味することができる。絶対リスクは、関連ある時間コホートに関する測定後の実際の観察を参照しながら、または関連ある期間に関して追跡された統計的に有効な歴史コホートから明らかにされた指標値を参照しながら、測定することができる。相対リスクは、低リスクコホートの絶対リスクまたは平均集団リスクと比較した被験体の絶対リスクの比を指し、これは臨床リスク因子がどのように評価されるかによって変動する可能性がある。オッズ比、すなわち所与の試験結果に関する陽性事象と陰性事象との割合も、非変換に一般に使用される(オッズは、式p/(1−p)に従い、但しpは事象の確率であり、(1−p)は非事象の確率である。)。
【0048】
本発明の文脈における「リスク評価」または「リスクの評価」は、事象または疾患状態が生じる可能性がある確率、オッズ、または尤度、事象または1つの疾患状態から別の状態への変換、すなわち原発性腫瘍から転移性腫瘍または転移を発症するリスクへの変換、または1次的な転移性事象のリスクから2次的な転移性事象への変換の発生率を予測することを包含する。リスク評価は、予め測定した集団に対する絶対的なまたは相対的な意味で、将来の臨床パラメータ、伝統的な実験室リスク因子の値、またはその他の癌の指標の予測を含むこともできる。本発明の方法は、転移性腫瘍のリスクの連続的またはカテゴリー的測定を行うのに、したがって転移性腫瘍のリスクがあると定義された被験体のカテゴリーのリスクスペクトルを診断し定義するのに使用してもよい。カテゴリー的シナリオでは、本発明は、正常なおよび転移性腫瘍のより高いリスクにあるその他の被験体コホートを区別するのに使用することができる。そのような異なる使用は、異なるDETERMINANTの組合せおよび個別的なパネル、数学的アルゴリズム、および/またはカットオフポイントを必要とする可能性があるが、それぞれの意図される用途には精度および性能に関して同じである前述の測定にかけてもよい。
【0049】
本発明の文脈における「サンプル」は、被験体から単離された生体サンプルであり、例としてかつ限定することなく、組織生検標本、全血、血清、血漿、血液細胞、内皮細胞、リンパ液、腹水、間質液(「細胞外液」とも呼ばれ、細胞間の空間に見出される流体を包含し、とりわけ歯肉溝滲出液が含まれる。)、骨髄、脳脊髄液(CSF)、唾液、粘液、痰、汗、尿、循環腫瘍細胞、循環内皮細胞、または任意のその他の分泌液、排出物、またはその他の体液を含むことができる。
【0050】
「感受性」は、TP/(TP+FN)または疾患被験体の真陽性率によって計算される。
【0051】
「特異性」は、TN/(TN+FP)または非疾患もしくは正常な被験体の真陰性率によって計算される。
【0052】
「統計的に有意な」とは、変化が、偶然によってのみ生じると予測され得るもの(「偽陽性」の可能性がある。)よりも大きいことを意味する。統計的有意は、当技術分野で公知の任意の方法によって決定することができる。一般に使用される有意性の尺度には、少なくとも所与のデータポイントのように極端な結果を得る確率を示すp値が含まれ、このデータポイントは、偶然でのみ得られた結果であると想定される。結果はしばしば、0.05以下のp値で非常に有意であると見なされる。
【0053】
本発明の文脈における「被験体」は、好ましくは哺乳類である。哺乳類は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシにすることができるが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳類は、腫瘍転移の動物モデルを代表する被験体として、有利に使用することができる。被験体は、オスまたはメスにすることができる。被験体は、原発性腫瘍または転移性腫瘍を有するものと、また任意選択で腫瘍の治療介入を既に受けておりまたは受けているものと予め診断されまたは特定されたものにすることができる。あるいは被験体は、転移性腫瘍を有するものと予め診断されていないものにすることもできる。例えば被験体は、転移性腫瘍に関する1つまたは複数のリスク因子を示すものにすることができる。
【0054】
「TN」は真陰性であり、疾患状態の試験において、非疾患または正常な被験体を正確に分類することを意味する。
【0055】
「TP」は、真陽性であり、疾患状態の試験において、疾患被験体を正確に分類することを意味する。
【0056】
「伝統的な実験室のリスク因子」は、被験体サンプルから単離されまたは得られた生物マーカーに対応するもので、臨床実験室で現在評価されておりかつ伝統的なグローバルリスクアセスメントアルゴリズムで使用されている。腫瘍転移に関する伝統的な実験室のリスク因子には、例えば、breslow厚、潰瘍化、増殖指標、腫瘍浸潤リンパ球が含まれる。腫瘍転移に関するその他の伝統的な実験室のリスク因子は、当業者に公知である。
【0057】
(本発明の方法および使用)
本明細書に開示される方法は、転移性腫瘍を発症するリスクがある被験体、転移性腫瘍を有すると既に診断されたまたは診断されていない被験体、および原発性腫瘍または転移性腫瘍の治療および/療法を受けている被験体で使用される。本発明の方法は、原発性腫瘍または転移性腫瘍を有する被験体の治療レジメンをモニタしまたは選択するのに、および転移のリスク因子を示す被験体など、転移性腫瘍を有すると予め診断されていない被験体をスクリーニングするのに使用することもできる。好ましくは、本発明の方法は、転移性腫瘍に関して無症候性の被験体を特定および/または診断するのに使用される。「無症候性」は、伝統的な症状を示さないことを意味する。
【0058】
本発明の方法は、伝統的なリスク因子のみをベースにして、既に転移性腫瘍を発症するリスクがより高い被験体を特定および/または診断するのに使用してもよい。
【0059】
転移性腫瘍を有する被験体は、被験体由来サンプル中のDETERMINANTの有効数(2個以上にすることができる。)の量(存在または不存在を含む。)量を測定し、次いでこの量を基準値と比較することによって、特定することができる。次いでタンパク質、ポリペプチド、核酸、およびポリヌクレオチドと、タンパク質、ポリペプチド、核酸、およびポリヌクレオチドの多型、変異したタンパク質、ポリペプチド、核酸、およびポリヌクレオチドなどの生物マーカーの発現の量およびパターンの変化、または、被験体サンプル中の代謝産物もしくは他の分析物の分子量の変化を基準値と比較したものが、特定される。
【0060】
基準値は、同じ癌を有する被験体、同じまたは類似する年齢範囲を有する被験体、同じまたは類似する人種群の被験体、癌の家族歴を有する被験体などを含むがこれに限定するものではない集団研究から得られた数または値に対するもの、または、癌の治療を受けている被験体の出発サンプルに対するものにすることができる。そのような基準値は、癌転移の数学的アルゴリズムおよび計算された指標から得られた、集団の統計分析および/またはリスク予測データから得ることができる。基準DETERMINANT指標は、統計的および構造的分類のアルゴリズムおよびその他の方法を使用して構成し使用することもできる。
【0061】
本発明の一実施形態では、基準値は、転移性腫瘍を発症するリスクが無いかまたはそのようなリスクが低い1つまたは複数の被験体から得られた対照サンプル中のDETERMINANTの量である。本発明の別の実施形態では、基準値は、転移性腫瘍に関して無症候性のおよび/または伝統的なリスク因子に欠けている、1つまたは複数の被験体から得られた対照サンプル中のDETERMINANTの量である。別の実施形態では、そのような被験体は、診断上関連ある期間に関してモニタされかつ/または定期的に再試験され(「長期的研究」)、そのような試験の後に、転移性腫瘍が継続して存在しないことを確認する(疾患または事象がない生存)。そのような期間は、基準値を決定するための初期試験データから1年、2年、2から5年、5年、5から10年、10年、または10年以上であってもよい。さらに、適正に保存された歴史的被験体サンプル中のDETERMINANTの遡及的測定を、これら基準値を確立するのに使用してもよく、したがって必要とされる研究時間が短縮される。
【0062】
基準値は、癌の治療および/または療法の結果として転移性リスク因子の改善を示す被験体から得られたDETERMINANTの量を含むこともできる。基準値は、公知の浸潤性または非浸潤性技法によって疾患であることが確認された、または転移性腫瘍を発症するリスクが高い、または転移性腫瘍に罹患している被験体から得られたDETERMINANTの量を含むこともできる。
【0063】
別の実施形態では、基準値は、指標値または基礎値である。指標値または基礎値は、転移性腫瘍を有していない、または転移に対して無症候性の、1つまたは複数の被験体からのDETERMINANTの有効量の複合サンプルである。基礎値は、癌の治療または療法の結果として転移性腫瘍リスク因子の改善が示された被験体から得たサンプル中に、ある量のDETERMINANTを含むこともできる。この実施形態では、被験体由来サンプルとの比較を行うために、DETERMINANTの量は同様に計算されかつ指標値と比較される。任意選択で、転移性腫瘍を有しまたは転移性腫瘍を発症するリスクが高いことが明らかにされた被験体は、癌の進行を遅らせまたは転移性腫瘍を発症するリスクを低下もしくは予防する治療レジメンを受けるように選択される。
【0064】
転移性腫瘍の進行、または癌治療レジメンの有効性は、経時的に被験体から得た有効量(2つ以上であってもよい。)のサンプル中のDETERMINANTを検出し、検出されたDETERMINANTの量を比較することによって、モニタすることができる。例えば、第1のサンプルは、被験体が治療を受ける前に得ることができ、1つまたは複数の後続サンプルは、被験体の治療後または治療中に採取される。癌は、DETERMINANTの量が基準値に対して経時的に変化する場合、進行性(または、あるいは、治療が進行を予防しない。)と見なされ、それに対して癌は、DETERMINANTの量が経時的に一定(基準集団に対して、すなわち本明細書で使用される「一定」)である場合には進行性ではない。本発明の文脈で使用される「一定」という用語は、基準値に対する経時的な変化を含むと解釈される。
【0065】
例えば、本発明の方法は、腫瘍の攻撃性を区別しかつ/または腫瘍の病期(例えば、I期、II期、II期、またはIV期)を評価するのに使用することができる。この方法により、患者を、高または低リスク群に階層化し、それに応じて治療することが可能になる。
【0066】
さらに、特定の被験体への投与に適した治療または予防薬は、被験体から得られたサンプル中に有効量(2個以上でよい。)のDETERMINANTを検出し、この被験体由来サンプルを、被験体由来サンプル中のDETERMINANTの量(2個以上でよい。)を決定する試験化合物に曝すことによって、特定することができる。このように、癌を有する被験体または転移性腫瘍を発症するリスクがある被験体において使用される治療または治療レジメンは、被験体から得られたサンプル中のDETERMINANTの量に基づいて選択することができ、基準値と比較することができる。2つ以上の治療または治療レジメンに関しては、癌の発症を遅延させまたは進行を遅くするよう被験体で使用するにはどの治療または治療レジメンが最も効果的になるかを決定するために、並行して評価することができる。
【0067】
本発明はさらに、被験体由来サンプル中のDETERMINANTの量(2個以上でよい。)を決定し、基準サンプル中のDETERMINANTの量と比較し、被験体サンプル中の量の変化を基準サンプルと比較して特定することによって、転移性腫瘍に関連するマーカー発現の変化をスクリーニングするための方法を提供する。
【0068】
本発明はさらに、DETERMINANTの有効量が、腫瘍から得たサンプルにおいて測定して臨床的に有意に変化した場合に、患者が腫瘍を有していると特定し、腫瘍転移を予防または低減する治療レジメンで患者を治療することによって、腫瘍を有する患者を治療する方法を提供する。
【0069】
さらに本発明は、DETERMINANTの有効量を測定することにより、患者における転移のリスクを評価することによって、アジュバント治療を必要とする腫瘍患者を選択する方法であって、患者からの腫瘍サンプル中の2個以上のDETERMINANTの臨床的に有意な変化は、患者がアジュバント治療を必要としていることを示す方法を提供する。
【0070】
患者から得た腫瘍サンプル中のDETERMINANTの有効量に関する情報を得、2個以上のDETERMINANTが臨床的に有意に変化する場合に、患者における腫瘍転移を予防または低減する治療レジメンを選択することによる、腫瘍患者の治療決定に関する情報。
【0071】
基準サンプル、例えば対照サンプルが、転移性癌を有していない対照から得たものである場合、または基準サンプルが、転移性腫瘍への急速な進行の高い尤度を有する者に対する値を反映する場合、試験サンプルおよび基準サンプル中のDETERMINANTの量が類似していることは、治療が効果的であることを示す。しかし、試験サンプルおよび基準サンプル中のDETERMINANTの量が異なることは、臨床結果または予後がそれほど好ましくないことを示す。
【0072】
「効果的」とは、治療が、DETERMINANTタンパク質、核酸、多型、代謝産物、またはその他の分析物の量または活性の減少をもたらすことを意味する。本明細書に開示されるリスク因子の評価は、標準的な臨床プロトコルを使用して実現することができる。有効性は、転移性疾患を診断し、特定し、または治療するための任意の公知の方法に関連して決定することができる。
【0073】
本発明は、転移に関連した一般的な生理学的経路を示す1個または複数のDETERMINANT、例えば、転移に関連した異なる疾患状態または後遺症を排除しまたはこれらを区別するのに使用することができる1個または複数のDETERMINANTを含む、DETERMINANTパネルも提供する。単一のDETERMINANTは、本発明による前述の特徴のいくつかを有していてもよく、あるいは、本発明の所与の適用例に向けて適切な場合には1個または複数のその他のDETERMINANTの代わりに使用してもよい。
【0074】
本発明は、2個以上のDETERMINANTタンパク質、核酸、多型、代謝産物、またはその他の分析物を結合させる検出試薬を有するキットも含む。本発明によって、検出試薬、例えば2個以上のDETERMINANTタンパク質または核酸をそれぞれ結合することができる抗体および/またはオリゴヌクレオチドのアレイも提供される。一実施形態では、DETERMINANTがタンパク質であり、アレイは、DETERMINANT発現における統計的に有意な変化を基準値と比較して測定するのに十分な、有効量のDETERMINANT1〜360を結合する抗体を含有する。別の実施形態では、DETERMINANTが核酸であり、アレイは、DETERMINANT発現における統計的に優位な変化を基準値と比較して測定するのに十分な、有効量のDETERMINANT1〜360を結合するオリゴヌクレオチドまたはアプタマーを含有する。
【0075】
別の実施形態では、DETERMINANTがタンパク質であり、アレイは、DETERMINANT発現における統計的に有意な変化を基準値と比較して測定するのに十分な、有効量のDETERMINANT1〜25、41、61、62、63、66、74、96、99、103、126、135、137、138、177、190、210、212、217、218、227、239、261、および271を結合する抗体を含有する。別の実施形態では、DETERMINANTが核酸であり、アレイは、DETERMINANT発現における統計的に有意な変化を基準値と比較して測定するのに十分な、有効量のDETERMINANT1〜25、41、61、62、63、66、74、96、99、103、126、135、137、138、177、190、210、212、217、218、227、239、261、および271を結合するオリゴヌクレオチドまたはアプタマーを含有する。
【0076】
本発明によれば、転移性腫瘍を発症するリスクがある1つまたは複数の被験体を治療するための方法であって、1つまたは複数の被験体からのサンプル中に存在するDETERMINANTの有効量の変化量の存在を検出し;転移性疾患を発症するリスクが低い1つまたは複数の被験体であるいは転移性疾患の伝統的なリスク因子のいずれかを示さない被験体で測定された基礎値に、DETERMINANTの変化量または活性が戻るまで、1種または複数の癌調節剤で1つまたは複数の被験体を治療する方法も提供される。
【0077】
本発明によれば、転移性腫瘍を有する1つまたは複数の被験体を治療するための方法であって、1つまたは複数の被験体からのサンプル中に存在するDETERMINANTの有効量の変化レベルの存在を検出し;転移性腫瘍を発症するリスクが低い1つまたは複数の被験体で測定された基礎値に、DETERMINANTの変化量または活性が戻るまで、1種または複数の癌調節剤で1つまたは複数の被験体を治療することによる方法も提供される。
【0078】
本発明によれば、癌と診断された被験体における転移性腫瘍を発症するリスクの変化を評価するための方法であって、第1の期間で、被験体から得た第1のサンプル中のDETERMINANTの有効量(2個以上でよい。)を検出し、第2の期間で、被験体から得た第2のサンプル中のDETERMINANTの有効量を検出し、第1と第2の期間で検出されたDETERMINANTの量を比較する方法も提供される。
【0079】
(本発明の診断および予後指標)
本発明によれば、転移性腫瘍の診断および予後が可能になる。転移性腫瘍を発症するリスクは、試験サンプル(例えば、被験体由来サンプル)中のDETERMINANTタンパク質、核酸、多型、代謝産物、およびその他の分析物の有効量(2個以上でよい。)を測定し、多数の個々のDETERMINANTの結果からおよび非分析物臨床パラメータからの情報を単一の測定値または指標へと組み合わせるために数学的アルゴリズムまたは式をしばしば利用して、有効量を基準または指標値と比較することによって、検出することができる。転移性腫瘍のリスクが高いことが明らかにされた被験体は、任意選択で、転移性腫瘍の発症を予防しまたは遅延させるための予防または治療化合物の投与などの治療レジメンを受けるように選択することができる。
【0080】
DETERMINANTタンパク質、核酸、多型、代謝産物、またはその他の分析物の量は、試験サンプル中で測定することができ、基準限界、識別限界、またはカットオフポイントもしくは異常値を定義するリスク画定閾値などの技法を利用して「正常対照レベル」と比較することができる。「正常対照レベル」は、転移性腫瘍に罹患していない被験体で典型的に見出される、1個もしくは複数のDETERMINANTまたは組み合わせたDETERMINANTの指標のレベルを意味する。そのような正常対照レベルおよびカットオフポイントは、DETERMINANTが単独で使用されるのかまたはその他のDETERMINANTと組み合わせた方式で1つの指標として使用されるのかに基づいて、変化してもよい。あるいは正常対照レベルは、臨床的に関連ある対象期間を通して転移性腫瘍を発症することのない予め試験された被験体からの、DETERMINANTパターンのデータベースにすることができる。
【0081】
本発明は、転移性腫瘍に変換されるリスクの連続的またはカテゴリー的測定を行うのに使用してもよく、したがって、転移性事象を有するリスクがあると定義された被験体のカテゴリーのリスクスペクトルを診断し定義するのに使用してもよい。カテゴリー的シナリオでは、本発明の方法は、正常および疾患被験体コホートを区別するのに使用することができる。その他の実施形態では、本発明は、転移性事象を有するリスクにあるものと、転移性事象にさらに急速に進行するもの(あるいは、転移性事象までの推定される対象期間がより短いもの)、よりゆっくり進行するもの(または、転移性事象までの対象期間がより長いもの)、または転移性腫瘍を有するもの、正常なものとが区別されるように使用してもよい。そのような異なる使用は、個々のパネル、数学的アルゴリズム、および/またはカットオフポイントで、異なるDETERMINANTの組合せを必要とする可能性があるが、前述の同じ精度測定と、意図される用途に関連したその他の性能マトリックスの下に置いてもよい。
【0082】
転移性事象を有するリスクがある被験体を特定することによって、この被験体が転移性疾患状態に変換されるのを遅延させ、低減させ、または予防するために、様々な治療介入または治療レジメンを選択し開始することが可能になる。DETERMINANTタンパク質、核酸、多型、代謝産物、またはその他の分析物の有効量のレベルは、転移性疾患または転移性事象の治療経過をモニタすることも可能にする。この方法では、生体サンプルを、癌の治療レジメン、例えば薬物治療を受けた被験体から得ることができる。必要に応じて、生体サンプルは、治療の前、間、または後の様々な時点で被験体から得られる。
【0083】
機能的に活性なDETERMINANTに基づいて、その機能を明らかにすることにより、例えば多くのDETERMINANTを有する被験体は、そのような経路、例えばTGFβシグナル伝達を通して機能するHOAX1を優先的に標的とする薬剤/薬物で管理することができ、したがって、高HOXA1被験体は、TGFβ阻害剤で治療することができる。またはHOXA1は、CXCR4、転移に関与しかつTGFbの上流で作用することが報告されているケモカイン軸を活性化し、したがって、CXCR4と拮抗する薬物/薬剤を使用することができる。
【0084】
本発明は、患者または被験体集団を、任意の数のセッティングでスクリーニングするのに使用することもできる。例えば、健康管理組織、公衆衛生団体、または学校保健プログラムは、上述のような介入が必要なものを特定するために、または疫学的データを収集するために、被験体群をスクリーニングすることができる。保険会社(例えば、健康、生命、または障害)は、補償範囲または価格設定を決定する過程で申込者を、または可能性ある介入を目的として既存のクライアントを、スクリーニングしてもよい。そのような集団スクリーニングで収集されたデータは、特に癌または転移性事象のような状態への任意の臨床的進行と関係している場合、例えば健康管理組織、公衆衛生団体、および保険会社の運用において、価値あるものになる。そのようなデータアレイまたは収集は、機械可読媒体に記憶させることができ、改善されたヘルスケアサービス、費用効果のあるヘルスケア、改善された保険運用などを提供するために、任意の数の健康関連データ管理システムで使用することができる。例えば、米国特許出願第2002/0038227号;米国特許出願第2004/0122296号;米国特許出願第2004/0122297号;および米国特許第5,018,067号を参照されたい。そのようなシステムは、以下にさらに詳述するように、内部データストレージから直接、または遠隔にある1つもしくは複数のデータストレージ部位から、データにアクセスすることができる。
【0085】
機械可読記憶媒体は、前記データを使用するための命令によってプログラムされた機械を使用したときに、経時的なまたは薬物療法に応答した転移性疾患リスク因子に関連する被験体情報などであるがこれに限定されない様々な目的で使用することが可能な、機械可読データまたはデータアレイでコードされたデータ記憶材料を含むことができる。本発明の生物マーカーの有効量の測定および/またはこれら生物マーカーからのリスクに関して得られる評価は、とりわけプロセッサ、データ記憶システム(揮発性および不揮発性メモリおよび/または記憶素子を含む。)、少なくとも1つの入力装置、および少なくとも1つの出力装置を含む、プログラマブルコンピュータで実行される、コンピュータプログラムで実施することができる。プログラムコードは、上述の機能を実行し出力情報を生成するために、入力データに適用することができる。出力情報は、当技術分野で公知の方法により、1つまたは複数の出力装置に適用することができる。コンピュータは、例えば、従来設計のパーソナルコンピュータ、マイクロコンピュータ、またはワークステーションであってもよい。
【0086】
各プログラムは、コンピュータシステムと通信するための高レベル手続き型またはオブジェクト指向プログラミング言語で実行することができる。しかし、プログラムは、必要に応じてアセンブリまたは機械言語で実行することができる。言語は、コンパイラ型またはインタープリタ型言語である。そのようなコンピュータプログラムのそれぞれは、本明細書に記述される手順を実行するために記憶媒体または装置がコンピュータによって読まれるときに、コンピュータを設定し操作するための汎用または専用目的のプログラマブルコンピュータで読取り可能な記憶媒体または装置(例えば、ROMまたは磁気ディスケットまたはこの開示の他の箇所で定義されるようなその他のもの)に記憶することができる。本発明の健康関連データ管理システムは、コンピュータプログラムで構成されたコンピュータ可読記憶媒体として実装されると見なしてもよく、そのように構成されたこの記憶媒体によれば、コンピュータは、本明細書に記述される様々な機能を実効するために特定のおよび所定の手法で操作される。
【0087】
次いでDETERMINANTタンパク質、核酸、多型、代謝産物、またはその他の分析物の有効量のレベルを決定し、基準値、例えばその転移状態が知られている対照の被験体または集団と、または指標値もしくは基礎値と比較することができる。基準サンプルまたは指標値もしくは基礎値は、治療が行われた1つまたは複数の被験体から得てもよくまたは導き出してもよく、または、癌もしくは転移性事象を発症するリスクが低い1つまたは複数の被験体から得てもよくまたは導き出してもよく、または、治療を行った結果として改善が見られた被験体から得てもよくまたは導き出してもよい。あるいは、基準サンプルまたは指標値もしくは基礎値は、治療が行われていない1つまたは複数の被験体から得てもよくまたは導き出してもよい。例えばサンプルは、治療の進行をモニタするために、癌または転移性事象の初期治療と癌または転移性事象の後続の治療を受けた被験体から収集してもよい。基準値は、本明細書に開示されるような、集団研究からのリスク予測アルゴリズムまたは計算された指標から得られた値を含むこともできる。
【0088】
したがって本発明のDETERMINANTは、癌を持たずまたは転移性事象を有するリスクがなく、癌または転移性事象を発症することが予測されない被験体の、「基準DETERMINANTプロファイル」を生成するのに使用することができる。本明細書に開示されたDETERMINANTは、癌を有し、または転移性事象を有するリスクがある被験体から得られた「被験体DETERMINANTプロファイル」を生成するのに使用することもできる。被験体DETERMINANTプロファイルは、癌または転移性事象を発症するリスクがある被験体を診断しまたは特定するために、疾患の進行ならびに疾患の進行の速さをモニタするために、また治療法の有効性をモニタするために、基準DETERMINANTプロファイルと比較することができる。本発明の基準および被験体DETERMINANTプロファイルは、とりわけVCRによって読取り可能であるようなアナログテープ、CD−ROM、DVD−ROM、USBフラッシュ媒体などであるがこれらに限定されない機械可読媒体に入れることができる。そのような機械可読媒体は、臨床パラメータおよび伝統的な実験室リスク因子の測定値などであるがこれらに限定されない追加の試験結果を含むこともできる。あるいは、またはさらに、機械可読媒体は、病歴および任意の関連ある家族歴などの被験体情報を含むこともできる。機械可読媒体は、本明細書に開示されるようなその他の疾患リスクアルゴリズムおよび計算された指標に関する情報を含有することもできる。
【0089】
被験体の遺伝子構造の相違は、それらが様々な薬物代謝する相対的な能力の相違をもたらす可能性があり、癌または転移性事象の症状またはリスク因子を調節することができる。癌を有しまたは癌もしくは転移性事象を発症するリスクがある被験体は、年齢、人種、およびその他のパラメータを様々にすることができる。したがって、本明細書に開示されるDETERMINANTの使用は、単独での使用および薬物代謝の公知の遺伝的要因と一緒に組み合わせた使用の両方において、選択された被験体で試験される推定上の治療または予防薬が被験体の癌または転移性事象を治療しまたは予防するのに適したものになる所定レベルの予測精度を可能にする。
【0090】
特定の被験体に適した治療薬または薬物を特定するために、被験体からの試験サンプルを治療薬または薬物に曝すこともでき、DETERMINANTタンパク質、核酸、多型、代謝産物、またはその他の分析物の1種または複数のレベルを決定することができる。1個または複数のDETERMINANTのレベルは、治療または治療薬もしくは薬物への曝露の前および後に被験体から得られたサンプルと比較することができ、または、そのような治療もしくは曝露の結果としてリスク因子(例えば、臨床パラメータまたは伝統的な実験室リスク因子)に改善が見られた1つまたは複数の被験体から得られたサンプルと比較することができる。
【0091】
被験体細胞(すなわち、被験体から単離された細胞)は、候補薬剤の存在下でインキュベートすることができ、試験サンプル中のDETERMINANT発現のパターンを測定して基準プロファイル、例えば転移性疾患基準発現プロファイルまたは非疾患基準発現プロファイルまたは指標値または基礎値と比較する。試験薬剤は、栄養補助食品を含めた任意の化合物または組成物またはこれらの組合せにすることができる。例えば、試験薬剤は、癌治療レジメンで頻繁に使用され、その薬剤を本明細書に記述する。
【0092】
本発明の前述の方法は、癌であると診断された、および外科的介入を受けた被験体の、進行および/または改善を評価またはモニタするのに使用することができる。
【0093】
(本発明の性能および精密測定)
本発明の性能、したがって絶対的および相対的臨床有用性は、上述のように多数の方法で評価してもよい。性能の様々な評価の中で、本発明は、臨床診断および予後に精度をもたらすものである。診断または予後試験、アッセイ、また方法の精度は、これらの試験、アッセイ、または方法によって、癌を有しまたは癌もしくは転移性事象のリスクがある被験体を区別できる能力に関係し、被験体が、「有意な変化」(例えば、臨床的に有意な「診断的に有意な」)をDETERMINANTのレベルに有するか否かに基づく。「有効量」とは、(1個または複数の)DETERMINANTに関する所定のカットオフポイント(または閾値)とは異なり、したがって被験体が(1個または複数の)DETERMINANTがDETERMINANTである癌を有しまたは転移性事象を有するリスクがあることを示す「有意な変化」(例えば、DETERMINANTの発現または活性レベル)をもたらすためのDETERMINANTの適切な数(1個または複数でよい。)の測定値を意味する。正常と異常との間のDETERMINANTレベルの相違は、好ましくは統計的に有意である。以下に示すようにかつ本発明を全く限定することなく、統計的有意性の実現、したがって好ましい分析、診断、および臨床精度は、一般に、統計的に有意なDETERMINANT指標を実現するための、いくつかのDETERMINANTの組合せをパネル内で一緒に使用し数学的アルゴリズムと組み合わせるが、必ずしも必要というわけではない。
【0094】
疾患状態のカテゴリー的診断では、試験(またはアッセイ)のカットポイントまたは閾値を変化させることによって、通常は感受性および特異性を変化させるが、定性的に逆相関にある。したがって、被験体の状態を評価するために提案された医学的試験、アッセイ、または方法の精度および有用性の評価の際には、感受性および特異性の両方を常に考慮すべきであり、感受性および特異性はカットポイントの範囲全体にわたって有意に変化し得ることから、感受性および特異性が報告されるカットポイントが何か心に留めておくべきである。全ての潜在的なカットポイント値を包含するAUCなどの統計の使用は、本発明を使用するほとんどのカテゴリー的リスク測定に好ましいが、連続リスク測定の場合、観察された結果またはその他の判断基準に対する適合度および較正の統計が好ましい。
【0095】
所定レベルの予測精度とは、この方法が、許容可能なレベルの臨床または診断精度を提供することを意味する。そのような統計、すなわち「許容可能な程度の診断精度」の使用は、本明細書では、AUC(試験またはアッセイ用のROC曲線下面積)が少なくとも0.60、望ましくは少なくとも0.65、より望ましくは少なくとも0.70、好ましくは少なくとも0.75、より好ましくは少なくとも0.80、最も好ましくは少なくとも0.85である、試験またはアッセイ(DETERMINANTの臨床的に有意な存在を決定するための本発明の試験などであり、それによって、癌の存在および/または転移性事象を有するリスクが示される。)と定義される。
【0096】
「非常に高度な診断精度」とは、AUC(試験またはアッセイ用のROC曲線下面積)が少なくとも0.75、0.80、望ましくは少なくとも0.85、より望ましくは少なくとも0.875、好ましくは少なくとも0.90、より好ましくは少なくとも0.925、最も好ましくは少なくとも0.95である、試験またはアッセイを意味する。
【0097】
あるいは、この方法は、癌、転移性癌、または治療に対する応答の存在または不存在を、少なくとも75%の精度で、より好ましくは80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、またはそれ以上の精度で予測する。
【0098】
任意の試験の予測値は、試験の感受性および特異性と、試験がなされる集団の状態の有病率に依存する。ベイズの定理に基づくこの概念によれば、スクリーニングされる状態が個々にまたは集団に存在する可能性が高くなるほど(試験前の確率)、陽性試験の妥当性は高くなり、かつその結果が真陽性である可能性が高くなる。したがって、状態が存在する可能性が低い任意の集団で試験を使用する際の問題は、陽性結果が限られた値を有することである(すなわち、偽陽性になり易い。)。同様に、非常に高いリスクの集団では、陰性試験結果は偽陰性になり易い。
【0099】
その結果、ROCおよびAUCは、低疾患有病率を試験した集団(毎年1%未満の発生率(出現率)を有するもの、または指定された対象期間全体を通して10%未満の累積有病率を有するものと定義される。)での、試験の臨床的有用性に関して、誤った方向に導く可能性がある。あるいは、この開示の中の別の場所で定義された絶対リスクおよび相対リスクを用いて、臨床的有用性の程度を決定することができる。試験がなされる被験体の集団は、試験の測定値により4分の1ずつに分類することもでき、その上位4分の1(集団の25%)は、癌または転移性事象を発症する最高相対リスクを有する被験体の群を含み、下位4分の1は、癌または転移性事象を発症する最低相対リスクを有する被験体の群を含む。一般に、低罹患率集団において上位から下位4分の1までの相対リスクの2.5倍超を有する試験またはアッセイから得られた値は、「高度な診断精度」を有すると見なされ、各4分の1に関して相対リスクの5から7倍を有する値は、「非常に高い程度の診断精度」を有すると見なされる。それにも関わらず、臨床的に有用な各4分の1に関する相対リスクの単に1.2から2.5倍を有する試験またはアッセイから得られた値は、疾患のリスク因子として広く使用され;それらは、将来の転移性事象の予測に関して総コレステロールを有しまた多くの炎症性生物マーカーに関するような場合である。しばしば、そのようなより低い診断精度試験は、前述のグローバルリスク評価指標で行われたように、治療的介入に関して意味のある臨床閾値を得るために追加のパラメータと組み合わせなければならない。
【0100】
医療経済効用関数は、所要の試験の性能および臨床値を測定する、さらに別の手段であり、それぞれの臨床的および経済的値の実際の測定を基にして、潜在的なカテゴリー的試験結果の重み付けからなる。医療経済動向は、医療経済効用関数が特に、試験をした被験体の正確な判別の利益と誤判別のコストとに関する経済的値を与えるので、精度に密に関係している。性能測定として、試験の標的価格を超えた、試験当たりの医療経済値(試験コストの前)の増加をもたらす性能レベルを実現する試験を必要とすることは、異常ではない。
【0101】
一般に、診断精度を決定する代替方法は、疾患カテゴリーまたはリスクカテゴリー(転移性事象を有するリスクにあるものなど)が、治療用途での閾値がまだ確立されておらずまたは病気に罹る前の診断に関する判断基準が存在していないような、関連ある医師会および医療活動によってまだ明確に定義されていない場合に、連続測定で一般に使用される。リスクの連続測定では、計算された指標に関する診断精度の測定は、典型的には予測連続値および実測値(または歴史的指標計算値)との間の曲線の当て嵌めと較正とを基にし、R平方、Hosmer−LemeshowのP値統計、および信頼区間などの測定値を利用する。そのようなアルゴリズムを使用する予測値を、Genomic Health,Inc.(Redwood City、California)により商用化された将来の乳癌再発リスクに関する試験の場合のように、歴史的観察コホート予測を基にした信頼区間(通常は90%または95%Cl)を含めて報告することは、異常ではない。
【0102】
一般に、診断精度の程度、すなわちROC曲線のカットポイントを定義し、許容可能なAUC値を定義し、本発明のDETERMINANTの有効量を構成するものの相対濃度の許容可能な範囲を決定することによって、当業者は、所定レベルの予測精度および性能を有する被験体を特定し、診断し、見通しを立てるために、DETERMINANTを使用することが可能になる。
【0103】
(本発明のリスクマーカー(DETERMINANT))
本発明の生物マーカーおよび方法によれば、当業者は、癌または転移性事象のいかなる症状も示さないにも関わらず癌または転移性事象を発症するリスクがあり得る被験体を、特定し、診断し、またはその他の手法で評価することが可能になる。
【0104】
1593個の生物マーカーは、転移性疾患を有する被験体において変化しまたは修正された存在または濃度レベルを有することがわかったことが、明らかにされた。
【0105】
表1は、本発明の、360個の過発現/増幅または下方制御/欠失がなされた表現型によって誘導された、進化的に保存されたDETERMINANTを含む。DETERMINANT1〜25、41、61、62、63、66、74、96、99、103、126、135、137、138、177、190、210、212、217、218、227、239、261、および271は、浸潤前決定因子として特定された。
【0106】
【表1−1】

【0107】
【表1−2】

【0108】
【表1−3】

【0109】
【表1−4】

【0110】
【表1−5】

【0111】
【表1−6】

【0112】
【表1−7】

【0113】
【表1−8】

当業者なら、本明細書に示されるDETERMINANTは、多型、イソフォーム、変異体、誘導体、核酸および前駆タンパク質を含む前駆体、切断産物、受容体(可溶性および膜貫通受容体を含む。)、リガンド、タンパク質−リガンド複合体、および翻訳後修飾変種(架橋またはグリコシル化など)、断片、および分解産物、ならびに任意の多単位核酸、タンパク質、および糖タンパク質構造であって、完全に組み立てられた構造の構成サブ単位としてDETERMINANTのいずれかを含んだものを含むが、これらに限定されない全ての形および変種を包含することを理解するであろう。
【0114】
当業者なら、上記列挙されたDETERMINANTは、転移性疾患に関連するとは一般に認められない多くを含めた生理学的および生物学的経路の多様な集合から得られることに、留意するであろう。種々のDETERMINANTのこれらのグループ分けは、高い有意性のセグメント内にあっても、疾患の進行の病期または速度の種々のシグナルを前もって知らせることができる。DETERMINANTのそのような明らかなグループ分けによって、DETERMINANTからのより生物学的に詳細なかつ臨床的に有用なシグナルが可能になり、それと共に、多数のDETERMINANTシグナルと組み合わせたDETERMINANTアルゴリズム内でのパターン認識の機会も可能になる。
【0115】
本発明は、一態様では、DETERMINANTの部分集合に関し;その他のDETERMINANTおよび上記表1に列挙されておらずこれら生理学的および生物学的経路に関連している生物マーカーも、シグナルおよび情報がこれらの研究から得られたものであることを考えれば有用であると証明することができる。その他の生物マーカー経路関与因子(すなわち、上記表1のDETERMINANTのリストに含まれた生物マーカーを有する共通経路におけるその他の生物マーカー関与因子)が癌または転移性事象における関連ある経路関与因子でもあるような程度まで、これらの因子は、表1でこれまで開示されてきたように、例えばCXCR4などの生物マーカーと機能的に均等であってもよい。これらのその他の経路関与因子は、本発明の文脈においてDETERMINANTとも見なされ、但しこれらの因子は、良好なバイオマーカーのある定義された特徴をさらに共有し、本明細書に開示された生物学的プロセスおよび有用なシグナル対雑音比での前記生物マーカーのバイオアベイラビリティなどの分析的に重要な特徴と、血清などの有用でアクセス可能なサンプルマトリックスとの両方への関与を含む可能性がある。そのような要件は、典型的には、生物学的経路の多くのメンバーの診断有用性を限定し、分泌物質を構成する経路メンバーでのみ頻繁に生ずるが、これらは、癌または転移性事象の疾患進行に関連してもしなくても、アポトーシスまたは内皮リモデリングもしくはその他の細胞代謝回転もしくは細胞壊死性経過などのその他の理由により、細胞の原形質膜でアクセス可能なものならびに細胞死により血清中に放出されるものである。しかし、DETERMINANTに関するこの高い基準を満たす、残されたおよび将来の生物マーカーは、非常に価値あるものとなるようである。
【0116】
さらに、その他の列挙されていない生物マーカーは、表1のDETERMINANTとして列挙された生物マーカーに、非常に高度に相関することになる(本出願の目的では、任意の2個の変数は、0.5以上の決定係数(R)を有する場合、「非常に高度に相関した」と見なされることになる。)。本発明は、前述のDETERMINANTに対するそのような機能的および統計的均等物を包含する。さらに、そのような追加のDETERMINANTの統計的有用性は、多数の生物マーカーと任意の新しい生物マーカーとの間の相互相関に実質的に依存し、しばしば、基礎をなす生物学の意味を詳述するためにパネル内での操作を必要とすることになる。
【0117】
列挙されたDETERMINANTの1個または複数、好ましくは2個以上は、本発明の実施に際して検出することができる。例えば、2個、3個、4個、5個、10個、15個、20個、40個、50個、75個、100個、125個、150個、175個、200個、210個、220個、230個、240個、250個、260個以上、270個以上、280個以上、290個以上のDETERMINANTを検出することができる。
【0118】
いくつかの態様では、本明細書に記述される360個の全てのDETERMINANTを検出することができる。DETERMINANTの数を検出することができる好ましい範囲は、1から360個、特に2、5、10、20、50、75、100、125、150、175、200、210、220、230、240、250個の間から選択された任意の最小値であって、公知の全DETERMINANT、特に5、10、20、50、および75個までの任意の最大値と組み合わせたものによって結び付けられた範囲を含む。特に好ましい範囲には、2〜5個、2〜10個、2〜50個、2〜75個、2〜100個、5〜10個、5〜20個、5〜50個、5〜75個、5〜100個、10〜20個、10〜50個、10〜75個、10〜100個、20〜50個、20〜75個、20〜100個、50〜75個、50〜100個、100〜125個、125〜150個、150〜175個、175〜200個、200〜210個、210〜220個、220〜230個、230〜240個、240個〜250個、250〜260個が含まれる。
【0119】
(DETERMINANTパネルの構造)
DETERMINANTのグループ化は、「パネル」に含めることができる。本発明の文脈における「パネル」は、複数のDETERMINANTを含む生物マーカーの群(これらがDETERMINANT、臨床パラメータ、または伝統的な実験室リスク因子であるか否かに関わらず)を意味する。パネルは、追加の生物マーカー、例えば臨床パラメータ、伝統的な実験室リスク因子であって、癌または癌転移と共に存在しまたはこれらに関連することが公知であるものを、表1に列挙されたDETERMINANTの選択された群と組み合わせて含むこともできる。
【0120】
上述のように、列挙された個々のDETERMINANT、臨床パラメータ、および伝統的な実験室リスク因子の多くは、単独で使用しかつDETERMINANTの多数の生物マーカーパネルのメンバーとしてではない状態で使用する場合、個々の正常な被験体、転移性事象を有するリスクにある被験体、および癌を有する被験体を、選択された一般集団において互いに信頼性をもって区別する際に、ほとんどまたは全く臨床的な用途がなく、したがって、これら3つの状態の間で任意の被験体を分類するのに、単独で信頼性をもって使用することができない。これら集団のそれぞれにおいて、十分に行われた研究で一般に生じるように、それらの平均測定値に統計的に有意な差がある場合であっても、そのような生物マーカーは、個々の被験体に対するそれらの適用可能性を制約し続ける可能性があり、その被験体に関する診断または予後予測にほとんど寄与しない。統計的有意性の一般的尺度は、観察が偶然によってのみ引き起こされた可能性を示すp値であり;好ましくは、そのようなp値は0.05以下であり、問題の観察が偶然によって生じた機会が5%以下であることを表す。そのようなp値は、行われた研究のパワーに著しく依存する。
【0121】
この個々のDETERMINANT性能と、伝統的な臨床パラメータおよび2〜3個の伝統的な実験室危険因子だけを組み合わせる式の一般的な性能とにも関わらず、本発明は、2個以上のDETERMINANTのある特定の組合せを、1つまたは複数の生理学的または生物学的経路に関与することが公知であるDETERMINANTの組合せを含んだ多数の生物マーカーパネルとして使用することもでき、また、そのような情報を組み合わせて、個々のDETERMINANTを超えた組合せの性能特性を組み合わせかつ多くの場合はその性能特性を拡張する、統計的分類アルゴリズムおよびその他を含めた様々な式の使用を通して臨床的に有用なものにできることに留意した。これら特定の組合せは、許容可能なレベルの診断精度を示し、多数のDETERMINANTからの十分な情報が導かれた式と組み合わされた場合、1つの集団から別の集団へと移すことが可能な高レベルの診断精度が、信頼性をもってしばしば実現される。
【0122】
2個よりも少ない特定のまたはより低い性能のDETERMINANTを、意図される徴候に向けて新規なおよびより有用な組合せへとどのように組み合わせるかという一般概念は、本発明の重要な態様である。多数の生物マーカーは、しばしば、適正な数学的および臨床的アルゴリズムが使用される場合、個々の構成要素よりも良好な性能をもたらすことができ;これは、感受性および特異性の両方でしばしば明らかであり、より大きなAUCをもたらす。第2に、既存の生物マーカーには、改善されたレベルの感受性または特異性を新しい式を通して実現するために必要であったように、新規な感知できない情報がしばしば存在する。この隠された情報は、次善の臨床性能を独自に有すると一般に見なされる生物マーカーの場合であっても、有効になり得る。事実、単独で測定された単一の生物マーカーに対する高偽陽性率に関する次善の性能は、一部の重要な追加の情報が、第2の生物マーカーおよび数式との組合せが存在しないことが明らかではない生物マーカーの結果の情報内に含まれる指標になり得ると考えられる。
【0123】
当技術分野で公知のいくつかの統計的およびモデリングアルゴリズムを使用して、DETERMINANTの選択を支援すると共に、これらの選択を組み合わせたアルゴリズムを最適化することができる。因子および交差生物マーカー相関/共分散分析などの統計的ツールは、パネル構造へのより合理的なアプローチを可能にする。DETERMINANT間のEuclidean標準化距離を示す、数学的クラスタリングおよび分類木は、有利に使用することができる。そのような統計的分類技法の、経路によって知らされた播種は、特定の経路または生理学的機能の全体への寄与を基にした個々のDETERMINANTの選択に基づく合理的な手法となり得るので、用いてもよい。
【0124】
最終的に、統計的分類アルゴリズムなどの式は、DETERMINANTを選択するためにかつ多数のDETERMINANTからの結果を単一指標へと組み合わせるのに必要な最適な式を作成し導き出すために、直接使用することができる。しばしば、前進的(0ポテンシャル説明パラメータ)および後退的選択(全ての利用可能なポテンシャル説明パラメータ)などの技法が使用され、AICまたはBICなどの情報基準は、パネルの性能および診断精度と使用されるDETERMINANTの数との間のトレードオフを定量するのに使用される。前進的または後退的選択パネルにおける個々のDETERMINANTの位置は、そのアルゴリズム用の漸増的情報内容の提供に密接に関連付けることができ、したがって、寄与のオーダーは、パネル内のその他の構成要素であるDETERMINANTに非常に依存している。
【0125】
臨床アルゴリズムの構築
任意の式を使用して、DETERMINANTの結果を組み合わせて、本発明の実行に有用な指標となすことができる。上記したように、そのような指標は、種々のその他の指示のうちとりわけ、ある疾患状況が別の疾患状況へ変換する確率、尤度、絶対的もしくは相対的なリスク、時間もしくは速度を示してもよく、または転移性疾患の将来の生物マーカーの測定値を予測してもよいが、これらに限定されない。これは、特定の期間もしくは範囲について、または残りの生涯リスクについてであってもよく、あるいは単に別の基準被験体集団と比べた指標として提供してもよい。
【0126】
種々の好ましい式を本明細書に記載するが、本明細書および上記の定義において言及するもの以外のいくつかのその他のモデルおよび式の型が、当業者には周知である。使用される実際のモデルの型または式自体は、トレーニング集団におけるその結果の性能および診断の精度の特徴に基づいて、見込みがあるモデルの領域から選択され得る。その式自体の詳細は通常、関連のあるトレーニング集団におけるDETERMINANTの結果から得ることができる。その他の用途のうちとりわけ、そのような式によって、一連の被験体クラスへの、1つまたは複数のDETERMINANTのインプットから得られた(例えば、被験体が、正常なクラス、転移性事象を有するリスクがあるクラス、癌を有するリスクがあるクラスの一員であることを予測するのに有用である)フィーチャーの空間を位置付けて、ベイズのアプローチを使用してリスクの確率関数の推定値(例えば、癌もしくは転移性事象のリスク)を得ること、またはクラス条件付き確率を推定し、次いで、先の場合と同様に、ベイズの規則を使用してクラスの確率関数を求めることを意図することができる。
【0127】
好ましい式には、広いクラスの統計学的分類アルゴリズム、特に、判別分析の使用がある。判別分析の目標は、以前に同定されたフィーチャーのセットから、クラスの一員であることを予測することである。線形判別分析(LDA)の場合、いくつかの判断基準による群間における分離を最大化するフィーチャーの線形の組合せを同定する。異なる閾値を用いる、固有遺伝子(eigengene)に基づいたアプローチを使用するLDA(ELDA)、または多変量分散分析(MANOVA)に基づいた踏み石アルゴリズムのために、フィーチャーを同定することができる。ホテリング−ローリーの統計量に基づいて非分離の確率を最小化する前向きアルゴリズム、後向きアルゴリズムおよびステップワイズアルゴリズムを実施することができる。
【0128】
固有遺伝子に基づいた線形判別分析(ELDA)は、Shenら、(2006年)によって開発された、フィーチャーを選択する技法である。この式は、改変された固有値解析(eigen analysis)を使用して、多変量のフレームワーク中のフィーチャー(例えば、生物マーカー)を選択して、最も重要な固有ベクター(eigenvector)と関連性があるフィーチャーを同定する。「重要な」は、何らかの閾値と比べて分類しようとするサンプル間における差の最大の分散を説明する固有ベクターと定義される。
【0129】
サポートベクターマシン(SVM)は、2つのクラスを分離する超平面を見出そうとする分類式である。この超平面は、サポートベクター、すなわち、この超平面からまさしくマージンの距離だけ離れているデータ点を含有する。現在のデータ寸法では分離超表面が存在しそうにない事象においては、元々の変数の非線形関数をとることにより、データをより大きな寸法に投影することによって、次元を大きく拡大する(VenablesおよびRipley、2002年)。必要ではないが、SVMのためのフィーチャーにフィルターをかけることによってしばしば、予測が改善される。最も良好な一変量のフィーチャーを選択するために非パラメトリックなクラスカル−ワリス(KW)検定を使用して、サポートベクターマシンためのフィーチャー(例えば、バイオマーカー)を同定することができる。また、ランダムフォレスト(RF、Breiman、2001年)または再帰分割(RPART、Breimanら、1984年)も別個にまたは組み合わせて使用して、最も重要である生物マーカーの組合せを同定することができる。KWおよびRFの両方では、全フィーチャーからいくつかのフィーチャーを選択する必要がある。RPARTは、利用可能な生物マーカーのサブセットを使用して、単一の分類木を生み出す。
【0130】
予測式に当てはめる前に、個々のDETERMINANTの測定値の結果に前処理をして、より貴重な形態の情報となすために、その他の式を使用することができる。最も注目すべきは、対数関数またはロジスティック関数等のいずれかの通常の数学的変換を使用して、生物マーカーの結果を、集団の平均値等に関して、正規またはその他の分布状態として正規化することはいずれも当業者には周知である。特に興味深いのは、年齢、性別(gender)、人種または性(sex)等の臨床パラメータに基づいた一連の正規化であり、特定の式が、あるクラスに属する被験体に対してもっぱら使用されるか、または臨床パラメータをインプットとして連続的に組み合わせる。その他の場合には、分析対象に基づいた生物マーカーを組み合わせて、計算した変数となし、これらを、それに続いて、式に当てはめる。
【0131】
正規化される見込みがある一被験体の個々のパラメータ値に加えて、D’Agostinoら、(2001年)JAMA 286巻:180〜187頁に概要が述べられている技法、またはその他の類似の正規化および再較正の技法に従って、全ての被験体または任意の公知のクラスの被験体についての全体的な予測式自体を、再較正するかまたは別の場合には集団の予想有病率および平均生物マーカーパラメータ値についての調整に基づいて調整することができる。そのような疫学的調整統計量は、モデルに当てはめる過去のデータの登録簿によって、連続的に捕捉、確認、改善およびアップデートすることができ、これらのデータは、機械可読性であってもよく、もしくはそうではなくてもよく、またはこれらの統計量の補足、確認、改善およびアップデートは時には、保管サンプルの遡及的クエリーもしくはそのようなパラメータおよび統計量の過去の研究を参照することによって行ってもよい。式の再較正またはその他の調整の対象であり得る追加の例として、オッズ比の限界についてのPepe, M.S.ら、2004年による研究;ROC曲線に関するCook, N.R.、2007年による研究において使用されている統計量が挙げられる。最後に、絶対的なリスクに対して較正し、分類子またはリスクの式の各種の数値結果についての信頼区間を提供するために、実際の臨床集団ならびに研究結果および観察されたエンドポイントを参照することにより、分類子の式自体の数値結果を処理後に変換することができる。この例が、Genomic Health,Inc.(Redwood City、CA)のOncotype Dx製品における再発スコアの式のアウトプットに関して選ばれた実際の臨床研究を使用して得られた絶対的なリスクの提示、およびそのリスクについての信頼区間である。さらなる改変は、分類子またはリスクの式のアウトプットに基づき、年齢または性等のそれらの臨床パラメータによって定義かつ選択された、研究のより小さな亜集団についての調整である。
【0132】
臨床パラメータとの組合せ、および伝統的な実験室リスク因子
本発明の実行に際しては、上記の臨床パラメータのうちのいずれかを、ある式へのDETERMINANTのインプットとして、または特定のDETERMINANTのパネルおよび式を使用して測定しようとする関連のある集団を定義する事前選択の判断基準として使用することができる。また、上記で注目したように、臨床パラメータは、生物マーカーの正規化および前処理において、またはDETERMINANTの選択、パネルの構築、式の型の選択および誘導、ならびに式の結果の後処理においても有用な場合がある。伝統的な実験室リスク因子についても、ある式へのインプットまたは事前選択の判断基準のいずれかとして、類似アプローチをとることができる。
【0133】
DETERMINANTの測定
DETERMINANTのレベルまたは量の実際の測定値を、タンパク質または核酸のレベルにおいて、当技術分野で公知の任意の方法を使用して決定することができる。例えば、核酸レベルにおいては、これらの配列のうちの1つまたは複数を特異的に認識するプローブを使用するノーザンハイブリダイゼーション解析およびサザンハイブリダイゼーション解析、ならびにリボヌクレアーゼプロテクションアッセイを使用して、遺伝子発現を決定することができる。あるいは、例えば、遺伝子の示差的に発現した配列に対して特異的なプライマーを使用する逆転写に基づいたPCRアッセイ(RT−PCR)を使用して、またはPanomies,Inc.による、分枝鎖RNAを増幅および検出する方法によって、DETERMINANTの量を測定することもできる。また、タンパク質レベルにおいても、例えば、本明細書に記載する遺伝子産物がコードするペプチドのレベルを測定することによって、またはそれらの細胞内における局在化もしくは活性を、例えば、AQUA等の技術プラットフォームを使用して測定することによって、DETERMINANTの量を決定することができる。そのような方法は、当技術分野では周知であり、そのような方法として、例えば、遺伝子がコードするタンパク質に対する抗体に基づいたイムノアッセイ、アプタマー、または分子インプリントが挙げられる。任意の生物学的な材料を、タンパク質またはその活性の検出/定量化のために使用することができる。あるいは、適切な方法を選択して、分析した各タンパク質の活性によって、マーカー遺伝子がコードするタンパク質の活性を決定することもできる。
【0134】
DETERMINANTであるタンパク質、ポリペプチド、突然変異およびそれらの多型を、任意の適切な様式で検出することができるが、典型的には、被験体由来のサンプルを、DETERMINANTであるタンパク質、ポリペプチド、突然変異または多型に結合する抗体と接触させ、次いで、反応産物の有無を検出することによって検出する。抗体は、上記で詳細に論じたように、前述の抗体のモノクローナル、ポリクローナル、キメラまたは断片であってよく、反応産物を検出するステップは、任意の適切なイムノアッセイを用いて実施することができる。被験体由来のサンプルは典型的には、上記したように、生物学的液体であり、上記の方法を実施するために使用した生物学的液体と同じサンプルであってよい。
【0135】
本発明に従って実施するイムノアッセイは、均一アッセイであっても、または不均一アッセイであってもよい。均一アッセイの場合、免疫学的反応は通常、特異的抗体(例えば、抗DETERMINANTタンパク質抗体)、標識された分析対象、目的のサンプルを含む。抗体が標識された分析対象に結合すると、標識から発生するシグナルが直接的または間接的に改変される。免疫学的反応およびその程度の検出の両方を、均一溶液中で実施することができる。利用することができる免疫化学標識には、フリーラジカル、放射性同位体、蛍光染料、酵素、バクテリオファージまたは補酵素がある。
【0136】
不均一アッセイのアプローチの場合、試薬は通常、サンプル、抗体および検出可能なシグナルを発生させるための手段である。上記のサンプルを使用することができる。抗体を、ビーズ(プロテインAおよびプロテインGのアガロースビーズ等)、プレートまたはスライド等の支持体上に固定化し、液相中で、抗原を含有することが疑われる検体と接触させることができる。次いで、支持体を液相から分離し、支持相または液相のいずれかを検出可能なシグナルについて、そのようなシグナルを発生させるための手段を利用して調べる。シグナルは、サンプル中の分析対象の存在と関係がある。検出可能なシグナルを発生させるための手段は、放射性標識、蛍光標識または酵素標識の使用を含む。例えば、検出すべき抗原が、第2の結合部位を含有する場合、その部位に結合する抗体を、検出可能な基にコンジュゲートさせ、分離ステップの前に、液相の反応溶液に添加することができる。固体の支持体上の検出可能な基の存在によって、試験サンプル中の抗原の存在が示される。適切なイムノアッセイの例は、オリゴヌクレオチド、免疫ブロット、免疫蛍光法、免疫沈降、化学発光法、電気化学発光(ECL)または酵素結合免疫アッセイである。
【0137】
当業者であれば、本明細書に開示する方法を実施するのに有用であり得る多数の特異的なイムノアッセイのフォーマットおよびそれらの変更形態に精通しているであろう。一般に、E. Maggio、Enzyme−immunoassay、(1980年)(CRC Press, Inc.、Boca Raton、Fla.)を参照されたい。また、Skoldらに対する米国特許第4,727,022号、標題「Methods for Modulating Ligand−Receptor Interactions and their Application」、Forrestらに対する米国特許第4,659,678号、標題「Immunoassay of Antigens」、Davidらに対する米国特許第4,376,110、標題「Immunometric Assays Using Monoclonal Antibodies」、Litmanらに対する米国特許第4,275,149号、標題「Macromolecular Environment Control in Specific Receptor Assays」、Maggioらに対する米国特許第4,233,402号、標題「Reagents and Method Employing Channeling」、およびBoguslaskiらに対する米国特許第4,230,767号、標題「Heterogenous Specific Binding Assay Employing a Coenzyme as Label」も参照されたい。
【0138】
受動結合等の公知の技法に従って、抗体を、診断アッセイに適した固体の支持体(例えば、プロテインAまたはプロテインGのアガロース等のビーズ、ラテックスまたはポリスチレン等の材料から形成されたマイクロスフェア、プレート、スライドまたはウエル)にコンジュゲートさせることができる。同様に、公知の技法に従って、本明細書に記載する抗体を、検出可能な標識または基、例として、放射標識(例えば、35S、125I、131I)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)、および蛍光標識(例えば、フルオレセイン、Alexa、緑色蛍光タンパク質、ローダミン)にコンジュゲートさせることもできる。
【0139】
また、抗体は、DETERMINANTであるタンパク質、ポリペプチド、突然変異および多型の翻訳後修飾、例として、チロシンリン酸化、スレオニンリン酸化、セリンリン酸化、グリコシル化(例えば、O−GlcNAc)を検出するのに有用な場合もある。そのような抗体は、1つまたは複数の目的のタンパク質中のリン酸化されたアミノ酸を特異的に検出し、本明細書に記載するイムノブロット、免疫蛍光法およびELISAアッセイにおいて使用され得る。これらの抗体は、当業者には周知であり、市販されている。また、翻訳後修飾は、反射マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型質量分析(reflector matrix−assisted laser desorption ionization−time of flight mass spectrometry)(MALDI−TOF)における準安定イオンを使用して決定することもできる(Wirth, U.ら(2002年)Proteomics 2巻(10号):1445〜51頁)。
【0140】
酵素活性を示すことが知られているDETERMINANTのタンパク質、ポリペプチド、突然変異および多型については、インビトロにおいて当技術分野で公知の酵素アッセイを使用して、それらの活性を決定することができる。そのようなアッセイとして、多くの中でもとりわけ、キナーゼアッセイ、ホスファターゼアッセイ、レダクターゼアッセイが挙げられるが、これらに限定されない。公知のアルゴリズム、例として、ヒルプロット、ミカエリス−メンテン式、ラインウィーバー−バーク解析等の線形回帰プロット、およびスキャッチャードプロットを使用して速度定数Kを測定することによって、酵素活性の動態調節を決定することができる。
【0141】
DETERMINANTの配列についてのデータベースエントリーによって提供される配列情報を使用し、当業者に周知の技法を使用して、DETERMINANTの配列の発現を、(それらが存在する場合)検出し、測定することができる。例えば、DETERMINANTの配列に対応する、配列データベースエントリーに属する配列、または本明細書に開示する配列に属する配列を使用して、例えば、ノーザンブロットハイブリダイゼーション解析または特定の核酸配列を特異的にかつ好ましくは定量的に増幅する方法においてDETERMINANTのRNA配列を検出するためのプローブを構築することができる。別の例として、これらの配列を使用して、例えば、増幅に基づいた検出方法、例として、逆転写に基づいたポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)においてDETERMINANTの配列を特異的に増幅するためのプライマーを構築することもできる。遺伝子発現の変化に、遺伝子の増幅、欠失、多型および突然変異が伴う場合、試験集団と基準集団とでの配列比較を、試験細胞集団および基準細胞集団において調べたDNA配列の相対的な量を比較することによって行うことができる。
【0142】
本明細書に開示する遺伝子の発現を、当技術分野で公知の任意の方法を使用してRNAレベルで測定することができる。例えば、これらの配列のうちの1つまたは複数を特異的に認識するプローブを使用するノーザンハイブリダイゼーション解析を使用して、遺伝子の発現を決定することができる。あるいは、例えば、示差的に発現した配列に対して特異的なプライマーを使用する逆転写に基づいたPCRアッセイ(RT−PCR)を使用して、発現を測定することもできる。また、例えば、その他の標的増幅の方法(例えば、TMA、SDA、NASBA)、またはシグナル増幅の方法(例えば、bDNA)等を使用して、RNAを定量化することもできる。
【0143】
あるいは、DETERMINANTのタンパク質および核酸の代謝産物を測定することもできる。用語「代謝産物」は、代謝過程の任意の化学的または生化学的な産物、例として、生物学的分子(例えば、タンパク質、核酸、炭水化物または脂質)のプロセシング、切断または消費によって産生された任意の化合物を含む。代謝産物は、当業者に公知の多様な方法で検出することができ、それらには、屈折率分光法(RI)、紫外分光法(UV)、蛍光分析、放射化学分析、近赤外分光法(near−IR)、核磁気共鳴分光法(NMR)、光散乱分析(LS)、質量分析、熱分解質量分析、比濁分析、分散型ラマン分光法、質量分析と組み合わせたガスクロマトグラフィー、質量分析と組み合わせた液体クロマトグラフィー、質量分析と組み合わせたマトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間(MALDI−TOF)、質量分析と組み合わせたイオンスプレー分光法、キャピラリー電気泳動、NMR、およびIR検出がある。(WO04/056456およびWO04/088309を参照されたい。これらは、それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれている。)この点に関しては、上記で言及した検出方法、または当業者に公知のその他の方法を使用して、その他のDETERMINANTの分析対象を測定することができる。例えば、サンプル中の循環カルシウムイオン(Ca2+)を、蛍光染料、例として、Fluoシリーズ、とりわけ、Fura−2A、Rhod−2を使用して検出することができる。その他のDETERMINANTの代謝産物も同様に、そのような代謝産物を検出するために特異的に設計または手直しした試薬を使用して検出することができる。
【0144】
キット
また、本発明は、キットの形態として一緒に包装されたDETERMINANTの検出試薬、例えば、DETERMINANT核酸の一部に対して相補性を示す相同な核酸配列、例として、オリゴヌクレオチド配列を有することによって、1つまたは複数のDETERMINANT核酸を特異的に同定する核酸、またはDETERMINANT核酸がコードするタンパク質に対する抗体も含む。これらのオリゴヌクレオチドは、DETERMINANT遺伝子の断片であってよい。例えば、これらのオリゴヌクレオチドは、200、150、100、50、25または10ヌクレオチド長以下であってよい。キットは、別個の容器中に、核酸または抗体(固体のマトリックスにすでに結合しているか、またはそれらをマトリックスに結合させる試薬が別個に包装されているかのいずれか)、(正および/もしくは負の)対照処方、ならびに/または検出可能な標識、例として、とりわけ、フルオレセイン、緑色蛍光タンパク質、ローダミン、シアニン染料、Alexa染料、ルシフェラーゼ、放射標識を含有することができる。アッセイを実施するための指示(例えば、書類、テープ、VCR、CD−ROM等)を、キット中に含めることができる。アッセイは、例えば、当技術分野で公知のノーザンハイブリダイゼーションまたはサンドイッチELISAの形態であってよい。
【0145】
例えば、DETERMINANTの検出試薬を、多孔性条片等の固体のマトリックス上に固定化して、少なくとも1つのDETERMINANTの検出部位を形成することができる。多孔性条片の測定または検出の領域は、核酸を含有する複数の部位を含むことができる。また、試験条片は、負および/または正の対照のための部位も含有することができる。あるいは、対照部位を、試験条片とは別個の条片上に設けてもよい。場合により、異なる検出部位が、異なる量の固定化核酸、例えば、第1の検出部位においてはより多い量を、かつそれに続く部位ではより少ない量を含有してもよい。試験サンプルを添加すると、検出可能なシグナルを示す部位の数によって、サンプル中に存在するDETERMINANTの量の定量的な指示が得られる。検出部位は、任意の適切に検出可能な形状に構成することができるが、典型的には、試験条片の幅にわたる棒状または点状の形状をとる。
【0146】
あるいは、キットは、1つまたは複数の核酸配列を含む核酸基板アレイを含有する。アレイ上の核酸は、DETERMINANT1〜360によって示される1つまたは複数の核酸配列を特異的に同定する。種々の実施形態では、DETERMINANT1〜360によって示される配列のうちの2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、40、50、100、125、150、175、200、250または275個以上の発現を、アレイに対する結合によって同定することができる。基板アレイは、例えば、固体の基板、例えば、米国特許第5,744,305号に記載されている「チップ」であってよい。あるいは、基板アレイは、溶液アレイ、例えば、xMAP(Luminex、Austin、TX)、Cyvera(Illumina、San Diego、CA)、CellCard(Vitra Bioscience、Mountain View、CA)、およびQuantum Dots’Mosaic(Invitrogen、Carlsbad、CA)であってもよい。
【0147】
DETERMINANTの検出のための抗体の適切な供給元として、例えば、Abazyme、Abnova、Affinity Biologicals、AntibodyShop、Biogenesis、Biosense Laboratories、Calbiochem、Cell Sciences、Chemicon International、Chemokine、Clontech、Cytolab、DAKO、Diagnostic BioSystems、eBioscience、Endocrine Technologies、Enzo Biochem、Eurogentec、Fusion Antibodies、Genesis Biotech、GloboZymes、Haematologic Technologies、Immunodetect、Immunodiagnostik、Immunometrics、Immunostar、Immunovision、Biogenex、Invitrogen、Jackson ImmunoResearch Laboratory、KMI Diagnostics、Koma Biotech、LabFrontier Life Science Institute、Lee Laboratories、Lifescrcen、Maine Biotechnology Services、Mediclone、MicroPharm Ltd.、ModiQuest、Molecular Innovations、Molecular Probes、Neoclone、Neuromics、New England Biolabs、Novocastra、Novus Biologicals、Oncogene Research Products、Orbigen、Oxford Biotechnology、Panvera、PerkinElmer Life Sciences、Pharmingen、Phoenix Pharmaceuticals、Pierce Chemical Company、Polymun Scientific、Polysiences, Inc.、Promcga Corporation、Proteogenix、Protos Immunorescarch、QED Biosciences, Inc.、R&D Systems、Repligen、Research Diagnostics、Roboscreen、Santa Cruz Biotechnology、Seikagaku America、Serological Corporation、Serotec、SigmaAldrich、StemCell Technologies、Synaptic Systems GmbH、Technopharm、Terra Nova Biotechnology、TiterMax、Trillium Diagnostics、Upstate Biotechnology、US Biological、Vector Laboratories、Wako Pure Chemical Industries、およびZeptometrix等の商業的な供給元が挙げられる。しかし、当業者であれば、表1のDETERMINANTのうちのいずれかに対する抗体、核酸プローブ、例えば、オリゴヌクレオチド、アプタマー、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドを日常的に作製することができる。
【実施例】
【0148】
(実施例1)
一般的な方法
トランスジェニックマウスおよび原発性腫瘍
リバーステトラサイクリントランス活性化因子、Tetプロモーター、およびチロシナーゼエンハンサー/プロモーター導入遺伝子を、(Ganss, Montoliuら 1994年;Chin, Pomcrantzら 1997年;Chin, Tamら 1999年)の記載に従って使用した。マウスc−Met cDNA(George F Vande−Woude、Grand Rapids、MIにより寄贈された)を、(Chin、Nature 1999年)の記載に準じて、Tetプロモーターの制御下でクローニングした。複数の導入遺伝子樹立系統を、予想される頻度で得た。明確に定義された活性化因子系統(Tyr/rtTA、系統37、Chin、Nature 1999年)ならびに3つの独立したレポーター系統(Met15、Met28およびMet40)を、これらの研究のために使用した。
【0149】
インビボにおける導入遺伝子の発現を活性化するために、離乳年齢のMETトランスジェニックマウスに、飲料水からドキシサイクリンを与え(2μg/ml、スクロース水中)、自発的な腫瘍の発生について観察した。サブセットの動物(3週齢)にavertin(0.5g/kg体重)を用いて腹腔内麻酔を施し、背部に20mmの長方形の創傷を設け、続いて縫合した。動物を、腫瘍の発生、または健康不良の出現について2週に1回観察した。瀕死状態に近い動物または腫瘍の負担を顕著に示す動物を屠殺し、続いて、詳細な剖検を行った。(Chin, L.ら Genes and Dev、1997年)の以前の記載に従って、組織学的解析のために、腫瘍検体を10%ホルマリン中に固定し、パラフィン中に包埋した。十分な検体が入手可能である場合には、原発性腫瘍を急速冷凍して、それに続く解析に供し、細胞系を生成した。
【0150】
細胞培養。メラノーマ細胞系を、マウス腫瘍から、コラーゲナーゼ+ヒアルロニダーゼ(2mg/ml;Sigma)を用いて2時間消化し、続いて、10%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するRPMI1640培地(Gibco BRL)を用いて培養することによって得た。メラニン形成細胞培養物を、記載10に従って新生仔マウスの表皮から生成し、5%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、200pMコレラ毒素、200nM 12−Oテトラデカノイルホルボール−13−アセテート(TPA)を含有するRPMI1640中に維持した。トランスジェニックc−Met発現を、培養細胞中で、2μg/mlのドキシサイクリンを添加することによって誘導した。M3 BRAFメラニン形成細胞、HMEL468予備刺激メラニン形成細胞、WM3211およびWM115を、10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するRPMI1640中に維持した。HMEL468は、Garrawayら11に記載されているように、PMEL/hTERT/CDK4(R24C)/p53DD/BRAFV600E細胞のサブクローンを同定する。
【0151】
組織学的解析および免疫組織化学的染色。マウスを機関のガイドラインに従って屠殺し、臓器を10%緩衝ホルマリン中に固定し、パラフィン包埋した。病変の分類および腫瘍転移の検出を可能にするために、組織切片を、H&Eを用いて染色した。c−Metタンパク質を検出し、その活性化の状況を決定するために、腫瘍サンプルを、Cell Signaling Technology製の全c−Met抗体およびリン酸c−Met(Tyr1349)抗体を用いて免疫染色した。腫瘍は、Sigma製のS100抗体を用いて免疫染色した。
【0152】
RT−PCRおよびリアルタイム定量的PCRによる遺伝子発現。遺伝子発現を解析するために、全RNAを、原発性皮膚黒色腫または培養細胞から、Trizol(Gibco BRL)を使用して、製造元のプロトコールに従って単離した。全RNAを、RQ1デオキシリボヌクレアーゼ(Promega)で処理し、オリゴ(dT)をプライマーとして用い、SuperscriptIIポリメラーゼ(Invitrogen)を使用する逆転写反応のために、1μgの全RNAを使用した。コード領域を、PCR、またはMx3000PリアルタイムPCRシステム(Stratagene)上でのSYBR Green(Applied Biosystems)を使用する定量的リアルタイムPCRにより増幅した。リボソームタンパク質R15を、内部発現対照として使用した。プライマー配列を以下に示す:
【0153】
【化1】

SMAD3プライマーは、Superarray製であった。
【0154】
遺伝子発現プロファイリングおよびデータ解析。Met誘導型およびHRas誘導型のマウス腫瘍RNAを、上記の記載に従って抽出し、標識し、Dana−Farber Cancer Institute Microarray Core Facilityにおいて、Affymetrix GeneChip Mouse Genome 430 2.0 Arrayに製造元のプロトコールに従ってハイブリダイズさせた。発現データを、R/bioconductorパッケージ(www.bioconductor.org)を使用して処理した。解析を、記載12に従って実施した。手短に述べると、バックグラウンドの補正方法はMAS(v4.5)であり、正規化の方法は一定とし、PMの調整方法はMAS(v5)であり、発現値の略式は中央値分散分析(RMA)であった。P/M/A呼び出し方法はMAS5であった。全部で12個の腫瘍サンプルのうち、少なくとも2つの現在の呼び出しを有するプローブセット(16,434個のプローブセット)を、6つのiMet腫瘍と6つのiHRas腫瘍との間におけるさらなる示差的発現解析のために選択した。Significance Analysis of Microarray(SAM 2.0;http://www−stat.stanford.edu/〜tibs/SAM/)を、示差的発現解析のために使用した13。2つのクラスの対応のない標本の解析を実施し、続いて、最小2倍の変化についてフィルターをかけ、誤検出率が0.05未満となるようにデルタ値を調整した。GFPまたはHOXA1のいずれかを形質導入した細胞(HMEL468、WM115、WM3211)から抽出し、続いて、標識したcDNAを、Dana−Farber Cancer Institute Microarray Core Facilityにおいて、Affymetrix GeneChip Human Genome U133Plus2.0に製造元のプロトコールに従ってハイブリダイズさせて、上記のSAMにより、HOXA1誘導性転写の解析を実施した。Ingenuity Pathways Analysisプログラム(http://www.ingenuity.com/index.html)を使用して、転移性メラノーマ中において顕著に調節されている細胞の機能および経路をさらに解析した。
【0155】
マウス遺伝子発現とヒトアレイCGHデータとの比較。(上記した)マウス腫瘍の発現解析から得た非冗長性の示差的発現プローブセットを、アレイ−CGH(GEOアクセッション番号GSE7606)によって同定されたヒト転移性メラノーマ中においてコピー数異常を示したヒトオルソログに位置付けた。相同遺伝子(homologene)データベース(NCB1)を使用して、iMet腫瘍対iRas腫瘍において示差的に発現した遺伝子について、オルソロガスなヒト遺伝子を同定した。(iRas腫瘍と比べて)iMet腫瘍中において上方制御または下方制御され、ヒトでの転移においてそれぞれ増幅または欠失している遺伝子を選択した。
【0156】
目的変数なしのクラスター化およびカプラン−マイヤーの生存解析。転移性決定因子の発現プロファイルを使用して、Rを使用するK平均法クラスター化(http;//www.r−projeet.org/)により、295個の乳腺腫瘍14;15を2つの群にクラスター化した。これら2つのクラスター化された群についてのカプラン−マイヤーの生存解析を、Rにおける生存パッケージを使用して実施し、P値を、Rにおける生存統計パッケージを使用して計算した。
【0157】
DNA構築物および低複雑度ライブラリー。pRetrosuperSmad3およびp3TPLuxは、Addgene製であった(それぞれ、15726番および11767番)。低複雑度cDNAライブラリーのために、199個の遺伝子に相当する230個のcDNAを、ORFeomeコレクション(Dana−Farber Cancer Institute)から入手し、pLenti6/V5 DEST(Invitrogen)にGateway組換えにより、製造元の提案に従って高スループットに導入した。浸潤スクリーニングにおいて良好なスコアを示した候補cDNAは、V5エピトープを使用して配列および発現を確かめ、同種のクローン調製物を、全ての浸潤検証研究のために使用した。
【0158】
96ウエル上でのウイルスの産生、形質導入およびトランスウエル浸潤アッセイ。96ウエルの平底プレート中、DMEM+10%FBS(抗菌性)中に、各ウエルにつき、100μl中およそ3×10個の293T細胞を播種し、24時間後(約90%コンフルエント)にトランスフェクションを行った。各ウエルにおけるトランスフェクションのために、150ngのウイルス骨格および110ngのレンチウイルスパッケージングベクターを、Opti−MEM(Invitrogen)を使用して15μlに希釈した。得られたベクターのミックスを、0.6μlのLiptofectamine2000(Invitrogen)を含有するOpti−MEM15μlと組合せ、室温で20分間インキュベートし、293T細胞を覆う100μlの培地に添加した。トランスフェクションのおよそ10時間後に、培地をDMEM+10%FBS+P/Sで交換し、4回のウイルス上清の収集を、トランスフェクションの36時間後から開始し、それらを組み合わせた。感染の24時間前に96ウエルの平底プレート中に播種した標的細胞(HMEL468)(70〜80%コンフルエント)に、8μg/mlポリブレンを含有するウイルス上清150μlを添加した。細胞を2回感染させ、第2の感染後、RPMI+10%FBS+P/S中で24時間回復させ、その後、細胞をトリプシン処理し(trypsized)、96ウエルの腫瘍浸潤プレート(BD Bioscience)に製造元の推奨に従って適用した。浸潤細胞を、4μM Calcein AM(BD Bioscience)を使用してインビボにおいて標識して検出し、494/517nm(Abs/Em)における蛍光によって測定した。正のスコアを示す候補を、ベクター対照から2×標準偏差のスコアを示すものとして同定した。
【0159】
トランスウエル浸潤アッセイ。標準的な24ウエル浸潤チャンバー(BD Biosciences)を活用して、浸潤性を、製造元の提案に従って評価した。手短に述べると、細胞をトリプシン処理し、PBSを用いて2回濯ぎ、無血清RPMI1640培地中に再懸濁させ、HMEL468は7.5×10細胞/ウエルで、WM3211は2.0×10で、WM115は5.0×10で播種した。チャンバーを、三つ組または四つ組で播種し、化学誘引物質としての10%血清含有培地中に置き、さらに、インプット対照として、チャンバーを二つ組で細胞培養プレート中に置いた。22時間のインキュベーション後に、チャンバーを10%ホルマリン中に固定し、クリスタルバイオレットを用いて染色して、手作業で数えるか、またはAdobe Photoshop(Adobe)を用いてピクセルの定量化を行った。細胞数の差について、データを、対照に対するインプット細胞について正規化した(添加対照)。HOXA1媒介型浸潤に対するSMAD3のノックダウンを評価するために、SMAD3を標的にすることが検証されたshRNA構築物(pSUPER−shSMAD3)、およびウイルスを、標準的なレトロウイルス産生プロトコールを使用して得た。浸潤を比較するために、並行して、対照細胞には、非標的shRNA(pSUPER−shNT)を形質導入した。
【0160】
異種移植研究および尾静脈注射研究。HMEL468細胞に、GFPウイルスまたはHOXA1ウイルスのいずれかを安定に形質導入した。異種移植研究のために、細胞を、CB−l7−scid(C.B−Igh−1b/lcrTac−Prkdcscid;Taconic)マウスの両側腹部中に、1×10細胞/部位で皮下に移植した。肺への播種能力を評価するために、5.0×10個の細胞を、CB−17−scidマウスの尾静脈中に注射した。全ての動物を、腫瘍の発生についてモニタし、続いて、死体解剖および腫瘍の組織学的解析を行った。
【0161】
TGFβレポーターアッセイ。6ウエルプレート中に、細胞を、三つ組で、2×10細胞/ウエルで播種し、24時間後に、p3TPLuxレポーター(1μg/ウエル)および対照レポーター(Renilla、20ng/ウエル)によるトランスフェクションを行った。24時間のインキュベーション後、細胞を、TGFβ(20ng/ml、R&D Systems)を用いて24時間処理し、Lumat LB9507 Luminometerを使用してルシフェラーゼ解析(Promega)を製造元のプロトコールに従って行って、firefly/Renillaの比によって示されるレポーターの活性化を得た。p値を、両側T検定を使用して計算した。
【0162】
イムノブロット解析。細胞を、20ng/ml TGFb(R&D Systems)を用いて表示に従って処理し、続いて、PBS中で2回洗浄し、1mM PMSF、1×プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma)および1×ホスファターゼ阻害剤(Calbiochem)を含有するRIPA緩衝液(150mM NaCl、50mM Tris−HCl、pH7.5、500μM EDTA、100μM EGTA、1.0%Triton X−100および1%デオキシコール酸ナトリウム)を使用して溶解させた。溶解用緩衝液中、4℃での30分間のインキュベーション後、分離した全細胞抽出物を、10k、4℃で10分間遠心分離することによって清澄化し、次いで、タンパク質濃度を、DC Protein Assay(BioRad)によって決定した。タンパク質を、NuPAGE 4〜12% Bis−Trisゲル(Invitrogen)上で分離することによって可視化し、PBS+ツイーン−20中の5%ミルクでブロックしたPVDF(Millipore、Billerica、MA)上にブロットし、次いで、表示する抗体と共にインキュベートした。以下の抗体を、イムノブロットのために使用した:pSmad3および全Smad3(Cell Signaling Technology)、アルファ−チューブリン(Sigma)、V5(Invitrogen)、ホスホ−FAK(pY397:lnvitrogen)。
【0163】
Panomics technologyによるRNAに基づいた発現アッセイ。タンパク質に基づいた発現解析の代替として、また、QuantiGene Plex技術(Panomics)を活用して、PDのRNA発現も評価した。配列ではなくレポーターシグナルを増幅することによって、RNAを検出および定量化するための独特のアプローチを提供するQuantiGeneプラットフォームは、分枝DNA技術、すなわち、サンドイッチ核酸ハイブリダイゼーションアッセイに基づいている(Flagella, M.、Bui, S.、Zheng, Z.、Nguyen, C.T.、Zhang, A.、Pastor, L.、Ma. Y.、Yang, W.、Crawford, K.L.、McMaster, G.K.ら(2006年)A multiplex branched DNA assay for parallel quantitative gene expression profiling、Anal Biochem 352巻、50〜60頁)。この技術によって、新鮮組織、凍結組織またはホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPE)組織のホモジネート中のRNA発現を定量的に確実に測定することができる(Knudsen, B.S.、Allen, A.N.、McLerran, D.F.、Vessella, R.I、Karademos, J.、Davies, J.E.、Maqsodi, B.、McMaster, G.K.およびKristal, A.R(2008年)Evaluation of the branched−chain DNA assay for measurement of RNA in formalin−fixed tissues、J Mol Diagn 10巻、169〜176頁)。図17Aに示すように、実現可能性パイロットから、FFPEブロック中にある21個のスピッツ母斑検体および22個の悪性のメラノーマ検体中のUBE2CのRNA発現を確実に測定できることが示されている。各遺伝子の解析は、優れた再現性を達成し、変動係数(CV)の値は8〜9%の範囲であり、したがって、最高の品質管理基準を満たした。したがって、この方法は、入手可能な抗体がない目的の候補の発現パターンに関する最初の洞察を探り出すための理想的な代替方法を我々にもたらす。注目すべきことに、UBE2CのQuantiGene Plex解析は、UBE2Cの発癌活性を示す結果を裏付けた。具体的には、我々は、古典的な同時形質転換アッセイを使用して、Ink4a/Arf欠損初代マウス胚性線維芽細胞中において、UBE2Cが活性化されたHRASv12と連携して、形質転換病巣の形成を増加させることを示している(図17B)。
【0164】
他の箇所で詳細に記載したように、自動化定量的解析(AQUA(登録商標))によって、細胞内コンパートメント内部のタンパク質濃度の正確な測定が可能になる[Camp, R.L.、Chung, G.G.およびRimm, D.L.、Automated subcellular localization and quantification of protein expression in tissue microarrays、Nat Med 8巻(11号)、1323〜1327頁(2002年)]。手短に述べると、一連の高解像度の単色像を、PM−2000顕微鏡によって撮影した。各薄片試料について、DAPI、サイトケラチンおよび一次抗体に特異的なシグナルからのシグナルを使用して、焦点が合っている像および焦点が合っていない像を得た。サイトケラチンとS100とのシグナルから腫瘍「マスク」を生み出すことによって、腫瘍を、間質性および非間質性の要素とは区別した。これによって、薄片試料の目視検査によって設定した強度閾値に基づいた二成分マスク(各ピクセルが、「オン」または「オフ」のいずれかである)が生み出された。シグナル強度(0〜255の規模でスコア化した)を、特定のコンパートメントの面積で割ることによって、各細胞内コンパートメント中の目的のタンパク質のAQUA(登録商標)のスコアを計算した。1スポット当たり5%未満の腫瘍面積を示す検体は、対応する腫瘍検体には相当しないことから、自動化定量的解析に含めなかった。
【0165】
(実施例2)
表現型から誘導した進化的に保存されている転移徴候の同定
ここでは、非常に異なる転移の可能性を有する遺伝子工学的に作製されたマウス(GEM)モデルを、とりわけ、微小転移またはマクロ転移の記載および追跡期間に関する変数を含む、ヒト癌の解析に内在する当惑させられる不確実性を軽減するための1つの生物学的な系として使用した。活用した2つのマウスメラノーマモデルは、(i)Ink4a/Arf欠損バックグラウンドにおいてチロシナーゼ誘導型のrtTAおよびtet−Metの導入遺伝子から構成される新たに開発されたMet誘導型GEMモデル(Tyr−rtTA;Tet−Met;Ink4a/Arf−/−、以下、「iMet」)、および(ii)以前に記載されているHRASv12G誘導型マウスメラノーマモデル(Tyr−rtTA;Tet−HRASV12G;Ink4a/Arf−/−、以下、「iHRAS」)12であった。表現型の特徴付けから、75%のiMetマウスが、生検部位においてメラノーマを発症し、平均潜伏期間は12週間であることが示されている。これらの腫瘍は、メラニン形成細胞マーカー陽性であり、リン酸活性化(phosphor−activated)Met受容体およびHGFの発現を示す(図5A〜E);さらに、派生したiMetメラノーマ細胞は、トランスウエルチャンバー浸潤アッセイにおいて、組換えHGFに応答してロバストな浸潤活性を示す(図2A)。ヒトにおける進行した転移性メラノーマ中のHGF−METシグナル伝達の活性化13と同様、新規のトランスジェニック動物におけるiMetメラノーマも、リンパ節に一様に転移し、それに加えて、それぞれヒトメラノーマの場合の転移性播種の一般的な部位である副腎および肺実質にも時には広がる(図2B)。この浸透性の高い転移性表現型は、非転移性の原発性皮膚黒色腫によって特徴付けられるiHRASメラノーマモデル12;14とは著しく対照的である。尾静脈アッセイにおいて、原発性メラノーマから得られた細胞系のうち、iHRASではなくiMetが、肺に播種することができることが実証されたことによって、この対照的な転移の可能性が補強された(図2C)。
【0166】
iHRASとiMetとの間の転移性傾向の疑いの余地のない差によって、iHRASモデルおよびiMetモデルに由来する原発性皮膚黒色腫のトランスクリプトームの比較に基づいて表現型誘導型原発性腫瘍転移徴候を生成することが可能になった。<0.05の誤発見率で≧2倍の示差的発現を示す1597個のプローブセットから構成されるこのマウス転移徴候を、次には、(i)ヒト転移性メラノーマにおいて、コピー数異常(CNA)中に存在し、かつ/または(ii)ヒトの原発性メラノーマと転移性メラノーマとの間で示差的発現を示す、非常に多数の遺伝子と整合させて、295個の上方制御された/増幅している遺伝子と、65個の下方制御された/欠失している遺伝子を得た(図3A;表4)。これらの遺伝子から得られる生物学的活性の型に関する早期の洞察を探り出すために、我々は、Ingenuity Pathway Analysis(IPA)(Ingenuity Systems Inc.、Redwood City、CA)を使用して、知識ベース経路解析を実施して、360個の遺伝子のリストについて、より大型の1597個のマウス転移徴候に対してフィルターをかけることによって、どの遺伝子機能が顕著なスコアを示すかを定義した。IPAの呼び出しの有意性を評価するために、我々は、同一サイズの無作為抽出リストを生成して、平行分析を行った。図3Bに示すように、我々は、マウス転移発現徴候が、この無作為抽出リストと比べて、DNAの複製および組換え、癌、細胞サイクル、ならびに細胞死に関与する遺伝子機能の何らの過剰描写を示すことを見出した。それと比較して、種間/プラットフォーム間でフィルターをかけたリストは、これらの同じ機能の著しくより強力な強化を示し、それに加えて、マウス発現徴候のみの場合には明らかでなかった新しい機能のネットワーク、すなわち、「細胞の集合および組織化」の出現も示した(図3B)。この比較から、表現型誘導型転移徴候と種間比較とにおける三角測量が、腫瘍の形成および転移のプロセスと強力につながる遺伝子ネットワークの強化に役立ち得ることが示唆された。
【0167】
(実施例3)
転移性DETERMINANTについての機能性遺伝子のスクリーニング
特に、癌細胞を広げる必須の能力である細胞の動きおよび浸潤との関連性を考えると、細胞の集合および組織化の遺伝子の強力な強化には勇気付けられた。この観察に刺激されて、我々は、浸潤を引き起こす遺伝子を同定するための低複雑度遺伝子スクリーニングを実行した(図3C)。さらに、これらのスクリーニングは、上方制御された遺伝子には治療の可能性が予想されることから、それらにもっぱら焦点を当てた。具体的には、295個の独特の上方制御された/増幅している候補のうちの199個に対応する230個の利用可能なORF(表5)を、ヒトORFeome(http://horfdb.dfci.harvard.edu/)から入手し、レンチウイルスの発現系に導入して、HMEL468、すなわち、TERT不死化初代ヒトメラニン形成細胞系15に形質導入した。一次スクリーニングのために、我々は、96ウエルのトランスウエル浸潤アッセイを活用し、蛍光定量的読取りを行って、マトリゲルを通るHMEL468の遊走および浸潤を増強する、候補の決定因子遺伝子の能力を測定した。マトリゲルは、細胞外マトリックスを刺激する。負および正の対照として、GFPレンチウイルスおよびNEDD916レンチウイルスをそれぞれ使用した。一次スクリーニングを2回繰り返し、GFP対照から2標準偏差のスコアを再現性よく示した45個の候補を、一次スクリーニングのヒットと見なした(図3C〜D)。次いで、これら45個の一次ヒットの二次検証スクリーニングを、三つ組で、標準的な24ウエルマトリゲルのトランスウエル浸潤チャンバーを使用して実施し、HMEL468メラニン形成細胞中で、浸潤を、GFP対照と比較して、少なくとも1.5倍増強することができる25個の遺伝子を得た(図3Eおよび表3)。さらにまた、関連の遺伝子またはこれら25個の決定因子のうちの1つと複合することが知られている遺伝子も、機能アッセイに加えて、追加の6個の決定因子を同定した。
【0168】
(実施例4)
ヒトの原発性および転移性のメラノーマのTMAにおける発現の進行相関性
転移決定因子の発現を、悪性メラノーマの進行と相関させるための努力において、我々は、AQUAにより、(Camp, R.L.、Dolled−Filhart, M.、King, B.L.およびRimm, D.L.(2003年)Quantitative analysis of breast cancer tissue microarrays shows that both high and normal levels of HER2 expression are associated with poor outcome、Cancer Res 63巻、1445〜1448頁)の記載に従って、代表的な決定因子に対する市販されている抗体を使用して、良性母斑、原発性メラノーマおよびメラノーマ転移の検体を含有する組織マイクロアレイ(TMA)のIHC解析を実施した。表2、および図4A〜Bの代表的なデータに要約されているように、BRRN1を除いて、全てのその他の試験した決定因子(HSF1、MCM7、HOXA1、FSCN1、ACP5、UBF2CおよびKNTC2)が、原発性または転移対良性母斑では、有意により高い発現を示す。
【0169】
【表2】

(実施例5)
転移DETERMINANTは、非系列特異的であり、予後を示す
ゲノムの不安定性が腫瘍形成を引き起こして、共通の明確に異なる遺伝子プロファイルを示す、不均一な細胞亜集団から構成される原発性腫瘍を生み出すことは十分に確立されている。したがって、原発性腫瘍中の転移決定因子−発現の亜集団には増殖上の利点が与えられ、そうした亜集団が究極的に広がる場合、転移決定因子の発現が、より均一に派生した転移病変においては、強化されて現れることに起因して増加することは理にかなっている。そのような進行関連発現を評価するために、25個の決定因子を、Oncomine24上の非常に多数の発現プロファイリングデータにおいて調べた。これら25個の転移決定因子の大多数は以前には、腫瘍の進行に関係があると見なされたことがないにもかかわらず、転移性メラノーマにおいて原発性メラノーマと比べて発現の増加を示した7個の決定因子に加えて、これら25個全てが、1つまたは複数の非メラノーマ固形腫瘍において進行相関性発現パターンを示した(表3)。例えば、9個の決定因子は、より高いグレードの神経膠腫において統計学的に有意な発現増加を示した。前立腺腺癌においては、転移決定因子のうちの9個が、原発性から転移への発現の有意な増加を示した。同様に、肺においても、5個が、腫瘍グレードの増加との相関性を示した。最も顕著なオーバーラップを、乳房腺癌について観察し、25個の転移決定因子のうちの12個が、腫瘍進行の段階またはグレードとの相関性を示した。
【0170】
次に、乳房腺癌プロファイルにおいて顕著なオーバーラップを得たことから、我々は、公開されている乳房における治療成果アノテートトランスクリプトームデータ5;6を使用して、これらの決定因子がより広く予後を示す可能性を探索した。乳癌トランスクリプトームデータセットは、これら20個の転移決定因子のうちの19個についてのプローブを含み、これらを徴候として使用して、K平均目的変数なしの分類アルゴリズムによって、295個の乳房腫瘍のコホートを階層化した(図5A;表7)。得られたサブグループは、全体的生存(p=2.6−9)および無転移生存(p=2.1−6)において有意な差を示すことが見出された(図5B)。階層クラスタリングを使用して分類を実施した場合にも、類似の分離を得た。(未公開のデータ)。
【0171】
早期段階の乳癌においてロバストな予後を示す可能性、および複数の非メラノーマ癌型における進行相関性発現の広いパターンから、これら25個の転移決定因子は、系列特異的ではなく、多種多様な腫瘍型において作動する中心的なプロセスを引き起こす可能性が高いことが示されているが、これらの大部分は文献中では、浸潤または転移に関係があると見なされたことがない。それに代わって、多くは、遺伝子−オントロジー上で、紡錐体チェックポイント制御または染色体凝縮における公知の役割を有する細胞サイクルまたは増殖の遺伝子としてアノテートされている。例えば、いくつかの決定因子(例えば、BRRN1、KNTC2、SPAG5、UBE2C、CENPMおよびMCM7)は、DNA有糸分裂の進行、紡錘体およびDNA複製のプロセスを調節することが公知である。他方、BRRN1、KNTC2およびUBE2Cは、転移しない原発性乳房腫瘍25と比べて、転移した原発性腫瘍と関連性がある転移性乳癌徴候において強化された20個の遺伝子による機能性モジュール(20−genes functional module)中に含まれる。同様に、MCM7は、前立腺癌を含めた、複数の浸潤性癌について芳しくない予後を示すマーカーとして同定されたことがある26。総合すると、これらのタンパク質が、細胞の浸潤および転移の誘導に直接的または間接的に寄与する仕組みは依然として不明であるが、我々は、これらの有糸分裂チェックポイントタンパク質が、細胞の動きのための細胞骨格機構の制御において二重の役割を果たし得ると憶測している。
【0172】
(実施例6)
アノイキス耐性を付与する遺伝子の同定
転移は、複雑な多段階プロセスである(Gupta, G. P.およびMassague, J.(2006年)Cancer metastasis: building a framework、Cell 127巻、679〜69頁)。完全な転移が生じるためには、腫瘍細胞は、原発性腫瘍部位において増殖し、循環系またはリンパ系内に浸入し、循環する間生存し、浸出し、二次腫瘍を形成することができなければならない。これを達成するために、循環する腫瘍細胞は、アノイキスまたはマトリックス付着の喪失により誘導されるアポトーシスを克服することができなければならない(Simpson, C. D.、Anyiwe, K.およびSchimmer, A. D.(2008年)Anoikis resistance and tumor metastasis、Cancer Lett 272巻、177〜185頁)。アノイキス耐性をアノイキス感受性細胞に付与する遺伝子を同定するために、我々は、アノイキス感受性についてのインビトロにおけるスクリーニングを最適化した(図6A)。我々は、細胞表面付着を阻止するヒドロゲル層でコートしたプレート上に播種した細胞(超低クラスター)が、インビボにおいて循環している細胞懸濁液を、インビトロにおいて部分的に再現するであろうと仮定した。
【0173】
パイロット研究において、我々は、メラノーマ細胞系のコホートをスクリーニングし、メラノーマ段階(例えば、局在化、浸潤性)に関わらず、全てがアノイキス耐性であることを見出した。それに代わって、我々および他者は、ラット腸上皮(RIE)細胞は、接着性が喪失すると生存を低下させることを見出した(図6B)(Douma, S.、Van Laar, T.、Zevenhoven, J.、Meuwissen, R.、Van Garderen, E.およびPeeper, D. S.(2004年)Suppression of anoikis and induction of metastasis by the neurotrophic receptor TrkB、Nature 430巻、1034〜1039頁)。RIF細胞は不死化しているが、形質転換されていない細胞系である。アノイキスを被る細胞は、アポトーシス経路を開始し、一方、付着が喪失しても生存可能である細胞は、アノイキス耐性を示す。したがって、我々は、細胞代謝の指標であるATP生成を、細胞生存率の定量化可能な感度のよい尺度として測定した。
【0174】
Gateway組換えシステムを使用して、種間癌ゲノミクス解析によって同定した候補ORFのうちの199個を、レトロウイルスベクターMSCV/V5中にクローニングした。ウェスタンブロットによる解析によれば、mTrkB、および無作為抽出した異なるcDNAサイズのクローンがRIE中で発現し、したがって、我々の発現システムの機能性が実証された(図6C、未公開のデータ)。
【0175】
アノイキス耐性をスクリーニングするために、293T細胞を、6ウエルプレート上に蒔き、1つのORFを含有するMSCV/V5およびパッケージングベクターpCL−Ecoによりコトランスフェクトした(図6A)。細胞に、Lipofectamine2000(Invitrogen)を用いてトランスフェクトし、ウイルスを複数の時点で収集した。RIE細胞を6つのウエル上に蒔き、プレーティングの24時間後に、これらの細胞に、48時間目および72時間目のウイルス上清を連続的に感染させた。RIEを、最後の感染の24時間後に収集し、単一細胞懸濁液(single−cell suspension)を生成して、96ウエルのULCプレート上に、7000細胞/ウエルを三つ組で蒔いた(0時間)。ベースライン細胞数を決定するために、細胞を、0時間において溶解し、ATPレベルを測定した(Cell Titer Glo、Promega)。ULCプレーティングの24時間後に、細胞を、Cell Titer Gloを用いて溶解し、溶解液を、読取りのために、96ウエルの、不透明なウエルを有するルミノメーター用プレートに移した。我々の解析では、ATPレベルを24時間目に0時間目と比較し、したがって、ATPレベルの変化の倍数を求めた(図7)。
【0176】
神経栄養因子受容体TrkBは、インビトロにおいては、アノイキス耐性をアノイキス感受性細胞に付与し、インビボにおいては、腫瘍形成および肺における播種を促すことが示されたことがある(3)。マウスTrkB(mTrkB)およびTrkBに対するヒトリガンドであるBDNFが、ベクター単独よりも大きなアノイキス耐性をRIEに付与したことから、我々は、我々のスクリーニングについて自信を高めるに至った(図7)。同一の二つ組のスクリーニングにおいて、遺伝子のうちの平均21%が、全ての候補遺伝子の中央値から1標準偏差超を示した。20個の遺伝子は、スクリーニングのうちの少なくとも一方において、中央値から2標準偏差超を示した(図8)。これらの遺伝子のうちの9個は、両方のスクリーニングにおいて、中央値から1標準偏差超を示し、一方、これら9個のうちの7個の遺伝子は、スクリーニングのうちの少なくとも一方において、中央値から2標準偏差超を示した(HNRPR、CDC20、PRIM2A、HRSPI2、ENY2、MGC14141、RECQL)。興味深いことに、これら9個の遺伝子のうち、STK3、PRIM2A、CDC20、RECQL、HNRPR、ENY2およびMGC14141は、メラノーマサンプル中で、正常対メラノーマ、または原発性対転移のいずれかにおいて、より高い発現を示したことがある(Oncomine、GEO)。さらに、9個の遺伝子全てが、乳房、肺または脳のいずれかの腫瘍において発現増加を示したこともあり、このことからも、我々の優先順位リストがその他の癌型において妥当性を有することが実証されている(Oncomine)。
【0177】
我々の9個の候補遺伝子を発現する細胞の生存率の増加を、非接着性状態において確認するために、我々は、付着喪失期間後の付着能力の保持を調べた。目的の遺伝子を発現するRIEをULCプレートに移し、24時間後に、懸濁液中の全ての細胞を接着プレートに移した。接着性細胞を、クリスタルバイオレットを用いて染色し、生存細胞を定量化した。図9に示すように、RIE細胞は、懸濁液中に24時間置くと、接着プレートに付着する能力を低下させた。しかし、9個の遺伝子は全て、細胞を懸濁液中に置いた後、RIEの、再付着し、生存し続ける能力を増加させた(図9)。そのような能力は、二次部位においてコロニー形成するように運命付けられた循環腫瘍細胞に必要な特徴であろう。
【0178】
(実施例7)
転移DETERMINANTは発癌性である
転移決定因子は、形質転換プロセスの早期に獲得され、原発性腫瘍中に先在することから、これらの転移遺伝子もまた、増殖性の利点を原発性腫瘍にもたらす本物の癌遺伝子であり得るであろうと想定されたことがある2;22。これに対処するために、我々は、これらの転移決定因子が、明らかな腫瘍形成能をTERT不死化メラニン形成細胞であるHMEL468に付与することができるかどうかを調べた。HOXA1に加えてまた、我々は、3個のその他の決定因子、すなわち、ANLN、BRRN1およびKNTC2も選択して、試験を行った。これは、それらが、メラノーマにおける無転移生存と負に相関する254個の遺伝子による徴候(245−gene signature)上に含まれるからである23。実際に、HOXA1形質導入HMEL468は、大型の腫瘍(2cm)を発生させ、局所的な浸潤の組織病理学的証拠を示し(図10A)、浸透率は12週間後には33%(6つの皮下移植部位中、n=2)であり、一方、ベクター形質導入対照は、注入の21週間後まで、いずれの腫瘍も発生させなかった(図10B)。同様に、ANLN、BRRN1およびKNTC2を形質導入した細胞も、ベクター対照と比べて、腫瘍形成能の増強を示した(図3B)。総合して、我々は、転移決定因子は実際にそれら自体が本物の癌遺伝子であり、またこれらは浸潤性の挙動を引き起こすこともできると結論付けた。
【0179】
(実施例8)
インビトロおよびインビボにおけるHOXA1およびFSCN1についての検証データ
次に、転移決定因子を同定する手段としてのこの統合的アプローチをさらに検証するために、我々は、ホメオボックス転写因子であるHOXA1の綿密な検証を実施した。HOXAIの上方制御が、乳房、NSCLCおよびメラノーマを含めた、複数の癌において報告されている17;18;19が、浸潤および転移における役割が示唆されたことはない。過剰発現研究において、HOXA1は強制されると、接着斑キナーゼであるFAKのリン酸化の増加を劇的に惹起した(図11A)。FAKは、増殖因子およびインテグリンによって刺激される細胞の運動性および浸潤の調節における主要なシグナル伝達分子である20。したがって、HOXA1過剰発現HMEL468は、インビトロにおいては、10倍の浸潤増加を示し、インビボにおいては、肺における播種能力を獲得した(図11A、D)。重要なことに、この浸潤促進活性は、HMEL468メラニン形成細胞系に特異的ではなかった。これは、HOXA1が、WM115ヒトメラノーマ細胞およびWM3211ヒトメラノーマ細胞の浸潤も同様に増強することができたことによる(図11B〜C)。実際にまた、表3に要約するように、WM115メラノーマ細胞およびWM3211メラノーマ細胞中で浸潤アッセイを行った決定因子のうちの多くも、HMEL468メラニン形成細胞を上回る浸潤促進活性を示した。HOXA1の発癌および転移の可能性を、弱い発癌性を示すメラノーマ細胞系WM115を使用して試験した追加の検証アッセイから、ヌードマウスにおいては、HOXA1の過剰発現が、異種移植された細胞の腫瘍増殖を著しく増強することが示されており(図11E)、これは、その他のヒトおよびマウスの細胞系を使用したデータと一致する。また、HOXA1の過剰発現によって、ヌードマウスの側腹部内に皮内移植した場合のWM115細胞の腫瘍増殖の増加も生じ、生じた原発性腫瘍は、腫瘍の発生に続いて容易に肺に転移し(図11F)、一方、対照(空のベクター細胞)は、原発性腫瘍を形成しない。
【0180】
ヒト細胞系におけるこれらの研究に加えて、また、我々は、HOXA1およびFascin 1(FSCN1)の、マウス細胞系を使用する試験も行った。ヒト細胞系を使用した浸潤の結果(図11A〜C)と同様、両方の候補の発現によって、HRASを形質導入したInk4a/Arf−/−マウス由来メラニン形成細胞(M3HRAS細胞として知れられている。Kim, M.、Gans, J.D.、Nogueira, C.、Wang, A.、Paik, J.H.、Feng, B.、 Brennan, C.、Hahn, W.C.、Cordon−Cardo, C.、Wagner, S.N.ら(2006年)、Comparative oncogenomics identifies NEDD9 as a melanoma metastasis gene、Cell 125巻、1269〜1281頁)のマトリックス浸潤能力が著しく増加した(図12A)。さらに、HOXA1およびFascin 1の両方の過剰発現によって、ヌードマウスの側腹部上に異種移植した場合、M3HRAS細胞の増殖する能力(図12B)、および尾静脈への静脈内注射に続いて、眼に見える肺小結節を形成する能力(図12C)も顕著に増強された。尾静脈への静脈内注射は、転移についての代理アッセイである。
【0181】
(実施例9)
HOXA1は、TGFβシグナル伝達の調節を介して浸潤を促す癌遺伝子である
次に、HOXA1の浸潤活性の分子基盤を探索するために、我々は、対照およびHOXA1を形質導入したHMEL468細胞、WM115細胞およびWM3211細胞の発現プロファイリングに基づいて、HOXA1トランスクリプトームを決定した(図11B)。示差的に発現した遺伝子リストの知識ベース経路解析によって、多重ノードとしてのSMAD3上に中心を置く、TGFβシグナル伝達遺伝子のネットワークが明らかになった(図13Aおよび表6)。したがって、我々は、TGFβシグナル伝達の転移における公知の役割を考慮して、TGFβシグナル伝達がHOXA1によって調節されるかどうかを評価した。我々は、TGFβ応答性レポーター構築物(p3TP−Lux)を使用して、HOXA1の異所発現が、基礎レポーター活性を増強する(11.0倍、p=0.003)ことのみならず、また、TGFβリガンドに応答して、対照と比較して9.3倍の増加ももたらす(p=0.0001;図14A)ことを見出した。それに対応して、10%および1%の両方の血清培養条件下では、活性化p−SMAD3および全SMAD3が、TGFβ刺激によって上昇し(図14B)、このことは、RNA発現解析により裏付けられた(図13B)。さらに、HOXA1媒介型浸潤は、SMAD3のノックダウンにより抑止され(図14C)、したがって、HOXA1の浸潤促進活性は、TGFβ−SMADのシグナル伝達に機能的につながっていた。TGFβ−SMADのシグナル伝達は、癌の転移を司る中心経路である21
【0182】
腫瘍において、HOXA1の過剰発現がSMAD3リン酸化の状況に影響を与えるかどうかを調べるために、我々は、空のベクターまたはHOXA1を発現するWM115メラノーマ細胞に由来する異種移植腫瘍検体を活用して(図11E)、SMAD3に対するリン酸特異的抗体を使用して免疫組織化学解析を行った。HOXA1の過剰発現によりSMAD3のリン酸化の増加が生じた我々の観察(図14B)と同様、我々は、HOXA1過剰発現腫瘍においても、SMAD3のリン酸化の増加を見出した(図14D)。
【0183】
(実施例)
CXCR4
HOXA1の生物学的機能に関する洞察を得るために、我々は、空のベクターおよびHOXA1を過剰発現するWM115メラノーマ細胞およびHMEL468メラニン形成細胞からcDNAを調製してRT Profiler PCR Array(Supperarray)上で使用し、転移と関連性がある遺伝子のパネルの発現を解析した。これら2つの細胞系間で共有される、最も多く過剰発現した遺伝子は、ケモカイン受容体CXCR4であった(図15)。これは、ケモカインであるストロマ由来因子−1(SDF−1)に対して特異的な受容体である。多くの型の癌において、腫瘍細胞によるCXCR4の発現と、芳しくない予後とが相関付けられたことがあり、こうした発現は、細胞転移において、SDF−1を発現する臓器に対する走化性勾配の確立を通して決定的な役割を果たす(Fulton AM、 Curr Oncol Rep.2009年3月;11巻(2号):125〜31頁)。HOXA1とCXCR4との間の関係をさらに調べるために、我々は、空のベクターおよびHOXA1を過剰発現する異種移植腫瘍におけるCXCR4の発現を、免疫組織化学を使用して評価した。RT Profiler解析と同様、我々は、WM115−HOXA1異種移植腫瘍およびHMEL468−HOXAl異種移植腫瘍の両方においても、CXCR4の発現が著しく増加することを見出した(図16)。これらのデータは、HOXA1によりCXCR4の発現の増加が生じ、それに続いて、CXCR4が、HOXA1の過剰発現によって開始された転移シグナル伝達プログラムに影響を与えるモデルと一致する。
【0184】
要約すると、統合的機能ゲノミクスのアプローチによって、浸潤を能動的に引き起こすものでもあり、かつ本物の癌遺伝子でもある転移決定因子の同定を可能にするに至った。メラノーマの状況において発見されたこれらの転移決定因子は、早期乳房腺癌において予後を示すことが分かり、多種多様な非メラノーマ腫瘍型において進行相関発現を示した。これらの知見から、転移決定因子は、いくつかの早期段階の原発性腫瘍中に存在し、これらの腫瘍を攻撃的に振舞うようにプログラムすることができ、したがって、芳しくない臨床治療成果をもたらすという実験的証拠が得られている。これらの決定因子のほとんどが、癌または転移に関連付けられたことがないことから、これらは、機能ベースの予後を示す生物マーカーおよび新しい治療的侵略の道のための基礎を提供することができる。
【0185】
【表3−1】

【0186】
【表3−2】

【0187】
【表4−1】

【0188】
【表4−2】

【0189】
【表4−3】

【0190】
【表4−4】

【0191】
【表4−5】

【0192】
【表4−6】

【0193】
【表4−7】

【0194】
【表5−1】

【0195】
【表5−2】

【0196】
【表5−3】

【0197】
【表5−4】

【0198】
【表5−5】

【0199】
【表6】

【0200】
【表7−1】

【0201】
【表7−2】

【0202】
【表7−3】

【0203】
【表7−4】

【0204】
【表7−5】

【0205】
【表7−6】

【0206】
【表7−7】

【0207】
【表7−8】

【0208】
【表7−9】

【0209】
【表7−10】

【0210】
【表7−11】

【0211】
【表7−12】

【0212】
【数1】

【0213】
【数2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定レベルの予測精度を用いて、被験体における転移性腫瘍を発症するリスクを評価するための方法であって、
a.前記被験体から得たサンプル中の、DETERMINANT1〜25、41、61、62、63、66、74、96、99、103、126、135、137、138、177、190、210、212、217、218、227、239、261、および271からなる群から選択された2個以上のDETERMINANTのレベルを測定するステップと、
b.前記サンプル中の前記2個以上のDETERMINANTのレベルの臨床的に有意な変化を測定するステップであって、前記変化が、前記被験体において転移性腫瘍を発症するリスクが高いことを示しているステップと
を含む方法。
【請求項2】
DETERMINANT26〜40、42〜60、64、65、67〜73、75〜95、97、98、100〜102、104〜125、127〜134、136、139〜176、178〜189、191〜209、211、213〜216、219〜226、228〜238、240〜260、262〜270、272〜360からなる群から選択された1個または複数のDETERMINANTの有効量を測定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記腫瘍に関連する少なくとも1つの標準的なパラメータを測定するステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
DETERMINANTのレベルが、電気泳動または免疫化学的手法によって測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記免疫化学的検出が、ラジオイムノアッセイ、免疫蛍光アッセイ、または酵素結合免疫吸着アッセイによって行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記被験体が、原発性腫瘍、再発性腫瘍、または転移性腫瘍を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプルが腫瘍生検標本である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記生検標本が、コア生検標本、切除組織生検標本、または切開組織生検標本である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
5個以上のDETERMINANTの発現レベルを測定する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
所定レベルの予測精度を用いて、被験体における転移性腫瘍を発症するリスクを評価するための方法であって、
a.前記被験体から得たサンプル中の、DETERMINANT1〜25、41、61、62、63、66、74、96、99、103、126、135、137、138、177、190、210、212、217、218、227、239、261、および271からなる群から選択された2個以上のDETERMINANTのレベルを測定するステップと、
b.前記2個以上のDETERMINANTのレベルを基準値と比較するステップと
を含む方法。
【請求項11】
前記基準値が指標値である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
所定レベルの予測精度を用いて、被験体における腫瘍の進行を評価するための方法であって、
a.第1の期間で、前記被験体から得た第1のサンプル中の、DETERMINANT1〜25、41、61、62、63、66、74、96、99、103、126、135、137、138、177、190、210、212、217、218、227、239、261、および271からなる群から選択された2個以上のDETERMINANTのレベルを検出するステップと、
b.第2の期間で、前記被験体から得た第2のサンプル中の2個以上のDETERMINANTのレベルを検出するステップと、
c.ステップ(a)で検出された前記2個以上のDETERMINANTのレベルを、ステップ(b)で検出された量または基準値と比較するステップと
を含む方法。
【請求項13】
前記第1のサンプルが、前記腫瘍の治療前に前記被験体から採取される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2のサンプルが、前記腫瘍の治療後に前記被験体から採取される、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
所定レベルの予測精度を用いて、転移性腫瘍の治療の有効性をモニタするための方法であって、
a.第1の期間で、被験体から得た第1のサンプル中の、DETERMINANT1〜25、41、61、62、63、66、74、96、99、103、126、135、137、138、177、190、210、212、217、218、227、239、261、および271からなる群から選択された2個以上のDETERMINANTのレベルを検出するステップと、
b.第2の期間で、前記被験体から得た第2のサンプル中の、2個以上のDETERMINANTのレベルを検出するステップと、
c.ステップ(a)で検出された前記2個以上のDETERMINANTのレベルを、ステップ(b)で検出された量または基準値と比較するステップであって、治療の有効性が、前記被験体から得た2個以上のDETERMINANTのレベルの変化によってモニタされるステップと
を含む方法。
【請求項16】
前記被験体が、前記転移性腫瘍の治療を事前に受けている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のサンプルが、前記転移性腫瘍の治療前に前記被験体から採取される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第2のサンプルが、前記転移性腫瘍の治療後に前記被験体から採取される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
所定レベルの予測精度を用いて、腫瘍であると診断された被験体に関する治療レジメンを選択するための方法であって、
a.第1の期間で、前記被験体から得た第1のサンプル中の、DETERMINANT1〜25、41、61、62、63、66、74、96、99、103、126、135、137、138、177、190、210、212、217、218、227、239、261、および271からなる群から選択された2個以上のDETERMINANTの有効量のレベルを検出するステップと、
b.任意選択で第2の期間で、前記被験体から得た第2のサンプル中の2個以上のDETERMINANTの有効量のレベルを検出するステップと、
c.ステップ(a)で検出された前記2個以上のDETERMINANTのレベルを、基準値または任意選択でステップ(b)で検出された量と比較するステップと
を含む方法。
【請求項20】
前記被験体が、前記腫瘍の治療を事前に受けている、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1のサンプルを、前記腫瘍を治療する前に前記被験体から採取する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記第2のサンプルを、前記腫瘍を治療した後に前記被験体から採取する、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
DETERMINANT1〜25、41、61、62、63、66、74、96、99、103、126、135、137、138、177、190、210、212、217、218、227、239、261、および271からなる群から選択された2個以上のマーカーの有効量の、マーカーレベルのパターンを含む、転移性腫瘍基準発現プロファイル。
【請求項24】
請求項20に記載のプロファイルを作成するのに十分な、DETERMINANT1〜25、41、61、62、63、66、74、96、99、103、126、135、137、138、177、190、210、212、217、218、227、239、261、および271からなる群から選択された対応するDETERMINANTを検出する複数のDETERMINANT検出試薬を含むキット。
【請求項25】
前記検出試薬が、1つもしくは複数の抗体またはその断片を含む、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
前記検出試薬が1種または複数のオリゴヌクレオチドを含む、請求項24に記載のキット。
【請求項27】
前記検出試薬が1種または複数のアプタマーを含む、請求項24に記載のキット。
【請求項28】
請求項23に記載の1つまたは複数の転移性腫瘍基準発現プロファイルと、任意選択で追加の試験結果および被験体情報とを含有する機械可読媒体。
【請求項29】
生理学的または生化学的な経路に関連した転移を示す1個または複数のDETERMINANTを含む、DETERMINANTパネル。
【請求項30】
前記生理学的または生化学的な経路が、細胞移動、新脈管形成、細胞外マトリックス分解、またはアノイキスを含む、請求項26に記載のパネル。
【請求項31】
腫瘍の進行を示す1個または複数のDETERMINANTを含む、DETERMINANTパネル。
【請求項32】
疾患の予後を示す生物マーカーを同定する方法であって、
a)対照と比較して前記疾患において示差的に発現する1つまたは複数の遺伝子を同定して、遺伝子標的リストを作成するステップと、
b)前記疾患の進行の機能的局面に関連した前記標的リストの1つまたは複数の遺伝子を同定するステップと
を含み、それによって前記疾患の予後を示す生物マーカーを同定する方法。
【請求項33】
進化的に保存された変化を含む、前記遺伝子標的リストの1つまたは複数の遺伝子を同定して、第2の遺伝子標的リストを作成するステップ
をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記疾患が癌である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記癌が転移性癌である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記機能的局面が、細胞移動、新脈管形成、細胞外マトリックス分解、またはアノイキスである、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
DETERMINANTの活性または発現を調節する化合物を同定する方法であって、
(a)前記DETERMINANTを発現する細胞を提供するステップと、
(b)前記細胞を、候補化合物を含む組成物と接触させるステップと、
(c)物質が前記DETERMINANTの発現または活性を変化させるか否かを決定するステップと
を含み、それにより、前記化合物の存在下で観察された前記変化が、前記細胞を、前記化合物を含まない組成物と接触させたときに観察されない場合、前記同定された化合物は、前記DETERMINANTの活性または発現を調節する方法。
【請求項38】
前記細胞を、インビボ、エキソビボ、またはインビトロで接触させる、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
被験体の癌を治療する方法であって、DETERMINANTの活性または発現を調節する化合物を前記被験体に投与するステップを含む方法。
【請求項40】
被験体の癌を治療する方法であって、DETERMINANTにより調節される化合物の活性または発現を調節する薬剤を前記被験体に投与するステップを含む方法。
【請求項41】
前記化合物がTGFβまたはCXCR4である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記薬剤がTGFβ阻害剤またはCXCR4阻害剤である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
腫瘍を有する患者を治療する方法であって、
DETERMINANT1〜360の2個以上が、前記腫瘍から得たサンプルにおいて測定して臨床的に有意な形で変化する場合に、患者が腫瘍を有していると特定するステップと、
腫瘍転移を予防または低減する治療レジメンで前記患者を治療するステップと
を含む方法。
【請求項44】
アジュバント治療を必要とする腫瘍患者を選択する方法であって、
DETERMINANT1〜360の2個以上を測定することにより、前記患者における転移のリスクを評価するステップであって、前記患者から得た腫瘍サンプル中の前記2個以上のDETERMINANTの臨床的に有意な変化は、前記患者がアジュバント治療を必要としていることを示すステップ
を含む方法。
【請求項45】
腫瘍患者に治療決定を知らせる方法であって、
前記患者から得た腫瘍サンプル中の、DETERMINANT1〜360の2個以上に関する情報を得るステップと、
前記2個以上のDETERMINANTが臨床的に有意な様式で変化する場合に、前記患者における腫瘍転移を予防または低減する治療レジメンを選択するステップと
を含む方法。

【図16】
image rotate

【図1−1】
image rotate

【図1−2】
image rotate

【図2−1】
image rotate

【図2−2】
image rotate

【図3−1】
image rotate

【図3−2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11−1】
image rotate

【図11−2】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13−1】
image rotate

【図13−2】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15−1】
image rotate

【図15−2】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公表番号】特表2011−526693(P2011−526693A)
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516713(P2011−516713)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/048862
【国際公開番号】WO2009/158620
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(399052796)ディナ ファーバー キャンサー インスティチュート,インコーポレイテッド (36)
【Fターム(参考)】