説明

農作業機

【課題】適切な耕耘整地作業ができる農作業機を提供する。
【解決手段】農作業機1は、回転しながら耕耘作業をするロータリ耕耘体11と、ロータリ耕耘体11の後方で整地作業をする整地体21とを備える。ロータリ耕耘体11の側方には、ロータリ耕耘体11の側方部を覆う側板体31を配設する。側板体31には、圃場表面付近の泥土をロータリ耕耘体11側へ通す貫通孔33を形成する。側板体31の外面のうち貫通孔33の後方近傍の部分から突出板34が突出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適切な耕耘整地作業ができる農作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載された農作業機が知られている。この従来の農作業機は、トラクタ等の走行車の後部に連結される機体と、機体のチェーンケース部およびブラケット部間に設けられ回転しながら耕耘作業をするロータリ耕耘体と、機体の耕耘カバー部の後端部に設けられロータリ耕耘体の後方で整地作業をする整地体と、チェーンケース部およびブラケット部に取り付けられロータリ耕耘体の側方に配設されロータリ耕耘体の側方部を覆う左右の側板体とを備えている。また、整地体の左右方向端部には、補助整地体が回動可能に設けられている。そして、この補助整地体は、主として側板体の前端位置で側板体の外側方へはみ出た圃場表面付近の泥土や、稈等の雑物を押えて整地する。
【特許文献1】特開2001−95308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の農作業機では、側板体の前端位置で側板体の外側方へはみ出た圃場表面付近の泥土等の処理が不十分となり、適切な耕耘整地作業が行われないおそれがある。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、適切な耕耘整地作業ができる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の農作業機は、回転しながら耕耘作業をするロータリ耕耘体と、このロータリ耕耘体の後方で整地作業をする整地体と、前記ロータリ耕耘体の側方に配設され、前記ロータリ耕耘体の側方部を覆う側板体と、この側板体に形成され、圃場表面付近の泥土を前記ロータリ耕耘体側へ通す貫通孔とを備えるものである。
【0006】
請求項2記載の農作業機は、請求項1記載の農作業機において、側板体の外面のうち貫通孔の後方近傍の部分から突出する突出板を備えるものである。
【0007】
請求項3記載の農作業機は、請求項1または2記載の農作業機において、ロータリ耕耘体とともに回転し、圃場表面付近の泥土を貫通孔からロータリ耕耘体側へ吸い込む吸込手段を備えるものである。
【0008】
請求項4記載の農作業機は、請求項1ないし3のいずれか一記載の農作業機において、側板体の内面から突出して貫通孔の内側方部を覆い、後方に向って開口する内面側覆い体を備えるものである。
【0009】
請求項5記載の農作業機は、請求項1ないし4のいずれか一記載の農作業機において、側板体の外面から突出して貫通孔の外側方部を覆い、前方に向って開口する外面側覆い体を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、側板体に形成され圃場表面付近の泥土をロータリ耕耘体側へ通す貫通孔を備えるため、側板体の前端位置で側板体の外側方へはみ出た圃場表面付近の泥土の処理が不十分となることを防止でき、適切な耕耘整地作業ができる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、側板体の外面のうち貫通孔の後方近傍の部分から突出する突出板を備えるため、圃場表面付近の泥土を貫通孔からロータリ耕耘体側へ適切に流し入れることができ、より一層適切な耕耘整地作業ができる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、ロータリ耕耘体とともに回転し圃場表面付近の泥土を貫通孔からロータリ耕耘体側へ吸い込む吸込手段を備えるため、圃場表面付近の泥土を貫通孔からロータリ耕耘体側へ確実に流し入れることができ、より一層適切な耕耘整地作業ができる。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、側板体の内面から突出して貫通孔の内側方部を覆い、後方に向って開口する内面側覆い体を備えるため、圃場表面付近の泥土が側板体の内側方から貫通孔を通って側板体の外側方へ流れ出るのを防止できる。
【0014】
請求項5に係る発明によれば、側板体の外面から突出して貫通孔の外側方部を覆い、前方に向って開口する外面側覆い体を備えるため、圃場表面付近の泥土を貫通孔からロータリ耕耘体側へ適切に流し入れることができ、より一層適切な耕耘整地作業ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の農作業機の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0016】
図1において、1は農作業機で、この農作業機1は、例えば走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に連結され、トラクタの走行により圃場、例えば水を引き入れた水田を進行方向である前方に移動しながら耕耘整地作業(代掻き作業)をする代掻機である。
【0017】
農作業機1は、トラクタの後部の3点リンク(作業機昇降支持装置)に連結される機体2を備えている。機体2は、図1および図2に示すように、左右方向長手状で略円筒状の主フレーム部3を有し、この主フレーム部3の長手方向中央部にはギアボックス部4が設けられている。ギアボックス部4には前後方向の入力軸5がベアリング(図示せず)を介して回転可能に設けられ、この入力軸5の前端側にはトラクタのPTO軸(図示せず)がユニバーサルジョイントおよび伝動シャフト等を介して接続される。入力軸5の後端側にはベベルギア等を介して伝動シャフト(図示せず)が接続されており、この伝動シャフトは主フレーム部3内に配設されている。
【0018】
また、主フレーム部3の長手方向一端部である左端部には、図1に示されるように上下方向にやや長手状で箱状の支持フレーム部であるチェーンケース部6の上部が固着され、このチェーンケース部6内には主フレーム部3内の伝動シャフトから動力を受けるチェーンおよびスプロケット(図示せず)が配設されている。一方、主フレーム部3の長手方向他端部である右端部には、図2に示されるように上下方向にやや長手状で板状の支持フレーム部であるブラケット部7の上部が固着されている。
【0019】
互いに離間対向するチェーンケース部6の下部およびブラケット部7の下部間には、所定方向に回転しながら耕耘作業をするロータリ耕耘体11が回転可能に設けられている。ロータリ耕耘体11は、チェーンケース部6内のチェーンから動力を受けて回転する左右方向の耕耘軸12を有し、耕耘軸12の左端部がチェーンケース部6の下部にて回転可能に支持され、耕耘軸12の右端部がブラケット部7の下部にて回転可能に支持されている。耕耘軸12のうちチェーンケース部6およびブラケット部7間に位置する部分には図3に示されるように複数の爪ホルダ13が軸方向に間隔をおいて突設され、各爪ホルダ13には所定方向に回転しながら耕耘作業をする耕耘爪14が脱着可能に取り付けられている。
【0020】
ロータリ耕耘体11の上方部は、チェーンケース部6およびブラケット部7間に設けられた耕耘カバー部16にて覆われており、この耕耘カバー部16は略円弧状をなす板状に形成されている。耕耘カバー部16の後端部には、ロータリ耕耘体11の後方で整地作業をする整地体21が上下方向に回動可能に設けられている。
【0021】
整地体21は、機体2の耕耘カバー部16の後端部にゴム製の弾性板22を介して上下方向に回動可能に取り付けられ傾斜姿勢で整地作業をする左右方向長手状の第1整地板(均平板)23と、この第1整地板23に上下方向に回動可能に取り付けられ水平姿勢で整地作業をする左右方向長手状の第2整地板(レーキ)24とを有している。第2整地板24の長手方向両端部には補助整地体である延長整地板(延長レーキ)25が支軸26を中心として回動可能に取り付けられ、この延長整地板25は、支軸26を中心とする一方向への回動により第2整地板24上に位置する収納状態になり、支軸26を中心とする他方向への回動により第2整地板24の外側方に位置して整地作業をする作業状態になる。また、図示しないが、整地体21には、稈等の雑物を土中に埋め込む弾性棒からなるスプリングレーキが設けられている。
【0022】
また、機体2と第1整地板23とは第1整地板23の重量を調整するための重量調整用の第1連結手段27にて連結され、機体2と第2整地板24とは第2整地板24の重量を調整するための重量調整用の第2連結手段28にて連結されている。
【0023】
また一方、ロータリ耕耘体11の左右の側方部は、ロータリ耕耘体11の側方に配設した鉛直状のカバー体である側板体31,32にて覆われており、左の側板体31はチェーンケース部6に固着され、右の側板体32はブラケット部7に固着されている。左の側板体31は、チェーンケース部6の下部前端から前方に向って突出する前側板部31aと、チェーンケース部6の下部後端から後方に向って突出する後側板部31bとを有している。右の側板体32は、ブラケット部7の下部前端から前方に向って突出する前側板部32aと、ブラケット部7の下部後端から後方に向って突出する後側板部32bとを有している。
【0024】
そして、前側板部31a,32aおよび後側板部31b,32bの各々には、圃場表面付近すなわち例えば水田の水面付近の泥土および雑物(例えば圃場表面に浮かんだ稈等)を内方のロータリ耕耘体11側へ、つまりチェーンケース部6とブラケット部7との間であって整地体21の前方位置へ通す貫通孔33が板厚方向に貫通して形成されている。貫通孔33は、例えば少なくとも一部が圃場表面上に位置するような上下方向に長手方向を有する矩形状で、ロータリ耕耘体11の耕耘軸12と略同じ高さ位置に配設されている。また、前側板部31a,32aに形成された貫通孔33は、前側板部31a,32aの前後方向略中央位置で耕耘爪14の先端移動軌跡の前端位置付近に位置し、後側板部31b,32bに形成された貫通孔33は、後側板部31b,32bの前後方向略中央位置で耕耘爪14の先端移動軌跡の後端位置付近に位置している。
【0025】
また、前側板部31a,32aおよび後側板部31b,32bの各々の外面のうち、貫通孔33の後方近傍の部分からは、図4に示すように、側板体31,32の外面側位置である側板体31,32の外側方で、圃場表面付近の泥土および雑物を一時的に堰き止める抵抗板である突出板34が外側方に向って突出している。
【0026】
さらに、図3に示されるように、ロータリ耕耘体11の耕耘軸12の軸方向両端部近傍には、このロータリ耕耘体11とともに所定方向に回転し、圃場表面付近の泥土および雑物を貫通孔33からロータリ耕耘体11側へ強制的に吸い込む吸込手段41が設けられている。吸込手段41は、耕耘軸12の軸方向端部近傍の径大部12aの外周面に周方向に並設された湾曲板状の複数の吸込羽根42にて構成されている。各吸込羽根42は、耕耘軸12の回転時に、側板体31,32の内面側位置である内面近傍位置で回転し、側板体31,32の外面側位置における圃場表面付近の泥土および雑物が貫通孔33を通ってロータリ耕耘体11側へ流入する水流を発生させる。
【0027】
次に、農作業機1にて代掻き作業する場合について説明する。
【0028】
トラクタの走行に基づいて農作業機1が前方に移動すると、ロータリ耕耘体11の耕耘爪14にて耕耘作業が行われ、第1整地板23、第2整地板24および延長整地板25にて整地作業が行われる。
【0029】
そして、この耕耘整地作業時において、左右の側板体31,32の前端位置で側板体31,32の外側方である外面側位置へ、はみ出た圃場表面付近の泥土および雑物は、吸込羽根42の吸込作用と突出板34の堰き止め作用とに基づき、側板体31,32の複数の貫通孔33、すなわち例えば前側板部31a,32aおよび後側板部31b,32bに形成された前後左右4つの貫通孔33を通って側板体31,32の内側方である内面側位置へ、つまりロータリ耕耘体11側へ誘導されて流れ込み、この流れ込んだ泥土は第1整地板23および第2整地板24にて平らに均され、またこの流れ込んだ雑物はスプリングレーキ等にて土中に埋め込まれる。
【0030】
このように農作業機1によれば、側板体31,32に形成され圃場表面付近の泥土および雑物を側板体31,32の外面側位置から側板体31,32の内面側位置であるロータリ耕耘体11側へ通す貫通孔33を備えるため、側板体31,32の前端位置で側板体31,32の外側方へはみ出た圃場表面付近の泥土および雑物はその貫通孔33を通ってロータリ耕耘体11側へ流れ込み、その結果、延長整地板25の前方で一旦たまった後に更に外側方へはみ出る泥土等が大幅に減少し、側板体31,32の前端位置で外側方へはみ出た圃場表面付近の泥土および雑物の処理が不十分となることを防止でき、適切な耕耘整地作業ができる。
【0031】
また、側板体31,32の外面のうち貫通孔33の後方近傍の部分から突出する突出板34を備えるとともに、ロータリ耕耘体11とともに回転して圃場表面付近の泥土および雑物を貫通孔33からロータリ耕耘体11側へ吸い込む吸込手段41を備えるため、側板体31,32の前端位置で側板体31,32の外側方へはみ出た圃場表面付近の泥土および雑物を貫通孔33からロータリ耕耘体11側へ適切かつ確実に流し入れることができ、よって、より一層適切な耕耘整地作業ができる。
【0032】
なお、例えば図5に示すように、左右の側板体31,32の少なくともいずれか一方の内面から突出して貫通孔33の内側方部の略全体を覆い、後方に向って開口する板状の内面側覆い体51を備えた構成でもよい。内面側覆い体51は、後端ほど側板体31,32から離れるように傾斜する傾斜状の第1板部52と、この第1板部52の後端に連設され側板体31,32と平行状に位置する第2板部53と、これら第1、第2板部52,53の上下端に連設された上下板部54と、後方に向って開口する開口部55とを有している。そして、内面側覆い体51を備えた構成では、圃場表面付近の泥土および雑物が側板体31,32の内側方から貫通孔33を通って側板体31,32の外側方へ流れ出るのを防止できる。なお図示しないが、内面側覆い体51は貫通孔33の内側方部の一部を覆うものでもよい。また例えば内面側覆い体51および突出板34を備えた構成でもよい。
【0033】
また、例えば図6に示すように、左右の側板体31,32の少なくともいずれか一方の外面から突出して貫通孔33の外側方部の略全体を覆い、前方に向って開口する板状の外面側覆い体61を備えた構成でもよい。外面側覆い体61は、前端ほど側板体31,32から離れるように傾斜する傾斜状の第1板部62と、この第1板部62の前端に連設され側板体31,32と平行状に位置する第2板部63と、これら第1、第2板部62,63の上下端に連設された上下板部64と、前方に向って開口する開口部65とを有している。そして、外面側覆い体61を備えた構成では、圃場表面付近の泥土および雑物を貫通孔33からロータリ耕耘体11側へ適切に流し入れることができ、より一層適切な耕耘整地作業ができる。なお図示しないが、外面側覆い体61は貫通孔33の外側方部の一部を覆うものでもよい。また例えば外面側覆い体61および突出板34を備えた構成でもよい。
【0034】
さらに、例えば図7に示すように、内面側覆い体51および外面側覆い体61の両方を備えた構成でもよい。
【0035】
また、例えば側板体31,32の一部を切り起こすことにより、内面側覆い体51・外面側覆い体61を設けると同時に貫通孔33を形成することも可能である。
【0036】
さらに、例えば図5ないし図7に示す構成等において吸込手段41を設けるようにしてもよい。
【0037】
また、貫通孔33を前側板部31a,32aおよび後側板部31b,32bに形成した構成には限定されず、前側板部31a,32aおよび後側板部31b,32bの少なくともいずれか一に形成した構成であればよく、例えば前側板部31a,32aのみに形成した構成や、前側板部31aおよび後側板部31bのみに形成した構成等でもよい。
【0038】
さらに、貫通孔33の形状は、矩形状には限定されず、円形や楕円形等でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施の形態に係る農作業機の側面図である。
【図2】同上農作業機の側面図である。
【図3】同上農作業機の要部斜視図である。
【図4】同上農作業機の要部斜視図である。
【図5】本発明の他の実施の形態の内面側覆い体を示す図である。
【図6】本発明のさらに他の実施の形態の外面側覆い体を示す図である。
【図7】本発明のさらに他の実施の形態の内面側覆い体および外面側覆い体を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 農作業機
11 ロータリ耕耘体
21 整地体
31,32 側板体
33 貫通孔
34 突出板
41 吸込手段
51 内面側覆い体
61 外面側覆い体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転しながら耕耘作業をするロータリ耕耘体と、
このロータリ耕耘体の後方で整地作業をする整地体と、
前記ロータリ耕耘体の側方に配設され、前記ロータリ耕耘体の側方部を覆う側板体と、
この側板体に形成され、圃場表面付近の泥土を前記ロータリ耕耘体側へ通す貫通孔と
を備えることを特徴とする農作業機。
【請求項2】
側板体の外面のうち貫通孔の後方近傍の部分から突出する突出板を備える
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項3】
ロータリ耕耘体とともに回転し、圃場表面付近の泥土を貫通孔からロータリ耕耘体側へ吸い込む吸込手段を備える
ことを特徴とする請求項1または2記載の農作業機。
【請求項4】
側板体の内面から突出して貫通孔の内側方部を覆い、後方に向って開口する内面側覆い体を備える
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の農作業機。
【請求項5】
側板体の外面から突出して貫通孔の外側方部を覆い、前方に向って開口する外面側覆い体を備える
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載の農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−261281(P2009−261281A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112603(P2008−112603)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】