説明

軸封装置およびバルブ

【課題】樹脂からなるパッキンの寿命低下を抑制する。
【解決手段】パッキン箱101と、パッキン箱101を貫通する可動軸102と、パッキン箱101と可動軸102との間に形成されたパッキン室103と、パッキン室103に収容された樹脂製のパッキン104と、パッキン104を可動軸102の軸方向に押圧するパッキン押さえ105と、自己潤滑性を有する樹脂から構成されて可動軸102のパッキン104との摺動面に部分的に形成された樹脂膜106とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動する軸の貫通部における流体の漏れを阻止するパッキン形式の軸封装置およびバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
バルブおよびポンプなどでは、主軸が貫通する部分から内部の流体が外部に漏れ、また、外部の気体が侵入するのを防ぐために、軸封装置が用いられている(特許文献1参照)。この軸封装置は、図2に示すように、パッキン箱201と、パッキン箱201を貫通する可動軸202と、パッキン箱201と可動軸202との間に形成されたパッキン室203と、パッキン室203に収容されたパッキン204とを備える。例えば、パッキン室203には、複数のパッキン204が可動軸202の軸方向に積層され、パッキン押さえ205により軸方向に押圧されている。
【0003】
例えば、パッキン押さえ205に掛けたボルト(不図示)を締め込み、パッキン204を軸方向に圧迫すれば、パッキン204は、軸方向に圧縮された分に応じて所定の割合で内径および外径方向に広がる。この結果、パッキン室203の内周面と可動軸202の外周面にパッキン204が圧接して隙間を塞ぐ。このことにより、流体の漏れが防止できるようになる。
【0004】
このような軸封装置において、近年では、パッキン204として、フッ素樹脂や高密度ポリエチレンなどの自己潤滑性を有する樹脂を成型したものが用いられている。これらの樹脂は、弾性および塑性を有しており、これら材料より成型されたパッキン204は、可動軸202の僅かな変位などに追従変形して漏れを阻止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−224945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した樹脂を成型して形成したパッキンを用いる場合、初期には、摩擦が増加するという問題がある。この種のパッキンを用いる場合、初期において、可動軸の摺動面に、パッキンを構成する樹脂が移着して移着膜が形成されていく。この移着膜が未形成の状態からある程度の移着膜が形成されるまでの間に、上述した摩擦の増加が発生する。このように、摩擦が増加することで、パッキンの破壊が促進され、パッキンの寿命を低下させるという問題があった。このようなパッキンの劣化は、シール性の劣化に直結し、流体のリークを招くため、大きな問題となる。
【0007】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、樹脂からなるパッキンの寿命低下が抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る軸封装置は、パッキン箱と、パッキン箱を貫通する可動軸と、パッキン箱と可動軸との間に形成されたパッキン室と、パッキン室に収容された樹脂製のパッキンと、パッキンを可動軸の軸方向に押圧するパッキン押さえと、自己潤滑性を有する樹脂から構成されて可動軸のパッキンとの摺動面に部分的に形成された樹脂膜とを少なくとも備える。
【0009】
上記軸封装置において、樹脂膜は、パッキンの材料から構成されていればよい。
【0010】
本発明に係るバルブは、上述した軸封装置を備える。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、自己潤滑性を有する樹脂から構成された樹脂膜を、可動軸のパッキンとの摺動面に部分的に形成したので、樹脂からなるパッキンの寿命低下が抑制できるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施の形態における軸封装置の構成を模式的に示す構成図である。
【図2】図2は、パッキン形式の軸封装置の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態における軸封装置の構成を模式的に示す構成図である。図1では、部分的に断面を示している。この軸封装置は、まず、パッキン箱101と、パッキン箱101を貫通する可動軸102と、パッキン箱101と可動軸102との間に形成されたパッキン室103と、パッキン室103に収容された樹脂製のパッキン104と、パッキン104を可動軸102の軸方向に押圧するパッキン押さえ105とを備える。
【0014】
パッキン室103には、複数のパッキン104が可動軸102の軸方向に積層され、パッキン押さえ105により軸方向に押圧されている。また、パッキン押さえ205には、ボルト107がかけられ、ボルト107を締め込むことで、パッキン204を軸方向に押圧できる。
【0015】
上述した構成に加え、本実施の形態における軸封装置は、可動軸102のパッキン104との摺動面に部分的に形成された樹脂膜106を備える。樹脂膜106は、回動軸102の上記摺動面の全域を覆うことなく、部分的に形成することが重要である。樹脂膜106は、例えば、溶射やディップコートなどにより形成すればよい。
【0016】
以上のように、樹脂膜106を形成しておくことで、初期段階より、移着膜が形成された状態と同様になるので、初期における摩擦が増加する挙動を抑制できるようになる。この結果、パッキンの寿命低下が抑制できるようになる。
【0017】
ここで、自己潤滑性を有する樹脂としては、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリアミドなどの自己潤滑性樹脂を用いればよい。例えば、フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどがある。
【0018】
これらの材料は、パッキン104の材料として用いられており、樹脂膜106は、パッキン104の材料から構成されていればよい。
【0019】
上述した本発明によれば、パッキンが接触する可動軸の摺動面に、部分的に樹脂膜を形成するようにしたので、初期において、既に移着膜が形成された状態と同様となり、初期における摩擦が増加する挙動を抑制でき、パッキンの寿命低下が抑制できるようになる。本発明による軸封装置は、例えば、バルブなどに適用可能である。
【0020】
発明者は、樹脂で形成したパッキンを用いる場合の初期動作時の摩擦が増加する挙動に対し、様々な対策を検討する中で、まず、可動軸のパッキンとの摺動面の全域に樹脂膜を形成する対策を検討した。しかしながら、樹脂膜で全域を覆った場合、初期摩擦が増大して摺動部が膠着したような状態となる結果となり、全く効果が得られなかった。このような鋭意検討の結果、発明者は、パッキンが接触する可動軸の摺動面に、部分的に樹脂膜を形成することで、初期のおける摩擦の増加が抑制できることを初めて見いだし、本発明に至った。
【0021】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。例えば、パッキンとしては、薄い帯状とした樹脂部材を同心円に巻いて圧縮成形したテープモールドパッキン、薄い板状の樹脂部材を切り抜き重ねて接着成形した積層パッキンなどのグランドパッキン、また、樹脂を一体に成型した成型パッキンなどがある。また、樹脂を切削して形成したパッキンもある。
【符号の説明】
【0022】
101…パッキン箱、102…可動軸、103…パッキン室、104…パッキン、105…パッキン押さえ、106…樹脂膜、107…ボルト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッキン箱と、
前記パッキン箱を貫通する可動軸と、
前記パッキン箱と前記可動軸との間に形成されたパッキン室と、
前記パッキン室に収容された樹脂製のパッキンと、
前記パッキンを前記可動軸の軸方向に押圧するパッキン押さえと、
自己潤滑性を有する樹脂から構成されて前記可動軸の前記パッキンとの摺動面に部分的に形成された樹脂膜と
を少なくとも備えることを特徴とする軸封装置。
【請求項2】
請求項1記載の軸封装置において、
前記樹脂膜は、前記パッキンの材料から構成されていることを特徴とする軸封装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の軸封装置を備えるバルブ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−36597(P2013−36597A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175702(P2011−175702)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】