説明

輸送管の開口部シール構造

【課題】 開口部を介して輸送管路内に索条体を挿入した状態で、開口部からの流体の漏出を簡単な構造で確実に防ぐことができる輸送管路の開口部シール構造を提供する。
【解決手段】 シール構造1を構成するシール体5は、軸線に沿って貫通し、ホース4が弾発的に狭持される状態で挿通される挿通孔8が形成されるので、ホース4を狭持した状態でガス管2の開口部3を塞ぐことができる。これによってホース4を開口部3を介してガス管2の外方から内方に挿通している状態であっても、シール構造1によって開口部3を塞いで、輸送されるガスが漏出するのを防止することができる。これによって作業者は、ホース4を用いてガス管2内の作業を行うことができ、かつ流体の漏出を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を輸送する輸送管路に形成される開口部をシールする輸送管路の開口部シール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス管切断工事を行う場合、事前に工区のガス管を切断してよいか否かを判断する必要がある。このような判断をするためには、先ず、予めガス管に形成されている孔から風船状の遮断工具をガス管内に挿入して、遮断工具をガス管内で膨らませて、ガスを一時的に遮断する。次に、挿入した遮断工具の両側におけるガスの供給圧力を計測し、必要な値を保つことができるか否かを確認する。遮断工具によって一時的にガスを遮断している間に、ガスが供給される各顧客によるガスの使用量によって、供給圧力が低下するようであれば、ガス管を切断する時に、バイパス管を設置する必要がある。供給圧力が低下しないようであれば、バイパス管を設置せずに遮断工具を用いてガスを遮断して、ガス管を切断することができる。
【0003】
従来の技術は、特許文献1に記載されている。特許文献1では、ガス管切断工事に先立て行われる前述のガスの供給圧力を計測するため、袋を用いる方法が開示されている。ガス管に取付ける袋であって、上部に腕挿入用の穴が形成され、下部の管密着面に穴が形成された袋を、ガス管に取付ける。ガス管には、予め孔が形成されており、この孔はプラグで封止されている。作業者は、腕挿入用の穴から腕を差し込んで、ガスが漏出しないようにプラグをはずして遮断工具を差込む。作業者は、差し込んだ遮断工具に袋の外から空気を送り込こんで膨らませて、ガスを遮断する。
【0004】
【特許文献1】特開2000−18479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように遮断工具は、袋の外から空気を送り込こんで風船を膨らませて遮断する必要があり、また供給圧力が低下すれば直ちに遮断工具を閉じないといけないので、腕挿入用の穴またはそれと別に袋に設けたホース用の穴から、空気を送り込みまたは吸引するホースを常時出しておかなければならない。
【0006】
袋はガス管からのガスの圧力がかかって膨らむので、腕挿入用の穴またはホース用の穴からガスが漏出しやすい。また作業者が遮断工具を挿入すべく手またはホースを袋に対して動かすと、腕と腕挿入用の穴との接触部分またはホースとホース用の穴との接触部分からガスが漏出する恐れがある。ガス管の一時的な遮断は、供給圧力が低下するか否かを確認するのに数分間必要であり、ガスが漏出している状態で圧力確認を行い続けると、袋からのガスの漏出はかなりの量となる。したがって作業者は、ガスの漏出を防ぐために細心の注意を払って作業を行う必要がある。
【0007】
したがって本発明の目的は、開口部を介して輸送管路内に索条体を挿入した状態で、開口部からの流体の漏出を簡単な構造で確実に防ぐことができる輸送管路の開口部シール構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、流体を輸送する輸送管路に形成される開口部に嵌合されて開口部を塞ぐシール体であり、軸線に沿って貫通し、索条体が弾発的に挟持される状態で挿通される挿通孔が形成されているシール体を含むことを特徴とする輸送管路の開口部シール構造である。
【0009】
本発明に従えば、シール体は、軸線に沿って貫通し、索条体が弾発的に狭持される状態で挿通される挿通孔が形成されるので、索条体を狭持した状態で輸送管路の開口部を塞ぐことができる。これによって索条体を開口部を介して輸送管路の外方から内方に挿通している状態であっても、開口部シール構造によって開口部を塞いで、輸送される流体が漏出するのを防止することができる。これによって作業者は、索条体を用いて輸送管路内の作業を行うことができ、かつ流体の漏出を防ぐことができる。
【0010】
また本発明は、シール体は、周方向1カ所において周方向に分断されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に従えば、シール体は、周方向1カ所において周方向に分断されているので、分断されている部分から索条体を挿通孔に配置することができる。また周方向に分断されているので、シール体に索条体を挿通している状態で、シール体から突出している索条体を分断されている方向に曲げても、シール体が大きく変形することを防ぐことができる。これによって索条体を曲げる必要があっても、密着性を維持することができる。
【0012】
さらに本発明は、シール体は、軸線方向一方に向かうにつれて外径が小さくなるようにテーパ状に形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明に従えば、シール体は、軸線方向一方に向かうにつれて外径が小さくなるようにテーパ状に形成されている。したがってシール体を、開口部に嵌合する場合、開口部に対して軸線方向一方に変位させることによって、軸線方向一端部が容易に開口部に挿入することができる。さらにシール体を開口部に対して軸線方向一方へ変位させることによって、開口部に対してシール体を弾発的に狭持させることができる。これによって開口部を確実に塞ぐことができる。
【0014】
さらに本発明は、シール体は、複数の独立気泡を有する発泡材料から成ることを特徴とする。
【0015】
本発明に従えば、シール体は、複数の独立気泡を有する発泡材料から成るので、シール体が部分的に欠損した場合であっても、シール体の内部を通じて、輸送管路の流体が漏出することを防ぐことができる。
【0016】
さらに本発明は、輸送管路の開口部に密に装着され、シール体が弾発的に嵌合される筒体を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明に従えば、輸送管路の開口部シール構造は、輸送管路の開口部に密に装着され、シール体が弾発的に嵌合される筒体を含む。筒体は、開口部に密に装着されるので、筒体と開口部との装着部分から流体が漏出することを防ぐことができる。またシール体が筒体に弾発的に嵌合することによって、シール体と筒体との間から流体が漏出することを防ぐことができる。このような筒体を用いることによって、筒体の軸線方向の寸法にわたってシール体を弾発的に嵌合させることができるので、流体が漏出することを防ぐ効果をさらに向上することができる。
【0018】
さらに本発明は、筒体に嵌合されるシール体が筒体から脱出することを防止する蓋体を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明に従えば、輸送管路の開口部シール構造は、筒体に嵌合されるシール体が筒体から脱出することを防止する蓋体を含む。これによって輸送管路内の流体からシール体に与えられる圧力または索条体をシール体に対して変位させることによって、シール体が筒体から脱出することを確実に防ぐことができる。また作業者が作業中に不所望にシール体に接触しても、シール体が筒体から脱出することを確実に防ぐことができる。また蓋体によってシール体を筒体の内部に押し込むように装着することによって、シール体と筒体との密着性が向上し、流体が漏出することを防ぐことができる。
【0020】
さらに本発明は、前記輸送管路の開口部シール構造を用い、
輸送管路を中途部で遮断するための遮断装置を、索条体を介して駆動して輸送管路を遮断する遮断方法である。
【0021】
本発明に従えば、前述の輸送管路の開口部シール構造を用い、輸送管路を中途部で遮断するための遮断装置を、索条体を介して駆動して輸送管路を遮断する。前述の輸送管路の開口部シール構造を用いることによって、索条体を用いて遮断装置を駆動することができ、輸送管路から流体が漏出することを防ぐことができる。したがって作業者は、前述の輸送管路の開口部シール構造のような簡単なシール構造を用いて、輸送管路を中途部で遮断することができ、作業性を向上して、流体が漏出することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、作業者は、索条体を用いて輸送管路内の作業を行うことができ、かつ流体の漏出を防ぐことができる。
【0023】
また本発明によれば、シール体から突出している索条体を分断されている方向に曲げても、シール体が大きく変形することを防ぐことができる。これによって索条体を曲げる必要があっても、密着性を維持することができる。
【0024】
さらに本発明によれば、シール体を開口部に対して軸線方向一方へ変位させることによって、開口部に対してシール体を弾発的に狭持させることができる。これによって開口部を確実に塞ぐことができる。
【0025】
さらに本発明によれば、シール体が部分的に欠損した場合であっても、シール体の内部を通じて、輸送管路の流体が漏出することを防ぐことができる。
【0026】
さらに本発明によれば、筒体の軸線方向の寸法にわたってシール体を弾発的に嵌合させることができるので、流体が漏出することを防ぐ効果をさらに向上することができる。
【0027】
さらに本発明によれば、蓋体によってシール体を筒体の内部に押し込むように装着することによって、シール体と筒体との密着性が向上し、流体が漏出することを防ぐことができる。
【0028】
さらに本発明によれば、前述の輸送管路の開口部シール構造のような簡単なシール構造を用いて、輸送管路を中途部で遮断することができ、作業性を向上して、流体が漏出することを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は、本発明の実施の一形態のガス管の開口部シール構造1を示す断面図である。図2は、ガス管の開口部シール構造1を簡略化して示す斜視図である。図3は、ガス管の開口部シール構造1を簡略化して示す分解斜視図である。本実施の形態のガス管の開口部シール構造(以下、単に「シール構造」ということがある)1は、輸送管路に形成される開口部3をシールするために開口部3に装着される。輸送管路は、本実施の形態では、流体であるガスを輸送するガス管2によって実現される。シール構造1は、索条体であるホース4を挿通している状態で、開口部3に装着される。
【0030】
シール構造1は、ホース4を弾発的に狭持して開口部3を塞ぐシール体5と、シール体5が弾発的に嵌合される筒体6と、シール体5が筒体6から脱出することを防止する蓋体7とを含んで構成される。筒体6は、略円筒状に形成され、ガス管2の開口部3に密に装着される。
【0031】
シール体5は、略円錐台状に形成され、軸線に沿って貫通し、ホース4を弾発的に狭持する状態で挿通する挿通孔8が形成される。蓋体7は、略有底筒状に形成され、シール体5が筒体6に嵌合している状態で、筒体6の外周部9に蓋体7の内周部10が装着される。蓋体7が筒体6に装着された状態では、蓋体7の底部11は、シール体5を軸線方向一方へ変位するように力を与えるように、シール体5の軸線方向他端部に当接する。
【0032】
図4は、シール体5を示す正面図である。図5は、シール体5を示す平面図である。シール体5は、周方向1カ所に周方向に分断するためのスリット部21が形成される。スリット部21は、自然状態では、周方向両端部が互いに弾発的に当接している状態にある。シール体5は、軸線方向一方に向かうにつれて外径が小さくなるようにテーパ状に形成される。
【0033】
シール体5は、複数の独立気泡を有する発泡材料から成る。シール体5は、筒体6に装着された状態で、筒体6の内周部に密に当接し、かつホース4に密に当接する材料から成る。またシール体5は、ガスを密封しているので、難燃性、耐熱老化性または耐薬品性を有する材料が好適に用いられる。シール体5は、たとえば硬度が19〜29程度あり、見掛け密度が0.2〜0.24g/cm程度であり、引張り強さが8kgf/cmであり、伸びが180%以上であり、25%圧縮荷重が350〜600gf/cm程度である材料が選択される。シール体5の材料は、たとえばクロロプレンゴム(略称CR)によって実現される。
【0034】
シール体5の軸線方向一端部の直径d1は、筒体6の内径d3より小さくなるように選択される。シール体5の軸線方向他端部の直径d2は、筒体6の内径d3よりも大きくなるように選択される。またシール体5の軸線方向の寸法L1は、シール体5を筒体6に嵌合した場合に、筒体6から予め定める寸法L2、たとえば10mm程度だけ突出するように選択される。またシール体5を筒体6に嵌合した場合に、軸線方向に関して軸線方向の寸法L1の少なくとも6割程度の外周部が当接するように選択される。シール体5の寸法は、一例を挙げると、軸線方向の寸法L1は約50mmであり、軸線方向一端部の直径d1は約32mmであり、線方向他端部の直径d2は約42mmである。
【0035】
挿通孔8の内径d4は、ホース4の外径d5に基づいて選択され、ホース4の外径よりもやや大きくなるように選択される。このように挿通孔の内径d4と、ホース4の外径d5を選択することによって、シール体5はホース4を弾発的に狭持することができる。寸法の一例を挙げると、ホース4の外径dは約12mmであり、挿通孔8の内径d4は約11mmである。
【0036】
図6は、筒体6を示す正面図である。図7は、筒体6を示す平面図である。筒体6の外周部9には、軸線方向中間部を除く残余の部分に外ねじが刻設される。筒体6の外径d6は、開口部3の内径d7に基づいて選択され、筒体6の外ねじと螺着する内ねじが開口部3の内周部に刻設される。これによって筒体6は、密に開口部3に密に装着される。
【0037】
筒体6の軸線方向の寸法L3は、シール体5の軸線方向の寸法L1よりも大きくなるように選択される。筒体6の寸法は、一例を挙げると、内径d3は約35mmであり、外径d6は約40mmであり、軸線方向の寸法L3は約55mmである。
【0038】
図8は、蓋体7を示す正面図である。図9は、蓋体7を示す平面図である。蓋体7は、軸線方向一端部が塞がれている略有底筒状に形成される。蓋体7の深さ寸法L4は、シール体5を筒体6に嵌合した場合に、筒体6からシール体5が突出する寸法L2よりも大きくなるように選択される。蓋体7の軸線方向一端部である底面部は、その中央部に軸線方向に貫通する貫通孔12が形成される。貫通孔12の内径d8は、ホース4の外径d5よりも大きくなるように形成される。このような貫通孔12を形成することによって、ホース4を蓋体7に挿通することができる。
【0039】
蓋体7の外周部であって、軸線方向他端部には、半径方向外方に凸となる把持部13が周方向全周にわたって形成される。把持部13の外周面部は、作業者が蓋体7を軸線方向周りに回転変位しやすいように、凹凸が形成される。蓋体7の内周部10には、筒体6の外ねじと螺着する内ねじが刻設される。蓋体7の寸法は、一例を挙げると、深さ寸法L4は約20mmであり、貫通孔の内径d8は約21mmである。
【0040】
図10は、シール構造1に用いてゴム玉15を駆動している状態を簡略化して示す断面図である。作業者は、ガス管2を中途部で遮断する場合、まず開口部3を覆うバッグ16をガス管2に密着させて設ける。
【0041】
作業者は、ホース4をシール構造1に装着した状態で、シール構造1、ホース4およびゴム玉15をバッグ16の内部に入れておく。ホース4の一端部には、ガス管2を中途部で遮断するための遮断装置であって、ホース4を介して駆動するゴム玉15が設けられる。作業者は、開口部3を予め密封しているプラグを外す。この開口部3から、空気を吸引して収縮しているゴム玉15を挿入して、シール構造1を用いて開口部3に装着して密封する。その後、ホース4の他端部をバッグ16から取出して、ホース4の他端部に、ゴム玉15に空気を送りゴム玉15を膨張させるための空気制御手段を装着する。作業者は、空気制御手段を用いて、ゴム玉15を膨張させ、ゴム玉15をガス管2の内周部に当接させて、ガスを遮断する。
【0042】
このように作業者は、ガスを一時的に遮断して、ゴム玉15両側の供給圧力を測定する。シール構造1によってガスの漏出は防がれているので、作業者は、円滑に作業することができる。また供給圧力が低下するようであれば、ゴム玉15を収縮させて、シール構造1を脱着して、ガスが供給される顧客に不具合が生じないように、対応することができる。シール構造1は、脱着も容易にできるので、円滑に脱着作業を行うことができる。
【0043】
図11は、ガス管2の遮断するときに用いられ、ガス管2に装着されるバッグ16を簡略化して示す斜視図である。バッグ16は、内部が外方から視認できるように透光性を有する材料から成る。バッグ16は、開口部3を覆うようにガス管2に密着させて設けられ、たとえばベルト23によってガス管2に装着される。バッグ16の軸線方向一端部には、開口部3に臨んで開口する取付孔17が形成されており、軸線方向他端部には、作業者の手腕をバッグ16の内部に差し入れるための腕用挿入孔18が形成されている。
【0044】
腕用挿入孔18には、筒状の可動手段19が設けられ、可動手段19の先端部20は弾発性を有する材料から成り、腕を挿入することによって先端部20が腕に弾発的に当接する。また可動手段19の先端部20は、仮想線で示すように、バッグ16の内部および外部にわって容易に変位可能に構成され、可動手段19の先端部20が腕に密着した状態を維持しながら、腕をバッグ16の内部および外部に変位させても、密着状態を維持できるように構成される。
【0045】
図12は、ホース4をシール体5に挿通している状態で、ホース4を湾曲させたときの、シール体5の変形の例を簡略化して示す斜視図である。ホース4は、安全性を考慮して容易に変形しないように、剛性が大きい材料から成るので、ホース4の軸線方向一端部に設けられるゴム玉15をガス管2に配置するときに、ホース4は湾曲している。ホース4が湾曲することによって、シール体5にもホース4からの力が働く。このホース4からの力によって、シール体5は変形するが、その変形は、ホース4の湾曲方向とスリット部21の周方向の位置とによって異なる。
【0046】
図12(1)では、ホース4の湾曲する方向と、シール体5に形成されるスリット部21の周方向の位置とがほぼ一致するようにシール体5を配置している。図12(1)に示すように、ホース4が湾曲すると、スリット部21の軸線方向一端部にホース4が填りこむように、シール体5の軸線方向一端部であって周方向両端部が離反する方向a1へ変形する。このようにシール体5の軸線方向一端部が拡径する方向a1に変形するので、シール体5の軸線方向他端部であって、周方向両端部が近接する方向a2へ力が働く。したがってホース4が湾曲しても、スリット部21の密着状態を維持することができる。これによってホース4が湾曲しても、シール体5からガスが漏出することを防ぐことができる。
【0047】
図12(2)では、ホース4の湾曲する方向と、シール体5に形成されるスリット部21の周方向の位置とが、略垂直となるようにシール体5を配置している。図12(2)に示すように、ホース4が湾曲すると、シール体5の軸線方向一端部であって周方向一端部が離反する方向b1へ変形する。これによってシール体5の軸線方向他端部であって周方向一端部が離反する方向b2へ変形する。したがってスリット部21が軸線方向にわたって拡径するように、シール体5が変形する。したがってホース4が湾曲すると、スリット部21の密着状態を維持することができない恐れがある。
【0048】
図12(3)では、ホース4の湾曲する方向と、シール体5に形成されるスリット部21の周方向の位置とがほぼ反対となるようにシール体5を配置している。図12(3)に示すように、ホース4が湾曲するとシール体5にホース4からの力が働くので、シール体5の軸線方向一端部であって周方向両端部が離反する方向c1へ変形する。これによってシール体5の軸線方向他端部であって周方向両端部が離反する方向c2へ変形する。したがってホース4が湾曲すると、スリット部21の密着状態を維持することができない恐れがある。
【0049】
したがってホース4の湾曲する方向と、シール体5に形成されるスリット部21の周方向の位置とがほぼ一致するようにシール体5を配置する方が好ましい。このようにホース4およびシール体5を配置することによって、スリット部21の密着状態を確実に維持することができる。
【0050】
以上説明した本実施の形態のシール構造1によれば、シール構造1を構成するシール体5は、軸線に沿って貫通し、ホース4が弾発的に狭持される状態で挿通される挿通孔8が形成されるので、ホース4を狭持した状態でガス管2の開口部3を塞ぐことができる。これによってホース4を開口部3を介してガス管2の外方から内方から挿通している状態であっても、シール構造1によって開口部3を塞いで、輸送されるガスが漏出するのを防止することができる。これによって作業者は、ホース4を用いてガス管2内の作業を行うことができ、かつ流体の漏出を防ぐことができる。
【0051】
従来の技術のように、袋を用いてガス管2に1つのゴム玉15を挿入して、ゴム玉15両側の圧力を測定している期間のガスの漏出量は60cc/分以上であったが、本実施の形態のシール構造1を用いることによって、漏出量を0cc/分にすることができる。またシール構造1は、圧力変動の発生がほとんどなく、安定して圧力を測定することができる。
【0052】
またシール体5は、周方向1カ所において周方向に分断されているので、分断されている部分からホース4を挿通孔8に配置することができる。これによって作業性が向上する。また周方向に分断されているので、シール体5にホース4を挿通している状態で、シール体5から突出しているホース4を分断されている方向に曲げても、シール体4が大きく変形することを防ぐことができる。これによってホース4を曲げる必要があっても、シール体の密着性を維持することができる。
【0053】
たとえば周方向に複数カ所分断したシール体を用いても、前述の図12に関連して説明したように、ホース4の湾曲する方向によってシール体5の変形の状態が異なるので、シール体が不所望に変形したガスの漏出を防ぐことができない。本発明のように周方向1カ所だけ周方向に分断しているので前述のような効果を達成することができる。
【0054】
またシール体5は、軸線方向一方に向かうにつれて外径が小さくなるようにテーパ状に形成されている。したがってシール体5を、開口部3に嵌合する場合、開口部3に対して軸線方向一方に変位させることによって、軸線方向一端部が容易に開口部3に挿入することができる。さらにシール体5を開口部3に対して軸線方向一方へ変位させることによって、開口部3に対してシール体5を弾発的に狭持させることができる。これによって開口部3を確実に塞ぐことができる。
【0055】
またシール体5は、複数の独立気泡を有する発泡材料から成るので、シール体5が部分的に欠損した場合であっても、シール体5の内部を通じて、ガス管のガスが漏出することを防ぐことができる。またシール体5は、前記発泡材料から成るので筒体6の内部の形状にならいやすい。またシール体5は、前記発泡材料から成るのでホース4に密着しやすい。
【0056】
またシール構造1は、開口部3に密に装着され、シール体5が弾発的に嵌合される筒体6を含む。筒体6は、開口部3に密に装着されるので、筒体6と開口部3との装着部分からガスが漏出することを防ぐことができる。またシール体5が筒体6に弾発的に嵌合することによって、シール体5と筒体6との間からガスが漏出することを防ぐことができる。
【0057】
また筒体6を用いることによって、ガス管2の開口部3にシール体5を装着する場合よりも、シール体5が当接する面積を多くすることができる。開口部3にシール体5を装着する場合、シール体5と開口部3とが当接する面積は、開口部3の厚み寸法に基づいて決まるが、筒体6を用いることによって、シール体5が当接する面積を大きくすることができる。したがってガスが漏出することを防ぐ効果をさらに向上することができる。
【0058】
また筒体6を用いることによって、シール体5は筒体6の滑らかな内周面部に当接させることができる。開口部3には、シール構造3を装着していない状態では、ガスが漏出しないように、開口部3に刻設される内ねじに螺着する外ねじが刻設されている密封部材が密に装着されて、密封されている。したがって開口部3には内ねじが刻設されているので、開口部3の内周面部は滑らかではない。このような開口部3にシール体5を装着すると、確実にねじ山によって密に当接することができず、またシール体5が損傷しやすい。したがって前述のように外ねじが刻設された筒体6を用いて、開口部3に密に装着して、筒体6にシール体5を弾発的に嵌合することによって、ガスの漏出を確実に防ぐことができる。
【0059】
また筒体6の軸線方向の寸法L3は、ホース4が湾曲して、ホース4の軸線方向一端部が所望の位置に配置できるように選択される。これによってホース4を湾曲させて、ゴム玉15を所望の位置に配置することができる。
【0060】
またシール構造1は、筒体6に嵌合されるシール体5が筒体6から脱出することを防止する蓋体7を含む。これによってガス管2内のガスからシール体5に与えられる圧力、またはホース4をシール体5に対して変位させることによって、シール体5が筒体6から脱出することを確実に防ぐことができる。また作業者が作業中に不所望にシール体5に接触しても、シール体5が筒体6から脱出することを確実に防ぐことができる。
【0061】
またシール体5の軸線方向の寸法L1は、シール体5を筒体6に嵌合した場合に、筒体6から予め定める寸法L2だけ突出するように選択される。これによってシール体5を筒体6から脱出させたい場合、作業者は、突出する部分を把持して容易に脱出させることができる。
【0062】
また蓋体7が筒体6に装着された状態では、蓋体7の底部11は、シール体が突出している部分に当接し、シール体5を軸線方向一方へ変位するように力を与える。これによってシール体5と筒体6との密着性が向上し、ガスが漏出することを防ぐ効果をさらに向上することができる。
【0063】
またシール構造1を用い、ガス管2を中途部で遮断するためのゴム玉15を、ホース4を介して駆動してガス管2を遮断する。シール構造1を用いることによって、ガス管2からガスが漏出することを防ぎつつ、ゴム玉15を駆動することができる。したがって作業者は、シール構造1のような簡単な構造を用いて、ガス管2を中途部で遮断することができ、作業性を向上しつつ、ガスが漏出することを防ぐことができる。
【0064】
図13は、本発明の実施の他の形態のガス管の開口部シール構造30を示す断面図である。本実施のシール構造30は、前述の図1〜図12のシール構造1と類似しており、本実施の形態の構成には前述のシール構造1における対応する構成と同一の参照符号を付し、異なる構成についてだけ説明し、同様の構成については説明を省略する。本実施の形態のシール構造30は、前述の実施の形態のシール構造1に対して、筒体6aの寸法が異なる。
【0065】
筒体6aの内径d3および外径d6は、シール体5が筒体6aに嵌合している状態で、シール体5が蓋体7の内周部に当接しないように選択される。換言すると、筒体6aの外径d6は、シール体5の軸線方向他端部の直径d2より大きくなるように選択される。筒体6aの寸法は、一例を挙げると、内径d3は約35mmであり、外径d6は約48mmであり、軸線方向の寸法L3は約55mmである。
【0066】
このように筒体6aの外径d6は、シール体5の軸線方向他端部の直径d2より大きくなるように選択される。これによって蓋体7を筒体6aに装着した場合に、蓋体7の内周部10がシール体5の半径方向外周部に当接することを防ぐことができる。これによって蓋体7がシール体5に不所望に接触して、シール体5が損傷することを防ぐことができる。
【0067】
また筒体6aの軸線方向一端部だけを肉厚にするように構成して、軸線方向一端部の外径d6を、シール体の軸線方向他端部の直径d2より大きくなるように構成してもよい。これによって同様の効果を達成することができる。本実施の形態は、その他前述の実施の形態と同様の効果を達成することができる。
【0068】
図14は、前述のシール構造1を用いて他の遮断方法を説明するための断面図であって、複数のシール構造1に用いて複数のゴム玉15を駆動している状態を簡略化して示す断面図である。作業者は、ガス管2を中途部で切断する場合、切断面からガスが漏出することを防ぐために、切断部分22の両側にゴム玉15を挿入する。図11に関連して前述したように、シール構造1を用いているので開口部3からガスが漏出することを防ぎつつ、切断部分22の両側にゴム玉15を配置することができる。このように作業者は、切断部分22にガスが流れ込まないようにゴム玉15によって遮断して、ガス管2を切断することができる。
【0069】
またさらに安全性を向上するために、切断部分22の両側にそれぞれ複数のゴム玉15を配置してもよい。複数のゴム玉15を配置する場合は、1つの開口部3に装着されるシール構造1に複数のホース4を挿入してもよいし、複数の開口部3を用いてそれぞれのシール構造1にホース4を挿入してもよい。また複数の開口部3を用いる場合、切断部分22から最も外方側にある2つの開口部3は、本実施の形態のシール構造1を用いてゴム玉3を挿入して、切断部分22のガスを遮断し、間の開口部3は従来の技術を用いてゴム玉15を挿入してもよい。最も外方側にある開口部3にシール構造1を適用することによって、開口部3からのガスの漏出を防ぎつつ、ガス管2は遮断されているので、内方側にある開口部3からガスが漏出する可能性が小さいからである。
【0070】
前述の実施の各形態では、索条体はホース4によって実現されているがこれに限定されるものではない。索条体は、たとえば管路内の状態を観察するファイバースコープ、または管路内の異物を除去するためのワイヤなどであってもよい。
【0071】
前述の実施の各形態は、本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲内において構成を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の一形態のガス管の開口部シール構造1を示す断面図である。
【図2】ガス管の開口部シール構造1を簡略化して示す斜視図である。
【図3】ガス管の開口部シール構造1を簡略化して示す分解斜視図である。
【図4】シール体5を示す正面図である。
【図5】シール体5を示す平面図である。
【図6】筒体6を示す正面図である。
【図7】筒体6を示す平面図である。
【図8】蓋体7を示す正面図である。
【図9】蓋体7を示す平面図である。
【図10】シール構造1に用いてゴム玉15を駆動している状態を簡略化して示す断面図である。
【図11】ガス管2の遮断するときに用いられ、ガス管2に装着されるバッグ16を簡略化して示す斜視図である。
【図12】ホース4をシール体5に挿通している状態で、ホース4を湾曲させたときの、シール体5の変形の例を簡略化して示す斜視図である。
【図13】本発明の実施の他の形態のガス管の開口部シール構造30を示す断面図である。
【図14】前述のシール構造1を用いて他の遮断方法を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1 ガス管の開口部シール構造
2 ガス管
3 開口部
4 ホース
5 シール体
6 筒体
7 蓋体
8 挿通孔
15 ゴム玉
21 スリット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を輸送する輸送管路に形成される開口部に嵌合されて開口部を塞ぐシール体であり、軸線に沿って貫通し、索条体が弾発的に挟持される状態で挿通される挿通孔が形成されているシール体を含むことを特徴とする輸送管路の開口部シール構造。
【請求項2】
シール体は、周方向1カ所において周方向に分断されていることを特徴とする請求項1記載の輸送管路の開口部シール構造。
【請求項3】
シール体は、軸線方向一方に向かうにつれて外径が小さくなるようにテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の輸送管路の開口部シール構造。
【請求項4】
シール体は、複数の独立気泡を有する発泡材料から成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の輸送管路の開口部シール構造。
【請求項5】
輸送管路の開口部に密に装着され、シール体が弾発的に嵌合される筒体を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の輸送管路の開口部シール構造。
【請求項6】
筒体に嵌合されるシール体が筒体から脱出することを防止する蓋体を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の輸送管路の開口部シール構造。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の輸送管路の開口部シール構造を用い、
輸送管路を中途部で遮断するための遮断装置を、索条体を介して駆動して輸送管路を遮断する遮断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−38175(P2006−38175A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222334(P2004−222334)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000115382)ヨツギ株式会社 (20)
【Fターム(参考)】