説明

軸周シール

【目的】回転軸1の回転停止時においても良好なシール機能を発揮することができ、一次シールとしても二次シールとしても好適に使用することができる軸周シールを提供する。
【構成】軸周シールは、回転軸1にその外周面1fとの間に微小隙間5aを有する同心状態で嵌挿されたシールリング17をシールケースに設けてなる。シールリング17は、相互に軸線方向に密着された第1リング17Aと第2リング17Bとからなる。第1リング17Aの内周面は凹溝19を形成した第1シール面17aに構成されている。凹溝19は、軸線方向において被密封流体領域Cに向かって回転軸1の回転方向Dに螺旋状に延びる螺旋溝である。第2リング17Bは、周方向に複数のセグメントに分割され且つガータスプリング17cで円環状体に緊縛されたものであり、その内周面は凹溝を有しない第2シール面17bに構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸にその外周面との間に微小隙間を有する同心状態で嵌挿されたシールリングをシールケースに設けてなる軸周シールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
軸周シールは、従来から、軸封装置(例えば、高度のシール機能を有するメカニカルシール等を一次シールとする軸封装置)の二次シールとして或いはある程度の漏れを許容する軸封装置の一次シールとして多用されており、回転軸にこれとの間に微小隙間を有する状態で嵌挿されたシールリングを使用するもの(例えば、特許文献1を参照)や内周面にネジ溝等の凹溝を形成したシールリングを使用したもの(例えば、特許文献2を参照)が周知である。
【0003】
而して、前者の軸周シール(以下「第1従来シール」という)は、シールリングの内周面と回転軸の外周面との間に形成される微小隙間において減圧効果を発揮させることによって、当該隙間からの流体漏れを抑制するように構成されたものである。
【0004】
また、後者の軸周シール(以下「第2従来シール」という)は、シールリングの内周面に形成した凹溝により、回転軸の回転に伴ってシールリングの内周面と回転軸の外周面との隙間に動圧を発生させて、高圧側から低圧側への圧力流れに対して抵抗を与えることにより当該隙間からの漏れを抑制するように構成されたものである(例えば、特許文献2の段落番号[0017]を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平05−040656号公報
【特許文献2】特開平10−030730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、第1従来シールでは、微小隙間による減圧効果によって漏れを抑制するにすぎないことからシール性が低く、一次シールとしては勿論、二次シールとしても満足し得るものではなかった。
【0007】
一方、第2従来シールは、シールリングと回転軸との隙間に発生する動圧により当該隙間への流体侵入を抑制するものであるから、第1従来シールに比してシール性は高い。しかし、第1従来シールが回転軸が回転しないことによってはシール機能が低下しないものであるのに対し、第2従来シールでは、回転軸が回転しない状態では上記動圧が発生しないことから、シール機能が十分に発揮されない。したがって、第2従来シールは、回転軸が回転しない運転停止時や緊急停止時においてもシール機能を必要とする回転機器には使用できないものであり、その用途が限定されるものであった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、第2従来シールと同等又はそれ以上のシール性を有すると共に、第1従来シールと同様に回転軸の回転停止時においても良好なシール機能を発揮することができ、一次シールとしても二次シールとしても好適に使用することができる軸周シールを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、回転軸にその外周面との間に微小隙間を有する同心状態で嵌挿されたシールリングをシールケースに設けてなる軸周シールにおいて、上記の目的を達成すべく、特に、シールリングの内周面を軸線方向において凹溝を形成した第1シール面と凹溝を有しない第2シール面とに区画し、当該凹溝を軸線方向において被密封流体領域に向かって回転軸の回転方向に螺旋状に延びる螺旋溝としておくことを提案するものである。
【0010】
かかる軸周シールにあっては、凹溝を角ネジ溝形状をなすものとしておくことが好ましい。また、第1シール面をシールリングの内周面における被密封流体領域側部分で構成し、第2シール面をシールリングの内周面における非密封流体領域側部分で構成しておくことが好ましい。また、シールリングは、相互に軸線方向に密着された第1リングと第2リングとに分割されたものであり、第1リングが内周面を第1シール面に構成したものであり、第2リングが内周面を第2シール面に構成したものであることが好ましい。この場合において、両リングのうち少なくとも第2リングは、周方向に複数のセグメントに分割されたものであって、ガータスプリングで円環状体に緊縛されたものとしておくことができる。
【0011】
本発明の軸周シールは、軸封装置(例えば、メカニカルシールを一次シールとする軸封装置)の二次シールとして好適に使用することができ、ある程度の漏れが許容される軸封装置においては一次シールとして使用することも可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の軸周シールは、第1シール面による動圧発生作用と第2シール面による減圧作用との協働作用によりシール機能を発揮するものであることから、回転軸が回転する運転時においては第1従来シールに比しては勿論、第2従来シールに比しても同等以上のシール機能を発揮することができ、回転軸が回転しない運転停止,休止時においても第1従来シールと同等以上のシール機能を発揮するものであり、あらゆる回転機器において二次シールとしても一次シールとしても好適に使用することができる実用的価値極めて大なるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明に係る軸周シールの一例を示す縦断側面図である。
【図2】図2は、図1の要部(シールリング)を取り出して示す詳細図である。
【図3】図3は、本発明に係る軸周シールの変形例を示す縦断側面図である。
【図4】図4は、図3の要部(シールリング)を取り出して示す詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明に係る軸周シールを二次シール手段として使用した軸封装置の一例を示す縦断側面図であり、図2はその要部を取り出して示す縦断側面図である。なお、以下の説明において、前後とは図1における左右を意味するものとする。
【0015】
図1に示す軸封装置は、水平な回転軸1を有するポンプ等の横型回転機器に装備されたもので、当該回転機器のハウジング2に取り付けられたシールケース3と回転軸1との対向周面間に一次シールたるメカニカルシール4と二次シールたる軸流シール5を並列配設して、両シール4,5により機内領域(ハウジング1内のプロセス流体領域)Aと機外領域(ハウジング1外の大気領域)Bとの間をクエンチ流体領域Cを介してシールするように構成されている。すなわち、後述するように、メカニカルシール4によりその被密封流体領域である機内領域Aとクエンチ流体領域Cとをシール(一次シール)すると共に、軸周シール5によりクエンチ流体領域Cと機外領域Bとをシール(二次シール)するように構成されている。
【0016】
回転軸1は、図1に示す如く、軸本体1aとこれに嵌挿されたスリーブ1bとスリーブ1bを軸本体1aに固定する固定リング1cとからなる。固定リング1cは適当数の連結スクリュー1dによりスリーブ1cの前端部に嵌合固定されており、この固定リング1cを適当数の固定スクリュー1eにより軸本体1aに固定することにより、スリーブ1bを着脱可能に軸本体1aに固定している。
【0017】
メカニカルシール4は、シールケース3に固定された静止密封環6と、回転軸1にOリング7を介して軸線方向(前後方向)に移動可能に保持された回転密封環8と、回転密封環8を静止密封環6へと押圧附勢するスプリング9と、シールケース3に形成したクエンチ流体供給路10及びクエンチ流体排出路11と、回転軸1とシールケース3との間に形成されたクエンチ流体流動路12a,12bとを具備して、両密封環6,8の対向端面たる密封端面6a,8aの相対回転摺接作用により、その相対回転摺接部分(シール部分)6a,8aの外周側領域である機内領域Aと内周側領域であるクエンチ流体領域Cとを遮蔽シールするように構成された端面接触形のメカニカルシールである。
【0018】
静止密封環6は、図1に示す如く、先端面(後端面)を軸線に直交する平滑環状面である密封端面6aに構成した円環状体であり、先端部をハウジング2内に突入させた状態で、Oリング13を介してシールケース3の後端内周部に嵌合固定されている。
【0019】
回転密封環8は、図1に示す如く、静止密封環6の密封端面6aに直対向する先端面(前端面)を軸線に直交する平滑環状面である密封端面8aに構成した密封環本体8bと、密封環本体8bの後端部に嵌合固着された保持体8cと、保持体8cの後端部にドライブピン8dを介して相対回転不能に衝合連結されたスプリング受体8eとからなる円環状体であり、保持体8cの内周部に保持させたOリング7を介してスリーブ1bに軸線方向移動可能に嵌合保持されており、スプリング受体8eに螺着した水平なドライブピン8fをスリーブ1bに固着したスプリングリテーナ14に挿通係合させることにより、回転軸1に対して軸線方向移動を所定範囲で許容しつつ相対回転不能に阻止されている。
【0020】
スプリング9は、図1に示す如く、スプリング受体8eとスプリングリテーナ14との介装されており、回転密封環8を静止密封環6に押圧接触させるべく前方へと附勢する。
【0021】
クエンチ流体供給路10は、図1に示す如く、シールケース3の下部側部分にこれを上下方向に貫通すべく形成されており、機内領域Aと機外領域Bとの中間領域であるクエンチ流体領域Cの下部側にクエンチ流体15を供給するようになっている。なお、クエンチ流体供給路10の下流端である上端部は、回転軸1の下方側において静止密封環6の後端部に向けて開口されている。クエンチ流体15としては、機外領域Bに漏洩しても支障のない清水等が使用される。
【0022】
クエンチ流体排出路11は、図1に示す如く、シールケース3の上部側部分にこれを上下方向に貫通すべく形成されており、クエンチ流体領域Cの上部側(回転軸1の上側)において当該領域Cに供給されたクエンチ流体15を排出,回収するようになっている。
【0023】
クエンチ流体流動路12a,12bは、図1に示す如く、シールケース3の内周部に回転軸1(スリーブ1b)と静止密封環6との対向周面間を通過して密封端面6a,8aの近傍まで伸びる円筒状のバッフル16を設けることによりクエンチ流体領域Cに形成された蛇行通路であって、クエンチ流体供給路10の上端開口部から静止密封環6とバッフル16との間を通って後方に伸びて密封端面6a,8aの内径側部分に至る第1流動路12aと、当該内径側部分からバッフル16とスリーブ1bとの間を通って前方に伸びて軸周シール5に至る第2流動路12bとからなる。なお、クエンチ流体排出路11の下端部は、図1に示す如く、第2流路12bの終端部に開口されている。
【0024】
軸周シール5は、図1及び図2に示す如く、回転軸1にその外周面1fとの間に微小隙間5aを有する同心状態で嵌挿されたシールリング17をシールケース3に設けてなり、被密封流体領域であるクエンチ流体領域Cと非密封流体領域である機外領域(大気領域)Bとの間をシールするものである。
【0025】
すなわち、軸周シール5は、図1及び図2に示す如く、シールリング17を、回転軸1に相対回転不能に同心状に遊嵌させた状態で、シールケース3の前端内周部に形成された環状のシール室18に装填してなり、シールリング17の内周面は軸線方向において凹溝19を形成した第1シール面17aと凹溝を有しない第2シール面17bとに区画されている。
【0026】
各シール面17a,17bは、その径を回転軸1の外径(スリーブ1bの外径)より若干大きくなるように(例えば、シール面17a,17bと回転軸1の外周面1fとの半径方向間隔が40〜100μm(好ましくは50〜80μm)となるように)設定した円柱面であり、第1シール面17aに形成される凹溝19は、図2に示す如く、軸線方向においてクエンチ流体領域Cに向かって(後方に向かって)回転軸1の回転方向(D方向)に螺旋状に延びる螺旋溝であり、この例では角ネジ溝とされている。すなわち、凹溝19は、前方から見た状態(機内領域Aから機外領域Bを見た状態)において回転軸1が右方向に回転する場合(図2に示す場合)には右ネジ溝形状とされ、逆に当該状態において回転軸1が左方向に回転する場合には左ネジ溝形状とされる。
【0027】
この例では、シールリング17が、相互に軸線方向に密着された第1リング17Aと第2リング17Bとに分割されており、第1リング17Aの内周面を第1シール面17aに構成すると共に、第2リング17Bの内周面を第2シール面17bに構成してある。第1リング17Aは被密封流体領域(クエンチ流体領域)C側に配置されており、第2リング17Bは非密封流体領域(大気領域)B側に配置されている。すなわち、第1シール面17aがシールリング17の内周面における被密封流体領域側部分(後側部分)で構成されており、第2シール面17bがシールリング17の内周面における非密封流体領域側部分(前側部分)で構成されている。
【0028】
また、この例では、第2リング17Bを、周方向に複数部分(円弧状セグメント)に分割された一つのセグメントリングをガータスプリング17cで円環状体に緊縛してなるセグメントシール構造に構成してある。一方、第1リング17Aは非分割の円環状体をなしており、シール室18の対向周壁18a,18bの一方である被密封流体領域C側の第1周壁18aとの間に介装した適当数のコイルスプリング20により他方の周壁(非密封流体領域B側の第2周壁)18bへと押圧附勢されている。すなわち、このコイルリング20の附勢力により、第2リング17bが第2周壁18bに密着されると共に両リング17A,17Bが相互に密着されている。両リング17A,17bは、第1周壁18aに突設した水平なドライブピン21を第1リング17Aに形成した貫通孔17d及び第2リング17Bに形成した凹部17eに挿通係合させることにより、シールケース3に相対回転不能に保持されている。なお、第1周壁18aはバッフル16の前端部に一体形成された円環状板で構成されており、バッフル16及び第1周壁18aを構成する断面L字状の円筒部材は、シールケース3の内周部にドライブピン22を介して相対回転不能に嵌合固定されている。また、第2周壁18bはシールケース3の前端面に固着された円環状板で構成されている。
【0029】
なお、各リング17A,17Bは一般にカーボン等で構成されるが、これらのシール面17a,17bに対向する回転軸1の外周面(スリーブ1bの外周面)1fには超硬合金等の硬質層を溶射等によりコーティングしておくことが好ましい。
【0030】
以上のように構成された軸封装置にあっては、クエンチ流体供給路10からクエンチ流体領域Cに供給されたクエンチ流体15が第1流動路12aから静止密封環6の内周面の全面に沿ってシール部分6a,8aへと流動し、シール部分6a,8aの周辺領域で反転して第2流動路12bを通過して、クエンチ流体領域Cからクエンチ流体排出路12へと排出される。したがって、第1流動路12aを通過するクエンチ流体15によってこれと静止密封環6との熱交換が良好に行われ、第1流動路12aから第2流動路12bへと反転流動するクエンチ流体15によってこれとシール部分6a,8aとの熱交換ないし洗浄が効果的に行われる。しかも、クエンチ流体15がクエンチ流体供給路10の上端開口部からクエンチ流体領域Cの下部つまり環状をなす第1流動路12aの下部に供給されると共にクエンチ流体領域Cの上部つまり環状をなす第2流動路12bの上部から排出され、各流動路12a,12b内を均一に流動することになることから、上記したクエンチ流体15による熱交換及び洗浄が良好且つ効率的に行われることになる。したがって、クエンチ流体15によるシール部分6a,8aの洗浄効果や冷却効果(例えば、クエンチ流体15として常温水又は低温水を使用する場合)又は加熱効果(例えば、クエンチ流体15として高温水を使用する場合)が良好に発揮され、密封環6,8の摺動によって発生する摩耗粉のシール部分6a,8aへの侵入を確実に防止すると共にシール部分6a,8aやその周辺の温度管理を適正に制御することができ、長期に亘って良好なメカニカルシール機能(一次シール機能)を発揮させることができる。
【0031】
而して、上記したクエンチ流体15による洗浄,熱交換機能が良好に発揮されるためにはクエンチ流体領域Cと大気領域Bとの間を良好にシール(二次シール)しておく必要があるが、かかるシールは上記した構成の軸周シール5によって良好に行われる。
【0032】
すなわち、クエンチ流体領域C内のクエンチ流体15は第2流動路12bからシールリング17の内周面であるシール面17a,17bと回転軸1の外周面(スリーブ1bの外周面)1fとの間に形成される隙間5aから大気領域Bへと漏洩するが、この隙間5aが微小であることから、クエンチ流体15は当該隙間5aを通過する間において圧力降下して大気領域Bへの漏洩量が減少する。このような圧力降下による漏洩減少は第2シール面17bによって行われ、凹溝19が形成された第1シール面17aによってはかかる圧力降下による漏洩減少はさほど期待できない。しかし、第1シール面17aと回転軸1の外周面1fとの間においては、第1シール面17aに螺旋状の凹溝19が形成されていることから、両面1f,17a間においては回転軸1の回転に伴って動圧が発生する。そして、凹溝19が回転軸1aのクエンチ流体領域Cに向かって回転方向Dに螺旋状に伸びる螺旋溝(角ネジ溝)とされていることから、第2流動路12bから両面1f,17a間へのクエンチ流体15の流れが抵抗を受けることになり、両面1f,17a間へのクエンチ流体15の侵入が可及的に抑制されることになる。
【0033】
このように、本発明に係る軸周シールは第1従来シール及び第2従来シールのシール機能を併せ持つものであり、第1シール面12aによる螺旋溝効果と第2シール面12bによる減圧効果との相乗効果によってクエンチ流体15のクエンチ流体領域Cから大気領域Bへの漏洩が効果的に抑制され、クエンチ流体領域Cの二次シールが極めて良好に行われる。
【0034】
また、回転軸1が停止している場合においては、第1シール面17aの凹溝19による動圧効果は発揮されないものの、第2シール面17bによる減圧効果が発揮されることから、第1従来シールと同様に、回転機器の運転停止時,休止時においても軸周シール5によるシール機能が喪失することはない。かかる点は、軸周シール5を一次シールとして使用する場合において、特に有益である。
【0035】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の基本原理を逸脱しない範囲において適宜に変更,改良することができる。
【0036】
例えば、上記した実施の形態においては、第2リング17Bのみをセグメントシール構造としたが、第1リング17Aもこれと同様のセグメントシール構造とすることができる。逆に、第2シール17Bをセグメントシール構造とせずに、第1シール17Aと同様に非分割の円環状体とすることもできる。また、シールリング17を、上記した実施の形態では、第1リング17Aと第2リング17Bとに分離したが、図3及び図4に示す如く、一体構造のリングとしておくこともできる。この場合において、シールリング17をセグメントシール構造とすることも可能である。さらに、凹溝19を形成した第1シール面17aは、凹溝を形成しない第2シール面17bの被密封流体領域C側に配置しておくことが好ましいが、必要に応じて、第2シール面17bの非密封流体領域B側に配置しておくことも可能である。また、軸周シール5は、メカニカルシール4等を一次シールとする軸封装置の二次シールとして使用する他、ある程度の漏れが許容される軸封装置の一次シールとして使用することも可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 回転機器の回転軸
1f 回転軸の外周面
2 回転機器のハウジング
3 シールケース
4 メカニカルシール(一次シール)
5 軸周シール(二次シール)
5a 微小隙間
6 静止密封環
6a 静止密封環の密封端面
8 回転密封環
8a 回転密封環の密封端面
17 シールリング
17A 第1リング
17a 第1シール面
17B 第2リング
17b 第2シール面
18 シール室
19 凹溝
A 機内領域
B 機外領域(非密封流体領域)
C クエンチ流体領域(被密封流体領域)
D 回転軸の回転方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸にその外周面との間に微小隙間を有する同心状態で嵌挿されたシールリングをシールケースに設けてなる軸周シールにおいて、シールリングの内周面が軸線方向において凹溝を形成した第1シール面と凹溝を有しない第2シール面とに区画されており、当該凹溝が軸線方向において被密封流体領域に向かって回転軸の回転方向に螺旋状に延びる螺旋溝であることを特徴とする軸周シール。
【請求項2】
凹溝が角ネジ溝形状をなすものであることを特徴とする、請求項1に記載する軸周シール。
【請求項3】
第1シール面がシールリングの内周面における被密封流体領域側部分で構成されており、第2シール面がシールリングの内周面における非密封流体領域側部分で構成されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載する軸周シール。
【請求項4】
シールリングが、相互に軸線方向に密着された第1リングと第2リングとに分割されたものであり、第1リングが内周面を第1シール面に構成したものであり、第2リングが内周面を第2シール面に構成したものであることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載する軸周シール。
【請求項5】
両リングのうち少なくとも第2リングが、周方向に複数のセグメントに分割されたものであって、ガータスプリングで円環状体に緊縛されたものであることを特徴とする、請求項4に記載する軸周シール。
【請求項6】
軸封装置の二次シールとして使用されるものであることを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載する軸周シール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−163448(P2011−163448A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27021(P2010−27021)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000229737)日本ピラー工業株式会社 (337)
【Fターム(参考)】