説明

農業用フィルム

【課題】 本発明は、農業用フィルムとして使用できる強度と耐候性を備え、太陽光からの光線を十分透過すると共に、長期間に亘って太陽光からの熱線を十分に遮蔽することができ、且つ、紫外線を吸収することによって、農作物の栽培において害虫類や病原糸状菌類からの被害を軽減でき減農薬栽培を達成することができる農業用フィルムを提供する。
【解決手段】 本発明の農業用フィルムは、熱可塑性樹脂100重量部、熱線遮蔽材として平均粒子径が1〜20μmのグラファイト粒子0.01〜5重量部及び紫外線吸収剤0.01〜5重量部を含有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物の栽培施設に使用される農業用フィルムに関する。詳しくは、優れた透明性、遮熱性及び紫外線吸収性を有しており、農業用ハウスを構成する外張りフィルムとして好適に用いられる農業用フィルムであって、特に、夏季に農業用ハウス内の温度上昇を抑えることによって農作物の高温障害を生じさせずに生育しやすい環境をつくり、且つ、紫外線を吸収することで害虫や病原糸状菌の活動を抑制して農薬などの散布回数を軽減することができる農業用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ほうれん草、小松菜、チンゲン菜、セロリ、水菜などの軟弱野菜(以下、単に「野菜」という)は、農業用フィルムを外張りした農業用ハウス内で栽培される。野菜の栽培には、太陽光からの熱線を過剰とならない程度に農業用ハウス内に透過させる必要がある。
【0003】
太陽光からの熱線量が不足すると、野菜の生育不良や野菜の品質低下を生じてしまう一方、太陽光からの熱線量が多いと、特に5月から9月頃の比較的気温が高い時期(以下、「高温時期」という)に野菜を栽培した場合、その他の比較的気温が低い時期に比べ、発芽率の低下や生育遅延、ほうれん草においては萎凋病、小松菜などにおいては萎黄病などの病害が発生しやすく、収穫した野菜の良品率も低下してしまうという問題が生じた。
【0004】
上記問題を解決するために、従来は高温時期の野菜の栽培を休止するか、或いは、高温時期に、農業用塩化ビニルフィルムや農業用ポリオレフィン系フィルムなどの農業用フィルムの外面に、更に寒冷紗、遮光ネット、遮光幕、不織布などの遮光資材を重ね合わせて農業用フィルムの外面を遮光資材で被覆して、野菜を栽培する方法がとられていた。
【0005】
しかしながら、上記方法では、太陽光からの熱線の遮蔽はできても、太陽光からの光線量が不足して野菜の生育不良や品質低下が生じるといった別農業用フィルム問題を生じていた。
【0006】
更に、別の方法として、熱線吸収剤や熱線遮蔽剤を練り込んだ農業用フィルムを用いることで太陽光からの熱線を吸収又は遮蔽する方法もあり、特許文献1及び特許文献2には、熱線吸収剤としてナフタロシアニン化合物を用いた方法が開示されている。しかしながら、上記方法では、ナフタロシアニン化合物の耐候性及び熱線遮蔽効果の持続性に問題があった。
【0007】
又、特許文献3及び特許文献4には、アンチモンがドープされた酸化スズ(以下「ATO」と略す)微粒子或いはスズがドープされた酸化インジウム(以下「ITO」と略す)微粒子を含む溶液をフィルム基材表面に塗布する方法が開示されている。更に、ATO微粒子やITO微粒子を熱可塑性樹脂フィルム中に練りこむ方法が特許文献5に開示されている。
【0008】
しかしながら、何れの方法も、ATO微粒子やITO微粒子の価格が非常に高価であり、経済的にも不利になること、又、ATO微粒子やITO微粒子をフィルム基材に塗布する場合においては、塗布された塗膜が基材から剥離し、熱線遮蔽効果が低下するという問題点があった。
【0009】
更には、特許文献6及び特許文献7には、熱可塑性樹脂フィルム中に酸化チタンを含有させる方法が開示されている。しかしながら、酸化チタンは熱線を遮熱するものの、光線透過率が悪いため、作物の生育不足が生じる問題があった。
【0010】
一方、近年、紫外線と農作物の栽培環境との関係についても盛んに研究が行われており、例えばスリップス類、アブラムシ類、アザミウマ類、コナジラミ類、ハモグリバエ類などの害虫類は、紫外線をカットする農業用フィルムを使用すると農業用ハウス内への侵入が減少することが確認されている。そして、農業用ハウス内に害虫類が仮に侵入してもその活動が抑制されるという報告がなされている。
【0011】
又、農業用ハウス内の主要病害類である灰色カビ病や菌核病といった病原糸状菌類は、胞子によって伝播し作物への被害を大きくすることが知られている。これは、胞子の形成において、特に紫外線の存在が大きく影響し、紫外線が農業用ハウス内により多く入れば、病原糸状菌類の活動がより活発化することが原因であるとされている。
【0012】
そこで、上記害虫類や病原糸状菌類の活動を抑制させるためにも紫外線を減少させることは、農作物の栽培において非常に重要であると考えられ、紫外線を減少させることにより、最終的には農薬の散布回数が減少することが期待でき、農業生産者の労力軽減にもつながり、更に、農薬の使用頻度が少なくなることで農作物自身の安全性を向上させることができる。
【0013】
【特許文献1】特開2003−265033号公報
【特許文献2】特開2003−265034号公報
【特許文献3】特開平10−250001号公報
【特許文献4】特開平10−250002号公報
【特許文献5】特開平9−140275号公報
【特許文献6】特開2007−222061号公報
【特許文献7】特開2006−314218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、農業用フィルムとして使用できる強度と耐候性を備え、太陽光からの光線を十分透過すると共に、長期間に亘って太陽光からの熱線を十分に遮蔽することができ、且つ、紫外線を吸収することによって、農作物の栽培において害虫類や病原糸状菌類からの被害を軽減でき減農薬栽培を達成することができる農業用フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の農業用フィルムは、熱可塑性樹脂100重量部、熱線遮蔽材として平均粒子径が1〜20μmのグラファイト粒子0.01〜5重量部及び紫外線吸収剤0.01〜5重量部を含有していることを特徴とする。
【0016】
本発明の農業用フィルムを構成している熱可塑性樹脂としては、従来から農業用フィルムに使用されているものが用いられ、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などが挙げられ、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリエチレン系樹脂がより好ましく、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。なお、熱可塑性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されもよい。
【0017】
上記ポリエチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
【0018】
又、上記ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ホモポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
【0019】
なお、エチレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテンなどが挙げられ、又、プロピレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−へキセン、1−オクテンなどが挙げられる。
【0020】
又、本発明の農業用フィルムは、熱線遮蔽剤としてグラファイト粒子を含有している。このグラファイト粒子としては、所謂、天然グラファイトと人工グラファイトがあるが、何れのグラファイトも用いることができる。天然グラファイトと人工グラファイトとを併用してもよい。
【0021】
そして、農業用フィルム中におけるグラファイト粒子の含有量は、少ないと、農業用フィルムの熱線の遮蔽性が低下し、多いと、農業用フィルムの透明性が低下して全光線透過率が低下するので、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部に限定され、0.1〜2重量部が好ましい。
【0022】
グラファイト粒子の平均粒子径は、小さいと、農業用フィルムの熱線の遮蔽性が低下し、又は、熱可塑性樹脂中への分散性が低下して農業用フィルムの製膜性が低下し、大きいと、農業用フィルムの透明性が低下して全光線透過率が低下するので、1〜20μmに限定され、3〜10μmが好ましく、5〜7μmがより好ましい。なお、グラファイト粒子の平均粒子径は、レーザー回折法によって測定されたものをいう。
【0023】
更に、本発明の農業用フィルムには紫外線吸収剤が含有されている。このような紫外線吸収剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤などが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0024】
農業用フィルム中における紫外線吸収剤の含有量は、少ないと、農業用フィルムの紫外線吸収性が低下し、害虫類や病原糸状菌類の活動を抑える効果が低減し、多いと、農業用フィルムの表面に紫外線吸収剤がブリードアウトして白化を生じ、農業用フィルムの全光線透過率が低下するので、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部に限定され、0.05〜3重量部が好ましく、0.1〜1重量部がより好ましい。
【0025】
更に、本発明の農業用フィルムには、その物性を阻害しない範囲内において、無機保温剤、有機保温剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、防霧剤、滑剤、顔料などが添加されてもよい。
【0026】
無機保温剤は、農業用フィルムの保温性の向上と、農業用フィルムの製膜時の押出し変動の改善のために添加される。このような無機保温剤としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、燐酸リチウム、燐酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、クレー、タルク、ハイドロタルサイト類、リチウムアルミニウム複合水酸化物などが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されもよい。
【0027】
光安定剤としては、公知のものが使用できるが、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、コハク酸ジメチル‐1‐(2‐ヒドロキシエチル)‐4‐ヒドロキシ‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン重縮合物、テトラキス(2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル)‐1,2,3,4‐ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{[6‐[(1,1,3,3‐テトラメチルブチル)アミノ]‐1,3,5‐トリアジン‐2,4‐ジイル][(2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル)イミノ]}などが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されもよい。
【0028】
酸化防止剤としては、公知のものが使用できるが、熱安定剤としての効果を兼ね備えているものが好ましい。このような酸化防止剤としては、例えば、カルボン酸の金属塩、フェノール系酸化防止剤、有機亜燐酸エステルなどのキレーターが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されもよい。
【0029】
防霧剤としては、公知のものが用いられ、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などの界面活性剤が挙げられる。又、滑剤としては、公知のものが用いられ、例えば、ステアリン酸アマイドなどの飽和脂肪酸アマイド、エルカ酸アマイド、オレイン酸アマイドなどの不飽和脂肪酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイドなどのビスアマイドなどが挙げられる。
【0030】
農業用フィルムには、その表面に生じた結露水を水膜状にして円滑に下方に向かって流下させるために、農業用フィルムの物性を損なわない範囲において防曇剤を含有させてもよい。このような防曇剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、グリセリンステアリン酸エステル、ジグリセリンステアリン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステル、ソルビトールグリセリンステアリン酸エステル等の多価アルコール飽和脂肪酸エステル、グリセリンオレイン酸エステル、ジグリセリンオレイン酸エステル等の多価アルコール不飽和脂肪酸エステル等が挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されもよい。
【0031】
又、農業用フィルムに防曇剤を含有させる代わりに、農業用フィルムの表面に防曇性被膜を形成してもよい。このような防曇性被膜としては、例えば、コロイダルシリカやコロイダルアルミナに代表される無機酸化ゾルのコーティング膜、界面活性剤を主成分とする液のコーティング膜、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、多糖類、ポリアクリル酸などの親水性樹脂を主成分とする膜が挙げられる。なお、コロイダルシリカやコロイダルアルミナを主成分とする無機酸化ゾルのコーティング膜には、必要に応じて、界面活性剤や親水性樹脂を添加してもよい。
【0032】
そして、農業用フィルムの表面に防曇性被膜を形成する方法としては、例えば、グラビアコーターなどを用いたロールコート法、バーコード法、ディップコート法、スプレー法、はけ塗り法などが挙げられる。
【0033】
農業用フィルムの厚さは、薄いと、農業用フィルムの熱線の遮蔽性や機械的強度が低下することがあり、厚いと、農業用フィルムの裁断、接合、展張作業などが困難になり、取扱い性が低下することがあるので、20〜200μmが好ましく、50〜150μmがより好ましい。
【0034】
又、農業用フィルムは単層からなるものでもよいが、農業用フィルムの機械的強度及びアンチブロッキング性を向上させるために、農業用フィルムの一面に熱可塑性樹脂フィルムが積層一体化されることが好ましく、農業用フィルムの両面に熱可塑性樹脂フィルムが積層一体化されることがより好ましい。
【0035】
農業用フィルムの一面又は両面に積層一体化される熱可塑性樹脂フィルムには、農業用フィルムと同様に、上述のグラファイト粒子又は紫外線吸収剤の何れか一方或いは双方が含有されていてもいなくてもよいが、紫外線吸収剤が含有されていることが好ましい。
【0036】
又、農業用フィルムの一面又は両面に積層一体化される熱可塑性樹脂フィルムには、農業用フィルムの透明性が低下して全光線透過率が低下することがあるので、グラファイト粒子が含有されていないことが好ましい。
【0037】
上記熱可塑性樹脂フィルムを構成している熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などが挙げられ、ポリエチレン系樹脂が好ましく、エチレン−α−オレフィン共重合体がより好ましい。なお、熱可塑性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されもよい。なお、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂は上述と同様であるのでその説明を省略する。
【0038】
なお、上記熱可塑性樹脂フィルムに防曇剤を含有させ、或いは、熱可塑性樹脂フィルムの表面に防曇性皮膜を形成してもよい。
【0039】
次に、農業用フィルムの製造方法について説明する。この農業用フィルムの製造方法としては、特に限定されない。農業用フィルムが単層の場合には、例えば、熱可塑性樹脂、グラファイト粒子及び紫外線吸収剤を含有する熱可塑性樹脂組成物を押出機に供給し溶融混練して押出機から押出し、インフレーション法、Tダイ押出法、カレンダー法等によって農業用フィルムを製造する方法が挙げられる。
【0040】
農業用フィルムの一面に熱可塑性樹脂フィルムが積層一体化されている場合には、例えば、(1)農業用フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとを別々に製造し、農業用フィルムと熱可塑性樹脂フィルムとを積層一体化させる方法、(2)熱可塑性樹脂、グラファイト粒子及び紫外線吸収剤を含有する熱可塑性樹脂組成物を第一押出機に供給し溶融混練して第一押出機から押出す一方、熱可塑性樹脂と必要に応じて紫外線吸収剤などの添加剤とを第二押出機に供給して溶融混練し第二押出機から押出し、第一、第二押出機を共に接続させたダイに供給して、インフレーション法、Tダイ押出法、カレンダー法等によって、熱可塑し樹脂フィルムが一面に積層一体化された農業用フィルムを製造する方法が挙げられる。なお、農業用フィルムの両面に熱可塑性樹脂フィルムが積層一体化されている場合には、上記(2)の方法において、第三押出機を第一、第二押出機を接続させているダイに接続させ、第三押出機に熱可塑性樹脂と必要に応じて紫外線吸収剤などの添加剤とを供給して同様の要領で農業用フィルムを製造すればよい。
【発明の効果】
【0041】
本発明の農業用フィルムは、熱可塑性樹脂100重量部、熱線遮蔽材として平均粒子径が1〜20μmのグラファイト粒子0.01〜5重量部及び紫外線吸収剤0.01〜5重量部を含有していることを特徴とするので、農業用フィルムとして使用できる機械的強度及び耐候性を備えているだけでなく、太陽光からの光線量を十分透過すると共に、長期間に亘って太陽光からの熱線を十分に遮蔽することができ、且つ、紫外線も遮蔽することができるため、野菜の生育を妨げることなく、害虫や病害の被害から作物を守ることができる。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0043】
(実施例1〜9、比較例1〜8)
第一〜三押出機が接続具を介して一のサーキュラダイに接続されてなる製膜装置を用意した。この製膜装置の第一押出機を層(A)用の押出機として、表1に示した所定量の直鎖状低密度ポリエチレン(ダウケミカル社製 商品名「ダウレックス2045G」)、低密度ポリエチレン(旭化成ケミカルズ社製 商品名「サンテックF2206」)、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバジャパン社製 商品名「TINUVIN326」)、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(チバジャパン社製 商品名「CHIMASSORB81」)及びトリアジン系紫外線吸収剤(チバジャパン社製 商品名「TINUVIN1577」)を第一押出機に供給し、第二押出機を層(B)用の押出機として、表1に示した所定量のエチレン−酢酸ビニル共重合体A(東ソー社製 商品名「ウルトラセン627」)、グラファイト粒子A(中越黒鉛工業所社製 商品名「BF50」、平均粒子系:5μm)、グラファイト粒子B(中越黒鉛工業所社製 商品名「BSP−10AS」、平均粒子系:10μm)、グラファイト粒子C(中越黒鉛工業所社製 商品名「BSP−20AS」、平均粒子系:20μm)、グラファイト粒子D(中越黒鉛工業所社製 商品名「APF−3000」、平均粒子系:0.5μm)、グラファイト粒子E(中越黒鉛工業所社製 商品名「BSP−2」、平均粒子系:40μm)、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバジャパン社製 商品名「TINUVIN326」)、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(チバジャパン社製 商品名「CHIMASSORB81」)、トリアジン系紫外線吸収剤(チバジャパン社製 商品名「TINUVIN1577」)、カーボンブラック(三菱化学社製 商品名「#30」、平均粒子径:0.3μm)及び酸化チタン(石原産業社製 商品名「CR−60」、平均粒子径:0.2μm)を第二押出機に供給し、第三押出機を層(C)用の押出機として、表1に示した所定量のエチレン−酢酸ビニル共重合体B(東ソー社製 商品名「ウルトラセン513」)、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバジャパン社製 商品名「TINUVIN326」)、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(チバジャパン社製 商品名「CHIMASSORB81」)及びトリアジン系紫外線吸収剤(チバジャパン社製 商品名「TINUVIN1577」)を第三押出機に供給して、それぞれの押出機内で溶融混練した後、第一〜三押出機から溶融状態の樹脂組成物をサーキュラダイに供給して、層(A)、層(B)及び層(C)がこの順に積層一体化された状態となるようにサーキュラダイから円筒状に共押出製膜すると共に、サーキュラダイの中心部から圧縮空気を供給し、共押出された樹脂組成物を周方向に延伸して長尺の円筒状フィルムを製膜し、この円筒状フィルムを切り開いて巻き取ることにより、層(A)、層(B)及び層(C)の厚さ比が、1/7/2で且つ総厚さが100μmの農業用フィルムを得た。
【0044】
得られた農業用フィルムの全光線透過率、熱線遮蔽率、遮熱性及び紫外線透過率を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0045】
(全光線透過率)
得られた農業用フィルムの550nmにおける全光線透過率を濁度計(日本電色工業株式会社製 商品名「NDH2000」)を用いて測定した。
【0046】
(熱線遮蔽率)
自記分光光度計(日立製作所製、商品名「U−3500」)を用いて300〜2100nmでの農業用フィルムの全光線透過率を測定した。次に、測定された全光線透過率と、太陽からの日射エネルギーの波長依存性データとから農業用フィルムを透過するエネルギー(A)を計算した。この透過エネルギー(A)と、農業用フィルムを透過しない場合の太陽光エネルギー(B)とに基づいて下記式により熱線遮断率を算出した。
熱線遮断率(%)=100×[1−透過エネルギー(A)/太陽光エネルギー(B)]
【0047】
(遮熱性)
密閉したパイプハウス(高さ1.5m×横1m×奥行2.5m)に農業用フィルムを展張し、夏場の日中の地温及び気温を測定した。地温は、パイプハウス中央部とパイプハウス外において土中深さ10cmの地温を熱電対を用いてそれぞれ測定した。気温は、快晴時の午後2時に、密閉パイプハウスの内外でそれぞれ測定した。これらの地温及び気温に基づいて下記式に基づいて地温差及び気温差を算出した。
地温差(℃)=(パイプハウス中央部の地温)−(パイプハウス外の地温)
気温差(℃)=(パイプハウス内の気温)−(パイプハウス外の気温)
【0048】
(紫外線透過率)
自記分光光度計(日立製作所製 商品名「U−3500」)を用いて、得られた農業用フィルムの波長350nmにおける全光線透過率を測定した。
【0049】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂100重量部、熱線遮蔽材として平均粒子径が1〜20μmのグラファイト粒子0.01〜5重量部及び紫外線吸収剤0.01〜5重量部を含有していることを特徴とする農業用フィルム。
【請求項2】
熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の農業用フィルム。
【請求項3】
一面に熱可塑性樹脂フィルムが積層一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の農業用フィルム。
【請求項4】
熱可塑性樹脂フィルムがポリオレフィン系樹脂フィルムであることを特徴とする請求項3に記載の農業用フィルム。

【公開番号】特開2010−81808(P2010−81808A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251290(P2008−251290)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(596111276)積水フイルム株式会社 (133)
【Fターム(参考)】