説明

軽量化に適した車体側部構造

【課題】サイドシルとセンターピラーが接合されてなる車体側部構造において、要求される剛性や強度を維持しつつ軽量化を図ることができる車体側部構造を提供する。
【解決手段】サイドシル10は、一枚のブランク板を筒状に成形した閉断面部品11(上面11a、下面11b、車外側縦壁11c、車内側縦壁11d)と、その閉断面部品11の内部にあって、サイドシル10とセンターピラー20が接合されている領域の閉断面部品11の上面11aと下面11bをつなぐようにして取り付けられている補強部品12とからなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車におけるサイドシルとセンターピラーを含む車体側部の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の車体構造において、サイドシルとセンターピラーを含む車体側部構造では、一般的に、例えば特許文献1に示されているように、サイドシルが開放断面部品のサイドシルインナーとサイドシルアウターからなり、これら二つの開放断面部品のフランジ部を合わせて接合することで閉断面のサイドシルが形成されてきた。
【0003】
そして、センターピラーは開放断面部品のピラーインナーとピラーアウターからなり、ピラーアウターはサイドシルアウターと接合され、ピラーインナーはピラーアウターと接合されるとともにサイドシルインナーとサイドシルアウターに挟まれるように接合されて、サイドシルとセンターピラーを含む車体側部構造が形成されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−202620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に代表されるような車体側部構造では、サイドシルの長手方向全長に亘ってサイドシルアウターとサイドシルインナーの両方のフランジ部が必ず存在するものの、サイドシルに要求される剛性や強度はサイドシルの閉断面部分に支配されるため、フランジ部の存在は車体の軽量化を追及するには不利となっていた。
【0006】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、サイドシルとセンターピラーが接合されてなる車体側部構造において、要求される剛性や強度を維持しつつ軽量化を図ることができる車体側部構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有している。
【0008】
[1]サイドシルとセンターピラーが接合されてなる車体側部構造であって、
前記サイドシルは、一枚のブランク板を筒状に成形した閉断面部品と、前記閉断面部品の内部にあって、サイドシルとセンターピラーが接合されている領域の閉断面部品の上面と下面をつなぐように取り付けられている補強部品とからなっていることを特徴とする軽量化に適した車体側部構造。
【0009】
[2]前記補強部品の上端部は前記閉断面部品の内部から上方に出ており、センターピラーアウターとセンターピラーインナーの少なくともどちらか一方が前記補強部品の上端部に接合されていることを特徴とする前記[1]に記載の軽量化に適した車体側部構造。
【0010】
[3]前記閉断面部品の下面に縦面が形成されていて、この縦面に前記補強部品の下端部が接合されていることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の軽量化に適した車体側部構造。
【0011】
[4]前記サイドシルに接合作業用の穴が設けられていることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の軽量化に適した車体側部構造。
【0012】
[5]前記接合作業用の穴は、前記閉断面部品の車内側の縦壁と前記補強部品に設けられていることを特徴とする前記[4]に記載の軽量化に適した車体側部構造。
【0013】
[6]前記接合作業用の穴は、前記閉断面部品の下面に設けられていることを特徴とする前記[4]に記載の軽量化に適した車体側部構造。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、一枚のブランク板を筒状に成形した閉断面部品を用いることでフランジ部を少なくしたサイドシルとするとともに、その閉断面部品の適切な位置に補強部品が設置されているので、要求される剛性や強度を維持しつつ軽量化が可能になっている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態1における車体側部構造を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の実施形態2における車体側部構造の断面図である。
【図4】本発明の実施形態3における車体側部構造を示す斜視図である。
【図5】図4のA−A断面図。
【図6】本発明の実施形態4における車体側部構造の断面図である。
【図7】本発明の実施形態5における車体側部構造の断面図である。
【図8】本発明の実施例1における試験体を示す図である。
【図9】本発明の実施例1における試験体を示す図である。
【図10】本発明の実施例1における試験体を示す図である。
【図11】本発明の実施例1における剛性試験方法を説明する図である。
【図12】本発明の実施例1における剛性試験結果を比較した図である。
【図13】本発明の実施例1における試験体の重量を比較した図である。
【図14】本発明の実施例2における試験体を示す図である。
【図15】本発明の実施例2における試験体を示す図である。
【図16】本発明の実施例2における試験体を示す図である。
【図17】本発明の実施例2における剛性試験方法を説明する図である。
【図18】本発明の実施例2における剛性試験結果を比較した図である。
【図19】本発明の実施例3における試験体を示す図である。
【図20】本発明の実施例3における剛性試験結果を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明では、サイドシルとセンターピラーが接合されてなる車体側部構造において、サイドシルが、一枚のブランク板を筒状に成形した閉断面部品と、その閉断面部品の内部にあって、サイドシルとセンターピラーが接合されている領域の閉断面部品の上面と下面をつなぐように取り付けられている補強部品とから構成されている。
【0017】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
[実施形態1]
図1は本発明の実施形態1における車体側部構造の斜視図であり、アウタパネルを取り外した状態で車外側から見た、サイドシル10とセンターピラー20が接合されてなる車体側部構造を示している。そして、図2は図1のA−A断面図である。
【0019】
図1、2に示すように、この実施形態1においては、サイドシル10は、一枚のブランク板を筒状に成形した閉断面部品11(上面11a、下面11b、車外側縦壁11c、車内側縦壁11d)と、その閉断面部品11の内部にあって閉断面部品11の上面11aと下面11bをつなぐようにして取り付けられている補強部品12とからなっており、補強部品12の上端部12aは閉断面部品11の内部から上方に突き出している。
【0020】
そして、閉断面部品11の車外側(車外側縦壁11c、上面11a)にセンターピラーアウター21が接合され、閉断面部品11の車内側(車内側縦壁11d、上面11a)にセンターピラーインナー22が溶接接合されているとともに、補強部品12の上端部12aにセンターピラーアウター21とセンターピラーインナー22が溶接接合されている。
【0021】
なお、ここでは、補強部品12の上端部12aにセンターピラーアウター21とセンターピラーインナー22の両方が接合されているが、センターピラーアウター21とセンターピラーインナー22のいずれか一方が接合されていることでもよい。
【0022】
また、ここでは、補強部品12は、サイドシル10とセンターピラー20が接合されている領域の全長(車の前後方向)にわたって閉断面部品11の上面11aと下面11bをつなぐようにして取り付けられているが、場合によっては、前記領域の一部分の閉断面部品11の上面11aと下面11bをつなぐようにして取り付けられていてもよい。
【0023】
このようにして、この実施形態1においては、従来のような、サイドシルの全長に亘って存在した上下面位置のフランジ部が存在しないため、軽量化効果が高い。
【0024】
そして、サイドシル10に外力が与えられたときに、補強部品12が閉断面部品11の断面変形を防ぐため、高い剛性を得ることができる。
【0025】
また、サイドシル10の車外側(車外側縦壁11c、上面11a)にセンターピラーアウター21が接合され、サイドシル10の車内側(車内側縦壁11d、上面11a)にセンターピラーインナー22が接合され、センターピラーアウター21とセンターピラーインナー22のうち少なくとも一方がサイドシル10の補強部品12に接合されているため、サイドシル10とセンターピラー20の接合部は高い剛性が確保される。
【0026】
これによって、この実施形態1においては、要求される剛性や強度を維持しつつ軽量化が可能になっている。
【0027】
[実施形態2]
本発明の実施形態2を図3(a)、(b)に示す。
【0028】
この実施形態2は、基本的な構成については前述の実施形態1と同じであるが、図3(a)、(b)に示すように、閉断面部品11の下面11bに縦面11eを形成し、その縦面11eに補強部品12の下端部12bを溶接接合するようにしている。このような補強部品接合用縦面11eを形成しておくことによって、閉断面部品11と補強部品12の接合が容易になる。
【0029】
なお、この補強部品接合用縦面11eは、補強部部品12が存在する長さ分だけあればよく、サイドシル10の全長にわたって存在する必要はない。
【0030】
このようにして、この実施形態2においては、要求される剛性や強度を維持しつつ軽量化が可能になっている。
【0031】
[実施形態3]
図4は本発明の実施形態3における車体側部構造の斜視図であり、アウタパネルを取り外した状態で車内側から見た、サイドシル10とセンターピラー20が接合されてなる車体側部構造を示している。そして、図5は図4のA−A断面図である。
【0032】
この実施形態3は、基本的な構成については前述の実施形態1と同じであるが、閉断面部品11の車内側縦壁11dと補強部品12にそれぞれ溶接作業用の穴13、14が設けられており、センターピラーインナー22は車内側縦壁11dの溶接作業用穴13を塞がないようにサイドシル10に接合されている。
【0033】
すなわち、図4、5に示すように、この実施形態3においては、サイドシル10は、一枚のブランク板を筒状に成形した閉断面部品11(上面11a、下面11b、車外側縦壁11c、車内側縦壁11d)と、その閉断面部品11の内部にあって閉断面部品11の上面11aと下面11bをつなぐようにして取り付けられている補強部品12とからなっており、補強部品12の上端部12aは閉断面部品11の内部から上方に突き出している。
【0034】
そして、閉断面部品11の車両室内側の縦壁11dに接合作業用(溶接作業用)の穴13が設けられ、補強部品12に接合作業用(溶接作業用)の穴14が設けられている。
【0035】
そして、閉断面部品11の車外側(車外側縦壁11c、上面11a)にセンターピラーアウター21が溶接接合されているとともに、補強部品12の上端部12aにセンターピラーアウター21とセンターピラーインナー22が溶接接合されている。
【0036】
ここで、溶接作業用穴13、14は、閉断面部品11の外側縦壁11cとセンターピラーアウター21をスポット溶接するときに使用される。2つのスポット溶接用電極は車内側と車外側から閉断面部品11の車外側縦壁11cとセンターピラーアウター21を挟み込む。このとき、スポット溶接用電極の一つは車内側から閉断面部品11の室内側縦壁11dと補強部品12の縦壁を通過しなければならないため、閉断面部品11の車内側縦壁11dの溶接作業穴13と補強部品12の縦壁の溶接作業穴14は閉断面部品11の車外側縦壁11cとセンターピラーアウター21のスポット溶接位置に合わせて配置されている。
【0037】
そして、溶接作業穴13、14の大きさは、スポット溶接用電極が閉断面部品11の車内側縦壁11dおよび補強部品12の縦壁を通過できる大きさであればよい。溶接作業穴13、14の形状は特に限定しないが、スポット溶接用電極は一般に円形断面をしているので、その円形断面に合った必要最小限の大きさの円形状とすることが好ましい。場合によっては、溶接作業穴13、14は長方形状の穴(スロット穴)であってもよい。
【0038】
なお、ここでは、サイドシル10とセンターピラー20が接合されている領域の全長(車の前後方向)にわたって補強部品12(全領域補強部品)が取り付けられているが、前述したように、前記領域の一部分に補強部品12(部分的補強部品)が取り付けられていてもよく、その場合には、補強部品12(部分的補強部品)が取り付けられていない間隙からスポット溶接用電極を通過させることができれば、補強部品12(部分的補強部品)に溶接作業用穴14を設けなくともよい。
【0039】
このようにして、この実施形態3においては、従来のような、サイドシルの全長に亘って存在した上下面位置のフランジ部が存在しないため、軽量化効果が高い。
【0040】
そして、サイドシル10に外力が与えられたときに、補強部品12が閉断面部品11の断面変形を防ぐため、高い剛性を得ることができる。
【0041】
また、サイドシル10の車外側(車外側縦壁11c、上面11a)にセンターピラーアウター21が接合され、サイドシル10の補強部品12にセンターピラーインナー22が接合されているため、サイドシル10とセンターピラー20の接合部は高い剛性が確保される。
【0042】
これによって、この実施形態3においては、要求される剛性や強度を維持しつつ軽量化が可能になっている。しかも、従来から使用されているスポット溶接設備を適用できるため、コスト上昇を抑制しつつ軽量化に適したサイドシルを車体側部構造に組み込むことができる。
【0043】
[実施形態4]
本発明の実施形態4を図6(a)、(b)に示す。
【0044】
この実施形態4は、基本的な構成については前述の実施形態3と同じであるが、図6(a)、(b)に示すように、閉断面部品11の下面11bに縦面11eを形成して、その縦面11eに補強部品12の下端部12bを溶接接合するようにしている。このような補強部品接合用縦面11eを形成しておくことによって、閉断面部品11と補強部品12の接合が容易になる。
【0045】
なお、この補強部品接合用縦面11eは、補強部部品12が存在する長さ分だけあればよく、サイドシル10の全長にわたって存在する必要はない。
【0046】
このようにして、この実施形態4においては、要求される剛性や強度を維持しつつ軽量化が可能になっている。しかも、従来から使用されているスポット溶接設備を適用できるため、コスト上昇を抑制しつつ軽量化に適したサイドシルを車体側部構造に組み込むことができる。
【0047】
[実施形態5]
本発明の実施形態5を図7に示す。
【0048】
この実施形態5は、基本的な構成については前述の実施形態1と同じであるが、図7に示すように、閉断面部品11の下面11bに溶接作業用の穴15が設けられている。
【0049】
言い換えれば、この実施形態5では、前述の実施形態3において、閉断面部品11の車両室内側の縦壁11dに溶接作業用穴13が設けられ、補強部品12に溶接作業用穴14が設けられているのに替えて、閉断面部品11の下面11bに溶接作業用穴15を設けたものである。
【0050】
そして、溶接作業用穴15は、閉断面部品11の両外側縦壁11c、11dとセンターピラーアウター21、センターピラーインナー22をスポット溶接するときに使用される。
【0051】
なお、必要に応じて、さらに、補強部品12に溶接作業用穴14を設けてもよい。
【0052】
このようにして、この実施形態5においては、要求される剛性や強度を維持しつつ軽量化が可能になっている。しかも、従来から使用されているスポット溶接設備を適用できるため、コスト上昇を抑制しつつ軽量化に適したサイドシルを車体側部構造に組み込むことができる。
【0053】
なお、上記の実施形態1〜5では、補強部品12の上端部は閉断面部品11の内部(閉断面部品11が形成する閉断面の内部)から上方に突き出しているが、補強部品12は閉断面部品11の上面11aと下面11bをつなぐように取り付けられていればよく、場合によっては、閉断面部品11の内部から上方に突き出していなくともよい。
【実施例1】
【0054】
本発明の実施例1を述べる。この実施例1においては、前述の本発明の実施形態1に基づく車体側部構造について、その効果の確認を行った。
【0055】
まず、図8は従来例の試験体である。図8(a)に車外側から見た斜視図、図8(b)にセンターピラーインナーを外した状態で車内側から見た斜視図、図8(c)にさらにサイドシルインナーを外した状態で車内側から見た斜視図を示すように、サイドシルが開放断面部品のサイドシルインナーとサイドシルアウターからなり、これら二つの開放断面部品のフランジ部を合わせて接合することで閉断面のサイドシルが形成されている。
【0056】
これに対して、図9は本発明例1の試験体である。図9(a)に車外側から見た斜視図、図9(b)にセンターピラーインナーを外した状態で車内側から見た斜視図、図9(c)にさらにサイドシルの車内側部分を外した状態で車内側から見た斜視図を示すように、本発明の実施形態1に基づく車体側部構造となっている。
【0057】
また、図10は本発明例2の試験体である。図10(a)に車外側から見た斜視図、図10(b)にセンターピラーインナーを外した状態で車内側から見た斜視図、図10(c)にさらにサイドシルの車内側部分を外した状態で車内側から見た斜視図を示すように、本発明の実施形態1に基づく車体側部構造となっている。
【0058】
使用した材料は、従来例と本発明例1では、全部品が板厚1.2mmの鋼板であり、本発明例2では、閉断面部品は板厚1.0mmの鋼板で、補強部品とセンターピラーが板厚1.2mmの鋼板とした。
【0059】
図11に、この実施例1における剛性試験方法を示す。サイドシルの前後両端面を固定し、センターピラーの上方端部に、前方向の負荷(Fx)、外方向の負荷(Fy)、上方向の負荷(Fz)およびねじりの負荷(Mz)をそれぞれかけた。負荷レベルは前方向のとき1kN、外方向のとき10N、上方向のとき1kNそしてねじりのとき100Nmとした。
【0060】
図12に、剛性試験による従来例と本発明例1、2との比較結果を示す。図12(a)は前方向負荷、図12(b)は外方向負荷、図12(c)は上方向負荷、図12(d)はねじり負荷である。なお、ここでは、従来例を基準にして、それぞれの剛性(剛性比)を示している。また、図13に、各試験体の重量の比較を示す。
【0061】
本発明例1、2は、図12に示すように、いずれの負荷方向に対しても従来例以上の剛性を備えているとともに、図13に示すように、従来例に比べて重量が低減されており、性能(剛性、強度)を維持しつつ軽量化するのに適した車体側部構造であることがわかる。
【実施例2】
【0062】
本発明の実施例2を述べる。この実施例2においては、前述の本発明の実施形態3に基づく車体側部構造について、その効果の確認を行った。
【0063】
図14〜図16は、この実施例2における試験体(本発明例3〜10、比較例1〜4、従来例)を示す図である。
【0064】
まず、図14は、本発明例3〜6と比較例1、2を示すものである。
【0065】
図14(a)は、車内側から見た斜視図であり、各例とも同様である。図14(a)に示すように、閉断面部品の車内側縦壁に円形状の溶接作業用穴が設けられている。円形状の溶接作業用穴の大きさは、φ26mmまたはφ50mmである。
【0066】
そして、図14(b)〜(d)は、補強部品の形状が良く分かるように、サイドシルの車内側部分を外した状態で車内側から見た斜視図であり、図14(b)は本発明例3、4を示し、図14(c)は本発明例5、6を示し、図14(d)は比較例1、2を示している。
【0067】
本発明例3、4では、図14(b)に示すように、閉断面部品に前述の全領域補強部品が取り付けられており、その全領域補強部品に円形状の溶接作業用穴が設けられている。車内側縦壁の溶接作業用穴と全領域補強部品の溶接作業用穴の大きさは、本発明例3ではともにφ26mmであり、本発明例4ではともにφ50mmである。
【0068】
また、本発明例5、6では、図14(c)に示すように、閉断面部品に前述の部分的補強部品が取り付けられており、その部分的補強部品には溶接作業用穴は設けられていない。車内側縦壁の溶接作業用穴の大きさは、本発明例5ではφ26mmあり、本発明例6ではφ50mmである。
【0069】
一方、比較例1、2では、図14(d)に示すように、閉断面部品に補強部品が取り付けられていない。車内側縦壁の溶接作業用穴の大きさは、比較例1ではφ26mmであり、比較例2ではφ50mmである。
【0070】
次に、図15は、本発明例7〜10と比較例3、4を示すものである。
【0071】
図15(a)は、車内側から見た斜視図であり、各例とも同様である。図15(a)に示すように、閉断面部品の車内側縦壁に長方形状の溶接作業用穴が設けられている。長方形状の溶接作業用穴の大きさは、26mm×345mmまたは50×370mmである。
【0072】
そして、図15(b)〜(d)は、補強部品の形状が良く分かるように、サイドシルの車内側部分を外した状態で車内側から見た斜視図であり、図15(b)は本発明例7、8を示し、図15(c)は本発明例9、10を示し、図15(d)は比較例3、4を示している。
【0073】
本発明例7、8では、図15(b)に示すように、閉断面部品に前述の全領域補強部品が取り付けられており、その全領域補強部品に長方形状の溶接作業用穴が設けられている。車内側縦壁の溶接作業用穴と全領域補強部品の溶接作業用穴の大きさは、本発明例7ではともに26mm×345mmであり、本発明例8ではともに50mm×370mmである。
【0074】
また、本発明例9、10では、図15(c)に示すように、閉断面部品に前述の部分的補強部品が取り付けられており、その部分的補強部品には溶接作業用穴は設けられていない。車内側縦壁の溶接作業用穴の大きさは、本発明例9では26mm×345mmであり、本発明例10では50mm×370mmである。
【0075】
一方、比較例3、4では、図15(d)に示すように、閉断面部品に補強部品が取り付けられていない。車内側縦壁の溶接作業用穴の大きさは、比較例3では26mm×345mmであり、比較例4では50mm×370mmである。
【0076】
そして、図16は、従来例を示すものである。図16(a)は、車内側から見た斜視図であり、図16(b)は、サイドシルの車内側部分を外した状態で車内側から見た斜視図である。
【0077】
従来例では、図16(a)、(b)に示すように、サイドシルが開放断面部品(ハット型部品)のサイドシルインナーとサイドシルアウターからなり、これら二つの開放断面部品(ハット型部品)のフランジ部を合わせて接合することで閉断面のサイドシルが形成されている。
【0078】
なお、上記の各試験体(本発明例3〜10、比較例1〜4、従来例)において使用した材料は、全部品について板厚1.2mmの鋼板である。
【0079】
図17に、この実施例2における剛性試験方法を示す。サイドシルの前後両端面を固定し、センターピラーの上方端部に1kNの前方向の負荷をかけ、負荷点の変位量を比較して構造の剛性評価を行った。
【0080】
図18に、剛性試験による本発明例3〜10と比較例3、4と従来例との比較結果を示す。なお、ここでは、従来例を基準にして、それぞれの剛性(剛性比)を示している。
【0081】
図18に示すように、本発明例3〜10は従来例を上回る良好な剛性を示している。このとき、溶接作業用穴の寸法や形状の影響は小さく、閉断面部品の内部に補強部品(全領域補強部品、部分的補強部品)が存在すれば良好な剛性となっている。
【0082】
一方、閉断面部品の内部に補強部品がない比較例1〜4では、従来例にも満たない剛性となっている。つまり、閉断面部品の内部に補強部品がないと良好な剛性が得られないことがわかった。
【実施例3】
【0083】
本発明の実施例3を述べる。この実施例3においては、前述の本発明の実施形態5に基づく車体側部構造について、その効果の確認を行った。
【0084】
図19は、この実施例3における試験体(本発明例11、12)を示す図であり、サイドシル(閉断面部品)の下方から斜めにみた斜視図である。
【0085】
まず、本発明例11では、図19(a)に示すように、閉断面部品の下面に10個の長方形状の溶接作業用穴が設けられている。一個の溶接作業用穴の寸法は30mm×50mmであり、サイドシルの長手方向に5個で2列に並んでいる。
【0086】
また、本発明例12では、図19(b)に示すように、閉断面部品の下面に5個の長方形状の溶接作業用穴が設けられている。一個の溶接作業用穴の寸法は50mm×80mmであり、サイドシルの長手方向に5個で1列に並んでいる。
【0087】
なお、従来例として、前述の実施例2と同様に、図16に示したものを用いた。
【0088】
そして、上記の各試験体(本発明例11、12、従来例)において使用した材料は、全部品について板厚1.2mmの鋼板である。
【0089】
また、この実施例3における剛性試験方法は、前述の実施例2と同様に、図17に示した剛性試験方法で行った。
【0090】
図20に、剛性試験による本発明例11、12と従来例との比較結果を示す。なお、ここでは、従来例を基準にして、 それぞれの剛性(剛性比)を示している。
【0091】
図20に示すように、本発明例11、12は従来例を上回る良好な剛性を示している。
【0092】
このようにして、本発明の実施例1〜3の結果から、本発明の有効性を確認することができた。
【符号の説明】
【0093】
10 サイドシル
11 閉断面部品
11a 閉断面部品の上面
11b 閉断面部品の下面
11c 閉断面部品の車内側縦壁
11d 閉断面部品の車外側縦壁
11e 閉断面部品の補強部品接合用縦面
12 補強部品
12a 補強部品の上端部
12b 補強部品の下端部
13 溶接作業用穴
14 溶接作業用穴
15 溶接作業用穴
20 センターピラー
21 センターピラーアウター
22 センターピラーインナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドシルとセンターピラーが接合されてなる車体側部構造であって、
前記サイドシルは、一枚のブランク板を筒状に成形した閉断面部品と、前記閉断面部品の内部にあって、サイドシルとセンターピラーが接合されている領域の閉断面部品の上面と下面をつなぐように取り付けられている補強部品とからなっていることを特徴とする軽量化に適した車体側部構造。
【請求項2】
前記補強部品の上端部は前記閉断面部品の内部から上方に出ており、センターピラーアウターとセンターピラーインナーの少なくともどちらか一方が前記補強部品の上端部に接合されていることを特徴とする請求項1に記載の軽量化に適した車体側部構造。
【請求項3】
前記閉断面部品の下面に縦面が形成されていて、この縦面に前記補強部品の下端部が接合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の軽量化に適した車体側部構造。
【請求項4】
前記サイドシルに接合作業用の穴が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の軽量化に適した車体側部構造。
【請求項5】
前記接合作業用の穴は、前記閉断面部品の車内側の縦壁と前記補強部品に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の軽量化に適した車体側部構造。
【請求項6】
前記接合作業用の穴は、前記閉断面部品の下面に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の軽量化に適した車体側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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