説明

農薬補助組成物

(a)アルコキシル化ポリオールエステル、(b)場合によりアルコキシル化されたアルキル(アルケニル)オリゴグリコシド、および(c)脂肪酸またはその塩を含んでなる農薬補助組成物を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬の分野に関連し、非イオン性界面活性剤および石鹸を含有する新規の補助組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
農作物の市場は年間総額約220億ユーロである。主なバイオサイドは、いくつかの機能を果たすことによりそれらの効果を最大限発揮させるために、補助剤(増強剤としても知られる)とともに処方組みされる。助剤は、葉の表面の良好な濡れ性をもたらし、種々の気象条件下においてバイオサイドの葉面浸透を容易にしなければならず、植物中へのバイオサイド(特に除草剤)の転流を促進しなければならない(または少なくとも阻害してはならない)。さらに、補助剤は、特定の耐性農作物に使用した際に植物毒性を引き起こしてはならない。
【0003】
バイオサイドおよび植物保護調製物における添加剤としてのエトキシル化植物油の使用は、周知の最新技術態様である。この目的のためにエトキシル化されたトリグリセリドを記載する第1の文献の1つは、かつてのドイツ民主共和国による公開公報DD268147A1である。これに関連して、液体媒体と、アルキルポリグルコシドおよび脂肪酸からなる乳化混合物を含んでなる農薬組成物を開示する、国際特許出願WO98/009518A1(Cognis)も参照される。2つのドイツ出願DE10000320A1およびDE10018159A1(いずれもCognis)から、特定の接触型除草剤およびエトキシル化脂肪アルコールまたは脂肪酸を含んでなる組成物が知られている。欧州特許EP0804241B1(SEPPIC)は、農薬組成物の製造における、エトキシル化脂肪酸エステルとトリグリセリドおよびそれらの自動乳化系としての使用を言及する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】東独国特許出願公開第268147号明細書
【特許文献2】国際特許出願公開第98/009518号パンフレット
【特許文献3】独国特許第10000320号明細書
【特許文献4】独国特許第10018159号明細書
【特許文献5】欧州特許第0804241号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バイオサイドおよび、助剤、乳化剤、可溶化剤などの数多くの添加剤を市場において入手することが可能であるが、保護しようとする植物の葉への活性剤の浸透スピードを増加させ、種々の微生物、特に全種類のカビを排除する活性剤の能力を改善する新しい補助剤を開発することが、絶えず要求されている。本発明の課題は、これらの市場の要求に応じることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(a)アルコキシル化ポリオールエステル、
(b)場合によりアルコキシル化されたアルキル(アルケニル)オリゴグリコシド
(c)脂肪酸またはその塩
を含んでなる新しい農薬補助組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
アルコキシル化ポリオールエステル、場合によりアルコキシル化されたアルキル(アルケニル)オリゴグリコシドおよび脂肪酸またはその塩を含む混合物が、種々のバイオサイド、すなわち、殺真菌剤(防カビ剤)、殺虫剤、除草剤および植物成長調節剤の効果を増加させることがわかった。例えば、アルコキシル化トリグリセリドが葉への浸透性バイオサイドの浸透を刺激することは長い間知られていたが、驚くべきことに今回、これらの既知の界面活性剤へのグリコシドおよび脂肪酸の添加が、一般的に葉への浸透スピードを増加するだけでなく、カビの細胞壁の透過を可能とすることがわかった。
【0008】
〈アルコキシル化ポリオールエステル〉
アルコキシル化ポリオールエステル(成分a)は、補助組成物の主要部分である。これらのエステルは、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールに由来していてよく、好ましくはグリセリンに由来する。本発明のエステルには、完全なまたは部分的なエステルが包含される。例えば、適当なアルコキシル化ポリオールエステルとしては、アルコキシル化モノグリセリド、ジグリセリドまたはトリグリセリドあるいはそれらの混合物が挙げられる。アルコキシル化トリグリセリド(または、同義語としてアルコキシル化植物油を用いる)が最も好ましい化合物であり、一般的に下記一般式(I):
【化1】

〔式中、R、RおよびRは、互いに独立して、5〜21個の、好ましくは11〜17個の炭素原子を有する直鎖または分枝の、飽和または不飽和のアルキル基および/またはヒドロキシアルキル基を表し;n、mおよびpは、(m+n+p)の合計が0ではないことを条件に、互いに独立して0または約1〜約50の整数、好ましくは約3〜約30、最も好ましくは約5〜約15の整数であり、AOはエチレングリコール単位またはプロピレングリコール単位を表す〕
で表される。好ましい実施態様において、前記アルコキシル化ポリオールエステルは、大豆油、菜種油、ヒマワリ油または亜麻仁油に由来する(ここに記載していない他の植物油も組成の適当な成分を形成し得る)。
【0009】
ポリオールエステルのアルコキシル化は、有機化学において既知の一般的方法に従い行われる。一般的に、エチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはそれらの混合物を、アルカリ触媒の存在下エステルに加える。アルコキシル化は統計的な反応であるため、反応生成物は様々なアルコキシル化度を有する同族体分布を示す。これに関して、得られるアルコキシル化度が平均値であることは明らかである。広いまたは狭い同族体分布のどちらを得るためにも、適当な触媒を選択することによりアルコキシル化を制御することができる。しかし、低いアルコキシル化度であるが広い同族体分布を有するアルコキシレートは、高いアルコキシル化度であるが狭い同族体分布を有する別のアルコキシレートと同じような性質を示し得るが、どちらのタイプの生成物も適当である。エチレンオキシドおよびプロピレンオキシド単位を、ブロックでまたはランダムに含んでなる混合生成物を用いることができる。しかしながら、最も好ましい形態は、大豆油、菜種油または亜麻仁油への約10モルのエチレンオキシドの付加である。また、一般的に、アルコキシル化ポリオールエステルおよび、特にアルコキシル化グリセリドを、下記式:HLB=20[1−S/A]〔式中、「S」はアルコキシル化エステルの鹸化価を表し(NFT60206による)、「A」はエステル化に使用した酸の酸価を表す(NFT60204による)〕にしたがって算出し得るそれらのHLB値により定義付けることができる。好ましいアルコキシル化ポリオールエステルは、約2〜約15の、好ましくは約4〜約10の範囲のHLB値を示す。
【0010】
〈アルキル(アルケニル)オリゴグリコシドおよびそれらのアルコキシル化生成物〉
本発明の組成物において成分(II)として使用し得るアルキルまたはアルケニルオリゴグリコシド(成分b1)は、5〜6個の炭素原子を有するアルドースまたはケトース、好ましくはグルコースに由来し得る。したがって、好ましいアルキルおよび/またはアルケニルオリゴグリコシドは、アルキルオリゴグルコシドまたはアルケニルオリゴグルコシドである。これらの物質は、一般的に「アルキルポリグリコシド」(APG)としても既知である。本発明のアルキル(アルケニル)オリゴグリコシドは、式(II):
O[G] (II)
〔式中、Rは、6〜22個の炭素原子を有するアルキル基および/またはアルケニル基を示し、Gは5〜6個の炭素原子を有する糖単位であり、pは1〜10の数値を示す〕
で示される。一般式(II)における指数pは、オリゴマー化度(DP度)、すなわち、モノグリコシドおよびオリゴグリコシドの分布を示し、1〜10の数である。得られる化合物におけるpは常に整数(とりわけ1〜6の値であり得る)でなければならないのに対して、特定のアルキルオリゴグリコシドに対する値pは、統計的に決定された算出値であり、主に小数である。好ましくは1.1〜3.0の平均オリゴマー化度pを有するアルキル(アルケニル)オリゴグリコシドを用いる。1.7以下、特に1.2〜1.4のオリゴマー化度を有するアルキル(アルケニル)オリゴグリコシドが、実用的な観点から好ましい。
【0011】
アルキル基またはアルケニル基Rは、4〜22個、好ましくは8〜18個の炭素原子を有する第1級アルコールに由来し得る。典型的な例は、ブタノール、カプロンアルコール、カプリルアルコール、カプリンアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、ペトロセリニルアルコール、アラキルアルコール、ガドレイルアルコール、ベヘニルアルコール、エルシルアルコールおよび、例えば、工業用脂肪酸メチルエステルの水素化またはローレンオキソ合成反応からのアルデヒドの水素化により得られるそれらの工業用混合物である。短鎖C8/10脂肪アルコールまたは水素化C8/18ヤシ油アルコールに基づく1〜3のDPを有するアルキルオリゴグルコシドが好ましい。
【0012】
前記アルキル(アルケニル)オリゴグリコシドの適当な代替物は、それらのアルコキシル化生成物(成分b2)である。これらの界面活性剤は、約1〜約20モル、好ましくは約2〜約15モル、より好ましくは約3〜約10モルのエチレンオキシド(EO)および/またはプロピレンオキシド(PO)を、いずれもブロックまたはランダムにグリコシド骨格の遊離ヒドロキシ基に付加させることにより得られ得る。特に好ましくは、C8/10またはC12/14アルキルオリゴグルコシドへの約2〜約7モルのEOおよび/またはPO付加物である。これらの界面活性剤の製造に関する限り、適当な製造方法を開示しているEP1716163B1(Cognis)を参考文献とする。
【0013】
〈脂肪酸およびその塩〉
脂肪酸およびその塩(成分c)は、調製物の性質および安定性を改善する。典型的な脂肪酸およびその塩は、下記一般式(III):
CO−OX (III)
〔式中、RCOは、6〜22個、好ましくは12〜18個の炭素原子を有する直鎖または分枝の、飽和または不飽和のアシル基を示し、Xは水素またはアルカリ金属である〕で示される。適当な例は、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルモレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、共役リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、ベヘン酸、エルカ酸およびそれらの工業用混合物であり、例えば、ヤシ油脂肪酸、獣脂脂肪酸、または好ましくはトールオイル脂肪酸などである。これらの酸の代わりに、ナトリウム石鹸またはカリウム石鹸をそれぞれ使用し得る。
【0014】
〈補助組成物〉
好ましい実施態様において、本発明の補助組成物は、必要に応じて水を加えて100%w/wにする条件下において
(a)約60〜約90%w/w、好ましくは約70〜約80%w/wのアルコキシル化ポリオールエステル
(b)約5〜約15%w/w、好ましくは約7〜約12%w/wの、場合によりアルコキシル化されたアルキル(アルケニル)オリゴグリコシド、および、
(c)約5〜約15%w/w、好ましくは約7〜約12%w/wの脂肪酸またはその塩
を含んでいてよい。
【0015】
産業上の応用
〈農薬組成物〉
本発明の別の課題は、
(a)アルコキシル化ポリオールエステル
(b)場合によりアルコキシル化されたアルキル(アルケニル)オリゴグリコシド、
(c)脂肪酸またはその塩、および
(d)バイオサイド
を含んでなる農薬組成物に関する。
【0016】
一般的に、前記農薬組成物は、成分(a)、(b)および(c)を水溶液の形態にして、そこに各バイオサイドを溶解する。そのようにして得た濃縮物(一般的に最大40%w/wのバイオサイドを含有する)は、消費者の需要により、約0.5〜約1%w/wのバイオサイド濃度を示す即用組成物まで適当に希釈される。
【0017】
〈バイオサイド〉
本発明に関連するバイオサイドは植物保護剤、特に、医療、農業、林業、および蚊の駆除などの分野にて使用される種々の形態の生物を退治しうる化学物質をいう。いわゆる植物成長調節剤もバイオサイドの群とみなされる。通常、バイオサイドは2つの下位群:
・殺真菌剤、除草剤、殺虫剤、殺藻剤、モラスシサイド(moluscicide)、殺ダニ剤および殺鼠剤を含む、ペスチサイド;および
・殺菌剤、抗生剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗原虫剤および抗寄生虫薬を含む、アンチミクロバイアル
に分けられる。
【0018】
バイオサイドを他の材料(典型的には、液体)に添加し、該材料を生物の侵入または増殖から保護することもできる。例えば、特定の型の4級アンモニウム化合物(クォート)をプールの水または工業水系に添加し、殺藻剤として作用させ、水を藻類の侵入および増殖から保護することができる。
【0019】
〈ペスチサイド〉
米国環境保護庁(EPA)はペスチサイドを「害虫を阻み、破壊し、撃退し、和らげることを意図とする、物質または物質の混合物」として定義する。ペスチサイドは、食べ物、破壊特性、病気の蔓延について人間と競合する、昆虫、植物病原菌、雑草、軟体動物、鳥類、哺乳類、魚類、線虫(回虫)および微生物を含む害虫に対して使用される化学物質または生物学的物質(ウイルスまたは細菌等)であってもよい。以下の例にて、本発明の農薬組成物に適するペスチサイドを列挙する:
【0020】
〈殺真菌剤〉
殺真菌剤は、害虫制御の、この場合には真菌の化学的な駆除の、主たる3種の手段の一つである。殺真菌剤は庭および作物における真菌の蔓延を防止するのに使用される化合物である。殺真菌剤は、真菌感染症に対しても使用される。殺真菌剤は接触性または浸透性殺真菌剤のいずれとすることもできる。接触性殺真菌剤は該殺真菌剤が真菌の表面に噴霧された場合に真菌を殺す。浸透性殺真菌剤は真菌が死ぬ前に真菌により吸収されなければならない。本発明の適当な殺真菌剤として、例えば、以下の種類が挙げられる:
(3−エトキシプロピル)水銀ブロミド、2−メトキシエチル水銀クロリド、2−フェニルフェノール、8−ヒドロキシキノリンサルフェート、8−フェニルマーキュリオキシキノリン、アチベンゾラー、アシルアミノ酸殺真菌剤、アシペタック、アルジモルフ、脂肪族窒素殺真菌剤、アリルアルコール、アミド殺真菌剤、アンプロピルホス、アニラジン、アニリド殺真菌剤、抗生殺真菌剤、芳香族殺真菌剤、アルレオフンギン、アザコナゾール、アジチラン、アゾキシストロビン、バリウムポリサルフィド、ベナラキシル、ベナラキシル−M、バノダニル、ベノミル、ベンキシノックス、ベンタルロン、ベンチアバリカルブ、ベンズアルコニウムクロリド、ベンズアマクリル、ベンズアミド殺真菌剤、ベンズアモルフ、ベンズアニリド殺真菌剤、ベンズイミダゾール殺真菌剤、ベンズイミダゾール先駆体殺真菌剤、ベンズイミダゾリルカルバマート殺真菌剤、ベンゾヒドロキサム酸、ベンゾチアゾール殺真菌剤、ベトキサジン、ビナパクリル、ビフェニル、ビテルタノール、ビチオノール、ブラスチシジン−S、ボルデオックス混合物、ボスカリド、架橋ジフェニル殺真菌剤、ブロムコナゾール、ブピリマート、ブルガンジー混合物、ブチオバート、ブチルアミン、カルシウムポリサルフィド、カプタホール、カプタン、カルバマート殺真菌剤、カルバモルフ、カルバニラート殺真菌剤、カルベンダジム、カルボキシン、カルプロパミド、カルボン、チェスハント混合物、チノメチオナット、クロベンチアゾン、クロラニホルメタン、クロラニル、クロルフェナゾール、クロロジニトロナフタレン、クロロネブ、クロロピクリン、クロロタロニル、クロルキノックス、クロゾリナート、シクロピロックス、クリムバゾール、クロトリマゾール、コナゾール殺真菌剤、コナゾール殺真菌剤(イミダゾール)、コナゾール殺真菌剤(トリアゾール)、酢酸銅(II)、炭酸銅(II)、塩基性銅殺真菌剤、水酸化銅、ナフテン酸銅、オレイン酸銅、銅オキシクロリド、硫酸銅(II)、硫酸銅、塩基性銅亜鉛クロマート、クレゾール、クフラネブ、クプロバム、酸化第一銅、シアゾファミド、シクラフラミド、環状ジチアカルバマート殺真菌剤、シクロヘキシミド、シフルフェナミド、シモキサニル、シペンダゾール、シプロコナゾール、シプロジニル、ダゾメット、DBCP、デバカルブ、デカフェンチン、デヒドロ酢酸、デカルボキシイミド殺真菌剤、ジクロフルアニド、ジクロン、ジクロロフェン、ジクロロフェニル、ジカルボキシイミド殺真菌剤、ジクロロゾリン、ジクロブトラゾール、ジクロシメット、ジクロメジン、ジクロラン、ジエトフェンカルブ、ジエチルピロカルボナート、ジフェノコナゾール、ジフルメトリム、ジメチリモール、ジメトモルフ、ジモキシストロビン、ジニコナゾール、ジニトロフェノール殺真菌剤、ジノブトン、ジノカップ、ジノクトン、ジノペントン、ジノスルホン、ジノテルボン、ジフェニルアミン、ジピリチオン、ジスルフィラム、ジタリムホフ、ジチアノン、ジチオカルバマート殺真菌剤、DNOC、ドデモルフ、ドジシン、ドジン、DONATODINE、ドラゾキソロン、エジフェンホフ、エポキシコナゾール、エトコナゾール、エタボキサム、エチリモール、エトキシキン、エチル水銀2,3−ジヒドロキシプロピルメルカプチド、酢酸エチル水銀、臭化エチル水銀、塩化エチル水銀、リン酸エチル水銀、エトリジアゾール、ファモキサドン、ファナミドン、フェナミノスルフ、フェナパニル、フェナリモール、フェンブコナゾール、フェンフラム、フェンヘキサミド、フェニトロパン、フェノキサニル、フェンピクロニル、フェンプロピジン、フェンプロピモルフ、フェンチン、フェルバム、フェリムゾン、フルアジナム、フルジオキソニル、フルメトベル、フルモルフ、フルオピコリド、フルオロイミド、フルオトリイミドゾール、フルオキサストロビン、フルキンコナゾール、フルシラゾール、フルスルファミド、フルトラニル、フルトリアホール、ホルペット、ホルムアルデヒド、ホセチル、フベリダゾール、フララキシル、フラメトピル、フラミド殺真菌剤、フラニリド殺真菌剤、フルカルバニル、フルコナゾール、フルコナゾール−シス、フルフラル、フルメシクロックス、フロファナート、グリオジン、グリセオフルビン、グアザチン、ハラクリナート、ヘキサクロロベンゼン、ヘキサクロロブタジエン、ヘキサクロロフェン、ヘキサコナゾール、ヘキシルチオフォス、ヒドロアルガフェン、ヒメトキサゾール、イミザリル、イミベンコナゾール、イミダゾール殺真菌剤、イミノクタジン、無機殺真菌剤、無機水銀殺真菌剤、ヨードメタン、イプコナゾール、イプロベンフォス、イプロジオン、イプロバリカルブ、イソプロチオラン、イソバレジオン、カスガマイシン、クレソキシム−メチル、石灰硫黄、マンカパー、マンコゼブ、マネブ、メベニル、メカルビンジド、メパニピリム、メプロニル、塩化第二水銀、酸化第二水銀、塩化第一水銀、水銀殺真菌剤、メタラキシル、メタラキシル−M、メタム、メタゾロキソロン、メトコナゾール、メタスルホカルブ、メトフロキサム、臭化メチル、イソチオシアン酸メチル、安息香酸メチル水銀、メチル水銀ジシアンジアミド、メチル水銀ペンタクロロフェノキシド、メチラム、メトミノストロビン、メトラフェノン、メトスルホバックス、ミルネブ、モルホリン殺真菌剤、ミクロブタニル、ミクロゾリン、N−(エチル水銀)−p−トルエンスルホンアニリド、ナバム、ナタマイシン、ニトロスチレン、ニトロタール−イソプロピル、ヌアリモール、OCH、オクチリノン、オフレース、有機水銀殺真菌剤、有機リン殺真菌剤、有機錫殺真菌剤、オリサストロビン、オキサジキシル、オキサチイン殺真菌剤、オキサゾール殺真菌剤、オキシン銅、オキシポコナゾール、オキシカルボキシン、ペフラゾアート、ペンコナゾール、ペンシクロン、ペンタクロロフェノール、ペンチオピラド、フェニル水銀尿素、酢酸フェニル水銀、塩化フェニル水銀、ピロカテコールのフェニル水銀誘導体、硝酸フェニル水銀、サリチル酸フェニル水銀、フェニルスルファミド殺真菌剤、ホスジフェン、フタリド、フタリミド殺真菌剤、ピコキシストロビン、ピペラリン、ポリカルバマート、高分子ジチオカルバマート殺真菌剤、ポリオキシン、ポリオキソリム、ポリスルフィド殺真菌剤、カリウムアジド、カリウムポリサルファイド、チオシアン酸カリウム、プロベンナゾール、プロクロラズ、プロシミドン、プロパモカルブ、プロピコナゾール、プロピネブ、プロキナジド、プロチオコナゾール、ピラカルボリド、ピラクロストロビン、ピラゾール殺真菌剤、ピラゾホス、ピリジン殺真菌剤、ピリジニトリル、ピリフェノックス、ピリメタニル、ピリミジン殺真菌剤、ピロキロン、ピロキシクロル、ピロキシフル、ピロール殺真菌剤、キナセトール、キナザミド、キンコナゾール、キノリン殺真菌剤、キノン殺真菌剤、キノキサリン殺真菌剤、キノキシフェン、キントゼン、ラベンザゾール、サリチルアニリド、シルチオファム、シメコナゾール、アジ化ナトリウム、ナトリウムオルトフェニルフェノキシド、ナトリウムペンタクロロフェノキシド、ナトリウムポリスルフィド、スピロキサミン、ストレプトマイシン、ストロビルリン殺真菌剤、スルホンアニリド殺真菌剤、硫黄、スルトロペン、TCMTB、テブコナゾール、テクロフタラム、テクナゼン、テコラム、テトラコナゾール、チアベンダゾール、チアジフルオル、チアゾール殺真菌剤、チチオフェン、チフルザミド、チオカルバマート殺真菌剤、チオクロルフェンフィム、チオメルサル、チオファナート、チオファナート−メチル、チオフェン殺真菌剤、チオキシノックス、チラム、チアジニル、チオキシミド、チベド、トルクロホス−メチル、トルナフタート、トリルフルアニド、酢酸トリル水銀、トリアジメフォン、トリアジメノール、トリアミホス、トリアリモール、トリアジブチル、トリアジン殺真菌剤、トリアゾール殺真菌剤、トリアゾキシド、酸化トリブチル錫、トリクアミド、トリクラゾール、トリデモルフ、トリフロキシストロビン、トリフルミゾール、トリホリン、トリチコナゾール、分類されない殺真菌剤、ウンデシレン酸、ユニコナゾール、尿素殺真菌剤、バリダマイシン、バリナミド殺真菌剤、ビンクロゾリン、バリラミド、ナフテン酸亜鉛、ジネブ、ジラム、ゾキサミドおよびそれらの混合物。
【0021】
〈除草剤〉
除草剤は不要な植物を除草するのに使用されるペスチサイドである。選択的除草剤は、所望の作物を相対的に無傷のまま、特定の標的を除草する。これら除草剤のいくつかは、雑草の成長を妨げるように作用し、しばしば植物ホルモンに基づく。廃棄土をきれいにするのに使用される除草剤は非選択的であり、接触したすべての植物を除草する。除草剤は農業においておよび造園の芝管理に広く使用される。除草剤は、高速道路および鉄道を維持管理するための植生管理全体(TVC)のプログラムに適用される。林業、牧場システム、および野生生物の生息環境から離れた地域の管理に、少量の除草剤が使用される。一般的に、種々の化学区分を示す活性成分を使用することができ、ここで、The Pesticide Manual、Fourteenth出版、CDS Tomlin、BCPC 2006を参照する。下記選択は実例である(本発明を限定する意味ではない):アルコキシカルボン酸、例えばMCPA、アリールオキシフェノキシプロピオネート、例えばクロジナホップ、シクロヘキサンジオンオキシム、例えばセトキシジン、ジニトロアニリン、例えばトリフルラリン、ジフェニルエーテル、例えばオキシフルオルフェン、ヒドロキシベンゾニトリル、例えばブロモキシニル、スルホニルウレア、例えばニコスルフロン、トリアゾロピリミジン、例えばペノキスラム、トリケチオン、例えばメソトリオン、尿素、例えばジウロン。以下に、多数の適当な除草剤を収集する:
・2,4−D、芝生および無耕農業農作物生産において使用されるフェノキシ基のある広葉用除草剤。現在は、主に、共力剤として機能する他の除草剤と一緒にフレンドして使用されており、世界中で広く使用される除草剤であり、アメリカにて3番目に汎用されている。これは合成オーキシン(植物ホルモン)の一例である。
・アトラジン、広葉草および牧草を制御するのにトウモロコシおよびソルガムに使用されるトリアジン系除草剤。値段が安く、他の除草剤と一緒に用いると、共力剤として作用するため、今でも使用されている。これは光化学系II阻害剤である。
・ジカンバ(安息香酸)、草地およびトウモロコシ畑で使用される、土壌にて活性な持続性広葉用除草剤。合成オーキシンのもう一つの例である。
・グリホサート、無耕農地のバーンダウンにて、およびその効果に対抗するように遺伝的に修飾されている作物での雑草を除草するために使用される浸透性非選択的(あらゆる種類の植物を除草する)除草剤。EPSP阻害剤の一例である。
・イマザピック(イミダゾリノン)、一年および多年草ならびに広葉草の発芽前および発芽後に除草するための選択的除草剤。イマザピックはタンパク質合成および細胞増殖に不可欠な分枝鎖アミノ酸(バリン、ロイシンおよびイソロイシン)の産生を阻害することにより植物を除草する。
・メトアラクロル(クロロアセトアミド)、トウモロコシおよびソルガムにおいて一年草を除草するのに広く用いられる発芽前除草剤。これらの用途では、アトラジンと大部分が置き換えられている。
・パラククォート(ビピリジリウム)、無耕農地のバーンダウンならびにマリファナおよびコカイン栽培の空中破壊に使用される非選択的接触型除草剤。広く市販されている他のいずれの除草剤よりも人間に対してより急性毒性である。
・ピクロラム、クロピラリドおよびトリクロピル、不要な木々および広葉雑草を制御するために使用されるピリジンカルボン酸または合成オーキシン。
【0022】
〈殺虫剤〉
殺虫剤はすべての発育型の虫に対して使用されるペスチサイドである。これらには、虫の卵および幼虫に対して使用される殺卵剤および幼虫駆除剤が含まれる。殺虫剤は農業、医療、工業および家庭にて使用される。以下に、適当な殺虫剤を列挙する:
・塩素化殺虫剤、例えば、カンフェクロール、DDT、ヘキサクロロシクロヘキサン、ガンマ−ヘキサクロロシクロヘキサン、メトキシクロール、ペンタクロロフェノール、TDE、アルドリン、クロルダン、クロルデコン、ジエルドリン、エンドサルファン、エンドリン、ヘプタクロール、ミレックスおよびその混合物;
・有機リン化合物、例えば、アセファート、アジンホス−メチル、ベンスリド、クロルエトキシホス、クロルピリホス、クロルピリホス−メチル、ジアジノン、ジクロルボ(DDVP)、ジクロトホス、ジメトアート、ジスルホトン、エトプロプ、フェナミホス、フェニトロチオン、フェンチオン、ホスチアザート、マラチオン、メタミドホス、メチダチオン、メチル−パラチオン、メビンホス、ナレド、オメトアート、オキシデメトン−メチル、パラチオン、ホラート、ホサロン、ホスメット、ホステブピリム、ピリミホス−メチル、プロフェノホス、テルブホス、テトラクロビンホス、トリブホス、トリクロルホンおよびその混合物;
・カルバメート、例えば、アルジカルブ、カルボフラン、カルバリル、メトミル、2−(1−メチルプロピル)フェニルメチルカルバメートおよびその混合物;
・ピレスロイド、例えば、アレスリン、ビフェンスリン、デルタメスリン、ペルメスリン、レスメスリン、スミスリン、テトラメスリン、トラロメスリン、トランスフルスリンおよびその混合物;
・植物毒素誘導化合物、例えば、デリス(ロテノン)、ピレスラム、ネーム(アザジラクチン)、ニコチン、カフェインおよびその混合物。
・ネオニコチノイド、例えばイミダクロプリド
・アバメクチン、例えばエマメクチン
・オキサジアジン、例えばインドキサカルブ
・アントラニリックジアミド、例えばリナキシピル。
【0023】
〈殺鼠剤〉
殺鼠剤は齧歯類を殺すことを意図とする害虫制御化学物質の範疇にある。齧歯類は、腐食性動物としてその食性が環境に反映するため、毒を用いて殺すことは困難である。かれらは何かを少量食べて、待機し、調子が悪くならなければ食べることを続ける。有効な殺鼠剤は致死濃度で無味かつ無臭である必要があり、遅延作用でなければならない。以下に、適当な殺鼠剤の例を挙げる:
・抗凝固剤は慢性(致死量を摂取した1〜2週間後(稀にすぐ)に死に至る)の、単回投与(第二世代)または複数回投与(第一世代)用の累積型殺鼠剤として定義される。致死性内出血が、致死量の抗凝固剤、例えばブロディファコウム、クマテトラリルまたはワルファリンなどによって惹起される。有効量でのこれらの物質は、酵素K−2,3−エポキシド−レダクターゼ(この酵素は4−ヒドロキシクマリン/4−ヒドロキシチアクマリン誘導体により優先的に遮断される)およびK−キノン−レダクターゼ(この酵素はインダンジオン誘導体により優先的に遮断される)を遮断し、活性ビタミンKの供給源を奪う、抗ビタミンKである。これによりビタミンKサイクルは崩壊に至り、必須の血液凝固因子(すなわち、凝固因子II(プロトロンビン)、VII(プロコンベルチン)、IX(クリスマス因子)およびX(スチュアート因子))の生成が不能となる。この特定の代謝崩壊に加えて、4−ヒドロキシクマリン/4−ヒドロキシチアクマリンおよびインダンジオン抗凝固剤の毒性用量は、微細血管(毛細血管)に損傷をもたらし、その透過性を増大させ、内出血の拡散(大出血)を引き起こす。これらの作用は段階的であり;その発展には数日間を要し、疼痛または激しい苦痛などの侵害認知を伴わない。中毒の最終段階で、弱った齧歯類は循環血液量過多ショックまたは重度の貧血にて衰弱し、穏やかな状態で死ぬ。殺鼠性抗凝固剤は第一世代薬剤(4−ヒドロキシクマリン型:ワルファリン、クマテトラリル;インダンジオン型:ピンドン、ジファシノン、クロロファシノン)であって、一般に高濃度(通常、0.005〜0.1%)を必要とし、致死量を蓄積するのに数日にわたって連続して摂取する必要があり、一回の摂取ではほとんど活性がないか、不活性であり、第二世代薬剤よりも毒性が小さい。その第二世代薬剤は4−ヒドロキシクマリンの誘導体(ジフェナコウム、ブロディファコウム、ブロマディオロンおよびフロクマフェン)または4−ヒドロキシ−1−ベンゾチイン−2−オン(4−ヒドロキシ−1−チアクマリン、複素環化合物との理由から時々誤って4−ヒドロキシ−1−チオクマリンと称される)、すなわちジフェチアロンである。第二世代薬剤は第一世代薬剤よりもより有毒であり、一般に餌の中に低濃度で配合され(通常、0.001〜0.005%の量)、一回の餌を摂取すれば致死に至り、第一世代の抗凝固剤に対して耐性を有する齧歯類の種族に対しても効果的である;したがって、第二世代の抗凝固剤は、時々「スーパーワルファリン」と称される。抗凝固剤の殺鼠剤は、抗生剤、大抵はスルファキノキサリンにより薬効が強化されていることがある。この組み合わせ(例えば、ワルファリン0.05%+スルファキノキサリン0.02%、またはジフェナコウム0.005%+スルファキノキサリン0.02%など)の目的は、抗生剤/静菌剤がビタミンKの供給源である、腸/胃内の共生微小植物を抑制することにある。これにより、共生菌は死滅するか、あるいはその代謝作用が弱められ、共生菌によるビタミンKの生成は減少し、その効果は必然的に抗凝固剤の作用に寄与することとなる。スルファキノキサリン以外の抗生剤、例えば、コトリモキサゾール、テトラシクリン、ネオマイシンまたはメトロニダゾールを用いてもよい。殺鼠剤の餌に用いられるさらなる共力作用は、抗凝固剤と、ビタミンD−活性、すなわちコレカルシフェロールまたはエルゴカルシフェロール(下記参照)との組み合わせによるものである。使用される典型的な処方は、例えば、ワルファリン0.025〜0.05%+コレカルシフェロール0.01%である。いくつかの国においては、3成分の殺鼠剤、すなわち、抗凝固剤+抗生剤+ビタミンD、例えばジフェナコウム0.005%+スルファキノキサリン0.02%+コレカルシフェロール0.01%で固定されてさえいる。第二世代の抗凝固剤と抗生剤および/またはビタミンDの組み合わせは、齧歯類のほとんどの耐性種に対して効果的であると考えられる。餌中濃度が0.0025〜0.005%のいくつかの第二世代の抗凝固剤(すなわち、ブロディファコウムおよびジフェチアロン)は、既知の耐性種族の齧歯類が存在しないほど有毒であり、他の誘導体に対して耐性である齧歯類であってもこれらの毒性抗凝固剤を適用することで確実に駆除される。
【0024】
ペットまたは人間が誤ってまたは故意に抗凝固剤の毒にさらされている場合(ペットへの毒攻撃、自殺を企てた場合)に、ビタミンKはペットまたは人間にとって解毒剤であることが示唆されており、そのような使用は成功している。さらに、ある種のこれらの毒が肝機能を阻害することにより作用し、毒作用の進行段階においてはいくつかの血液凝固因子ならびに循環血液の全体量が不足するため、不注意で抗凝固剤を摂取した人の命を(所望により、凝固因子を供給しての)輸血により救うことができ、輸血は年月の経った毒に対しても効果がある。
【0025】
リン化金属は、齧歯類を駆除する手段として用いられており、単回投与の速効性殺鼠剤であると考えられている(一般的に餌を1回摂取した後、1〜3日以内に死に至る)。食物とリン化物(通常リン化亜鉛)からなる餌を、齧歯類が食べ得る場所に放置する。齧歯類の消化器系の酸がリン化物と反応し、毒性のホスフィンガスを発生する。害獣を駆除するこの方法は、齧歯類がある種の抗凝固剤に対して耐性である場合、特にイエネズミおよび野ネズミを駆除するために適所にて用いることが可能であり;リン化亜鉛の餌はまた、多くの第二世代の抗凝固剤よりも安価であり、時に多くの齧歯類がはびこっている場合など、大量のリン化亜鉛の餌を用いることによりその集団を最初に減少させ、ついで最初の即効性の毒から生き延びた残りの集団に抗凝固剤の餌を長期にわたって与えることにより根絶させることができる。逆に、あらかじめこの集団に非毒性の餌を1週間または2週間与え(このことは、特にネズミを根絶する場合に、餌に対する警戒心を取り除き、特定の餌を提供することにより特定の場所で餌を摂取することに齧歯類を慣れさせるために重要である)、その後、予備餌に用いたものと同じ種類の毒入りの餌をすべての消費が終わるまで(通常、2〜4日間)与えることにより、抗凝固剤の餌の毒から生き延びた個々の齧歯類(残りの集団)を根絶させることができる。別の異なる作用機序を有する殺鼠剤によるこれらの方法は、餌が受け入れられ/美味しい場合(すなわち、齧歯類が容易にそれを摂取する場合)には、実際にまたはほぼ100%の齧歯類集団の根絶をもたらす。
【0026】
リン化物はかなり即効性の殺鼠剤であり、建物ではなく空地でネズミが死ぬという結果をもたらす。典型例はリン化アルミニウム(燻蒸剤のみ)、リン化カルシウム(燻蒸剤のみ)、リン化マグネシウム(燻蒸剤のみ)およびリン化亜鉛(餌に配合)である。リン化亜鉛は、一般的には約0.75〜2%の量で齧歯類の餌に加えられる。加水分解により放出されるホスフィンのため、餌は、強くて刺激性のある特徴的なニンニク臭を有する。他の哺乳類には拒絶効果を有するこの臭いが齧歯類を引き付ける(または少なくとも拒絶しない);しかしながら、鳥(特に野生の七面鳥)は匂いに対して敏感ではなく、餌を食し、巻き添え被害を受ける。
【0027】
高カルシウム血症
カルシフェロール(ビタミンD)、コレカルシフェロール(ビタミンD)およびエルゴカルシフェロール(ビタミンD)は殺鼠剤として使用される。それらは、体内にてカルシウムおよびホスフェートの恒常性に作用するという哺乳類には有益である同じ理由により齧歯類には毒である。微量のビタミンDは必須であるが(1日に体重kg当たり数IUであり、ミリグラムのほんの何分の1かである)、容易にいわゆるビタミン過剰症、簡単に言えばビタミン中毒となり、多くの脂溶性ビタミンと同様に多量では毒となる。その中毒が重度であれば(すなわち、毒性物質の用量が非常に高ければ)、最終的には死に至る。殺鼠剤の餌を消費する齧歯類においては、主として食べ物からのカルシウム吸収が増加することによりカルシウムレベルが上昇して高カルシウム血症となり、骨−マトリックス−固定のカルシウムはイオン化形態(主に一水素炭酸カルシウムカチオン、部分的に血漿蛋白に結合した、[CaHCO)に代謝され、それが血漿に溶けて循環し、致死量を摂取した後、遊離カルシウム濃度がかなり上昇することにより血管、腎臓、胃壁および肺が石灰化/骨化し(組織内でカルシウム塩/錯体のカルシフィケート(calcificate)、結晶を形成し、その結果各組織に損傷を与える)、さらには心臓疾患(心筋は心房および心室の間の心筋収縮および拡張の伝搬の両方に影響を及ぼす遊離カルシウムの濃度の変化に敏感である)および(毛細血管の損傷による)出血および場合によっては腎不全を引き起こす。単回投与または累積的(使用する濃度による;通常0.075%の餌濃度が、餌の大部分を一回で摂取した後の多くの齧歯類を死に至らせる)、亜慢性投与(餌を摂取した後、数日または1週間で一般に死に至る)が考えられる。適用濃度は、単独で使用した場合、コレカルシフェロール0.075%およびエルゴカルシフェロール0.1%である。カルシフェロールは抗凝固剤毒性物質と相乗作用するという、カルシフェロール毒物学の重要な特徴がある。このことは抗凝固剤とカルシフェロールを同じ餌に入れた混合物は、餌中の抗凝固剤およびカルシフェロールの毒性の合計よりも有毒であり、その結果、餌中の実質的には低いカルシフェロール含有量により重度の高カルシウム血症作用が達成されうること、あるいはその逆でも成立することを意味する。カルシフェロールが存在する場合に、より顕著な抗凝固剤/出血作用が観察される。効果的な濃度のカルシフェロールは効果的な濃度の多くの抗凝固剤よりも高価であるため、この相乗効果は、主に餌中のカルシフェロールの量を下げるのに使用される。歴史的に、実際に殺鼠剤の餌にカルシフェロールを最初に適用したのは、1970年代初期まで遡り、ワルファリン0.025%+エルゴカルシフェロール0.1%を含有するSorex製品のSorexa(登録商標)D(現在のSorexa(登録商標)Dとは異なる処方)であった。現在のSorexa(登録商標)CDは、0.0025%のジフェナコウム+0.075%のコレカルシフェロールの組み合わせを含有する。カルシフェロール0.075〜1%を単独で含む(例えば、0.075%のコレカルシフェロールを含有するQuintox(登録商標))、あるいはカルシフェロール0.01〜0.075%と抗凝固剤とを組み合わせて含有する多数の他のブランド製品が市販されている。
【0028】
ダニ殺虫剤、モラスシサイドおよびネマチサイド(nematicide)
ダニ殺虫剤はダニを殺す殺虫剤である。抗生剤、ダニ殺虫剤、カルバメート系ダニ殺虫剤、ホルムアミジン系ダニ殺虫剤、ダニ増殖抑制剤、有機塩素、ペルメトリンおよび有機リン酸塩ダニ殺虫剤はすべてこの範疇に属する。モラスシサイドは軟体動物、例えば蛾、ナメクジおよびカタツムリを除去するのに使用される殺虫剤である。これらの物質はメタルアルデヒド、メチオカルブおよび硫酸アルミニウムを包含する。ネマチサイドは寄生線虫(蠕虫門)を殺すのに使用される化学殺虫剤の一例である。ネマチサイドはニーム木の種子ケーキより得られる。それは油抽出した後のニームの種子の残渣である。ニーム木は世界中で数種の名前で知られているが、古代よりインドで最初に栽植された。
【0029】
〈抗菌剤〉
以下の例において、本発明の農薬組成物に適する抗菌剤を示す。広く使用される殺菌性消毒剤が適用される:
・活性塩素(すなわち、次亜塩素酸塩、クロラミン、ジクロロイソシアヌレートおよびトリクロロイソシアヌレート、湿式塩素、二酸化塩素など);
・活性酸素(過酢酸、過硫酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過炭酸ナトリウムおよび尿素過水化物などの過酸化物);
・ヨウ素(ヨードポビドン(ポビドン−ヨウ素、ベタジン)、ルゴール溶液、ヨードチンキ、ヨウ化非イオン性界面活性剤);
・濃縮アルコール(すなわち、エタノール、n−プロパノールとも称される1−プロパノール、およびイソプロパノールとも称される2−プロパノール、ならびにその混合物;さらには、2−フェノキシエタノールおよび1−および2−フェノキシプロパノールが使用される);
・フェノール性物質(例えば、フェノール(「石炭酸」とも称される)、クレゾール(カリウム液体石けんと組み合わせて「ライソール(Lysole)」と称される)、ハロゲン化(塩素化、臭素化)フェノール、例えばヘキサクロロフェン、トリクロザン、トリクロロフェノール、トリブロモフェノール、ペンタクロロフェノール、ジブロモールおよびその塩);
・カチオン性界面活性剤、例えば4級アンモニウムカチオン(塩化ベンザルコニウム、臭化または塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウムなど)等、クロルヘキシジン、グルコプロタミン、オクテニジン、ジヒドロクロリドなどの非4級化合物;
・オゾンおよび過マンガン酸塩溶液などの強酸化剤;
・コロイダル銀、硝酸銀、塩化水銀、フェニル水銀塩、硫酸銅、酸化銅クロリド等の重金属およびその塩。重金属およびその塩は、その多くが有毒で、環境的に有害な殺菌剤であるため、その使用は厳しく制限されるか、禁じられている;さらには、
・適宜濃縮された強酸(リン酸、硝酸、硫酸、アミド硫酸、トルエンスルホン酸);および
・1より低いpH(pH<1)または13より高いpH(pH>13)、特に高温(60℃以上)以下で、アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム)が細菌を殺す。
【0030】
防腐剤(すなわち、人または動物の体、皮膚、粘膜、傷等に使用できる殺菌剤)として、いくつかの上述した消毒剤が適当な条件下(主に、濃度、pH、温度および人/動物に対する毒性)で使用可能である。なかでも、以下のものが重要である:
・適宜希釈された塩素調製物(例えば、ダカン溶液、0.5%次亜塩素酸ナトリウムまたはカリウム溶液、pHは7〜8に調整、あるいはナトリウムベンゼンスルホクロルアミドの0.5〜1%溶液(クロラミンB));
・種々のガレニク(galenic)(軟膏、液剤、絆創膏)のヨードポビドンなどのヨウ素調製物、従来のルゴール溶液;
・尿素過水化物溶液およびpH調整した0.1〜0.25%過酢酸溶液などの過酸化物;
・主に皮膚殺菌に使用される、殺菌性添加物を含む、あるいは含まないアルコール;
・ソルビン酸、安息香酸、乳酸およびサリチル酸などの弱有機酸;
・ヘキサクロロフェン、トリクロザンおよびジブロモールなどのフェノール性化合物;および
・0.05〜0.5%ベンザルコニウム、0.5〜4%クロルヘキシジン、0.1〜2%オクテニジン溶液などのカチオン活性化合物。
【0031】
細菌性抗生剤は細菌を殺し;静菌性抗生剤はその成長または再生を減速させるだけである。ペニシリンは、セファロスポリンのような殺菌剤である。アミノグリコシド系抗生剤は殺菌性方式(細胞壁の前駆体を破壊し、溶菌に至らす方式)または静菌性方式(30のリボソームサブユニットと結合し、翻訳の忠実性を減少させ、不正確なタンパク質合成に至らす方式)の両方で作用しうる。本発明の他の殺菌性抗生剤として、フルオロキノロン、ニトロフラン、バンコマイシン、モノバクタム、コトリモキサゾールおよびメトロニダゾールが挙げられる。
【0032】
好ましい活性剤は、アゾキシストロビンのような、浸透性または部分的浸透性の作用機序を有する活性剤である。
【0033】
〈補助混合物の好ましい使用〉
本発明の別の実施態様は、乳化剤、助剤、溶剤または可溶化剤あるいはタンク混合添加剤として成分(a)、(b)および(c)を含んでなる補助組成物の、農薬組成物の製造のための使用に関する。この補助組成物は、最終生成物に対して、約5〜約50%w/w(濃縮物)または約0.1〜約1%w/w(希釈調製物)の量で添加され得る。
【実施例】
【0034】
〈実施例1および2、比較例C1およびC2〉
本発明の補助混合物の効果を、アジア大豆さび病のコントロールを介して実証する。野外実験は、ブラジルにて行った。市販の2つの標準的なバイオサイド組成物を大豆作物に塗布した:5%w/wのエポキシコナゾールおよび13.3%w/wのピラクロストロビンを含有する「Opera」(BASF)。前者は予防的および治療的殺真菌剤であり、後者は保護的、治療的、およびトランスラミナー型の殺真菌剤である。「Folicur」(Bayer CropScience)はテブコナゾールを含有し、保護的、治療的および除草特性を有する殺真菌剤である。この2つの組成物を、完全に推奨される割合で、および50%のレベルで塗布した。これらの結果を、(A)約75%w/wの大豆油+10EO、10%w/wオクチルグルコシドおよび15%w/wのトールオイル脂肪酸および(B)60%のソルビタンモノ/ジラウレート+25EO、25%w/wのデシルグルコシドおよび15%w/wのトールオイル脂肪酸を含む本発明の補助混合物を、いずれの場合にも150ml/haの濃度で添加して同様に処理した植物と比較した。結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
実施例と比較例から明らかなように、補助剤の添加は殺真菌剤の効果を著しく増強する。
【0037】
〈実施例3、比較例C3〉
イヌエビおよびエノコログサにおけるニコスルフロンの取り込みにおいて、本発明の組成物の性能を業界基準、とりわけ作物油濃縮物(COC)と比較するために、別々の実験に取り組んだ。使用する0.5時間前に、放射性物質で標識したニコスルフロン(50mCi/mmol)を、新しく調製した処理溶液に加えた。14Cニコスルフロンが7質量%含まれた。ニコスルフロンのみを含む噴霧溶液、すなわち、補助剤を含まない噴霧溶液を、50%アセトンで調製した。結果を表2に示す。
【0038】
【表2】

【0039】
〈実施例4〜6〉
5つの複製を用いて、植木鉢にイヌエビおよびエノコログサの種子を深さ5mmにまき、相対湿度70%で4週間保ち、毎日14時間、光度約500μmol/mにさらした。取り込み実験に用いた際、植物は3〜5葉期であって、収穫するまでの間十分に水を与えた。光周期の開始から約6時間後、液滴を塗布した。処理から24時間後に葉を採取し、処理表面を水/アセトンにより洗浄し、吸収されなかったニコスルフロンを回収した。液体シンチレーションカウンターを用いた。処理した葉の洗浄により回収されなかった放射能を葉面吸収と考え、塗布量の割合として算出した。統計目的のために、分散分析および最小有意義(LSD)試験を用いて処理を比較した。結果を表3に示す。
【0040】
【表3】

【0041】
表3に示されるように、処理24時間後における2つのイヌ科種へのニコスルフロンの取り込みは、いずれの補助剤によっても増加した。本発明の補助剤はCOCに比べて、より少ない添加量で、イヌエビへの除草剤の取り込みの著しい増加をもたらす。エノコログサに対して、本発明の補助剤による取り込みはCOCよりも数値的には大きいが、統計的観点から95%の信頼度において有意ではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アルコキシル化ポリオールエステル、
(b)場合によりアルコキシル化されたアルキル(アルケニル)オリゴグリコシド、および
(c)脂肪酸またはその塩
を含んでなる農薬補助組成物。
【請求項2】
前記アルコキシル化ポリオールエステル(成分a)がグリセリン、トリメチロールプロパンまたはペンタエリスリトールに由来することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アルコキシル化ポリオールエステル(成分a)が、アルコキシル化モノグリセリド、ジグリセリドまたはトリグリセリドあるいはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アルコキシル化ポリオールエステル(成分a)が、下記一般式(I):
【化1】

〔式中、R、RおよびRは、互いに独立して、5〜21個の炭素原子を有する直鎖または分枝の、飽和または不飽和のアルキル基および/またはヒドロキシアルキル基を表し;n、mおよびpは、(m+n+p)の合計が0ではないことを条件に、互いに独立して0または1〜50の整数であり、AOはエチレングリコール単位またはプロピレングリコール単位を表す〕
で示されるアルコキシル化トリグリセリドであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記アルコキシル化グリセロールエステル(成分a)が、大豆油、菜種油、ヒマワリ油または亜麻仁油に由来することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記アルコキシル化ポリオールエステル(成分a)が、2〜15の範囲のHLB値を示すことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記アルキル(アルケニル)オリゴグリコシド(成分b1)が、下記一般式(II):
O−[G] (II)
〔式中、Rは、4〜22個の炭素原子を有するアルキル基および/またはアルケニル基を示し、Gは5〜6個の炭素原子を有する糖部分であり、pは1〜10の数値を示す〕
で示されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記アルコキシル化アルキル(アルケニル)オリゴグリコシド(成分b2)が、平均1〜20モルのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドの、グリコシド骨格の遊離ヒドロキシ基への付加物であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記脂肪酸(成分c)が、下記一般式(III):
CO−OX (III)
〔式中、RCOは、6〜22個の炭素原子を有する直鎖または分枝の、飽和または不飽和のアシル基を示し、Xは水素またはアルカリ金属である〕
で示されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
必要に応じて水を加えて100%w/wにする条件下において
(a)60〜90%w/wのアルコキシル化ポリオールエステル
(b)5〜15%w/wの、場合によりアルコキシル化されたアルキル(アルケニル)オリゴグリコシド、および、
(c)5〜15%w/wの脂肪酸またはその塩
を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
(a)アルコキシル化ポリオールエステル
(b)場合によりアルコキシル化されたアルキル(アルケニル)オリゴグリコシド、
(c)脂肪酸またはその塩、および
(d)バイオサイド
を含んでなる農薬組成物。
【請求項12】
農薬組成物の製造における乳化剤としての請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項13】
農薬組成物の製造における補助剤としての請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項14】
農薬組成物の製造における溶剤または可溶化剤としての請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項15】
農薬組成物の製造におけるタンク混合添加剤としての請求項1に記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2012−513421(P2012−513421A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542696(P2011−542696)
【出願日】平成21年12月12日(2009.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008899
【国際公開番号】WO2010/072341
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】