説明

軸受装置、複列軸受装置及びその回転シャフト位置調整方法

【課題】回転シャフトの回転軸の位置及び傾きを微調整することができる軸受装置、複列軸受装置及びその回転シャフト位置調整方法を提供すること。
【解決手段】軸受装置101、102は、複数の転動体128と、複数の転動体128と一体の内輪126であってその内側に回転シャフトが挿通された内輪126と、内輪126を複数の転動体128を介して支承する外輪122であって内輪126を外輪122の中心軸に対して傾動可能に支承する外輪122を有する自動調心軸受120と、自動調心軸受120の一端部121aに、外輪122の側部123aを曲面142によって摺動可能に保持するリング部材140と、自動調心軸受120の他端部121bに、外輪122の側部123aの摺動量を調整する摺動調整機構160とを備える。複列軸受装置100は、軸受装置101、102を回転シャフト50の長手方向に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受装置、複列軸受装置及びその回転シャフト位置調整方法に関し、回転シャフトの回転軸の中心位置を調整可能な軸受装置、それを複数備えた複列軸受装置及びその回転シャフト位置調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークなどにネジ孔を形成する際に、回転シャフトを有する工具回転タイプの工作機側の回転中心に対しワーク側の孔の中心位置に誤差が生じる場合や、ワーク回転タイプの工作機で回転中心に対し孔の中心位置に誤差が生じる場合があった。
【0003】
そこで、ワーク回転タイプの工作機で回転中心に対し孔の中心位置に誤差が生じた場合であってもそのまま加工可能にした自動調芯工具ホルダーが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−44031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の自動調芯工具ホルダーでは、相手側との微小な軸ずれを自動調芯できる(吸収できる)が、予め回転シャフトの回転軸の位置を所定の位置に微調整することはできず、また回転シャフトの回転軸を傾けることは出来ない。
【0006】
本発明は、回転シャフトの回転軸の位置及び傾きを微調整することができる軸受装置、複列軸受装置及びその回転シャフト位置調整方法を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、回転シャフトの回転軸を平行に保持しつつ、その回転シャフトの回転軸の位置を微調整することができる複列軸受装置の回転シャフト位置調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)複数の転動体(例えば、後述の複数の転動体128、128a)と、前記複数の転動体と一体の内輪であってその内側に回転シャフトが挿通された内輪(例えば、後述の内輪126、126a)と、前記内輪を前記複数の転動体を介して支承する外輪であって前記内輪を前記外輪の中心軸に対して傾動可能に支承する外輪(例えば、後述の外輪122、122a)を有する自動調心軸受(例えば、後述の自動調心軸受120)と、前記自動調心軸受の一端部(例えば、後述の一端部121a)に、前記外輪の側部(例えば、後述の側部123a)を曲面(例えば、後述の曲面142)によって摺動可能に保持するリング部材(例えば、後述のリング部材140、140a)と、前記自動調心軸受の他端部(例えば、後述の他端部121b)に、前記外輪の前記側部の摺動量を調整する摺動調整機構(例えば、後述の摺動調整機構160、160a)とを備えた、軸受装置(例えば、後述の軸受装置101、102)。
【0009】
(1)に記載の発明によれば、自動調心軸受の一端部に外輪の側部を曲面によって摺動可能に保持するリング部材を備え、自動調心軸受の他端部に、外輪の側部の摺動量を調整する摺動調整機構を備えているので、内輪つまり支承している回転シャフトの回転軸の向きと独立して、外輪の側部を曲面上で摺動させることができる。このため、外輪の傾斜にともなって、内輪の中心位置を内輪の半径方向に移動できるので、支承している回転シャフトの回転軸の中心位置及び傾きを微調整することができる。
【0010】
(2)少なくとも2つの(1)に記載の軸受装置を前記回転シャフトの長手方向に備えた複列軸受装置(例えば、後述の複列軸受装置100、100a、100b)であって、少なくとも2つの前記摺動調整機構によって少なくとも2つの前記自動調心軸受のそれぞれの側部の摺動量の調整により回転シャフトの回転軸を偏心させる、複列軸受装置。
【0011】
(2)に記載の発明によれば、少なくとも2つの軸受装置を回転シャフトの長手方向に備えた複列軸受装置は、少なくとも2つの摺動調整機構によって少なくとも2つの自動調心軸受のそれぞれの側部の摺動量の調整により少なくとも2つの軸受装置のそれぞれの回転シャフトの回転軸の中心位置及び傾きを個別に微調整することができるので、回転シャフトの回転軸を偏心させることができる。
【0012】
(3)(1)に記載の軸受装置又は(2)に記載の複列軸受装置の回転シャフト位置調整方法であって、前記摺動調整機構による前記側部の摺動量の調整により回転シャフトの回転軸を偏心させる、回転シャフト位置調整方法。
【0013】
(3)に記載の発明によれば、(1)、(2)と同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、回転シャフトの回転軸の位置及び傾きを微調整することができる軸受装置及び複列軸受装置の回転シャフト位置調整方法を提供することができる。
【0015】
また、本発明によれば、回転シャフトの回転軸を平行に保持しつつ、回転シャフトの回転軸の位置を微調整することができる複列軸受装置の回転シャフト位置調整方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る第1実施形態の2つの軸受装置を備えた複列軸受装置の概略断面図である。
【図2】図1に示す2つの軸受装置を備えた複列軸受装置の詳細断面図である。
【図3】本発明に係る第2実施形態の2つの軸受装置を備えた複列軸受装置の概略断面図である。
【図4】本発明に係る第3実施形態の2つの軸受装置を備えた複列軸受装置の概略断面図である。
【図5】本発明に係る他の実施形態の軸受装置の自動調心ころ軸受の概略断面図である。
【図6】本発明に係るさらに他の実施形態の軸受装置の自動調心ころ軸受の概略断面図である。
【図7】図6に示した他の実施形態の軸受装置の自動調心ころ軸受の調心の状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1及び図2を参照して、第1実施形態の軸受装置101、102、それを備えた複列軸受装置100及び複列軸受装置100の回転シャフト位置調整方法の説明をする。図1は、本発明に係る第1実施形態の2つの軸受装置を備えた複列軸受装置の概略断面図である。図2は、図1に示す2つの軸受装置を備えた複列軸受装置の詳細断面図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、複列軸受装置100は、軸受装置101と軸受装置102とにより構成されている。軸受装置101と軸受装置102とは、互いに同じに構成され、支承しようとする回転シャフト50の長手方向に沿って複数配置され、軸受装置101と軸受装置102とは、互いに線対称位置に配置されている。以下、軸受装置102について説明するが、軸受装置101についても軸受装置102の説明がそのまま適用できる。
【0019】
軸受装置102は、自動調心軸受120と、リング部材140と、摺動調整機構160(図2参照)とを備える。
【0020】
自動調心軸受120は、外輪122と、内輪126と、複数の転動体128とを備える。内輪126は、複数の転動体128と一体であり、外輪122は、内輪126を複数の転動体128を介して支承すると共に内輪126を外輪122の中心軸に対して傾動可能に支承する。詳細には、外輪122と内輪126との間には、複数の転動体128が配置されていて、複数の転動体128は、複数の転動体128が内輪126の外周面から離れないように、等間隔に配置されている。したがって、内輪126と複数の転動体128とは、一体的に外輪122の内周面側に配置されている。
【0021】
自動調心軸受120の外観は、略リング形状を有し、図1において相対する(例えば、軸受装置102に対して軸受装置101の)自動調心軸受120が配置されている側を一端部121aとし、反対側を他端部121bとしている。
【0022】
図1に示すように、外輪122は、外輪122の中心dを中心とする曲率半径rの曲面に形成されている内周面124を有する。内輪126は、略円筒形状を有し、外輪122の内側に配置されている。内輪126の内側には、回転シャフト50(図2参照)が嵌合されている。外輪122の一端部121a側の側部123aの角部125は、リング部材140に形成された曲面142に摺動するよう、斜めの曲面に形成されている。
【0023】
図2に示すように、複列軸受装置100を構成する軸受装置101、102は、それぞれ、工作機械のフレームMの両端に形成された凹部(大径部)162に配置されている。凹部162は、リング部材140及び自動調心軸受120を収容する大きさを有している。
【0024】
軸受装置101のリング部材140と軸受装置102のリング部材140とは、共に、貫通孔144が形成されたリング形状を有する。軸受装置101のリング部材140及び軸受装置102のリング部材140のそれぞれは、凹部162の底部に、自動調心軸受120の外輪122の一端部121a側の側部123aに形成されている角部125を保持できるように曲面142を凹部162の開口に向けて配置される。軸受装置101のリング部材140の中心と軸受装置102のリング部材140の中心とは、リング中心線Cを形成する。曲面142の曲率半径は、外輪122の角部125の曲率半径と同じであることが好ましく、曲面142及び角部125は、いずれも、リング中心線Cの線上の点Oから所定の距離Rの曲率半径の曲面であることが好ましい。
【0025】
図2に示すように、軸受装置101及び軸受装置102のそれぞれの摺動調整機構160は、凹部162と、凹部162の開口を覆う蓋部164と、蓋部164に設けられ、外輪122の他端部121bの側の側部123bに接触する複数の押圧部167、168とを備える。押圧部167、168は、例えば、ボルトのような螺合部材である。押圧部167、168を回転させると、押圧部167、168は、回転に応じて外輪122を回転シャフト50の延びる方向に押すように構成されている。軸受装置101及び軸受装置102のそれぞれの蓋部164は、凸形状を有し、その中央には回転シャフト50が延びるように、貫通孔165を有する。
【0026】
このように、摺動調整機構160は、リング部材140と摺動調整機構160との間に自動調心軸受120をはさみ、自動調心軸受120の外輪122の一端部121a側の側部123aをリング部材140の曲面142に摺動させながら、リング部材140に対して自動調心軸受120の外輪122を傾斜させるように構成されている。
【0027】
複数の押圧部は、それぞれ、貫通孔165の周囲の蓋部164に形成された複数のネジ部に螺合している。なお、図2では、貫通孔165を間において互いに対向する押圧部167、168のみを記載しているが、例えば、複数の押圧部は、貫通孔165を中心に90度間隔で配置されていてよい。複数の押圧部は、いずれも、外輪122の他端部121bの側の側部123bを押圧する押圧力が所定の押圧力になるように、蓋部164に設けられている。複数の押圧部を90度間隔に配置されているので、複数の押圧部を貫通孔165に対して対称な位置にある一対の押圧部の一方を前進させ、他方を後退させることにより、外輪122をどの方向にも傾けることができる。
【0028】
図2を参照して、軸受装置101、102及び複列軸受装置100における回転シャフト位置調整方法を説明する。図2に示すように、初期状態では、軸受装置101、102のそれぞれの内輪126に支承された回転シャフト50の回転軸C1は、軸受装置101のリング部材140の軸中心と、軸受装置102のリング部材140の軸中心とを結んだリング中心線Cに一致した状態であるものとする。
【0029】
次に、回転シャフト50の回転軸C1を微調整する。まず、回転シャフト50を傾斜させるために、一方の軸受装置102の押圧部167を緩め、軸受装置102の押圧部168を締め付けて、軸受装置102の外輪122をリング部材140の曲面142に所定の摺動量だけ摺動させる。つまり、軸受装置102の押圧部167と軸受装置102の押圧部168とを互いに逆方向に回転させると、軸受装置102の押圧部167は後退し、軸受装置102の押圧部168は前進するので、軸受装置102の外輪122は、軸受装置102の外輪122の一方の側部123aが曲面142上を図2において上側に摺動しながら、傾く。
【0030】
このとき、軸受装置102の外輪122は、リング中心線Cの線上の点Oを中心に図2において反時計方向に角度θだけ回転する。この角度θは、軸受装置102の押圧部167と押圧部168との回転量によって調整される。なお、軸受装置102の内輪126は、回転シャフト50が挿通されているので、軸受装置102のリング部材140に対して殆ど回転しない。このため、軸受装置102の内輪126は、軸受装置102の外輪122に対して軸受装置102の外輪122の中心dを中心として相対的に回転する。軸受装置102の外輪122がリング中心線Cの線上の点Oを中心に角度θだけ回転すると、軸受装置102の外輪122の中心d(内輪126の回転中心でもある)が図2において上側に距離δだけ移動する。このため、軸受装置102の内輪126に挿通されている側の回転シャフト50の回転軸C1は、図2において上側に距離δだけ移動する。
【0031】
すなわち、軸受装置101側の回転シャフト50の回転軸C1の位置を初期状態に維持した状態で、軸受装置102側の回転シャフト50の回転軸C1を所定の方向に距離δだけ移動することができる。したがって、回転シャフト50の回転軸C1を軸受装置101を中心にリング中心線Cに対して所定の角度だけその傾きを微調整できる。
【0032】
回転シャフト50の回転軸C1をリング中心線Cと平行にするには、同様に、他方の軸受装置101の押圧部167を緩め、軸受装置101の押圧部168を締め付けて、軸受装置101の外輪122をリング部材140の曲面142に所定の摺動量だけ摺動させる。つまり、軸受装置101の押圧部167と軸受装置101の押圧部168とを互いに逆方向に回転させると、軸受装置101の押圧部167は後退し、押圧部168は前進するので、軸受装置101の外輪122は、軸受装置102の外輪122の一方の側部123aが曲面142上を図2において上側に摺動しながら、傾く。
【0033】
このとき、軸受装置101の外輪122は、同様に、リング中心線Cの線上の点O(図示しない)を中心に図2において時計方向に角度θだけ回転する。この角度θは、軸受装置101の押圧部167と押圧部168との回転量によって調整される。なお、軸受装置101の内輪126は、回転シャフト50が挿通されているので、軸受装置101のリング部材140に対して殆ど回転しない。このため、軸受装置101の内輪126は、軸受装置101の外輪122に対して軸受装置101の外輪122の中心を中心として沿うように回転する。軸受装置101の外輪122がリング中心線Cの線上の上述の点O(図示しない)を中心に角度θだけ回転すると、軸受装置101の外輪122の中心d(内輪126の中心でもある)が図2において、同様に上側に距離δだけ移動する。このため、軸受装置101の内輪126に挿通されている側の回転シャフト50の回転軸C1は、図2において、同様に上側に距離δだけ移動する。
【0034】
すなわち、軸受装置102側の回転シャフト50の回転軸C1の位置を維持した状態で、軸受装置101側の回転シャフト50の回転軸C1を所定の方向に距離δだけ移動することができる。したがって、回転シャフト50の回転軸C1を軸受装置102を中心に、同様に、リング中心線Cに対して所定の角度だけ微調整できる。
【0035】
そして、軸受装置101側の回転シャフト50の回転軸C1の移動方向及び移動距離δを、軸受装置102側の回転シャフト50の回転軸C1の移動方向及び移動距離δに一致させることにより、回転シャフト50の回転軸C1を距離δだけリング中心線Cから平行移動させることができる。
【0036】
以上の軸受装置101、102及びそれを備えた複列軸受装置100によれば、回転シャフト50の回転軸C1の位置及び傾きを微調整することができる。また、複列軸受装置100の回転シャフト位置調整方法によれば、回転シャフト50の回転軸C1をリング中心線Cと平行に保ちつつ、その回転シャフト50の回転軸C1の位置を微調整することができる。
【0037】
図3を参照して、第2実施形態の複列軸受装置100aの説明をする。図3は、本発明に係る第2実施形態の2つの軸受装置を備えた複列軸受装置の概略断面図である。
【0038】
複列軸受装置100aは、複列軸受装置100の一対の軸受装置101、102の摺動調整機構160、160のそれぞれの蓋部164の代わりに一対の軸受装置101a、102aの一対の摺動調整機構160a、160aのそれぞれの蓋部164aを設けたものである。したがって、第1実施形態と同じ構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0039】
軸受装置101a及び軸受装置102aのそれぞれの蓋部164aは、貫通孔165を有する。蓋部164aの凸部の先端周辺には、互いに長さの異なる凸状の複数の押圧部167a、168aが形成されている。なお、図3では、貫通孔165を間において互いに対向する押圧部167a、168aのみを記載しているが、例えば、複数の押圧部は、貫通孔165を中心に90度間隔で配置されている。そして、複数の押圧部の先端の長さは、複数の押圧部の先端が所定の平面上に位置するような長さとされている。このため、摺動調整機構160aの取り付けの向きを変えることにより、外輪122の傾斜方向を変えることができる。
【0040】
このため、軸受装置101aの蓋部164aを軸受装置101aの凹部162に取り付けると、軸受装置101aの押圧部167aは軸受装置101aの外輪122の他端部121bの側部123bを少し押し、軸受装置101aの押圧部168aは軸受装置101aの外輪122の他端部121bの側部123bを多く押すので、軸受装置101aの外輪122は、軸受装置101aの外輪122の一方の側部123aが曲面142に摺動しながら、傾く。
【0041】
また、軸受装置102aの蓋部164aが軸受装置102aの凹部162に嵌合すると、軸受装置102aの押圧部167aは軸受装置102aの外輪122の他端部121bの側部123bを少し押し、軸受装置102aの押圧部168aは軸受装置102aの外輪122の他端部121bの側部123bを多く押すので、軸受装置102aの外輪122は、軸受装置102aの外輪122の一方の側部123bが曲面142に摺動しながら、傾く。
【0042】
そして、軸受装置101a及び軸受装置102aの外輪122は、それぞれ、リング中心線Cの線上の一方の点O(図3において右側の点O)及び他方の点O(図3において左側の点O)を中心に図3において反時計方向及び時計方向に角度θだけ回転する。この角度θは、軸受装置101a及び軸受装置101bのそれぞれの押圧部167aと押圧部168aとの突出量によって決定される。なお、軸受装置101a及び軸受装置102aのそれぞれの内輪126は、回転シャフト50が挿通されているので、軸受装置101a及び軸受装置102aのそれぞれのリング部材140に対して殆ど回転しない。このため、軸受装置101a及び軸受装置102aの内輪126は、それぞれ、軸受装置101a及び軸受装置102aの外輪122に対して軸受装置101a及び軸受装置102aの外輪122の中心dを中心として相対的に回転する。軸受装置101a及び軸受装置102aの外輪122が、それぞれ、リング中心線Cの線上の一方の点O及び他方の点Oを中心に角度θだけ回転すると、軸受装置101a及び軸受装置102aの外輪122の中心d(内輪126の回転中心でもある)が図3において上側に距離δだけ移動する。このため、軸受装置101a及び軸受装置102aのそれぞれの内輪126に挿通されている側の回転シャフト50の回転軸C1は、図3において上側に距離δだけ移動する。
【0043】
図4を参照して、第3実施形態の2つの軸受装置を備えた複列軸受装置100bの説明をする。図4は、本発明に係る第3実施形態の2つの軸受装置を備えた複列軸受装置の概略断面図である。
【0044】
複列軸受装置100bは、第1実施形態及び第2実施形態における複列軸受装置100のリング部材140の代わりに、リング部材140aを設けたものである。したがって、第1実施形態及び第2実施形態と同じ構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0045】
リング部材140aは、断面が円形状のリング形状を有する。したがって、リング部材140aは、その表面が凸形状の曲面を有する。リング部材140aは、凹部162の底部に配置されている。
【0046】
リング部材140aの断面は円形状のリング形状であってその表面に凸形状の曲面であるので、外輪122の一端部121aの側部123aの角部125とは、点接触で摺動する。このため、外輪122を傾ける際に生じる、リング部材140aと角部125との間の摩擦は小さいので、回転シャフト50の回転軸C1を少ない力で微調整することができる。
【0047】
以上の複列軸受装置100、100a、100bは、自動調心軸受120として、自動調心玉軸受を用いていたがこれに限定されず、図5に示すように、外輪122aと内輪126aと、円筒形状の複数の転動体128aとを備えた自動調心ころ軸受120aであってもよい。
【0048】
また、複列軸受装置100、100a、100bは、自動調心軸受120及び自動調心ころ軸受120aの数が1つとしていたが、これに限定されず、図6及び図7に示すように、複数の自動調心軸受120及び複数の自動調心ころ軸受120aを用いてもよい。
【0049】
図6は、本発明に係るさらに他の実施形態の軸受装置の自動調心ころ軸受の概略断面図である。図7は、図6に示した他の実施形態の軸受装置の自動調心ころ軸受の調心の状態を示す概略断面図である。
【0050】
図6に示すように、複数の自動調心ころ軸受120aのそれぞれは、外輪122aと内輪126aと、円筒形状の複数の転動体128aとを備える。複数の自動調心ころ軸受120aのそれぞれの内輪126aには、一方の自動調心ころ軸受120aの外輪122a及び内輪126aと他方の自動調心ころ軸受120aの外輪122a及び内輪126aとが互いに接触するように、回転シャフト50が挿通されている。
【0051】
初期状態では、複数の自動調心ころ軸受120aのそれぞれの内輪126aに支承された回転シャフト50の回転軸C1は、リング部材140の中心軸を通るリング中心線Cに一致した状態であるものとする。
【0052】
次に、回転シャフト50の回転軸C1を微調整する。図7に示すように、回転シャフト50を傾斜させるために、図7において右側の自動調心ころ軸受120aの外輪122aをリング部材140の曲面142に所定の摺動量だけ摺動させる。これにより、図7において右側の自動調心ころ軸受120aの外輪122aが曲面142上を図7において上側に摺動しながら、傾く。
【0053】
図7において左側の自動調心ころ軸受120aの外輪122aは、右側の自動調心ころ軸受120aの外輪122aと接触しているので、右側の自動調心ころ軸受120aの外輪122aの傾きに応じて、右側の自動調心ころ軸受120aの外輪122aと左側の自動調心ころ軸受120aの外輪122aとが外輪122aの半径方向に摺動しながら、左側の自動調心ころ軸受120aの外輪122aも傾く。
【0054】
このとき、図7における両者の自動調心ころ軸受120aの内輪126は、回転シャフト50が挿通されているので、リング部材140に対して殆ど回転しない。このため、両者の自動調心ころ軸受120aの外輪122aの中心(内輪126aの回転中心でもある)が図7において同様に上側に距離δだけ移動する。このため、複数の自動調心ころ軸受120aの内輪126aに挿通されている回転シャフト50の回転軸C1は、図7において上側に距離δだけ移動する。
【0055】
以上、本発明の実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることができ、そのような変更、又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得る。
【符号の説明】
【0056】
50 回転シャフト
100、100a、100b 複列軸受装置
101、102、101a、102a、101b、102b 軸受装置
120 自動調心軸受
122、122a 外輪
123a 外輪の一方の側面
123b 外輪の他方の側部
124 外輪の内周面
125 外輪の角部
126、126a 内輪
128、128a 転動体
140、140a リング部材
142 曲面
160、160a 摺動傾斜機構
162 凹部
164、164a 蓋部
165 貫通孔
167、167a 押圧部
168、168a 押圧部
C リング中心線
C1 回転シャフトの回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の転動体と、前記複数の転動体と一体の内輪であってその中心軸に回転シャフトが挿通された内輪と、前記内輪を前記複数の転動体を介して支承する外輪であって前記内輪を前記外輪の中心軸に対して傾動可能に支承する外輪を有する自動調心軸受と、
前記自動調心軸受の一端部に、前記外輪の側部を曲面によって摺動可能に保持するリング部材と、前記自動調心軸受の他端部に、前記外輪の前記側部の摺動量を調整する摺動調整機構とを備えた、軸受装置。
【請求項2】
少なくとも2つの請求項1に記載の軸受装置を前記回転シャフトの長手方向に備えた複列軸受装置であって、少なくとも2つの前記摺動調整機構によって少なくとも2つの前記自動調心軸受のそれぞれの側部の摺動量の調整により回転シャフトの回転軸を偏心させる、複列軸受装置。
【請求項3】
請求項1に記載の軸受装置又は請求項2に記載の複列軸受装置の回転シャフト位置調整方法であって、前記摺動調整機構による前記側部の摺動量の調整により回転シャフトの回転軸を偏心させる、回転シャフト位置調整方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−72880(P2012−72880A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219663(P2010−219663)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】