説明

輝度向上フィルム及び無機ナノ粒子を表面処理する方法

本明細書には、重合性樹脂および表面改質無機ナノ粒子の反応生成物を含む光学物品(たとえば輝度向上フィルム)、無機ナノ粒子を表面改質する方法、ならびに表面改質無機ナノ粒子が記載される。表面改質は、少なくとも1.50の屈折率を有する少なくとも1つのモノカルボン酸、ならびに/または少なくとも200g/モルのMnおよびエチレン性不飽和基を有する少なくとも1つのモノカルボン酸、ならびに/または少なくとも1つのジカルボン酸を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2005年11月15日に出願された米国仮出願第60/737000の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,175,030号明細書、同第5,183,597号明細書などに記載されている一部のマイクロ複製光学製品は、一般に「輝度向上フィルム」と呼ばれる。輝度向上フィルムは多数のエレクトロニクス製品に用いられ、電子発光パネルで用いられる液晶ディスプレイ(LCD)、ラップトップコンピュータのディスプレイ、ワードプロセッサ、デスクトップモニタ、テレビ、ビデオカメラ、ならびに自動車用ディスプレイ、航空機用ディスプレイなどのバックライト付きフラットパネルディスプレイの輝度を向上させる。
【0003】
輝度向上フィルムは、望ましくは、生じる輝度利得(すなわち「利得」)に関連する輝度向上フィルムの屈折率をはじめとする特定の光学的および物理的性質を呈する。輝度を改良すれば、エレクトロニクス製品は、より少ない電力を用いてディスプレイを照明することにより、より効率的に動作できるようになるので、電力消費量が低減され、その構成要素に加わる熱負荷がより少なくなり、製品の寿命が長くなる。
【0004】
輝度向上フィルムは、たとえば、米国特許第5,908,874号明細書;同第5,932,626号明細書;同第6,107,364号明細書;同第6,280,063号明細書;同第6,355,754号明細書;さらにはEP1014113および国際公開第03/076528号の各明細書に記載されるように、硬化または重合される高屈折率モノマーから調製されてきた。
【0005】
米国特許第6,376,590号には、ジルコニアゾルおよびジルコニアゾルから調製された複合材料が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
輝度向上フィルムは、米国特許第6,844,950号明細書、米国特許出願公開第2005/0059766号明細書、同第2005/0151119号明細書、ならびに公開済みの米国特許出願第2006/0055918号明細書、同第2006/0204676号明細書、同第2006/0204745号明細書、および同第2006/0210726号明細書に記載されるように、ジルコニア、シリカ、およびチタニアなどの無機粒子を含む重合性樹脂組成物から調製されてきた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書には、重合性樹脂および表面改質無機ナノ粒子の反応生成物を含む光学物品(たとえば輝度向上フィルム)、無機ナノ粒子を表面改質する方法、ならびに表面改質無機ナノ粒子が記載される。
【0008】
ある実施形態では、少なくとも1.50の屈折率を有する少なくとも1つのモノカルボン酸を含む表面処理を有する無機ナノ粒子を含む重合性樹脂組成物の反応生成物を含む(たとえば輝度向上)光学物品が記載される。高屈折率の表面処理は、典型的には、フタレート基などの芳香族基を含む。ある実施形態では、表面処理はモノフタル酸エステルである。
【0009】
別の実施形態では、無機ナノ粒子を表面改質する方法が記載される。この方法は、
i)少なくとも1.50の屈折率を有する、少なくとも1つのモノカルボン酸相溶剤;
ii)少なくとも200g/モルのMnおよび少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する少なくとも1つのモノカルボン酸、ならびに
iii)少なくとも1つのジカルボン酸から選択される1つ以上の表面処理と組み合わせて、(たとえばポリエーテル)モノカルボン酸を含有する少なくとも1つの極性基を含む表面処理と無機ナノ粒子とを組み合わせる工程を含む。
【0010】
別の実施形態では、上記の表面処理で表面改質された無機ナノ粒子が記載される。
【0011】
さらに他の実施形態では、上記の表面改質無機ナノ粒子を含む重合性樹脂組成物の反応生成物を含む(たとえば輝度向上)光学物品が記載される。
【0012】
無機ナノ粒子は、典型的には、表面に吸着酸を含む。この吸着酸は、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸などの揮発性酸でよい。表面改質後、(たとえば輝度向上フィルム)光学物品の吸着揮発性酸の含有量は、典型的には、3質量%未満である。さらに、不揮発性酸(すなわち、本明細書に記載の各種モノカルボン酸相溶剤)の含有量は約15質量%までの範囲でありうる。表面処理には、典型的には、シランを含まない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
輝度向上フィルムは、一般的には、照明デバイスのオンアクシス輝度(本明細書中では「輝度」と記す)を向上させる。輝度向上フィルムは、光透過型のマイクロ構造化フィルムでありうる。マイクロ構造化トポグラフィーは、フィルムを用いて反射および屈折により光を再方向付けできるようなフィルム表面上の複数のプリズムでありうる。プリズムの高さは、典型的には約1〜約75ミクロンの範囲である。ラップトップコンピューター、時計などに見られるような光学ディスプレイで使用した場合、マイクロ構造化光学フィルムは、ディスプレイから逃散する光を光学ディスプレイを貫通する法線軸から所望の角度で配設された1対の平面内に制限することにより、光学ディスプレイの輝度を増大させることが可能であるその結果として、許容範囲外にディスプレイから出射するおそれのある光を反射させてディスプレイ中に戻し、そこでその一部分を「リサイクル」してディスプレイから逃散させうる角度でマイクロ構造化フィルムに戻される。リサイクルは、所望の輝度レベルを有するディスプレイを提供するのに必要とされる電力消費量を低減させることができるので有用である。
【0014】
輝度向上フィルムは、対称な先端と溝との規則的反復パターンを有するマイクロ構造体保有表面を含む。溝パターンの他の例としては、先端と溝とが対称でなくかつサイズも方位も先端と溝との距離も均一でないパターンが挙げられる。輝度向上フィルムの例は、ルー(Lu)らの米国特許第5,175,030号明細書およびルー(Lu)の米国特許第5,183,597号明細書に記載されている。
【0015】
図1を参照すると、輝度向上フィルム30は、ベース層2および光学層4を含んでよい。光学層4は、プリズム6、8、12、および14として識別される、正角柱の直線配列を含む。各プリズムは、たとえば、プリズム6は、第1の面10及び第2の面11を有する。プリズム6、8、12、および14は、プリズムが形成される第1の表面18、並びに実質的に平らまたは平面的であり、第1の表面18に対向する第2の表面20を有するベース2上に形成される。「正角柱」では、頂角が、典型的には、約90°であることを意味する。しかし、この角度は70°〜120°の範囲になりうる。80°〜100°の範囲でもよい。さらに、頂部は、先鋭形、丸形、平坦形、または切頭形でありうる。プリズム面は同一である必要はなく、プリズムは互いに傾いていてもよい。光学物品の全厚さ24とプリズムの高さ22との関係は、さまざまでありうる。しかしながら、典型的には、明確に規定されたプリズム面を有する比較的薄い光学層を使用することが望ましい。プリズムの高さ22と全厚さ24との典型的な比は、一般的には25/125〜2/125である。
【0016】
輝度向上フィルムのベース層は、光学製品、すなわち光の流量を制御することを目的とする製品で用いるのに好適な本質及び組成物でありうる。材料が光学的に十分に透明であり、特定の光学製品に組み込まれる、または特定の光学製品内で用いられるのに十分な構造的強度を備えていれば、ベース材料として多くの材料を使用できる。好ましくは、光学製品の性能が経時により損なわれることがないように十分な耐温度性および耐老化性を有するベース材料が選択されている、
任意の光学製品のベース材料の特定の化学的組成および厚さは、作製される特定の光学製品の要件に依存しうる。すなわち、特に、強度、透明性、耐温度性、表面エネルギー、光学層への固着性のバランスがとられる。ベース層の厚さは、典型的には少なくとも約0.025ミリメートル(mm)、より典型的には少なくとも約0.25mmである。さらに、ベース層は、一般的には約1mm以下の厚さを有する。
【0017】
有用なベース層の材料としては、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルローストリアセテート、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルクロリド、シンジオタクティックポリスチレン、ポリエチレンナフタレート、ナフタレンジカルボン酸をベースとするコポリマーまたはブレンド、およびガラスが挙げられる。場合により、ベース層材料は、これらの材料の混合物または併用物を含有しうる。たとえば、ベースは、多層でありうるかまたは連続相中に懸濁もしくは分散された分散相を含有しうる。代表的ベース層材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリカーボネートが挙げられる。有用なPETフィルムの例としては、写真グレードのポリエチレンテレフタレート(PET)およびデラウェア州ウィルミントン(Wilmington)のデュポン・フィルムズ(DuPont Films)から「メリネックス(Melinex)」という商品名で入手可能なPETが挙げられる。
【0018】
ベース層材料は光学活性物質であり、偏光板として機能することができる。いくつかのベース層材料は、偏光材料として有用であることが知られている。フィルムによる光の偏光は、たとえば、通過する光を選択的に吸収するフィルム材に二色性偏光子を組み込むことによって達成可能である。光の偏光はまた、アラインド雲母チップのような無機材料を組み込むことによりまたは連続フィルム内に分散された光変調液晶のドロップレットのように連続フィルム内に分散された不連続相により、達成可能である。代替手段として、異なる材料のマイクロファイン層からフィルムを作製することが可能である。フィルム内の偏光材料は、たとえば、フィルムの延伸、電界または磁界の印加、およびコーティング技術のような方法を利用することにより、偏光方位に整列させることが可能である。
【0019】
偏光フィルムの例としては、米国特許第5,825,543号明細書及び同第5,783,120号明細書に記載されるものが挙げられる。輝度向上フィルムと組み合わせたこれらの偏光フィルムの使用例は、米国特許第6,111,696号明細書に記載されている。別の偏光フィルムの例は、米国特許第5,882,774号明細書に記載されている。多層偏光フィルムは、ミネソタ州セントポール(St. Paul)のスリーエム社(3M Company)によってDBEF(デュアル輝度向上フィルム)という商品名で販売されている。輝度向上フィルムにおけるそのような多層偏光光学フィルムの使用については、米国特許第5,828,488号明細書に記載されている。
【0020】
とくに米国特許第5,612,820号明細書および同第5,486,949号明細書に記載されるような他の偏光フィルムおよび非偏光フィルムもまた、本発明に係る輝度向上フィルムのベース層として有用でありうる。
【0021】
ある実施形態では、重合構造体を含む輝度向上フィルムが記載される。重合構造体は、ベース層と光学層とから作製される光学素子または光学製品でありうる。ベース層および光学層は、同一のまたは異なるポリマー材料から形成可能である。重合構造体は、重合性樹脂組成物の反応生成物および重合性樹脂組成物が分散された表面改質無機ナノ粒子を含む。
【0022】
表面改質されたナノ粒子(たとえばコロイドナノ粒子)は、物品または光学素子の耐久性および/または屈折率を向上させるのに有効な量で重合構造体中に存在する。表面改質無機ナノ粒子の総量は、重合性樹脂中または光学物品中に少なくとも10質量%、20質量%、30質量%、または40質量%の量で存在しうる。重合性樹脂組成物がマイクロ構造化フィルムを調製する成形および硬化の各プロセスで用いるのに好適な粘度を有するために、濃度は、典型的には70質量%未満、より典型的には60質量%未満である。
【0023】
そのような粒子のサイズは、有意な可視光散乱が回避されるように選択される。光学的な性質または材料の性質を最適化しかつ全組成物コストを削減するために、無機酸化物粒子タイプの混合物を利用することが望ましいこともある。表面改質コロイドナノ粒子は、1nm、5nm、または10nmを超える(たとえば会合していない)一次粒子サイズまたは会合粒子サイズを有する酸化物粒子でありうる。一次粒子サイズまたは会合粒子サイズは、一般に、100nm、75nm、または50nm未満である。典型的には、一次粒子サイズまたは会合粒子サイズは、40nm、30nm、または20nm未満である。ナノ粒子は、会合していないことが好ましい。それらの測定は、透過型電子顕微鏡法(TEM)に基づきうる。ナノ粒子は、たとえば、アルミナ、ジルコニア、チタニア、それらの混合物、またはそれらの混合酸化物のような金属酸化物を含みうる。表面改質コロイドナノ粒子は、実質的に完全に凝縮可能である。
【0024】
(シリカを除く)完全凝縮ナノ粒子は、(独立金属酸化物粒子として測定した場合)典型的には、55%超、好ましくは60%超、より好ましくは70%超の結晶化度を有する。たとえば、結晶化度は、約86%以上まで及びうる。結晶化度は、X線回折法により決定可能である。凝縮結晶性のナノ粒子(たとえばジルコニアナノ粒子)は高屈折率を有するが、アモルファスなナノ粒子は典型的にはより低い屈折率を有する。
【0025】
ジルコニアおよびチタニアは、5〜50nm、または5〜15nm、または8nm〜12nmの粒子サイズを有しうる。ジルコニアナノ粒子は、耐久品中または光学素子中に10〜70質量%、または30〜60質量%の量で存在しうる。本発明の組成物および物品で用いられるジルコニアは、ナルコ・ケミカル・カンパニー(Nalco Chemical Co.)から「ナルコOOSSOO8(Nalco OOSSOO8)」という商品名で、およびスイスのウッツヴィル(Uzwil)ビューラーAG(Buhler AG)から「ビューラージルコニアZ−WOゾル(Buhler zirconia Z-WO sol)」という商品名で入手可能である。
【0026】
ジルコニア粒子は、公開済みの米国特許出願第2006/0148950号明細書に記載されているように水熱技術を用いて調製されうる。さらに具体的には、ジルコニウム塩を含有する第1の原料に、ジルコニウムを含有する中間体および副生成物を形成するための第1の水熱処理が施される。第2の原料は、第1の水熱処理中に形成された副生成物の少なくとも一部を除去することによって調製される。次に、第2の原料に、ジルコニア粒子を含有するジルコニアゾルを形成するための第2の水熱処理が施される。
【0027】
第1の原料は、ジルコニウム塩を含有する前駆体の水性溶液を形成することによって調製される。ジルコニウム塩のアニオンは、通常、ジルコニアゾルを調製するためのプロセス内の以後の工程中に除去できるように選択される。さらに、このアニオンは非腐食性のものが選ばれることが多く、水熱反応装置などの処理装置で使用される材料の種類の柔軟性を拡大できる。
【0028】
前駆体溶液中で少なくとも部分的にアニオンを除去するある方法において、前駆体溶液を加熱して酸性型のアニオンを蒸発させることができる。たとえば、わずか4個の炭素原子を有するカルボンキシレートアニオンは、対応するカルボン酸として除去されうる。さらに具体的には、アセテートアニオンは、酢酸として除去されうる。遊離酢酸は除去されうるが、少なくとも一部の酢酸は、典型的には、(たとえばジルコニア)ナノ粒子の表面上に吸着される。したがって、ナノ粒子は、典型的には、吸着揮発性酸を含む。
【0029】
本明細書には、重合性樹脂および表面改質無機ナノ粒子の反応生成物を含む(たとえば輝度向上フィルム)光学物品、無機ナノ粒子を表面改質する方法、ならびに表面改質無機ナノ粒子が記載される。
【0030】
無機粒子の表面改質を行う目的は、樹脂に均質の成分、および好ましくは(たとえば成形および硬化の各プロセスを用いて)輝度を大幅に向上するフィルムに調製されうる低粘度を付与することである。
【0031】
表面改質は、表面改質剤を無機オキシド(たとえばジルコニア)粒子を付着させて表面特性を改質することを含む。ナノ粒子は、多くの場合、有機マトリックス材との相溶性を向上させるために表面改質される。表面改質ナノ粒子は、多くの場合、有機マトリックス材中で会合していない、疑集していない、またはそれらの組み合わせである。結果として生じた、これらの表面改質ナノ粒子を含有する光管理フィルムは、光学的透明度が高く、かすみ度が低い傾向がある。これらの表面改質されたナノ粒子を添加することによって、高分子材料のみを含有する輝度向上フィルムと比較して、輝度向上フィルムの利得を向上させることができる。
【0032】
各種の表面処理剤が用いられる。ある態様では、高屈折率(たとえば少なくとも1.50)を有するモノカルボン酸が用いられる。別の態様では、高分子量(たとえば、少なくとも200g/モルのMn)および1以上の(たとえば重合性樹脂で共重合可能な)エチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸が用いられる。別の態様では、少なくとも1つのジカルボン酸が用いられる。上記に記載したこれらの各モノカルボン酸表面処理は、典型的には、水溶性(たとえばポリエーテル)モノカルボン酸との組み合わせで用いられる。
【0033】
要約すると、ナノ粒子の表面に吸着される揮発性酸(たとえば酢酸)は、これらの各種(たとえば不揮発性)カルボン酸によって置換される。また、この重合構造体中(たとえば輝度向上フィルム)は、追加プロセスの工程(たとえば熱処理)を施して揮発性酸の含有量を減少させもよい。検出可能な含有量(0.01質量%〜0.1質量%)が存在してよいが、輝度向上フィルムの揮発性酸の含有量は、一般に3質量%未満である。不揮発性酸の含有量は、実質的にこれよりも高く、約15質量%まで及ぶ。
【0034】
モノカルボン酸表面処理は、好ましくは適合基を含む。モノカルボン酸は、式A〜Bで表されてよい。式中、A基は(たとえばジルコニアまたはチタニア)ナノ粒子の表面に付着できるカルボン酸基であり、Bは、各種の異なる官能性を含む適合基である。カルボン酸基は、吸着および/またはイオン結合の形成により表面に付着させることができる。適合基Bは、一般に、(たとえば、輝度を向上する)光学物品のポリマー樹脂または重合性樹脂と適合するように選択される。適合基Bは、反応基でも非反応基でもありうる。また、極性基でも非極性基でもありうる。
【0035】
ジルコニア粒子に非極性を付与できる適合基Bの例としては、たとえば、直鎖または分枝鎖の芳香族または脂肪族炭化水素類が挙げられる。カルボン酸官能性を有する非極性改質剤の代表的な例としては、オクタン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0036】
適合基Bは、所望により、(たとえば、輝度を向上する)光学物品の有機マトリックスと適合可能なような反応基でよい。たとえば、(メタ)アクリレート適合基などのフリーラジカル重合性基は、良好な均一性を備える輝度向上物品を生成するために(メタ)アクリル酸官能性有機モノマーと共重合可能である。
【0037】
表面処理は、典型的には、(たとえばポリエーテル)水溶性末端を有する少なくとも1つのモノカルボン酸を含む(すなわち、分子ごとに1つのカルボン酸基を含有する)。このような表面処理は、ジルコニア粒子またはチタニア粒子に極性特性を付与できる。ポリエーテル末端は、一般式−O−R−を有する二官能性アルコキシラジカルの繰り返しを含む。好ましいR基は、一般式−C2n−を有し、たとえば、メチレン、エチレン、(n−プロピレンおよびi−プロピレンを含む)プロピレン、またははそれらの組み合わせを含む。R基の化合物は、たとえば、ランダムタイプまたはブロックタイプのコポリマーとして提供されてよい。
【0038】
モノカルボン酸の好ましい部類は、一般に、次の式で表されてよい。
【0039】
CH−[O−(CH−X−COOH
(式中、
Xは二価の有機連結基であり;
xは約1〜10の範囲であり;
yは約1〜4の範囲である。
【0040】
Xの代表例としては、−X−(CH−が挙げられ、式中、Xは、−O−、−S−、−C(O)O−、−C(O)NH−であり、式中、nは約1〜3の範囲である。
【0041】
好ましいポリエーテルカルボン酸の例としては、CHO(CHCHO)CHCOOHという化学構造を有する2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(以後MEEAAと呼ぶ)およびCHOCHCHOCHCOOHという化学構造を有する2−(2−メトキシエトキシ)酢酸(以後MEAAと呼ぶ)が挙げられる。MEAAはカタログ番号40,701−1として、MEEAAはカタログ番号40,700−3として、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)のアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Co.)から市販されている。
【0042】
ポリエーテル適合性末端を持つ他の表面改質剤も、この用途で有用に用いることができる。この用途で潜在的に有用な分子の例は、コハク酸モノ−[2−(2−メトキシエトキシ)−エチル]エステル、マレイン酸モノ−[2−(2−メトキシエトキシ)−エチル]エステル、およびグルタル酸モノ−[2−(2−メトキシエトキシ)−エチル]エステルである。これらの分子は、次のように示される。
【0043】
【化1】

【0044】
複数のポリエーテルカルボン酸の混合物を用いることも、本発明の範囲内である。
【0045】
一部の態様では、水溶性の(たとえばポリエーテル)モノカルボン酸表面処理を、少なくとも1つのジカルボン酸と組み合わせて用いられる。ジカルボン酸の分子量は、比較的低いことが好ましい。ジカルボン酸は、直鎖状または分枝鎖状でよい。カルボン酸基の間に最大6個の炭素原子を有するジカルボン酸が好ましい。このような例としては、マレイン酸、コハク酸、スベリン酸、フタル酸、およびイタコン酸が挙げられる。
【0046】
他の態様では、少なくとも1つの水溶性の(たとえばポリエーテル)モノカルボン酸表面処理が、比較的高い分子量(たとえばBCEAよりも高い)を有する共重合性モノカルボン酸表面処理と組み合わせて用いられる。表面処理の分子量(Mh)は、典型的には、200g/モルを超える。有用な表面処理の分子量は、一般に、500g/モル未満であり、好ましくは350g/モル未満である。共重合性モノカルボン酸は、(メタ)アクリルおよび(メタ)アクリレート基などのエチレン性不飽和基をさらに含む。このタイプの高分子量の表面改質剤の例は、コハク酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル、マレイン酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル、およびグルタル酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステルである。
【0047】
他の態様では、屈折率が比較的高い(たとえば、RIが少なくとも1.50である)相溶剤は、輝度向上フィルムなど光学物品の調製において効果的でありうる。フタレート基など1以上の芳香族基を含有する相溶剤は、有利なことに高屈折率を有しており、したがって、このような含有は、重合性組成物全体の屈折率を上昇させることができる。屈折率を上昇させる他の方法は、イオウ原子または臭素原子を表面改質剤の分子に含有させることなどである。
【0048】
各種のフタル酸系材料、たとえばフタル酸モノ−(2−アクリロキシ−エチル)エステルが既知であり、次の反応スキームによって製造できる。
【0049】
【化2】

【0050】
多くの場合、複数の望ましい特性を有するモノカルボン酸表面改質剤を用いることができる。たとえば、ある態様において、(芳香族基の含有によるなど)高屈折率を有し、((メタ)アクリル基などフリーラジカル重合性基の含有によるなど)共重合可能でもある表面処理を用いてよい。フタル酸モノ(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステルは、このような表面処理の例である。さらに別の例は、ポリエーテル適合基との組み合わせで(芳香族基の含有によるなど)高屈折率を有する表面処理を用いてよい。フタル酸モノ−[2−(2−メトキシエトキシ)−エチル]エステルは、このような表面処理の例である。これら2種類の分子は、触媒の存在下で無水フタル酸と脂肪族アルコールとを反応させることによって調製される。他の同様に、かつ潜在的に有用な相溶剤は、無水物類(コハク、マレイン、フタル酸、グルタル酸など)、および脂肪族アルコールから調製されうる。
【0051】
好ましい実施形態では、表面処理は、(たとえば、ポリエーテル末端またはポリエステル末端を有する)少なくとも1つの水溶性モノカルボン酸相溶剤、および(たとえば輝度向上)光学フィルムの樹脂中で有機モノマーと共重合可能な少なくとも1つの高屈折率相溶剤との化合物を含む。追加の相溶剤を用いて、樹脂の粘度および屈折率などの樹脂およびフィルムの各種特性、並びにフィルム輝度の利得を向上できる。
【0052】
表面処理は、他のカルボン酸類、並びにスルホン酸類、ホスホン酸類、アルコール類、アミン類、チタン酸塩類など他の酸を含む、さらに他の表面処理剤を含むことができる。
【0053】
コロイドディスパージョン中の粒子の表面改質は、さまざまな方法で達成可能である。このプロセスは、一般に、無機粒子ディスパージョンと表面改質剤との混合を含む。場合により、この時点で、たとえば、1−メトキシ−2−プロパノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、N,N−ジメチルアセトアミド、および1−メチル−2−ピロリジノンのような共溶媒を添加しうる。共溶媒は、表面改質剤さらには表面改質粒子の溶解性を向上させうる。続いて、無機ゾルと表面改質剤とを含む混合物を混合しながらまたは混合することなく室温または高温で反応させる。
【0054】
次に、表面改質粒子は、さまざまな方法で硬化性(すなわち重合性)樹脂組成物に組み込むことができる。好ましい態様では、溶媒交換手順が利用される。それによれば、樹脂を表面改質ゾルに添加してから水および共溶媒(使用する場合)を蒸発により除去することにより、粒子を重合性樹脂中に分散された状態にする。蒸発工程は、たとえば、蒸留、回転蒸発、またはオーブン乾燥により達成可能である。他の態様において、所望により、表面改質粒子を水非混和性溶媒中に抽出してから溶媒交換を行うことが可能である。他の選択肢として、重合性樹脂中に表面改質ナノ粒子を組み込むための他の方法は、改質粒子を乾燥させて粉末にすることと、続いて、粒子を分散させる樹脂材料を添加することと、を含む。この方法の乾燥工程は、系に好適な従来の手段、たとえば、オーブン乾燥または噴霧乾燥などにより達成可能である。
【0055】
本発明の表面改質無機ナノ粒子は、有機マトリックス材、たとえばモノマー類、オリゴマー類、およびポリマー類と上記のさまざまな技法で組み合わせてよい。合成された複合材料は、高弾性率、硬性、ならびにポリマーマトリックスの加工性および柔軟性と共に、光学的透過性、高屈折率の特性を有することができる。一般に、複合材料の屈折率は、有機マトリックス中のジルコニア粒子の体積分率に比例して増加する。高屈折率を得るためには、一般に、高屈折率を有する有機マトリックスが好ましい。本発明のジルコニアゾルから得られるジルコニア粒子は、有機マトリックスの屈折率をさらに増加させるために用いられてよい。
【0056】
重合性モノマー類の代表例としては、アクリレート類、メタクリレート類、スチレン類、エポキシ類などが挙げられる。また、アクリル化またはメタクリル化ポリエステル類、ポリウレタン類、またはアクリル類などの反応性オリゴマーも用いられてよい。結果として生じる複合材料は、成形またはコーティング処理されてよく、次に、たとえばフリーラジカル光重合装置によって重合される。光重合は、ニューヨーク州タリタウン(Tarrytown)のチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から市販されている「イルガキュア184(IRGACURE 184)」という商品名などの光開始剤を用いることによって開始してよい。表面改質ナノ粒子は、他のタイプのポリマー類、たとえばポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリウレタン類、ポリメチルメタクリレート類、ポリスチレン類、ポリカーボネート類、およびポリイミド類と混合した。ゾルと熱可塑性ポリマーとを混合するための好適な技法の例としては、たとえば押出成形、ミリング、またはブラベンダー(Braebender)混合が挙げられる。表面改質剤は、所望の処理温度で安定するように選択する必要がある。
【0057】
光学物品には、さまざまな重合性樹脂組成物が有用であり、具体的には、米国特許出願公開第2005/0200278号明細書および公開された米国特許出願第2006/0204676号明細書に記載されているように、輝度向上フィルムの光学層が既知である。
【0058】
重合性組成物は、実質的に無溶媒、すなわち、組成物が5質量%、4質量%、3質量%、2質量%、1質量%、および0.5質量%未満の(たとえば有機)溶媒を含むことが好ましい。溶媒の濃度は、ガスクロマトグラフィーのような公知の方法により決定可能である。0.5質量%未満の溶媒濃度が好ましい。
【0059】
有機成分の成分は、好ましくは、有機成分が低粘度を有するように選択される。典型的には、有機成分の粘度は、これまで利用されてきた組成物の有機成分よりも実質的に低い。有機成分の粘度は、1Pa−s(1000cps)未満であり、典型的には、0.9Pa−s(900cps)未満である。有機成分の粘度は、コーティング温度において、0.8Pa−s(800cps)未満、0.45Pa−s(450cps)未満、0.6Pa−s(600cps)未満、または0.5Pa−s(500cps)未満でよい。本明細書中で使用する場合、粘度は、25mmのパラレルプレートを用いて動的応力レオメーターにより測定される(1000sec−1までの剪断速度で)。さらに、有機成分の粘度は、コーティング温度において、典型的には、少なくとも0.01Pa−s(10cps)、より典型的には少なくとも0.05Pa−s(50cps)、さらにより典型的には少なくとも0.1Pa−s(100cps)、最も典型的には少なくとも0.2Pa−s(200cps)である。
【0060】
コーティング温度は、典型的には、周囲温度(すなわち25℃)〜180°F(82℃)の範囲である。コーティング温度は、170°F(77℃)未満、160°F(71℃)未満、150°F(66℃)未満、140°F(60℃)未満、130°F(54℃)未満、または120°F(49℃)未満でありうる。有機成分は、重合性組成物での融点がコーティング温度未満であるならば、固体でありうるかまたは固体成分を含みうる。有機成分は、周囲温度で液体でありうる。
【0061】
有機成分ならびに重合性組成物は、大部分の製品用途では少なくとも1.47の屈折率を有するが、チューニングフィルムの重合性樹脂組成物は1.44ほどの低屈折率を有してよい。有機成分または重合性組成物の屈折率は、少なくとも1.48、1.49、1.50、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、または1.60でよい。ナノ粒子を含む重合性組成物は、1.70ほどの高屈折率(たとえば、少なくとも1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、または1.69)を有することができる。典型的には、可視光線スペクトル内の高透過性も好ましい。
【0062】
重合性組成物は、75ミクロンの厚さを有する輝度向上フィルムなどでは、好ましくは5分間未満の時間スケールでエネルギー硬化性である。好ましくは、重合性組成物は、典型的には45℃超のガラス転移温度を提供するのに十分な程度に架橋される。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)、変調DSC、または動的機械的分析のような当技術分野で公知の方法により測定可能である。重合性組成物は、従来の遊離基重合法により重合可能である。
【0063】
好適なモノマー類としては、たとえば、フェノキシエチルアクリレート;フェノキシ−2−メチルエチル(メタ)アクリレート;フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート;3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、4−(1−メチル−1−フェネチル)フェノキシエチル(メタ)アクリレート;フェニルチオエチルアクリレート;2−ナフチルチオエチルアクリレート;1−ナフチルチオエチルアクリレート;2,4,6−トリブロモフェノキシエチルアクリレート;2,4−ジブロモフェノキシエチルアクリレート;2−ブロモフェノキシエチルアクリレート;1−ナフチルオキシエチルアクリレート;2−ナフチルオキシエチルアクリレート;フェノキシ2−メチルエチルアクリレート;3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート;2−フェニルフェノキシエチルアクリレート;4−フェニルフェノキシエチルアクリレート;2,4−ジブロモ−6−sec−ブチルフェニルアクリレート;2,4−ジブロモ−6−イソプロピルフェニルアクリレート;ベンジルアクリレート;フェニルアクリレート;2,4,6−トリブロモフェニルアクリレート;エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート;およびこれらの混合物が挙げられる。
【0064】
重合性組成物の少なくとも1つの成分は、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を含む。有機成分は、2つ又はそれ以上の(メタ)アクリレート基を含む少なくとも1つの成分を含むことが好ましい。十分な重合性(メタ)アクリレート基を含む表面改質ナノ粒子が用いられる場合、有機成分のすべてのモノマー類が1官能性でよい。
【0065】
少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を含むモノマー類は、架橋剤とも称される。好適な架橋剤の例としては、ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、およびペンタエリスリトールプロポキシレートトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。架橋剤の任意の1種または混合物を利用しうる。メタクリレート基はアクリレート基よりも反応性が低い傾向があるため、架橋剤(1つまたは複数)は、好ましくはメタクリレート官能性を含まない。
【0066】
架橋剤が存在する場合、少なくとも約2質量%の量で重合性組成物の有機成分中に存在することが好ましい。典型的には、架橋剤の量は、約25質量%を超えない。
【0067】
さまざまな架橋剤が市販されている。たとえば、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)は、ペンシルバニア州エクストン(Exton)のサートマー・カンパニー(Sartomer Co.)から「SR444」という商品名で;日本の大阪の大阪有機化学工業株式会社(Osaka Organic Chemical Industry, Ltd.)から「ビスコート#300(Viscoat #300)という商品名で;日本の東京の東亜合成株式会社(Toagosei Co. Ltd.)から「アロニックスM−305(Aronix M-305)」という商品名で;および台湾の高雄(Kaohsiung)のエターナル・ケミカル・カンパニー・リミテッド(Eternal Chemical Co., Ltd.)から「エターナー235(Etermer 235)」という商品名で市販されている。トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)は、サートマー・カンパニー(Sartomer Co.)から「SR351」という商品名で市販されている。TMPTAは、東亜合成株式会社(Toagosei Co. Ltd.)から「アロニックスM−309」という商品名でも入手可能である。さらに、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートは、サートマー・カンパニー(Sartomer Co.)から「SR454」という商品名で、およびエトキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレートは同社から「SR494」という商品名で市販されている。
【0068】
有機成分および重合性組成物が総じて所望の屈折率を有する場合、有機成分は他の(たとえば低屈折率の)モノマー類を含むことができる。好適なモノマー類は、接着力の向上または粘度の低減など他の有益な特性をもたらしてよい。好適なモノマー類には、(メタ)アクリレート類、またはモノマーN−置換もしくはN,N−二置換(メタ)アクリルアミド類、特定的には、アクリルアミドなど一官能性または二官能性のエチレン性不飽和モノマー類が挙げられる。これらは、N−アルキルアクリルアミド類およびN,N−ジアルキルアクリルアミド類、特定的にはC1−4アルキル基を含有するものを含む。その例は、N−イソプロピルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムである。
【0069】
ルー(Lu)およびルー(Lu)らが記載しているように、マイクロ構造体保有物品(たとえば輝度向上フィルム)は、(a)重合性組成物(すなわち本発明に係る重合性組成物)を調製する工程と;(b)マスターのキャビティーを満たすのにちょうど十分な量でマスターネガマイクロ構造化成形表面上に重合性組成物を堆積させる工程と;(c)予備成形されたベースとマスター(少なくとも一方は可撓性である)との間で重合性組成物のビードを移動させることによりキャビティーを満たす工程と;(d)組成物を硬化させる工程と;を含む方法により作製可能である。マスターは、ニッケル、ニッケルメッキ銅、もしくは黄銅のような金属品でありうるか、または重合条件下で安定でありかつマスターから重合材料をきれいに取り出しうる表面エネルギーを好ましくは有する熱可塑性材料でありうる。ベースへの光学層の固着を促進するために、場合により、ベースフィルムの1つ以上の表面に下地処理または他の処理を施すことが可能である。
【0070】
次に定義する用語については、別の定義が特許請求の範囲中、あるいは本明細書中のいずれかの場所で与えられない限り、これらの定義が適用されるものとする。
【0071】
「マイクロ構造体」は、本明細書において、米国特許第4,576,850号明細書に定義され、説明されるとおりに用いられる。したがって、マイクロ構造を有する物品の所定の、所望の実利的目的または機能を表現するまたは特徴付ける表面構造を意味する。この物品の表面内の突起およびくぼみなど不連続性は、中心線よりも上の表面形状が有する面積の合計が中心線よりも下の面積の合計と等しく、この線がこの物品の(マイクロ構造体を保有する)公称表面に対して実質的に平行となるように、マイクロ構造体に引かれた平均中心線から偏位する。この偏位の高さは、表面の代表的な特性長、たとえば1〜30cmを光学顕微鏡または電子顕微鏡で測定した場合、典型的には、約+/−0.005〜+/−750ミクロンである。この平均中心線は、平面、凹面、凸面、非球面、またはこれらの組み合わせにできる。この偏位が低次、たとえば約+/−0.005〜+/−0.1ミクロン、または好ましくは+/−0.05ミクロンであり、この偏位が不定期またはごく稀に発生する、すなわち、表面に任意の有意な不連続性が存在しない物品は、マイクロ構造体保有表面が本質的に「平面的な」または「滑らかな」表面であり、このような物品は、たとえば、精密光学素子または眼科用レンズなど精密光学インターフェイスを備える素子として有用である。この偏位が低次であり、多発する物品には、反射防止マイクロ構造を有する物品が挙げられる。この偏位が高次、たとえば約+/−0.1〜+/−750ミクロンであり、同一または異なる、および無作為または規則正しい方法で間隔が空いているまたは隣接する、複数個の実利的な不連続性を含むマイクロ構造体に起因する物品は、再帰反射プリズムシート、(たとえば、ペーストを成形してバリアリブを調製する)マイクロ構造金型、線形フレネルレンズ、ビデオディスク、および輝度向上フィルムなどの物品である。マイクロ構造体保有表面は、上記の低次および高次の両方の実利的な不連続性を含むことができる。マイクロ構造体保有表面は、異質または非実利的な不連続性の量またはタイプが、この物品の所定の、所望の有用性に明確に干渉するまたは悪影響を及ぼさない限り、これらの不連続性を含んでよい。
【0072】
「有機成分」とは、無機ナノ粒子を除く、組成物の全成分を意味する。
【0073】
「屈折率」とは、材料(たとえばモノマー)の絶対屈折率を意味し、自由空間中の電磁放射線の速度とその材料中の電磁放射線の速度との比であると解釈される。屈折率は、公知の方法を用いて測定可能であり、一般的には、アッベ屈折計(たとえば、ペンシルバニア州ピッツバーグのフィッシャー・インストラメンツ(Fisher Instruments of Pittsburgh,PA)から市販されている)を用いて可視光領域で測定される。一般的には、測定された屈折率は、機器に依存してある程度異なる可能性があると考えられる。
【0074】
「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート及びメタクリレート両方の化合物を指す。
【0075】
「重合性組成物」とは、少なくとも1種の重合性モノマーを含む有機成分とオプションの無機ナノ粒子とを含む全組成物を意味する。
【0076】
「ナノ粒子」という用語は、本明細書中では、約100nm未満の直径を有する粒子(一次粒子または会合一次粒子)を意味するものと定義される。
【0077】
「表面改質コロイドナノ粒子」とは、ナノ粒子が安定な分散を提供するようにそれぞれが改質表面を有するナノ粒子を意味する。
【0078】
「凝集」とは、互いに化学結合されている可能性がある一次粒子間の強い会合を意味する。より小さい粒子への凝結体の分解を達成するのは困難である。
【0079】
「アグロメレーション」とは、電荷または極性により保持一体化されている可能性があり、かつより小さい構成要素に分解可能である一次粒子間の弱い会合を意味する。
【0080】
「一次粒子サイズ」とは、単一粒子(非凝集、非アグロメーション)の平均直径を意味する。
【0081】
「揮発性酸」とは、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸、およびこれらの混合物など6個以下の炭素原子を有するモノカルボン酸を意味する。
【0082】
端点による数の範囲の列挙には、その範囲内に包括される全ての数が包含される(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を包含する)。
【0083】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。従って、例えば「化合物」(“a compound”)を含有する組成物の言及は、2つ以上の化合物の混合物を包含する。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、用語「又は」は、その内容について別段のはっきりした指示がない限り、一般的に「及び/又は」を包含する意味で用いられる。
【0084】
特に断らない限り、本明細書及び請求項において使用される成分の量、性質の測定値などを表す数値はすべて、いずれの場合においても「約(about)」という用語で修飾されているものと理解ものとする。
【0085】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施例に限定されると考えるべきではなく、さらに適切に言えば添付の特許請求の範囲に相当する本発明の全態様を包含すると理解されるべきである。本明細書を検討すると様々な修正形態、等価の方法、並びに本発明を適用できる非常に多くの構造が、本発明が対象とする当業界の技術者には容易に明らかであろう。
【実施例】
【0086】
実施例の重合性組成物の調製には、次の成分を用いた。
【0087】
サートマー・カンパニー(Sartomer Co.)(ペンシルバニア州エクストン(Exton))のトリメチロールプロパントリアクリレート(“TMPTA)
第一工業製薬株式会社(日本、京都)のトリブロモフェノキシエチルアクリレート(“BR−31”)
サートマー・カンパニー(Sartomer Co.)(ペンシルバニア州エクストン(Exton))のフェノキシエチルアクリレート(SR−339)
ZrOゾルは、2004年12月30日申請の米国特許出願第11/027426号明細書に従って調製し、固形分45.78%のゾルを生成した。ZrOは、次の試験方法に従って試験を行った。
【0088】
光子相関分光法(PCS)
体積平均粒子サイズは、マルバーンシリーズ4700(Malvern Series 4700)粒子サイズ分析器(マサチューセッツ州サウスボロ(Southborough)のマルバーン・インストルメンツ社から入手可能)を用いて光子相関分光法(PCS)によって測定した。希釈されたジルコニアゾルのサンプルは、さらに覆われるガラスキュベットに対して注射器が適用する圧力を用いて0.2μmフィルタを通してろ過した。データ収集を開始する前に、サンプルチャンバの温度は、25℃で平衡に達するように置かれた。提供されたソフトウェアは、90度の角度でCONTIN分析を行うために用いた。CONTINは、S.W.プロベンチャー(S.W. Provencher)著、「コンピュータ物理通信」(Comput. Phys. Commun.)、1982年、第27号、p.229にさらに記載されている、一般の逆変換の問題を分析するために広く用いられている数学的方法である。この分析は、24のデータビンを用いて実行した。計算では、1.333に等しい水の屈折率、0.00089Pa−s(0.890センチポアズ)に等しい水の粘度、および1.9に等しいジルコニア粒子の屈折率の各値を用いた。
【0089】
2つの粒子サイズの測定値は、PCSデータに基づいて計算した。ナノメートルで報告した強度平均粒子サイズは、散乱光強度分布の平均値に相当する粒子のサイズに等しかった。散乱光強度は、粒子の直径の6乗に比例した。体積平均粒子サイズもナノメートルで報告したが、ジルコニア粒子の屈折率と分散媒質(すなわち、水)の屈折率との両方を考慮した散乱光強度分布から計算した体積分布から計算した。体積平均粒子サイズは、体積分布の平均に相当する粒子サイズに等しかった。
【0090】
強度平均粒子サイズは体積平均粒子サイズで除算し、粒子サイズ分布を示す比率を求めた。
【0091】
結晶構造およびサイズ(XRD分析法)
乾燥ジルコニアサンプルの粒子サイズは、瑪瑙乳鉢および乳棒を用いた手研削によって縮減した。無制限量のサンプルは、両面塗布テープの一部が固着しているガラスの顕微鏡用スライドにへらで塗布した。サンプルは、へらのブレード部でテープに押し付けることによって、テープの粘着剤に押し付けた。余分なサンプルは、へらのブレード端部でサンプル領域をこすることによって除去し、粘着剤に固着した粒子の薄層を残した。こすった後に残った、軽く固着した物質は、顕微鏡用スライドを硬面に強く打ちつけることによって除去した。同様の方法で、コランダム(インディアナ州インディアナポリス(Indianapolis)ユニオンカーバイド(Union Carbide)のリンデ(Linde)1.0μmアルミナ研磨粉、ロット番号C062)を調製し、これを用いて計測の広がりに関して回折計を較正した。
【0092】
X線回折の精査は、反射配置、銅Kα線、散乱線の比例検出器レジストリを有するフィリップス社(Philips)製の垂直型回折装置を用いて得た。この回折装置には、可変の入射ビームスリット、固定の回折ビームスリット、およびグラファイト回折ビームモノクロメーターが装着されている。この精査は、0.04度の刻み幅および8秒のドウェル時間を用いて25〜55度の2θで行った。45kVおよび35mAのX線発生装置の設定を用いた。コランダム標準に関するデータ収集は、複数の個別のコランダムマウントの3領域で行った。データは、薄層のサンプルマウントの異なる3領域で収集した。
【0093】
観測された回折ピークは、国際回析データセンター(International Center for Diffraction Data)(ICDD)の粉末回折データベース(セット1〜47、ペンシルベニア州ニュートンスクエア(Newton Square)のICDD)に含まれる標準回折パターンと比較することによって識別され、立方/正方晶型(C/T)または単斜晶型(M)のジルコニアのいずれかによるものであった。立方相のピーク(111)および正方相のピーク(101)は分離できなかったため、これらの相を共に報告した。各ジルコニア型の量は相対的に評価し、最強度の回折ピークを有するジルコニア型には、相対強度値100を割り当てた。残りの結晶性ジルコニア型の最強線は、最強度線に対して相対的に測定し、1〜100の値を付与した。
【0094】
コランダムを原因とする、観測した回折の最大値は、プロファイルフィッティングによって測定した。平均コランダムピーク幅とコランダムピーク位置(2θ)との関係は、多項式をこれらのデータに適合させ、コランダムの試験範囲内の任意のピーク位置での計測幅を評価するのに用いる連続関数を作成することによって測定した。ジルコニアを原因とする、観測した回折の最大値のピーク幅は、観測した回折ピークをプロファイルフィッティングすることによって測定した。次のピーク幅は、存在が確認されたジルコニア相に基づいて評価した。
【0095】
立方/正方晶(C/T):(1 1 1)
単斜晶(M):(−1 1 1)、および(1 1 1)
すべてのケースにおいて、Kα1およびKα2波長成分を明らかにしたピアソンVII(Pearson VII)ピーク形状モデル、および線形のバックグラウンドモデルを用いた。幅は、度の単位を有する、ピークの半値全幅(FWHM)とした。プロファイルフィッティングは、JADE回折ソフトウェアスイートの性能を用いることによって達成した。サンプルピーク幅は、同一の薄層のサンプルマウントに関して得られた3つの別個のデータ群について評価した。
【0096】
サンプルピークは、コランダム計測較正から得られた計測幅値の補間およびラジアン単位に変換された補正ピーク幅によって、計測の広がりに関して補正した。一次結晶サイズの計算には、シェラー(Scherrer)の式を用いた。
【0097】
結晶サイズ(D)=Kλ/β(cosθ)
シェラー(Scherrer)の式中、
K=形状因子(ここでは0.9);
λ=波長(1.540598Å);
β=計測の広がりの補正後に計算したピーク幅(ラジアン単位)=(ラジアンに変換された)[計算したピークFWHM−計測幅](式中、FWHMは半値全幅);および
θ=1/2ピーク位置(散乱角)である。
【0098】
立方/正方晶の微結晶サイズは、(1 1 1)ピークを用いた3測定値の平均として測定した。
【0099】
立方/正方晶の平均微結晶サイズ=
[D(1 1 1)領域1+D(1 1 1)領域2+D(1 1 1)領域3]/3
単斜晶の微結晶サイズは、(−1 1 1)ピークを用いた3測定値および(1 1 1)ピークを用いた3測定値の平均として測定した。
【0100】
単斜晶の微結晶サイズ=
[D(1 1 1)領域1+D(−1 1 1)領域2+D(−1 1 1)領域3
D(1 1 1)領域1+D(1 1 1)領域2+D(1 1 1)領域3]/6
立方/正方晶(C/T)および単斜晶相(M)の重量平均を計算した。
【0101】
重量平均=[(%C/T)(C/Tサイズ)+(%M)(Mサイズ)]/100
この式中、
%C/T=ZrO粒子の立方および正方晶の微結晶含有量によるパーセント結晶化度;
C/Tサイズ=立方および正方晶の微結晶サイズ;
%M=ZrO粒子の単斜晶の微結晶含有量によるパーセント結晶化度;および
Mサイズ=単斜晶の微結晶サイズである。
【0102】
分散指数
分散指数は、PCSで測定した体積平均サイズをXRDで測定した重量平均微結晶サイズで除算したものに等しい。
【0103】
固形分重量パーセント
固形分重量パーセントは、3〜6グラムの重量のサンプルを120℃で30分間乾燥することによって測定した。固形分パーセントは、湿った状態のサンプル重量(すなわち、乾燥前の重量である重量湿)および乾燥状態のサンプル重量(すなわち、乾燥後の重量である重量)から次の式を用いて計算できる。
【0104】
固形分重量%=100(重量)/重量湿
結果は以下の通りであった。
【0105】
【表1】

【0106】
【表2】

【0107】
フタル酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステルの調製
無水フタル酸(112.1g)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(87.9g)、およびトリエチルアミン(0.44g)を丸底フラスコで混合する。この液体中に少量の乾燥空気を泡立てる。反応物を混合し、75℃に加熱する。反応物をこの温度で6時間保温する。室温まで冷却する。この生成物をNMRで分析し、フタル酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステルと判定した。この生成物は、時間の経過に伴い、部分的に結晶化する。
【0108】
(実施例1)(コントロール)
ZrOゾル(100.0g)、MEAA(6.16g)、および1−メトキシ−2−プロパノール(50.0g)を1Lの丸底フラスコに充填した。回転蒸発によって水およびアルコールを除去し、高濃度のZrOゾルを得た。TMPTA/PEA/BR31の2/3/5混合物(26.55g)、ニューヨーク州タリタウン(Tarrytown)のチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・インコーポレーテッド(Ciba Specialty Chemical, Inc.)からプロスタブ5198(Prostab 5198)という商品名で入手可能な、ヒンダードアミン窒素酸化物阻害剤の水中5%溶液(0.21g)、および1−メトキシ−2−プロパノール(20.0g)を高濃度のZrOゾルに添加した。水およびアルコールは、回転蒸発によって除去した。メタクリル酸(7.92g)および1−メトキシ−2−プロパノール(20.0g)を樹脂中に分散したZrOに添加した。アルコールの残余分は、回転蒸発によって除去した。アクリル単量体中のZrOの得られた分散は、1.646の屈折率を有し、52.7%のZrOを含有した。
【0109】
(実施例2)
ZrOゾル(103.17g)、MEEAA(6.08g)、水(77.00g)、1−メトキシ−2−プロパノール(150.0g)、1−メトキシ−2−プロパノール中のマレイン酸の20.76%溶液(6.31g)、TMPTA/PEA/BR31の2/3/5混合物(26.82g)、およびプロスタブ5198(Prostab 5198)の水中5%溶液(0.20g)を1Lの丸底フラスコに充填した。水および1−メトキシ−2−プロパノールは回転蒸発によって除去し、屈折率1.540を有する、高濃度のZrOゾルを得た。1−メトキシ−2−プロパノール(70.0g)および水(50.0g)をZrOゾルに添加した。水および1−メトキシ−2−プロパノールは回転蒸発によって除去し、屈折率1.554を有する、高濃度のZrOゾルを得た。フタル酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル(3.28g)、1−メトキシ−2−プロパノール(10.0g)、および水(6.0g)を高濃度のZrOゾルに付加した。水および1−メトキシ−2−プロパノールは回転蒸発によって除去し、屈折率1.645を有する、アクリル樹脂中のZrOの分散を得た。1−メトキシ−2−プロパノール(2.0g)、および水(0.2g)をZrO分散に付加した。アルコールおよび水の残余分は、回転蒸発によって除去した。アクリル樹脂中に得られたZrOの分散は、約52.4%のZrOであり、1.6495の屈折率を有した。
【0110】
(実施例3)
ZrOゾルには、スペクトラム・ラボ(Spectrum Labs)(カリフォルニア州ランチョ ドミンゲス(Rancho Dominguez))から入手可能な中空繊維限外濾過膜(モデルM21S−100−01P)を用いて、固形分15質量%〜30質量%の限外濾過を3回施した。限外濾過を施したZrOゾル(180.0g)、MEAA(6.07g)、1−メトキシ−2−プロパノール(100.0g)、1−メトキシ−2−プロパノール中のマレイン酸の4.2%溶液(31.31g)、TMPTA/PEA/BR31の2/3/5混合物(26.82g)、およびプロスタブ5198(Prostab 5198)の水中5%溶液(0.22g)を1Lの丸底フラスコに充填した。水および1−メトキシ−2−プロパノールは、回転蒸発によって除去した。1−メトキシ−2−プロパノール(60.0g)およびフタル酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル(3.20g)を、高濃度のZrOゾルに付加した。水およびアルコールの残余分は、回転蒸発によって除去した。1−メトキシ−2−プロパノール(10.0g)をZrOの分散に付加した。アルコールは、回転蒸発によって除去した。アクリル樹脂中に得られたZrOの分散は、約52.4%のZrOであり、1.6505の屈折率を有した。
【0111】
総酸の測定法:
樹脂中の酸は、HP(ヒューレット・パッカード)(Hewlett Packard)5890シリーズ2ガスクロマトグラフを用いて測定した。用いたカラムは、HP−5(架橋された5%Phmeシリコン)であり、長さ9.14m(30フィート)、直径13.5mm(0.53インチ)、およびフィルム厚1.5ミクロンであった。注入温度は300℃であり、検出器温度は250℃であった。この方法は初期温度40℃を用い、1分間保持してから、20℃/分で200℃まで上げ、5分間保持した。サンプルは、1gの各ZrO含有樹脂を水中の3%の水酸化アンモニウム3gに添加することによって調製した。沈殿物は、シリンジフィルタを用いて濾過し、濾液はガスクロマトグラフに注入した。
【0112】
【表3】

【0113】
実施例2および3と、コントロール実施例1とを比較することによって、未硬化樹脂の酢酸含有量が約75%減少した。また、メタクリル酸の使用、他の潜在的な臭いの一因、および製造時の剥離時間の増加が除外される。
【0114】
(実施例4)
ZrOゾル(130g)、MEEAA(7.2g)、1−メトキシ−2−プロパノール(90g)、フタル酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル(1−メトキシ−2−プロパノール中の固体分50%で1.8g)、フタル酸モノ−[(2−(ナフタレン−2−イルスルファニル)−エチル]エステル(1−メトキシ−2−プロパノール中の固体分50%で17.4g)、BR31/PEA/TMPTAの5/3/2混合物(29.4g)、およびプロスタブ5198(Prostab 5198)(.015g)を1Lの3つ首丸底フラスコに充填した。水およびアルコールは、アクリレート樹脂中に得られる分散が約53.3%のZrOになるように、真空蒸留によって除去した。粘度は、少量サンプルアダプター(スピンドルS18)を備えた、ブルックフィールド(Brookfield)製のDVII+粘度計および一定温度(149°F)の水浴装置を用いて測定した。粘度は、0.393Pa−s(393cP)として報告した。屈折率は、1.6455で測定した。
【0115】
(実施例5)
ZrOゾル(130g)、MEEAA(6.9g)、1−メトキシ−2−プロパノール(90g)、フタル酸モノ−(2−アクリロイルオキシ−エチル)エステル(1−メトキシ−2−プロパノール中の固体分50%で4.6g)、フタル酸モノ−[(2−(ナフタレン−2−イルスルファニル)−エチル]エステル(1−メトキシ−2−プロパノール中の固体分50%で7.4g)、BR31/PEA/TMPTAの5/3/2混合物(33.3g)、およびプロスタブ5198(Prostab 5198)(.015g)を1Lの3つ首丸底フラスコに充填した。水およびアルコールは、アクリレート樹脂中に得られる分散が約53.3%のZrOになるように、真空蒸留によって除去した。粘度は、少量サンプルアダプター(スピンドルS18)を備えた、ブルックフィールド(Brookfield)製のDVII+粘度計および一定温度(149°F)の水浴装置を用いて測定した。粘度は、0.441Pa−s(441cP)として報告した。屈折率は、1.6450で測定した。
【0116】
輝度向上フィルムの調製
実施例4および5の組成物は、以下に記載されるように、互いに独立して輝度向上フィルムに調製した。
【0117】
ビキュイティBEFII(Vikuiti BEF II)(ミネソタ州セントポール(St. Paul)の3Mカンパニー(3M Co.)から市販されている)に見られるプリズム形状パターンに類似した50ミクロンの公称ピッチ間隔を有する90度プリズムの線状の列よりなる20.3cm(8インチ)×27.9cm(11インチ)のメタルマスターをホットプレート上に配置し、140°Fに加熱した。使い捨てピペットを用いて、重合性樹脂のビード4mLをマスターツールに塗布した。次に、メリネックス623(MELINEX 623)としてデュポン・テイジン・フィルムズ(Dupont Teijin Films)から入手可能な500ゲージのPETを、樹脂のビードおよびマスターツールの上に配置した。
【0118】
線状プリズムがフィルムの高利得軸に略垂直(90°±20°)の方位を向くように、PETフィルムの方位を決定した。次に、いかなる連行空気をも排除しつつマスターツールを樹脂で完全に充填するのに十分な力を加えて、マスターツール、樹脂、およびPETを160°Fの加熱ニップロールに通した。次に、充填されたマスターツールを、メリーランド州ゲイサーズバーグのフュージョンUVシステムズ・インコーポレーテッド(Fusion UV Systems,Inc.Gaithersburg,MD)から入手可能なP150電源を用いた「Dバルブ」からの紫外線に、50fpmの線速度で2回通過させて暴露した。次に、PETフィルムをマスターツールから手作業で取り出した。PETフィルム上に形成されたプリズム状コーティングは、約25ミクロンのコーティング厚さになった。
【0119】
比較例A
ミネソタ州セントポール(St. Paul)の3Mから市販されているビキュイティ(商標)BEFII90/50(Vikuiti(Trademark)BEF II 90/50)フィルム(BEFII)は、90度のプリズム角度および50マイクロメートルのピッチ(プリズムピーク間の距離)を有する、マイクロ複製プリズム構造の輝度向上フィルムである。比較例Aのプリズムピークは先鋭形である。
【0120】
実施例4および5の重合性組成物から調整した輝度向上フィルムの利得、ならびに比較例Aの輝度向上フィルムの利得は、下記の利得試験法に従って評価した。
【0121】
利得試験法
フィルムの光学的性能は、カリフォルニア州チャッツワース(Chatsworth)のフォト・リサーチ・インコーポレーテッド(Photo Research, Inc)から入手可能なMS−75レンズ付きスペクトラスキャン(登録商標)PR−650スペクトラコリメーター(SpectraScan(Trademark)PR-650 SpectraColorimeter)を用いて測定した。拡散透過性中空ライトボックス上にフィルムを配置した。ライトボックスの拡散透過および拡散反射は、ランベルト型として記述しうる。ライトボックスは、約6mmの厚さの拡散PTFE板から作製された約12.5cm×12.5cm×11.5cm(L×W×H)の大きさの六面中空キューブであった。ボックスの1つの面は、サンプル表面として選択される。中空ライトボックスは、サンプル表面で測定したときに約0.83の拡散反射率を有していた(たとえば、以下に記載の測定法により400〜700nmの波長範囲全体にわたり平均したときに約83%)。利得試験中、ボックスの底面内の約1cmの円孔を介して内部からボックスを照光した(底面はサンプル表面に対向し、光は内部からサンプル表面に向けて方向付けられる)。この照光は、光を方向付けるために使用される光ファイバーバンドルに取り付けられた安定化広帯域白熱光源を用いて提供される(マサチューセッツ州マールボロおよびニューヨーク州オーバーンのショット・フォステックLLC(Schott−Fostec LLC,Marlborough MA and Auburn,NY)製の直径約1cmのファイバーバンドル延長部付きフォステックDCR−II(Fostec DCR−II))。標準的な直線吸収偏光子(たとえばメレス グリオト03FPG007(Melles Griot 03FPG007))をサンプルボックスとカメラとの間に配置する。約34cm離間したライトボックスのサンプル表面にカメラの焦点を合わせ、カメラレンズから約2.5cmの位置に吸収偏光子を配置する。所定の位置に偏光子を配置してサンプルフィルムを用いずに測定したときの照光されたライトボックスの輝度は、150cd/m超であった。サンプルフィルムをボックスに略接触した状態にしてサンプルフィルムをボックスのサンプル表面に平行に配置したときに、ボックスのサンプル表面の平面に対して法線入射方向で、サンプル輝度をPR−650により測定する。このサンプル輝度をライトボックス単独で同じように測定された輝度と比較することにより、相対利得を計算する。迷光源を排除するために、全測定を黒色包囲体中で行った。反射偏光子を含有するフィルムアセンブリの相対利得を試験する場合、反射偏光子の通過軸を試験系の吸収偏光子の通過軸に整列した。プリズム状フィルムに対して報告された相対利得値は、一般的には、吸収偏光子に最も近いフィルムのプリズムグルーブを吸収偏光子の通過軸に垂直に整列した状態で取得したものである。
【0122】
ライトボックスの拡散反射率は、直径15.25cm(6インチ)のスペクトラロン(Spectralon)被覆積分球と、安定化広帯域ハロゲン光源と、光源用の電源と、を用いて測定した。これらはすべて、ニューハンプシャー州サットンのラボスフェア(Labsphere(Sutton,NH))より供給されたものである。積分球は、3つの開口ポートを有していた。1つのポート(直径2.5cm)は、入力光用であり、90度をなして第2の軸に沿った1つのポート(直径2.5cm)は、ディテクターポートとして用いられ、90度で第3の軸に沿った(すなわち最初の2つの軸に直交する)第3のポート(直径5cm)は、サンプルポートとして用いられる。約38cm離間したディテクターポートにPR−650スペクトラカラリメーター(PR-650 Spectracolorimeter)(上記のものと同一)の焦点を合わせた。約99%の拡散反射率を有するラボスフェア(Labsphere)製の校正反射標準(SRT−99−050)を用いて、積分球の反射効率を計算した。標準は、ラボスフェア(Labsphere)により校正されたものであり、NIST標準(SRS−99−020−REFL−51)が基になっている。積分球の反射効率を次のように計算した:
球輝度比=1/(1−R球×R標準)
この場合の球輝度比は、参照サンプルでサンプルポートを覆ってディテクターポートで測定された輝度をサンプルでサンプルポートを覆わずにディテクターポートで測定された輝度で割り算して得られる比である。この輝度比および校正標準の反射率(R標準)がわかれば、積分球の反射効率(R球)を計算することが可能である。次に、この値を類似の式中で再び用いてサンプルの反射率(この場合、PTFEライトボックス使用)を求める:
球輝度比=1/(1−R球×Rサンプル)
ここで、球輝度比は、サンプルをサンプルポートに置いたときのディテクターにおける輝度をサンプルを用いずに測定された輝度で割り算して得られる比として求められる。R球は以上からわかるので、Rサンプルを計算することが可能である。これらの反射率を4nmの波長間隔で計算し、400〜700nmの波長範囲にわたる平均として報告した。
【0123】
テストされた各輝度向上フィルムについて、同タイプのフィルムの2片(たとえば、比較例Aの2片)を積み重ねることによってアセンブリを調製した。ボトムフィルムのプリズムがトップフィルムのプリズムに直交するように、ボトムフィルムのプリズム状マイクロ構造化表面をトップフィルムのベース層基材に接触させた。この交差するシートアセンブリの測定された利得は、以下の通りであった。
【0124】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の実例となるマイクロ構造体保有光学製品の斜視図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1.50の屈折率を有するモノカルボン酸で表面改質された無機ナノ粒子を含む重合性樹脂組成物の反応生成物が含まれることを特徴とする輝度向上フィルム。
【請求項2】
請求項1の輝度向上フィルムであって、表面処理が芳香族基を含むことを特徴とする輝度向上フィルム。
【請求項3】
請求項2の輝度向上フィルムであって、表面処理がフタレート基を含むことを特徴とする輝度向上フィルム。
【請求項4】
請求項1の輝度向上フィルムであって、表面処理が少なくとも1つのポリエーテルモノカルボン酸をさらに含むことを特徴とする輝度向上フィルム。
【請求項5】
請求項4の輝度向上フィルムであって、前記ポリエーテルモノカルボン酸の一般式が
CH−[O−(CH−X−(CH−COOHであり、
式中、Xは−O−、−S−、−C(O)O−、及び−C(O)NHから成る群から選択され、nは約1〜3の範囲であり、Xは約1〜10の範囲であり、yは約1〜4の範囲であることを特徴とする輝度向上フィルム。
【請求項6】
請求項5の輝度向上フィルムであって、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸、コハク酸モノ−[2−(2−メトキシエトキシ)−エチル]エステル、マレイン酸モノ−[2−(2−メトキシエトキシ)−エチル]エステル、グルタル酸モノ−[2−(2−メトキシ−エトキシ)−エチル]エステル、およびこれらの混合物から成る群から、前記ポリエーテルモノカルボン酸が選択されることを特徴とする輝度向上フィルム。
【請求項7】
請求項1の輝度向上フィルムであって、相溶剤がエチレン性不飽和基をさらに含むことを特徴とする輝度向上フィルム。
【請求項8】
請求項7の輝度向上フィルムであって、相溶剤が(メタ)アクリレート基を含むことを特徴とする輝度向上フィルム。
【請求項9】
請求項1の輝度向上フィルムであって、揮発性酸が前記無機ナノ粒子に吸着されており、前記輝度向上フィルムの前記揮発性酸含有量が3質量%未満であることを特徴とする輝度向上フィルム。
【請求項10】
請求項9の輝度向上フィルムであって、前記揮発性酸がアクリル酸、メタクリル酸、酢酸、またはこれらの混合物であることを特徴とする輝度向上フィルム。
【請求項11】
請求項9の輝度向上フィルムであって、約15質量%までの含有量で不揮発性酸を含むことを特徴とする輝度向上フィルム。
【請求項12】
請求項1の輝度向上フィルムであって、表面処理がシランを含まないことを特徴とする輝度向上フィルム。
【請求項13】
請求項1の輝度向上フィルムであって、無機ナノ粒子の量が40質量%〜60質量%の範囲であることを特徴とする輝度向上フィルム。
【請求項14】
請求項1の輝度向上フィルムであって、前記無機ナノ粒子がジルコニア、チタニア、およびこれらの混合物から成る群から選択されることを特徴とする輝度向上フィルム。
【請求項15】
請求項1の輝度向上フィルムであって、前記無機ナノ粒子の一次粒子のサイズが5nm〜75nm、10nm〜30nm、または5nm〜20nmの範囲であることを特徴とする輝度向上フィルム。
【請求項16】
i)少なくとも1.50の屈折率を有する、少なくとも1つのモノカルボン酸;
ii)重合性樹脂と共重合する、少なくとも200g/モルのMnを有する、少なくとも1つのモノカルボン酸;
iii)少なくとも1つのジカルボン酸;
およびi)、ii)、iii)の2つ又はそれ以上の混合物から選択される少なくとも1つの表面処理と組み合わせて、少なくとも1つの極性基含有モノカルボン酸相溶剤を用いて表面改質された無機ナノ粒子を含む重合性樹脂組成物の反応生成物を含むことを特徴とする光学物品。
【請求項17】
請求項16の輝度向上フィルムであって、i)が芳香族基を含むことを特徴とする輝度向上フィルム。
【請求項18】
請求項16の光学物品であって、任意にマイクロ構造化表面を有するフィルムであることを特徴とする光学物品。
【請求項19】
i)少なくとも1.50の屈折率を有する、少なくとも1つのモノカルボン酸;
ii)少なくとも200g/モルのMnおよびエチレン性不飽和基を有する少なくとも1つのモノカルボン酸;
iii)少なくとも1つのジカルボン酸;
およびi)、ii)、iii)の2つ又はそれ以上の混合物から選択される少なくとも1つの表面処理と組み合わせて、少なくとも1つの極性基含有モノカルボン酸相溶剤を含む表面処理と無機ナノ粒子を混合することによって、無機ナノ粒子を表面改質することを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19の方法であって、揮発性酸が前記無機ナノ粒子に吸着されており、表面改質後の前記揮発性酸の含有量が3質量%未満であることを特徴とする方法。
【請求項21】
i)少なくとも1.50の屈折率を有する、少なくとも1つのモノカルボン酸;
ii)少なくとも200g/モルのMnおよびエチレン性不飽和基を有する少なくとも1つのモノカルボン酸;ならびに
iii)少なくとも1つのジカルボン酸から選択される少なくとも1つの表面処理と組み合わせて、少なくとも1つの極性基含有モノカルボン酸を含む表面処理を備えることを特徴とする無機ナノ粒子。

【図1】
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【公表番号】特表2009−516063(P2009−516063A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541315(P2008−541315)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/044377
【国際公開番号】WO2007/059228
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】