説明

軽量モルタル

【課題】 本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、フレッシュモルタルへの加水量を低減し、フレッシュモルタル時の偽凝結を抑止し、断熱性に優れた軽量モルタルを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、セメント100質量部と、単位容積質量0.1kg/L以下の樹脂発泡体1〜20質量部と、単位容積質量0.6kg/L以下の無機質軽量骨材10〜100質量部とを含有する軽量モルタルであって、前記無機質軽量骨材の全量中の60〜100質量%が、吸水率10質量%以下の無機質軽量骨材であることを特徴とする軽量モルタルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント、樹脂発泡体、及び無機質軽量骨材を含有する軽量モルタルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメント、樹脂発泡体、及び無機質軽量骨材を含有する軽量モルタルは、建築物に断熱材などに用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、セメント、シラスバルーン、及び発泡ウレタン又は発泡ポリスチレン等を含有する断熱材が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−281051号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セメント、樹脂発泡体、及び無機質軽量骨材を含有する軽量モルタルは、セメント、樹脂発泡体、及び無機質軽量骨材に水を混合して練った混合物(以下、フレッシュモルタルという。)を硬化させることによって得られる。このフレッシュモルタルに加える水は、無機質軽量骨材が多くの水を吸い込むこともあって、セメントに対して質量換算で1倍〜数倍程度の量となる。このように加水量が多いことに加え、軽量モルタルが断熱材として施工される場合には、施工厚みが厚くなるため、硬化するのに時間を要した。また、加水量が多くなることによって、軽量モルタルの強度(圧縮強度、曲げ強度など)が弱くなる傾向があった。
【0006】
また、セメント、樹脂発泡体、及び無機質軽量骨材に水を含有するフレッシュモルタルは、混練後、しまり(偽凝結)をおこして流動性が急激に低下するという不具合を生じやすく、偽凝結したフレッシュモルタルは施工が困難であった。
【0007】
また、無機質軽量骨材を含有する軽量モルタルを断熱材として使用した場合、軽量モルタルが吸水しやすく、吸水することによって軽量モルタルの断熱性が低下してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、フレッシュモルタルへの加水量を低減し、フレッシュモルタル時の偽凝結を抑止し、断熱性に優れた軽量モルタルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決する方法として、請求項1に記載の発明は、セメント100質量部と、単位容積質量0.1kg/L以下の樹脂発泡体1〜20質量部と、単位容積質量0.6kg/L以下の無機質軽量骨材10〜100質量部とを含有する軽量モルタルであって、前記無機質軽量骨材の全量中の60〜100質量%が、吸水率10質量%以下の無機質軽量骨材であることを特徴とする軽量モルタルである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の軽量モルタルにおいて、前記前記吸水率10質量%以下の無機質軽量骨材の単位容積質量が0.1〜0.6kg/Lであることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の軽量モルタルにおいて、セメント100質量部に対して、0.5〜20質量部の繊維と、1〜50質量部の有機バインダーとを含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の軽量モルタルは断熱性に優れる。また、フレッシュモルタル時に偽凝結をおこし難くい。また、吸水率の少ない無機質軽量骨材を用いることによって、フレッシュモルタルへの加水量を低減することができる。
【0013】
請求項2に記載の軽量モルタルは、請求項1の効果に加え、強度(特に、圧縮強度)に優れる。
【0014】
請求項3に記載の軽量モルタルは、請求項1又は2の効果に加え、強度(特に、曲げ強度、引張り強度)に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、セメント100質量部と、単位容積質量0.1kg/L以下の樹脂発泡体1〜20質量部と、単位容積質量0.6kg/L以下の無機質軽量骨材10〜100質量部とを含有する軽量モルタルであって、前記無機質軽量骨材の全量中の60〜100質量%が、吸水率10質量%以下の無機質軽量骨材であることを特徴とする。
【0016】
この軽量モルタルは断熱性に優れる。セメントと樹脂発泡体と無機質軽量骨材とを含有する軽量モルタルは、吸水しやすく、吸水することによって断熱性が低下する。無機質軽量骨材として、吸水率10質量%以下の無機質軽量骨材をこの割合で用いると、軽量モルタルが吸水しにくくなり、吸水することによる断熱性の低下を抑えることができる。
【0017】
更に、吸水率10質量%以下の無機質軽量骨材をこの割合で用いたことによって、フレッシュモルタル時の偽凝結をおこし難くなる。また、フレッシュモルタルへの加水量を低減できるため、強度(圧縮強度、曲げ強度など)も発現しやすい。
【0018】
前記軽量モルタルは、好ましくは見かけ比重0.1〜1.0(特に好ましくは、0.2〜0.5)のものであって、セメントと樹脂発泡体と無機質軽量骨材とを前記の混合割合で用いれば容易に製造することができる。軽量モルタルは、主に建築物等の断熱材として用いられる。見かけ比重が小さすぎるものは、強度(圧縮強度、曲げ強度など)が弱く形状が崩れやすく、見かけ比重が大きすぎるものは、熱伝導率が大きく十分な断熱性が得られない。樹脂発泡体と無機質軽量骨材とを前記の混合割合で用いることで、強度(圧縮強度、曲げ強度など)及び断熱性に優れた軽量モルタルを得ることができる。
【0019】
なお、フレッシュモルタルへの加水量は、好ましくはセメント100質量部に対して水が80〜250質量部(より好ましくは80〜160)である。セメント、樹脂発泡体、無機質軽量骨材の含有量が上記の範囲であって加水量がこの範囲であれば、混合が容易で施工作業性にも優れる。
【0020】
前記セメントは、水硬性のセメントであれば特に限定されず、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、白色ポルトランドセメント、超微粒子セメント、高ビーライト系セメント、超速硬セメント、アルミナセメント、エコセメント等の各種セメントを用いることができる。
【0021】
前記樹脂発泡体は、合成樹脂を発泡させて得られる多孔質体である。例えば、発泡ポリスチレン、発泡ウレタン、発泡フェノール、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレンなどを用いることができる。これらの樹脂発泡体が単位容積質量0.1kg/L(リットル)以下(より好ましくは0.05kg/L以下、特に好ましくは0.03以下)のものであれば、比重0.1〜1.0で、断熱性及び強度に優れた軽量モルタルを容易に得ることができる。単位容積質量0.1kg/Lを超える樹脂発泡体は、軽量モルタル中に占める樹脂発泡体の容積を多くする必要があり、軽量モルタルの断熱性を効率よく上昇ささることができない。また、軽量モルタル中に占める樹脂発泡体の容積が多くなると軽量モルタルの強度(曲げ強度など)が低下する。
なお、単位容積質量は、JIS A1104(2006)に準じて測定すればよい。
【0022】
樹脂発泡体の単位容積質量の下限値は特に限定されないが、0.005kg/L以上であることが好ましい。それによって、強度(圧縮強度、曲げ強度など)に優れた軽量モルタルが得やすくなる。単位容積質量が小さすぎる樹脂発泡体は強度が弱く、セメント等と混ぜる際に破損したり変形したりしやすい。また、強度が弱い樹脂発泡体を含むことで軽量モルタルの強度(圧縮強度、曲げ強度など)も弱くなる。
【0023】
なお、樹脂発泡体の発泡手段、成形方法等は特に限定されない。例えば、発泡ポリスチレンであれば、ビーズ法発泡ポリスチレン(EPS)、押出発泡ポリスチレン(XPS)等を用いることができる。これらは所定の粒子径にするために、成型体を破砕して用いても良いし、成型前の予備発泡ビーズを用いても良い。
【0024】
樹脂発泡体は、粒子径が10mm以下(好ましくは8mm以下)であることが好ましい。樹脂発泡体は、軽量モルタルの結合材となるセメントとの密着性がよくないので、軽量モルタル中に粒子径の細かいものを分散させる方が好ましい。それによって、強度(曲げ強度など)に優れた軽量モルタルを得ることができる。粒子径が大き過ぎると、軽量モルタルの曲げ強度が弱くなる傾向がある。また、大きい粒子径のものが含まれると、軽量モルタルの表面を平滑にすることが困難になるなど、軽量モルタルの成形時の作業性や軽量モルタルの仕上がりに不具合が生じやすい。
なお、粒子径10mm以下とは目開き10mmの篩を通過可能な粒子の大きさである。
【0025】
樹脂発泡体の粒子径の下限値は特に限定されないが、0.3mm(好ましくは0.5mm、特に好ましくは1mm)を超える大きさのであることが好ましい。それによって、硬化性に優れた軽量モルタルを得やすくなる。粒子径が小さいものを多く使用すると、フレッシュモルタルへの加水量が多くなり、そのため、硬化に時間がかかり、また、強度(圧縮強度、曲げ強度など)の発現が悪くなる傾向がある。
なお、粒子径0.5mmを超える大きさとは目開き0.5mmの篩を通過しない粒子の大きさである。
【0026】
樹脂発泡体の含有量は、セメント100部に対して1〜20質量部(より好ましくは1〜10質量部、特に好ましくは2〜4.5質量部)が好ましい。含有量がこの範囲にあれば、比重0.1〜1.0で、断熱性及び強度(圧縮強度、曲げ強度など)に優れる軽量モルタルを得ることができる。
【0027】
前記無機質軽量骨材は、単位容積質量0.6kg/L以下で無機質なものであれば使用可能であり、その形状、組成などは特に限定されない。例えば、パーライト、バーミキュライト、シラスバルーン、ガラス発泡体、珪藻土等を用いることができる。単位容積質量0.6kg/L以下のものを使用することによって、比重0.1〜1.0で、断熱性及び強度に優れた軽量モルタルを容易に得ることができる。単位容積質量0.6kg/Lを超える無機質軽量骨材は、軽量モルタル中に占める無機質軽量骨材の容積を多くする必要があり、軽量モルタルの断熱性を効率よく上昇ささることができない。
なお、単位容積質量は、JIS A1104(2006)に準じて測定すればよい。
【0028】
無機質軽量骨材の単位容積質量の下限値は特に限定されないが、0.03kg/L以上であることが好ましい。それによって、断熱性及び強度(圧縮強度、曲げ強度など)に優れた軽量モルタルが得やすくなる。単位容積質量が小さすぎる無機質軽量骨材は強度が弱く、セメント等と混ぜる際に破損したり変形したりしやすい。軽量骨材が破損・変形をすると軽量モルタルの断熱性を効率よく上昇させられない場合がある。また、強度が弱い無機質軽量骨材を含むことで軽量モルタルの強度(圧縮強度、曲げ強度など)も弱くなる。
【0029】
無機質軽量骨材の全量中の60〜100質量%(より好ましくは70〜100質量%)が、吸水率10質量%以下の無機質軽量骨材であることが好ましい。吸水率の小さい無機質軽量骨材を用いれば、フレッシュモルタルへの加水量を少なくすることができ、軽量モルタルの硬化・乾燥にかかる時間が短縮される。また、加水量が少ないことによって、軽量モルタルの強度(圧縮強度、曲げ強度など)が発現しやすくなる。
また、セメント、樹脂発泡体、無機質軽量骨材及び水を混合したフレッシュモルタルは、混練後、偽凝結をおこして流動性が急激に低下するという不具合を生じやすいが、吸水率の小さい無機質軽量骨材を用いることで偽凝結を抑止して施工性に優れたフレッシュモルタルを得ることができる。
吸水率10質量%以下の無機質軽量骨材としてはガラス粉末を造粒焼成して得られる多孔質なガラス発泡体、低吸水パーライトなどが挙げられる。このような多孔質なガラス発泡体の中でも、独立気孔を多く有するものであれば吸水率は小さくなる。一方、パーライト、バーミキュライト、シラスバルーン、珪藻土などは、ほとんどの場合、吸水率が10質量%を超える。
なお、無機質軽量骨材の吸水率は、JIS A1134(2006)に準じて測定すればよい。
【0030】
なお、吸水率10質量%以下の無機質軽量骨材として単位容積質量0.1kg/L以上のものを用いれば、軽量モルタルの強度(特に、圧縮強度)をより強くすることができる。吸水率10質量%以下、且つ単位容積質量0.1〜0.6kg/Lの無機質軽量骨材としては、ガラス粉末を造粒焼成して得られる多孔質なガラス発泡体などが挙げられる。
【0031】
また、吸水率10質量%以下、且つ単位容積質量0.1〜0.6kg/Lの無機質軽量骨材として、骨材粒子の形状が略球形のものを用いれば、軽量モルタルの強度(特に、圧縮強度)をより強くすることができる。
【0032】
無機質軽量骨材は、粒子径が8mm以下(より好ましくは5mm以下、特に好ましくは3mm以下)であることが好ましい。それによって、断熱性に優れた軽量モルタルが得やすくなる。粒子径が大きい無機質軽量骨材は、セメント等と混ぜる際に破損・変形しやすく、軽量モルタルの断熱性を効率よく上昇させられない場合がある。また、大きい粒子径のものが含まれると、軽量モルタルの表面を平滑にすることが困難になるなど、軽量モルタルの成形時の作業性や軽量モルタルの仕上がりに不具合が生じやすい。
なお、粒子径8mm以下とは目開き8mmの篩を通過可能な粒子の大きさである。
【0033】
無機質軽量骨材の粒子径の下限値は特に限定されず、平均粒子径が0.1mm以上(より好ましくは、0.3mm以上)であればよい。それによって、硬化性に優れた軽量モルタルを得やすくなる。平均粒子径が小さすぎるものは、軽量骨材の比表面積が大きくなって骨材が吸水しやすいので、フレッシュモルタルへの加水量が多くなり、そのため、硬化に時間がかかり、また、強度(圧縮強度、曲げ強度など)の発現が悪くなる傾向がある。
なお、ここでいう平均粒子径とは、JIS Z8801−1(2006)に規定された金属製網篩を用いて篩分けを行った結果より求められる、粒度分布の平均となる粒子の径である。即ち、それより上と下にはそれぞれ50質量%の粒子が存在する粒径である。
【0034】
無機質軽量骨材の含有量は、セメント100部に対して10〜100質量部(より好ましくは15〜50質量部)が好ましい。含有量がこの範囲にあれば、比重0.1〜1.0で、断熱性及び強度(圧縮強度、曲げ強度など)に優れる軽量モルタルを得ることができる。
【0035】
なお、本発明の軽量モルタルには、配合物として、セメント、樹脂発泡体、無機質軽量骨材、水以外にも、充填材や添加剤を本発明の要旨を損なわない範囲において含有させてもよい。充填材や添加剤としては、通常のモルタル、軽量モルタルに用いるものを適宜で用いればよい。
【0036】
前記充填材としては、例えば、川砂、珪砂、寒水砂、陶磁器粉砕物、ガラス粉砕物、炭酸カルシウム等の無機粉粒体(前記無機質軽量骨材には該当しないもの)、樹脂粒子、中空樹脂粒子等の有機充填材、ロックウール、スラグウール、ガラス繊維等の無機繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、ポリアミド繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリエステル繊維等の有機繊維を適宜で用いることができる。
【0037】
前記添加剤としては、例えば、結合材となる合成樹脂(合成樹脂エマルション、再乳化型粉末樹脂等の有機バインダー)、増粘剤、吸水防止剤、撥水剤、減水剤、流動化剤、保水剤等を適宜で用いることができる。
【0038】
これらの充填材や添加剤の中でも、軽量モルタルの引張り強度や曲げ強度を向上させるために、繊維(無機繊維、有機繊維)と有機バインダーを用いることがこのましい。軽量モルタルは引張り強度や曲げ強度が弱くなる傾向があり、この弱点を補うためには、繊維と有機バインダーが有効である。
【0039】
前記繊維の含有量は、セメント100部に対して0.5〜20質量部(より好ましくは1〜10質量部)が好ましい。含有量がこの範囲にあれば、軽量モルタルは引張り強度や曲げ強度を強化することができる。繊維の含有量が多すぎるとフレッシュモルタルの混練が困難になり、また、フレッシュモルタル中で繊維同士が絡まり易いため好ましくない。なお、有機繊維を用いた方が引張り強度や曲げ強度をより強化することができる。
【0040】
前記有機バインダーの含有量は、セメント100部に対して1〜50質量部(より好ましくは2〜20質量部)が好ましい。含有量がこの範囲にあれば、軽量モルタルは引張り強度や曲げ強度を強化することができる。有機バインダーの含有量が多すぎるとフレッシュモルタルへの加水量が多くなってしまうため、硬化に時間がかかる傾向がある。
【0041】
本発明の軽量モルタルは、建築物などに用いられる断熱材として好適に用いられる。その際には、建築物にフレッシュモルタルを直接施工して断熱層を形成してもよいし、建築物に取り付ける前の建材等の基材に断熱層を形成してもよい。また、任意の形状に成形した軽量モルタルを、断熱材として建築物などに取り付けることもできる。
【0042】
フレッシュモルタルを建築物の壁面や天井等に対して施工する方法としては、吹付け装置などを用いて吹き付ける方法、ローラーや籠手等の施工用具を用いて塗り付ける方法などを採用することができる。
【実施例】
【0043】
(実施例1)
各材料を下記の配合割合で混合したフレッシュモルタルを製造した。
フレッシュモルタルの配合:普通ポルトランドセメント100質量部、パーライト(粒子径0.5〜3mm、単位容積質量0.16kg/L、吸水率約40質量%)5質量部、ガラス発泡体(多孔質な略球形粒子、1〜2mm、単位容積質量0.35kg/L、吸水率7質量%)15質量部、再乳化型アクリル樹脂粉末5質量部、ビニロン繊維2質量部、発泡ポリスチレン(粒子径3〜6mm、単位容積質量0.01kg/L)3.8質量部、水130質量部。
【0044】
これらの材料はモルタルミキサーを用いて混練し、フレッシュモルタルを約30kg製造した。混練後、モルタルミキサーを停止して、フレッシュモルタルを10分間放置したが、偽凝結はおこらなかった。
フレッシュモルタルは、塗装機器によってコンクリート壁面に吹付け、その後、コテを用いて平均厚みが約20mmとなるように仕上げた。
【0045】
(実施例2)
各材料を下記の配合割合で混合したフレッシュモルタルを製造した。
フレッシュモルタルの配合:普通ポルトランドセメント100質量部、ガラス発泡体(多孔質な略球形粒子、1〜2mm、単位容積質量0.35kg/L、吸水率7質量%)26質量部、再乳化型アクリル樹脂粉末5質量部、ビニロン繊維2質量部、発泡ポリスチレン(粒子径3〜6mm、単位容積質量0.01kg/L)3.8質量部、水115質量部。
【0046】
この配合は、実施例1のフレッシュモルタルとは、使用している無機軽量骨材のかさ容積はほぼ同じであって、フロー値もほぼ同じである。ここから、無機軽量骨材中の吸水率10%以下(7質量%)の無機軽量骨材の割合を多くすることによってフレッシュモルタルへの加水量を低減できていることが分かる。
【0047】
これらの材料はモルタルミキサーを用いて混練し、フレッシュモルタルを約30kg製造した。混練後、モルタルミキサーを停止して、フレッシュモルタルを10分間放置したが、偽凝結はおこらなかった。
フレッシュモルタルは、塗装機器によってコンクリート壁面に吹付け、その後、コテを用いて平均厚みが約20mmとなるように仕上げた。
【0048】
(比較例1)
各材料を下記の配合割合で混合したフレッシュモルタルを製造した。
フレッシュモルタルの配合:普通ポルトランドセメント100質量部、パーライト(粒子径0.5〜3mm、単位容積質量0.16kg/L、吸水率約40質量%)10質量部、ガラス発泡体(多孔質な略球形粒子、1〜2mm、単位容積質量0.35kg/L、吸水率7質量%)4質量部、再乳化型アクリル樹脂粉末5質量部、ビニロン繊維2質量部、発泡ポリスチレン(粒子径3〜6mm、単位容積質量0.01kg/L)3.8質量部、水155質量部。
【0049】
この配合は、実施例1のフレッシュモルタルとは、使用している無機軽量骨材のかさ容積はほぼ同じであって、フロー値もほぼ同じである。ここから、無機軽量骨材中の吸水率10%以下(7質量%)の無機軽量骨材の割合が少ないとフレッシュモルタルへの加水量が多くなることが分かる。
【0050】
これらの材料はモルタルミキサーを用いて混練し、フレッシュモルタルを約30kg製造した。混練後、モルタルミキサーを停止して、フレッシュモルタルを10分間放置したところ、偽凝結がおこり、フレッシュモルタルのフロー値が著しく低下した。
フレッシュモルタルは、偽凝結していたため、加水してモルタルミキサーで練り直した後に、塗装機器によってコンクリート壁面に吹付け、その後、コテを用いて平均厚みが約20mmとなるように仕上げた。
【0051】
この結果から、無機軽量骨材中の吸水率10%以下(7質量%)の無機軽量骨材の割合が少なすぎた場合には、偽凝結が起こりやすくなることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント100質量部と、単位容積質量0.1kg/L以下の樹脂発泡体1〜20質量部と、単位容積質量0.6kg/L以下の無機質軽量骨材10〜100質量部とを含有する軽量モルタルであって、前記無機質軽量骨材の全量中の60〜100質量%が、吸水率10質量%以下の無機質軽量骨材であることを特徴とする軽量モルタル。
【請求項2】
前記吸水率10質量%以下の無機質軽量骨材の単位容積質量が0.1〜0.6kg/Lであることを特徴とする請求項1に記載の軽量モルタル。
【請求項3】
セメント100質量部に対して、0.5〜20質量部の繊維と、1〜50質量部の有機バインダーとを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の軽量モルタル。

【公開番号】特開2012−131657(P2012−131657A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284068(P2010−284068)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000159032)菊水化学工業株式会社 (121)
【Fターム(参考)】