説明

転造ダイス

【課題】窒化処理により転造ダイスの転造成形面を硬化させて耐摩耗性を向上させる場合に、化合物層や靱性の低下に起因するチッピング、欠損の発生を抑制して耐久性を一層向上させる。
【解決手段】窒化拡散層16の表面に形成される化合物層の深さが1μm以下とされているため、硬くて脆い化合物層の影響をあまり受けなくなるとともに、実用窒化層深さt1が40μm以下で比較的浅いため内部の靱性が良好に維持され、それ等の相乗効果で高い抗折力が得られるようになる。また、実用窒化層深さt1が5μm以上で表面硬さが1300HV以上または表面硬化量が400HV以上であるため、上記抗折力の向上と相まって、転造丸ダイス10の早期のチッピングや欠損の発生を抑制しつつ優れた耐摩耗性が得られるようになり、耐久性が大幅に向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転造ダイスに係り、特に、転造成形面のチッピングや欠損を抑制しつつ表面硬さを高くして優れた耐摩耗性や耐久性が得られるようする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被転造部材の表面に食い込んで転造加工を行う転造成形面の表層部に窒化拡散層が設けられている転造ダイスが、ねじや歯車、スプラインなどの転造加工に広く用いられている。このような転造ダイスは、一般にJISに規定のSKD(合金工具鋼)やSKH(高速度工具鋼)を工具基材として用いて、塩浴窒化処理やガス窒化処理により表層部に窒化拡散層が設けられている。また、特許文献1には、イオン窒化処理により窒化拡散層を設けることが提案されている。
【特許文献1】特開2002−192282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の転造ダイスにおいては、窒化拡散層の表面に窒化物等の硬くて脆い化合物層が形成されるため、表面硬さは高くなるもののチッピングや欠損が発生し易くなり、期待通りの耐摩耗性および耐久性の向上効果が得られないという問題があった。また、特に塩浴窒化処理やガス窒化処理では、所定の表面硬さを得ようとすると、窒化拡散層が深くなって内部まで硬度が高くなり、靱性が低下して脆くなるため、この点でも欠損が発生し易くなる。
【0004】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、窒化処理により転造ダイスの転造成形面を硬化させて耐摩耗性を向上させる場合に、化合物層や靱性の低下に起因するチッピング、欠損の発生を抑制して耐久性を一層向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために、第1発明は、被転造部材の表面に食い込んで転造加工を行う転造成形面の表層部に窒化拡散層が設けられている転造ダイスにおいて、前記窒化拡散層は、表面に形成される化合物層深さが1μm以下で、実用窒化層深さが5〜40μmの範囲内で、且つ、表面硬さが1300HV以上または表面硬化量が400HV以上となるように、イオン窒化処理によって形成されていることを特徴とする。
【0006】
なお、化合物層深さおよび実用窒化層深さは、JISのG 0562(1993)の「鉄鋼の窒化層深さ測定方法」に規定されているもので、化合物層深さは、窒化物、炭化物、炭窒化物などを主体とする層の表面からの深さであり、実用窒化層深さは、窒化層の表面から、生地のビッカース硬さ値又はヌーブ硬さ値より50高い硬さの点に至るまでの距離である。
また、表面硬化量は、表面硬さと生地のビッカース硬さ値又はヌーブ硬さ値との差を意味している。
【0007】
第2発明は、第1発明の転造ダイスにおいて、工具基材の表面に、他の改質処理を行うことなく前記イオン窒化処理が施されて前記窒化拡散層が設けられていることを特徴とする。
【0008】
第3発明は、第1発明または第2発明の転造ダイスにおいて、前記窒化拡散層の上に、他の改質処理を行うことなく酸化処理が施されて膜厚さが1〜5μmの酸化被膜が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
すなわち、イオン窒化処理によって窒化拡散層を形成する場合、例えば雰囲気ガス(窒素ガスと水素ガスとの混合割合や圧力など)や温度、処理時間等の処理条件によって化合物層深さや実用窒化層深さをコントロールすることが可能で、それ等の化合物層深さや実用窒化層深さを種々変更して抗折力および損耗量との関係を調べたところ、化合物層深さが1μm以下で且つ実用窒化層深さが5〜40μmの範囲内の場合に、高い抗折力が得られるとともに損耗量が少なくて優れた耐摩耗性が得られることを見い出したのである。これは、化合物層深さが1μm以下であると、硬くて脆い化合物層の影響をあまり受けなくなるとともに、実用窒化層深さが40μm以下で比較的浅いと靱性が良好に維持され、それ等の相乗効果で高い抗折力すなわち欠損強度が得られるようになるものと考えられる。また、転造加工において優れた耐摩耗性が得られる表面硬さ或いは表面硬化量を得るためには、実用窒化層深さを5μm以上とする必要があり、特に表面硬さが1300HV以上或いは表面硬化量が400HV以上となるように上記処理条件が定められることにより、転造ダイスの早期のチッピングや欠損の発生を抑制しつつ優れた耐摩耗性が得られるようになって、耐久性を大幅に向上させることができる。
【0010】
第3発明では、窒化拡散層の上に酸化処理によって膜厚さが1〜5μmの酸化被膜が設けられているため、この酸化被膜によって潤滑油剤の保持性能が向上し、転造ダイスに必要な潤滑性能や耐焼付き性能が向上して一層優れた耐摩耗性、耐久性が得られるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、丸ダイスや平ダイス、プラネタリ式ダイスなど、種々の転造ダイスに適用される。また、ねじ転造ダイスが広く知られているが、歯車やスプライン等のねじ以外の種々の部品を転造加工する転造ダイスにも適用され得る。転造ダイスの材質(工具基材)は、合金工具鋼や高速度工具鋼などの工具鋼が好適に用いられる。
【0012】
イオン窒化処理は、例えば窒素ガス(N2 )と水素ガス(H2 )との混合ガスを用いて行われるが、アンモニア(NH3 )を用いてイオン窒化処理を行うことも可能である。酸化被膜を形成するための酸化処理については、例えば水蒸気酸化処理が好適に用いられるが、他の酸化処理方法を採用することもできる。
【0013】
本発明の実施に際しては、ショットピーニング等の他の改質処理を行うことなく、工具基材の表面にイオン窒化処理を施して窒化拡散層を設けるとともに、その窒化拡散層の上に酸化処理によって酸化被膜を設けることが望ましい。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例であるねじ転造用の転造丸ダイス10を示す図で、(a) は斜視図、(b) は外周部の断面模式図である。この転造丸ダイス10は1対1組で使用されるもので、工具基材12はJISに規定のSKD(合金工具鋼)にて構成されているとともに、外周部の転造成形面14にはねじ溝に対応する断面形状の多数の凸条が設けられており、その凸条が円柱形状の被転造部材(ねじ素材)の表面に食い込むことによってねじを転造加工する。
【0015】
上記転造成形面14には、ショットピーニング等の他の改質処理を行うことなくイオン窒化処理が施され、転造成形面14の表層部に窒素が拡散した窒化拡散層16が設けられる。イオン窒化処理は、真空炉内でグロー放電を起こさせ、窒素と水素の混合ガスの雰囲気中において、工具基材12に窒素を拡散侵入させる処理で、本実施例では実用窒化層深さt1が5〜40μmの範囲内で、表面硬さが1300HV以上または表面硬化量が400HV以上となる窒化拡散層16が得られるように、ガス圧やガスの混合割合、窒化処理の処理時間等の処理条件が定められている。このように実用窒化層深さt1が40μm以下で比較的浅いため、内部の靱性が良好に維持されてチッピングや欠損が抑制されるとともに、実用窒化層深さt1が5μm以上で表面硬さが1300HV以上または表面硬化量が400HV以上とされることにより、優れた耐摩耗性が得られる。
【0016】
上記イオン窒化処理ではまた、窒素と工具基材12の鉄等が反応して表面に窒化物等の化合物層が形成されるが、本実施例では、その化合物層の深さ(化合物層深さ)が1μm以下になるように処理条件が設定されている。この化合物層は硬くて脆いため、チッピングや欠損の原因になるが、本実施例では化合物層深さが1μm以下とされるため、その化合物層に起因するチッピングや欠損が抑制される。化合物層深さは、イオン窒化処理の処理時間に依存し、その処理時間は基本的には実用窒化層深さt1に応じて設定されるが、例えばイオン窒化処理を行う際の窒素ガス(N2 )と水素ガス(H2 )との混合割合を変更することによって化合物層深さを調整することができる。
【0017】
図2の(a) 〜(c) は、化合物層深さが異なる断面の電子顕微鏡写真で、(a) は化合物層深さが0μm、(b) は化合物層深さが約1μm、(c) は化合物層深さが約5μmの場合で、白層と呼ばれる白い部分が化合物層であり、他の部分と区別してその深さを測定することができる。
【0018】
また、上記イオン窒化処理が施されて窒化拡散層16が設けられた転造成形面14には、更に、ショットピーニング等の他の改質処理を行うことなく水蒸気酸化処理が施され、表面に酸化被膜18が設けられる。水蒸気酸化処理は、500℃前後の水蒸気雰囲気中で転造丸ダイス10を加熱し、転造成形面14の表面に酸化被膜18を形成する処理で、本実施例では膜厚さが1〜5μmの酸化被膜18が設けられるように加熱温度や処理時間等の処理条件が定められる。この酸化被膜18は、酸素が工具基材12の鉄と反応して形成される多孔質の四三酸化鉄で、その孔内に潤滑油剤が良好に保持されて優れた潤滑性能が得られる。
【0019】
このような本実施例の転造丸ダイス10によれば、窒化拡散層16の表面に形成される化合物層の深さが1μm以下であるため、硬くて脆い化合物層の影響をあまり受けなくなるとともに、実用窒化層深さt1が40μm以下で比較的浅いため内部の靱性が良好に維持され、それ等の相乗効果で高い抗折力が得られるようになる。また、実用窒化層深さt1が5μm以上で表面硬さが1300HV以上または表面硬化量が400HV以上であるため、上記抗折力の向上と相まって、転造ダイス10の早期のチッピングや欠損の発生を抑制しつつ優れた耐摩耗性が得られるようになり、耐久性が大幅に向上する。
【0020】
また、本実施例では窒化拡散層16の上に水蒸気酸化処理によって膜厚さが1〜5μmの酸化被膜18が設けられているため、この酸化被膜18によって潤滑油剤の保持性能が向上し、潤滑性能や耐焼付き性能が向上して一層優れた耐摩耗性、耐久性が得られるようになる。
【0021】
因みに、図3は、ねじ転造用のダイプレート(転造平ダイス)について、図4の(a) に示す手順に従って転造成形面14に表面処理(イオン窒化+水蒸気酸化処理)を行って得られた本発明品と、図4の(b) に示す手順に従って表面処理(塩浴窒化+塩浴酸化処理)を行った従来品とを用意し、(a) に示す試験条件でねじの転造加工を行って耐久性を調べた結果を説明する図である。被転造材SCr430、SCM440は、それぞれJISに規定のクロム鋼、クロムモリブデン鋼である。
【0022】
ここで、上記本発明品は、図4の(a) のステップS1のイオン窒化処理において、500℃で1時間処理を行うことにより実用窒化層深さt1≒30μm、表面硬さ(HV0.3)が約1357HV(表面硬化量で約425HV)の窒化拡散層16が形成される。図5の「○」印は、上記イオン窒化処理を行って形成された窒化拡散層16の表面からの深さ寸法と硬さとの関係を調べた結果で、図4の(b) のステップR1に示す塩浴窒化処理で窒化拡散層を形成した場合(「□」印)と比較して示す図であり、イオン窒化処理では実用窒化層深さt1が約30μmと浅くても表面硬さは約1357HVに達し、内部の靱性を維持しつつ表面を高硬度に硬化させることができる。これに対し、塩浴窒化処理では、表面硬さが1300HV以下でも実用窒化層深さt1は約77μmに達し、内部まで硬化が進んで靱性が低下し、転造加工時に欠損等が発生し易くなる。なお、この図5において、実用窒化層深さt1を求める基準硬さ(生地のビッカース硬さ値+50)がイオン窒化処理の場合より塩浴窒化処理の方が高いのは、工具基材12の個体差や測定のばらつきなどによる。
【0023】
また、化合物層深さは、イオン窒化処理を行う際の窒素ガス(N2 )と水素ガス(H2 )との混合割合を変更することによって調整され、本実施例ではN2 :H2 ≒1:1とされて化合物層深さが約0.3μmとされている。また、図4の(a) のステップS2の水蒸気酸化処理では、490℃で60分間処理が行われることにより、前記膜厚さt2が約2μmの酸化被膜18が形成される。
【0024】
なお、従来品は、図4の(b) に示されるように、塩浴窒化処理によって窒化拡散層16が形成されるとともに、塩浴酸化処理によって酸化被膜18が設けられている。
【0025】
そして、上記の本発明品および従来品を用いて、図3の(a) に示す試験条件に従って転造加工を行い、工具の摩耗によりおねじの寸法が大きくなって、通りねじリングゲージ(GR)の通り抜けが不可となるゲージアウトとなるか、または工具欠損までの加工穴数(耐久寿命に相当)を調べたところ、図3の(b) に示す結果が得られた。この図3の(b) の試験結果から明らかなように、本発明品によれば、被転造材SCr430(40HRC)に対しては従来品に比較して約2倍の耐久寿命が得られ、被転造材SCM440(26HRC)に対しては従来品に比較して約1.6倍の耐久寿命が得られるようになり、何れの場合も耐久性が大幅に向上することが分かる。
【0026】
また、図6の(a) は、イオン窒化処理を行う際の窒素ガス(N2 )と水素ガス(H2 )との混合割合を変更するなどして化合物層深さが異なる幾つかの試験片を用意し、各試験片についてJIS R1601に規定されている曲げ強さ試験方法に従って抗折力を測定して、その抗折力と化合物層深さとの関係を調べた結果を示す図で、化合物層深さが1μmまでは抗折力が約3GPaであるのに対し、1μmを超えると急に低下傾向を示すようになる。試験片は5×4×10(mm)の直方体形状のSKD(合金工具鋼)で、全体に窒化処理層が設けられており、窒化拡散層の表面硬さは1358〜1369HV、実用窒化層深さは約30μm、酸化被膜の膜厚さは約2μmである。
【0027】
図6の(b) は、イオン窒化処理を行う際の処理時間を変更するなどして実用窒化層深さが異なる幾つかの試験片を用意し、各試験片についてそれぞれ上記と同様にして抗折力を測定して、その抗折力と実用窒化層深さとの関係を調べた結果を示す図で、実用窒化層深さが40μmまでは抗折力が約3GPaであるのに対し、40μmを超えると急に低下傾向を示すようになる。上記各試験片の窒化拡散層の表面硬さは1358〜1369HVで、化合物層深さは約0.3μm、酸化被膜の膜厚さは約2μmである。そして、これ等の図6の(a) 、(b) の結果から、化合物層深さが1μm以下で且つ実用窒化層深さが40μm以下の場合に、3GPa程度以上の高い抗折力が得られることが分かる。
【0028】
図7の(a) は、前記図3の耐久性試験で用いたものと同じねじ転造平ダイスについて、イオン窒化処理を行う際の窒素ガス(N2 )と水素ガス(H2 )との混合割合を変更するなどして化合物層深さが異なる幾つかの試験品を用意し、各試験品を用いて被転造材SCM440(26HRC)に対して図3(a) と同じ試験条件で10000個転造加工を行った後の転造成形面14の凸条の山頂の損耗量(高さの減少量)を測定して、その損耗量と化合物層深さとの関係を調べた結果を示す図で、化合物層深さが1μm以下であれば損耗量は約8μm以下であるのに対し、化合物層深さが1μmを超えるとチッピングを起こし易くなって損耗量は増大傾向を示すようになる。上記各試験品の窒化拡散層16の表面硬さは1358〜1369HVで、実用窒化層深さt1は約30μm、酸化被膜18の膜厚さt2は約2μmである。
【0029】
図7の(b) は、同じくねじ転造平ダイスについて、イオン窒化処理の処理時間を変更するなどして実用窒化層深さt1が異なる幾つかの試験品を用意し、各試験品についてそれぞれ上記と同様にして損耗量を測定して、その損耗量と実用窒化層深さt1との関係を調べた結果を示す図で、実用窒化層深さt1が5μm〜40μmの範囲内では損耗量が約12μm以下であるのに対し、その範囲を超えるとチッピングを起こし易くなって損耗量は急に増加傾向を示すようになる。すなわち、実用窒化層深さt1が5μmよりも浅いと十分な表面硬さが得られなくて耐摩耗性が低下する一方、実用窒化層深さt1が40μmよりも深くなると靱性が低下して脆くなり、欠損等が生じ易くなって耐摩耗性が低下する。上記各試験品(実用窒化層深さt1が0μmのものを除く)の窒化拡散層16の表面硬さは1358〜1369HVで、化合物層深さは約0.3μm、酸化被膜18の膜厚さt2は約2μmである。そして、これ等の図7の(a) 、(b) の結果から、損耗量は実用窒化層深さt1の影響が大きく、実用窒化層深さt1が5〜40μmの範囲内であれば損耗量が約12μm以下になって、優れた耐摩耗性が得られることが分かる。
【0030】
上記図6および図7の結果から、化合物層深さが1μm以下で、且つ、実用窒化層深さt1が5〜40μmの範囲内となるように窒化拡散層16を設ければ、チッピングや欠損の発生が抑制されて優れた耐摩耗性が得られるようになる。
【0031】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施例である転造丸ダイスを示す図で、(a) は斜視図、(b) は表層部の断面説明図である。
【図2】窒化拡散層の表面に形成される化合物層深さが異なる3種類の電子顕微鏡写真を比較して示す図である。
【図3】本発明品および従来品を用意し、(a) に示す試験条件でねじの転造加工を行って耐久性試験を行った結果を説明する図である。
【図4】図3の耐久性試験で用いた本発明品および従来品の表面改質処理を比較して説明するフローチャートである。
【図5】図4のS1のイオン窒化処理、R1の塩浴窒化処理を施した状態の硬さ推移曲線を比較して示す図である。
【図6】抗折力と化合物層深さ、実用窒化層深さとの関係を調べた結果の一例を示す図である。
【図7】損耗量と化合物層深さ、実用窒化層深さとの関係を調べた結果の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
10:転造丸ダイス(転造ダイス) 12:工具基材 14:転造成形面 16:窒化拡散層 18:酸化被膜 t1:実用窒化層深さ t2:酸化被膜の膜厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被転造部材の表面に食い込んで転造加工を行う転造成形面の表層部に窒化拡散層が設けられている転造ダイスにおいて、
前記窒化拡散層は、表面に形成される化合物層深さが1μm以下で、実用窒化層深さが5〜40μmの範囲内で、且つ、表面硬さが1300HV以上または表面硬化量が400HV以上となるように、イオン窒化処理によって形成されている
ことを特徴とする転造ダイス。
【請求項2】
工具基材の表面に、他の改質処理を行うことなく前記イオン窒化処理が施されて前記窒化拡散層が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の転造ダイス。
【請求項3】
前記窒化拡散層の上に、他の改質処理を行うことなく酸化処理が施されて膜厚さが1〜5μmの酸化被膜が設けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の転造ダイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−5654(P2010−5654A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167361(P2008−167361)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000103367)オーエスジー株式会社 (180)
【Fターム(参考)】