説明

軸組材の接合装置

【課題】一方の軸組材に取付けた第一接合金具側の切り込みに、他方の軸組材に取付けた第二接合金具の掛止片を係合掛止することにより両軸組材を組付けることができる軸組材の接合装置を提供する。
【解決手段】取付け片1と、該取付け片1の縦方向に沿う両端に設けて相対させたスペーサ片2,2と、各スペーサ片2の自由端に設けた受止片3および各受止片3の自由端に設けて相対させた組付け片4とで平面視略溝形の第一接合金具Aaを構成し、該第一接合金具Aaを、前記取付け片1において止着して一方の軸組材Pの側面に突設する。そして、該第一接合金具Aaを係合する縦溝32を前記側面に当接する第二軸組材Bの端面に設ける。該縦溝32に第一接合金具Aaの前記組付け片4,4間に係合する第二接合金具Baを収設し、ドリフトピン12を嵌挿する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸組材、例えば、柱と梁を接合する際に用いる、木造建物の軸組材の接合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
梁や桁などの軸組材(横架材)を柱や胴差などの軸組材(構造材)に接合するものとして、所謂ほぞ接合に代えて金具接合方式のものが一般に用いられるようになっている。
【0003】
該金具接合方式のものとして、取付け片の縦方向に沿う両側に接続片を相対設して接合金具を構成し、該接合金具を、一方の軸組材(柱)の側面に前記取付け片において止着して突設し、該接合金具を係合した縦溝を他方の軸組材(梁)の、前記側面に当接する端面に設け、該縦溝に前記接合金具を介して相対する一対の補強板を収設し、該補強板を通じて前記他方の軸組材に嵌挿した掛止杆を接合金具の前記接続片に掛止するようにした構造のもの(例えば、特許文献1)や、この構造のもの中の接合金具を、前記一方の軸組材を貫通させたボルト杆の先端に螺合したナット材に代えた構造のものがある(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−227175号公報
【特許文献2】特開2004−324323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来例を他方の軸組材に嵌挿した掛止杆を接合金具又はナット材に掛止する構成を採るので、他方の軸組材に掛止杆嵌挿用の嵌挿孔を設けることと、該嵌挿孔に嵌挿して、掛止杆を他方の軸組材に組付ける施工工程を必要とし、この嵌挿孔の孔開けと嵌挿孔に対する掛止杆の取付け作業が煩雑で、必要以上に経費が嵩む原因となっている。
【0006】
本発明は、このような従来例の欠点に着目し、従来例の掛止杆を利用したものに代わる斬新な構造の、軸組材の接合装置を提供することを目的として創案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
取付け片と、該取付け片の縦方向に沿う両端に設けて相対させたスペーサ片と、各スペーサ片の自由端に前記取付け片と並行する方向にして設けた受止片および各受止片の自由端に設けて相対させた組付け片とで平面視略溝形の第一接合金具を構成し、該第一接合金具を、前記取付け片において止着して一方の軸組材の側面に突設する一方、該第一接合金具を係合する縦溝を前記側面に当接する第二軸組材の端面に設け、該縦溝に第一接合金具の前記組付け片間に係合する第二接合金具を収設し、該第二接合金具の、前記組付け片に重ね合わせて前記第二軸組材を通じてドリフトピンを嵌挿する挿通孔を設けた組付け片の自由端側の上端に、鉤状の掛止片を設け、該掛止片が係合して掛止する切込みを、前記側面との間で前記掛止片先端の係合間隙を存して相対する前記受止片に設けた構成とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一方の軸組材に取付けた第一接合金具側の切り込みに、他方の軸組材に取付けた第二接合金具の掛止片を係合掛止することにより両軸組材を組付けることができ、掛止杆を用いる構造のものと比較し、施工工程を簡略した、斬新な構造の、軸組材の接合装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第一実施形態の断面図。
【図2】図1の平面図。
【図3】図2の、柱の一部を欠截して示した側面図。
【図4】図1の分解図。
【図5】接合金具の斜視図。
【図6】第二実施形態の一部欠截正面図。
【図7】図6の平面図。
【図8】第二実施形態の接合金具の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図示の実施形態は、一方の軸組材である柱Pに他方の軸組材である梁Bを第一、第二の接合金具を用いて接合する例を示すが、柱Pに代えて胴差に梁Bや梁Bに代わる桁に本発明を適用しても不都合はない。
【0011】
また、実施形態は、第一、第二実施形態の第一接合金具Aa又はAbと第一、第二実施形態の第二接合金具Ba又はBbの組合わせによって柱Pに梁Bを接合するようにしたものであるが、その組合わせは自由に選択して適用できる。
【0012】
第一実施形態
第一実施形態は、第一接合金具Aaを柱Pに止着し、第二接合金具Baを梁Bに止着しておき、これらを互いに組付けて柱Pに梁Bを接合するようにしたものである。
【0013】
第一接合金具Aaは、中央の縦長の取付け片1と、該取付け片1の縦方向に沿う両端に、該両端を屈曲して取付け片1よりわずかに突出させたスペーサ片2、該スペーサ片2の、前記縦方向に沿う自由端に該自由端を前記取付け片1と平行する方向に屈曲して設けた受止片3および該受止片3の自由端を前記スペーサ片2と平行する方向に屈曲して設けた組付け片4を備えた平面視略溝形の枠体で構成したものである。
【0014】
この第一実施形態の第一接合金具Aaの前記取付け片1には、該取付け片1を柱Pに止着するためのスクリューボルト11を挿通するためのボルト孔13,…を縦方向に並べて設け、前記組付け片4,4には、該組付け片4,4間において互いに一致するドリフトピン12挿通用の挿通孔14を縦方向に並設すると共に、前記スペーサ片2に連続する、受止片3の上下両端には、所要長さの切込み6,6を設けて第二接合金具Ba側の掛止片7の頸部が係合して掛止するようにしてある。
【0015】
なお、第一接合金具Aaは、左右方向並びに上下方向に線対称形を成し、左右勝手並びに上下勝手自在に軸組材(例えば、柱P)に取付けても支障がないようにしてある。
【0016】
第一実施形態の第二接合金具Baは、中央の縦長の取付け片21と、該取付け片21の縦方向に沿う両端に、該両端を屈曲して相対設した組付け片24とで成る平面視溝形枠体で成り、取付け片21には、該取付け片21を梁Bに止着するためのスクリューボルト111を挿通するためのボルト孔113,…を縦方向に並べて設け、組付け片24,24には該組付け片24,24間において互いに一致するドリフトピン12挿通用の挿通孔114,…を縦方向に並べて設けると共に、前記組付け片24の、自由端側の上下方向の一端(図5に於いては上端)には鉤状の前記掛止片7を設けたものである。
【0017】
なお、組付け片24,24間の外径は、第一接合金具Aaの前記組付け片4,4間の内径よりわずかに狭くして第一接合金具Aaの組付け片4,4間に係合できるようにしてある。
【0018】
そして、予め案内穴30を形成した柱Pの側面に、前記案内穴30と適宜のボルト孔13を一致させるようにして取付け片1を重ね合わせ、ボルト孔13を通じてスクリューボルト11を前記案内穴30にねじ込むと、第一接合金具Aaは柱Pの側面に止着され、突設される。
【0019】
取付け片1にボルト孔13を複数個を設けてあるのは、前記スクリューボルト11に対して直交する方向にして柱P内に配される、例えば、柱Pに対して第一接合金具Aaを用いて一対の梁B,Bを直行方向に配するときの他のスクリューボルトとの干渉を避け、複数個中の適宜の2個のボルト孔13,13を選択して利用するためである。
【0020】
また、第一接合金具Aaの取付け片1を柱Pの側面に重ね合わせる際、該取付け片1の外(背)面に互いに同一斜線上に配して突設した一対の突子31,31を柱Pに圧(嵌)入させて前記取付け片1を柱Pにスクリューボルト11で締付けるようにしてあるが、この突子31はスクリューボルト11と取付け片1に設けたボルト孔13との間の、わずかな隙間(クリアランス)による取付け片1すなわち第一接合金具Aaの回転を防いで、該第一接合金具Aaに対する梁B側に設けた(取付けた)第二接合金具Baの組付け操作を円滑に行うためである(第二接合金具Baを第一接合金具Aaに組付ける際、第一接合金具Aaが動くと、つまり回転すると、その作業性に支障を来たす)。
【0021】
前記梁Bは、柱Pの側面に接合する端面中央に、柱Pの側面より突出する前記第一接合金具Aaの部分全部が嵌め込まれるに充分な縦溝32が設けられ、該縦溝32の奥壁32aの中央に、第二接合金具Baに設けた、上下一対の前記ボルト孔113,113に対応させて前記スクリューボルト111の案内穴130を形成してある。そして、第二接合金具Baの取付け片21を、この梁Bの縦溝32に係合させ、かつ、ボルト孔113と案内孔130を互いに一致させるようにして、縦溝32の奥壁32aに重ね合わせ、ボルト孔113を通じて前記スクリューボルト111を前記案内穴130を螺入させると、第二接合金具Baは縦溝32内に係合された状態で梁Bに組付け、固定される。
【0022】
そして、第二接合金具Baを、組付けた梁Bを柱P側面に組付け、第一接合金具Aaの上方から、第一接合金具Aaの内側に係合させるようにして降下させると、第一接合金具Aaを梁Bの縦溝32の内側に係合させつつ(第一接合金具Aaの組付け片4,4間に第二接合金具Baの組付け片24すなわち第二接合金具Baが係合されつつ)梁Bは降下し、ついには、鉤状の掛止片7の頸部が切込み6に係合し、先端がスペーサ2の存在によって受止片3と柱Bとの間に形成される隙間aに係合して梁B側の第二接合金具Baと柱P側の第一接合金具Aaは互いに組合わされる。この組合わせた状態で互いに一致させる位置に配するようにした挿通孔14,114に、柱B側に横設した貫通孔33に前記ドリフトピン12を嵌挿することにより梁Bを柱Pに接合することができる。
【0023】
第二実施形態
第二実施形態は、図6乃至図8で示すが、これらの図で明らかな通り、第二実施形態の第一接合金具Abは、第一実施形態の第一接合金具Aaと構造的に殆ど同じで、スペーサ片2の取付け片1からの突出量を変えただけで、残余の点は符号を同じにして示す通り、第一実施形態と略同様なので説明を省略する。
【0024】
なお、スペーサ片2の、取付け片1からの突出幅を第一実施形態より幅広くしたのは、柱Pの側面に凹入部(穴)39を設け(図6、図7)、該凹入部39に取付け片1を嵌め込んで、スクリューボルト11によって柱Pに締付け、柱Pに対して第一接合金具Abを尚一層安定させて取付けられるようにしたものである。
【0025】
従って、第一実施形態の前記第一接合金具Aaに代えてこの第二実施形態の第一接合金具Abを適用しても構造的な不都合はない(柱Pに凹入部39を設けることはともかくとして)。
【0026】
第二実施形態の第二接合金具Bb(第一実施形態の第二接合金具Baと同じ部分は同符号で示す)は、中央の縦長の基片34と、該取付け片34の縦方向に沿う両端に、該両端を屈曲して相対設した組付け片24とで成る平面視溝形枠体の前記基片34の外面中央に取付け片221を突設し、取付け片221には、該取付け片221を梁Bに止着するためのドリフトピン112を挿通するための透孔113Aを縦方向に並べて設け、組付け片24,24は該組付け片24,24間において互いに一致するドリフトピン12挿通用の挿通孔114,…を縦方向に並べて設けると共に、前記組付け片24の、自由端側の上下方向の一端には鉤状の掛止片7を設けたものである。すなわち、第二実施形態の第二接合金具Bbは、第一実施形態の物の梁Bに対する取付け手段が組付け片24と取付け片21で成る溝形体の取付け片21に形成したボルト孔113を利用してスクリューボルト111で梁Bに組付けるに対し、前記第二接合金具Bbの取付け片21に対応する基片34の外面に取付け片221を設け、該取付け片221を透孔113Aを利用してドリフトピン112で梁Bに固定するようにした点が相違するだけで、残余の点は第一実施形態の第二接合金具Baと相異ることはない。
【0027】
従って、第一実施形態の第二接合金具Baに代えて第二実施形態の第二接合金具Bbを適用しても何等支障はないし、なおいえば、第二実施形態の第一接合金具Abに代えて第一実施形態の第一接合金具Aaを、第二実施形態の第二接合金具Bbに代えて第一実施形態の第二接合金具Abをそれぞれ用いても支障はない。
【0028】
そして、柱Pの側面に形成した凹入部39に第一接合金具Abの取付け片1を係合し、第一実施形態と同様にボルト孔13を通じて案内孔30にスクリューボルト11を螺入して締付けると、柱Pに第一接合金具Abは組付け、固定される。
【0029】
そして、梁Bの端面に、柱Pに突設した前記第一接合金具Abが係合するに充分に形成した縦溝32と該縦溝32の奥壁32a中央に設けたスリット溝32bに、縦溝32に組付け片24側が、スリット溝32bに取付け片221がそれぞれ係合するようにして第二接合金具Bbを梁B内に収設して、取付け片221に設けた透孔113Aに一致するようにして梁Bに予め設けた貫通孔333を通じて透孔113Aにドリフトピン112を嵌挿することにより梁Bに第二接合金具Bbは組付けられる。そして、柱Pに突設した第一接合金具Abの上方から梁Bに取付けた第二接合金具Bbを梁Bの降下に伴って降下させると、第二接合金具Bbの掛止片7が第一接合金具Abの切込み6に係合し、その先端がスペーサ2の存在によって受止片3と柱Dとの間に形成される隙間aに係合され、梁B側の第二接合金具Bbと柱P側の第一接合金具Abは互いに組合わされる。この組合わせた状態で、第一実施形態と同様に、互いに一致させる位置に配するようにした挿通孔14,114に梁B側が横設した貫通孔33に前記ドリフトピン12を嵌挿することにより梁Bを柱Pに接合することができる。
【0030】
第一接合金具Aa,Abを柱Pに固着するには、実施形態では、スクリューボルト11を用いるようにしてあるが、案内穴(スクリューボルトより径を小さくしてスクリューボルトを螺合するようにしてある)に代えて通し孔を柱Pに設け、該通し孔に第一接合金具Aa,Abを通じて締付けボルトを貫通させ、通し孔より突出する締付けボルトの先端に締付けナットを螺合して締付けるようにしても良い。
【0031】
なお、各実施形態では、第一接合金具Aa,Abに対して梁Bを降下させて、該第一接合金具Aa,Abに第二接合金具Ba,Bbを組付けるようにしているが、各実施形態の掛止片7の向きを逆さにするようにして第二接合金具Ba,Bbを梁Bに取付け、柱Pに既設の第一接合金具Aa,Abに向けて上昇させて掛止片7を切込み6に係合させ(掛止片7が切込み6に係止することにより上昇を規制するから位置決めの機能をなす)、該係合状態をクレーン等保持させつつ、ドリフトピン12を打込むことによって梁Bを柱Pに接合するようにする用い方もある。この場合は、既設の梁(旧)と無関係に該梁の下側で新しい梁を柱Pに組付けることができるから、梁の取替え(建物のリフォーム)に適用するに有効である。
【0032】
第二接合金具Ba,Bbの組付け片24,24の下部24aを下端に至るに従って次第に近接させたテーパー状にしてあるのは第一接合金具Aa,Abに対しその内側に係合し易くするためである。
【符号の説明】
【0033】
Aa 第一接合金具
Ba 第二接合金具
P 柱
B 梁
1 取付け片
2 スペーサ片
3 受止片
4 組付け片
6 切込み
7 掛止片
12 ドリフトピン
24 組付け片
32 縦溝
114 挿通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付け片と、該取付け片の縦方向に沿う両端に設けて相対させたスペーサ片と、各スペーサ片の自由端に前記取付け片と並行する方向にして設けた受止片および各受止片の自由端に設けて相対させた組付け片とで平面視略溝形の第一接合金具を構成し、該第一接合金具を、前記取付け片において止着して一方の軸組材の側面に突設する一方、該第一接合金具を係合する縦溝を前記側面に当接する第二軸組材の端面に設け、該縦溝に第一接合金具の前記組付け片間に係合する第二接合金具を収設し、該第二接合金具の、前記組付け片に重ね合わせて前記第二軸組材を通じてドリフトピンを嵌挿する挿通孔を設けた組付け片の自由端側の上端に、鉤状の掛止片を設け、該掛止片が係合して掛止する切込みを、前記側面との間で前記掛止片先端の係合間隙を存して相対する前記受止片に設けた、軸組材の接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−14955(P2013−14955A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148935(P2011−148935)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(591027499)株式会社カネシン (49)
【Fターム(参考)】