説明

軽工品用補強シートおよびそれを使用した鞄

【課題】 必要な硬さ、コシを有し、かつ軽量性、平滑性をも高いレベルでバランスさせた軽工品用の補強シートを提供すること。
【解決手段】 厚さ方向への繊維配向部と低融点ポリエステル橋架け構造が形成されたポリエステル繊維不織布と、その一面に接着された意匠性樹脂フィルムからなり、軽量でありながら十分なコシと平滑性とを兼ね備えた軽工品用補強シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽工品用補強シートおよびそのシートを使用した鞄に関し、さらに詳しくは、軽工品の形態を補強するための補強シートとして求められる硬さと屈曲時の耐久性をバランスよく有しており、かつ軽量性、平滑性をも高いレベルでバランスさせたものであり、特に鞄本体の仕切り材に好適な補強シートおよび特に好適な用途としてこの補強シートを使用した鞄に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の軽工品用補強シートが使用される用途としては、鞄、財布や手帳などの日常的に携帯することの多い各種雑貨や、襟、ベルトなどの衣類、装飾品を入れる箱などを挙げることができるが、取り分け補強のための硬さ、それとは基本的に相反する軽さとが同時に高いレベルで求められる用途としては鞄類に代表される雑貨が挙げられる。鞄類の中でも、特に子供が通学時に使用するための学童用鞄、すなわち手提げ鞄、肩掛け鞄、背負い鞄などは、時には重い教科書やノートなどを収納するために十分な補強が必要であり、かつ体力的に未発達の子供が長時間身に付けて運ぶものなので少しでも軽量なものが好まれる。また、鞄類は身に付けることが多いので、見た目の良さも鞄を選ぶ際の大きなポイントであり、外見からは見えなくても鞄を開けたときに露出する部材であれば、例え補強シートであっても外観、すなわち色や平滑性が重要視される性能の一つである。
【0003】
軽工品用補強シートとしては、従来、天然皮革シート、天然繊維不織布シート、合成繊維不織布シート、合成樹脂シート、合成樹脂フォームなど種々のシート状物が提案されてきたが、天然皮革シートは工業製品としては品質の均一性・安定性に欠ける上、補強シートとしての硬さを求めると重量が嵩み、また合成樹脂シートや合成樹脂フォームなどは繰り返しの屈曲に対するワレが問題なので、現在好んで使用されるのは天然繊維や合成繊維からなる不織布シートを基本構造とするシート状物である。不織布シートの代表例である厚紙は、安くて容易に入手可能であり加工も容易な点で好まれているが、水や湿気でふやけてしまう上、屈曲するとワレはしないがしなやかさや復元性に欠けるので戻らないシワが入ってコシがなくなると共に外観の品位にも欠け、一方で例えば不織布シートを構成する繊維として加熱により繊維間で融着させうるような低融点合成繊維のみを使用すると補強シートとしての必要な硬さが得られ難いか、もしくは硬さは十分だがワレ易くなってしまうといった欠点がある。
【0004】
そこで不織布シートを基本構造としこれに樹脂を含浸することで、前記の不織布シートからなるシート状物の欠点を十分に解消したシート状物が各社より提案されており、これらは長期間の使用や過酷な使用などが想定される鞄などに使用可能な補強シートとして現在最も好んで使用されているシート状物である。最も古くから知られている天然繊維不織布シートに樹脂を含浸するなどして固化させたシート状物(例えば、特許文献1のp3、8〜10行目を参照。)としては、パルプを抄造したシート状物に合成樹脂を付与した「ウェブロン(特種製紙株式会社登録商標)」などがあり、また耐久性や品質安定性などの向上を目的として天然繊維を合成繊維に置き換えて合成繊維不織布シートに樹脂を含浸したシート状物としては、ポリエステル系繊維不織布に発泡性樹脂を含浸した「タッチライト(富士高分子株式会社登録商標)」やポリオレフィン系繊維不織布に樹脂を含浸した「タフテル(株式会社クラレ登録商標)」などがある。
現在最も好んで使用されているこれらの補強シートは、不織布構造にバインダーとして合成樹脂を含浸させることで、用途に求められる硬さや屈曲時の回復性などを満足させたものではあるが、それでも気温が低くなる冬季や寒い地域で使用された際に繰り返しの屈曲によってワレが発生してしまうという問題があり、さらには含浸した合成樹脂から有害物質、例えばホルマリンなどが検出されるものもあった。
【0005】
軽工品用補強シートは、鞄などの製品において表地、あるいは裏地となる布、フィルム、皮革類などの素材で覆われた状態(例えば、特許文献1を参照。)で使用されるのが通常の使用状態だが、前記したように製品の軽量化やコストなどのために一部、あるいは全体を露出させた状態で使用されることがあり、特に鞄の仕切り材などは鞄本体の容量を低下させないためにも露出させた状態での使用が多い用途である。
このような用途に供される補強シートは、外観に対する特定の要望を満足させるためには、下地であるシート状物自体は無着色、即ち実質的に白色とし、意匠性を付与したフィルムでそのシート状物表面を覆ったり、あるいはシート状物表面に直接意匠性を有する柄をプリントしたりして所望の外観にする必要がある。シート状物表面をフィルムで覆う方法としては、シート状物表面に接着剤を介して所望のフィルムを貼ることのできる従来公知の種々の方法が使用可能であり、またシート状物表面にプリントする方法としては、シート状物表面に染料や顔料等を含む着色剤をプリントすることのできる従来公知の種々の方法が使用可能である。しかしながら、前者のフィルムで覆う方法を採用する場合には、シート状物表面が不均一で平滑性が不足するとフィルムの平滑性が損なわれてしまうので極めて品位に欠ける外観になってしまい、また後者のプリントする方法を採用する場合にも、シート状物表面が不均一で平滑性が不足するとプリントされた状態が不均一で欠点が多く、やはり極めて品位に欠ける外観になってしまうので、これら何れの方法おいても、得られる補強シートの外観の品位を実質的に決定するのはシート状物表面の均一性、平滑性である。
【0006】
このような問題を解決しうる方法として、折れシワや軽量性の問題から不織布を基本構造とし、補強シートとして求められる硬さを付与しつつワレの問題が起きないようにするために低融点繊維のみの使用とせず、かつ後から樹脂を含浸することもせずに、不織布構造を構成する繊維の一部として、一般的には均一に混合可能なようにほぼ同程度の繊度で、低融点成分からなる低融点繊維を混合して加熱プレスすることにより繊維間でバインダー効果を発揮させる技術が提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。このような技術は、必要な硬さ、コシ、耐屈曲性などの物性と、均一性、平滑性を付与するための基本的な技術として広く活用されているが、繊維自身の硬さや、溶融による変形などの点で低融点繊維は不織布構造としての硬さやコシへは実質的に寄与しにくい成分なので、硬さやコシを得ようとすると低融点繊維の混合比率は低くせざるを得ないが、加熱プレス後の平滑性が当然ながら極めて低くなってしまう。平滑性を得ようとして単に低融点繊維の比率を上げても硬さやコシの低下の程度に比べてそれほど平滑性が向上するわけではないので、低融点繊維の混合比率を上げつつ強く加圧するか、あるいは低融点繊維の混合比率をそれほど上げない代わりに全体を収縮させた上で強く加圧するなどしないことには平滑性を向上させることはできないが、そうすると何れにしても見かけ密度が必要以上に高くなってしまうという弊害が生じてしまう。従って、従来開示されているような技術のみでは、平滑性を求めると、鞄などの軽工品の部材に通常求められる軽量性に劣ってしまうという欠点があった。
【0007】
同様に低融点繊維を使用する技術の応用として、バインダー効果を発揮させる繊維に低融点樹脂のみからなる繊維を使用せず、芯鞘構造繊維の鞘成分、あるいはサイドバイサイド構造繊維の1成分を低融点樹脂で構成した低融点複合繊維を使用する技術について種々提案されている。これらの技術による不織布構造として、本発明が目的とするような軽工品用補強シートのみならず、クッション類や加熱成型用素材、紙おむつ等のカバーシートなど、低融点複合繊維が不織布構造に付与しうる嵩高さ、コシ、回復性、易加工性などの効果を利用する目的・用途について種々の提案がなされている(例えば、特許文献3〜5を参照。)。このような低融点複合繊維を用いて、これを単独で不織布構造としたり、あるいは不織布を構成する繊維の一部として他の繊維からなる不織布構造内に混合したりする方法は、前記したような不織布構造の欠損を補うための高密度化は必要最小限とすることができる上、低融点複合繊維の使用比率を適宜選択することで軽工品用補強シートとして求められる硬さやコシと見かけ密度とをバランスさせうる方法としては有用な技術である。しかしながら、低融点複合繊維の断面構造において、繊維強度を担うべき部分である非低融点成分により構成された繊維成分部が相対的には細くならざるを得ないことから、低融点複合繊維全体としては硬さ、コシが繊度の割には弱く、低融点複合繊維の使用比率を増やすと硬さやコシが必要以上に低下してしまうので、不織布構造のみで硬さやコシと見かけ密度とのバランスをとろうとすると、本発明が目的とするレベルの平滑性や均一性までを得るのは困難であり、平滑性を高めるためには不織布構造にバインダー樹脂を含浸する必要があることから結局は軽量性に劣るものしか得られなかった。
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第3080180号公報
【特許文献2】特開平2―41227号公報
【特許文献3】特開平4―316651号公報
【特許文献4】特開平7―216756号公報
【特許文献5】特開平9―195151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上に述べた従来の技術では、軽工品用補強シートの軽量性、コシおよび平滑性のバランスの問題があった。
本発明は、鞄や手帳などの軽工品の形態を補強するための補強シートであって、かつ軽量性、平滑性を高いレベルでバランスさせることで、特に学童鞄などの鞄類の補強材や仕切り材として好適に使用可能な軽工品用補強シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の繊度範囲の基本マトリックスを担うポリエステル繊維に、そのポリエステル繊維からなる基本マトリックス構造を補強するために混合した低融点ポリエステル繊維からなる不織ウェブ構造を所定枚数積層し、これを実質的に絡合することなく加熱・加圧することによって、マトリックス繊維の多くは元の不織ウェブ構造内に留まっていて厚さ方向の繊維配向部が過剰に形成されていず、かつ不織ウェブ構造内、不織ウェブ構造間に存在するマトリックス繊維同士の近接部において、溶融した低融点繊維由来の橋架け構造を形成させた、平滑な表面を有する不織布基材に、意匠性を付与したフィルムを接着することで、顕著な重量増に繋がるバインダー樹脂の含浸なしに、優れた意匠性、軽量性、厚さに対する曲げ硬さなどの軽工品用補強シートに求められる諸性能を兼ね備えた新規な軽工品用補強シートが得られることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、詳細には以下の軽工品用補強シートおよびそれを使用した鞄を提供するものである。
【0011】
1.ポリエステル繊維(A)からなる不織布とその一面に接着された意匠が付与された樹脂フィルムからなる軽工品用補強シートであって、該繊維(A)の繊維径が15〜20μmで、該繊維(A)の厚さ方向への配向部が0.5〜3.5箇所/cmであり、該繊維(A)に対して40〜120質量%の範囲で該不織布に混在させた低融点ポリエステル繊維(B)が溶融することで該繊維(A)同士の近接部に橋架け構造が形成されており、見掛け密度が0.30〜0.39g/cm、厚さt[mm]のときの柔軟度が0.15/(t1/2)〜0.75/(t1/2)[cm]であることを特徴とする軽工品用補強シート。
2.前記1の軽工品用補強シートを本体の補強材または仕切り材に使用した鞄。
【発明の効果】
【0012】
本発明の軽工品用補強シートは、硬さやコシを犠牲にすることなく所望のレベルとしつつ優れた軽量性を実現し、かつ従来にない平滑性による優れた意匠性を兼ね備えているので、この補強シートを使用した鞄類、携帯小物類などは、日常的な使用においても快適で高い満足感が得られる。特に好適な用途としては、数年間ほぼ毎日継続的に使用され、時には重い教科書を入れた状態で走ったり、上に重いものを置いたりするといった厳しい使用環境におかれるので硬さやコシは十分以上に必要でありながら、小学1年生から使用するので軽量性への要望が極めて高い学童鞄類であり、中でも取り分けランドセルが挙げられる。この補強シートを使用したランドセルは、従来のランドセルに比べて前記したように所望の補強効果はもちろんのこと、優れた軽量効果による快適性と、補強材でありながら目に触れても優れた意匠性による高い満足感が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において、軽工品用補強シートの不織布構造の基本マトリックスを担うポリエステル繊維(A)としては、可紡性のポリエステル系樹脂を用いた繊維であれば、従来公知の何れのポリエステル繊維も使用可能であって、製造方法に関しても公知の方法を用いることができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの従来公知の各種ポリエステル系樹脂からなる繊維が挙げられ、必要に応じて各種の変性ポリエステルからなる繊維も使用可能であり、可紡性のポリエステル系樹脂を用いた繊維であれば、従来公知の何れのポリエステル繊維も使用可能であって、製造方法に関しても公知の方法を用いることができる。また、本発明においては、ポリエステル繊維(A)として、一種のポリエステル繊維を単独で使用してもよいが、要すれば複数種のポリエステル繊維を組み合わせて使用することもできる。
【0014】
本発明において、上記ポリエステル繊維(A)同士の近接部に橋架け構造を形成するための低融点ポリエステル繊維(B)としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの従来公知の各種ポリエステル系樹脂からなる繊維が挙げられ、上記ポリエステル繊維(A)を構成するポリエステル系樹脂よりも融点が低く、可紡性のポリエステル系樹脂を用いた繊維であれば、従来公知の何れの低融点ポリエステル繊維も使用可能であって、製造方法に関しても公知の方法を用いることができる。ポリエステル繊維(A)と低融点ポリエステル繊維(B)における融点差としては、不織布を加熱処理する際に、必要以上に圧縮することなく処理せねばならない点、加熱媒体自体の温度のハンチングや温度分布、また加熱された不織布の厚さ方向や平面方向での温度分布(温度ムラ)がある点などから、ポリエステル繊維(A)同士の近接部に安定的に橋架け構造を形成するためには、10℃以上が好ましく、また、加熱媒体側の能力や加熱処理速度、不織布側の熱容量などの各要因のみならず、加工後の補強シートに求める品質(硬さや硬さの分布程度、平滑性など)のレベルが高い場合は、15℃以上の融点差とするのがより好ましく、さらには20℃以上の融点差を有する組み合わせとするのが特に好ましい。融点差は上限が特に限定されるものではないが、実質的なポリエステル繊維(A)と低融点ポリエステル繊維(B)の組み合わせや得られる補強用シートの物性、工程通過性の点で100℃以下が好ましい。また、ポリエステル繊維(A)と低融点ポリエステル繊維(B)は同種の樹脂からなる繊維であるのが好ましい。例えば、ポリエステル繊維(A)にポリエチレンテレフタレート繊維を選択した場合は、低融点ポリエステル繊維(B)としてはイソフタル酸などを所望の融点差を与えることのできる比率で共重合させたポリエチレンテレフタレート共重合体繊維を使用するのが好ましい。なお、本発明でいう融点とは、示差走査熱量測定(DSC)により得られる融解に起因する吸熱ピークについて、ピークの頂点位置の温度、または低温側から累積した面積がピーク全体の面積の60%になる温度のうちでより低い方の温度のことである。
【0015】
不織布内の低融点ポリエステル繊維(B)を溶融状態にするための加熱処理する方法としては、不織布を低融点ポリエステル繊維(B)が溶融状態となる温度に加熱する方法であれば従来公知の何れの方法でも採用可能であり、例えば熱風や熱水などの熱媒が不織布表面に当てられるか不織布内を貫通するようなチャンバー内で不織布を所定温度まで加熱する方法、高温の雰囲気や熱水、スチームなどの熱媒中に導入して不織布を所定温度まで加熱する方法、赤外線やマイクロウェーブなどの電磁波を利用して熱媒を使用せず非接触で不織布を所定温度まで加熱する方法、加熱した金属板や金属ロールなどに接触させて直接的に不織布を所定温度まで加熱する方法、あるいはこれらを組み合わせる方法などが挙げられる。
【0016】
溶融状態の低融点ポリエステル繊維(B)を含むポリエステル繊維(A)からなる不織布を所定の厚さまで圧縮して、厚さ方向に離れていたポリエステル繊維(A)同士を近接させ、さらに溶融状態にある低融点ポリエステル繊維(B)を接触させることで、ポリエステル繊維(A)同士の近接部において橋架け構造による固定点を形成させ、また不織布表面においては平面配向したポリエステル繊維(A)同士の近接部においても同様の橋架け構造、および低融点ポリエステル繊維(B)自身の溶融化により平滑性に優れた面を形成するための加圧処理する方法としては、前記の加熱処理と同時でも加熱処理の後でも、それらの組み合わせでもよいが、平滑な金属板同士で挟んで加圧する方法、平滑な金属板と平滑な表面の金属ロールやゴムロールなどで挟んで連続的に加圧する方法、平滑な表面の金属ロール同士や金属ロールとゴムロールとの間を通過させて連続的に加圧する方法などが挙げられるが、圧縮状態や表面平滑性を制御し易く、また連続処理が容易な方法である、金属ロール同士、あるいは金属ロールとゴムロールとの間を通過させる際に加圧する処理方法が好ましい。この方法は、前記した何れかの方法により予備的に加熱した不織布を加熱した金属ロールに接触させつつ同時に加圧して圧縮する方法や、同様に前記した何れかの方法により加熱した不織布を冷却した金属ロールやフッ素樹脂コートしたロールなどに接触させて加圧することで圧縮するのと同時に平滑面を形成させる方法など、生産効率面で非常に優れた加熱および加圧処理を可能にする。
【0017】
本発明の補強シートの構造としては、軽工品用補強シートに用いるための前提として最低限満足すべき厚さや軽量性の範囲において、求められる硬さやコシを満足しつつ、従来にない均一性、平滑性を付与することができる構造として、ポリエステル繊維(A)間を低融点ポリエステル繊維(B)が溶融してなる橋架け構造が補強した特異的な不織布構造が採用される。このような不織布構造を得る方法としては、ステープルをカードで解繊して得られるウェブ、あるいは抄造法により得られるウェブを基本構造として用いるか、もしくはフィラメントがランダムに配置されてシート状となったウェブを基本構造として用いて、このウェブを必要な目付の分だけ積層し、これをさらにニードルパンチ法やウォータージェット法などにより後述するような特定の状態にまで絡合させる方法が採用される。中でも、ポリエステル繊維(A)および低融点ポリエステル繊維(B)との混合状態をより均一にし易い点で、両ポリエステル繊維のステープルを使用してウェブを形成する方法、取り分け繊維長が150mm以下のステープルを用いる方法が好ましく、より好ましくは繊維長が30mm以上、100mm以下のステープルを用いる方法が好ましい。さらに必要に応じて件縮処理しても良い。
【0018】
本発明においては、絡合処理後に得られた不織布構造としては、ポリエステル繊維(A)および低融点ポリエステル繊維(B)からなるステープルを絡合処理後、またはこれを加熱及び加圧処理した後の不織布構造について、その任意の断面を観察したときにみられる、絡合処理によって厚さ方向に配向したポリエステル繊維(A)により形成された配向部が、幅1cm当たりに0.5〜3.5箇所の範囲で存在するような状態である必要がある。本発明におけるポリエステル繊維(A)の厚さ方向への配向部とは、1本から10本程度までのポリエステル繊維(A)が束状になって厚さ方向へ配向した部分のことを指し、連続した繊維による厚さ方向への往復であれば10本を超えていても1箇所として数えたものである。また、ポリエステル繊維(A)の厚さ方向への配向とは、厚さ方向に対して実質的に0〜75°の角度がついている状態のことである。このような配向部が3.5箇所/cmを超えると、不織布構造自体が高嵩高化してしまうので、目的とするレベルの平滑性を得るために後述する加熱及び加圧処理をした際に、目的とする低い見掛け密度が得られなくなってしまう。一方、配向部が0.5箇所/cm未満だと、ウェブ積層以降の工程中で積層したウェブ間のズレが生じ易い、不織布構造自体の面方向の形態においても著しく変形し易いため、実質的には工業的な連続生産が困難となってしまう。従って、本発明においては、前記の絡合処理において、条件を適宜調節することで、このような特定の絡合状態にする必要がある。具体的には、例えば絡合処理方法としてニードルパンチ法を採用する場合には、一般的な条件よりも少ないパンチ数を設定して絡合処理を行うといった方法が挙げられる。例えば、用いるポリエステル繊維の繊度や種類にもよるが、1000パンチ以下が好ましく。600パンチ以下がより好ましく用いられる
【0019】
本発明においては、後述する加熱及び加圧後の不織布表面の平滑性と、前記のように通常より少ない絡合状態において必要な基本マトリックス形成性を両立させるために、ポリエステル繊維(A)の繊維径が15〜20μmの範囲でなくてはならない。繊維径が15μm未満だと、平滑性はより向上する傾向にあるが、基本マトリックス構造と橋架け構造とのバランスにより得られる見掛け密度とコシにおいて、本発明が目的とするレベルのものが得られなくなってしまう。また、20μmを超えると、基本マトリックス構造はしっかりする傾向にあるので、橋架け構造が少なくても済む傾向にはあるが、ポリエステル繊維(A)の目付当たりに存在する、橋架け構造を形成しうる近接部の密度が減少してしまうので、実質的には橋架け構造不足の傾向も顕著となり、必要なコシを得るためには高密度化せねばならなくなる上、繊維径が太いために必要な平滑性を得るためにも橋架け構造として必要な量以上の低融点ポリエステル繊維(B)を要する傾向にあり、やはり高密度化せねばならないなど、目的とする軽量性が得られなくなってしまう。
ポリエステル繊維(A)の繊維径とは、繊維断面の形状に応じて若干異なる方法により測定せねばならないが、基本的には繊維断面を円形状に換算した直径の平均値のことである。但し、繊維断面が極端に比率が偏った扁平形状の場合には、その短径またはこれに相当する長さの平均値ことである。繊維径を具体的に求める方法としては、各繊維を構成する樹脂の比重ρ、各繊維の平均繊度D(dtex)が測定または判明している場合には次式により計算する方法が採用可能であり、そうでない場合には各繊維の断面を電子顕微鏡で撮影することで実測される直径について平均値を算出する方法が採用可能である。尚、ここでいう平均値とは、無作為にサンプリングした20点の測定値から最大値、最小値をそれぞれ1点ずつ除いた18点について算術平均した値のことである。
繊維径(μm)=20×{D/(πρ)}1/2
【0020】
本発明では、ポリエステル繊維(A)および低融点ポリエステル繊維(B)を含む不織布を加熱及び加圧することで、不織布構造内のポリエステル繊維(A)同士の近接部において低融点ポリエステル繊維(B)による橋架け構造を形成させる。従って、本発明の効果を得るための最も重要なポイントの1つが、この不織布構造中に分布させた低融点ポリエステル繊維(B)由来の橋架け構造により発揮される補強効果及びバインダー効果と平滑化効果のバランスである。即ち、見掛け密度や基本マトリックスを担う繊維量などによって主に決定される補強シートとしての硬さやコシ、さらには加熱加圧した後の表面平滑性と、軽量性を損なわないための総繊維量とのバランスである。そのためには、ポリエステル繊維(A)に対して混合する低融点ポリエステル繊維(B)の割合を、40〜120質量%の範囲で適宜調節する必要がある。低融点ポリエステル繊維(B)が40質量%未満だと、いくら低融点ポリエステル繊維(B)を細くしても橋架け構造自体の数や太さには限界があり、低融点ポリエステル自体の量にも依存する硬さや平滑性が不足するので、本発明の目的とするレベルが得られなくなってしまう。一方、低融点ポリエステル繊維(B)が120質量%を超えると、表面の平滑性などにおいてはより良好な補強シートが得られる傾向にあるが、ポリエステル繊維(A)の量が相対的に少なくなるので、実質的にマトリックス繊維の量に大きく依存するコシが所望のレベルを実現し難くなり、コシを得ようとして全体的な繊維量を増やすと目的とする用途において要望される軽量性が実現できなくなってしまうなど、本発明が目的とする性能のバランスが大きく崩れることとなる。また、平滑性の点では低融点ポリエステル繊維(B)も細いほど好ましい結果を与える傾向にあるが、本発明においては、低融点ポリエステル繊維(B)の繊維としての硬さなどの性質が、ポリエステル繊維(A)と同程度であるのが混合の均一さや、上記した橋架け構造の形成性の点で好ましいので、低融点ポリエステル繊維(B)の繊維径は通常はポリエステル繊維(A)と同程度、即ち14〜25μm程度がであり、より好ましくは15〜22μm程度である。
【0021】
本発明においては、使用する低融点ポリエステル繊維(B)は単一の繊維成分からなる繊維でなくてはならない。本発明では、補強シートに求められる硬さ、コシを付与するために、複合繊維の一成分としてではなく低融点ポリエステルを単一の繊維成分として用いることで、不織布全体の重量を極力増やすことなく低融点ポリエステルからなる橋架け構造をより効率的に形成させているのである。橋架け構造を形成させるための低融点ポリエステルとして、本発明の低融点ポリエステル繊維(B)の替わりに、芯鞘型繊維の鞘成分、サイドバイサイド型繊維の一成分として低融点ポリエステルを用いた複合繊維を用いて、前記のように低融点ポリエステルからなる橋架け構造を不織布構造内により多く導入しようとすると、当然他方の非低融点成分も不織布重量に加算されることになる上、低融点ポリエステル成分が非低融点成分からなる繊維構造の長さ方向に沿った全体に渡って存在することになるので、ポリエステル繊維(A)と複合繊維(の非低融点成分)との間、または複合繊維(の非低融点成分)同士における橋架け構造様の融着は形成されるものの、融着部を形成する低融点ポリエステル成分以外にも、融着部を形成しない低融点ポリエステル成分が多量に存在することとなるなど、複合繊維自体が単に重量増を招くだけの繊維成分となる傾向が強い。言い換えると、本発明の低融点ポリエステル繊維(B)の替わりに上記のような複合繊維を採用すると、低融点ポリエステル成分の重量当たりに形成されうる橋架け構造の数・量が、本発明の効果である軽量性を満足するレベルに達しないのである。
【0022】
本発明の補強シートが目的とする軽工品用途に適したコシは、後述する柔軟度(cm)が補強シートの厚さt(mm)に対して0.15/(t1/2)〜0.75/(t1/2)である。柔軟度が0.75/(t1/2)を超えると本発明が目的とする補強シートとしては柔らかすぎる傾向にあるので補強効果が不足するので不適であり、またそのような柔らかな補強シートを作成しようとすると平滑性が不足する傾向が強い。一方、柔軟度が0.15/(t1/2)未満だと補強効果は極めて優れるが、本発明が目的とする軽工品用途における補強シートとしては硬すぎて品位に欠けるので不適である。柔軟度の好ましい上限は0.70/(t1/2)以下であり、より好ましい上限は0.60/(t1/2)以下である。また、柔軟度の好ましい下限は0.18/(t1/2)以上であり、より好ましい下限は0.20/(t1/2)以上である。
【0023】
本発明が目的とする軽工品用途に適した補強シートの見掛け密度は、0.30〜0.39g/cmである。見掛け密度が0.30g/cm未満であっても軽量性の点では当然ながら何ら差支えはなく、むしろ好ましいことであるが、用途において素材に求められる硬さやコシが実質的には得られない見掛け密度である。一方、0.39g/cmを超えると軽量性の点で本発明が目的とするレベルにないので商品価値がない。上記した本発明の構成において、本発明が目的とするレベルの各性能を得るためには、補強シートの見掛け密度は0.32〜0.37g/cmが好ましい。
軽工品用途における補強シートの厚さは、軽工品の中でも具体的な用途や使用部位によって種々異なるが、通常は0.3〜3.0mm程度である。上記した本発明の構成において、本発明が目的とするレベルの各性能を得るためには、見掛け密度との関係もあるが、大凡0.5〜2.5mmとするのが好ましく、0.7〜2.0mmとするのがより好ましい結果を与える。
【0024】
前記した本発明の構成をとることによって、極めて平滑な表面の不織布構造を形成することが可能になるので、その表面に意匠が付与された樹脂フィルムを貼り合わせることで、従来にないレベルの表面平滑感を有する意匠性外観が得られ、また従来技術の範囲で軽量性を犠牲にして高密度化することで単に平滑性を上げただけのものに見られるような折り曲げた際に生じる品位の低い大きな折れシワが生じにくいので、高品位な軽工品用補強シートを得ることができるのである。貼り合わせる樹脂フィルムとしては、ポリエステル樹脂からなるフィルム、ポリオレフィン樹脂からなるフィルム、ポリウレタン樹脂からなるフィルム、ポリスチレン樹脂からなるフィルム、ポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムなど、従来公知の種々の樹脂からなるフィルムが本発明の目的、効果を損なわない限りは何れも採用可能だが、貼り合わせる補強シートとの硬さやコシのバランス、外観などにおいてユーザーに違和感を覚えさせないようにするためには、不織布に使用したポリエステル繊維(A)を構成する樹脂と同種の樹脂が好ましい。また、同種の樹脂を使用することで、後述する両者の接着に関してもより好ましい結果を与えることができる。不織布に樹脂フィルムを貼り合わせる前、あるいは後でプリント、着色などの方法により意匠性を付与することで、軽工品用補強シートとして優れた意匠性が得られる。また、本発明の目的効果を損なわない限りにおいて樹脂フィルムに凹凸模様等の意匠性を付与してもよい。
貼り合わせる樹脂フィルムの目付としては、補強シートとしての軽量性を損なわないように極力薄いものが好ましいが薄すぎると不織布表面の微凹凸の影響を受けやすく、また不織布の平滑性を活かして接着すること自体も困難になることから、好ましくは10〜50μm、より好ましくは15〜30μm程度の範囲で選択するのがよい。
【0025】
樹脂フィルムを不織布表面に接着する方法としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂やポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂などのホットメルト樹脂、エポキシ系樹脂やウレタン系樹脂などの2液架橋型や湿気硬化型、紫外線硬化型といった反応性樹脂、あるいはシリコン系樹脂、クロロプレンゴムなどを樹脂フィルムや補強シートとの接着性の観点などから適宜選択して接着剤樹脂として用いて、樹脂フィルムか不織布の何れかに接着剤樹脂を連続的にコーティングしてそれらを貼り合わせる方法や、樹脂フィルムと不織布の間にフィルム状または不織布状の接着剤樹脂を挟む方法などの従来公知の方法が何れも採用可能である。樹脂フィルムと不織布との界面における接着剤樹脂の状態としては、前記の方法によって非連続的なドット状、連続的なフィルム状、あるいは不織布状などが得られる。補強シートの用途が特に軽量性を特徴とする用途の場合には、不織布表面に貼り合わせる樹脂フィルムは薄いものを使用せざるを得ないので不織布の平滑性がより重要であり、その平滑性を十分に生かせるように各種ホットメルト樹脂を不織布と樹脂フィルムの界面でフィルム状または不織布状に存在させる方法が最も好ましい方法である。
【0026】
上記のようにして得られた補強シートは、軽工品用として十分な硬さとコシを有しつつ、軽量性、平滑性、さらには意匠性にも優れており、また副次的な効果として補強シート同士や補強シートと他の素材を重ねて接着したり縫い合わせたりする際の加工性や補強シートの接着、縫製する部位のみを研削等して薄くする際の加工性などの後加工性においても、加工時に形態が崩れにくい、接着性に優れる、縫製時に針孔が崩れにくいなどの優れた特質を備えている。従って、特に鞄、財布や手帳などの日常的に携帯することの多い各種雑貨や、襟、ベルトなどの衣類、装飾品を入れる箱などの一般的な軽工品の補強シート等に好適に使用することができる。取り分け補強のための硬さ、それとは基本的に相反する軽さとが同時に高いレベルで求められる用途である鞄類に代表される雑貨、例えば手提げ鞄、肩掛け鞄、背負い鞄などの学童用鞄の他にもビジネスバッグやスーツケースなどの本体において、露出しない部分の補強材はもちろんのこと、優れた外観を有するので露出する部材、例えば仕切り材についても好適に使用することができる。
【0027】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。尚、以下において、部および%はことわりのない限り質量部および質量%を表す。
本発明でいう柔軟度は、測定対象の任意の各所からタテ3cm×ヨコ15cmでヨコ方向に長く切り出した5点の測定サンプルについて、下記の測定方法により測定された値のうち最大値のことである。
【0028】
金属製で半径5cm,長さ5cm以上の半円柱形状の支持台2つを、水平な机の上に頂部間隔10cmで並行に並べて設置する。次に、2つの支持台に跨るように測定サンプルを乗せ、測定サンプル中央部(2つの支持台からほぼ等距離の位置)に50gの分銅を静かに乗せる。このときの測定サンプルの撓みとして、支持台頂部がなす水平線から測定サンプル下面の最も撓んだ部分までの距離(cm)を測定し、その測定サンプルの柔軟度とする。
【実施例1】
【0029】
ポリエステル繊維(A)として、繊維径が18.5μmのポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記することがある)繊維(融点は250℃)を紡糸し、51mmにカットして短繊維としたものを準備した。低融点ポリエステル繊維(B)として、イソフタル酸を共重合させたPET共重合体からなる繊維径が20.0μmの共重合PET繊維(融点は120℃)を紡糸し、51mmにカットして短繊維としたものを準備した。
次いで、これら2種類の繊維をA:B=60:40の比率で混合した後、カードで解繊し、さらに200パンチ/cmのニードルパンチ処理により軽く絡合させて、目付380g/mの不織布とした。次いで、スチームチャンバー内で125℃に加熱して低融点ポリエステル繊維(B)を溶融させた後、水を導入して冷却している金属ロール間で押圧することで、表面を平滑化させつつ低融点ポリエステルによる橋架け構造を形成させ、平滑でコシのある不織布を得た。得られた不織布の断面数箇所を電子顕微鏡で観察すると、ポリエステル繊維(A)の配向部が何れの断面においても2.2〜2.8箇所/cmの範囲で形成されていた。
【0030】
次いで、この不織布の表面にホットメルト接着剤を溶融状態で塗布し、その上に柄がプリントされた厚さ25μmのポリエステルフィルムを貼り合わせることで、厚さ1.20mmの軽工品用補強シート1を作製した。
得られた軽工品用補強シート1は、柔軟度0.30cmで補強シートとして十分なコシを有し、また見かけ密度0.35g/cmで軽量性にも優れており、軽工品用補強シートとしての基本的な諸性能に優れている上、貼り合わせたポリエステルフィルム自体の平滑性が損なわれていず、また表面の折れシワも品位に欠けるような大きなシワは殆ど見られない、極めて品位の高いものであった。この軽工品用補強シート1を、大マチ部の仕切り材に使用したランドセルを作製したところ、十分な補強効果により型崩れしにくく軽量性にも優れたものであり、また冠を開けたときに見える部分に本発明の表面に柄が付いた軽工品用補強シート1が使用されていて意匠性に優れたランドセルであった。
【0031】
比較例1
実施例1において、ポリエステル繊維(A)の替わりに、繊維径が18.5μmのポリプロピレン(以下、PPと略記することがある)繊維を紡糸し、51mmにカットして短繊維としたものを使用し、目付350g/mとする以外は同様にして、実施例1と同等の平滑性を有する不織布を得た。得られた不織布は、見掛け密度が0.5g/cmを超えてしまっていたので、その表面に意匠性樹脂フィルムを貼り合せて補強用シートを作成しても、本発明が目的とするような軽量性を有するものは到底得られない不織布であった。
【0032】
比較例2
実施例1において、ニードルパンチ処理による絡合を一般的なレベルとし、目付420g/mとする以外は同様にして、実施例1と同等の平滑性を有する不織布を得た。得られた不織布の断面数箇所を電子顕微鏡で観察すると、PET繊維の配向部が何れの断面においても3.8〜5.1箇所/cmの範囲で形成されていた。
【0033】
次いで、この不織布の表面に実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを貼り合わせることで、厚さ1.10mmの軽工品用補強シート2を作製した。
得られた軽工品用補強シート2は、柔軟度0.45cmで補強シートとして十分なコシを有しているが、見かけ密度が0.4g/cmを超えてしまっているので軽量性において不十分なものであり、軽工品用補強シートとしての基本的な性能において本発明の目的には適わないものであった。
【0034】
比較例3
実施例1において、混合比率をPET繊維:共重合PET繊維=40:60とする以外は同様にして、実施例1と同等の平滑性を有する不織布を得た。得られた不織布の断面数箇所を電子顕微鏡で観察すると、PET繊維の配向部が何れの断面においても1.8〜2.6箇所/cmの範囲で形成されていた。
【0035】
次いで、この不織布の表面に実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを貼り合わせることで、厚さ1.05mmの軽工品用補強シート3を作製した。
得られた軽工品用補強シート3は、柔軟度0.80cmで本発明の補強シートが目的とするコシを有していず、また見かけ密度が0.4g/cmを超えてしまっていて軽量性においても不十分なものであり、軽工品用補強シートとしての基本的な性能において本発明の目的には適わないものであった。
【0036】
比較例4
比較例3において、ポリエステル繊維(A)として、繊維径が24.5μmのPET繊維を紡糸し、51mmにカットして短繊維としたものを使用する以外は同様にして、実施例1と同等の平滑性を有する不織布を得た。得られた不織布の断面数箇所を電子顕微鏡で観察すると、ポリエステル繊維の配向部が何れの断面においても2.4〜3.2箇所/cmの範囲で形成されていた。
【0037】
次いで、この不織布の表面に実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを貼り合わせることで、厚さ0.95mmの軽工品用補強シート4を作製した。
得られた軽工品用補強シート4は、柔軟度0.65cmで補強シートとして十分なコシを有しているが、見かけ密度が0.4g/cmを超えてしまっているので軽量性において不十分なものであり、軽工品用補強シートとしての基本的な性能において本発明の目的には適わないものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル繊維(A)からなる不織布とその一面に接着された意匠が付与された樹脂フィルムからなる軽工品用補強シートであって、該繊維(A)の繊維径が15〜20μmで、該繊維(A)の厚さ方向への配向部が0.5〜3.5箇所/cmであり、該繊維(A)に対して40〜120質量%の範囲で該不織布に混在させた低融点ポリエステル繊維(B)が溶融することで該繊維(A)同士の近接部に橋架け構造が形成されており、見掛け密度が0.30〜0.39g/cm、厚さt[mm]のときの柔軟度が0.15/(t1/2)〜0.75/(t1/2)[cm]であることを特徴とする軽工品用補強シート。
【請求項2】
請求項1に記載の軽工品用補強シートを本体の補強材または仕切り材に使用した鞄。

【公開番号】特開2007−2351(P2007−2351A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−181909(P2005−181909)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【出願人】(591121513)クラレトレーディング株式会社 (30)
【Fターム(参考)】