説明

軸封機構を用いた駆動装置

【課題】シール材の膨張量を外部電気信号等の量で調整し、接触面圧力を調整することによって、流体の漏れ量を高精度に制御できる軸封機構を用いることによりソレノイドレス化可能な駆動装置を提供すること。
【解決手段】ピストン130bを有するシリンダ部130aに漏れ流路140,141を介して流体を供給する供給漏れ流路137と流体を外部に排出する排水漏れ流路138,139を有する装置本体131を取付け、この装置本体131内には、流路切換可能な複数個の軸封体132〜135を有する軸封機構を設け、この軸封機構は、電気的外部刺激を介して膨縮又は変形する高分子材料製の前記軸封体からなり、この軸封体に電気的外部刺激を与えて当該軸封体を膨縮又は変形させることにより漏れ流体を流す流路を設けたものであり、この軸封機構により前記シリンダ内に流体を供給又は排気させてシリンダ部内のピストンを駆動させるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材を用いて流体を軸封する軸封機構を用いた駆動装置に関し、特に、電磁切換弁に替わるソレノイドレスの駆動装置に関する
【背景技術】
【0002】
通常、容器内の流体を常時封止する場合には、シール部材を用いた軸封装置が利用される。軸封装置は、シール部材を介して流体の流れを封止するようにしたものである。軸封装置のシール部材は、空気・水・油・ガスなどの多種多様な流体を封止するために、例えば、断面略円形状の環状Oリングやパッキンリングが用いられる。これらのシール部材は、その主要な機能が流体を封止するものであるため、高い封止性能が要求されている。
【0003】
そのため、シール部材は、通常、軸封装置における一方側の部材に、軸又は穴の半径方向に同一平面内に形成された、軸方向に断面略矩形状の溝に装着され、他方側の部材との接触圧力によってシールするときに、溝部形状によって圧縮されるつぶし代を有するようになっている。軸封装置の組立て後には、例えば、Oリングは、このつぶし代によって圧縮されて反発力を生じ、この反発力によって接触面圧による封止性を発揮して軸封するようにしている。
【0004】
また、Oリングは、通常、各種の合成ゴムを材料として形成しているが、この材料は、異常な変形を起こさない範囲内で適度の圧縮応力を発揮させるため、特に、所定の低圧縮永久歪や、更には、耐候性・耐摩耗性・耐熱、耐寒性・耐油性・耐薬品性などの特性を満たしている必要がある。また、Oリングは、例えば、自動車・建設機械・航空機・OA機器・産業機器などの多岐にわたる分野の軸封装置に利用されるため、各分野(用途)に応じて材料を選択してつぶし代が適切になるようにし、軸封部が移動する運動、又は、軸封部が移動しない固定用の何れの状態で使用する場合でも、軸封機能の確保を前提として、耐久性・挿入性・圧縮割れの防止なども図る必要がある。
このように、通常の軸封装置は、Oリング等のシール部材により封止機能を高めることを第1の目的としているため、通常はシール部材や流体の封止領域が所定の位置に定められている。この封止装置を内蔵した装置は、内部構造が複雑化している。
【0005】
今、仮に、封止領域を非封止領域に切り換え操作するためには、封止領域を移動させるために、封止領域のシール部材やハウジングなどの装着部位に別の動作機構を設ける必要がある。この動作機構としては、例えば、ネジ送り機構やピストン・シリンダ機構、回転機構などがあり、これらの機構を動作させるためには、人力、電気、空気、油圧、スプリング等の何らかの動力手段を用いる必要もある。
【0006】
一方、封止機構ではないが、複雑な動力手段を設けることなく、いわゆる、人工筋肉を用いたバルブがある(例えば、特許文献1参照。)。このバルブは、弁体として人工筋肉を用い、この弁体自体を変形させて流路を開閉できるようにしたものである。同文献のバルブは、フィルム型の電歪伸縮ポリマーからなる人工筋肉を弁体とし、この弁体を、電圧のオンオフによって変形させて直接又はシール材を介して弁座に接離させ、流路を開閉している。
このバルブでは、人工筋肉として、ゴム状の薄い高分子膜(エラストマー)を伸縮可能な電極で挟み、この電極間に電圧を加えることにより高分子膜を面方向に伸長(周方向に拡径)させるようにしたEPAM(Electroactive Polymer Artificial Muscle)と呼ばれるものが使われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3501216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、軸封装置の封止領域を非封止領域に切り換え操作するために、動作機構や動力手段を設けた場合には、装置の構造が複雑化し、全体が大型化するという問題があった。このため、装置の重量も増加し、コストも増大することがあった。
また、封止状態と非封止状態を切り換える際には、動作機構を構成する部品相互の接触や摺動を伴うことになるため、この接触や摺動により動作機構を構成する部品が磨耗したり、摺動する部材が磨耗することがあった。また、シール材自体も、封止領域の相手封止部材と接触・加圧状態のまま移動するため、摺動に伴う磨耗が生ずることになる。Oリングなどの封止部は、全周に亘って磨耗が発生すると接触部分の圧力低下や外傷により流体漏れを起こし易く、この場合、摺動面が粗い、潤滑が不十分などの外的要因により、磨耗がより加速することがあった。また、Oリングの摺動面に局部的な磨耗が生じた場合にも流体漏れが起こりやすくなり、Oリングの摺動面に傷があると磨耗がより加速することもあった。特に、動作機構の運動速度が速かったり、運動が偏心状態で行われたり、摺動する面の面粗さが粗かったり、潤滑が不十分の場合には、シール材がねじれることもあった。
【0009】
更に、この軸封装置は、シール材や封止部材や動作機構の接触や摺動により騒音が発生したり、或は、この騒音や磨耗を防ぐために潤滑油を使用する手間があらたに生じることもあり、このため、シール時の信頼性が低下したり、耐久寿命が著しく短縮するという問題があった。
【0010】
また、この軸封装置は、封止領域の封止部材の面粗度の精度確保とシール材のつぶし代分を圧縮することにより生ずる相手部材との接触圧力によって流体をシールし、流体圧の印加とともにこのつぶし代による接触圧力に、さらに圧力に伴うシール材の変形による接触圧力の増大(自封作用)により流体圧力以上の接触面圧を発揮して、高い封止性能を発揮できるようにしているが、この軸封装置の場合でも、封止部の移動に伴う、流体の巻き込み等の現象により、通常、流体の漏れを完全に防ぐことは難しいことが知られている。また、軸封装置は、各々の用途に応じて軸封時の漏れ量の許容範囲が設定されており、この許容範囲内で漏れ量を許容しながら軸封するのが通常になっており、この漏れ量を制御することも難しくなっている。
【0011】
一方、特許文献1は、弁体自体にEPAMを用いて、複雑な動力機構を排除はしているが、弁体自体がEPAMであるため、流体封止時には、流体圧力をEPAM全体の受圧面積で受けることになり、EPAMは、大きな耐圧強度が必要となるとともに、大きな封止力を必要とする。また、本体内に、別のシール機構を必要としたり、着座するための弁座部分を設けなければならず、弁体自体にEPAMを適用するのは、EPAMの耐強度、変形に伴う応力特性をそのまま利用していないものであるから合理的ではない。特に、特許文献1には、本発明者が着目している軸封構造自体にEPAMを用いるという思想や示唆は全くなく、しかも、軸封力の増減をEPAMの作用により微妙にかつ高精度に調整させて、微少漏れを含む漏れ現象を利用するといった思想も示唆もない。
【0012】
本発明者は、上記の実情に鑑みて鋭意研究の結果、開発に至ったものであり、その目的とするところは、シール材や封止部材の移動に伴う磨耗がないため、高い封止性能を維持しつつ、簡単な内部構造により流体の封止状態と非封止状態を切り換えて所定流量の流体を流すことができ、しかも、シール材の膨張量を外部電気信号等の量で調整し、接触面圧力を調整することによって、流体の漏れ量を高精度に制御できる軸封機構を用いてソレノイドレスの駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、ピストンを有するシリンダ部に給排漏れ流路を介して流体を供給する供給漏れ流路と流体を外部に排出する排水漏れ流路を有する装置本体を取付け、この装置本体内には、流路切換可能な複数個の軸封体を有する軸封機構を設け、この軸封機構は、電気的外部刺激を介して膨縮又は変形する高分子材料製の前記軸封体からなり、この軸封体に電気的外部刺激を与えて当該軸封体を膨縮又は変形させることにより漏れ流体を流す流路を設けたものであり、この軸封機構により前記シリンダ内に流体を供給又は排気させてシリンダ部内のピストンを駆動させるようにした軸封機構を用いた駆動装置である。
である。
【0014】
請求項2に係る発明において、軸封体は、電気的外部刺激により充電したときに印加方向と垂直方向に拡大変形して軸封力を高め、一方、放電したときに印加方向と垂直方向に縮小変形しながら旧位に復帰して軸封力の低下により適宜の漏れ現象を発生するか、又は、放電したときに印加方向と垂直方向に拡大変形しながら旧位に復帰して軸封力を高め、一方、電気的外部刺激により充電したときに印加方向と垂直方向に縮小変形しながら軸封力の低下により適宜の漏れ現象を発生する電気刺激性高分子材料である軸封機構を用いた駆動装置である。
【0015】
請求項3に係る発明において、軸封体は、軸封体は、電気的外部刺激を停止したときに旧位に膨張しながら復帰して軸封力を高め、一方、電気的外部刺激を加えたときに収縮して軸封力の低下により適宜の漏れ現象を発生するか、又は、電気的外部刺激を加えたときに膨張しながら軸封力を高め、一方、電気的外部刺激を停止したときに旧位に収縮して軸封力の低下により適宜の漏れ現象を発生する導電性高分子材料である軸封機構を用いた駆動装置である。
【0016】
請求項4に係る発明において、軸封体は、電気的外部刺激を停止したときに旧位に変形しながら復帰して軸封力を高め、一方、電気的外部刺激を加えたときに変形して軸封力の低下により適宜の漏れ現象を発生するか、又は、電気的外部刺激を加えたときに変形しながら軸封力を高め、一方、電気的外部刺激を停止したときに旧位に変形して軸封力の低下により適宜の漏れ現象を発生するイオン伝導高分子材料である軸封機構を用いた駆動装置である。
【0017】
請求項5に係る発明において、軸封体は、電気的外部刺激を停止したときに旧位に変形しながら復帰して軸封力を高め、一方、電気的外部刺激を加えたときに当該部位以外の部位が変形して軸封力の低下により適宜の漏れ現象を発生する電気刺激性高分子材料である軸封機構を用いた駆動装置である。
【0018】
請求項6に係る発明において、軸封体は、電気的外部刺激を加えたときに当該部位以外の部位が変形して軸封力を高め、一方、電気的外部刺激を停止したときに旧位に変形しながら復帰して軸封力の低下により適宜の漏れ現象を発生する電気刺激性高分子材料である軸封機構を用いた駆動装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、軸封体の移動に伴う磨耗がないため、高いシール性能を維持しつつ、簡単な内部構造により流体の封止状態と非封止状態を切り換えて所定流量の流体を流すことができ、しかも、軸封体の膨縮量・変形量を外部電気信号等の量で調整し、接触面圧力を調整することによって、流体の漏れ量を高精度に制御できることで、あらゆる用途に利用できる軸封装置を提供することができる。また、動作機構を設けることなく軸封体の変形が可能であることにより、内部の劣化を防いで長期に亘って優れた軸封機能を発揮できる軸封機構であり、これにより、この発明の軸封機構は、電磁弁などの代替としても利用でき、更には、軸封状態における微少漏れ量も制御できることにより、ソレノイドレスの駆動装置に適用できる
【0020】
気的外部刺激の印加と停止により軸封体のみを拡径又は縮径させることができるため、本体の可動部分を最小限に留めて劣化を防ぎながら封止又は非封止状態に切り換えることができ、封止状態においては、軸封力を高めて優れたシール性を発揮でき、また、非封止状態においては、装置本体の固有の漏れ量を流量として一定の流量を流すことができる軸封装置である。また、この場合、軸封体をEPAM構造とすることができ、このEPAM構造は、駆動時の圧力や歪み量を大きくできることで、軸封機能を一層高めることができ、また、構造を簡略化できることで本体を軽量化でき、動作時の音も静かにできる軸封機構を用いた駆動装置を提供できる。
【0021】
種の高分子材料を用いて軸封体を構成することができ、軸封部分の膨縮又は変形の違いなどの異なる高分子材料に応じて適宜の軸封構造とすることができる軸封装置であり、この場合も、EPAM構造に設けた場合と同様に、封止又は非封止時において優れた機能性を発揮することができる
このうち、特に、請求項5、6に係る発明によると、電気的外部刺激を加えたときに当該部位以外の部位が変形することでこの部分に電極を設ける必要がなく、変形部分が自由端部となることで変形量を大きくできる。このため、漏れ流量を大きくとることができ、精度の高い流量制御を発揮できる駆動装置を提供できる。
【0022】
体の外部から軸封体への印加電圧を制御することができることにより、小型の装置や機器などに本体を応用し、また、省スペース化を図って様々な箇所に利用できる駆動装置である。
【0023】
路切換弁として使用することができ、ピストン・シリンダ機構等の各種の切換動作機構に応用でき、この場合にも、ピストン・シリンダの動作速度などを高精度に制御できる軸封機構を用いた駆動装置である。
【0024】
封状態における微少の漏れを制御することができ、通常の流体が流れる際の漏れ量の制御に加えて、より微少な漏れ量を制御することができる。
【0025】
い精度を維持しつつ本体の内周面に対して軸封体の自由端部を真円状に拡縮でき、円筒状の流路に対して軸封体の周面を接離させて一次側と二次側の軸封と漏れの何れかの状態に制御できる軸封構造として各種の流路に適用できる。
【0026】
気的外部刺激の印加と停止により軸封体のみを膨張又は収縮させることができるため、本体の可動部分を最小限に留めて劣化を防ぎながら封止又は非封止状態に切り換えることができ、この軸封体は、末広がり状に変形できるため、封止状態においては、軸封力を高めて優れたシール性を発揮でき、また、非封止状態においては、装置本体の固有の漏れ量を流量として一定の流量を流すことができる。
【0027】
封体をリング状に一体に形成することにより、形成後の歪みを少なくでき、より高い精度で軸封又は漏れの状態に制御できる。
【0028】
封部を簡単な構造にしてコンパクト化を維持しながら形成でき、複数の流路を切り換え可能な従来には無い構造の切換弁として利用することができしかも、実施する態様に応じて流路を増やすことができ、多方弁構造に設けた場合でも、各流路の軸封、或は、漏れ状態を高精度に制御しつつ、各流路を所定の軸封と漏れの何れかの状態にできるため、多方弁として制御が自在であり、様々な分野に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の軸封機構をピストン・シリンダ駆動機構等の駆動装置に利用した例を示した概略図である。
【図2】本発明の軸封機構を安全弁に利用した例を示す概略図である。
【図3】本発明における軸封機構の一例を示した断面図である。
【図4】図の平面図である。
【図5】図軸封機構の軸封状態を示した断面図である。
【図6】封止部材の一例を示した上方斜視図である。(a)は封止部材の分解斜視図である。(b)は封止部材の組立て状態を示す斜視図である。
【図7】封止部材の一例を示した下方斜視図である。(a)は封止部材の分解斜視図である。(b)は封止部材の組立て状態を示す斜視図である。
【図8】本発明における軸封機構の他例を示した断面図である。
【図9】図の平面図である。
【図10】図軸封機構の動作状態を示した断面図である。
【図11】封止部材の他例を示した上方斜視図である。(a)は封止部材の分解斜視図である。(b)は封止部材の組立て状態を示す斜視図である。
【図12】封止部材の他例を示した下方斜視図である。(a)は封止部材の分解斜視図である。(b)は封止部材の組立て状態を示す斜視図である。
【図13】ホルダーの他の形状を示した斜視図である。
【図14】本発明における電気刺激性高分子材料、導電性高分子材料、イオン伝導高分子材料の特性を示した説明図である。
【図15】本発明における、電気的外部刺激を加えたときに当該部位以外の部位が変形する電気刺激性高分子材料の特性を示した説明図である。
【図16】電気的外部刺激を加えたときに当該部位以外の部位が変形する電気刺激性高分子材料に電場を加えたときの動作を示した模式図である。(a)は、電気刺激性高分子材料への電場の分布を示す模式図である。(b)は、電気刺激性高分子材料への応力の発生状態を示した模式図である。(c)は、電気刺激性高分子材料が変形した状態を示した模式図である。
【図17】電気刺激性高分子材料製の軸封体をホルダーで保持した軸封機構を示す断面図である。
【図18】導電性高分子材料製の軸封体をホルダーで保持した軸封機構を示す断面図である。
【図19】イオン伝導高分子材料製の軸封体をホルダーで保持した軸封機構を示す断面図である。
【図20】高分子材料製の軸封体をホルダーで保持した軸封機構を示す断面図である。
【図21】図17の軸封機構にセパレータを装着した状態を示す断面図である。
【図22】図18の軸封機構にセパレータを装着した状態を示す断面図である。
【図23】弁構造に用いる高分子材料の特性を示した説明図である。
【図24】電気刺激性高分子材料製の軸封体を環状に形成した軸封機構を示す断面図である。
【図25】導電性高分子材料製の軸封体を環状に形成した軸封機構を示す断面図である。
【図26】導電性高分子材料製の軸封体を環状に形成した軸封機構の他例を示す断面図である。
【図27】イオン伝導高分子材料製の軸封体を環状に形成した軸封機構を示す断面図である。
【図28】軸封機構を用いた弁構造の一例を示した断面図である。
【図29】図28の弁構造の封止状態を示した断面図である。
【図30】図28における軸封体の展開状態を示した説明図である。(a)は、軸封体の概略斜視図である。(b)は、(a)の表面側を示した展開図である。(c)は、(a)の裏面側を示した展開図である。
【図31】軸封機構を用いた弁構造を多方弁に応用した一例を示す断面図である。
【図32】図31における弁構造の流路切り換え状態を示した断面図である。
【図33】図31における軸封体の展開状態を示した説明図である。(a)は、軸封体の概略斜視図である。(b)は、(a)の表面側を示した展開図である。(c)は、(a)の裏面側を示した展開図である。
【図34】軸封機構を用いた弁構造を多方弁に応用した他例を示す断面図である。
【図35】図34における弁構造の流路切り換え状態を示した断面図である。
【図36】CAE解析に用いるワークを示した概略斜視図である。
【図37】CAE解析に用いる他のワークを示した概略斜視図である。
【図38】CAE解析によるワークの形状変形の一例を表した模式図である。
【図39】CAE解析によるワークの形状変形の他例を表した模式図である。
【図40】変位測定装置を示した概略図である。
【図41】変位測定装置による測定条件と変位量の測定結果を示したグラフである。(a)は、電圧の印加条件を示したグラフである。(b)は、電圧印加時における電流の状態を示したグラフである。(c)は、被測定体の変位量を示したグラフである。
【図42】被測定体の屈曲変位部分を示した模式図である。(a)は、被測定体の変位部分を示した模式図である。(b)は、(a)におけるE部拡大図である。
【符号の説明】
【0030】
10 装置本体
15 軸封部
20、160 軸封体
13、14 漏れ流路
40 ホルダー
41 上部ホルダー
41c 保持面
45 下部ホルダー
45c 保持面
50、51 外部電極
130a シリンダ部
130b ピストン
131 装置本体
132〜135 軸封体
137 供給漏れ流路
138,139 排出漏れ流路
140,141 給排漏れ流路
150 装置本体
160 軸封体
161 基材
162、163 電極
166 基部
167 自由端部
170 ホルダー
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明における軸封機構とこの機構を用いた駆動装置を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の軸封機構は、本体内部に設けた軸封部に、電気的外部刺激を介して膨縮又は変形する高分子材料製の軸封体を配設すると共に、軸封部に軸封体の膨縮又は変形による漏れ流体を流す流路を設けたものである。ここで、本発明における膨縮とは、軸封体が体積変化を伴いながら形状を変えることであり、また、変形とは、軸封体が体積変化を伴わずに形状を変えることと定義する。
【0032】
本発明において用いる高分子材料は、少なくとも、電気刺激性高分子材料(誘電エラストマー)、導電性高分子材料、イオン伝導高分子材料、電気的外部刺激を加えたときに当該部位以外の部位が変形する電気刺激性高分子材料の4種類を含んでいる。ここで、各高分子材料の特性を図14、図15に示す。
【0033】
電気刺激性高分子材料を用いた軸封体は、電気的外部刺激を加えたときに印加方向と垂直方向に拡大変形して軸封力を高め、一方、電気的外部刺激を停止したときに印加方向と垂直方向に縮小変形しながら旧位に復帰して軸封力の低下により適宜の漏れ現象を発生するものである。このように、電気刺激性高分子材料を使用した軸封装置は、非通電時において流路が形成される、いわゆる、ノーマリーオープン(NO)の素子動作となり、また、漏れ流体を流すときの変化の形態として、材料本体が変形するものである。この場合、エラストマー材料の表裏面にコンプライアントな電極を設け、この電極間に電位差を加える(電圧を加える)と、材料がクーロン効果により厚み方向が減少し、それにより表面方向が拡張する動作となる。
【0034】
導電性高分子材料を用いた軸封体は、電気的外部刺激を停止したときに旧位に膨張しながら復帰して軸封力を高め、一方、電気的外部刺激を加えたときに収縮して軸封力の低下により適宜の漏れ現象を発生するものである。このように、導電性高分子材料を使用した軸封装置は、非通電時において軸封状態となる、いわゆる、ノーマリークローズ(NC)の素子状態となり、また、漏れ流体を流すときの変化の形態として、材料本体が膨張・収縮するものである。この場合、導電性高分子材料に電位差を加えると、空気中の水分の吸脱着により材料本体が膨張・収縮する。
【0035】
イオン伝導高分子材料を用いた軸封体は、電気的外部刺激を停止したときに旧位に変形しながら復帰して軸封力を高め、一方、電気的外部刺激を加えたときに変形して軸封力の低下により適宜の漏れ現象を発生するものである。このように、イオン伝導高分子材料を使用した軸封装置は、NCの素子状態となり、また、漏れ流体を流すときの変化の形態として、材料本体が膨張・収縮するものである。この場合、イオン伝導高分子材料に電位差を加えると、材料中の陽イオンが水分を伴って陰極側に移動し、この結果、材料本体の含水量に偏りが生じてこの材料本体が屈曲する。
【0036】
電気的外部刺激を加えたときに当該部位以外の部位が変形する電気刺激性高分子材料を用いた軸封体は、電気的外部刺激を停止したときに旧位に変形しながら復帰して軸封力を高め、一方、電気的外部刺激を加えたときに当該部位以外の部位が変形して、軸封力の低下により適宜の漏れ現象を発生するものである。このように、この電気刺激性高分子材料を使用した軸封装置は、NCの素子状態となり、また、漏れ流体を流すときの変化の形態として、材料本体が変形するものである。
【0037】
この電気刺激性高分子材料の一例として、例えば、ポリエーテル系ウレタンがある。この材料は、主剤と硬化剤とを混合して成り、主剤は、少なくとも、スチレン、ニトリル化合物、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)、フタル酸エステルを含んでいる。また、硬化剤は、少なくとも、フタル酸、ジフェニルメタンジイソシアネート、フタル酸エステルを含んでいる。各成分を含んだ具体的な電気刺激性高分子材料としては、例えば、株式会社エクシールコーポレーション社製 人肌(登録商標)のゲルシートがある。また、この電気刺激性高分子材料は、ポリエーテル系ウレタン以外にも、例えば、薄膜のシリコンであってもよく、この場合にも上記と同様の機能や特性を発揮できる。更に、同様の機能や特性を発揮できる材料であれば、上記以外の材料を用いてもよい。
【0038】
上記の電気刺激性高分子材料は、図16に示すように変形する。この図は、ポリウレタン・エラストマーである電気刺激性高分子材料を軸封体250とし、この軸封体250に対して、局部的に相対する固定電極251、252を介して電場を加えた(電圧を印加した)状態を示している。
図において、軸封体250を固定電極250、251で挟み、この固定電極250、251に電場を加えると、図16(a)に示すように、固定電極250、251の相対部には、(1)誘電性ポリオール又は双極子モーメントを有するポリオールが電場により配向することにより、高分子鎖の構造が変化する。このとき、図16(b)に示すように、(2)誘電性エラストマーの相対固定電極251、252による電場のクーロン効果により厚み方向が減少し、それにより、軸封体250が平面方向に拡張する。また、(3)電荷の注入と偏在化により、両極において非対称な体積変化が誘起される。
【0039】
また、固定電極251、252の外周周辺部においては、電場がこの固定電極251、252周辺部を最大値として、半径方向(平面方向)に等しく減衰分布することにより、上記の(1)から(3)までの3つの働きによる合成変形応力が作用し、固定電極251、252周辺部を最大値として平面方向で均等に減少していく応力分布が形成されることにより屈曲変形が起こる。
【0040】
なお、何れの高分子材料も電気的外部刺激を加えたときと停止したときの各動作が逆になるような特性をもつように材料形状を成形してもよい。
また、何れの高分子材料を用いた場合でも、漏れ現象には、軸封状態において漏れの発生した状態である、いわゆる微少漏れを包含しており、また、電気的外部刺激を加えるときには、電気信号の値を変化させ、各軸封体の膨縮又は変形量を制御して軸封体の接触圧力の大きさを任意に制御可能に設けている。
【0041】
上記のうち、電気刺激性高分子材料、導電性高分子材料、イオン伝導高分子材料を用いた軸封体は、上下方向から保持可能なホルダーによって保持され、このホルダーの軸封体の保持面に、軸封装置の本体の外部まで電気的に繋がった電極を設けることにより、この電極から、軸封体に対して電気的外部刺激を印加又は停止できるようにしている。
【0042】
図17ないし図19においては、上記の軸封体を電気刺激性高分子材料、導電性高分子材料、イオン伝導高分子材料としたときに、これらをホルダーによって保持する場合の軸封装置の概略図を示している。
図17における軸封装置は、軸封体を電気刺激性高分子材料とした場合であり、軸封体20Aは、同心状の貫通穴21Aを伴った円板状に形成され、適度の厚みを有している。この軸封体20Aの上下面には、電極22A、23Aを設けている。
ホルダー40A、45Aは、軸封体20Aを上下側から保持し、このホルダー40A、45Aの軸封体20Aを保持する面側に電極50A、51Aを有し、この電極50A、51Aから電極22A、23Aを介して軸封体20Aに電圧を印加できるようにしている。
【0043】
この軸封装置の図示しない電源をONにし、ホルダー40A、45Aの電極間に電位差を加えると、図14、図17(a)に示すように、ホルダー40A、45A間に保持された軸封体20Aが径方向に拡張するように変形し、また、電位差を除く(電源をOFFにする)と、図17(b)に示すように径方向に縮径するように変形する。
【0044】
また、図18における軸封装置は、軸封体を導電性高分子材料とした場合であり、軸封体20Bは、同心状の貫通穴21Bを伴った円板状に形成され、適度の厚みを有している。また、軸封体を導電性高分子材料とした場合には、材料自体が電流を通す特性を有しているため、軸封体の上下面に電極を設ける必要はない。
ホルダー40B、45Bは、軸封体20Bを上下側から保持し、このホルダー40B、45Bの軸封体20Bを保持する面側に電極50B、51Bを設けており、この電極50B、51Bから軸封体20Bに電圧を印加する。
【0045】
ホルダー40B、45Bの電極間に電位差を加えると、図14、図18(a)に示すように、ホルダー40B、45B間に保持された軸封体20Bは、径方向に収縮し、また、電位差を除くと、軸封体20Bは、径方向に対して旧位に膨張しながら復帰する。
【0046】
図19における軸封装置は、軸封体をイオン伝導高分子材料とした場合であり、軸封体20Cは、同心状の貫通穴21Cを伴った円板状に形成され、適度の厚みを有している。軸封体20Cの上下面には、電極22C、23Cを設けている。
ホルダー40C、45Cは、軸封体20Cを上下側から保持し、このホルダー40C、45Cの軸封体20Cを保持する面側に電極50C、51Cを設けており、この電極50C、51Cから軸封体20Cに電圧を印加する。
【0047】
ホルダー40C、45Cの電極間に電位差を加えると、図14、図19(a)に示すように、ホルダー40C、45C間に保持された軸封体20Cは、下面側が膨張、上面側が収縮し、その結果、全体が湾曲するように変形して縮径方向に小さくなる。また、電位差を除いたときには、軸封体20Cは、径方向に対して旧位に変形しながら復帰する。
【0048】
一方、図20においては、電気的外部刺激を加えたときの当該部位以外の部位が変形する電気刺激性高分子材料を用いた軸封体を保持するときの軸封装置の概略図を示している。
この軸封装置において、軸封体20Dは、同心状の貫通孔21Dを伴った円板状に形成され、適度の厚みを有している。この軸封体20Dには、この軸封体20Dの上下面の一部を挟んだ状態で電極22D、23Dが設けられている。この電極22D、23Dは、本体外部まで電気的に繋がっており、この電極22D、23Dから軸封体20Dの一部に対して電気的外部刺激が印加又は停止できるようになっている。更に、軸封体20Dは、この電極22D、23Dを介して上下方向からホルダー40D、45Dにより保持されている。
【0049】
ホルダー40D側の電極22Dをプラス極、ホルダー45D側の電極23Dをマイナス極としてこれらの電極22D、23Dの間に電位差を加えると、図15、図20(a)に示すように、軸封体20Dの電極22D側が電極23D側に屈曲変形して軸封体20Dの表出した一部が湾曲するように変形し、軸封体20Dの外周部付近が径方向に収縮した形状になる。
また、この電位差を除くと、軸封体20Dは径方向に対して旧位に変形しながら復帰する。
【0050】
なお、何れの高分子材料を用いる場合にも、軸封体材料の成形形状を変える事により電気的外部刺激を加えたときと停止したときの動作(NO、NCの動作)を、上記の図面の動作とは逆の動作にすることが可能である。この場合にも、作用及び効果は上記と同一である。また、これは、以降の例についても同様である。
【0051】
更に、軸封体は、ホルダーを保持した状態で膨縮又は変形させる以外にも、ホルダーとセパレータを装着した状態で膨縮又は変形させることもできる。軸封体にセパレータを装着する場合の軸封装置を説明する。
【0052】
図21、22においては、軸封体にホルダー及びセパレータを装着した概略図を示している。
図21の軸封装置は、軸封体を電気刺激性高分子材料とした場合であり、軸封体30Aは、同心状の貫通穴31Aを伴った円板状に形成され、適度の厚みを有している。この軸封体30Aの上下面には、電極32A、33Aを設けている。
ホルダー40A、45Aは、軸封体30Aとセパレータ35Aを上下側から保持し、保持面側には、電極50A、51Aを有している。
セパレータ35Aは、可じょう性の導電性材料によって電極32Aと電極50Aを導通状態にしている。セパレータ35Aは、コンプライアントな同心状の貫通穴36Aを有し、軸封体30Aの上面側に接着等の手段によって固着する。
【0053】
この軸封装置に対して、ホルダー40A、45Aの電極間に電位差を加えると、図14、図21(a)に示すように、ホルダー40A、45A間に保持された軸封体30Aは、径方向に拡張しようとするが、このとき、上部側に設けたコンプライアントなセパレータ35Aにより軸封体30Aの上部側の拡張が妨げられ、その結果、軸封体30Aは、セパレータ35Aを基準として上向きに湾曲変形する。また、電位差を除くと、図21(b)に示すように旧位に復帰するように変形する。
【0054】
図22における軸封装置は、軸封体を導電性高分子材料とする場合であり、電気刺激性高分子材料の場合と同様に、軸封体30Bが、同心状の貫通穴31Bを伴った円板状に形成され、適度の厚みを有している。セパレータ35Bは、軸封体30Bの上面側に接着等の手段で固着する。ホルダー40B、45Bは、軸封体30Bとセパレータ35Bを上下側から保持し、保持面側には、電極50B、51Bを有している。
【0055】
この軸封装置に対して、ホルダー40B、45Bの電極間に電位差を加えると、図14、図22(a)に示すように、ホルダー40B、45B間に保持された軸封体30Bは、径方向に収縮しようとするが、このとき、上部側に設けたコンプライアントなセパレータ35Aにより軸封体30Bの上部側の収縮が妨げられ、その結果、軸封体30Bは、セパレータ35Aを基準として、下向きに湾曲変形する。また、電位差を除いたときには、旧位に膨張しながら復帰する。
【0056】
なお、イオン伝導高分子材料は、前記のように、ホルダー40C、45Cのみを装着した状態で、電位差を加えれば湾曲変形するようになっているため、セパレータの装着は必要ないが、必要に応じてセパレータを取付けるようにしてもよい。この場合、軸封体は、セパレータによって補強され、セパレータを設けない場合と同様に動作できる。
【0057】
また、電気的外部刺激を加えたときの当該部位以外の部位が変形する電気刺激性高分子材料は、上下面の一部が電極によって挟まれた状態であればよいため、イオン伝導高分子材料と同様にセパレータを装着する必要はないが、必要に応じてセパレータを設けてもよい。
以上のように、本発明の軸封装置は、各種の高分子材料を用いて異なる内部構造によって構成でき、これにより、実施の状況に応じて適宜の構成に設けることができる。
【0058】
次に、本発明における軸封装置の開閉動作を、上記の中から代表的な例を用いてより詳細に説明する。
ないし図においては、本発明における軸封装置の一例を示している。この例における軸封装置は、軸封体を電気刺激性高分子材料により形成し、この軸封体をホルダーのみによって保持する構造としている。装置本体10は、ハウジング11の内部に軸封部15を設け、この軸封部15に軸封体20を配設すると共に、軸封部15に軸封体20の変形により漏れ流体を漏らすことのできる漏れ流路13、14を設けている。
【0059】
ハウジング11は、略筒状に形成し、軸封部15により、このハウジング11内部の流路を軸封可能に設けている。この軸封部15には座面16を形成し、この座面16の両側に漏れ流路13、14を周方向に向けて略平行に設けている。軸封部15内への軸封体20の配設後には、軸封体20を変形したときに座面16に対して軸封体20の当接面24が当接することで軸封でき、また、漏れ流路13、14が連通することで流体を漏らすことが可能になっている。なお、図示しないが、漏れ流路13と14には、継手やパイプ等の適宜の管路を接続して流路を構成できる。
【0060】
軸封体20は、可じょう性電極である上面電極22、下面電極23を伴っており、この電極22、23に対して電圧を印加し、このとき、電気信号の値を変化させることが可能になっている。また、軸封体20は、この電気信号を変化させることで変形量を制御可能であり、座面16との接触圧力の大きさを任意に変えることができるようになっている。軸封体20は、略円形状の外形を呈し、中央部位には貫通穴21を設けている。軸封体20の外形形状は、図のような環形状以外にも、例えば、矩形、台形などの四角形や、又は、多角形などの各種形状に設けることもできるのは勿論である。
軸封体20の外周側には当接面24を形成し、この当接面24は、ハウジング11の座面16に当接でき、このとき、軸封状態及び接触面圧力が調整可能な微少漏れ状態にでき、また、離間させたときに軸封を解除して漏れの状態にできる。
【0061】
、図において、ホルダー40は、上部ホルダー41と下部ホルダー45よりなり、このホルダー41、45により軸封体20を挟んでいる。
上部ホルダー41は、略筒状の筒部41aとこの筒部41aの下部に鍔部41bを有している。この上部ホルダー41には、軸封体20を保持する鍔部41bの下面側の保持面41cから筒部41aの内周面の一部まで軸方向に沿うように外部電極50を形成しており、この外部電極50を装置本体10の外部まで繋げている。外部電極50に電圧を印加すると、この電圧は軸封体20の上面電極22側まで印加できるようになっている。このように、外部電極50は、立体回路により成形部品である上部ホルダー41の表面上にパターニングされる。
【0062】
下部ホルダー45は、略円柱状の円柱部45aとこの円柱部45aの下部に鍔部45bを有している。この下部ホルダー45には、軸封体20を保持する保持面45cから円柱部45aの外周面の一部まで軸方向に沿うように外部電極51を形成しており、この外部電極51を装置本体10の外部まで繋げている。外部電極51に電圧を印加すると、この電圧は軸封体20の下面電極23側まで印加できるようになっている。このように、外部電極51は、外部電極50と同様に、立体回路により下部ホルダー45の表面上にパターニングされる。
【0063】
上下ホルダー41、45の鍔部41b、45bの外径は、軸封体20の外径と略等しく形成している。また、下部ホルダー45における円柱部45aの外径は、上部ホルダー41の筒部41aの内周面内径と軸封体20の貫通穴21の内径よりも小さく形成し、筒部41a内周部と円柱部45aを挿入できるようにしている。
【0064】
軸封体20は、貫通穴21に下部ホルダー45の円柱部45dを挿入し、下部ホルダー45の円柱部45aを上部ホルダー41の筒部41aに挿入することにより、鍔部41bと鍔部45bの間に挟着される。これにより、各鍔部41b、45b側の外部電極50、51を軸封体20の上面電極22、下面電極23に当接させた状態で一体化できる。このとき、軸方向の外部電極50、51は、対向する円周位置に設けているため、互いに接触すること無く回路が短絡することがない。
また、円柱部45dと45aの段差隙間により、電極51は、上部ホルダー鍔部下部41cにパターニングされた外部電極50との短絡をすることがない。各外部電極50、51に電圧を印加し、軸封体20に電圧が加わったときには、この軸封体20は、周方向に変形して拡径できるようになっている。
【0065】
ホルダー41、45は、軸封体20を上下方向から局部的に圧接しながら保持できるようになっており、この圧接部分により、軸封体の通過漏れを防ぎ、また、電気の通電を行うことが可能になっている。また、この圧接部分以外は、軸封体20の膨縮が抵抗なく可能になるように、適当なすき間を設けている。
また、図のように、上部ホルダー41の筒部41a内周面の上方側、下部ホルダー45の円柱部45a外周面の上方側には、それぞれ溝部54、55を設けており、この溝部54、55に図示しない配線を接続し、この配線を介して装置本体10の外部より各外部電極50、51に電圧を印加可能に設けている。
【0066】
上記のように構成することにより、軸封体20を用いて人口筋肉であるEPAM構造に設けることができ、軸封体20の変形時に発生する力を大きくでき、また、軽量であり、駆動構造が単純で小型、動作時の音が静か、低電圧で駆動可能などの優れた特性を有した構造となっている。
【0067】
軸封体20は、ホルダー41および45を装着した状態で、略筒状に形成した装着体17に装着し、この装着体17をハウジング11内に装着することで、軸封体20を本体10内の適切な位置に配設できるようになっている。装着体17とハウジング11の間にはOリング18を設けており、このOリング18でこれらの間の漏れを防いでいる。
また、装着体17とホルダー41を一体に設けても同様の効果を発揮することができる。
【0068】
電源回路60は、各外部電極50、51に接続してこの外部電極50、51に電圧を印加可能に設けたものであり、この回路60内に、可変電源61、スイッチ62と可変抵抗器63を有し、スイッチ62をオンすると、回路が閉じられて軸封体20の電極22、23に異極の電圧を印加して充電できる。例えば、上部ホルダー41の外部電極50に−極の電圧を加えた場合には、下部ホルダー45の外部電極51には+極の電圧が加わるようになっている。また、この電圧を可変電源61や可変抵抗器63により調節可能に設けている。
【0069】
続いて、本発明の軸封装置の上記実施例における作用を説明する。
の状態から図のようにスイッチ62をオンすると、上部ホルダー41の外部電極50と、下部ホルダー45の外部電極51に異なる極性の電圧が印加され、この電圧は、軸封体20の上下面電極22、23に印加される。これにより、軸封体20は、周方向に拡径するように変形し、この変形により、軸封体20の当接面24が本体10の座面16に加圧接触し、漏れ流路13と14の間の流路を軸封して流体を封止することができる。
【0070】
このとき、可変電源61や可変抵抗器63の調節により電圧の印加量(電圧の大きさや電圧の印加時間(過渡応答))を制御して軸封体20の変形量や変形応答時間を調節できるため、座面16に対して適切な押圧力によって当接面24を接触させることができ、これにより漏れを効果的に防いで軸封効果を高めることができる。また、漏れ状態から、徐々に電圧を上げることで、軸封体を変形させて微少レベルの漏れから封止までの状態を任意に制御できる。更に、この軸封状態から印加電圧を少しずつ下げることで、軸封状態を維持したままで漏れを発生させる、いわゆる微少漏れを制御することもできる。更に、続けて印加電圧を下げることにより、軸封体20による後述の隙間δの量を調節することができ、これにより所定の流量に制御することができる。このように、装置本体10は、漏れを発生するか、或は漏れ量をゼロとする制御以外の、微少レベルの漏れ量の制御を行うこともできる。
【0071】
一方、図の状態から図のようにスイッチ62をオフすると、外部放電回路は、図示しないが、外部電極50、51を介して軸封体20の上下面電極22、23から電荷を放電する。これにより、軸封体20は非通電状態となって周方向に縮径するように変形し、この変形により軸封体20(当接面24)とハウジング11(座面16)の間に同心円状の隙間δが生じ、この隙間δから、それまでの封止状態の流体を漏らすように流して漏れ流路13と14を連通することができる。
この場合、スイッチ62のオフ時における隙間δの量は、装置本体10の固有のものとなるため、この装置固有の漏れ量を発生させることができ、この漏れ量を、一定の流体流量として利用することができる。これにより、この軸封装置を、例えば、電磁弁等にも応用することができる。
【0072】
このように、装置本体10は、軸封体20に外部電極50、51を介して電気的外部刺激を与えることによりこの軸封体20を拡径又は縮径側に変形させているので、軸封体20を移動させることなく軸封状態として流体を封止したり、又は、軸封状態を解除して漏れ量を調節しながら流体を流すことができる。
また、このような軸封体20のみを可動部分とした内部構造により、ネジ送り機構などの動作機構を設ける必要が無いため、流体を封止・非封止する場合には可逆的な切換動作によって容易に行うことができ、しかも、軸封体20は、可動時にねじれたりすることがないため、傷が付いたり劣化したりするのが防がれ、優れた軸封機能を維持できる。
【0073】
なお、この例においては、軸封体を電気刺激性高分子材料としているため、電圧を印加した場合に軸封体が拡縮変形するようになっているが、軸封体を導電性高分子材料とすると、電圧を印加した場合には軸封体が膨張・収縮によって拡縮する。また、軸封体をイオン伝導高分子材料、又は電気的外部刺激を加えたときの当該部位以外の部位が変形する電気刺激性高分子材料とすると、電圧を印加した場合に軸封体が変形する。
また、漏れ流路13と14は、何れが1次側、2次側であってもよく、任意の方向に流体を漏らしたり封止したりすることができる。
【0074】
次に、本発明における軸封装置の他例を説明する。なお、以降の例において、上記例と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。また、この例の場合にも、上記例と同様に、軸封体として用いる高分子材料は、少なくとも、電気刺激性高分子材料、導電性高分子材料、イオン伝導高分子材料、電気的外部刺激を加えたときに当該部位以外の部位が変形する電気刺激性高分子材料の4種類を含んでいるが、説明上、この例では電気刺激性高分子材料を用いた場合を述べる。
【0075】
この例では、図ないし図10のように、軸封体80、85を本体70内に少なくとも2つ以上設け、この軸封体80、85をそれぞれ上下方向から保持可能なホルダー90を設け、このホルダー90の軸封体の保持面に、本体70の外部まで電気的に繋がった電極を設けて、この電極からの電気的外部刺激の印加又は停止により軸封体80、85を変形させて、本体70の略筒状のハウジング71に形成した少なくとも3つ以上の漏れ流体の流路73、74、75を切換え可能に設けたものである。
【0076】
11、図12のように、ホルダー90は、第1ホルダー91、第2ホルダー92、第3ホルダー93、第4ホルダー94よりなり、これらのホルダー91、92、93、94の間に2つの軸封体80、85と、1つのスペーサ95を介在させている。
第1ホルダー91は、略筒状の筒部91aとこの筒部91aの下部に鍔部91bを有した形状に設けている。電極100は、軸封体80を保持する鍔部91bの下面側と筒部91aの内周面の一部に軸方向に沿うように形成して本体70の外部に繋げている。これにより、筒部91aの上方側から電極100に電圧を印加したときに、この電圧を軸封体80の上面82に印加できるようにしている。
【0077】
第2ホルダー92は、略筒状の筒部92aとこの筒部92aの下部に鍔部92bを有した形状に設け、電極101は、鍔部92bの上面側と筒部92aの外周面の一部に軸方向に沿うように形成して本体70の外部に繋げている。これにより、電極101から電圧を印加したときに、この電圧を軸封体80の下面83に印加できるようにしており、この電圧は、第1ホルダーの電極100と異なる極性になっている。
【0078】
第3ホルダー93は、略筒状の筒部93aとこの筒部93aの下部に鍔部93bを有した形状に設け、電極102は、鍔部93bの下面側と筒部93aの内周面の一部に軸方向に沿って形成して本体70の外部に繋げている。
また、第4ホルダー94は、略円柱状の円柱部94aとこの円柱部94aの下部に鍔部94bを有した形状に設け、電極103は、鍔部94bの上面側と円柱部94aの外周面の一部に軸方向に沿って形成して本体70の外部に繋げている。第4ホルダーの電極103は、第3ホルダーの電極102と異なる極性になっている。
【0079】
各ホルダー91、92、93、94の電極100、101、102、103は、筒部91a、92a、93a及び円柱部94aの上面側より外部に取出し可能であり、各電極に対して外部の電源回路から電圧を印加できるようにしている。なお、この例では電源回路を省略し、引出し用の線のみを記している。
【0080】
各鍔部91b、92b、93b、94bの外径は、軸封体80、85、及びスペーサ95の外径と略等しく形成している。スペーサ95の外径は、適宜小さくしてもよい。また、第1ホルダー91の筒部内径>第2ホルダー92の筒部外径、第2ホルダー92の筒部内径>第3ホルダー93の筒部外径、第3ホルダー93の筒部内径>第4ホルダー94の円柱部外径の関係になるようにし、軸封体80、85、及びスペーサ95は、それぞれ、第1ホルダー91と第2ホルダー92の間、第3ホルダー93と第4ホルダー94の間、第2ホルダー92と第3ホルダー93の間に装着可能な貫通穴を有している。
【0081】
これらを一体化する場合、軸封体80を第1ホルダー91と第2ホルダー92の間、軸封体85を第3ホルダー93と第4ホルダー94の間に挟み、第2ホルダー92と第3ホルダー93の間にスペーサ95を介在した状態で、各筒部及び円柱部をそれぞれ上方に位置する対応する筒部に挿入する。このとき、第1ホルダー91と第2ホルダー92の電極100と電極101、第3ホルダー93と第4ホルダー94の電極102と電極103は接触しないようになっており、各電極に電圧を加えた場合には、各軸封体80、85の上下面に極性の異なる電圧が加わって、各軸封体80、85がそれぞれ周方向に拡径できるようにしている。
一体化した軸封体80、85は、ホルダー90とスペーサ95と共に略筒状に設けた装着体78に装着し、この装着体78をOリング79を介してハウジング71内に装着している。
また、装着体78とホルダー91は一体に設けてもよい。
【0082】
の状態において、電極100、101への印加を停止し電極102、103に電圧を印加すると、この電圧により軸封体85が拡径側に変形し、軸封体85の当接面89が座面77に加圧接触し、これにより、漏れ流路74と漏れ流路75の間の流路が閉じられる。一方、漏れ流路73と漏れ流路74の間の軸封体80は、非通電状態であることにより縮径した状態を維持し、これにより、当接面84と座面76の間に隙間δ´が生じ、この隙間δ´を介して漏れ流路73と漏れ流路74が連通状態になって漏れ流路が形成される。
【0083】
一方、図の状態から電極102、103への印加を停止し、電極100、101に電圧を印加すると、図10の状態となる。図において、軸封体85は、非通電状態となるため縮径した変形状態となり、当接面89と座面77の間には隙間δ"が生じる。一方、軸封体80は、通電状態になるため拡径側に変形し、この軸封体80の当接面84が座面76に加圧接触する。これにより、漏れ流路73と漏れ流路74の間の流路が閉じられ、一方、漏れ流路74と漏れ流路75の間の流路は連通した状態となる。
以上のように、この例では、複数の軸封体80、85を設け、電圧の印加を制御することによりこれらの軸封体80、85を変形させて、各軸封体80、85の当接面84、89を漏れ流路73、74、75の間に設けた座面76、77に接離させることにより、漏れ流路を切換可能に設けている。この場合も、前記の例と同様に、印加電圧を制御することにより隙間δ"の量を変えて漏れ流量を調節することができ、更に、軸封体が加圧接触した状態で電圧を調節した場合には、微少漏れ量を制御することもできる。
【0084】
13においては、ホルダーを他の形状に設けた場合を示しており、このホルダー110は、鍔部112の外径側に複数の穿孔穴113を設け、また、ホルダー110をハウジング115の軸封部116に収容したときに、この軸封部116と鍔部112の外周の間に間隙αを設けることができるようにしたものである。なお、本例においては、穿孔穴113を鍔部112の周方向の中間位置から外径側に設けている。
このホルダー110は、このような鍔部112の形状により、図示しない軸封体が膨縮又は変形したときに、この軸封体をガイドして形状を安定させることができ、また、鍔部112を、ホルダー110に装着した軸封体をハウジング115に挿入する際のガイドとすることができる。
【0085】
このホルダー110に対して図示しない軸封体を設ける場合、軸封体の収縮時の外径が穿孔穴113の位置よりも小さくなるように設定し、ホルダー110に装着した軸封体を縮径側に収縮・変形させると、流体の通過面積を確保(増加)できることにより軸封漏れ時における漏れ量(流量)を大きくすることができる。一方、軸封体を拡径側に膨張・変形させると、穿孔穴113を塞いで流路を閉じることができ、流体を確実に封止することができる。鍔部は、軸封体の拡径時に流路が塞がれ、または、縮径時に流体の通過面積を増加できるものであれば、例えば、網目状の穴を形成することもでき、その態様にはこだわらない。また、このホルダーの鍔部の態様は、上述した何れの軸封装置の場合でも利用することができる。
【0086】
においては、本発明の軸封装置を安全弁120に利用した例を示している。
図において、装置本体121は、電圧の印加又は印加の停止により周方向に膨縮又は変形可能な軸封体122を有し、この軸封体122をハウジング123に収納している。ハウジング123は、内部流路が連通するように配管124に取付けられている。また、圧力センサ125は、配管124内部の圧力の変動を電圧として発信し、配管124内の圧力変化を検出可能に設けている。スイッチ回路126は、圧力センサ125と装置本体121の間に設け、この圧力センサ125の圧力の変動に応じて装置本体121への電圧の印加を停止できるようにしている。また、スイッチ回路126には、初期の配管内への圧力封入時において、軸封体122に所定の圧力値に到達する迄の間、暫定的に軸封体封止用の基準電圧値が印加される。
【0087】
安全弁120は、配管124内の圧力値を圧力センサ125で検出し、この圧力値が所定以上になった場合に、スイッチ回路126により電圧の印加を停止し、この電圧印加の停止により、軸封体122を通常時の膨張・変形状態から収縮・変形させて装置本体121のハウジング123と軸封体122の間に隙間を生じさせ、この隙間から圧力ブリーフすることで配管124内の圧力を下げることができる。
又、ブリーフ後に、圧力が規定値以下に復帰した場合は、スイッチ回路126により、圧力センサ125の電圧が軸封体に122に印加され、軸封体122が収縮・変形状態から膨張・変形状態に変化し、圧力漏れを封止することができる。
【0088】
次に、図において、本発明の軸封機構をピストン・シリンダ駆動機構130に利用した駆動装置の例を示している。
図において、装置本体131は、周方向に膨縮又は変形可能な4つの軸封体132、133、134、135をハウジング136内に収納してエア流路を切り換え可能に設けたものであり、ハウジング136には、供給漏れ流路137、排出漏れ流路138、139、給排漏れ流路140、141を形成している。供給漏れ流路137は、外部からの圧縮エアを装置本体131内に供給可能に設けており、また、排出漏れ流路138、139は、装置本体131内の圧縮エアを外部に排出可能に設けている。また、給排漏れ流路140、141は、シリンダ部130aと繋がっており、装置本体131からこのシリンダ部130a内に圧縮エアを供給・排気可能に設けている。
【0089】
各軸封体132、133、134、135は、排出漏れ流路138と給排漏れ流路141、この流路141と供給漏れ流路137、この漏れ流路137と給排漏れ流路140、この流路140と排出漏れ流路139の間にそれぞれ設け、各軸封体132、133、134、135に電圧の印加の制御を行うことで、この軸封体132、133、134、135をそれぞれ膨縮又は変形させて、各流路の間を軸封可能に設けている。
【0090】
(a)において、軸封体132、134への電圧の印加を停止してこれらを縮径側に収縮・変形させ、一方、軸封体133、135に電圧を印加してこれらを拡径側に膨張・変形させるように制御すれば、図のように、供給漏れ流路137と給排漏れ流路140、給排漏れ流路141と排出漏れ流路138の間の流路がそれぞれ連通すると共に、排出漏れ流路139と給排漏れ流路140、給排漏れ流路141と供給漏れ流路137の間の流路がそれぞれ塞がれる。
この状態で、供給漏れ流路137側から圧縮エアを供給すると、この圧縮エアは、給排漏れ流路140を介してシリンダ部130a内に送り込まれ、図においてピストン130bを左方に移動させる。このピストン130bの移動により、シリンダ部130a内の圧縮エアは、給排漏れ流路141を介して排出漏れ流路138より排出される。
【0091】
一方、図(b)において、軸封体132、134に電圧を印加してこれらを拡径側に膨張・変形させ、また、軸封体133、135への電圧の印加を停止してこれらを縮径側に収縮・変形させるように制御すれば、図のように、供給漏れ流路137と給排漏れ流路141、給排漏れ流路140と排出漏れ流路139の間の流路がそれぞれ連通すると共に、給排漏れ流路141と排出漏れ流路138、供給漏れ流路137と給排漏れ流路140の間の流路がそれぞれ塞がれる。
この状態で、供給漏れ流路137側から圧縮エアを供給すると、この圧縮エアは、給排漏れ流路141を介してシリンダ部130a内に送り込まれ、図においてピストン130bを右方に移動させる。このピストン130bの移動により、シリンダ部130a内の圧縮エアは、給排漏れ流路140を介して排出漏れ流路139より排出される。
このように、ピストン・シリンダ駆動機構130において、各軸封体132、133、134、135への電圧の印加を制御して流路を切換えることができ、1つの供給漏れ流路137から圧縮エアを供給してピストン130bを往復動させることができる。
【0092】
以上のように、本発明の軸封装置を用いて、安全弁120と、ピストン・シリンダ駆動機構130を設けた場合を説明したが、これらはあくまでも例にすぎず、本発明の軸封装置は、流体流路の一次側と二次側を軸封したり、この軸封を解除して所定の漏れ量を発生させたりする等、微少漏れを制御するものであれば、各種の装置や機構などに応用できる。
【0093】
また、図示しないが、本発明の軸封装置は、流路の一部として構成する以外にも、軸封部を部屋状に設けて軸封室とし、この軸封室に流体を収納することもできる。
また、装置本体を薬液に耐えうる材質や内部構造に設けることで、薬液の封止、又は、薬液の流量を制御しながら供給することもできる。これにより、例えば、液晶製造や半導体精密プラント等の一部として軸封装置を設けることができる。この場合、装置のインレット・アウトレット側に接続する管の材質を自由に選択することもでき、適用流体に応じて適宜変更することができる。
【0094】
次に、軸封装置を用いた弁構造について述べる。
この場合の軸封装置は、本体にホルダーを介して環状の軸封体を装入し、この軸封体は、基部をホルダー又は本体に固定して基部の他端側を自由端部とし、軸封体に電気的外部刺激を加えたときに自由端部を軸封部として略真円状に拡縮させて軸封と漏れの何れかの状態にしたものである。
【0095】
そして、この軸封装置を用いた弁構造は、本体に外部と連通する複数の流路を形成し、この流路の間に軸封体の自由端部である軸封部を軸封と漏れの何れかの状態にすることにより、流路を切り換え可能に設けたものである。
【0096】
図23においては、この弁構造に用いる軸封体の高分子材料を示している。この弁構造において使用する高分子材料は、前記の軸封装置と同様に、電気的外部刺激を介して膨張・変形でき、少なくとも、電気刺激性高分子材料、導電性高分子材料、イオン伝導高分子材料の3種類を含んでいる。これらの高分子材料の特性は、前述と同様である。また、電気的外部刺激を加えたときに当該部位以外の部位が変形する電気刺激性高分子材料の説明は省略するが、この高分子材料に関しても適宜の構成に設けることにより、以下に示す前記3種類の高分子材料と同様に軸封装置を用いた弁構造として利用できる。この高分子材料を用いる場合でも、その特性は前述と同様である。
【0097】
軸封体は、高分子材料が電気刺激性高分子材料、又は、イオン伝導高分子材料である場合には板状基材の表裏面に電極を形成し、また、高分子材料が導電性高分子材料である場合には板状基材に電極を設ける必要がなく、この基材を環状に成形することで形成される。
また、軸封体は、高分子材料が電気刺激性高分子材料、又は、イオン伝導高分子材料である場合には、中空円筒状の内外周面に電極を一体に設けることで形成できる。
図24ないし図26においては、板状基材を環状に形成して軸封体を設けた場合の概略図を示している。
【0098】
図24における弁構造は、軸封体を電気刺激性高分子材料とした場合であり、この軸封体160Aには、板状の基材161Aの内外周に電極162A、163Aをパターニングし、この基材161Aを同心状の中空円筒状に形成したものである。この軸封体160Aの外周側には、コンプライアントな特性を有する材料である、例えば、樹脂からなるセパレータ168Aを一体に接着し、このセパレータ168Aを軸封体160Aと一体に動作するようにしている。
【0099】
ホルダー170Aは、軸封体160Aを内周側から保持し、このホルダー170Aに設けた連通孔171A、172Aと、軸封体160Aに設けた貫通穴164A、165Aを介して軸封体160Aの電極162A、163Aに外部から電圧を印加できるようにしている。
また、軸封体160Aは、ホルダー170Aの連通孔171A、172Aに対して貫通穴164A、165Aを固着して基部166Aを設け、この基部166Aの他端側の自由端部167A側をホルダー170Aに対して略真円状に拡縮変形自在に設けている。
【0100】
この弁構造の図示しない電源をONにし、筒状の軸封体160Aの内外周の電極162A、163A間に電位差を加えると、軸封体160Aは軸方向に拡張する方向に変形しようとする。このとき、軸封体160Aは、セパレータ168A側の形状が維持されようとするため、セパレータ168A側で無い内周側がより拡張した形状となる。従って、軸封体160Aは、図23、図24(a)に示すように、基準の円筒形状となるホルダー170Aに対して、基部166Aを除く自由端部167A側が拡径変形する。
また、電位差を除くと、図24(b)に示すように、ホルダー170Aに沿うように自由端部A側が縮径変形するように旧位に復帰する。
【0101】
また、図25、図26における弁構造は、軸封体を導電性高分子材料とした場合であり、この場合には、軸封体160Bに電極を設ける必要はなく、基材161Bを同心状の中空円筒状に形成して形成したものである。セパレータ168Bは、図24と同様に樹脂からなり、このセパレータ168Bは、図23においては、軸封体160Bの外周側に一体に接着し、一方、図26においては、軸封体160Bの内周側に一体に接着している。
【0102】
ホルダー170Bは、軸封体160Bを内周側から保持し、このホルダー170Bに設けた連通孔171B、172Bと、軸封体160Bに設けた貫通穴164B、165Bを介して軸封体160Bの外周面162B、内周面163Bに外部から電圧を印加できるようにしている。
また、軸封体160Bは、ホルダー170Bの連通孔171B、172Bに対して貫通穴164B、165Bを固着して基部166Bを設け、この基部166Bの他端側の自由端部167B側をホルダー170Bに対して略真円状に拡縮変形自在に設けている。
【0103】
図25の弁構造において、軸封体160Bの内外周面162B、163B間に電位差を加えると、軸封体160Bは軸方向に膨張しようとする。このとき、軸封体160Bは、セパレータ168B側の形状が維持されようとするため、セパレータ168B側で無い内周側がより膨張する。従って、軸封体160Bは、図23、図25(b)に示すように、基準の円筒形状となるホルダー170Bに対して沿うように基部166Bを除く自由端部167B側が拡径する。また、電位差を除くと、図25(b)に示すように、自由端部167B側が収縮して旧位に復帰する。
【0104】
一方、図26の弁構造において、軸封体160Bの内外周面162B、163B間に電位差を加えると、軸封体160Bは軸方向に収縮しようとする。このとき、軸封体160Bは、セパレータ168B側の形状が維持されようとするため、セパレータ168B側で無い外周側がより収縮する。従って、軸封体160Bは、図23、図26(a)に示すように、ホルダー170Bに対して、基部166Bを除く自由端部167B側が拡径する。また、電位差を除くと、図26(b)のように、ホルダー170Bに対して沿うように自由端部167B側が膨張して旧位に復帰する。
【0105】
図27における弁構造は、軸封体をイオン伝導高分子材料とした場合であり、軸封体160Cは、電気刺激性高分子材料の場合と同様に板状の基材161Cの内外周に電極162C、163Cをパターニングし、この基材161Cを同心状の中空円筒状に形成したものである。軸封体160Cは、図19の軸封装置の場合と同様にセパレータを装着する必要はないが、必要に応じて取付けるようにしてもよい。
【0106】
ホルダー170Cは、軸封体160Cを内周側から保持し、このホルダー170Cに設けた連通孔171C、172Cと、軸封体160Cに設けた貫通穴164C、165Cを介して電極162C、163Cに外部から電圧を印加できるようにしている。
また、軸封体160Cは、ホルダー170Cの連通孔171C、172Cに対して貫通穴164C、165Cを固着して基部166Cを設け、この基部166Cの他端側の自由端部167C側をホルダー170Cに対して略真円状に拡縮変形自在に設けている。
【0107】
図27の弁構造において、軸封体160Cの内外周の電極162C、163C間に電位差を加えると、軸封体160Cは、内周面側が膨張し、外周面側が収縮するため、図27(a)に示すように、基部166Cを除く自由端部167Cは、先端側がより拡径した形状となる。また、電位差を除くと、図27(b)に示すように、ホルダー170Cに沿うように自由端部167C側が旧位に復帰する。
【0108】
次に、上記の弁構造の流路の開閉動作を、上記の中から代表的な例を用いてより詳細に説明する。
図28ないし図30においては、軸封装置を用いた弁構造の一例を示している。
軸封体160は、図30(b)、(c)に示すように、イオン伝導高分子製の板状の基材161の表裏面161a、161bに電極162、163を有し、この基材161を図30(a)のように環状に成形したものである。図30(b)は、図30(a)におけるab−a´b´線を切断線として軸封体160を展開した展開図であり、図におけるハッチング部分は、電極162を表している。また、図30(c)は、図30(a)の裏面側の展開図であり、図におけるクロスハッチング部分は、電極163を表している。
【0109】
電極162、163は、軸封体160の軸方向において約半分の長さで帯状に形成した帯状電極162a、163aを有し、軸封体160を真円状に成形したときにこの帯状電極162a、163aが表裏面161a、162bに周設するようにしている。
また、帯状電極162a、163aの他端部側には、貫通穴164、165を互いに対向して設けている。この貫通穴164、165は、帯状電極162a、163aから引出すように設けた引出し電極162b、163bによって帯状電極162a、163aと結ばれ、貫通穴164、165よりこの引出し電極162b、163bを介して電極全体に電圧を印加可能に設けている。このように、貫通穴164、165を介して表裏面の各電極162、163に電圧を印加する構成としているので、電極162と163が短絡することがなく、電圧の印加時には、軸封体160の表裏面161a、161bに対して、異なる極性の電圧を印加することができるようになっている。
【0110】
ホルダー170は、略円筒状の円筒部170aと、この円筒部170aよりやや拡径した拡径部170bと、この拡径部170bよりも拡径した蓋部170cより成っている。円筒部170aは、図示しない外径が軸封体160の図示しない内径よりもやや小径になるように形成し、この外周側に軸封体160を装着可能に設けている。また、拡径部170bは、図示しない外径を本体150の図示しない内径と略同径かやや小径に設け、本体150の内径側に嵌入可能に設けている。蓋部170cは、本体150の開口端部152側を被蓋に可能な外径に形成している。
また、ホルダー170において、軸封体160の貫通穴164、165が対応する位置にはそれぞれ連通孔171、172を形成しており、この連通孔171、172を介して電源回路60からの配線を電極162、163まで結線可能にしている。
【0111】
電源回路60は、電源61とスイッチ62を有し、スイッチ62をオンにしたときには、回路が閉じられて軸封体160の電極162、163に電圧を印加することができるようになっている。この回路60内には、図示しない可変抵抗器を設けて電圧を調節するようにしてもよく、また、電源61のプラスマイナスの極性は、図28、図29に示した極性に限ることなく、極性を入れ換えるようにしてもよい。
【0112】
軸封体160とホルダー170を装着する際には、貫通穴164、165を連通孔171、172の位置に合わせながら、軸封体160をホルダー170に対して拡径部170bの位置まで装着することで適切な位置決め状態で装着でき、電源回路60をホルダー170内側から連通孔171、172を介して電極162、163に結線できるようになっている。この結線を行う場合には、電極163は、連通孔172を介して内周側の引出し電極163bに結線し、一方、電極162は、連通孔171と貫通穴164を通した状態で外周側の引出し電極162bに結線する。
【0113】
電源回路60と電極162、163の結線後には、貫通穴164、165と連通孔171、172に適宜の固着材料を封入して軸封体160の基部166をホルダー170に固定し、この基部166の他端側を自由端部167とし、この自由端部167を、ホルダー170に対して略真円状に拡径又は縮径変形自在に設けている。また、固着材料の封入後には、貫通穴と連通孔を封止して、流体がホルダー170の内側に浸入するのを防いでいる。更に、ホルダー170の内側には、二点鎖線に示したポッティング材を充填するようにしてもよい。
【0114】
軸封体160は、ホルダー170を介して本体150に装入し、装入時には、ホルダー170の蓋部170cが本体150の開口端部152に当接するまで拡径部170bを嵌入させることで、自由端部167を弁座となる座面153に当接可能な適正な位置に配設可能になっている。また、開口端部152には環状溝部152aを形成し、この環状溝部152aにOリング154を装着しているので、ホルダー170と本体150の一体化後には、このOリング154が本体150とホルダー170の間をシールしてこの間から流体が漏れるのを防いでいる。
【0115】
また、円筒状の本体150の周面方向には、外部と連通する複数の流路155、156を形成し、この流路155、156の間に座面153を設けている。
この弁構造は、軸封体160に電気的外部刺激を加えることにより自由端部167を略真円状に膨縮又は変形させ、この自由端部167を軸封部として座面153に接離させて軸封又は漏れの何れかの状態にし、流路155、156を切り換え可能に設けたものである。
【0116】
図28の状態からスイッチ62をオンにすると、電極162、163に対して異なる極性の電圧が印加される。軸封体160は、両面にこのような電極162、163を配した状態で略円筒状に形成され、しかも、この軸封体160の基部166をホルダー170に固定して他端側を自由端部167としているので、電圧の印加時には、軸封体160の先端側にいくに従って拡径変形しようとする。これにより、軸封体160は、自由端部167が基部166側よりも円周方向に拡径した、いわゆる、末広がり状(ラッパ状)の形状となり、この拡径時の形状は、軸線に対して垂直方向の断面が略真円形状になる。この略真円状の自由端部167は、より電圧を加えたときに真円状の座面153に周面状に加圧接触して、流路155と流路156の間を閉じて軸封状態にすることができる。しかも、この軸封状態から印加電圧を少しずつ下げるように制御することにより、微少漏れ量を所定の流量に調節でき、軸封体160を弁体として動作させることができる。
【0117】
一方、図29の状態からスイッチをオフにすると、軸封体160は非通電状態となり、図28のように、自由端部167が元の状態に縮径変形し、軸封体160全体が略筒形状の状態に戻る。この変形により、軸封体160と本体150の間に隙間が生じ、この隙間により流路155と流路156が連通し、流体を流すことができる。
【0118】
このとき、自由端部167で確実に軸封シールするために、座面153を高い精度で加工して表面粗さや真円度などの寸法精度を向上させ、また、軸封体160とのシールに適した材料を選択して本体150を形成し、漏れの無いように設ける必要がある。この場合、例えば、軸封体160の縮径時における本体150と軸封体160の周方向における隙間が0.5mm程度になるように製作すれば縮径時に流体を流すことができるようになっており、また、軸封体160を拡縮径させたときの微少漏れも高精度に制御できる。
【0119】
なお、この例では、軸封装置を用いた弁構造として、軸封体をイオン伝導高分子材料とした場合を説明したが、電気刺激性高分子材料や導電性高分子材料、又は電気的外部刺激を加えたときに当該部位以外の部位が変形する電気刺激性高分子材料、或はその他の高分子材料により軸封体を設けることもできることは勿論である。この場合、各高分子材料に対応した弁構造に設けるようにし、例えば、導電性高分子材料を軸封体とする場合には、軸封体に電極を設ける必要はない。また、電気刺激性高分子材料や導電性高分子材料を軸封体とする場合には、図28の一点鎖線に示すように、軸封体160の外周側或は内周側に、可じょう性のセパレータ169を高分子材料に接着して設けるようにする。
【0120】
図31ないし図33においては、軸封装置を用いた弁構造を多方弁に応用した例でありこの弁構造は、軸封体190をイオン伝導高分子材料とし、軸封体190の略中央付近を基部196としてホルダー200の円筒部201に固定し、軸封体190の両端側に自由端部197、198を設けている。
図33に示すように、軸封体190は、基材191の軸方向の両端部側の表裏面191a、191bに帯状電極192a、192a、193a、193aをそれぞれ設け、この帯状電極192a、192a、193a、193aから軸方向における中央付近まで引出し電極192b、192b、193b、193bを延設して電極192、193を構成している。このとき、同極の電極を、1つの貫通穴を介して軸封体190の表裏面191a、191bの異なる端部側に配設して、1つの貫通穴から一端側の表面191a、他端側の裏面191bの電極に同じ極性の電圧を印加できるようにしている。
【0121】
例えば、貫通穴194は、引出し電極192b、192bと繋がっており、また、各引出し電極192b、192bは、帯状電極192a、192aに繋がっているため、貫通穴194より表裏面の電極192、192に同時に電圧を印加することができる。一方、貫通穴195についても同様に電極が構成されており、電圧の印加時には、貫通穴195から表裏面の電極193、193に同時に電圧を印加することができる。
また、この実施例では、図示しない電源回路の極性を切り換え可能に設けており、これにより、各電極192、193に対して異極の電圧を印加できるようにしている。
【0122】
本体180には、3つの流路185、186、187を周方向に向けて形成し、この3つの流路185、186、187に挟まれるように2つの内円筒環状部(座面)183、184を内周側に設けている。本体180にホルダー200を介して軸封体190を装入すると、2つの自由端部197、198が2つの内円筒環状部183、184の位置に配設され、電圧の印加によって自由端部197、198を拡縮させたときに、この自由端部197、198が軸封部として内円筒環状部183、184に接離して、流路185、186、187を切り換えることができるようにしている。
【0123】
図31においては、軸封体190に対して、自由端部197の表面側が収縮すると共に裏面側が膨張するように表裏面に電圧を印加した状態を示したものである。このとき、自由端部197は、略真円状を維持しながら拡径して内円筒環状部183に加圧接触して軸封状態となる。一方、自由端部198には自由端部197とは異なる極性の電圧が表裏面側に印加されるため、この自由端部198は、表面側が膨張すると共に裏面側が収縮しようとする。これにより、自由端部198は、内径方向に縮径し、内円筒環状部184から離間した状態となる。
この動作により、流路185と流路186の間は自由端部197の周方向シールによって軸封され、一方、流路186と流路187の間は隙間が生じて連通し、図のように、流路186から流路187側に流体を流すことができる。
【0124】
一方、図32においては、電源回路からの電圧の極性を切り換えて、自由端部197に表面側が膨張すると共に裏面側が収縮するような極性の電圧を印加し、また、自由端部198に表面側が収縮すると共に裏面側が膨張するような極性の電圧を印加したものである。この場合、自由端部197は、内径方向に縮径して内円筒環状部から離間した状態となり、一方、自由端部198は、略真円形状を維持ながら拡径しようとする。
この動作により、流路185と流路186の間には隙間が生じると共に、流路186と流路187の間は軸封され、流路186から流路185側に流体を流すことができる。
この弁構造により、円筒状の本体180の内円筒環状部183、184を封止して、流路186からの流体を流路185又は流路187に切り換えることができるため、簡略化した構造によってコンパクト化を図り、安価に製作できる開閉弁を設けることができる。
【0125】
なお、このように、軸封体の両端側を自由端部とする場合、この実施例のように軸封体をイオン伝導高分子材料、或は、電気的外部刺激を加えたときに当該部位以外の部位が変形する電気刺激性高分子材料とすることで、基材の表裏面に、両側の自由端部で異なる極性の電極を設けた場合にも、電圧を印加したときに両側の自由端部をそれぞれ拡径、縮径させることができる。これは、イオン伝導高分子材料は、加える電圧の極性を変えることで変形(膨縮)方向を逆にすることができるためである。
電気刺激性高分子材料や導電性高分子材料で両端側を自由端部とする場合には、これらの高分子材料は、極性に関わらず電圧の印加又は停止時の変形・膨縮方向が決まっているため、1つの基材によって両側の自由端部を異なる方向に変形(膨縮)させることはできない。
従って、これらの高分子材料を用いて両端側に自由端部を設ける場合には、同じ材料で2つの基材を高分子材料の内周又は外周面に接着し一体に設け、各基材に電極を配した状態でこれらをホルダーに取付けるようにすればよい。
【0126】
続いて、図34、図35においては、軸封装置を用いた弁構造を多方弁に応用した他例を示したものである。この例では、図31の軸封装置を軸方向に2つ連設した弁構造であり、各軸封体の自由端部を軸封部とし、この軸封部を軸封と漏れの何れかの状態にしてより多数の流路を切り換え可能に設けたものである。
【0127】
この弁構造は、本体210の周方向に5つの流路216、217、218、219、220を設け、この流路216、217、218、219、220に挟まれるように4つの内円筒環状部(座面)212、213、214、215を設けている。この本体210に対して、双方の開口端部211a、211b側より、前述した軸封体190を装着したホルダー200をそれぞれ装入し、各内円筒環状部212、213、214、215に対して軸封体190、190の自由端部197、198を接離可能に設けて5つの流路を切り換え可能な5方弁構造に設けている。また、軸封体190に対しては、図示しない異なる電源回路を配線し、軸封体190を個別に動作できるようにしている。
【0128】
図34においては、上側の軸封体190における自由端部197を縮径させると共に自由端部198を拡径させる極性の電圧を電源回路から印加し、また、下側の軸封体190における自由端部197を縮径させると共に自由端部198を拡径させる極性の電圧を電源回路によって印加したものであり、この場合、流路218と流路219、及び、流路216と流路217が連通し、これら以外の流路の間は軸封された状態になる。これにより、流路218から流路219に流体を流すことができ、また、流路217からの流体を流路216側に流すことができる。
【0129】
一方、図35においては、上側の軸封体190における自由端部197を拡径させると共に自由端部198を縮径させる極性の電圧を電源回路から印加し、また、下側の軸封体190における自由端部197を拡径させると共に自由端部198を縮径させる電圧を印加したものであり、この場合には、流路218と流路217、及び、流路219と流路220が連通し、これら以外の流路の間は軸封された状態になる。これにより、流路218から流路217に流体を流すことができ、また、流路219からの流体を流路220側に流すことができる。
【0130】
よって、この軸封装置を用いた弁構造は、流路217と流路219に、例えば、図示しない空気圧作動式のアクチュエータの給排気口を接続することで、図34の状態において、流路218から圧縮空気を供給したときに、この圧縮空気を流路219を介して図示しないシリンダ内の第1の空気室に送ることができると共に、シリンダ内におけるピストンを挟んだ他方側の第2の空気室から圧縮空気を流路217を介して流路216より排気することができる。
【0131】
また、図35の状態に流路を切り換えることにより、流路218から圧縮空気を供給したときに、この圧縮空気を流路217を介して第2の空気室に送ることができると共に、第1の空気室から圧縮空気を流路219を介して流路220より排気できる。
【0132】
このように、この軸封装置を用いた弁構造は、例えば、電磁切換弁として使用してアクチュエータの動作を制御することができ、上記のように、軸封体の自由端部を軸封部として少なくとも2つ以上の内円筒環状部(座面)に接離させて、流路を切り換えることもでき、また、本体内に軸封体を2つ以上配設することにより、多方弁として設けることができる。
【0133】
なお、この例においては、流路216、217、218、219、220を本体の異なる周方向に向けて形成しており、このような流路とすることにより、あらゆる態様の多方弁に適用することができる。
また、上記の各実施例においては、軸封体の基部をホルダーに対して取付けているが、軸封体を本体側に固定することもでき、この場合にも上記と同様に軸封や漏れ状態にすることができる。
【実施例1】
【0134】
次に、本発明における軸封体の変形状態をCAE解析によってシミュレーションし、本発明における軸封装置と弁構造に関する実施可能性を調べた。実際の軸封体は、膨張・収縮時の変形状態を確認することが難しいため、このようなCAE解析によってワークの変形状態を解析することにより、この解析結果を実際の軸封体の膨張・収縮時の変形に置き換えようとするものである。
CAE解析の解析方法として、ワークの内外周に温度差を生じさせたときに、この温度差による熱膨張時の変形状態を確認するものとした。
【0135】
解析に使用したワークを図36、37に示す。図36のように、ワークAは、24.85℃(常温)において外径7mm、内径5mm、高さ10mmの外形寸法からなる単層の円筒状とし、その一端側を拘束して自由端側を拡縮できるようにした。拘束条件としては、10mmの高さをH部とH部に2分割し、H部を内周・外周側共に拘束し、H部を内周・外周側共に自由端部とした。
このワークAは、図28において、軸封体160としてイオン伝導高分子材料を用いた場合の動きをシミュレートしようとするために用いるものであり、軸封体160の基部166付近を高さH部、自由端部167付近を高さH部に置き換えて解析しようとするものである。
【0136】
一方、図37のワークBは、ワークAと同じ外形寸法にしたものを軸方向に沿って外径7mm(内径6mm)の部材Xと外径6mm(内径5mm)の部材Yに分割し、この部材Xと部材Yを組み合わせて一体化した。このとき、各部材同士が伝熱するのを防ぐために、部材Xと部材Yの間に図示しない断熱層を介在させるものとする。この断熱層は、0.1mmの厚さとした。また、ワークBの拘束条件は、ワークAと同様であり、10mmの高さをH部とH部に2分割し、H部を内外周共に拘束し、H部を内外周共に自由端部とした。
ワークBは、図28の軸封体160を電気刺激高分子材料、又は、導電性高分子材料とし、セパレータ169を設けた場合の動きをシミュレートしようとするものであり、軸封体160を部材Y、セパレータ169を部材Xとし、また、基部166付近を高さH部、自由端部167付近を高さH部に置き換えて解析しようとするものである。
【0137】
各ワークを構成する材料は、適宜の線膨張係数を有するものであればよく、例えば、TFE(テトラフルオロエチレン)を材料とした場合、線膨張係数は、例えば、20℃においては79.0×10−5/℃、0℃においては20.0×10−5/℃、30℃においては16.0×10−5/℃、50℃においては12.4×10−5/℃、−50℃においては13.5×10−5/℃であり、温度値のない設定温度での線膨張係数は、回帰計算による値を採用した。また、各ワークの変形前、変形後におけるポアソン比は、0.46とした。
【0138】
ワークAに伝熱する際に、各部位に対する設定温度を表1に示す。このとき、ワークAの内周側を内周内避面、外周側を外周外避面とし、各面に対する温度の組み合わせを表のようにした。
【0139】
【表1】

【0140】
ワークBに伝熱する際の各部位に対する設定温度を表2に示す。ワークBに対しては、部材X、部材Yのそれぞれに対して全体に温度を加えるようにした。これは、セパレータを装着した軸封体の軸封体・セパレータの変形状態を、ワークBの内外周に相対的な温度差を加えたときの変形状態で置き換えようとするからである。
【0141】
【表2】

【0142】
このときの各ワークA、Bの状態は、内周を低温(マイナス温度)、外周を高温(プラス温度)に設定したときには、図38の模式図に示すように、各ワークの先端部(自由端部)230側が、略真円状を維持しながら先端(上端)側になるに従ってより縮径した形状になる。このとき、内外周の温度差が大きくなるとこの傾向は更に強まっている。
【0143】
例えば、ワークAの設定温度No.2における自由端部の最大変形量(縮径量)は、その内径側において0.008mmとなり、より温度差の大きい設定温度No.3における自由端部の最大変形量は、0.015mmとなる。
また、ワークBにおいては、設定温度No.7における自由端部の最大変形量は、0.008mmとなり、より温度差の大きい設定温度No.8における自由端部の最大変形量は、0.013mmとなる。
【0144】
一方、各ワークA、Bの内周を高温(プラス温度)、外周を低温(マイナス温度)に設定すると、図39の模式図に示すように、各ワークの先端部230´側は、略真円状を維持しながら、先端(上端)側になるに従ってより拡径した形状になり、略末広がり状の形状になる。この場合にも、内外周の温度差が大きくなると、この傾向は更に強まる。
【0145】
例えば、ワークAの設定温度No.4における自由端部の最大変形量(拡径量)は、その外径側において0.010mmとなり、より内外周の温度差の大きい設定温度No.5における自由端部の最大変形量は、0.015mmとなる。
また、ワークBにおいては、設定温度No.9における自由端部の最大変形量は、0.008mmとなり、また、より温度差の大きい設定温度No.10における自由端部の最大変形量は、0.013mmとなった。
【0146】
以上により、ワークA、Bの何れの場合でも、内周側の温度を外周側よりも低くすることでワーク先端側を略真円状に均等に縮径させることができ、また、この温度差の状態を内外周で入れ換えて、内周側の温度を外周側よりも高くすることでワークの自由端部(先端)側を略真円状に均等に拡径させることができるとの解析結果が得られた。
この解析結果を上記実施例の軸封体に置き換えると、軸封体の表裏面に極性の異なる電圧を加えた際には、真円状の断面形状を維持しながら膨縮又は変形によって形状が変わると言える。
このように、CAE解析により電気的外部刺激を加えた場合の軸封体の変化の状態をシミュレーションすることで、この軸封体は、本発明の軸封構造並びに弁構造に適した材料であることが実証できた。
【実施例2】
【0147】
続いて、電気的外部刺激を加えたときに当該部位以外の部位が変形する電気刺激性高分子材料の変形態様が軸封装置に応用可能であるかを確認するため、所定の電圧を印加し、その変位量を測定した。この測定は、図40に示した変位測定装置240によりおこなった。
【0148】
変位測定装置240は、電気刺激性高分子材料である被測定体(人肌(登録商標)のゲルシート 品番H0−1)241を固定するためのスタンド242と、このスタンド242を移動することが可能な移動用ステージ243とを有している。また、高圧電源(松定プレシジョン株式会社製、型式HJPQ−30P1)244は、被測定体241を挟持する図示しない固定電極に繋がっており、被測定体241に電圧を印加できるようになっている。レーザ変位計(株式会社キーエンス製、型式LJ−G080)245は、被測定体241に対してレーザLを照射し、被測定体241の屈曲変位量を測定可能になっている。
【0149】
先ず、測定前に、被測定体241を変位測定装置240の固定電極で挟み、スタンド242に固定する。また、移動用ステージ243により、非測定体241とレーザ変位計245との距離を調節する。
【0150】
この状態で、高圧電源244を操作し、図41(a)に示すように、被測定体241に対して0Vから7kVまで20秒ごとに1kVずつ印加電圧を階段状に上げていき、そのときの被測定体241の屈曲変位量εをレーザ変位計245で測定した。図41(b)は、電圧印加時における電流の状態を示している。
【0151】
図42に電圧を印加したときの被測定体241の動作を示す。図42(a)に示すように、被測定体241は、電圧の印加によりマイナス極側に根元から屈曲変形する。その際、図42(b)おいて、電圧印加なし(0V印加)のときの被測定体241の端面241aから、電圧印加時における角部241bまでの距離を変位量εとした。変位量εの推移を図41(c)のグラフに示す。
【0152】
図41より、印加電圧が4kV以上になったときに被測定体241の変位が確認された。更に、印加電圧が7kVに達すると、変位量εがおよそ1.15mmとなり、このときの変位量が最大となった。また、7kVの電圧を印加した状態から印加電圧なし(0V印加)の状態まで印加電圧を下げると、被測定体241は、初期(電圧を印加する前)の形状まで戻ることが確認された。
【0153】
以上の測定結果により、上記の条件下において、被測定体241である電気刺激性高分子材料は、最大変形量が1.15mmと大きいため、本発明の軸封装置に用いる高分子材料として好適であると判断できる。
この場合、被測定体241は、電圧印加時にマイナス電極側に屈曲しているが、極性を反転した場合、屈曲方向が反対(プラス電極側)となることが確認された。これにより、実際の使用に際しては、その条件等により所望の屈曲方向に屈曲させることができる。
また、上記の場合、被測定体241が電圧印加時に屈曲変形し、変位量εによる隙間を形成することで、この電気刺激性高分子材料を利用してNCタイプのシール装置を構成できる。更に、この電気刺激性高分子材料を初期状態において屈曲した形状に成形し、一方、電圧を印加したときには平面形状に変形するように予め設けることにより、NOタイプのシール装置を構成することも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンを有するシリンダ部に給排漏れ流路を介して流体を供給する供給漏れ流路と流体を外部に排出する排水漏れ流路を有する装置本体を取付け、この装置本体内には、流路切換可能な複数個の軸封体を有する軸封機構を設け、この軸封機構は、電気的外部刺激を介して膨縮又は変形する高分子材料製の前記軸封体からなり、この軸封体に電気的外部刺激を与えて当該軸封体を膨縮又は変形させることにより漏れ流体を流す流路を設けたものであり、この軸封機構により前記シリンダ内に流体を供給又は排気させてシリンダ部内のピストンを駆動させるようにしたことを特徴とする軸封機構を用いた駆動装置
【請求項2】
前記軸封体は、電気的外部刺激により充電したときに印加方向と垂直方向に拡大変形して軸封力を高め、一方、放電したときに印加方向と垂直方向に縮小変形しながら旧位に復帰して軸封力の低下により適宜の漏れ現象を発生するか、又は、放電したときに印加方向と垂直方向に拡大変形しながら旧位に復帰して軸封力を高め、一方、電気的外部刺激により充電したときに印加方向と垂直方向に縮小変形しながら軸封力の低下により適宜の漏れ現象を発生する電気刺激性高分子材料である請求項1に記載の軸封機構を用いた駆動装置
【請求項3】
前記軸封体は、電気的外部刺激を停止したときに旧位に膨張しながら復帰して軸封力を高め、一方、電気的外部刺激を加えたときに収縮して軸封力の低下により適宜の漏れ現象を発生するか、又は、電気的外部刺激を加えたときに膨張しながら軸封力を高め、一方、電気的外部刺激を停止したときに旧位に収縮して軸封力の低下により適宜の漏れ現象を発生する導電性高分子材料である請求項1に記載の軸封機構を用いた駆動装置
【請求項4】
前記軸封体は、電気的外部刺激を停止したときに旧位に変形しながら復帰して軸封力を高め、一方、電気的外部刺激を加えたときに変形して軸封力の低下により適宜の漏れ現象を発生するか、又は、電気的外部刺激を加えたときに変形しながら軸封力を高め、一方、電気的外部刺激を停止したときに旧位に変形して軸封力の低下により適宜の漏れ現象を発生するイオン伝導高分子材料である請求項1に記載の軸封機構を用いた駆動装置
【請求項5】
前記軸封体は、電気的外部刺激を停止したときに旧位に変形しながら復帰して軸封力を高め、一方、電気的外部刺激を加えたときに当該部位以外の部位が変形して軸封力の低下により適宜の漏れ現象を発生する電気刺激性高分子材料である請求項1に記載の軸封機構を用いた駆動装置
【請求項6】
前記軸封体は、電気的外部刺激を加えたときに当該部位以外の部位が変形して軸封力を高め、一方、電気的外部刺激を停止したときに旧位に変形しながら復帰して軸封力の低下により適宜の漏れ現象を発生する電気刺激性高分子材料である請求項1に記載の軸封機構を用いた駆動装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【公開番号】特開2010−14279(P2010−14279A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238650(P2009−238650)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【分割の表示】特願2009−520539(P2009−520539)の分割
【原出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(390002381)株式会社キッツ (223)
【Fターム(参考)】