説明

農用作業車

【課題】防除散布装置及び薬液タンクを備えた農用作業車において、薬液タンクを搭載したままでリヤアクスルケースのオイル交換をできるようにする。
【解決手段】防除散布装置11及び薬液タンク9を備えた農用作業車において、走行車体2の後側部には後輪への伝動装置を内装しているリヤアクスルケース36を左右方向に沿わせて配設し、リヤアクスルケース36の左右両側部に左右後輪ファイナルケース41,41を取り付け、左右後輪ファイナルケース41,41の下端部に左右後輪4,4を支架する。リヤアクスルケース36の左右外側端部のいずれか一方に給油口43を設けるにあたり、走行車体2の後部に搭載している薬液タンク9よりも平面視で左右外側に突出している部位に給油口43を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農用作業車に関し、特にリヤアクスルケースの給油口に関する。
【背景技術】
【0002】
農用作業車において、走行車体の操縦席の周囲に薬液タンクを設け、センター散布ブームの左右両側部に左右散布ブームを設けたものは、公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−178108公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
背景技術の農用作業車では、走行車体の後部にリヤアクスルケースを設け、薬液タンクの下方に位置するリヤアクスルケースの中央部に給油口を設けた構成である。このような構成であると、農用作業車に薬液タンクを搭載している状態では、薬液タンクの下方に給油口が位置し、薬液タンクを取り外さないと、リヤアクスルケースのオイル交換ができないという不具合があった。そこで、本発明はこのような不具合を解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、このような不具合を解消するために、次のような技術的手段を講じた。
請求項1の発明は、走行車体(2)の後側部には後輪への伝動装置を内装しているリヤアクスルケース(36)を左右方向に沿わせて配設し、該リヤアクスルケース(36)の左右両側部に左右後輪ファイナルケース(41,41)を取り付け、該左右後輪ファイナルケース(41,41)の下端部に左右後輪(4,4)を支架した農用作業車において、前記リヤアクスルケース(36)の左右外側端部のいずれか一方に給油口(43)を設けるにあたり、前記走行車体(2)の後部に搭載している薬液タンク(9)よりも平面視で左右外側に突出している部位に給油口(43)を設けたことを特徴とする農用作業車とする。
【0006】
請求項2の発明は、前記リヤアクスルケース(36)における給油口(43)の設けていない左右両側端部に後輪操舵角センサ(46)を設け、前記走行車体(2)の後部に搭載している薬液タンク(9)よりも平面視で左右外側に突出している部位に前記後輪操舵角センサ(46)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の農用作業車とする。
【0007】
請求項3の発明は、前記リヤアクスルケース(36)の左右両側端部に給油口(43)を設けるにあたり、前記リヤアクスルケース(36)の左右両側部に取り付けている後輪ファイナルケース(41)の上端面の高さと略同じ高さで且つ接近させるように設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の農用作業車とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によると、リヤアクスルケース(36)の左右外側端部のいずれか一方に給油口(43)を設けるにあたり、走行車体(2)の後部に搭載している薬液タンク(9)よりも平面視で左右外側に突出している部位に給油口(43)を設けたことにより、薬液タンク(9)を搭載したままでリヤアクスルケース(36)のオイル交換を迅速にすることができる。
【0009】
請求項2の発明によると、請求項1の発明の前記効果に加えて、リヤアクスルケース(36)における給油口(43)の設けていない左右両側端部に後輪操舵角センサ(46)を設け、走行車体(2)の後部に搭載している薬液タンク(9)よりも平面視で左右外側に突出している部位に後輪操舵角センサ(46)を設けたので、リヤアクスルケース(36)にオイルを給油する際に後輪操舵角センサ(46)が邪魔にならずに、後輪操舵角センサ(46)へのオイルの付着を防止しながら容易にオイルを給油することができる。
【0010】
請求項3の発明によると、請求項1又は請求項2の発明の前記効果に加えて、給油口(43)をリヤアクスルケース(36)の左右両側部に取り付けている後輪ファイナルケース(41)の上端面の高さと略同じ高さで且つ接近させるように給油口(43)を設けたので、給油の際にオイルジョッキの蛇腹状ホースが後輪ファイナルケース(41)に干渉するようなこともなくし、オイルを給油口(43)から容易に給油することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】農用作業車の側面図。
【図2】農用作業車の正面図。
【図3】農用作業車の伝動装置のブロック図。
【図4】農用作業車の平面図。
【図5】農用作業車の背面図。
【図6】農用作業車の後部の側面図。
【図7】農用作業車の平面図。
【図8】農用作業車の背面図。
【図9】農用作業車の平面図。
【図10】農用作業車の平面図。
【図11】農用作業車の平面図。
【図12】農用作業車の後部の側面図。
【図13】農用作業車の背面図。
【図14】農用作業車の後部の側面図。
【図15】農用作業車の後部の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本発明を備えた薬液を散布する散布作業車1について説明する。
散布作業車1の走行車体2には略等径の左右前輪3,3、左右後輪4,4が設けられていて、車体2の前側部には防除散布装置11を取り付けている。走行車体2の左右前輪3,3間上方にはエンジンEを搭載し、エンジンE回りをボンネット5で被覆している。左右前輪3,3と左右後輪4,4間上方には操縦席6を設け、操縦席6の前方にハンドル7を設けている。ハンドル7を左右に操舵すると、左右前輪3,3及び左右後輪4,4が同時に関連的に操舵され小回り走行のできる四輪操舵構成としている。また、操縦席6の回りを取り囲むように薬液タンク9を着脱自在に設け、その下方に防除ポンプ10を設けている。
【0013】
防除散布装置11は機体前方に位置するセンター散布ブーム11aと、センター散布ブーム11aの左右両側に設けた左右散布ブーム11b,11bとで構成している。そして、防除散布装置11を昇降シリンダ15により昇降し、開閉シリンダ17により左右散布ブーム11b,11bを左右に突出した散布作業状態と、走行車体2の側方に沿わせた収納状態に移動するように構成している。そして、薬液タンク9の薬液は防除ポンプ10により防除散布装置11に送られ、センター散布ブーム11a及び左右散布ブーム11b,11bの散布ノズル14,…から薬液が散布される。
【0014】
次に、図3に基づき散布作業車1の伝動構成について説明する。
前後方向に長い走行車体2の前側部にエンジンEを配設し、エンジンEの動力は前側ミッションケース21に伝達され、前側ミッションケース21で分岐されたPTO動力はPTO伝動軸22を経て機体後部のライブPTO軸23に伝達される。また、PTO伝動軸22の中途部からポンプ伝動装置24にポンプ動力が分岐され、防除ポンプ10が駆動される。
【0015】
また、前側ミッションケース21で分岐された走行動力は主クラッチ25、無段変速装置26を経て主ミッションケース27に伝達される。そして、副変速装置28、主変速装置29で変速されて走行出力軸30に伝達される。次いで、走行伝動軸30の前側部から前輪動力が取り出され、前輪伝動軸31を経てフロントアクスルケース32に伝達され、更に、前輪デフ機構33、左右前輪伝動装置34,34を経て左右前輪3,3に伝達される。
【0016】
また、走行伝動軸30の後側部から後輪動力が取り出され、後輪伝動軸35を経てリヤアクスルケース36に伝達され、更に、後輪デフ機構37、左右後輪伝動装置38,38を経て左右後輪4,4に伝達される。また、主変速装置29の後部から作業PTO動力が取り出され、作業PTO軸39から作業機に伝達される。
【0017】
次に、図4乃至図6に基づきリヤアクスルケース36の具体構成について説明する。
走行車体2の前側部には前輪デフ機構33を内装しているフロントアクスルケース32を左右方向に沿わせて取り付け、後側部には後輪デフ機構37を内装しているリヤアクスルケース36を左右方向に沿うように取り付けている。このリヤアクスルケース36を、走行車体2に取り付けている中央ケース36aと、左右外側ケース36b,36bとに分割構成し、中央ケース36aの左右フランジと、左右外側ケース36b,36bの内側フランジとをボルト・ナットで固着している。左右外側ケース36b,36bの外側端部に左右後輪ファイナルケース41,41を下側部が左右外側に傾斜状に張り出すように延出し、その下端部に左右後輪4,4を操舵自在に支架している。そして、中央ケース36aの後輪デフ機構37に伝達された動力を左右外側ケース36b,36b及び左右後輪ファイナルケース41,41内の後輪伝動装置38,38を経由して左右後輪4,4に伝達している。
【0018】
なお、フロントアクスルケース32も左右リヤアクスルケース36と同様に、中央ケース32aと、左右外側ケース32b,32bとに分割構成し、左右外側ケース32a,32aの外側端部に左右前輪ファイナルケース42,42を取り付け、これらの内部に設けた前輪伝動装置34,34を経由して左右前輪3,3に動力を伝達している。
【0019】
また、リヤアクスルケース36の左右外側ケース36b,36bのいずれか一方の左右外側端部には、給油口43を上方に向けて開口するように設けている。
従来構成はリヤアクスルケース36の中央ケース36aに給油口43を設けていた。従って、前記薬液タンク9を搭載している状態では、給油口43が薬液タンク9の下側に位置して隠れ、リヤアクスルケース36のオイル交換ができず、薬液タンク9を取り外す必要があり不便であった。
【0020】
しかし、前記構成によると、このような不具合を解消し、薬液タンク9を搭載したままの状態でリヤアクスルケース36のオイル交換を迅速にすることができる。
また、左外側ケース36bの左外側端部に給油口43を設けるにあたり、図5に示すように、左外側ケース36bの外側端部に取付用のフランジ36cを設け、このフランジ36cの側方に給油口43を略同じ高さとなるように上方へ膨出するように設けている。また、左外側ケース36bのフランジ36cと左後輪ファイナルケース41の上部フランジ41aをボルト・ナットで固着し、後輪ファイナルケース41の上端面41bを上部フランジ41aの上端部と略同じ高さになるように構成している。
【0021】
給油口43がフランジ41a,フランジ36cよりも低く構成されていると、給油の際にオイルジョッキ(図示省略)の蛇腹状ホースがフランジ41aに干渉し、オイルを給油しずらくなる。しかし、前記構成によると、このような不具合もなく、オイルを給油口43から楽に給油することができる。
【0022】
次に、図7に基づき他の実施例について説明する。
リヤアクスルケース36の左右外側ケース36b,36bの左右一側上部に給油口43を配設し、左右他側上部には左右後輪4,4の操舵角検出用の後輪操舵角センサ46を配設している。左右外側ケース36b,26bの左右一側に給油口43と後輪操舵角センサ46を共に設けると、オイルを給油する際に後輪操舵角センサ46が邪魔になり、また、後輪操舵角センサ46にオイルが付着するという不具合が発生する。しかし、前記構成によると、このような不具合を解消することができる。
【0023】
また、図8に示すように、リヤアクスルケース36の左右外側ケース36b,36bの左右両側上部に給油口43,43をそれぞれ設けると、左右一方の給油口43からオイルを給油し、左右他側の給油口43から空気を抜くことができてオイルの流れがよくなり、冬場の粘性の高いオイルを迅速に供給することができる。
【0024】
また、リヤアクスルケース36の左右外側ケース36b,36b、及び、フロントアクスルケース32の左右外側ケース32b,32bを構成するにあたり、左右同じ形状とし共用化すると、コストの低減を図り、生産ラインでの誤組みを防止することができる。
【0025】
また、リヤアクスルケース36の左右外側ケース36b,36b、及び、フロントアクスルケース32の左右外側ケース32b,32bの外側端上部に給油口43,43をそれぞれ構成し、前後及び左右の共用化を図ってもよい。
【0026】
また、図9に示すように、フロントアクスルケース32の左右外側ケース32b,32bの外側端上部に給油口43を構成してもよい。フロントアクスルケース32の中央ケース32aに給油口43を設けると、防除散布装置11の中央ブーム11aや昇降リンク16,16が邪魔になり、オイルの供給がしずらいという不具合がある。しかし、前記構成によると、このような不具合を防止し、オイルを楽に給油することができる。
【0027】
また、図10に示すように、フロントアクスルケース32の左右外側ケース32b,32bのいずれか一方に給油口43を設け、左右他側に前輪操舵角センサ47を設けてもよい。前記構成によると、43にオイルを供給するときに前輪操舵角センサ47が邪魔にならず、前輪操舵角センサ47へのオイルの付着を防止し、センサの耐久性を高めることができる。
【0028】
また、図11に示すように、フロントアクスルケース32の左右外側ケース32b,32bの左右両側上部に給油口43,43をそれぞれ設けてもよい。このように構成すると、左右一方の給油口43からオイルを給油し、左右他側の給油口43から空気を抜くことができてオイルの流れがよくなり、冬場の粘性の高いオイルを迅速に供給することができる。
【0029】
また、左右後輪ファイナルケース41,41及び左右前輪ファイナルケース42,42を同一構成として共用化し、且つ、左右後輪ファイナルケース41,41と左右前輪ファイナルケース42,42を同一形状とし前後も共用化すると、生産の合理化をし、生産資金の低減と部品単価の低減をはかり、また、生産ラインでの誤組み防止をすることができる。
【0030】
次に、図12について説明する。
走行車体2の後側部に薬液タンク9を搭載し、左右ステップ48,48の左右後側ステップ部48a,48aを薬液タンク9の下部左右両側まで延出し、後輪4,4の前側上部を被覆するようにしている。そして、薬液タンク9の左右両側下端部から後輪覆い板49,49を左右方向に延出し、この後輪覆い板49,49で左右後側ステップ部48a,48a、左右後輪4,4及び左右外側ケース36b,36bに設けた給油口43を上方から被覆するようにしている。
【0031】
前記構成によると、オイルジョッキ(図示省略)の蛇腹状ホースでオイルを給油する場合に、後輪4と後輪覆い板49、後側ステップ部48aとの間から蛇腹状ホースを挿入し、給油口43に楽にオイルを給油することができる。
【0032】
次に、図13及び図14について説明する。走行車体2の後側部に薬液タンク9を搭載し、左外側ケース36bに設けた給油口43に弾性材からなる延長給油筒50を連設し、この延長給油筒50を後輪4と後輪覆い板49、後側ステップ部48aとの間を通して外側に延出し、その先端を薬液タンク9の左側壁よりもやや左側に延出している。
【0033】
前記構成によると、オイルジョッキ(図示省略)の蛇腹状ホースから延長給油筒50に給油しオイルを給油を楽にすることができる。また、薬液タンク9を着脱する際にも、延長給油筒50が前後に屈曲変形し損傷を防止し、耐久性を高めることができる。
【0034】
また、図15に示すように、延長給油筒50をクランプ51を介して薬液タンク9により支持すると、延長給油筒50が安定し、オイルの給油がやりやすくなる。
【符号の説明】
【0035】
2 走行車体
4 後輪
9 薬液タンク
36 リヤアクスルケース
41 後輪ファイナルケース
43 給油口
46 後輪操舵角センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)の後側部には後輪への伝動装置を内装しているリヤアクスルケース(36)を左右方向に沿わせて配設し、該リヤアクスルケース(36)の左右両側部に左右後輪ファイナルケース(41,41)を取り付け、該左右後輪ファイナルケース(41,41)の下端部に左右後輪(4,4)を支架した農用作業車において、前記リヤアクスルケース(36)の左右外側端部のいずれか一方に給油口(43)を設けるにあたり、前記走行車体(2)の後部に搭載している薬液タンク(9)よりも平面視で左右外側に突出している部位に給油口(43)を設けたことを特徴とする農用作業車。
【請求項2】
前記リヤアクスルケース(36)における給油口(43)の設けていない左右両側端部に後輪操舵角センサ(46)を設け、前記走行車体(2)の後部に搭載している薬液タンク(9)よりも平面視で左右外側に突出している部位に前記後輪操舵角センサ(46)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の農用作業車。
【請求項3】
前記リヤアクスルケース(36)の左右両側端部に給油口(43)を設けるにあたり、前記リヤアクスルケース(36)の左右両側部に取り付けている後輪ファイナルケース(41)の上端面の高さと略同じ高さで且つ接近させるように設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の農用作業車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−5461(P2012−5461A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146519(P2010−146519)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】