説明

較正信号発生装置、GPS受信機、GPS情報補正システム

【課題】
複数の周波数の搬送波成分を有する較正信号を用いて内部回路に基づく各周波数の信号の伝搬遅延を考慮し、高精度に誤差要因を検出して高精度な測位を行うGPS受信機を提供する。
【解決手段】
較正信号発生装置から出力された、複数の搬送波成分を有する較正信号を受信して復調したI信号データとQ信号データとが符号化回路251a,251bを介して信号処理部252に入力される。伝搬遅延演算部253は、較正信号における各周波数成分のコードタイミングから、周波数成分間の伝搬遅延バイアスを算出する。各演算チャンネルCH1〜CH24とCPU250は、この伝搬遅延バイアスと通信信号から得られる衛星位置情報、電離層遅延情報、対流圏遅延情報等とを用いて観測方程式を演算処理し、自身の測位を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、GPSに使用される搬送波と同じ周波数の較正信号を発生する較正信号発生装置と、較正信号を用いて、受信機内の伝搬遅延を補正して測位するGPS受信機に関するものである。
また、この発明は、前記GPS受信機で得られる高精度な測位結果に基づき、GPS衛星の発する情報を補正するGPS情報補正システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、GPSでの測位は、単独の受信機のみで測位を行う単独測位と、複数の受信機および基地局で相関して測位を行う相対測位とが存在する。単独測位では、例えば、C/AコードやP(Y)コードから得られる擬似距離から真の幾何学距離、すなわち受信機と測位衛星との幾何学距離を算出する方法がある。この方法では、衛星i、受信機kに対してL波を用いた場合、擬似距離Pkiと、電離層遅延Iki、対流圏遅延Tki、衛星時計誤差δi、受信機時計誤差δk、受信機内遅延ALkからなる誤差要因とを含む観測方程式(式(1))を用いて、幾何学距離ρを推定演算する。ここで、式(1)において、cは光速を示す。
【0003】
【数1】

【0004】
このような測位方法では、測位衛星からの情報等を基にした電離層遅延Iki、対流圏遅延Tki、衛星時計誤差δi、受信機時計誤差δk、受信機内遅延ALkの設定により幾何学距離ρの推定精度が影響される。
【0005】
一方、相対測位にも幾つかの方法が存在し、その1つとして、特許文献1に示すようなキネマティック方式が存在する。この方法では、前記測位衛星からの情報とは別に基準局からの測位衛星情報の補正情報を取得して測位精度を向上させている。
【0006】
ところで、前述の単独測位方法でも誤差要因を減らす方法は各種考案されており、非特許文献1には、L1波、L2波と同じ周波数の基準信号(較正信号)を用い、測位衛星からの送信信号と比較して、各種遅延情報を推定演算する方法が示されている。この方法では、L1波、L2波に相当する基準信号と、測位衛星からの送信信号とを受信して、L1波同士、およびL2波同士を結合することで、受信系全般の伝搬遅延を推定演算している。
【特許文献1】米国5519620号明細書
【非特許文献1】Andrew Cartmell ,「Considerations for Calibration of Frequency Dependent Delays」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1の方法では、受信機内のL1波、L2波の遅延ALkが、本来は異なるが同じであると設定している。このため、少なくともこの設定に応じた誤差が生じて、高精度な測位結果が要求される測位システムに適用することはできない。さらに、非特許文献1では、L1波、L2波が同時に生成されているが、今後の多周波数化、例えば、GPSならばL1波、L2波、L5波等の搬送波からなる多周波数化、に使用する較正信号を同時に生成することはできない。
【0008】
したがって、この発明の目的は、多種の周波数間で遅延差のない較正信号を同時に発生することができる較正信号発生装置と、これを用いて内部回路に基づく各周波数の信号の伝搬遅延を考慮し、より高精度に誤差要因を検出して高精度な測位が可能となるGPS受信機を提供することにある。また、この発明の目的は、高精度に測位された基地局の位置情報からGPSの位置情報を補正し、補正された高精度なGPS位置情報を配信することができるGPS情報補正システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の較正信号発生装置は、
測位衛星毎に設定された各コードに無相関な特定コードで航法メッセージを変調したコード変調信号を出力するコード生成手段と、
少なくとも3種類の搬送波周波数の内、2種類の搬送波周波数同士を加算または減算して1/2倍することで生じる周波数からなる少なくとも3種類の周波数変換用信号を生成する複数の変換用信号生成手段と、
これら複数の変換用信号生成手段から出力される各周波数変換用信号を、コード変調信号に合成して各搬送波周波数の較正信号を同時に生成する信号合成手段と、を備えたことを特徴としている。
【0010】
この構成では、次に示すように較正信号が生成される。
コード生成手段は、例えばGPSの場合、測位衛星毎に設定されているC/AコードやP(Y)コードの全てと無相関な特定パターンのコードで所定周波数のベース信号に基づいて生成された航法メッセージを変調して出力する。
複数の変換用信号生成手段は、それぞれ、例えば、GPSの場合、L1波、L2波、L5波の各搬送波に基づいて、L1波の周波数とL2波の周波数との加算周波数の1/2倍周波数の第1周波数変調用信号、L1波の周波数とL5波の周波数との減算周波数の1/2倍周波数の第2周波数変調用信号、L2波の周波数とL5波の周波数との減算周波数の1/2倍周波数の第3周波数変調用信号を生成する。
信号合成手段は、コード変調信号に対して、第1周波数変調用信号、第2周波数変調用信号、第3周波数変調用信号を順次ミキシングする。これにより、3段ミキシングされて出力される較正信号には、L1波周波数成分と、L2波周波数成分と、L5波周波数成分とが形成される。
【0011】
また、この発明の較正信号発生装置は、
測位衛星毎に設定された各コードに無相関で、且つ互いに無相関な特定コードで航法メッセージを変調したコード変調信号をそれぞれに出力する複数のコード生成手段と、
これら複数のコード生成手段毎に備えられ、少なくとも3種類の搬送波周波数の内、それぞれに異なる組み合わせの2種類の搬送波周波数同士を加算または減算して1/2倍することで生じる周波数からなる2種類の周波数変換用信号を生成する複数の変換用信号生成手段と、
それぞれに複数の変換用信号生成手段から出力される各周波数変換用信号を、対応するコード変調信号に合成する複数の信号合成手段と、
複数の信号合成手段から出力される各合成信号を加算して、各搬送波周波数の較正信号を同時に生成する信号加算手段と、を備えたことを特徴としている。
【0012】
この構成では、次に示すように較正信号が生成される。なお、以下の説明では、2種類のコードで3種類の搬送波周波数に対応する較正信号を生成する場合について示す。
複数のコード生成手段は、それぞれが前述のコード生成手段と同じ構成を成し、特定パターンのコードで所定周波数のベース信号に基づいて生成された航法メッセージを変調して出力する。この際、各コード生成手段が生成するコード同士も無相関となるように設定される。
それぞれのコード生成手段には、3種類以上の搬送波周波数の内から2種類の搬送波に対応する2つの周波数の加算周波数の1/2倍周波数からなる周波数変換用信号、および、2つの周波数の減算周波数の1/2倍周波数からなる周波数変換用信号をそれぞれ生成する2つの変換用信号生成手段が対応して設置されている。例えば、GPSの場合、第1の特定コードで変調されたコード変調信号に対して、L1波の周波数とL2波の周波数との加算周波数の1/2倍周波数の第1周波数変調用信号、L1波の周波数とL2波の周波数との減算周波数の1/2倍周波数の第4周波数変調用信号が生成される。また、第2の特定コードで変調されたコード変調信号に対して、L1波の周波数とL5波の周波数との加算周波数の1/2倍周波数の第5周波数変調用信号、L1波の周波数とL5波の周波数との減算周波数の1/2倍周波数の第2周波数変調用信号が生成される。
【0013】
各信号合成手段は、コード変調信号にそれぞれ2つの周波数変換用信号をミキシングして、2つの搬送波周波数成分を有する合成信号を生成する。例えば、前述のGPSでは、一方の信号合成手段でL1波周波数成分とL2波周波数成分とを有する第1の特定コードで変調された合成信号が生成され、他方の信号合成手段でL1波周波数成分とL5波周波数成分とを有する第2の特定コードで変調された合成信号が生成される。
【0014】
信号加算手段は、これら合成信号を加算することで、それぞれの周波数成分を合わせて有する較正信号を生成する。例えば、前述のGPSの例では、L1波周波数とL2波周波数とに第1の特定コードが重畳し、L1波周波数とL5波周波数とに第2の特定コードが重畳する較正信号が生成される。
【0015】
また、この発明の較正信号発生装置のコード生成手段は、互いに異なる複数のコードを重畳させた重畳コードを生成することを特徴としている。
【0016】
この構成では、コード生成手段から出力されるコードが複数コードの重畳コードであるので、搬送波毎に利用される複数のコードが1つのコード発生手段から生成される。例えば、現在L1波に利用されているC/AコードとL2波に利用されているP(Y)コードとが同時に1つのコード生成手段で生成される。
【0017】
また、この発明のGPS受信機は、
前述の構成を成し、受信機の近傍に設置された較正信号発生装置から出力される較正信号と測位衛星からの通信信号とを受信する受信手段と、
較正信号と通信信号とを搬送波周波数毎に分離し、較正信号と通信信号とに復調処理を行う搬送波周波数毎の復調処理手段と、
較正信号の搬送波周波数間の伝搬遅延を算出する伝搬遅延算出手段を有し、較正信号の伝搬遅延から受信機内の伝搬遅延を算出し、該算出結果を用いて測位演算を行う測位演算手段と、を備えたことを特徴としている。
【0018】
この構成では、次に示すように測位が行われる。
受信手段は、較正信号発生装置から送信された較正信号と、各測位衛星から送信された通信信号とを受信する。復調手段は、較正信号と通信信号とを搬送波周波数毎に分離する。例えば、前述のGPSの例では、L1波周波数成分、L2波周波数成分、L5波周波数成分に分類する。また、復調手段は、搬送波周波数単位で分離された較正信号と通信信号とを、それぞれ異なる信号処理経路で復調して、測位演算手段に出力する。
【0019】
測位演算手段の伝搬遅延算出手段は、較正信号の周波数成分間の伝搬遅延バイアスを検出する。例えば、前述のGPSの例では、較正信号のL1波成分のコードタイミングをtL1、L2波成分のコードタイミングをtL2、L5波成分のコードタイミングをtL5とすると、ABS(tL1−tL2)、ABS(tL1−tL5)、ABS(tL2−tL5)を検出する。較正信号発生装置は、受信手段の近傍に設置されているので、この較正信号の周波数成分間の伝搬遅延ABS(tL1−tL2)、ABS(tL1−tL5)、ABS(tL2−tL5)が受信機内の伝搬遅延バイアスに相当する。測位演算手段はこの伝搬遅延バイアスを用いて、前述の観測方程式の受信機内遅延の影響を除去して、測位演算を行う。
【0020】
また、この発明のGPS受信機の測位演算手段は、受信機内の伝搬遅延を用いて測位衛星から受信機までの伝搬遅延を推定演算し、該推定演算結果を用いて測位演算を行うことを特徴としている。
【0021】
この構成では、測位演算手段は、較正信号の周波数成分間の伝搬遅延バイアスとともに、通信信号の搬送波周波数成分間の伝搬遅延バイアスを検出する。例えば、前述のGPSの例では、通信信号のL1波成分のコードタイミングをTL1、L2波成分のコードタイミングをTL2、L5波成分のコードタイミングをTL5とすると、ABS(TL1−TL2)、ABS(TL1−TL5)、ABS(TL2−TL5)を算出する。
【0022】
そして、このように算出された通信信号の周波数成分間の伝搬遅延ABS(TL1−TL2)、ABS(TL1−TL5)、ABS(TL2−TL5)を、較正信号の周波数成分間の伝搬遅延ABS(tL1−tL2)、ABS(tL1−tL5)、ABS(tL2−tL5)で減算すれば、通信信号の周波数成分間の測位衛星から受信機までの伝搬遅延バイアス、すなわち、電離層遅延バイアスと対流圏遅延バイアスとの合算値が算出される。これを用いて、観測方程式を演算すれば、電離層遅延および対流圏遅延による影響も除去される。
【0023】
また、この発明のGPS情報補正システムは、
前述のGPS受信機を備えるとともに、測位演算の結果からGPS情報を補正するGPS情報補正手段と、補正されたGPS情報を該当する測位衛星に送信する送信手段と、を含む基地局と、
この基地局からの補正されたGPS情報を受信する補正GPS情報受信手段と、補正されたGPS情報に基づき通信信号に含むGPS情報を更新するGPS情報更新手段と、を含む測位衛星と、を備えたことを特徴としている。
【0024】
この構成では、前述のように、各誤差要因の影響が除去されて高精度に測位が行われるので、基地局のGPS受信機で得られた測位情報から、GPS測位衛星の位置を逆算してGPS測位衛星の位置情報の誤差を補正する。基地局は、この補正されたGPS測位衛星の位置情報を該当する測位衛星に送信する。GPS測位衛星は、この補正されたGPS情報を受信して、自身の発するエフェメリス情報等を更新して、更新された情報を含む通信信号を送信する。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、3つ以上の搬送波成分を同時に含み、且つ各搬送波成分が同期した較正信号を容易に生成する較正信号発生装置を実現することができる。さらに、この発明によれば、前記3つ以上の搬送波成分を同時に含む較正信号を複数の同期されたコードで変調して出力する較正信号発生装置を実現することができる。
【0026】
また、この発明によれば、この較正信号発生装置から出力される較正信号を用いて、搬送波周波数間の受信機内遅延バイアスを検出することで、高精度な測位演算を行うことができる。
【0027】
また、この発明によれば、受信機内遅延バイアスを用いて測位衛星から受信機に到達するまでの遅延を検出することで、より一層高精度な測位を行うことができる。
【0028】
また、この発明によれば、高精度に観測された基地局の測位情報を用いて、GPS測位衛星の位置情報を含む衛星情報が補正、更新されるので、GPS測位衛星から送信される通信信号に含まれる衛星位置情報がより高精度となる。これにより、この衛星位置情報を受信した各GPS受信機での測位演算結果がより高精度となる。さらに、この位置情報補正のループが繰り返されることで、より一層、測位演算結果の精度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の第1の実施形態に係る較正信号発生装置について、図を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る較正信号発生装置の概略構成を示すブロック図である。
図2は各伝送ラインでの信号周波数を示す図である。なお、図2では、コードの基準周波数f0は記載を省略する。
【0030】
本実施形態の較正信号発生装置は、コード発生器11、フィルタ12、ミキサ13a〜13c、ATT(アッテネータ)14、VCO(電圧制御発振器)15、PLL16a〜16c、アンテナ17を備える。
【0031】
VCO15は、基準周波数f0の基準信号を生成して、コード発生器11およびPLL16a,16b,16cに出力する。この基準周波数は、例えば、GPSならば10.23MHzである。
【0032】
コード発生器11は、入力される基準周波数f0に基づいてコードを生成して出力する。具体的には、このコード発生器11で生成されるコードは、後述するGPS受信機が測位衛星から受信するコードの全てに対して無相関なコードに設定されており、予め、メモリ等の記憶部に記憶されている。コード発生器11は、記憶部からコードを読み出し、基準周波数f0の基準信号に基づいて生成された航法メッセージをコード変調して出力する。このコード発生器11が本発明の「コード生成手段」に相当する。
なお、コード発生器11が出力するコードは、図3に示すように、ビット周期およびコード周期が異なる2つのコードを重畳させてなる複合コードであってもよい。
図3は、コード発生器11が生成するコードの一例を示す図である。図3(a)はCODE−Aを示し、図3(b)はCODE−Bを示し、図3(c)はCODE−AとCODE−Bとを重畳させた複合コードを示す。
このようなコードを用いることで、1つのコード発生器で複数のコードを同時に生成することができる。これを、GPSに適用すれば、C/AコードとP(Y)コードの2つのコードを1つのコード発生器で同時に生成することができる。
【0033】
フィルタ12はコード変調された基準信号の高調波成分を減衰させ、このフィルタ処理されたコード変調基準信号はミキサ13aに入力される。
【0034】
PLL16aは、VCO15から入力される基準周波数f0の基準信号に基づき、L1波の周波数fL1とL2波の周波数fL2との加算周波数の1/2倍周波数((fL1+fL2)/2)からなる第1変調用信号を生成する。
PLL16bは、VCO15から入力される基準周波数f0の基準信号に基づき、L1波の周波数fL1とL5波の周波数fL5との減算周波数の1/2倍周波数((fL1−fL5)/2)からなる第2変調用信号を生成する。
PLL16cは、VCO15から入力される基準周波数f0の基準信号に基づき、L2波の周波数fL2とL5波の周波数fL5との減算周波数の1/2倍周波数((fL2−fL5)/2)からなる第3変調用信号を生成する。これらPLL16a〜16cが本発明の「変換用信号生成手段」に相当する。
ミキサ13aには、コード発生器11からのコード変調基準信号と、PLL16aからの第1変調用信号とが入力される。ミキサ13aはこれらの信号をミキシングして、第1IF較正信号を生成する。この第1IF較正信号の周波数は((fL1+fL2)/2)となる。
【0035】
ミキサ13bには、ミキサ13aからの第1IF較正信号と、PLL16bからの第2変調用信号とが入力される。ミキサ13bはこれらの信号をミキシングして、第2IF較正信号を生成する。この第2IF較正信号は2つの周波数が重畳した信号であり、その周波数は((2fL1+fL2−fL5)/2)、および((fL2+fL5)/2)となる。
【0036】
ミキサ13cには、ミキサ13bからの第2IF較正信号と、PLL16cからの第3変調用信号とが入力される。ミキサ13cはこれらの信号をミキシングして、送信する較正信号を生成する。この較正信号は4つの周波数が重畳した信号であり、その周波数は(fL1+fL2−fL5)、およびfL1,fL2,fL5となる。ここで、周波数(fL1+fL2−fL5)の成分は不必要なのでフィルタ等により除去する。これらミキサ13a〜13cが本発明の「信号合成手段」に相当する。
【0037】
このような信号処理を行うことで、L1波に相当する周波数fL1成分と、L2波に相当する周波数fL2成分と、L5波に相当する周波数fL5成分と、が重畳された較正信号を生成することができる。そして、これは、L1波、L2波、L5波にそれぞれ対応する較正信号を同時に、すなわち同期させて出力することと同じである。
【0038】
ATT14は入力された較正信号を所定の振幅に調整してアンテナ17に出力する。そして、アンテナ17から、L1波、L2波、L5波の成分を同時に含む較正信号が放射される。
【0039】
なお、本実施形態では、コード基準信号に対して3段の変調を行う例を示したが、より多くの段を設定して変調を行っても良い。これにより、さらに多くの搬送波周波数成分を同時に生成することができる。また、コード基準信号に対して2段の変調であってもよい。
【0040】
次に、第2の実施形態の係る較正信号発生装置について図を参照して説明する。
図4は本実施形態の較正信号発生装置の概略構成を示すブロック図である。
図5は各伝送ラインでの信号周波数を示す図である。なお、図5では、初期のコードの基準周波数f0は記載を省略する。
【0041】
本実施形態の較正信号発生装置は、コード発生器11a,11b、2つのフィルタ12、ミキサ13d〜13g、ATT(アッテネータ)14、VCO(電圧制御発振器)15、PLL16d〜16g、アンテナ17、加算器18を備える。
【0042】
VCO15は、基準周波数f0の基準信号を生成して、コード発生器11a,11bおよびPLL16d〜16gに出力する。この基準周波数は、例えば、GPSならば10.23MHzである。
【0043】
コード発生器11a,11bは、入力される基準周波数f0に基づいて、それぞれに異なるコードを生成して出力する。具体的には、このコード発生器11a,11bで生成されるコードは、後述するGPS受信機が測位衛星から受信するコードの全てに対して無相関で、且つコード発生器11a,11bで生成されるコード同士も無相関なコードに設定されており、予め、メモリ等の記憶部に記憶されている。コード発生器11a,11bは、記憶部からそれぞれにコードを読み出し、基準周波数f0の基準信号に基づいて生成された航法メッセージをコード変調して出力する。これらコード発生器11a,11bは入力される基準信号に基づき同期されている。ここで、例えば、図5に示すように、コード発生器11aでCODE−Aを生成し、コード発生器11bでCODE−Bを生成する。これらコード発生器11a,11bが本発明の「コード生成手段」に相当する。
【0044】
このように2つのコードを用いることで、GPSに適用すれば、C/AコードとP(Y)コードの2つのコードをそれぞれ個別のコード発生器で同時に生成することができる。なお、コード発生器11a,11bが出力するコードも、前述ように、ビット周期およびコード周期が異なる2つのコードを重畳させてなる複合コードであってもよい。
2つのフィルタ12はCODE−A、CODE−Bでそれぞれコード変調された基準信号の高調波成分を減衰させ、このフィルタ処理されたコード変調基準信号は、ミキサ13dとミキサ13fとにそれぞれ入力される。
【0045】
PLL16dは、VCO15から入力される基準周波数f0の基準信号に基づき、L1波の周波数fL1とL2波の周波数fL2との減算周波数の1/2倍周波数((fL1−fL2)/2)からなる第4変調用信号を生成する。
PLL16eは、VCO15から入力される基準周波数f0の基準信号に基づき、L1波の周波数fL1とL2波の周波数fL2との加算周波数の1/2倍周波数((fL1+fL2)/2)からなる第1変調用信号を生成する。
PLL16fは、VCO15から入力される基準周波数f0の基準信号に基づき、L1波の周波数fL1とL5波の周波数fL5との減算周波数の1/2倍周波数((fL1−fL5)/2)からなる第2変調用信号を生成する。
PLL16gは、VCO15から入力される基準周波数f0の基準信号に基づき、L1波の周波数fL1とL5波の周波数fL5との加算周波数の1/2倍周波数((fL1+fL5)/2)からなる第5変調用信号を生成する。ここで、PLL16d〜16gが本発明の「変換用信号生成手段」に相当する。
ミキサ13dには、コード発生器11aからのコード変調基準信号と、PLL16dからの第4変調用信号とが入力される。ミキサ13dはこれらの信号をミキシングして、第3IF較正信号を生成する。この第3IF較正信号の周波数は((fL1−fL2)/2)となる。
【0046】
ミキサ13eには、ミキサ13dからの第3IF較正信号と、PLL16eからの第1変調用信号とが入力される。ミキサ13dはこれらの信号をミキシングして、第4IF較正信号を生成する。この第4IF較正信号は2つの周波数が重畳した信号であり、その周波数はfL1およびfL2となる。
【0047】
ミキサ13fには、コード発生器11bからのコード変調基準信号と、PLL16fからの第2変調用信号とが入力される。ミキサ13fはこれらの信号をミキシングして、第5IF較正信号を生成する。この第5IF較正信号の周波数は((fL1−fL5)/2)となる。
【0048】
ミキサ13gには、ミキサ13fからの第5IF較正信号と、PLL16gからの第5変調用信号とが入力される。ミキサ13fはこれらの信号をミキシングして、第6IF較正信号を生成する。この第6IF較正信号は2つの周波数が重畳した信号であり、その周波数はfL1およびfL5となる。ここで、ミキサ16d〜16gが本発明の「信号合成手段」に相当する。
【0049】
加算器18は、fL1およびfL2周波数成分を含みCODE−Aで変調された第4IF較正信号と、fL1およびfL5周波数成分を含みCODE−Bで変調された第6IF較正信号と、を入力して、これら全ての周波数成分が重畳された較正信号出力する。この加算器18が本発明の「信号加算手段」に相当する。
【0050】
このような信号処理を行うことで、CODE−Aで変調されたL1波に相当する周波数fL1成分と、CODE−Bで変調されたL1波に相当する周波数fL1成分と、CODE−Aで変調されたL2波に相当する周波数fL2成分と、CODE−Bで変調されたL5波に相当する周波数fL5成分と、が重畳された較正信号を生成することができる。そして、これは、L1波、L2波、L5波にそれぞれ対応する較正信号を同時に、すなわち同期させて出力することと同じである。
【0051】
ATT14は入力された較正信号を所定の振幅に調整してアンテナ17に出力する。そして、アンテナ17から、L1波、L2波、L5波の成分を同時に含む較正信号が放射される。
【0052】
このような構成であっても、複数の搬送波周波数に対応する周波数成分を有する較正信号を容易に生成することができる。なお、本実施形態では、コード基準信号の生成から2段のミキシングによる信号変調までの部分が2段平行に設置された例を示したが、段数をより多くして、3段以上を平行に設置し、これらの出力信号を加算する処理を行っても良い。これにより、より多くの搬送波周波数およびコードを同時に生成することができる。
【0053】
次に、第3の実施形態に係るGPS受信機について図を参照して説明する。
図6は本実施形態のGPS受信機の概略構成を示すブロック図である。
図7は、図6に示す測位演算部25の概略構成を示すブロック図である。
本実施形態のGPS受信機は、アンテナ21、LNA22、IF信号処理部24a〜24c、測位演算部25を備える。
【0054】
アンテナ21は、それぞれに異なる周波数からなる複数の搬送波のRF信号(通信信号および較正信号)を受信し、受信したRF信号をLNA22に出力する。例えば、1575.42MHzのL1波、1227.60MHzのL2波、1176.45MHzのL5波を同時に受信することができる。なお、以下の説明では、L1波、L2波、L5波を含むRF信号を受信した場合について説明する。L1波、L2波、L5波が混在したRF信号が受信されると、LNA22はRF信号を増幅してIF処理部24a〜24cに出力する。
【0055】
IF処理部24a〜24cは、RF信号からそれぞれ、L1波の成分、L2波の成分、L5波の成分を抽出して、IF信号に変換する。この際、生成されるIF信号は、実数成分に相当するI信号と虚数成分に相当するQ信号とに分離される。そして、これらI信号およびQ信号は、A/D変換されて出力される。
【0056】
具体的には、IF処理部24a〜24cは、IF処理部24aでL1波のRF信号をIF処理し、IF処理部24bでL2波のRF信号をIF処理し、IF処理部24cでL5波のRF信号をIF処理する。これらIF処理部24a〜24cは、それぞれ3つのBPFの帯域特性および各VCOの発振周波数の設定が異なるのみで、基本的な構成は略同じである。ここで、これらIF処理部24a〜24cが本発明の「復調処理手段」に相当する。
【0057】
IF処理部24aは、BPF240a、ミキサ241a、BPF242a、IQミキサ243a、VCO244a、分周器245a、可変増幅LPF246a,247a、A/Dコンバータ248aを備える。
【0058】
BPF240aは、L1波周波数fL1が通過帯域内に存在するように、周波数通過帯域が設定されており、ミキサ241aの後段に備えられたBPF242aとで、受信したRF信号のうち、L2波、L5波を減衰させ、L1波の信号のみを通過させる。
【0059】
VCO244aは、基準周波数10.23MHzに基づき、L1波周波数に対して所定の周波数からなる変換用信号を生成して、ミキサ241aと分周器245aとに出力する。分周器245aは、入力された変換用信号を分周して、より低周波数の変換用信号を生成し、IQミキサ243aに出力する。
【0060】
ミキサ241aは、BPF240aを通過したRF信号と、VCO244aで生成された所定周波数の変換用信号とをミキシングすることでダウンサンプリングして、IF信号を生成する。ミキサ241aで生成されたIF信号は、BPF242aに入力され、BPF242aは、IF信号におけるL1波周波数に対応する周波数帯域のみを通過して、他の周波数帯域を減衰させる。このように、BPF240a、BPF242aの2段でRF信号のL1波周波数を抽出してIF信号に変換する。
【0061】
IF信号のL1波成分はIQミキサ243aに入力され、IQミキサ243aは、分周器245aから入力される低周波数の変換用信号に基づき、IF信号のL1波成分を実数成分のI信号と、虚数成分のQ信号とに分離して出力する。
【0062】
可変増幅LPF246aは、入力されたL1波成分のI信号の高調波を減衰させるとともに、所定振幅になるようにゲイン調整して、A/Dコンバータ248aに出力する。同様に、可変増幅LPF247aは、入力されたL1波成分のQ信号の高調波を減衰させるとともに、所定振幅になるようにゲイン調整して、A/Dコンバータ248aに出力する。
【0063】
A/Dコンバータ248aは、入力されたI信号とQ信号とを、L1波の周波数に応じて設定したサンプリング周波数でディジタルサンプリングして、L1波成分のI信号に対応するL1波成分I信号データと、L1波成分のQ信号に対応するL1波成分Q信号データとを出力する。
【0064】
IF処理部24bは、IF処理部24aと略同じ構成からなり、BPF240bとBPF242bとの設定通過帯域周波数と、VCO244bで生成する変換用信号の周波数をL2波の周波数に対応させて、L2波成分I信号データとL2波成分Q信号データとを出力する。
【0065】
IF処理部24cは、IF処理部24a,24bと略同じ構成からなり、BPF240cとBPF242cとの設定通過帯域周波数と、VCO244cで生成する変換用信号の周波数をL5波の周波数に対応させて、L5波成分I信号データとL5波成分Q信号データとを出力する。
【0066】
このように、較正信号発生装置から入力された較正信号と測位衛星から入力された通信信号に基づく、L1波成分、L2波成分、L5波成分のI信号データ、Q信号データは、測位演算部25に出力される。
【0067】
測位演算部25は、符号化回路251a,251bと、CPU250および伝搬遅延演算部253を備えた信号処理部252と、タイミング発生回路254と、を備える。測位演算部25は、入力される較正信号のI信号データおよびQ信号データから、伝搬遅延バイアスIFBを算出し、この算出した伝搬遅延バイアスIFBを観測方程式に適用して各測位衛星と本GPS受信機との幾何学距離の算出および、本GPS受信機の測位を行う。
【0068】
符号化回路251a,251bは、L1波、L2波、L5波成分のI信号データおよびQ信号データを符号化して信号処理部252に出力する。
【0069】
タイミング発生回路254は、外部から入力される1秒パルス信号に基づき、信号処理部252の各演算チャンネルに対する相関処理開始タイミング信号を出力する。
【0070】
信号処理部252は、測位衛星毎に演算チャンネルが構成されている。図7では、24個の衛星に対応する24の演算チャンネルCH1〜CH24と較正信号用の演算チャンネルCH25とから構成されている。演算チャンネルCH1〜CH25は、測位衛星毎に設定されたコードおよび較正信号用に設定されたコードを予め記憶しており、タイミング発生回路254から出力される相関処理開始タイミング信号に準じて、入力された符号化I信号データ、および符号化Q信号データと記憶したコードとの相関処理を行う。そして、CPU250と各演算チャンネルCH1〜CH25とは、相関がとれた符号化I信号データ、符号化Q信号データの解析を行い、測位衛星からの通信信号に対応するデータであれば、エフェメリス情報等の衛星位置情報や、衛星時計情報、電離層遅延情報等を検出するとともに、コードから導かれる疑似距離を算出する。また、較正信号に対応するデータであれば、較正信号用のコードタイミングを検出する。これらの相関処理および解析、検出は、各コードすなわち各測位衛星からの通信信号および較正信号に対してL1波、L2波、L5波のそれぞれで行われる。
【0071】
CPU250と伝搬遅延演算部253とは、演算チャンネルCH25で取得されたL1波、L2波、L5波におけるコードタイミングを用いて、L1波とL2波との伝搬遅延バイアスIFBL1L2、L1波とL5波との伝搬遅延バイアスIFBL1L5、L2波とL5波との伝搬遅延バイアスIFBL2L5、を算出する。これは、L1波、L2波、L5波が受信機内を伝搬する際に生じる遅延であり、L1波で伝搬されるコードのコードタイミングtL1と、L2波で伝搬されるコードのコードタイミングtL2と、L5波で伝搬されるコードのコードタイミングtL5とを検出して、これらコードタイミングのズレ、すなわち周波数間でのコード位相のズレABS(tL1−tL2)、ABS(tL1−tL5)、ABS(tL2−tL5)を算出することにより得られる。そして、このように算出された伝搬遅延バイアスは記憶され、各通信信号に対応する演算チャンネルが各測位衛星までの幾何学距離および測位を推定演算する際に読み出されて、利用される。
【0072】
CPU250と演算チャンネルCH1〜CH24とは、検出した各情報と、疑似距離と、伝搬遅延演算部253に記憶されている伝搬遅延バイアスIFBとを、観測方程式に代入し、受信機と各測位衛星までの幾何学距離の算出および受信機の測位を行う。この際、演算チャンネルCH1〜CH24の全体で、少なくとも2つの周波数について演算を行う。すなわち、L1波とL2波、L1波とL5波、L2波とL5波のいずれかの組み合わせを少なくとも用いて幾何学距離の算出および測位を行う。
【0073】
例えば、L1波とL2波とを用いる場合について具体的に説明する。
【0074】
一般に、ある時点での、受信機k、測位衛星iでL波における疑似距離PLkiの観測方程式は、ρが測位衛星iと受信機kとの幾何学距離であり、Iが電離層遅延、Tが対流圏遅延、δkが受信機時計誤差、δiが測位衛星時計誤差、ALkが受信機内遅延を用いて、前述の式(1)で表される。
【0075】
式(1)から、受信機k、測位衛星iでL1波における疑似距離PL1kiの観測方程式は、
【0076】
【数2】

【0077】
となり、受信機k、測位衛星iでL2波における疑似距離PL2kiの観測方程式は、
【0078】
【数3】

【0079】
となる。なお、AL1k,AL2kはそれぞれL1波、L2波の受信機内遅延であり、fL1,fL2はそれぞれL1波、L2波の周波数である。
ここで、測位衛星#1,#3からL1波を受信して解析することができ、測位衛星#2,#4からL2波を受信して解析することができたとすると、式(2)、式(3)より、次の連立方程式が成り立つ。
【0080】
【数4】

【0081】
ここで、衛星情報から得られる衛星位置を(xi,yi,zi)とし、受信機の位置を(xk,yk,zk)とすると、式(4)より、
【0082】
【数5】

【0083】
前述のようにIFBが算出されていると、IFB=AL2k−AL1kであるので、式(5)より、
【0084】
【数6】

【0085】
となる。この観測方程式を演算することにより、受信機内遅延による誤差が軽減されるので、高精度に受信機kの測位を行うことができる。
【0086】
なお、伝搬遅延演算部253は、伝搬遅延IFBを用いることで、各測位衛星から受信機までの伝搬遅延、すなわち電離層遅延と対流圏遅延との合算遅延のバイアス値を算出することもできる。
【0087】
具体的には、伝搬遅延演算部253は、各演算チャンネルCH1〜CH24が検出するL1波、L2波、L5波毎のコードタイミングを取得して、これらの差分値(バイアス値)を演算する。例えば、L1波のコードタイミングTL1とL2波のコードタイミングTL2とを差分する。これにより、測位衛星から受信機の信号処理部に到達するまでの伝搬遅延のバイアスに相当する、通信信号伝搬遅延バイアスIFBtL1L2=ABS(TL1−TL2)を生成し、L1波のコードタイミングTL1とL5波のコードタイミングTL5とを差分して通信信号伝搬遅延バイアスIFBtL1L5=ABS(TL1−TL5)を生成し、L2波のコードタイミングTL2とL5波のコードタイミングTL5とを差分して通信信号伝搬遅延バイアスIFBtL2L5=ABS(TL2−TL5)を生成する。次に、伝搬遅延演算部253は、これら通信信号伝搬遅延バイアスから、前述の受信機内伝搬遅延バイアスを差分する。
【0088】
すなわち、L1波、L2波の組み合わせに対して、
IFBtL1L2−IFBL1L2=ABS(TL1−TL2)−ABS(tL1−tL2)
を算出し、L1波、L5波の組み合わせに対して、
IFBtL1L5−IFBL1L5=ABS(TL1−TL5)−ABS(tL1−tL5)
を算出し、L2波、L5波の組み合わせに対して、
IFBtL2L5−IFBL2L5=ABS(TL2−TL5)−ABS(tL2−tL5)
を算出する。この演算データは測位衛星から受信機に到達するまでの伝搬遅延バイアスに相当し、これは電離層遅延バイアスと対流圏遅延バイアスの合算値に相当する。このような演算を行うことにより、現状の電離層遅延および対流圏遅延を算出することができるので、測位衛星からの電離層遅延情報および対流圏遅延情報を用いずとも、観測方程式で幾何学距離および測位を演算することができる。さらに、このように算出される電離層遅延と対流圏遅延のバイアス値は、現在受信している通信信号の遅延量から算出するので、現状の通信環境すなわち電離層状態や対流圏状態を正確に反映することができ、高精度な電離層遅延および対流圏遅延を観測方程式に適用することができる。これにより、さらに高精度な測位を行うことができる。
【0089】
次に、第4の実施形態に係るGPS情報補正システムについて図を参照して説明する。
【0090】
図8は、本実施形態のGPS情報補正システムの概略構成を示すブロック図である。
本実施形態のGPS情報補正システムは、基地局5、較正信号発生装置1、移動局8、測位衛星101〜104を備える。なお、測位衛星数はこれに限らず、これよりも多い数であってもよい。
【0091】
基地局5は、前述の構成からなるGPS受信機2と、GPS情報補正回路3と、GPS情報送信機4とを備える。
【0092】
各測位衛星101〜104は同じ構成からなり、測位衛星101はGPS情報生成部111とGPS情報送受信部112とを備える。
【0093】
較正信号発生装置1は、前述の構成からなり、基地局5の近傍または基地局5のGPS受信機2の近傍に設置されている。そして、較正信号発生装置1はL1波、L2波、L5波に応じた周波数で、特定コードにより変調された較正信号200を外部に送信している。
【0094】
測位衛星101は、GPS情報生成部111でエフェメリス情報等の衛星位置情報や電離層遅延情報、対流圏遅延情報、受信時計誤差情報等からなる衛星情報を生成して、GPS情報送受信部112で信号化し、通信信号201として外部に送信している。測位衛星102〜104についても同様に衛星情報を外部に送信している。
【0095】
移動局8のGPS受信機7および基地局5のGPS受信機2は、この通信信号201を受信して、各情報を解析する。そして、これらのGPS受信機2,7はその時点での測位を行う。
【0096】
この際、基地局5のGPS受信機2は、較正信号200および通信信号201を受信して、自身の測位を行う。GPS受信機2は、前述のような処理演算を行うことで、受信機内の遅延等を補正して高精度に測位を行う。そして、GPS受信機2はこの測位結果及び補正情報をGPS情報補正回路3に出力する。
【0097】
GPS情報補正回路3は、GPS受信機2から得られた基地局の測位結果および遅延に関する補正情報と、測位衛星からの衛星情報とに基づき、該当する測位衛星101の位置を逆算し、入力した衛星位置情報との誤差を検出する。そして、衛星位置情報に対する補正データを生成してGPS情報送信機4に出力する。
【0098】
GPS情報送信機4は、入力された補正データを信号化して、測位衛星101〜104に対して補正通信信号202を送信する。この際、測位衛星毎にコードが設定されており、測位衛星101はこのコードを解析することで、自身への補正情報かどうかを判断する。
【0099】
測位衛星101は、GPS情報送受信部112で補正通信信号202を受信すると、GPS情報生成部111で解析を行って自身に対する補正情報を検出して、この補正情報で予め記憶されている各情報を更新する。そして、測位衛星101は、新たな情報に基づきGPS情報生成部111で衛星情報を生成して、GPS情報送受信部112で信号化し、通信信号203として外部に送信する。基地局5のGPS受信機2および移動局8のGPS受信機7は、この新たに補正された通信信号203を受信して、情報を解析する。そして、これらのGPS受信機2,7はその時点での測位を行う。この際にも、基地局5のGPS受信機2は、較正信号200を用いて受信機内遅延や電離層遅延、対流圏遅延の補正を行って測位を行うので、前回よりも高精度に測位を行うことができる。この際、発生する補正情報から、前述のようにGPS情報補正回路3でGPS衛星の補正情報が生成されて、GPS情報送信機4を介して測位衛星101〜104にフィードバックされる。
【0100】
このように、本実施形態のGPS情報補正システムを用いることで、高精度な衛星位置情報、遅延情報を常時取得することができる。これにより、基地局、移動局に限ることなく、どのGPS受信機においても従来のよりも高精度な測位を行うことができる。
【0101】
なお、前述の各実施形態は、GPSを例に説明したが、GNSSシステムとして利用する他の方式(GRONASS、Galileo等)でも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】第1の実施形態に係る較正信号発生装置の概略構成を示すブロック図
【図2】図1に示す各伝送ラインでの信号周波数を示す図
【図3】図1に示すコード発生器11が生成するコードの一例を示す図
【図4】第2の実施形態の較正信号発生装置の概略構成を示すブロック図
【図5】図4に示す各伝送ラインでの信号周波数を示す図
【図6】第3の実施形態のGPS受信機の概略構成を示すブロック図
【図7】図6に示す測位演算部25の概略構成を示すブロック図
【図8】第4の実施形態のGPS情報補正システムの概略構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0103】
1−較正信号発生装置、2,7−GPS受信機、3−GPS情報補正回路、4−GPS情報送信機、5−基地局、8−移動局、101〜104−測位衛星、111−GPS情報生成部、112−GPS情報送受信部、11,11a,11b−コード発生器、12−フィルタ、13a〜13g,241a〜241c−ミキサ、14−ATT、15,244a〜244c−VCO、16a〜16g−PLL、17,21−アンテナ、18−加算器、22−LNA、24a〜24c−IF処理部、240a〜240c,242a〜242c−BPF、243a〜243c−IQミキサ、245a〜245c−分周器、246a〜246c,247a〜247c−可変振幅LPF、248a〜248c−A/Dコンバータ
25−測位演算部、250−CPU、251a,251b−符号化回路、252−信号処理部、253−伝搬遅延演算部、254−タイミング発生回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位衛星毎に設定された各コードに無相関な特定コードで航法メッセージを変調したコード変調信号を出力するコード生成手段と、
少なくとも3種類の搬送波周波数の内、2種類の搬送波周波数同士を加算または減算して1/2倍することで生じる周波数からなる少なくとも3種類の周波数変換用信号を生成する複数の変換用信号生成手段と、
該複数の変換用信号生成手段から出力される各周波数変換用信号を、前記コード変調信号に合成して各搬送波周波数の較正信号を同時に生成する信号合成手段と、を備えたことを特徴とする較正信号発生装置。
【請求項2】
測位衛星毎に設定された各コードに無相関で、且つ互いに無相関な特定コードで航法メッセージを変調したコード変調信号をそれぞれに出力する複数のコード生成手段と、
該複数のコード生成手段毎に備えられ、少なくとも3種類の搬送波周波数の内、それぞれに異なる組み合わせの2種類の搬送波周波数同士を加算または減算して1/2倍することで生じる周波数からなる2種類の周波数変換用信号を生成する複数の変換用信号生成手段と、
それぞれに複数の変換用信号生成手段から出力される各周波数変換用信号を、対応するコード変調ベース信号に合成する複数の信号合成手段と、
複数の信号合成手段から出力される各合成信号を加算して、各搬送波周波数の較正信号を同時に生成する信号加算手段と、を備えたことを特徴とする較正信号発生装置。
【請求項3】
前記コード生成手段は、互いに異なる複数のコードを重畳させた重畳コードを生成する請求項1または請求項2に記載の較正信号発生装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載された構成を成し、受信機の近傍に設置された較正信号発生装置から出力される較正信号と測位衛星からの通信信号とを受信する受信手段と、
前記較正信号と前記通信信号とを搬送波周波数毎に分離し、前記較正信号と前記通信信号とに復調処理を行う搬送波周波数毎の復調処理手段と、
前記較正信号の搬送波周波数間の伝搬遅延を算出する伝搬遅延算出手段を有し、前記較正信号の伝搬遅延から受信機内の伝搬遅延を算出し、該算出結果を用いて測位演算を行う測位演算手段と、を備えたことを特徴とするGPS受信機。
【請求項5】
前記測位演算手段は、前記受信機内の伝搬遅延を用いて測位衛星から受信機までの伝搬遅延を推定演算し、該推定演算結果を用いて測位演算を行う請求項4に記載のGPS受信機。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のGPS受信機を備えるとともに、前記測位演算の結果からGPS情報を補正するGPS情報補正手段と、補正されたGPS情報を該当する測位衛星に送信する送信手段と、を含む基地局と、
該基地局からの補正されたGPS情報を受信する補正GPS情報受信手段と、補正されたGPS情報に基づき通信信号に含むGPS情報を更新するGPS情報更新手段と、を含む前記測位衛星と、を備えたGPS情報補正システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−249649(P2008−249649A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94354(P2007−94354)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)
【出願人】(301072650)NEC東芝スペースシステム株式会社 (62)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】