説明

輪帯光源装置、顕微鏡

【課題】小型化と低コスト化を図った輪帯光源装置等を提供する。
【解決手段】環状の集光レンズ8と、集光レンズ8の入射面に沿って環状に配置された、線状の照明光を集光レンズ8の入射面に射出する複数の線状光源装置100と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輪帯光源装置、顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顕微鏡や画像測定機のリング照明、スチルカメラのマクロレンズ用ストロボ等、輪帯状の照明光を射出するための輪帯光源装置が知られており、斯かる輪帯光源装置として多数のLEDを同心円状に配列して備えたものが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−328094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来の輪帯光源装置は、多数のLEDを備えることで大型化するとともに、構造が複雑であり製造コストが大きくなってしまうという問題があった。
そこで本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、小型化と低コスト化を図った輪帯光源装置、顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は、
環状の集光レンズと、
前記集光レンズの入射面に沿って環状に配置された、線状の照明光を前記集光レンズの入射面に射出する複数の線状光源装置と、
を有することを特徴とする輪帯光源装置を提供する。
また本発明は、
上記輪帯光源装置を備えた顕微鏡を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、小型化と低コスト化を図った輪帯光源装置、顕微鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】(a)は本発明の実施形態に係る輪帯光源装置を備えた顕微鏡の構成を示す断面図、(b)は輪帯光源装置の構成を示す斜視図である。
【図2】(a)は第1変形例の線状光源装置の構成を示す斜視図、(b)は線状光源装置に用いられる反射光学素子の正面図、(c)は反射光学素子をX軸方向から見た側面図、(d)は線状光源装置のYZ断面図((b)のJ−J’断面図)、(e)は反射光学素子をY軸方向から見た側面図、(f)は線状光源装置のXZ断面図((b)のI−I’断面図)、(g)は反射光学素子の斜視図である。
【図3】第1変形例の線状光源装置から射出される照明光の、反射光学素子の反射面の集光位置における照度分布を示す図である。
【図4】(a)は第2変形例の線状光源装置の構成を示す斜視図、(b)は線状光源装置に用いられる反射光学素子の正面図、(c)は反射光学素子をX軸方向から見た側面図、(d)は線状光源装置のYZ断面図((b)のJ−J’断面図)、(e)は反射光学素子をY軸方向から見た側面図、(f)は線状光源装置のXZ断面図((b)のI−I’断面図)、(g)は反射光学素子の斜視図である。
【図5】第2変形例の線状光源装置から射出される照明光の、反射光学素子の反射面の集光位置における照度分布を示す図である。
【図6】(a)は第3変形例の線状光源装置の構成を示す斜視図、(b)は線状光源装置に用いられる反射光学素子の正面図、(c)は反射光学素子をX軸方向から見た側面図、(d)は線状光源装置のYZ断面図((b)のJ−J’断面図)、(e)は反射光学素子をY軸方向から見た側面図、(f)は線状光源装置のXZ断面図((b)のI−I’断面図)、(g)は反射光学素子の斜視図である。
【図7】第3変形例の線状光源装置から射出される照明光の、反射光学素子の反射面の集光位置における照度分布を示す図である。
【図8】(a)は第4変形例の線状光源装置の構成を示す斜視図、(b)は線状光源装置に用いられる反射光学素子の正面図、(c)は反射光学素子をX軸方向から見た側面図、(d)は線状光源装置のYZ断面図((b)のJ−J’断面図)、(e)は反射光学素子をY軸方向から見た側面図、(f)は線状光源装置のXZ断面図((b)のI−I’断面図)、(g)は反射光学素子の斜視図である。
【図9】第4変形例の線状光源装置から射出される照明光の、反射光学素子の反射面の集光位置における照度分布を示す図である。
【図10】(a)は第5変形例の線状光源装置における反射光学素子の正面図、(b)は線状光源装置をX軸方向から見た側面図、(c)は線状光源装置をY軸方向から見た側面図、(d)は線状光源装置のXZ断面図((a)のI−I’断面図)、(e)は線状光源装置の斜視図である。
【図11】第5変形例の線状光源装置における反射光学素子の射出面を傾斜面とした様子を示す図である。
【図12】(a)は第1変形例の線状光源装置をフライアイインテグレータと組み合わせた様子を示す斜視図、(b)はその断面図である。
【図13】フライアイインテグレータの構成を示す図である。
【図14】(a)は第1変形例の線状光源装置をフライアイインテグレータと組み合わせて使用する場合のフライアイインテグレータの入射面における角度特性を示す図、(b)は同様にフライアイインテグレータの射出面における角度特性を示す図である。
【図15】第1変形例の線状光源装置を撮像装置に適用した様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態に係る輪帯光源装置を備えた顕微鏡を添付図面に基づいて説明する。
図1(a)に示すように、本実施形態に係る輪帯光源装置1を備えた顕微鏡2は、試料3側から順に、第1対物レンズ4と、第1対物レンズ4の外周に配置されており、輪帯状の照明光を射出する輪帯光源装置1と、開口絞り5と、第2対物レンズ6と、撮像素子7とを有している。なお、試料3は、第1対物レンズ4、開口絞り5、及び第2対物レンズ6を介して撮像素子7と共役に配置されている。
輪帯光源装置1は、図1(b)に示すように第1対物レンズ4よりも大径で環状の集光レンズ8と、集光レンズ8の入射面に沿って環状に配置された8つの線状光源装置100と、集光レンズ8と各線状光源装置100との間に配置されており、集光レンズ8と略同径で環状のフライアイインテグレータ9とからなる。
【0009】
フライアイインテグレータ9は、入射面及び射出面が正六角形状の多数の要素レンズが環状に配置されることによって構成されており、各要素レンズの入射面が集光レンズ8を介して試料3と共役となるように配置されている。なお、フライアイインテグレータ9はこれに限られず、例えば入射面及び射出面が長方形状の要素レンズで構成されたものを用いることもできる。
8つの線状光源装置100は、それぞれが線状の照明光をフライアイインテグレータ9を介して集光レンズ8へ向かって射出するものであり、いずれも同じ構成をしている。
ここで、線状光源装置100の詳細な構成を説明するにあたり、当該線状光源装置100と同様に本実施形態に係る輪帯光源装置1に適用可能なその他の線状光源装置を第1変形例〜第5変形例として予め説明する。
【0010】
(第1変形例)
図2(a)に示すように第1変形例の線状光源装置10は、光源11と、光源11からの光を反射して線状に集光する反射面15aを備えた反射光学素子15とからなる。
反射光学素子15の反射面15aは、光軸AXと反射面15aとの交点を原点Oとし、原点Oにおける反射面15aの法線をZ軸、Z軸に垂直で原点Oを通る直線をX軸、Z軸及びX軸に垂直で原点Oを通る直線をY軸としたとき、XZ平面による断面形状が放物線であり、YZ平面による断面形状がZ軸に一致した長軸を有する楕円であって、次の定義式(1)〜(4)で表されるアナモルフィック非球面である(前記放物線を放物線16、前記楕円を楕円17と称する。)。なお、原点O、X軸、Y軸、及びZ軸の定義は、後述する全ての線状光源装置において同様である。
【0011】
(1) z={(x/r)+(y/r)}/[1+√{1−(1+K)(y/r)}]
(2) r=2f
(3) K=−{(f−f)/(f+f)}
(4) r=(2f)/(f+f)
ただし、
:反射面15aと光源11との距離(原点Oと光源11との距離)
:反射面15aと反射面15aの集光位置18との距離
:放物線16の曲率半径
:楕円17のコーニック定数
:楕円17の曲率半径
【0012】
上記各定義式より、反射光学素子15における反射面15aの放物線16の焦点位置と、楕円17の第1焦点位置とが一致することとなる。そして本変形例の線状光源装置10ではこの位置に光源11が配置されており、これによって反射面15aの集光位置18は楕円17の第2焦点位置に一致することとなる。斯かる構成により反射光学素子15は、光源11から発せられた光束を反射面15aで反射することで、XZ平面内では平行光束に変換し、かつYZ平面内では楕円17の第2焦点位置(集光位置18)に集光する光束に変換する、したがって光源11からの光束を狭いスペースで光量ロスすることなく効率的に線状の光束に変換することが可能となる。
【0013】
具体的には、反射光学素子15の反射面15aの外形寸法を10×10、f=10、f=20としたとき、r=20、K=0.111、r=13.333となり、図3に示すように反射面15aの集光位置18を含む平面(Z軸に垂直な平面18a)内において光束が線状に集光されていることがわかる。なお、本明細書に掲載されている長さの単位は「mm」であるが、比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるため単位はこれに限られるものではない。
【0014】
以上の構成の下、線状光源装置10において光源11から発せられた光束は、反射光学素子15の反射面15aで反射されることにより、集光位置18に効率良く線状に集光されることとなり、このようにして線状光源装置10は線状の照明光を射出することが可能となる。
なお、反射光学素子15には、ガラス表面にクロムやアルミを蒸着したもの、熱可塑性樹脂によるモールド成型品にクロムやアルミを蒸着したもの、或いは金属の板金加工や切削加工等によって反射鏡形状を形成したもの等を用いることが好ましい。また、線状光源装置10における光源11の支持は、反射光学素子15の反射面15aの原点O部分に開口を形成して支持部材を挿通し、この支持部材によって行う構成とすることが好ましい。なお、これらのことは後述する第2変形例〜第4変形例においても同様である。
【0015】
(第2変形例)
第2変形例及び後述する各変形例において、上記第1変形例と同様の構成である部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
図4(a)に示すように第2変形例の線状光源装置20は、光源11と、光源11からの光を反射して線状に集光する反射面25aを備えた反射光学素子25とからなる。
反射光学素子25の反射面25aは、XZ平面による断面形状が放物線であり、YZ平面による断面形状がZ軸に一致した短軸を有する楕円であって、次の定義式(1),(5)〜(8)で表されるアナモルフィック非球面である(前記放物線を放物線26、前記楕円を楕円27と称する。)。
【0016】
(1) z={(x/r)+(y/r)}/[1+√{1−(1+K)(y/r)}]
(5) a=√(b+d)
(6) r=2f
(7) K=(a−f)/(f)
(8) r=a/f
ただし、
:反射面25aの集光位置28と光源11の中点29(楕円227の中心)と反射面25aとの距離
:楕円27の長半径
:楕円27の短半径
:反射面25aの集光位置28と光源11の中点29と光源11との距離(Z軸と光源11との距離)
:放物線26の曲率半径
:楕円27のコーニック定数
:楕円27の曲率半径
【0017】
上記各定義式より、反射光学素子25における反射面25aの放物線26の焦点位置と、楕円27の第1焦点位置とが一致することとなる。そして本変形例の線状光源装置20ではこの位置に光源11が配置されており、これによって反射面25aの集光位置28は楕円27の第2焦点位置に一致することとなる。斯かる構成により反射光学素子25は、光源11から発せられた光束を反射面25aで反射することで、XZ平面内では平行光束に変換し、かつYZ平面内では楕円27の第2焦点位置(集光位置28)に集光する光束に変換する、したがって光源11からの光束を狭いスペースで効率的に線状の光束に変換することが可能となる。
【0018】
具体的には、反射光学素子25の反射面25aの外形寸法を10×10、f=10、d=5としたとき、r=20、K=0.25、r=12.5となり、図5に示すように反射面25aの集光位置28を含む平面28a内において光束が線状に集光されていることがわかる。また、図5に示すように集光された線状の光束には光源11の影ができてしまうことがない。これは、光源11と反射面25aの集光位置28とが原点Oから見て異なる方向にあり、反射面25aで反射された光束が光源11でケラれてしまうことがないためである。
以上の構成によって線状光源装置20は、上記第1変形例の線状光源装置10と同様の効果を奏することが可能となる。
【0019】
(第3変形例)
図6(a)に示すように第3変形例の線状光源装置30は、光源11と、光源11からの光を反射して線状に集光する反射面35aを備えた反射光学素子35とからなる。
反射光学素子35の反射面35aは、XZ平面による断面形状が放物線であり、YZ平面による断面形状が円であって、次の定義式(9)で表される曲面である(前記放物線を放物線36、前記円を円34と称する。)。
(9) z=f−√{(f−x/4f)−y
ただし、
:反射面35aと光源11との距離(円34の中心と反射面35aとの距離)
【0020】
上記各定義式より、反射光学素子35における反射面35aの放物線36の焦点位置と、円34の中心とが一致することとなる。そして本変形例の線状光源装置30ではこの位置に光源11が配置されており、これによって反射面35aの集光位置38は円34の中心に一致することとなる。斯かる構成により反射光学素子35は、光源11から発せられた光束を反射面35aで反射することで、XZ平面内では平行光束に変換し、かつYZ平面内では円34の中心(集光位置38)に集光する光束に変換する、したがって光源11からの光束を狭いスペースで効率的に線状の光束に変換することが可能となる。
【0021】
具体的には、反射光学素子35の反射面35aの外形寸法を10×10、f=10としたとき、図7に示すように反射面35aの集光位置38を含む平面38a内において光束が線状に精度良く集光されていることがわかる。なお、反射面35aが回転対称な形状であるため、反射光学素子35は製造が容易であるという利点も備えている。
以上の構成によって線状光源装置30は、上記第1変形例の線状光源装置20と同様の効果を奏することが可能となる。
【0022】
(第4変形例)
図8(a)に示すように第4変形例の線状光源装置40は、上記第1変形例における反射光学素子15をYZ平面で二分割し、そのうちの上半分(図2(a)紙面上側の半分)のみを反射光学素子45として備えており、その他の構成については第1変形例と同様である。なお、本変形例の反射光学素子45は、図8(b)に示すように正面から見て外形が正方形となるように作製されている。
【0023】
斯かる構成の線状光源装置40において、反射光学素子45の反射面45aの外形寸法を10×10、f=10、f=20としたとき、図9に示すように反射面45aの集光位置48を含む平面48a内において光束が線状に集光されていることがわかる。また、図9に示すように集光された線状の光束の中心部分に光源11の影ができてしまうことがない。これは、反射面45aで反射された光束のうち光源11によってケラれやすい光、即ち光軸AX上を進行する光を、線状の集光位置48の端部に集光させることができるためである。
【0024】
以上の構成によって線状光源装置40は、上記第1変形例の線状光源装置10と同様の効果を奏することが可能となる。
なお、本変形例においては、上述のように第1変形例の反射光学素子15をYZ平面で二分割し、そのうちの上半分を反射光学素子45として用いているが、これに限られず反射光学素子15の下半分、或いは第3変形例における反射光学素子35をYZ平面で二分割し、そのうちの上半分或いは下半分を用いることも可能である。
【0025】
(第5変形例)
図10に示すように第5変形例の線状光源装置50は、光源11と、光源11からの光を反射して線状に集光する反射面55aを備えた反射光学素子55とからなる。
本変形例における反射光学素子55は、断面形状が正方形のZ軸方向へ延在した角柱プリズム部材であって、光源11の光の波長に応じて選択された屈折率が1より大きな透明媒質(例えば、ガラスや樹脂等)によって作製されている。反射光学素子55の一方の端部には、光を内部反射するための前記反射面55aが設けられており、もう一方の端部は光を射出するための射出面55bとなっている。なお、射出面55bはZ軸に対して垂直であって、反射面55aの集光位置58を含んでいる。
【0026】
反射光学素子55の反射面55aは、上記第1変形例の反射光学素子15の反射面15aと同じ形状の反射面(XZ平面による断面形状が放物線16で、YZ平面による断面形状がZ軸に一致した長軸を有する楕円17となるアナモルフィック非球面)であり、その中心部には図10(d)に示すように半球形状の凹み部51が設けられている。
光源11は、反射光学素子55の凹み部51内に反射光学素子55と略同じ屈折率を持つ媒質によって封止或いは接着されており、これによって光源11は反射面55aの楕円17の第1焦点位置であって放物線16の焦点位置に配置されている。
なお、光源11には半導体レーザや発光ダイオード等の固体光源を採用することが好ましく、これによって光源11及び反射光学素子55、ひいては線状光源装置50の小型化を図ることが可能となる。なお、このことは上記各変形例においても同様である。
【0027】
以上の構成により、線状光源装置50において光源11より発せられた光束は、反射光学素子55に入射し、反射面55aで内部反射された後、射出面55b上の集光位置58に線状に集光されることとなる。このようにして線状光源装置50は、反射光学素子55の射出面55bより線状の照明光を射出することが可能となる。
なお、上述のように本変形例では、反射光学素子55の反射面55aを上記第1変形例の反射光学素子15の反射面15aと同じ形状にしているが、これに限られず第2変形例〜第4変形例の反射光学素子の反射面と同じ形状にすることも勿論可能である。
【0028】
また、本変形例の反射光学素子55は、上記構成により製造が容易であり低コスト化を図ることができるという利点を備えているが、これに限られず、射出面55bに拡散面や回折格子等を設けることで光学的機能を付加することが可能であるという利点も備えている。例えば、図11に示すように射出面55bをZ軸に対して傾斜した傾斜面として偏角プリズムの効果を付加することで、射出面55bより射出される線状の照明光の射出方向を任意に設定することが可能となる。
【0029】
次に、本実施形態に係る輪帯光源装置1に備えられた線状光源装置100について説明する。
図1に示すように線状光源装置100は、上記第5変形例の線状光源装置50と同様の構成であって、光源11と、光源11からの光を反射して線状に集光する反射面55aを備えた反射光学素子55とからなる。
詳細には、反射光学素子65は、第5変形例の反射光学素子55を射出面55bへ向かって先端を細く(光軸に対して放射方向における厚みを小さく)しており、これによって反射面55aで反射された光束の進行に寄与しないプリズム部分を排除し小型化を図っている。また、射出面55bを光軸に対して傾斜した傾斜面としており、これによって射出面55bから射出される照明光の射出方向を偏向し、フライアイインテグレータ9へ適切に導くことが可能となる。そして、斯かる構成の反射光学素子55を第1対物レンズ4の光軸に対して傾けて配置したことでさらに輪帯光源装置1全体の小型化を図り、これによって顕微鏡2の使用者が試料3を輪帯光源装置1の側方から目視する際に輪帯光源装置1が邪魔になることを解消できるという効果を奏している。
【0030】
上記構成の本実施形態に係る輪帯光源装置1を備えた顕微鏡2において、線状光源装置100の光源11から発せられた光は、反射光学素子55に入射し反射面55aで内部反射された後、射出面55b上の集光位置に線状に集光され、当該射出面55bから線状の照明光が射出される。ここで、上述のように線状光源装置100は第1対物レンズ4を取り囲むように計8個環状に配置されているため、それぞれの線状光源装置100から射出された線状の照明光によって略輪帯状の照明光が形成されることとなる。
このようにして形成された略輪帯状の照明光は、フライアイインテグレータ9の各要素レンズに入射し、各要素レンズによって集光されてそれぞれの射出面(試料3側)に光源像(二次光源)を形成した後、均一な放射角度特性をもって射出される。このようにして各要素レンズから射出された照明光は、それぞれ集光レンズ8で集光されて試料3上に重畳的に照射されることとなり、照度ムラのないリング照明を実現することができる。
このようにしてリング照明された試料3からの光は、第1対物レンズ4、開口絞り5、及び第2対物レンズ6を順に介して撮像素子7の撮像面上に結像される。これにより撮像素子7では試料3の像が撮像され、顕微鏡2に別途設けられた不図示のモニタに表示されることとなる。以上のようにして使用者は、本顕微鏡2によって試料3をリング照明観察することが可能となる。
【0031】
以上、本実施形態によれば、上述のように環状に配置した8つの線状光源装置100を用いて輪帯光源装置1を構成することにより、多数のLEDを同心円状に配列してなる従来の輪帯光源装置に比して光源の数を大幅に削減することができ、小型化(特に第1対物レンズ4の径方向における小型化)と低コスト化とを実現することができる。また、本実施形態に係る輪帯光源装置1は、フライアイインテグレータ9によって多数の擬似光源を形成することができるため、照度ムラのないリング照明を実現することができる。
【0032】
なお、上記第1変形例〜第5変形例の線状光源装置10,20,30,40,50や線状光源装置100は、本実施形態に係る輪帯光源装置1に適用可能なだけでなく、次に述べるようにフライアイインテグレータと組み合わせて使用したり、撮像装置に適用することも可能である。
【0033】
図12に示すように、上記第1変形例の線状光源装置10をフライアイインテグレータ60と組み合わせて使用する場合について説明する。
フライアイインテグレータ60は、反射光学素子15の反射面15aの集光位置18に配置されており、図13に示すように四角柱形状の要素レンズを5×21個(計105個)積み重ねてなる。各要素レンズは入射面及び射出面が正方形状であり、フライアイインテグレータ60の外形は光源11側から見てX軸方向へ延びた長方形をなしている。なお、フライアイインテグレータ60は、四角柱形状のガラスレンズどうしの接合やプラスチックモールド等の加工によって作製されることが好ましい。
【0034】
具体的には、各要素レンズはポリカーボネート(屈折率n=1.585)からなり、焦点距離を0.833、入射面及び射出面の寸法を0.5×0.5とする。また、各要素レンズの入射面及び射出面は、互いの焦点位置に配置されており、厚さが1.32、それぞれの曲率半径を0.4875とする。なお、上記第1変形例と同様、反射光学素子15の反射面15aの外形寸法は10×10、f=10、f=20、r=20、K=0.111、r=13.333である。また光源11は、外形寸法1×1の正方形状の面発光光源とする。
【0035】
以上の構成により、線状光源装置10の光源11から発せられた光束は、反射光学素子15の反射面15aで反射され集光位置18に効率良く線状に集光される。これにより線状の照明光がフライアイインテグレータ60に照射され、各要素レンズに照明光が入射することとなる。各要素レンズに入射したそれぞれの光は、各要素レンズによって集光されて各々の射出面に光源像(二次光源)を形成した後、均一な放射角度特性をもって射出されることとなる。
【0036】
なお、図14(a)より、反射光学素子15の反射面15aで反射された光束のうち、反射面15aの楕円17部分で反射された光束(点線)は広い角度特性を有しており、放物線16部分で反射された光束(実線)は狭い角度特性を有していることがわかる。一方、図14(b)より、フライアイインテグレータ60を経たこれらの光束が、ともに均一な広い角度特性を有していることがわかる。したがってこれらより、線状光源装置10から射出された線状の照明光が、フライアイインテグレータ60によって均一な放射角度特性を有し、略正方形状の照明領域を重畳的に照明する照明光に変換されていることがわかる。
【0037】
また、フライアイインテグレータ60は、入射面及び射出面が正方形状の要素レンズで構成されたものに限られず、入射面及び射出面が正六角形状の要素レンズで構成されたものを用いることもでき、特に顕微鏡等の円形の照明領域が必要とされる装置に好適である。また、入射面と射出面の形状が異なる要素レンズで構成されたモザイク型のフライアイレンズを用いることもできる。この場合、射出面の形状は図14(a)に示される角度特性を考慮し、X軸方向に短手、Y軸方向に長手を有する長方形状とすることが好ましい。
【0038】
また図15に示すように、上記第1変形例の線状光源装置10を撮像装置70に適用する場合について説明する。
撮像装置70は、試料3を載置したステージ71側から上方へ向かって順に配置された結像レンズ72と撮像素子73とを有し、ステージ71側から斜め上方へ向かって順に配置された集光レンズ74とスリット75と線状光源装置10とを有してなる。
スリット75は、図15紙面の垂直方向に延在する開口を有しており、線状光源装置10の集光位置18に配置されている。撮像素子73は、図15紙面の垂直方向に延在するように配置された一次元撮像素子からなる。なお、スリット75は集光レンズ74を介して試料3と共役に配置されており、試料3は結像レンズ72を介して撮像素子73と共役に配置されている。
【0039】
斯かる構成の下、線状光源装置10から射出された線状の照明光(図15紙面の垂直方向に延在する線状の照明光)はスリット75に照射される。スリット75を通過した照明光は集光レンズ74で集光されて、ステージ71上の試料3にスリット75の像が投影されることとなる。このようにして照明された試料3から発せられた光は、結像レンズ72を介して撮像素子73の撮像面に結像される。ここで、ステージ71を駆動して試料3を前述のスリット75の像と直交する方向(図15紙面の左右方向)へ移動させることにより、試料3の二次元画像を取得することが可能となる。
【0040】
なお、以上に述べた撮像装置70は試料3を斜め上方から反射照明するものであるが、これに限られず線状光源装置10を用いて同軸落射照明や透過照明等を行う撮像装置を構成することもできる。また撮像装置70には、第1変形例の線状光源装置10に限られず、その他の変形例の線状光源装置を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 輪帯光源装置
2 顕微鏡
8 集光レンズ
9 フライアイインテグレータ
10,20,30,40,50,100 線状光源装置
11 光源
15,25,35,45,55 反射光学素子
15a,25a,35a,45a,55a 反射面
16,26,36 放物線
17,27 楕円
34 円
18,28,38,48,58 集光位置
AX 光軸
O 原点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の集光レンズと、
前記集光レンズの入射面に沿って環状に配置された、線状の照明光を前記集光レンズの入射面に射出する複数の線状光源装置と、
を有することを特徴とする輪帯光源装置。
【請求項2】
前記集光レンズと前記複数の線状光源装置との間に、前記集光レンズと略同径で環状に配置された複数のレンズ要素からなるオプティカルインテグレータを有することを特徴とする請求項1に記載の輪帯光源装置。
【請求項3】
前記線状光源装置は、光源と、前記光源からの光を反射して線状に集光する反射面を備えた反射光学素子とを含み、
前記反射光学素子の前記反射面は、光軸と前記反射面との交点を原点とし、前記原点における前記反射面の法線をZ軸、前記Z軸に垂直で前記原点を通る直線をX軸、前記Z軸及び前記X軸に垂直で前記原点を通る直線をY軸とするとき、XZ平面による断面形状が放物線であり、YZ平面による断面形状が楕円又は円であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の輪帯光源装置。
【請求項4】
前記線状光源装置における前記反射光学素子の前記反射面は、YZ平面による断面形状が前記Z軸に一致した長軸を有する楕円の少なくとも一部の形状を有し、前記楕円は以下の式で定義され、
前記光源は、前記楕円の焦点位置に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の輪帯光源装置。
z={(x/r)+(y/r)}/[1+√{1−(1+K)(y/r)}]
=2f
=−{(f−f)/(f+f)}
=(2f)/(f+f)
ただし、
:前記反射面と前記光源との距離
:前記反射面と前記反射面の集光位置との距離
:前記反射面の前記放物線の曲率半径
:前記反射面の前記楕円のコーニック定数
:前記反射面の前記楕円の曲率半径
【請求項5】
前記線状光源装置における前記反射光学素子の前記反射面は、YZ平面による断面形状が前記Z軸に一致した短軸を有する楕円の少なくとも一部の形状を有し、前記楕円は以下の式で定義され、
前記光源は、前記楕円の焦点位置に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の輪帯光源装置。
z={(x/r)+(y/r)}/[1+√{1−(1+K)(y/r)}]
a=√(b+d)
=2f
=(a−f)/(f)
=a/f
ただし、
:前記反射面の集光位置と前記光源の中点と前記反射面との距離
:前記反射面の前記楕円の長半径
:前記反射面の前記楕円の短半径
:前記反射面の集光位置と前記光源の中点と前記光源との距離
:前記反射面の前記放物線の曲率半径
:前記反射面の前記楕円のコーニック定数
:前記反射面の前記楕円の曲率半径
【請求項6】
前記線状光源装置における前記反射光学素子の前記反射面は、YZ平面による断面形状が円の少なくとも一部の形状を有し、前記円は以下の式で定義され、
前記光源は、前記円の中心に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の輪帯光源装置。
z=f−√{(f−x/4f)−y
ただし、
:前記反射面と前記光源との距離
【請求項7】
前記線状光源装置における前記反射光学素子は、YZ平面で分割された前記反射面の一方のみを備えていることを特徴とする請求項4又は請求項6に記載の輪帯光源装置。
【請求項8】
前記線状光源装置における前記反射光学素子は、屈折率が1より大きな媒質で構成されたプリズム部材からなり、前記光源からの光を前記反射面で内部反射して射出面上に線状に集光することを特徴とする請求項3から請求項7のいずれか一項に記載の輪帯光源装置。
【請求項9】
前記線状光源装置における前記反射光学素子の前記射出面が、前記Z軸に対して傾斜していることを特徴とする請求項8に記載の輪帯光源装置。
【請求項10】
前記線状光源装置における前記反射光学素子は、前記Y軸方向における厚みが前記射出面へ向かって小さく、
前記線状光源装置は、前記集光レンズの光軸に対して傾けて配置されていることを特徴とする請求項9に記載の輪帯光源装置。
【請求項11】
前記線状光源装置における前記光源が固体光源であることを特徴とする請求項3から請求項10のいずれか一項に記載の輪帯光源装置。
【請求項12】
前記固体光源が発光ダイオードであることを特徴とする請求項11に記載の輪帯光源装置。
【請求項13】
前記固体光源が半導体レーザであることを特徴とする請求項11に記載の輪帯光源装置。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の輪帯光源装置を備えたことを特徴とする顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図10】
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【図11】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−250182(P2010−250182A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101274(P2009−101274)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】