説明

輪郭補正装置及び画像表示装置

【課題】画像における輪郭の補正による画質の低下を抑える。
【解決手段】輪郭補正装置として、輝度信号に従って、輪郭強調を行うための補正信号を生成する補正信号生成部と、前記輝度信号に所定の遅延を与えて出力する遅延部と、前記遅延部の出力から前記補正信号生成部で生成された補正信号を加算又は減算し、得られた補正後の輝度信号を出力する演算器とを有する。前記補正信号生成部は、前記輝度信号に基づいて生成された信号に、入力指示値に従ってオフセットを与えることによって、前記補正信号の最大値及び最小値のタイミングを同様に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像における輪郭を補正する輪郭補正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像における輪郭を強調する技術が知られている。例えば、特許文献1には、輝度信号の2次微分信号を元の輝度信号に加算する画質補正回路が記載されている。輝度信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジが急峻になるので、輪郭が強調される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−174376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の回路によると、エッジが急峻になることによって、輝度信号のレベルが高い部分が広がり、エッジで挟まれた明るい線の幅が広くなる。明るい線は実際より太めに見える性質がある。このため、このような処理によると、線がより太く見えるようになってしまう。また、エッジにおいて輝度信号のレベルが変化する部分が狭くなり、画像の立体感が弱くなってしまう。
【0005】
本発明は、画像における輪郭の補正による画質の低下を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態による輪郭補正装置は、輝度信号に従って、輪郭強調を行うための補正信号を生成する補正信号生成部と、前記輝度信号に所定の遅延を与えて出力する遅延部と、前記遅延部の出力から前記補正信号生成部で生成された補正信号を加算又は減算し、得られた補正後の輝度信号を出力する演算器とを有する。前記補正信号生成部は、前記輝度信号に基づいて生成された信号に、入力指示値に従ってオフセットを与えることによって、前記補正信号の最大値及び最小値のタイミングを同様に変更する。
【0007】
本発明の実施形態による他の輪郭補正装置は、輝度信号に従って、輪郭強調を行うための補正信号を生成する補正信号生成部と、前記輝度信号に所定の遅延を与えて出力する遅延部と、前記遅延部の出力から前記補正信号生成部で生成された補正信号を加算又は減算し、得られた補正後の輝度信号を出力する演算器とを有する。前記補正信号生成部は、前記補正信号の最大値及び最小値の絶対値を、前記輝度信号の立ち上がり又は立ち下がりエッジにおける振幅に応じた値以下に制限する。
【0008】
本発明の実施形態による画像表示装置は、前記輪郭補正装置と、前記補正後の輝度信号に従って画像を表示する表示器とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、輪郭を強調しながら、明るい線の幅が広くならないようにすることや、画像の立体感を損なわないようにすることができる。したがって、画像における輪郭の補正による画質の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る画像表示装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】図1の輪郭補正装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】図2の装置における信号波形の例を示すグラフである。
【図4】図2の装置によるトランジェント補正の前後の信号波形の例を示す図である。
【図5】入力輝度信号が立ち上がる場合の図2の装置における信号波形の例を示すグラフである。
【図6】入力輝度信号SAが立ち下がる場合の図2の装置における信号波形の例を示すグラフである。
【図7】図2の装置によるトランジェント補正の前後の信号波形の他の例を示す図である。
【図8】(a)は、図2の装置における信号波形の例を示すグラフである。(b)は、図2の振幅制限部で用いられる信号RGの生成について説明するグラフである。
【図9】図9は、輝度信号SAのエッジにおける振幅EAと図1の適応ゲイン算出部が出力するゲインGAとの間の関係の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図面において同じ参照番号で示された構成要素は、互いに対応しており、同一の又は類似の構成要素である。画像には、動画及び静止画を含むものとする。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る画像表示装置の構成例を示すブロック図である。図1の画像表示装置100は、輪郭補正装置10と、表示器22と、レジスタ24とを有している。輪郭補正装置10は、補正信号生成部12と、適応ゲイン算出部14と、遅延部16と、演算器としての減算器18とを有している。輪郭補正装置10は、入力された輝度信号SAに対して輪郭(エッジ)を強調する処理を行う。この処理は、トランジェント補正とも呼ばれる。
【0013】
図2は、図1の輪郭補正装置10の構成例を示すブロック図である。補正信号生成部12は、遅延部32,42,51,52と、減算器34,54と、絶対値算出器36,56と、セレクタ48,58と、オフセット部55と、乗算器62と、符号付加部64と、振幅制限部66とを有している。補正信号生成部12は、輪郭強調を行うための補正信号を生成する。図3は、図2の装置における信号波形の例を示すグラフである。
【0014】
図1〜図3を参照して、輪郭補正装置10について説明する。まず、オフセット部55及び振幅制限部66が動作をしない場合について説明する。遅延部32は、入力輝度信号SAをD=4Tだけ遅延させ、得られた信号SBを出力する。ここで、Tはドットクロックの周期である。輝度信号SAは、傾きa=Y/8Tで値0から値Yまで上昇し、その後一定値となる。輝度信号SAは、受信された放送波に選局及び復調等の処理を行って得られた信号であってもよいし、画像表示装置100の外部の機器で生成された信号であってもよい。輝度信号SAは、画像を水平方向にスキャンする信号であってもよいし、画像を垂直方向にスキャンする信号であってもよい。
【0015】
減算器34は、輝度信号SAから信号SBを減じ、得られた信号SCを出力する。絶対値算出器36は、信号SCの絶対値を求め、得られた信号を出力する。遅延部42は、絶対値算出器36で求められた信号をDだけ遅延させ、得られた信号SDを出力する。セレクタ48は、絶対値算出器36で求められた信号と信号SDとのうち、小さい方を選択して信号SEとして出力する。
【0016】
遅延部51は、信号SEをDだけ遅延させ、得られた信号SFを出力する。遅延部52は、信号SEをD/2だけ遅延させ、得られた信号SHを出力する。減算器54は、信号SEから信号SFを減じ、得られた信号SGを出力する。オフセット部55は、信号SGを信号SG2としてそのまま出力する。絶対値算出器56は、信号SG2の絶対値を求め、得られた信号を出力する。セレクタ58は、絶対値算出器56で求められた信号と信号SHとのうち、小さい方を選択して信号SIとして出力する。
【0017】
乗算器62は、信号SIと適応ゲイン算出部14から出力されたゲインGAとを乗算し、得られた積を出力する。ここでは、ゲインGAは1であるとする。適応ゲイン算出部14については後述する。符号付加部64は、乗算器62で求められた積の符号が信号SG2の符号と同じになるように、乗算器62で求められた積に符号を付加し、その結果を補正信号SJとして出力する。振幅制限部66は、補正信号SJを補正信号SJ2としてそのまま出力する。補正信号SJは、傾きjで(2/3)Dの期間上昇し、傾き−2jで(2/3)Dの期間下降し、傾きjで(2/3)Dの期間上昇し、その後一定値となる。
【0018】
遅延部16は、輝度信号SAを(3/2)Dだけ遅延させ、得られた信号SKを出力する。減算器18は、信号SKから補正信号SJ2を減じ、得られた補正後の輝度信号SLを表示器22に出力する。表示器22は、例えばフラットパネルディスプレイであって、信号SLに従って画像を表示する。ゲインGA=1の場合には、図3の傾きj=aとなるので、信号SKと比べて、信号SLの立ち上がりは(2/3)D遅く開始され、(2/3)D早く終了する。図3の場合には、立ち上がりエッジの期間が(2/3)Dに短縮され、エッジが強調される。
【0019】
なお、減算器18に代えて加算器を用いてもよく、この場合には、補正信号生成部12は、図3の補正信号SJ2とは符号が反対の信号を求めるようにしておく。
【0020】
図4は、図2の装置によるトランジェント補正の前後の信号波形の例を示す図である。以上のようなトランジェント補正処理により、補正後の輝度信号SLの波形が波形SLAのようになる。入力輝度信号SAと比べるとエッジが急峻になるので、画像内の輪郭がくっきり表示されるようになる。補正後の輝度信号SLにプリシュートやオーバーシュートが生じないので、輪郭が強調され過ぎることもない。
【0021】
しかし、波形SLAのレベルが高い部分が、輝度信号SAの波形に比べて長くなる。つまり、このような明るい(輝度が高い)線の幅が広くなってしまう。そこで、図2のオフセット部55が、入力輝度信号SAに基づいて生成された信号SGに対して、入力指示値RVに従ってオフセットを与えることによって、補正信号SJの最大値及び最小値のタイミングを同様に変更してもよい。このようなオフセットを付加する処理について説明する。
【0022】
図5は、入力輝度信号SAが立ち上がる場合の図2の装置における信号波形の例を示すグラフである。オフセット部55は、信号SGに対して正のオフセットを付加し、オフセット付加後の信号を信号SG2として出力する。ここでは、信号SG2の波形は図5のM1で示されている。すると、補正信号SJの最大値及び最小値のタイミングが、同じだけ遅くなる。このとき、最大値及び最小値が同じだけ大きくなる。この結果、補正後の信号SLの立ち上がりが開始する時刻と立ち上がりが終了する時刻とが、同じだけ遅くなる。
【0023】
図6は、入力輝度信号SAが立ち下がる場合の図2の装置における信号波形の例を示すグラフである。オフセット部55は、信号SGに対して負のオフセットを付加し、オフセット付加後の信号を信号SG2として出力する。すると、補正信号SJの最大値及び最小値のタイミングが、同じだけ早くなる。このとき、最大値及び最小値が同じだけ小さくなる。この結果、補正後の信号SLの立ち下がりが開始する時刻と立ち下がりが終了する時刻とが、同じだけ早くなる。
【0024】
このようにオフセット部55が信号SGに対してオフセットを付加すると、補正後の信号SLの波形は、例えば図4の波形SLBのようになる。波形SLBのレベルが高い部分が、輝度信号SAの波形と同じになっている。つまり、輪郭を強調しながら、このような明るい線の幅が広くならないようにすることができる。
【0025】
オフセット部55は、信号SGに与えるオフセットの大きさを入力指示値RVに応じて変えるようにしてもよい。オフセットの大きさに応じて、明るい線の幅を変えることができる。図5の波形MXは、オフセットが最大であるときの信号SG2の例を示している。レジスタ24が、入力指示値RVを格納してオフセット部55に出力するようにしてもよい。
【0026】
図7は、図2の装置によるトランジェント補正の前後の信号波形の他の例を示す図である。前述のように、オフセット部55が信号SGに対してオフセットを付加しない場合には、補正後の輝度信号SLの波形が波形SLAのようになる。
【0027】
入力輝度信号SAが上昇する期間に対応する期間TA,TBにおいて、波形SLAの値は変化しない。言い換えると、期間TA,TBにおいて、階調が変化していない。このため、画像の立体感が弱くなってしまう。そこで、図2の振幅制限部66が、補正信号SJの最大値及び最小値の絶対値を、入力輝度信号SAの立ち上がり又は立ち下がりエッジにおける振幅に応じた値以下に制限してもよい。このような補正信号SJの絶対値を制限する処理について説明する。
【0028】
図8(a)は、図2の装置における信号波形の例を示すグラフである。図8(b)は、図2の振幅制限部66で用いられる信号RGの生成について説明するグラフである。振幅制限部66は、信号SB〜SGと同様に、信号RB〜RGを生成する。但し、信号に与える遅延の大きさは、信号SB〜SGを生成する場合の1/2とする。信号RGの最大値はY/4となる。振幅制限部66は、信号RGを生成後、信号SJの絶対値を信号RGの最大値以下となるように制限し、制限された信号SJ2を出力する。この結果、補正後の輝度信号SLとして、図7の波形SLLを有する信号が得られる。この信号は、期間TA,TBにおいても階調が変化している。したがって、輪郭を強調しながら、画像の立体感を損なわないようにすることができる。
【0029】
振幅制限部66は、信号RGの最大値を入力指示値RVに応じて変えるようにしてもよい。レジスタ24が、入力指示値RVを格納して振幅制限部66に出力するようにしてもよい。
【0030】
オフセット部55が信号SGに対してオフセットを付加しない場合について説明したが、オフセット部55が信号SGに対してオフセットを付加し、かつ、振幅制限部66が信号SJの絶対値を信号RGの最大値以下となるように制限してもよい。
【0031】
次に、適応ゲイン算出部14について説明する。図9は、輝度信号SAのエッジにおける振幅EAと図1の適応ゲイン算出部14が出力するゲインGAとの間の関係の例を示すグラフである。
【0032】
適応ゲイン算出部14は、輝度信号SAのエッジにおける振幅EAに従ってゲインGAを求め、乗算器62に出力する。基本的にはゲインLIMC=1であり、この場合、振幅EAが大きいときにはゲインGA=1となる。ゲインGA=1の場合には、上述のように、輪郭補正装置10は、プリシュートやオーバーシュートが生じないようにしながら、輪郭の強調を行うことができる。振幅EAが中程度であるときには、ゲインGA=2となる。この場合には、輪郭補正装置10はプリシュートやオーバーシュートを生じさせ、輪郭を大きく強調することができる。振幅EAがCR以下であるときには、ゲインGA=0となる。この場合には、輪郭補正装置10は輪郭の強調を行わない。
【0033】
適応ゲイン算出部14は、入力指示値RVに従って図9における値CR,LIMA,LIMB,LIMC、及び傾きIGA,IGBを変更するようにしてもよい。レジスタ24が入力指示値RVを格納して適応ゲイン算出部14に出力するようにしてもよい。
【0034】
以上の説明においては、本発明をその例示的実施形態を参照して説明した。しかし、添付の特許請求の範囲に示された本発明のより広い精神及び範囲から離れることなく、種々の修正及び変更を行い得ることは明白であろう。したがって、本明細書及び図面は、限定的な意味ではなく、例示的な意味において考慮されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上説明したように、本発明は、輪郭補正装置及び画像表示装置等について有用である。
【符号の説明】
【0036】
10 輪郭補正装置
12 補正信号生成部
16 遅延部
18 減算器(演算器)
22 表示器
24 レジスタ
100 画像表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輝度信号に従って、輪郭強調を行うための補正信号を生成する補正信号生成部と、
前記輝度信号に所定の遅延を与えて出力する遅延部と、
前記遅延部の出力から前記補正信号生成部で生成された補正信号を加算又は減算し、得られた補正後の輝度信号を出力する演算器とを備え、
前記補正信号生成部は、前記輝度信号に基づいて生成された信号に、入力指示値に従ってオフセットを与えることによって、前記補正信号の最大値及び最小値のタイミングを同様に変更する
輪郭補正装置。
【請求項2】
請求項1に記載の輪郭補正装置において、
前記入力指示値を格納して前記補正信号生成部に出力するレジスタを更に備える
輪郭補正装置。
【請求項3】
輝度信号に従って、輪郭強調を行うための補正信号を生成する補正信号生成部と、
前記輝度信号に所定の遅延を与えて出力する遅延部と、
前記遅延部の出力から前記補正信号生成部で生成された補正信号を加算又は減算し、得られた補正後の輝度信号を出力する演算器とを備え、
前記補正信号生成部は、前記補正信号の最大値及び最小値の絶対値を、前記輝度信号の立ち上がり又は立ち下がりエッジにおける振幅に応じた値以下に制限する
輪郭補正装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の輪郭補正装置と、
前記補正後の輝度信号に従って画像を表示する表示器とを備える
画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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