農業機械の乗降ステップ装置
【課題】自動的に収納することができる農業機械の乗降ステップ装置を提供する。
【解決手段】乗降ステップ装置30は、左右一対の支持枠体31と、当該支持枠体31の左右それぞれの上側に基端部を枢着した平面視略コ状の上段ステップ32と、当該支持枠体31の左右それぞれの下側に基端部を枢着した平面視略コ状の下段ステップ33と、両ステップの間に介設し該両ステップを連動させる連動リンク機構34とから構成される。乗車後には、下段ステップ33は自動的に機体側に収納される。降車時には、オペレータが上段ステップ32に足を掛けると、下段ステップ33が自動的に使用位置へ張り出し動作する。
【解決手段】乗降ステップ装置30は、左右一対の支持枠体31と、当該支持枠体31の左右それぞれの上側に基端部を枢着した平面視略コ状の上段ステップ32と、当該支持枠体31の左右それぞれの下側に基端部を枢着した平面視略コ状の下段ステップ33と、両ステップの間に介設し該両ステップを連動させる連動リンク機構34とから構成される。乗車後には、下段ステップ33は自動的に機体側に収納される。降車時には、オペレータが上段ステップ32に足を掛けると、下段ステップ33が自動的に使用位置へ張り出し動作する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動的に出し入れ可能とした農業機械の乗降ステップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農業機械の一種であるコンバインの乗降ステップ装置の一形態として、機体に複数個の乗降ステップを階段状に取り付けて構成したものがある。例えば、下記特許文献1の乗降ステップ装置では、地面と運転席との間に下降させて配置する使用姿勢と機体側への収納した不使用姿勢とに姿勢変更可能として、不使用姿勢への変更を運転席に設けた足踏みペダルの踏込み操作によって行なうようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−56075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記したコンバインの乗降ステップ装置の場合、足踏みペダルの踏込み操作で乗降ステップを収納姿勢にすることができるものの、該乗降ステップは自動的に収納姿勢とはならないため、乗車発進時に踏込み操作を忘れた場合には、乗降ステップを使用姿勢にしたまま収穫作業に移行することになる。その場合、畦畔に乗降ステップを接触させて乗降ステップを変形させるという不具合や、隣接する穀稈を乗降ステップで押し倒すという不具合がある。また、降車時においても、解除レバーを操作して作用姿勢にする必要があり、この操作を忘れた場合は、コンバインから落ちてしまうという危険性がある。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決することができる農業機械の乗降ステップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、運転部へ乗降するための農業機械の乗降ステップ装置であって、前記乗降ステップ装置は、上下段に配置した上・下段ステップと、これら上・下段ステップ間に介設した連動リンク機構とを具備し、踏み込み前位置から踏み込み後位置への上段ステップの踏み込み動作と、不使用位置から使用位置への下段ステップの張り出し動作を、連動リンク機構を介して連動させると共に、踏み込み解除による踏み込み後位置から踏み込み前位置への上段ステップの復帰動作と、使用位置から不使用位置への下段ステップの復帰動作を、連動リンク機構を介して連動させたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、請求項1記載の農業機械の乗降ステップ装置であって、前記連動リンク機構には引張スプリングを設けると共に、当該引張スプリングは、上下方向に対向させて配置した上段ステップと下段ステップの各回動支点を支点越えして、上・下段ステップの各動作姿勢を保持する方向に弾性付勢することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、運転部へ乗降するためのコンバインの乗降ステップ装置であって、乗降ステップ装置は、それぞれ基端部を枢支して上下段に配置すると共に、先端部側を上下回動自在とした上・下段ステップと、これら上・下段ステップ間に介設した連動リンク機構とを具備し、踏み込み前位置から踏み込み後位置への上段ステップの踏み込み動作と、不使用位置から使用位置への下段ステップの張り出し動作を、連動リンク機構を介して連動させると共に、踏み込み解除による踏み込み後位置から踏み込み前位置への上段ステップの復帰動作と、使用位置から不使用位置への下段ステップの復帰動作を、連動リンク機構を介して連動させている。
【0009】
このようにして、オペレータが運転部に搭乗する際には、不使用位置に収納されている下段ステップを張り出し動作させて、当該下段ステップから上段ステップに足を掛けることで楽に搭乗することができる。そして、上段ステップへの踏み込み動作を解除すると、当該上段ステップは踏み込み後位置から踏み込み前位置へ復帰動作すると共に、それに連動して下段ステップが使用位置から不使用位置へ復帰動作する。
【0010】
従って、オペレータは張り出し動作している下段ステップを逐一収納するための操作を行う必要性がない。そのため、下段ステップを収納するための操作を忘れることによる不具合、すなわち、畦畔に乗降ステップを接触させて乗降ステップを変形させるという不具合や、隣接する穀稈を乗降ステップで押し倒すという不具合の発生を解消することができる。ここで、上段ステップは収納する必要性がない(上記不具合が発生しない)程度の張り出し姿勢を採るようにしている。
【0011】
また、オペレータが運転部から降機する際には、上段ステップを踏み込むことで、当該上段ステップを踏み込み前位置から踏み込み後位置へ踏み込み動作させると、それに連動して下段ステップが不使用位置から使用位置へ張り出し動作する。
【0012】
従って、オペレータは張り出している下段ステップに足を掛けることで楽に降機することができる。この際、下段ステップを使用位置に配置するための操作を必要とせず、気楽に降機することができる。
【0013】
また、請求項2に係る発明によれば、連動リンク機構には引張スプリングを設けると共に、当該引張スプリングは、上下方向に対向させて配置した上段ステップと下段ステップの各回動支点を支点越えして、上・下段ステップの各動作姿勢を保持する方向に弾性付勢している。
従って、運転部に乗降するオペレータは、各動作姿勢を保持する方向に弾性付勢された上・下段ステップを堅実に踏み込むことで楽に乗降することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係るコンバインの右側面図である。
【図2】図1のコンバインの平面図である。
【図3】乗降ステップ装置の拡大側面図である。
【図4】乗降ステップ装置の正面説明図である。
【図5】乗降ステップ装置の正面動作説明図である。
【図6】乗降ステップ装置の正面説明図である。
【図7】乗降ステップ装置の正面説明図である。
【図8】乗降ステップ装置の正面説明図である。
【図9】乗降ステップ装置の正面説明図である。
【図10】乗降ステップ装置の正面説明図である。
【図11】乗降ステップ装置の正面説明図である。
【図12】乗降ステップ装置の正面説明図である。
【図13】乗降ステップ装置の正面説明図である。
【図14】乗降ステップ装置の正面説明図である。
【図15】乗降ステップ装置の正面説明図である。
【図16】乗降ステップ装置の正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る農業機械の乗降ステップ装置について説明する。本発明において、「農業機械」とは、農業で用いられる機械を意味し、例えば、コンバイン、田植え機、トラクター等を含む。なお、以下では、本発明をコンバインに適用した実施形態について説明する。
【0016】
[1.コンバインの全体構成]
図1は、本実施形態に係るコンバインの右側面図であり、図2は、同平面図である。図1及び図2に示すように、コンバインAは、クローラ式走行装置1上に機体フレーム2が載置され、該機体フレーム2の前端部には刈取部3が昇降可能に配設されている。そして、機体フレーム2の左側前部に脱穀部5が配設されて、該脱穀部5内に刈取部3によって刈り取られた穀稈がフィードチェン4を介して搬送される。また、該フィードチェン4の後端には排藁チェン6が配設され、該排藁チェン6の後部下方には排藁処理部7が設けられ、排藁処理部7で排藁が切断処理される。また、脱穀部5の右側方には選別後の精粒を貯留するグレンタンク8が配設され、該グレンタンク8の前方には運転部11が配設される。また、グレンタンク8には排出オーガ9及び縦オーガ10が設けられている。
【0017】
運転部11は、床部12の前部にハンドルコラム13を立設し、同ハンドルコラム13の上部にハンドル18を取り付けている。ハンドル18の後方である床部12の後部には運転席15を配置している。16は床部12の左側部に配設したサイドコラムである。17は運転部11の右側部に開放状態に形成した乗降用開放部である。乗降用開放部17が位置する床部12には乗降ステップ装置30を垂設して、同乗降ステップ装置30を介して運転部11への乗降が楽に行えるようにしている。
また、乗降ステップ装置30は、上下段に配置した上・下段ステップ32,33と、これら上・下段ステップ32,33間に介設した連動リンク機構34とを具備し、床部12の下方には連動リンク機構34を収容するための収容空間14が設けている。
【0018】
そして、乗降ステップ装置30は、踏み込み前位置から踏み込み後位置への上段ステップ32の踏み込み動作と、不使用位置から使用位置への下段ステップ33の張り出し動作を、連動リンク機構34を介して連動させると共に、踏み込み解除による踏み込み後位置から踏み込み前位置への上段ステップ32の復帰動作と、使用位置から不使用位置への下段ステップ33の復帰動作を、連動リンク機構34を介して連動させている。そして、連動リンク機構34には引張スプリング45を設けると共に、当該引張スプリング45は、上下方向に対向させて配置した上段ステップ32と下段ステップ33の各回動支点を支点越えして、上・下段ステップ32,33の各動作姿勢を保持する方向に弾性付勢している。
以下に、乗降ステップ装置30の構成と同乗降ステップ装置30の動作を詳細に説明する。
【0019】
[2.乗降ステップ装置]
以下、乗降ステップ装置30について具体的に説明する。図3は、乗降ステップ装置の拡大側面図であり、図4は、同正面説明図であり、図5は、同正面動作説明図である。
【0020】
乗降ステップ装置30は、図3及び図4に示すように、床部12の右側縁部と機体フレーム2との間に上下縦長枠状の支持枠体31を介設している。そして、支持枠体31は、上下方向に伸延する前後一対の上下方向伸延片31a,31aを具備して、両上下方向伸延片31a,31aの上部に上段ステップ32を取り付ける一方、両上下方向伸延片31a,31aの下部に下段ステップ33を取り付けると共に、両ステップ32,33の後端部間に連動リンク機構34を介設して構成している。なお、図において連動リンク機構34は上・下段ステップ32,33の後端部間に介設しているが、前端部間に介設してもよい。
【0021】
また、上段ステップ32は、ステップ面部32aと該ステップ面部32aを支持する前後一対の支持アーム32b,32bを具備している。一方、下段ステップ33は、ステップ面部33aと該ステップ面部33aを支持する前後一対の支持アーム33b,33bを具備している。そして、前後一対の支持アーム32b,32b及び33b,33bの基端部は、それぞれ、前後一対の上下方向伸延片31a,31aに、前後方向に軸線を向けた枢軸35及び36を介して枢支している。
枢軸35は前後方向に軸線を向けて上段ステップ32の基端部を枢支する上段側の枢軸であり、上段ステップ32の上下方向の回動支点として機能する。また、枢軸36は前後方向に軸線を向けて下段ステップ33の基端部を枢支する下段側の枢軸であり、下段ステップ33の上下方向の回動支点として機能する。また、枢軸35と枢軸36は上下方向伸延片31a,31aに上下方向に対向して配置されている。
【0022】
また、図5に示すように、後部側の上下方向伸延片31aの上部に上段ステップ32の上方回動を規制するストッパ52を突設すると共に、上段ステップ32の下方回動を規制するストッパ53を突設している。そして、上段ステップ32は、ストッパ52により踏み込み前位置である上方位置60Hに保持されるか、または、ストッパ53により踏み込み後位置である下方位置60Lに保持されるように構成され、いずれの位置においてもオペレータは上段ステップ32に足を掛けることができるようにしている。
【0023】
また、上段ステップ32は、引張バネ54により上方に弾性付勢されている。そのため、オペレータが当該上段ステップ32に足を掛けていない状態では、当該上段ステップ32は上方位置60Hに保持される。そして、オペレータが上段ステップ32に足を掛けると、当該上段ステップ32は下方へ押圧されるため、当該上段ステップ32は、下向きに回動して下方位置60Lに保持される。なお、上段ステップ32の回動範囲は小さくして、オペレータが上段ステップ32に足を掛けている状態で当該上段ステップ32が下向きに回動したとしてもオペレータに違和感がないように構成している。
【0024】
なお、上段ステップ32は、コンバインAの走行時においては上方位置60Hに位置し、前後一対の上下方向伸延片31a,31a間には収納されないが、上段ステップ32の張出量は小さく形成し、また地上高が大きく確保している。そのため、畦畔に上段ステップ32を接触させて該上段ステップ32を変形させるという不具合や、隣接する穀稈を上段ステップ32で押し倒すという不具合はない。
【0025】
一方、図5に示すように、後部側の上下方向伸延片31aの中途部に下段ステップ33の内側上方への回動を規制するストッパ55を突設すると共に、後部側の上下方向伸延片31aの下部に下段ステップ33の下方への回動を規制するストッパ56を突設して、当該下段ステップ33の回動範囲を略90°に制限している。そして、下段ステップ33は、使用位置(横臥姿勢)である第1下方位置70L及び第2下方位置70L’と、不使用位置(起立姿勢)である上方位置70Hの3位置のいずれかに保持されるように構成している。
【0026】
オペレータは、上方位置70Hにある下段ステップ33を手前側に回動させることにより、当該下段ステップ33を第1下方位置70Lに保持させることができ、また、第1下方位置70Lにある下段ステップ33を跳ね上げて前後一対の上下方向伸延片31a,31a間に収納することにより、当該下段ステップ33を上方位置70Hに保持させることができる。
【0027】
(連動リンク機構)
次に、上段ステップ32と下段ステップ33の間に介設した連動リンク機構34について、具体的に説明する。
【0028】
図4に示すように、連動リンク機構34は、上段ステップ32を枢支する枢軸35に基端部を同軸的に取り付けた上段側の第1連結アーム41及び第2連結アーム42と、下段ステップ33を枢支する枢軸36に基端部を同軸的に取り付けた下段側の第1連結アーム43及び第2連結アーム44と、上段側の第1連結アーム41の先端部と下段側の第1連結アーム43の先端部との間に介設した引張スプリング45と、上段側の第2連結アーム42の先端部と下段側の第2連結アーム44の先端部とを連動連結した連結ロッド46とから構成されている。
【0029】
上段側の第1連結アーム41は上方に伸延し、上段側の第2連結アーム42は右下方(収容空間14側)に伸延している。また、下段側の第1連結アーム43は下方に伸延し、下段側の第2連結アーム44は右上方(収容空間14側)に伸延している。
【0030】
上段ステップ32と上段側の第1連結アーム41と上段側の第2連結アーム42とは、一体として上段側の枢軸35を中心に回動する。一方、下段ステップ33と下段側の第1連結アーム43と下段側の第2連結アーム44とは、一体として下段側の枢軸36を中心に回動する。
【0031】
引張スプリング45の上端部は、上段ステップ32に連動連結した上段側の第1連結アーム41の先端部に連結ピン47を介して連結されている。また、引張スプリング45の下端部は、下段ステップ33に連動連結した下段側の第1連結アーム43の先端部に枢支ピン48を介して連結されている。
【0032】
上段ステップ32に枢軸35を介して連結した第2連結アーム42の先端部には摺動ピン49が突出状に取り付けられている。また、連結ロッド46の先端部にはその軸線方向に伸延する長孔50を形成している。そして、長孔50中に摺動ピン49を挿通して摺動自在に係合されている。また、下段ステップ33に枢軸36を介して取り付けた第2連結アーム44の先端部には、連結ピン51を介して連結ロッド46の基端部が連結されている。
【0033】
[3.乗車時におけるオペレータの動作及び乗降ステップ装置の動き]
次に、乗車時におけるオペレータの動作及び当該動作に伴う乗降ステップ装置30の動きについて、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0034】
(3−1.下段ステップを引き出す)
コンバインAの停止ないしは走行状態では、図6に示すように、上段ステップ32は、引張バネ54の引張弾性付勢力により踏み込み前位置である上方位置60Hに位置している。また、下段ステップ33は不使用位置である上方位置70Hに位置している。この際、引張バネ54は枢軸35,36の軸線位置よりも外側方に位置している。
この状態において、オペレータが下段ステップ33を手前側に回動させて横臥姿勢となすことにより、図6中、反時計回りに回動する下段ステップ33に枢軸35を介して連動する下段側の第1連結アーム43及び第2連結アーム44も一体となって反時計回りに回動する。このとき、回動開始時には、引張スプリング45は、下段側の第1連結アーム43を時計回りに弾性付勢している。そして、下段ステップ33の回動が継続すると、やがて引張スプリング45は枢軸35及び枢軸36を支点越えして、下段側の第1連結アーム43を反時計回りに弾性付勢する。下段ステップ33の手前側への回動は、ストッパ56を介して規制され、下段ステップ33は第1下方位置70Lに保持される(図7参照)。
また、下段ステップ33の回動に連動して第2連結アーム44の先端部が反時計廻りに回動し、同第2連結アーム44の先端部に連結した連結ロッド46が機体内方に摺動移動されることにより、上段側の第2連結アーム42の先端部に突設した摺動ピン49は、連結ロッド46の長孔50内を外側端縁部まで摺動される。
なお、上段ステップ32は、引張バネ54及び引張スプリング45の作用により上方位置60Hに保持されている。
【0035】
(3−2.下段ステップに足を掛ける)
図7の状態において、オペレータが下段ステップ33に足F1を掛けると(図8参照)、下段ステップ33は下方への押圧力を受けるが、ストッパ56の作用により、第1下方位置70Lに保持される。なお、上段ステップ32は、引張バネ54及び引張スプリング45の作用により上方位置60Hに保持されている。
【0036】
(3−3.上段ステップに足を掛ける)
図8の状態において、オペレータは、下段ステップ33に足F1を掛けることで上段ステップ32にもう一方の足F2を楽に掛けることができる(図9参照)。
この際、上段ステップ32は下向きに僅かに回動すると共に、ストッパ53の作用により、下方位置60Lに保持される。そして、上段ステップ32の回動に連動して上段側の第2連結アーム42が反時計廻りに回動して、同第2連結アーム42の先端部に突設した摺動ピン49は、連結ロッド46の長孔50内を内側端縁部まで摺動される。
一方、下段ステップ33は引張スプリング45の作用により上向きの力を受けるが、オペレータが足を掛けているため、下段ステップ33は第1下方位置70Lに保持される。
【0037】
(3−4.下段ステップから足を離す)
図9の状態において、オペレータは、下段ステップ33から足F1を離す(図10参照)と、下段ステップ33は引張スプリング45の引張弾性付勢力により上向きに回動し、第2下方位置70L’に変位する。
なお、下段ステップ33は、第2下方位置70L’の位置において、引張スプリング45の作用により上向きの力を受けているが、上段ステップ32が下方位置60Lに保持されているため、下段ステップ33は第2下方位置70L’に保持される。
【0038】
(3−5.上段ステップから足を離す)
図10の状態において、オペレータは、上段ステップ32から足を離す(図11参照)と、上段ステップ32は、引張バネ54の引張弾性付勢力により上向きに回動し、上方位置60Hに変位する。すなわち、上段ステップ32に対する踏み込みが解除されることにより、上段ステップ32は、踏み込み後位置から踏み込み前位置に変位する。
一方、下段ステップ33は、引張スプリング45の引張弾性付勢力により上向きに回動し、上方位置70Hに変位し、下段ステップ33は左右の支持枠体31間に収納される。すなわち、上段ステップ32に対する踏み込みが解除されることにより、下段ステップ33は、使用位置から不使用位置に変位する。
このように、上段ステップ32における踏み込み後位置から踏み込み前位置への変位と、下段ステップ33における使用位置から不使用位置への変位とが、連動リンク機構34を介して連動している。
【0039】
以上説明したとおり、搭乗時においては、オペレータは下段ステップ33を手前側に張り出し状に回動させ、その後、下段ステップ33と上段ステップ32に足F1,F2を順次掛けて運転部11に楽に搭乗することができる。また、搭乗後には、下段ステップ33は自動的に起立姿勢にて機体側に収納されるため、ことさら下段ステップ33を収納する操作を行う必要性がない。そのため、コンバインAの走行中に畦畔に下段ステップ33を接触させて乗降ステップを変形させるという不具合や、隣接する穀稈を下段ステップ33で押し倒すという不具合を防止することができる。
【0040】
[4.降車時におけるオペレータの動作及び乗降ステップ装置の動き]
次に、降車時におけるオペレータの動作及び当該動作に伴う乗降ステップ装置30の動きについて、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0041】
(4−1.上段ステップに足を掛ける)
図11の状態において、オペレータはいずれか一方の足F1を上段ステップ32に掛ける(図12参照)と、上段ステップ32は、引張バネ54の引張弾性付勢力に抗して下向きの押圧力を受けて下方に回動し、ストッパ53の作用により下方位置60Lに保持される(図12参照)。
また、上段側の第2連結アーム42は、上段ステップ32と一体に枢軸35を中心に反時計回りに回動して、摺動ピン49を介して連結ロッド46を内側上方へ摺動させる。そして、連結ロッド46の基端部に連結した下側の第1連結アーム43及び第2連結アーム44を反時計廻りに回動させる。これら連結アーム43,44の回動に連動して、下段ステップ33は、上方位置70Hから第2下方位置70L’に変位する。
【0042】
(4−2.下段ステップに足を掛ける)
図12の状態において、オペレータは、上段ステップ32に足F1を掛けたまま下段ステップ33にもう一方の足F2を掛ける(図13参照)と、下段ステップ33は第2下方位置70L’から下向きに回動し、第1下方位置70Lに変位する。なお、上段ステップ32は、下方位置60Lから変位しない。
【0043】
(4−3.上段ステップから足を離す)
図13の状態で、オペレータは、上段ステップ32から足を離す(図14参照)と、上段ステップ32は引張バネ54の引張弾性付勢力により上向きに回動し、上方位置60Hに変位する。また、この回動により、上段側の第2連結アーム42の先端部に突設した摺動ピン49は、連結ロッド46の長孔50内を内側端縁部まで摺動する。
なお、下段ステップ33は、第1下方位置70Lから変位しない。
【0044】
(4−4.下段ステップから足を離す]
図14の状態で、オペレータは、下段ステップ33から足F2を離す(図15参照)。
ただし、上段ステップ32は上方位置60Hから変位せず、また、下段ステップ33は第1下方位置70Lから変位しない。
【0045】
(4−5.下段ステップを機体側に収納する)
図15の状態で、オペレータは、下段ステップ33を上方へ時計廻りに回動させて、該下段ステップ33を起立姿勢となして左右の支持枠体31間に収納する(図16参照)。この際、下段ステップ33は不使用位置である上方位置70Hに位置している。そして、引張バネ54は枢軸35,36の軸線位置よりも外側方に位置して、上段ステップ32を引張弾性付勢力により上方位置60Hに保持する。
【0046】
以上説明したとおり、降機時においては、オペレータが上段ステップ32に足を掛けると、下段ステップ33が自動的に使用位置へ張り出し動作するので、下段ステップ33を引き出す操作を行う必要性がない。そのため、何ら手間を要することなく、簡単にコンバインAから降機することができる。
【0047】
本発明に係る実施の一形態について具体的に説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【符号の説明】
【0048】
30…乗降ステップ装置
32…上段ステップ
33…下段ステップ
34…連動リンク機構
45…引張スプリング
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動的に出し入れ可能とした農業機械の乗降ステップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農業機械の一種であるコンバインの乗降ステップ装置の一形態として、機体に複数個の乗降ステップを階段状に取り付けて構成したものがある。例えば、下記特許文献1の乗降ステップ装置では、地面と運転席との間に下降させて配置する使用姿勢と機体側への収納した不使用姿勢とに姿勢変更可能として、不使用姿勢への変更を運転席に設けた足踏みペダルの踏込み操作によって行なうようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−56075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記したコンバインの乗降ステップ装置の場合、足踏みペダルの踏込み操作で乗降ステップを収納姿勢にすることができるものの、該乗降ステップは自動的に収納姿勢とはならないため、乗車発進時に踏込み操作を忘れた場合には、乗降ステップを使用姿勢にしたまま収穫作業に移行することになる。その場合、畦畔に乗降ステップを接触させて乗降ステップを変形させるという不具合や、隣接する穀稈を乗降ステップで押し倒すという不具合がある。また、降車時においても、解除レバーを操作して作用姿勢にする必要があり、この操作を忘れた場合は、コンバインから落ちてしまうという危険性がある。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決することができる農業機械の乗降ステップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、運転部へ乗降するための農業機械の乗降ステップ装置であって、前記乗降ステップ装置は、上下段に配置した上・下段ステップと、これら上・下段ステップ間に介設した連動リンク機構とを具備し、踏み込み前位置から踏み込み後位置への上段ステップの踏み込み動作と、不使用位置から使用位置への下段ステップの張り出し動作を、連動リンク機構を介して連動させると共に、踏み込み解除による踏み込み後位置から踏み込み前位置への上段ステップの復帰動作と、使用位置から不使用位置への下段ステップの復帰動作を、連動リンク機構を介して連動させたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、請求項1記載の農業機械の乗降ステップ装置であって、前記連動リンク機構には引張スプリングを設けると共に、当該引張スプリングは、上下方向に対向させて配置した上段ステップと下段ステップの各回動支点を支点越えして、上・下段ステップの各動作姿勢を保持する方向に弾性付勢することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、運転部へ乗降するためのコンバインの乗降ステップ装置であって、乗降ステップ装置は、それぞれ基端部を枢支して上下段に配置すると共に、先端部側を上下回動自在とした上・下段ステップと、これら上・下段ステップ間に介設した連動リンク機構とを具備し、踏み込み前位置から踏み込み後位置への上段ステップの踏み込み動作と、不使用位置から使用位置への下段ステップの張り出し動作を、連動リンク機構を介して連動させると共に、踏み込み解除による踏み込み後位置から踏み込み前位置への上段ステップの復帰動作と、使用位置から不使用位置への下段ステップの復帰動作を、連動リンク機構を介して連動させている。
【0009】
このようにして、オペレータが運転部に搭乗する際には、不使用位置に収納されている下段ステップを張り出し動作させて、当該下段ステップから上段ステップに足を掛けることで楽に搭乗することができる。そして、上段ステップへの踏み込み動作を解除すると、当該上段ステップは踏み込み後位置から踏み込み前位置へ復帰動作すると共に、それに連動して下段ステップが使用位置から不使用位置へ復帰動作する。
【0010】
従って、オペレータは張り出し動作している下段ステップを逐一収納するための操作を行う必要性がない。そのため、下段ステップを収納するための操作を忘れることによる不具合、すなわち、畦畔に乗降ステップを接触させて乗降ステップを変形させるという不具合や、隣接する穀稈を乗降ステップで押し倒すという不具合の発生を解消することができる。ここで、上段ステップは収納する必要性がない(上記不具合が発生しない)程度の張り出し姿勢を採るようにしている。
【0011】
また、オペレータが運転部から降機する際には、上段ステップを踏み込むことで、当該上段ステップを踏み込み前位置から踏み込み後位置へ踏み込み動作させると、それに連動して下段ステップが不使用位置から使用位置へ張り出し動作する。
【0012】
従って、オペレータは張り出している下段ステップに足を掛けることで楽に降機することができる。この際、下段ステップを使用位置に配置するための操作を必要とせず、気楽に降機することができる。
【0013】
また、請求項2に係る発明によれば、連動リンク機構には引張スプリングを設けると共に、当該引張スプリングは、上下方向に対向させて配置した上段ステップと下段ステップの各回動支点を支点越えして、上・下段ステップの各動作姿勢を保持する方向に弾性付勢している。
従って、運転部に乗降するオペレータは、各動作姿勢を保持する方向に弾性付勢された上・下段ステップを堅実に踏み込むことで楽に乗降することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係るコンバインの右側面図である。
【図2】図1のコンバインの平面図である。
【図3】乗降ステップ装置の拡大側面図である。
【図4】乗降ステップ装置の正面説明図である。
【図5】乗降ステップ装置の正面動作説明図である。
【図6】乗降ステップ装置の正面説明図である。
【図7】乗降ステップ装置の正面説明図である。
【図8】乗降ステップ装置の正面説明図である。
【図9】乗降ステップ装置の正面説明図である。
【図10】乗降ステップ装置の正面説明図である。
【図11】乗降ステップ装置の正面説明図である。
【図12】乗降ステップ装置の正面説明図である。
【図13】乗降ステップ装置の正面説明図である。
【図14】乗降ステップ装置の正面説明図である。
【図15】乗降ステップ装置の正面説明図である。
【図16】乗降ステップ装置の正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る農業機械の乗降ステップ装置について説明する。本発明において、「農業機械」とは、農業で用いられる機械を意味し、例えば、コンバイン、田植え機、トラクター等を含む。なお、以下では、本発明をコンバインに適用した実施形態について説明する。
【0016】
[1.コンバインの全体構成]
図1は、本実施形態に係るコンバインの右側面図であり、図2は、同平面図である。図1及び図2に示すように、コンバインAは、クローラ式走行装置1上に機体フレーム2が載置され、該機体フレーム2の前端部には刈取部3が昇降可能に配設されている。そして、機体フレーム2の左側前部に脱穀部5が配設されて、該脱穀部5内に刈取部3によって刈り取られた穀稈がフィードチェン4を介して搬送される。また、該フィードチェン4の後端には排藁チェン6が配設され、該排藁チェン6の後部下方には排藁処理部7が設けられ、排藁処理部7で排藁が切断処理される。また、脱穀部5の右側方には選別後の精粒を貯留するグレンタンク8が配設され、該グレンタンク8の前方には運転部11が配設される。また、グレンタンク8には排出オーガ9及び縦オーガ10が設けられている。
【0017】
運転部11は、床部12の前部にハンドルコラム13を立設し、同ハンドルコラム13の上部にハンドル18を取り付けている。ハンドル18の後方である床部12の後部には運転席15を配置している。16は床部12の左側部に配設したサイドコラムである。17は運転部11の右側部に開放状態に形成した乗降用開放部である。乗降用開放部17が位置する床部12には乗降ステップ装置30を垂設して、同乗降ステップ装置30を介して運転部11への乗降が楽に行えるようにしている。
また、乗降ステップ装置30は、上下段に配置した上・下段ステップ32,33と、これら上・下段ステップ32,33間に介設した連動リンク機構34とを具備し、床部12の下方には連動リンク機構34を収容するための収容空間14が設けている。
【0018】
そして、乗降ステップ装置30は、踏み込み前位置から踏み込み後位置への上段ステップ32の踏み込み動作と、不使用位置から使用位置への下段ステップ33の張り出し動作を、連動リンク機構34を介して連動させると共に、踏み込み解除による踏み込み後位置から踏み込み前位置への上段ステップ32の復帰動作と、使用位置から不使用位置への下段ステップ33の復帰動作を、連動リンク機構34を介して連動させている。そして、連動リンク機構34には引張スプリング45を設けると共に、当該引張スプリング45は、上下方向に対向させて配置した上段ステップ32と下段ステップ33の各回動支点を支点越えして、上・下段ステップ32,33の各動作姿勢を保持する方向に弾性付勢している。
以下に、乗降ステップ装置30の構成と同乗降ステップ装置30の動作を詳細に説明する。
【0019】
[2.乗降ステップ装置]
以下、乗降ステップ装置30について具体的に説明する。図3は、乗降ステップ装置の拡大側面図であり、図4は、同正面説明図であり、図5は、同正面動作説明図である。
【0020】
乗降ステップ装置30は、図3及び図4に示すように、床部12の右側縁部と機体フレーム2との間に上下縦長枠状の支持枠体31を介設している。そして、支持枠体31は、上下方向に伸延する前後一対の上下方向伸延片31a,31aを具備して、両上下方向伸延片31a,31aの上部に上段ステップ32を取り付ける一方、両上下方向伸延片31a,31aの下部に下段ステップ33を取り付けると共に、両ステップ32,33の後端部間に連動リンク機構34を介設して構成している。なお、図において連動リンク機構34は上・下段ステップ32,33の後端部間に介設しているが、前端部間に介設してもよい。
【0021】
また、上段ステップ32は、ステップ面部32aと該ステップ面部32aを支持する前後一対の支持アーム32b,32bを具備している。一方、下段ステップ33は、ステップ面部33aと該ステップ面部33aを支持する前後一対の支持アーム33b,33bを具備している。そして、前後一対の支持アーム32b,32b及び33b,33bの基端部は、それぞれ、前後一対の上下方向伸延片31a,31aに、前後方向に軸線を向けた枢軸35及び36を介して枢支している。
枢軸35は前後方向に軸線を向けて上段ステップ32の基端部を枢支する上段側の枢軸であり、上段ステップ32の上下方向の回動支点として機能する。また、枢軸36は前後方向に軸線を向けて下段ステップ33の基端部を枢支する下段側の枢軸であり、下段ステップ33の上下方向の回動支点として機能する。また、枢軸35と枢軸36は上下方向伸延片31a,31aに上下方向に対向して配置されている。
【0022】
また、図5に示すように、後部側の上下方向伸延片31aの上部に上段ステップ32の上方回動を規制するストッパ52を突設すると共に、上段ステップ32の下方回動を規制するストッパ53を突設している。そして、上段ステップ32は、ストッパ52により踏み込み前位置である上方位置60Hに保持されるか、または、ストッパ53により踏み込み後位置である下方位置60Lに保持されるように構成され、いずれの位置においてもオペレータは上段ステップ32に足を掛けることができるようにしている。
【0023】
また、上段ステップ32は、引張バネ54により上方に弾性付勢されている。そのため、オペレータが当該上段ステップ32に足を掛けていない状態では、当該上段ステップ32は上方位置60Hに保持される。そして、オペレータが上段ステップ32に足を掛けると、当該上段ステップ32は下方へ押圧されるため、当該上段ステップ32は、下向きに回動して下方位置60Lに保持される。なお、上段ステップ32の回動範囲は小さくして、オペレータが上段ステップ32に足を掛けている状態で当該上段ステップ32が下向きに回動したとしてもオペレータに違和感がないように構成している。
【0024】
なお、上段ステップ32は、コンバインAの走行時においては上方位置60Hに位置し、前後一対の上下方向伸延片31a,31a間には収納されないが、上段ステップ32の張出量は小さく形成し、また地上高が大きく確保している。そのため、畦畔に上段ステップ32を接触させて該上段ステップ32を変形させるという不具合や、隣接する穀稈を上段ステップ32で押し倒すという不具合はない。
【0025】
一方、図5に示すように、後部側の上下方向伸延片31aの中途部に下段ステップ33の内側上方への回動を規制するストッパ55を突設すると共に、後部側の上下方向伸延片31aの下部に下段ステップ33の下方への回動を規制するストッパ56を突設して、当該下段ステップ33の回動範囲を略90°に制限している。そして、下段ステップ33は、使用位置(横臥姿勢)である第1下方位置70L及び第2下方位置70L’と、不使用位置(起立姿勢)である上方位置70Hの3位置のいずれかに保持されるように構成している。
【0026】
オペレータは、上方位置70Hにある下段ステップ33を手前側に回動させることにより、当該下段ステップ33を第1下方位置70Lに保持させることができ、また、第1下方位置70Lにある下段ステップ33を跳ね上げて前後一対の上下方向伸延片31a,31a間に収納することにより、当該下段ステップ33を上方位置70Hに保持させることができる。
【0027】
(連動リンク機構)
次に、上段ステップ32と下段ステップ33の間に介設した連動リンク機構34について、具体的に説明する。
【0028】
図4に示すように、連動リンク機構34は、上段ステップ32を枢支する枢軸35に基端部を同軸的に取り付けた上段側の第1連結アーム41及び第2連結アーム42と、下段ステップ33を枢支する枢軸36に基端部を同軸的に取り付けた下段側の第1連結アーム43及び第2連結アーム44と、上段側の第1連結アーム41の先端部と下段側の第1連結アーム43の先端部との間に介設した引張スプリング45と、上段側の第2連結アーム42の先端部と下段側の第2連結アーム44の先端部とを連動連結した連結ロッド46とから構成されている。
【0029】
上段側の第1連結アーム41は上方に伸延し、上段側の第2連結アーム42は右下方(収容空間14側)に伸延している。また、下段側の第1連結アーム43は下方に伸延し、下段側の第2連結アーム44は右上方(収容空間14側)に伸延している。
【0030】
上段ステップ32と上段側の第1連結アーム41と上段側の第2連結アーム42とは、一体として上段側の枢軸35を中心に回動する。一方、下段ステップ33と下段側の第1連結アーム43と下段側の第2連結アーム44とは、一体として下段側の枢軸36を中心に回動する。
【0031】
引張スプリング45の上端部は、上段ステップ32に連動連結した上段側の第1連結アーム41の先端部に連結ピン47を介して連結されている。また、引張スプリング45の下端部は、下段ステップ33に連動連結した下段側の第1連結アーム43の先端部に枢支ピン48を介して連結されている。
【0032】
上段ステップ32に枢軸35を介して連結した第2連結アーム42の先端部には摺動ピン49が突出状に取り付けられている。また、連結ロッド46の先端部にはその軸線方向に伸延する長孔50を形成している。そして、長孔50中に摺動ピン49を挿通して摺動自在に係合されている。また、下段ステップ33に枢軸36を介して取り付けた第2連結アーム44の先端部には、連結ピン51を介して連結ロッド46の基端部が連結されている。
【0033】
[3.乗車時におけるオペレータの動作及び乗降ステップ装置の動き]
次に、乗車時におけるオペレータの動作及び当該動作に伴う乗降ステップ装置30の動きについて、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0034】
(3−1.下段ステップを引き出す)
コンバインAの停止ないしは走行状態では、図6に示すように、上段ステップ32は、引張バネ54の引張弾性付勢力により踏み込み前位置である上方位置60Hに位置している。また、下段ステップ33は不使用位置である上方位置70Hに位置している。この際、引張バネ54は枢軸35,36の軸線位置よりも外側方に位置している。
この状態において、オペレータが下段ステップ33を手前側に回動させて横臥姿勢となすことにより、図6中、反時計回りに回動する下段ステップ33に枢軸35を介して連動する下段側の第1連結アーム43及び第2連結アーム44も一体となって反時計回りに回動する。このとき、回動開始時には、引張スプリング45は、下段側の第1連結アーム43を時計回りに弾性付勢している。そして、下段ステップ33の回動が継続すると、やがて引張スプリング45は枢軸35及び枢軸36を支点越えして、下段側の第1連結アーム43を反時計回りに弾性付勢する。下段ステップ33の手前側への回動は、ストッパ56を介して規制され、下段ステップ33は第1下方位置70Lに保持される(図7参照)。
また、下段ステップ33の回動に連動して第2連結アーム44の先端部が反時計廻りに回動し、同第2連結アーム44の先端部に連結した連結ロッド46が機体内方に摺動移動されることにより、上段側の第2連結アーム42の先端部に突設した摺動ピン49は、連結ロッド46の長孔50内を外側端縁部まで摺動される。
なお、上段ステップ32は、引張バネ54及び引張スプリング45の作用により上方位置60Hに保持されている。
【0035】
(3−2.下段ステップに足を掛ける)
図7の状態において、オペレータが下段ステップ33に足F1を掛けると(図8参照)、下段ステップ33は下方への押圧力を受けるが、ストッパ56の作用により、第1下方位置70Lに保持される。なお、上段ステップ32は、引張バネ54及び引張スプリング45の作用により上方位置60Hに保持されている。
【0036】
(3−3.上段ステップに足を掛ける)
図8の状態において、オペレータは、下段ステップ33に足F1を掛けることで上段ステップ32にもう一方の足F2を楽に掛けることができる(図9参照)。
この際、上段ステップ32は下向きに僅かに回動すると共に、ストッパ53の作用により、下方位置60Lに保持される。そして、上段ステップ32の回動に連動して上段側の第2連結アーム42が反時計廻りに回動して、同第2連結アーム42の先端部に突設した摺動ピン49は、連結ロッド46の長孔50内を内側端縁部まで摺動される。
一方、下段ステップ33は引張スプリング45の作用により上向きの力を受けるが、オペレータが足を掛けているため、下段ステップ33は第1下方位置70Lに保持される。
【0037】
(3−4.下段ステップから足を離す)
図9の状態において、オペレータは、下段ステップ33から足F1を離す(図10参照)と、下段ステップ33は引張スプリング45の引張弾性付勢力により上向きに回動し、第2下方位置70L’に変位する。
なお、下段ステップ33は、第2下方位置70L’の位置において、引張スプリング45の作用により上向きの力を受けているが、上段ステップ32が下方位置60Lに保持されているため、下段ステップ33は第2下方位置70L’に保持される。
【0038】
(3−5.上段ステップから足を離す)
図10の状態において、オペレータは、上段ステップ32から足を離す(図11参照)と、上段ステップ32は、引張バネ54の引張弾性付勢力により上向きに回動し、上方位置60Hに変位する。すなわち、上段ステップ32に対する踏み込みが解除されることにより、上段ステップ32は、踏み込み後位置から踏み込み前位置に変位する。
一方、下段ステップ33は、引張スプリング45の引張弾性付勢力により上向きに回動し、上方位置70Hに変位し、下段ステップ33は左右の支持枠体31間に収納される。すなわち、上段ステップ32に対する踏み込みが解除されることにより、下段ステップ33は、使用位置から不使用位置に変位する。
このように、上段ステップ32における踏み込み後位置から踏み込み前位置への変位と、下段ステップ33における使用位置から不使用位置への変位とが、連動リンク機構34を介して連動している。
【0039】
以上説明したとおり、搭乗時においては、オペレータは下段ステップ33を手前側に張り出し状に回動させ、その後、下段ステップ33と上段ステップ32に足F1,F2を順次掛けて運転部11に楽に搭乗することができる。また、搭乗後には、下段ステップ33は自動的に起立姿勢にて機体側に収納されるため、ことさら下段ステップ33を収納する操作を行う必要性がない。そのため、コンバインAの走行中に畦畔に下段ステップ33を接触させて乗降ステップを変形させるという不具合や、隣接する穀稈を下段ステップ33で押し倒すという不具合を防止することができる。
【0040】
[4.降車時におけるオペレータの動作及び乗降ステップ装置の動き]
次に、降車時におけるオペレータの動作及び当該動作に伴う乗降ステップ装置30の動きについて、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0041】
(4−1.上段ステップに足を掛ける)
図11の状態において、オペレータはいずれか一方の足F1を上段ステップ32に掛ける(図12参照)と、上段ステップ32は、引張バネ54の引張弾性付勢力に抗して下向きの押圧力を受けて下方に回動し、ストッパ53の作用により下方位置60Lに保持される(図12参照)。
また、上段側の第2連結アーム42は、上段ステップ32と一体に枢軸35を中心に反時計回りに回動して、摺動ピン49を介して連結ロッド46を内側上方へ摺動させる。そして、連結ロッド46の基端部に連結した下側の第1連結アーム43及び第2連結アーム44を反時計廻りに回動させる。これら連結アーム43,44の回動に連動して、下段ステップ33は、上方位置70Hから第2下方位置70L’に変位する。
【0042】
(4−2.下段ステップに足を掛ける)
図12の状態において、オペレータは、上段ステップ32に足F1を掛けたまま下段ステップ33にもう一方の足F2を掛ける(図13参照)と、下段ステップ33は第2下方位置70L’から下向きに回動し、第1下方位置70Lに変位する。なお、上段ステップ32は、下方位置60Lから変位しない。
【0043】
(4−3.上段ステップから足を離す)
図13の状態で、オペレータは、上段ステップ32から足を離す(図14参照)と、上段ステップ32は引張バネ54の引張弾性付勢力により上向きに回動し、上方位置60Hに変位する。また、この回動により、上段側の第2連結アーム42の先端部に突設した摺動ピン49は、連結ロッド46の長孔50内を内側端縁部まで摺動する。
なお、下段ステップ33は、第1下方位置70Lから変位しない。
【0044】
(4−4.下段ステップから足を離す]
図14の状態で、オペレータは、下段ステップ33から足F2を離す(図15参照)。
ただし、上段ステップ32は上方位置60Hから変位せず、また、下段ステップ33は第1下方位置70Lから変位しない。
【0045】
(4−5.下段ステップを機体側に収納する)
図15の状態で、オペレータは、下段ステップ33を上方へ時計廻りに回動させて、該下段ステップ33を起立姿勢となして左右の支持枠体31間に収納する(図16参照)。この際、下段ステップ33は不使用位置である上方位置70Hに位置している。そして、引張バネ54は枢軸35,36の軸線位置よりも外側方に位置して、上段ステップ32を引張弾性付勢力により上方位置60Hに保持する。
【0046】
以上説明したとおり、降機時においては、オペレータが上段ステップ32に足を掛けると、下段ステップ33が自動的に使用位置へ張り出し動作するので、下段ステップ33を引き出す操作を行う必要性がない。そのため、何ら手間を要することなく、簡単にコンバインAから降機することができる。
【0047】
本発明に係る実施の一形態について具体的に説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【符号の説明】
【0048】
30…乗降ステップ装置
32…上段ステップ
33…下段ステップ
34…連動リンク機構
45…引張スプリング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転部へ乗降するための農業機械の乗降ステップ装置であって、
前記乗降ステップ装置は、上下段に配置した上・下段ステップと、これら上・下段ステップ間に介設した連動リンク機構とを具備し、
踏み込み前位置から踏み込み後位置への上段ステップの踏み込み動作と、不使用位置から使用位置への下段ステップの張り出し動作を、連動リンク機構を介して連動させると共に、踏み込み解除による踏み込み後位置から踏み込み前位置への上段ステップの復帰動作と、使用位置から不使用位置への下段ステップの復帰動作を、連動リンク機構を介して連動させたことを特徴とする農業機械の乗降ステップ装置。
【請求項2】
前記連動リンク機構には引張スプリングを設けると共に、当該引張スプリングは、上下方向に対向させて配置した上段ステップと下段ステップの各回動支点を支点越えして、上・下段ステップの各動作姿勢を保持する方向に弾性付勢することを特徴とする請求項1記載の農業機械の乗降ステップ装置。
【請求項1】
運転部へ乗降するための農業機械の乗降ステップ装置であって、
前記乗降ステップ装置は、上下段に配置した上・下段ステップと、これら上・下段ステップ間に介設した連動リンク機構とを具備し、
踏み込み前位置から踏み込み後位置への上段ステップの踏み込み動作と、不使用位置から使用位置への下段ステップの張り出し動作を、連動リンク機構を介して連動させると共に、踏み込み解除による踏み込み後位置から踏み込み前位置への上段ステップの復帰動作と、使用位置から不使用位置への下段ステップの復帰動作を、連動リンク機構を介して連動させたことを特徴とする農業機械の乗降ステップ装置。
【請求項2】
前記連動リンク機構には引張スプリングを設けると共に、当該引張スプリングは、上下方向に対向させて配置した上段ステップと下段ステップの各回動支点を支点越えして、上・下段ステップの各動作姿勢を保持する方向に弾性付勢することを特徴とする請求項1記載の農業機械の乗降ステップ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−4722(P2011−4722A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154239(P2009−154239)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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