説明

農水産物の有効成分から栄養食材の製法

【課題】農水産物の売れ残りや、不可食部分や、商品価値の無い不良品などの廃棄物には、栄養価の優れた有効成分が含まれている。これらの有効成分を分離して利用しようとするとき、含まれている酸化還元酵素や、加水分解酵素などによって栄養価の活性が減少し易い。よって、活性が低下しないように、短時間のうちに粉砕、分離が必要となる。分離した有効成分は栄養食材に用いられる。
【解決手段】立体連続遠心分離機を用い、回転数が異なる円筒による動圧によって硬い組織も微細化し、有効成分を抽出し易くすると同時に、迅速に連続的に固液分離ができ、有効成分の活性の低下を抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不安定な農畜水産物の有効成分を迅速に分離して活性低下を防ぎ、栄養食材を製造する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境を考えた循環型社会、ゼロエミッション、バイオマス利用、地域振興などの立場から、農産物、畜産物、水産物などの残渣や不可食部分の有効利用が要望されている。そこで、農水産物の売れ残り品や、不可食部分や、色、形、などによる不良品などの廃棄物や、食品廃棄物などから、栄養成分や生体調節に関わる機能成分など分離して、有効利用することが求められている。
【0003】
また、高齢化や健康知識の向上にともなって、動脈硬化、糖尿病、高血圧などの生活習慣病やガン予防など国民の健康に関する関心が高まってきている。そこで、農水産物や、ほかに野生の動植物などから、生活習慣病や、ガン予防などに薬効のある有効成分を分離し、サプリメントや食品に添加する食材として利用するのが有効である。
【0004】
一般に、破砕すると細胞中に包まれていた酵素類が溶出され活性化される。それによって成分が変質したり、栄養成分や機能性成分の活性が低下したりする。そこで、農水産物の組織を微細化して抽出率を向上させ、同時に迅速に有効成分を迅速に分離できる装置が必要になってくる。
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第1736590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
農水産物の廃棄物などは、不可食部分が多いので一般に硬い組織であることが多い。
この組織を微細化しないと抽出率は低下する。たとえば不可食部分の大根の葉には、カロテンや、葉酸ビタミンCなど多くの栄養成分を含んでいる。しかし、大根の葉は繊維成分が多く、これらの栄養成分を効率よく抽出するのは、まず微細化する必要がある。よって効率の良い微細化のできる能力をもった装置が必要である。
【0007】
栄養成分や機能性成分は、活性の低下をまねく不安定な成分が多い。組織を粉砕すると細胞中にふくまれていた多くの酵素が活性化して働き始める。たとえば、リンゴを磨り潰すと、酸化酵素によって褐変する。また大根などにふくまれ抗ガン作用があると注目されているイソチオシアネートの配糖体は、磨り潰すと直ちに加水分解酵素が働いて揮発性の不安定な物質になる。よって、微細化後に直ちに可溶部と不要部に分離する処置が必要である。
【0008】
農水産物の廃棄物には不可食部分が多いので組織は硬いものが多い。有効成分が高収量で抽出されるためには組織の微細化が必要である。それと共に、不安定な有効成分の活性が低下しないうちに迅速な抽出液と固形残渣との分離が必要である。この課題を解決するための手段として立体型連続遠心分離機(特許文献1)の使用がのぞましい。
【0009】
この装置は、回転筒とスクリュウコンベアーを共に高速回転させる。両者は同じ方向に回るが、わずかに回転差があり、比重の重い固体は外壁からコンベアーを伝わって次第に下に移動し、下口から取り出す。逆に比重の軽い液体は中心部から上部に連続的に取り出せる。回転差によって衝突の動圧がかかりより微細化する。回転数は通常の遠心機より大きく、よって遠心効果は3500〜8000Gに達し、通常の遠心機の1500〜
3000Gより大きい。よってより小さな微粒子でも分別でき、より透明な抽出液がえられる。こうして、固液分離が迅速にかつ連続的になされ、有効成分の活性低下がより防がれる。
【0010】
固液分離した有効成分は、減圧濃縮による濃厚溶液やエキス、凍結乾燥や噴霧乾燥による粉末化などによって、栄養食材とする。この栄養食材は、特定保健用食品や栄養機能食品に加えたり、あるいはサプリメントに用いられる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
農水産物や、農産物の廃棄物には、栄養価の優れた有効成分が含まれている。これらの有効成分を分離して利用しようとするとき、組織が硬かったりまた、活性の不安定な栄養素も多い。よって、立体連続遠心分離機を用い、回転数が異なる円筒による動圧によって硬い組織も微細化し、有効成分を抽出し易くすると同時に、迅速に短時間で連続的に固液分離ができ、有効成分の活性の低下を抑える。
【発明の効果】
【0012】
農水産物のなかで、比較的硬いスイカの皮なども微細化でき、抗酸化性のあるボリフェノールのような有効成分も分離できる。また遠心力が大きいので固液の分離力がよく、それだけ収率良く分離が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
比較的硬いスイカの皮の微粉砕の例と、粉砕後に加水分解酵素によって有効成分が低下しやすい大根について、実施した2例について述べる。
【実施例1】
【0014】
スイカの皮を破砕機で2〜3cmに粗く砕いた後に、立型連続遠心分離機(VSD社製 VSD−200−22kw)を用い4060Gの遠心力で微細化と固液分離を同時に行った。スイカの皮17kgから4,2kgの固形物(含水率88.0%)と12Lの抽出液を得た。
【実施例2】
【0015】
大根の根部分を破砕機で粗く砕いた後に、立型連続遠心分離機(VSD社製 VSD−200−22kw)用い3500Gの遠心力で微細化と固液分離を行った。大根300kgを4時間の速度で連続的に処理し、102kgの固形物(含水率84.7%)と180kgの抽出物を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農水産物及びその廃棄物から、立型連続遠心分離機によって、その中に含まれる有効成分を微細化による抽出率の向上と、酵素等によって活性が低下する有効成分を、直ちに固液分離して有効成分の活性低下を防ぎ、ついで減圧濃縮、凍結乾燥、噴霧乾燥することなどによって栄養食品の食材やサプリメントに使用する方法

【公開番号】特開2007−43986(P2007−43986A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233203(P2005−233203)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(397020630)
【出願人】(591273502)
【出願人】(305041371)
【Fターム(参考)】