説明

農作業機

【課題】振動を抑制して適切な畦塗り作業ができる農作業機を提供する。
【解決手段】農作業機1は、トラクタに連結する機枠2を備える。機枠2には回動アーム3の前端部を回動可能に取り付け、回動アーム3の後端部には回動機枠4を回動可能に取り付ける。回動機枠4には、トラクタの走行により畦塗り作業をする作業手段5を設ける。農作業機1は、一端部を回動機枠4のうち回動アーム3の後端部と対向する部分に固着し他端部を回動機枠4の前端側に固着し回動機枠4とともに平面視環状の第1環状部51を形成する第1振動抑制用アーム52を備える。また、農作業機1は、一端部を回動アーム3の後端部に回動可能に取り付け他端部を回動機枠4に固着し回動アーム3の後端部および回動機枠4とともに背面視環状の第2環状部を形成する第2振動抑制用アーム54を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット作業時における作業手段等の振動を抑制でき、適切なオフセット作業ができる農作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばトラクタ等の走行車の後部に連結される機枠と、機枠に前端部が回動可能に取り付けられた回動アームと、回動アームの後端部に回動可能に取り付けられた回動機枠と、回動機枠にて支持され前進作業時には走行車の前進走行によりオフセット作業、例えば畦塗り作業をし後退作業時には走行車の後退走行によりオフセット作業、例えば畦塗り作業をする作業手段とを備えた畦塗り機等の農作業機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−101748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の農作業機では、作業手段によるオフセット作業の際に回動機枠のねじれ等により作業手段が比較的大きく振動し、適切なオフセット作業ができないおそれがある。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、オフセット作業時における作業手段の振動を抑制でき、適切なオフセット作業ができる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の農作業機は、走行車に連結される機枠と、この機枠に前端部が回動可能に取り付けられた回動アームと、この回動アームの後端部に回動可能に取り付けられた回動機枠と、この回動機枠にて支持され、前記走行車の走行によりオフセット作業をする作業手段と、この作業手段の振動を抑制する少なくとも2つの環状部とを備えるものである。
【0006】
請求項2記載の農作業機は、走行車に連結される機枠と、この機枠に前端部が回動可能に取り付けられた回動アームと、この回動アームの後端部に回動可能に取り付けられた回動機枠と、この回動機枠にて支持され、前記走行車の走行によりオフセット作業をする作業手段と、一端部が前記回動機枠のうち前記回動アームの後端部と対向する部分に固着され、他端部が前記回動機枠の前端側に固着され、前記回動機枠とともに平面視環状の第1環状部を形成する第1振動抑制用アームと、一端部が前記回動アームの後端部に回動可能に取り付けられ、他端部が前記回動機枠に固着され、前記回動アームの後端部および前記回動機枠とともに背面視環状の第2環状部を形成する第2振動抑制用アームとを備えるものである。
【0007】
請求項3記載の農作業機は、請求項1または2記載の農作業機において、作業手段は、土を盛り上げる盛土体と、この盛土体にて盛り上げられた土を締め固めて畦を形成する畦形成体とを有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、オフセット作業時における作業手段の振動を抑制でき、適切なオフセット作業ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の農作業機の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0010】
図1ないし図8において、1は農作業機で、この農作業機1は、図示しない走行車であるトラクタの後部の作業機昇降支持部(3点ヒッチ部)に連結されトラクタの前進走行により圃場の畦に沿って進行方向に移動しながらオフセット作業、すなわち例えば畦塗り作業をする畦塗り機である。なお、圃場の隅部では、農作業機1は、トラクタの後退走行(バック走行)により圃場の畦に沿って進行方向に移動しながら畦塗り作業をする(図8参照)。
【0011】
農作業機1は、トラクタの作業機昇降支持部に連結される機枠2と、機枠2に前端部が上下方向の第1縦軸線Y1を中心として回動可能に取り付けられた1本の回動アーム3と、回動アーム3の後端部に上下方向の第2縦軸線Y2を中心として回動可能に取り付けられた回動機枠4と、回動機枠4にて支持され前進作業時には回動機枠4が前進作業位置に設定された状態でトラクタの前進走行により畦塗り作業をし後退作業時には回動機枠4が後退作業位置に設定された状態でトラクタの後退走行により畦塗り作業をする作業手段5とを備えている。
【0012】
機枠2は、トラクタの作業機昇降支持部に連結される3点連結部7を有している。3点連結部7は、作業機昇降支持部の上部リンクに回動可能に連結されたトップマスト8および作業機昇降支持部の下部リンクに回動可能に連結された左右のロワアーム9等にて構成されている。また、機枠2は軸支部10を有し、この軸支部10にて略前後方向の入力軸11が回転可能に支持されている。入力軸11はトラクタのPTO軸にジョイントおよび伝動シャフト等を介して接続される。また、入力軸11には、この入力軸11からの動力を回動機枠4内に収容された伝動手段12へ伝達するジョイント等の動力伝達軸13が接続されている。
【0013】
そして、機枠2はアーム被取付部15を有し、このアーム被取付部15には回動アーム3の前端部が上下方向の軸16を介して第1縦軸線Y1を中心として回動可能に取り付けられ、回動アーム3が機枠2に対して第1縦軸線Y1を中心として回動可能になっている。また、回動アーム3の後端部には回動機枠4が図示しないベアリング等を介して第2縦軸線Y2を中心として回動可能に取り付けられ、回動機枠4が回動アーム3に対して第2縦軸線Y2を中心として回動可能になっている。
【0014】
また、電動油圧シリンダ等からなる駆動手段である第1回動シリンダ18の作動により回動アーム3が機枠2に対して第1縦軸線Y1を中心として回動し、電動油圧シリンダ等からなる駆動手段である第2回動シリンダ19の作動により回動機枠4が回動アーム3に対して第2縦軸線Y2を中心として回動するようになっている。
【0015】
回動機枠4は、伝動軸およびギア等にて構成された伝動手段12を収容した伝動ケース部21と、この伝動ケース部21に固着されたフレーム部22とを有している。
【0016】
伝動ケース部21は、回動アーム3の後端部下方にこの回動アーム3の後端部と対向して近接状に位置する第1伝動ケース23と、この第1伝動ケース23の下部から右側方に向って突出する第2伝動ケース24と、この第2伝動ケース24から前方に向って突出する第3伝動ケース25とを有している。
【0017】
フレーム部22は、前後方向に長手状に形成され長手状の第3伝動ケース25の上方にこの第3伝動ケース25と平行に位置する長手状フレーム26を有し、長手状フレーム26の前端部が連結フレーム27を介して第3伝動ケース25の前端部に連結され、長手状フレーム26の後端側が第2伝動ケース24の上面側に固着されている。また、第2伝動ケース24にはゲージ輪30がゲージ輪ホルダ29を介して取り付けられている。
【0018】
作業手段5は、所定方向に回転しながら土を耕耘して圃場の畦に盛り上げるロータリー等の盛土体31と、この盛土体31にて盛り上げられた土を所定方向に回転しながら締め固めて新たな畦を形成するディスク等の畦形成体32とを有している。
【0019】
盛土体31は、回動機枠4の伝動ケース部21内の伝動手段12から動力を受けて所定方向に回転する前後方向の駆動回転軸33と、この駆動回転軸33の爪ホルダ部34に脱着可能に取り付けられ駆動回転軸33とともに回転して土を畦に盛り上げる複数の耕耘爪35とを有している。駆動回転軸33は回動機枠4の伝動ケース部21の第3伝動ケース25にて回転可能に支持され、この駆動回転軸33の先端側が第3伝動ケース25内から前方に向って突出し、この第3伝動ケース25内から突出した部分の外周側に爪ホルダ部34が設けられ、この爪ホルダ部34に耕耘爪35が取り付けられている。
【0020】
また、盛土体31の駆動回転軸33の先端部には所定方向に回転しながら畦の上面を削る上面削り体36がチェーン等の伝動手段37を介して接続されている。上面削り体36は、その伝動手段37から動力を受けて所定方向に回転する前後方向の駆動回転軸38と、この駆動回転軸38の爪ホルダ部39に脱着可能に取り付けられ駆動回転軸38とともに回転して畦の上面を削る切削爪40とを有している。盛土体31は土飛散防止用の盛土体カバー41にて覆われ、上面削り体36は土飛散防止用の削り体カバー42にて覆われている。
【0021】
さらに、畦形成体32は、回動機枠4の伝動ケース部21内の伝動手段12から動力を受けて所定方向に回転する左右方向の駆動回転軸43と、この駆動回転軸43に取り付けられ駆動回転軸43とともに回転して土を締め固めて新たな畦を形成する畦形成部材44とを有している。畦形成部材44には、伝動ケース部21側とは反対側に向って縮径する截頭円錐状の畦側面形成部45およびこの畦側面形成部45の縮径端部に連設された円筒状の畦上面形成部46が形成されている。この畦形成体32の駆動回転軸43は回動機枠4の伝動ケース部21の第2伝動ケース24にて回転可能に支持され、この駆動回転軸43の先端側が第2伝動ケース24内から側方に向って突出し、この第2伝動ケース24から突出した部分に畦形成部材44が取り付けられている。
【0022】
また一方、農作業機1は、一端部が回動機枠4のうち回動アーム3の後端下側部と対向する部分に固着され他端部が回動機枠4の長手状フレーム26の前端側に固着され回動機枠4とともに平面視環状をなす振動抑制用の環状部である第1環状部51を形成する第1振動抑制用アーム52と、一端部が回動アーム3の後端部に第2縦軸線Y2を中心として回動可能に取り付けられ他端部が回動機枠4の長手状フレーム26の長手方向略中央に固着され回動アーム3の後端部および回動機枠4とともに背面視環状をなす振動抑制用の環状部である第2環状部53を形成する第2振動抑制用アーム54とを備えている。
【0023】
第1振動抑制用アーム52は、例えば中間の1箇所で折り曲げられたアーム部材にて構成されている。そして、第1振動抑制用アーム52の一端部は回動機枠4の伝動ケース部21の第1伝動ケース23に固着され(図5参照)、第1振動抑制用アーム52の他端部は回動機枠4の長手状フレーム26の前端部に連結フレーム27を介して固着されている(図6参照)。この第1振動抑制用アーム52と回動機枠4とにて形成された第1環状部51は、例えば平面視で4角環状である(図1参照)。
【0024】
また、第2振動抑制用アーム54は、例えば中間の1箇所で湾曲状に折り曲げられたアーム部材にて構成されている。そして、第2振動抑制用アーム54の一端部は回動アーム3の後端部上面側に上下方向の軸50を介して第2縦軸線Y2を中心として回動可能に取り付けられ、第2振動抑制用アーム54の他端部は回動機枠4の長手状フレーム26の長手方向略中央部上面側に固着されている。この第2振動抑制用アーム54と回動アーム3の後端部と回動機枠4とにて形成された第2環状部53は、例えば背面視で5角環状である(図4参照)。
【0025】
なお、図3に示されるように、回動機枠4は、側面視で例えば4角環状をなす振動抑制用の環状部である第3環状部55を有している。
【0026】
次に、農作業機1の作用等を説明する。
【0027】
前進作業時には、図1等に示すように、回動機枠4を前進作業位置に設定した状態で、トラクタの前進走行により農作業機1を畦に沿って進行方向に移動させる。
【0028】
農作業機1が畦に沿って移動すると、上面削り体36にて畦の上面が削られ、その上面が削られた畦上に盛土体31にて土が盛り上げられ、この盛り上げられた土が畦形成体32にて締め固められて新たな畦が形成される。すなわち、トラクタのPTO軸から出力された動力が、入力軸11から動力伝達軸13および伝動手段12を介して盛土体31の駆動回転軸33および畦形成体32の駆動回転軸43に伝達され、これら駆動回転軸33,43が駆動回転し、その結果、耕耘爪35にて盛土作業が行われ、畦形成部材44にて畦形成作業が行われる。また同時に、上面削り体36の駆動回転軸38が駆動回転して切削爪40にて畦上面処理作業が行われる。
【0029】
また、圃場の隅部では、図8に示すように、第1回動シリンダ18および第2回動シリンダ19を作動させることにより回動アーム3が機枠2に対して第1縦軸線Y1を中心として回動させかつ回動機枠4を回動アーム3に対して第2縦軸線Y2を中心として回動させて回動機枠4を後退作業位置に設定した後、トラクタの後退走行により農作業機1を畦に沿って進行方向に移動させる。
【0030】
農作業機1が畦に沿って移動すると、前進作業時の場合と同様、上面削り体36にて畦の上面が削られ、その上面が削られた畦上に盛土体31にて土が盛り上げられ、この盛り上げられた土が畦形成体32にて締め固められて新たな畦が形成される。
【0031】
そして、この農作業機1によれば、一端部が回動機枠4のうち回動アーム3の後端部と対向する部分に固着され他端部が回動機枠4の前端側に固着され回動機枠4とともに平面視環状の第1環状部51を形成する第1振動抑制用アーム52と、一端部が回動アーム3の後端部に回動可能に取り付けられ他端部が回動機枠4に固着され回動アーム3の後端部および回動機枠4とともに背面視環状の第2環状部53を形成する第2振動抑制用アーム54とを備えるため、従来の構成に比べて、回動機枠4のねじれ等が発生しにくく、畦塗り作業時における回動アーム3、回動機枠4および作業手段5等の振動を抑制でき、適切な畦塗り作業ができ、しかも、強度が向上し、耐久性に優れている。
【0032】
なお、上記実施の形態では、第1環状部51が平面視で4角環状をなし、第2環状部53が背面視で5角環状をなし、第3環状部55が側面視で4角環状をなす構成について説明したが、例えば環状部51,53,55の形状は4角環状や5角環状には限定されず、3角環状、6角環状或いは円形環状等でもよい。
【0033】
また、第2振動抑制用アーム54の他端部である下端部を回動機枠4の長手状フレーム26の長手方向略中央部上面側に固着した構成には限定されず、例えば第2振動抑制用アーム54の下端部を長手状フレーム26の前端部に固着した構成、長手状フレーム26の後端部に固着した構成等でもよい。
【0034】
さらに、農作業機1は、トラクタの後退走行(バック走行)でオフセット作業ができる構成には限定されず、トラクタの前進走行によってのみオフセット作業をする構成でもよい。
【0035】
また、農作業機1は、オフセット作業時における作業手段5の振動を抑制する3つの環状部51,53,55を備えた構成には限定されず、3つの環状部51,53,55のうち少なくとも2つ備えた構成であればよい。
【0036】
さらに、農作業機1は、オフセット作業である畦塗り作業をする畦塗り機以外に、オフセット作業である溝掘り作業をする溝掘り機等でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施の形態に係る農作業機の前進作業時の平面図である。
【図2】同上農作業機の伝動説明図である。
【図3】同上農作業機の側面図である。
【図4】同上農作業機の背面図である。
【図5】同上農作業機の斜視図である。
【図6】同上農作業機の斜視図である。
【図7】同上農作業機の斜視図である。
【図8】同上農作業機の後退作業時の側面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 農作業機
2 機枠
3 回動アーム
4 回動機枠
5 作業手段
31 盛土体
32 畦形成体
51 環状部である第1環状部
52 第1振動抑制用アーム
53 環状部である第2環状部
54 第2振動抑制用アーム
55 環状部である第3環状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車に連結される機枠と、
この機枠に前端部が回動可能に取り付けられた回動アームと、
この回動アームの後端部に回動可能に取り付けられた回動機枠と、
この回動機枠にて支持され、前記走行車の走行によりオフセット作業をする作業手段と、
この作業手段の振動を抑制する少なくとも2つの環状部と
を備えることを特徴とする農作業機。
【請求項2】
走行車に連結される機枠と、
この機枠に前端部が回動可能に取り付けられた回動アームと、
この回動アームの後端部に回動可能に取り付けられた回動機枠と、
この回動機枠にて支持され、前記走行車の走行によりオフセット作業をする作業手段と、
一端部が前記回動機枠のうち前記回動アームの後端部と対向する部分に固着され、他端部が前記回動機枠の前端側に固着され、前記回動機枠とともに平面視環状の第1環状部を形成する第1振動抑制用アームと、
一端部が前記回動アームの後端部に回動可能に取り付けられ、他端部が前記回動機枠に固着され、前記回動アームの後端部および前記回動機枠とともに背面視環状の第2環状部を形成する第2振動抑制用アームと
を備えることを特徴とする農作業機。
【請求項3】
作業手段は、土を盛り上げる盛土体と、この盛土体にて盛り上げられた土を締め固めて畦を形成する畦形成体とを有する
ことを特徴とする請求項1または2記載の農作業機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−295418(P2008−295418A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147786(P2007−147786)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】