説明

軸受用鋼及びそれを用いた軸受部品

【課題】合金成分の含有量を低減すると共に製造工程における熱処理工程の短縮化を可能とし、生産性に優れ、低コストで、かつ要求される特性を有した軸受用鋼及びそれを用いた部品を提供する。
【解決手段】少なくとも油焼入れ又は水焼入れ及び焼き戻しを施して軸受部品を製造するための軸受用鋼である。質量%でC:0.50%〜1.00%、Si:0.50%超〜1.50%、Mn:0.40%〜1.00%、Cr:0.01〜0.70%、B:0.0005〜0.0050%、Al:0.10超〜0.30%、N:150ppm以下、O:15ppm以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合金成分を低減することにより、生産性の向上及び低コスト化を実現すると共に省資源化に貢献することができる軸受用鋼及びそれを用いた軸受部品に関する。
【背景技術】
【0002】
軸受部品には、JIS G 4805にて規定されたSUJ2に代表される高炭素クロム軸受鋼が用いられることが多い。該高炭素クロム軸受鋼の特性は、C及びCrからなる炭化物の存在が大きい。そのため、上記高炭素クロム軸受鋼においては、軸受部品として必要な特性を得るために鋼材製造時のソーキングによる巨炭の生成回避及び部品製造時の球状化焼鈍による炭化物の球状化等の熱処理を行う必要がある。しかし、昨今の省エネルギー化、省資源化及び低コスト化の強い要望により、生産効率の低下及び製造費の増大の要因の1つである熱処理工程の短縮と、高価なCrの含有量低減が課題となっている。
熱処理工程を短縮する方法としては、球状化焼鈍の処理時間を短縮する方法(特許文献1参照)が提案されている。
また、Crの含有量を低減する方法としては、Bを添加し焼入性を確保する方法(特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−54739号公報
【特許文献2】特開2009−242918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した方法には以下の問題がある。
特許文献1の方法においては、球状化焼鈍の処理時間を短縮又は省略するにあたり、必要な焼入れ性を得るためにCr及びMnの含有量を多くしてある。したがって、製造工程の短縮化は可能であるが、低合金化による省資源化及びコスト低減は困難である。
また、特許文献2の方法においては、C及びCrの含有量を抑えると共にSi及びMoを所定の量、添加することにより転動疲労寿命を大幅に向上させることができる。さらに、焼入性を確保するために添加したBが効果的に作用するようにTiを添加している。そのため、TiがNと結合しTiNを形成することにより、転動疲労寿命が低下するおそれがあり、その場合には必要な特性を確保することができない。また、特許文献2に示す成分構成は、高周波焼入れを行うことを前提としており、油又は水焼入れを用いて製造を行う軸受部品には適用できない。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、合金成分の含有量を低減すると共に製造工程における熱処理工程の短縮化を可能とし、生産性に優れ、低コストで、かつ要求される特性を備えた軸受用鋼及びそれを用いた軸受部品を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、少なくとも油焼入れ又は水焼入れのいずれかと焼き戻しを施して軸受部品を製造するための軸受用鋼であって、
質量%でC:0.50%〜1.00%、Si:0.50%超〜1.50%、Mn:0.40%〜1.00%、Cr:0.01〜0.70%、B:0.0005〜0.0050%、Al:0.10超〜0.30%、N:150ppm以下、O:15ppm以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなることを特徴とする軸受用鋼にある(請求項1)。
【0007】
第2の発明は、少なくとも油焼入れ又は水焼入れのいずれかと焼き戻しを施して軸受部品を製造するための軸受用鋼であって、
質量%でC:0.50〜0.70%、Si:0.50超〜1.00%、Mn:0.40〜1.00%、Cr:0.01〜0.50%、B:0.0005〜0.0050%、Al:0.10超〜0.30%、N:150ppm以下、O:15ppm以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなることを特徴とする軸受用鋼にある(請求項2)。
【0008】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明の軸受用鋼を用い、少なくとも油焼入れ又は水焼入れのいずれかと焼き戻しを施して製造した軸受部品にある(請求項3)。
【発明の効果】
【0009】
本発明の軸受用鋼及びこれを用いた軸受部品は、生産性に優れると共に、コストを低減し、かつSUJ2相当の高炭素クロム軸受鋼と同等以上の特性が得られるように、鋼を構成する化学成分等の条件について鋭意検討を重ね、その条件を明確にしたものである。
【0010】
第1の発明の軸受用鋼においては、Crの含有量を低減することによる焼入れ性不足を、Bを含有することで改善し、高炭素クロム軸受鋼と同等の焼入れ性を確保してある。また、Bの焼入れ性向上効果を有効に活用するため、Nと結合させる元素として、Alを添加している。それにより、微細なAlNを析出させ転動疲労寿命への影響を低減させた。また、Oの含有量を低減することでAl23の析出量を低減させることにより転動疲労寿命を確保した。
【0011】
このように、上述の条件を満足することにより、Crの含有量を低減することが可能となる。また、Crの含有量低減に伴い、炭化物の生成量が減少するため、ソーキングの処理時間については、従来鋼(SUJ2)よりも短縮することができ、例えば、処理時間を2分の1以下に短縮できる場合もある。また、球状化焼鈍の処理時間についても、従来鋼(SUJ2)よりも短縮することができ、処理時間を2分の1以下に短縮することができる場合もある。それゆえ、低合金化、省資源化及び省エネルギー化を可能とし、軸受用鋼のコスト低減及び製造効率の向上を図ることができる。
【0012】
第2の発明においては、第1の発明に対してC、Si及びCrの含有量を、C:0.50〜0.70%、Si:0.50超〜1.00%、Cr:0.01〜0.50%とし、それぞれの上限値を低減してある。
【0013】
そのため、C及びCrの最大含有量が低減し、炭化物の生成量を更に減少させることができる。それにより、ソーキングの処理時間については、従来鋼(SUJ2)よりも短縮することができ、例えば、処理時間を4分の1以下に短縮できる場合もある。また、球状化焼鈍処理については、省略することができる。この、球状化焼鈍の省略を実施するために、球状化焼鈍の省略による硬度の向上及び加工性(特に切削性)の悪化を防止すべく、Siの最大含有量を低減し、加工性を確保している。それゆえ、さらなる低合金化、省資源化及び省エネルギー化を可能とし、軸受用鋼のコスト低減及び製造効率の向上を図ることができる。
【0014】
第3の発明は、上述した第1の発明又は第2の発明に示す軸受用鋼からなる軸受部品である。
したがって、上記の優れた軸受鋼を用いること低コストで、かつ要求される特性を備えた軸受用部品を生産することができる。
【0015】
上述したごとく、本発明によれば、合金成分の含有量を低減すると共に製造工程における熱処理工程の短縮化を可能とし、生産性に優れ、低コストで、かつ要求される特性を備えた軸受用鋼及びそれを用いた部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1における、森式スラスト型転動疲労試験機を示す説明図。
【図2】実施例1における、転動疲労寿命試験結果の一例を示すグラフ図。
【図3】実施例1における、ジョミニー試験結果の一例を示すグラフ図
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の発明の化学成分は、質量%でC:0.50〜1.00%、Si:0.50超〜1.50%、Mn:0.40〜1.00%、Cr:0.01〜0.70%、B:0.0005〜0.0050%、Al:0.10超〜0.30%、N:150ppm以下、O:15ppm以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる。
【0018】
C:0.50〜1.00質量%
Cは、転動疲労寿命を得るのに必須の元素である。Cの含有によって、マルテンサイトを固溶強化し、焼入れ及び焼戻しを行った後の硬度を向上させることができ、転動疲労寿命を向上させることができる。Cの含有量が0.50質量%未満では上述した効果が得られにくい。また、Cを多量に添加すると、炭化物が粗大化し、部分的に強度が低下するおそれがあるためC含有量の上限を1.00質量%とする。
【0019】
Si:0.50超〜1.50質量%
Siは、脱酸効果を有すると共に、焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗性を向上する元素である。そのため、Siの含有により、焼戻し後の硬度を高めることができ、転動疲労寿命が向上する。Siの含有量が0.50質量%以下では上述した効果が得られにくい。また、Siを多量に添加すると加工性が低下するため、Si含有量の上限を1.50質量%とする。
【0020】
Mn:0.40〜1.00質量%
Mnは、焼入れ性を向上させると共に、脱酸及び脱硫元素であり、鋼の低酸素化に対して有効な元素である。Mnの含有量が0.40質量%未満では必要とする焼入れ性が得られにくい。また、Mnを多量に添加すると加工性が低下するため、Mn含有量の上限を1.00質量%とする。
【0021】
Cr:0.01〜0.70質量%
Crは、炭化物を安定化させ、焼入れ性を向上させる元素である。Crの含有量が0.01質量%未満では、添加による効果が得られにくい。また、Crを多量に添加するとコストの上昇を招くため、上限は0.70質量%とする。
尚、本発明に示す軸受用鋼は、SUJ2相当の高炭素クロム軸受鋼に比べ、Crの含有量を低減してある。それにより、コストを低減することができる。
【0022】
B:0.0005〜0.0050質量%
Bは、上記軸受用鋼中に固溶することで、焼入れ性を著しく向上させる元素である。Bの含有量が0.0005質量%未満では、添加による効果が得られにくい。また、Bの含有量が、0.0050質量%を超えると焼入れ性の向上効果が飽和してしまうため、その上限を0.0050質量%とする。
【0023】
Al:0.1超〜0.3質量%
Alは、脱酸効果を有すると共に、上記軸受用鋼中のNと結合しやすいため、BとNが結合することを抑制して、Bの焼入れ性向上効果の低減を防止する。AlとNが結合して形成されるAlNは、微細であり転動疲労寿命へ悪影響を及ぼしにくい。Alの含有量が、0.1%以下では上述した効果が表れにくい。また、Alの含有量が0.3%を超えるとAlNが粗大化し、転動疲労寿命を低下させてしまうため、その上限を0.3質量%とする。
【0024】
N:150質量ppm以下
Nは、上述したごとく、Alと結合し結晶粒が微細なAlNを形成する。Nの含有量が多量となると、AlNが粗大化し、転動疲労寿命が低下する。そのため、Nの含有量の上限は、150質量ppm以下とする。
【0025】
O:15質量ppm以下
Oは、Alと結びついてAl23となる。Oの含有量が多量となると、Al23が粗大化し、転動疲労寿命が低下する。そのため、Oの含有量の上限は、15質量ppmとする。
【0026】
第2の発明の化学成分は、質量%でC:0.50〜0.70%、Si:0.50超〜1.00%、Mn:0.40〜1.00%、Cr:0.01〜0.50%、B:0.0005〜0.0050%、Al:0.10超〜0.30%、N:150ppm以下、O:15ppm以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる。
尚、C、Si及びCr以外の化学成分の含有量について、その決定理由は、上述した第1の発明の内容と同様である。
【0027】
C:0.50〜0.70質量%
上述したごとく、Cは、転動疲労寿命を得るのに必須の元素である。Cの含有によって、マルテンサイトを固溶強化し、焼入れ及び焼戻しを行った後の硬度を向上させることができ、転動疲労寿命を向上させることができる。Cの含有量が0.50質量%未満では上述した効果が得られにくい。また、第2の発明においては、炭化物の生成量を低減して、球状化焼鈍処理を省略するために、Cの含有量の上限を低減して0.70質量%とする。
【0028】
Si:0.50超〜1.00質量%
上述したごとく、Siは、脱酸効果を有すると共に、焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗性を向上する元素である。そのため、Siの含有により、焼戻し後の硬度を高めることができ、転動疲労寿命が向上する。Siの含有量が0.50質量%以下では上述した効果が得られにくい。また、球状化焼鈍の省略による硬度の向上及び加工性(特に切削性)の悪化を防止すべく、Siの最大含有量を低減し、加工性を確保する必要がある。したがって、Siの含有量の上限を低減して1.00質量%とする。
【0029】
Cr:0.01〜0.50質量%
上述したごとく、Crは、炭化物を安定化させ、焼入れ性を向上させる元素である。Crの含有量が0.01質量%未満では、添加による効果が得られにくい。また、炭化物の生成量低減のため、Crの含有量の上限を低減して0.50質量%とする。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
本例は、本発明の実施例にかかる軸受用鋼及び軸受部品について説明する。
本例では、本発明の発明鋼として、表1の試料1〜試料4に示す組成の鋼を作製した。また、試料5は、従来鋼であるSUJ2を示し、試料6〜試料14は、比較鋼として同表に示す組成の鋼を作製した。
【0031】
【表1】

【0032】
試料1〜試料14は、鋳造により形成された鋳片における、巨炭の生成を回避するために雰囲気温度1250℃にてソーキングを行った。尚、ソーキング処理時間は、表1に示すごとく、試料1〜試料3、試料6〜試料11及び試料13は3hr、試料4は6hr、試料5は12hrとした。ソーキング処理後、鍛伸加工によって、φ45mmの丸棒を製造し、表1に示すごとく、焼きならし又は球状化焼鈍のいずれかの熱処理を行った後、焼入れ及び焼戻し処理を行い作製した。
【0033】
焼きならしは、850℃×30minで加熱保持後、空冷するという条件にて行った。また、球状化焼鈍については、以下の2つの条件のいずれかで行った。球状化焼鈍Aの条件は、通常の球状化焼鈍において用いられるものであり、780℃×6hrで加熱保持後、−15℃/hrで720℃まで冷却する。そして、720℃×6hrで加熱保持後、−15℃/hrで670℃まで冷却した後、空冷するという条件である。また、球状化焼鈍Bの条件は、780℃×3hr保持後、−15℃/hrで670℃まで冷却した後、空冷を行うという条件である。球状化焼鈍条件Bの加熱保持時間は、球状化焼鈍条件Aに対して1/4に短縮してある。また、焼入れは、840℃×30minで加熱保持後、80℃の油により冷却する条件で行い、焼戻しは、160℃×1hrで保持後、空冷するという条件で行った。
【0034】
表1に示すごとく、試料1〜試料3、試料6〜試料11及び試料13は、球状化焼鈍を省略し、上述した条件によって焼きならしを行った。また、試料5(SUJ2)は、球状化焼鈍Aの条件により球状化焼鈍を行った。また、試料4、試料12及び試料14は、加熱保持時間を短縮した条件である球状化焼鈍Bの条件により球状化焼鈍を行った。
【0035】
<転動疲労寿命>
転動疲労寿命の試験は、図1に示すごとく、直径Dがφ60mm、厚さtが10mmの円盤状の試験片Pを作製し、森式スラスト型転動疲労試験機10により行った。試験方法は、同図に示すごとく、荷重軸14により、荷重Fを付与して試験片Pの上面を球体13に押し当てつつ、回転軸11を回転させることにより、球体13を試験片Pの上面で転動させた。そして、試験片Pの上面に破損が生じた際の応力繰り返し数(回)を計測した。尚、本例においては、最大接触面圧を5.3GPaとし、回転速度を1500cpmとした。
【0036】
転動疲労寿命試験には、試料1〜試料14において、それぞれ試験片を10個作製し、試料が破損した応力繰り返し数(回)を計測した。そして、該応力繰り返し数(回)は、ワイブル分布に従うものとして、図2のグラフ上にプロットした。同図は転動疲労寿命試験の試験結果の一例を示す対数グラフであり、横軸を応力繰り返し数(回)として、縦軸を累積破損確率(%)とした。尚、実線X1は比較する試料Z(試料1〜試料14のいずれか)の試験結果を、実線Y1は試料5(SUJ2)の試験結果をそれぞれ示すものである。
【0037】
転動疲労寿命の評価は、SUJ2(試料5)との比較により行い、図2に示す実線Y1から求めたSUJ2の累積破損率10%における応力繰り返し数n(回)に対して、実線X1から求めた比較する試料Z(試料1〜試料14のいずれか)の累積破損率10%における応力繰り返し数n(回)が1倍以上であれば、寿命が確保されているものとした。
【0038】
転動疲労寿命試験の結果、表2に示すごとく、発明鋼である試料1〜試料4及び比較鋼である試料8〜試料11はSUJ2と同等以上の転動疲労強度を有していることが明らかとなった。
【0039】
(表2)

【0040】
<焼入れ性>
焼入れ性の試験は、JIS G0561規格に準拠してジョミニー試験により行った。図3には、ジョミニー試験結果の一例を示し、縦軸をロックウェル硬さ(HRC)として、横軸を表層からの距離(/16inch)とした。試料1〜試料14において、ジョミニー試験の結果より、ロックウェル硬さがHRC60となる表層からの距離を求めた。尚、実線X2は比較する試料Z(試料1〜試料14のいずれか)の試験結果を、実線Y2は試料5(SUJ2)の試験結果をそれぞれ示すものである。
【0041】
焼入れ性の評価は、SUJ2(試料5)との比較により行い、実線Y2から求めたSUJ2のロックウェル硬さがHRC60となる表層からの距離Lに対して、実線X2から求めた比較する試料Z(試料1〜試料14のいずれか)のロックウェル硬さがHRC60となる表層からの距離Lが1倍以上であれば要求される焼入れ性を有しているものとした。
【0042】
上述した焼入れ性の評価の結果、表2に示すごとく、発明鋼である試料1〜試料4及び比較鋼である試料6、試料7及び試料12〜試料14は、SUJ2と同等以上の焼入れ性を有していることが明らかとなった。
【0043】
<硬さ>
硬さ試験は、ロックウェル硬さ試験により行った。上述したごとく作製した試料1〜試料14の試験片において、その表面のロックウェル硬さを測定した。
硬さの評価は、試験片表面におけるロックウェル硬さがHRC60以上であれば要求される硬さを有しているものとした。
【0044】
上述した硬さ評価の結果、表2に示すごとく、発明鋼である試料1〜試料4及び比較鋼である試料7〜試料11及び試料13は、SUJ2と同等の硬度を有していることが明らかとなった。
【0045】
上述したごとく、発明鋼である試料1〜試料4は、従来鋼であるSUJ2に対してC及びCrの含有量を低減している。また、SUJ2に対して、ソーキングの処理時間を短縮すると共に、球状化焼鈍の処理時間も短縮又は省略してある。それに加え、軸受用鋼に要求される特性である転動疲労寿命、焼入れ性及び硬さは、SUJ2と同等以上の性能を有している。
このように、本発明によれば、合金成分の含有量を低減すると共に製造工程における熱処理工程の短縮化を可能とし、生産性に優れ、低コストで、かつ要求される特性を備えた軸受用鋼及びそれを用いた軸受部品を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも油焼入れ又は水焼入れ及び焼き戻しを施して軸受部品を製造するための軸受用鋼であって、
質量%でC:0.50%〜1.00%、Si:0.50%超〜1.50%、Mn:0.40%〜1.00%、Cr:0.01〜0.70%、B:0.0005〜0.0050%、Al:0.10超〜0.30%、N:150ppm以下、O:15ppm以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなることを特徴とする軸受用鋼。
【請求項2】
少なくとも油焼入れ又は水焼入れ及び焼き戻しを施して軸受部品を製造するための軸受用鋼であって、
質量%でC:0.50%〜0.70%、Si:0.50%超〜1.00%、Mn:0.40%〜1.00%、Cr:0.01〜0.50%、B:0.0005〜0.0050%、Al:0.10超〜0.30%、N:150ppm以下、O:15ppm以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなることを特徴とする軸受用鋼。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の軸受用鋼を用い少なくとも油焼入れ又は水焼入れ及び焼き戻しを施して製造した軸受部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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